【ガルパン】魔弾の砲手 -五十鈴 華- (50)

*一部独自解釈、設定有

*この作品はフィクションです
戦車の動作、性能等、実際のものと異なる場合があります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1487503185


ザワザワ…

桃「あー、みんな静粛に」

桃「先日の全国戦車道大会、ご苦労だったな」

桃「その労いの意味も込めて、少し遅れたが祝勝会の場を設けさせてもらった」

桃「まずは挨拶と乾杯の音頭を…会長、お願いします」

杏「あいよー」

杏「あー…何から言えばいいのかな…」

杏「…戦車道大会、本当にありがとね。みんなのおかげで優勝できて、私たちの学校も守れたよ」

杏「思えば最初はボロボロのⅣ号しかない状況で、なんもかんも絶望的だったけどさ」
  西住ちゃんが来てくれて、ムリヤリ戦車道やらせちゃったけど…」

杏「あー…うん、やめたやめた!今日は湿っぽいのナシ!ナシナシ!
  みんな今日は楽しんでってね!カンパーイ!」



~~~~


~~~~




杏「えー、じゃあ次の隠し芸は…次期隊長筆頭の澤ちゃん!よろしくね~」

梓「え、わ、私!?」

梓「え、えーと…じゃあ、戦車道が復活することになったときの西住隊長の顔のモノマネします!」

ナカジマ「やれやれー!」

梓「い、いきますっ!」

梓「」←レイプ目

ねこにゃー「お、おぉう…」

おりょう「思ったよりガチで反応に困るぜよ」

みほ「えぇ…私あんな顔してたの…?」

杏「やあやあ西住ちゃん、あんな顔させてごめんね」

みほ「い、いえ!私は別に、そんなつもりじゃ…」

杏「あぁ、いいのいいの」

優花里「(西住殿のあんな顔、見たかったですね…)」


杏「で、来年はどーすんの?」

みほ「え?」

杏「ウチの学校、選択必修科目は毎年選択だからねー
  戦車道以外にしてくれてもいいけど…」

みほ「…いえ、私の戦車道はまだ始まったばかりですから
   来年もみんなと一緒に、戦車道やれればいいなぁって…」

優花里「に、西住殿ぉ…!」

みほ「優花里さんも来てくれる?」

優花里「もちろんですぅ!不肖秋山優花里、地の果てまでも西住殿とご一緒させて頂きます!」

みほ「あはは、ありがとう」

沙織「結局、今年は出会いも何にもなかったし…
   私も、みぽりんと戦車道やりたいな」

麻子「私はただ、遅刻免除のためだけだったんだが…
   西住さんにはそれ以上の借りができてしまった。来年も尽力させてもらう」

みほ「沙織さんも、麻子さんもありがとう」

麻子「それに、来年になって遅刻が増えないとも言い切れないからな」

沙織「いや、そこは改善しようよ!」

華「…」

みほ「…?華さん?」

華「あ、は、はい?」

みほ「あ、ごめんね。何か考え事?」

華「いえ、私…私も、ぜひみなさんと一緒に…」

桃「うぅ…いい友達を持ったなぁ…西住ぃ…!」グスグス

柚子「桃ちゃんここで泣くの…?」


華「…」


…大洗の廃校は撤回されて、来年も皆さんと一緒に学校生活を送れます

戦車道はあんこうチームの砲手として、みなさんのお役に立てた自覚はあります

華道もお母様に認めていただくことができて、何も私に気がかりなことはない筈なのです

…なのに、この胸の奥の、モヤモヤしたものは何でしょう

…まるで、私の戦車道が、華道がここで行き止まりを迎えているような、そんな気がするのです




Girls und Panzer
 魔弾の砲手 -五十鈴 華-

~~~後日、戦車喫茶にて~~~


沙織「番号!」

みほ「い、いち!」

優花里「にぃ!」

麻子「さぁん…ふあぁ…」

沙織「こらぁ!冷泉!しっかりせんかぁ!」

麻子「うるさいぞ、そど…じゃなかった、沙織…」

沙織「えぇ…?今の私、そんなに似てた…?」

優花里「…というか、何だったんですか今のノリは…
    どちらかといえば私のキャラなんですが…」

沙織「いや、ついやりたくなっちゃって…」

みほ「…あれ?華さんは?」

沙織「華はおうちの人とお花の展覧会で、今日は来ないの」

麻子「五十鈴さんなしでいいのか?」

沙織「そっちの方が都合がいいっていうか…」

優花里「え?何か隠したいことでも?」

沙織「隠すってわけじゃないんだけど…」

麻子「まぁ、本人の前ではしづらい話もあるだろう」


沙織「うーん、まぁ…私の勘違いだったら恥ずかしいんだけど…」

みほ「?」

沙織「何か最近、華の様子が変なの」

優花里「はぁ…変、と言いますと…」

麻子「私は特に気になることもなかったが…」

沙織「前よりあんまり笑わなくなったような気がするし…
   あと、ごはんの量も減ってるし…」

みほ「うーん…でも、言われてみればそう、かも…?」

優花里「確かに言われてみれば、なんだかうだつの上がらないというか、
    何かを我慢しているような表情が気になる…ような…?」

麻子「みんな、ぼんやりと違和感は持ってるのか…ただ、確証はないんだな」

沙織「でしょ?気のせいかと思ってたんだけど、やっぱり最近元気ないよね?」

みほ「でも、普段の学校や登下校の時は普通だったと思うけど…」

沙織「特に戦車道やってる時!何かつまらなさそうな顔してる時なかった?」

みほ「…ごめんなさい、戦車道やってる時はいろいろ手一杯で…」

優花里「私も自分の仕事ばっかりで…」

麻子「私も操縦桿しか見ていなかったからな…」

沙織「私も通信主の作業中に回り見ることがあったから、たまたま気づいたようなものなんだけど…」


麻子「それに気づいたのはいつからだ?」

沙織「全国大会が終わって、ちょっとしてからかなぁ…」

優花里「その間、何かしらのイベントや学校行事などもありませんでしたね」

沙織「つまり、やっぱり全国大会がきっかけってこと?」

麻子「だが、全国大会優勝で大洗は廃校撤回、その後は華道でも母親に認められたと聞いている
   それこそ、何も気がかりなことはないはずなんだが……あ」

みほ「? 麻子さん?」

麻子「…なるほど、何となくわかった」

沙織「ええっ!?ウソ!?私さっぱりだよ!?」

麻子「いや、これは私の勝手な想像で…」

優花里「冷泉殿!そこまで言われたら気になりますぅ!」

麻子「う…じゃあ、私の仮定でいいなら…」

みほ「うん、聞かせて。私、華さんと戦車道を続けたい」

沙織「悩める同級生を助けるのも、青春ってカンジだよね!」

麻子「また雑な…」




****************


****************




沙織「…」

優花里「な、なるほど…」

みほ「確かに、そういう考え方もある、かな…」

麻子「まぁ、さっきも言ったがこれは私の仮説だ。ただの思い過ごしって可能性も十分ある」

沙織「…うん、今の麻子の話だったら、最近の華のカンジにも説明がつくし…」

優花里「でも、どうしたらいいんでしょう?」



?「へぇ、面白い話してるじゃん?」


優花里「え?この声…」

杏「やあやあ西住ちゃん。奇遇だねぇ」

柚子「ごめんね、盗み聞きする気はなかったんだけど…」

みほ「会長…」

杏「ちょいどいい話があるんだ」


~~~後日、大洗女子学園:生徒会室~~~




みほ「失礼します」

柚子「あ、いらっしゃい。会長ー。西住さん来ましたよー」

杏「はいはーい。あんこうチーム、全員いるかな?」

麻子「…一限前はまだ眠い…」

華「麻子さん、しっかり」

沙織「麻子!ほらもう生徒会室ついたから!しゃきっとして!」

優花里「冷泉殿はブレないですね…」

柚子「会長、どこまで話してるんですか?」

杏「いや、あんときは五十鈴ちゃんもいなかったし、呼び出ししかしてないよ」

沙織「なんで私たちあんこうチームだけ?」

優花里「やはり、戦車道のことで?」

杏「まぁねー」

杏「それじゃあ、まずは要点を先に言おうか」

杏「…みんな、もっと強い相手と戦ってみる気はある?」


優花里「…強い相手、というと?」

華「黒森峰以上、ということでしょうか?」

杏「うん。そうなるね」

杏「…もっと言えば、あの西住まほ以上の相手だ」

みほ「お姉ちゃんより?」

麻子「あの隊長は、既に高校戦車道トップクラスの実力者の筈だが…」

杏「話の規模を大きくすると、本当に誰一人勝てないかもしれない。高校戦車道に限らずね」

優花里「そこまで言う相手とは…?」

杏「まぁ、実際見てもらおうか。この写真の相手さ」スッ


みほ「…?えっ、これ…?」

優花里「黒森峰の隊長、西住まほ殿の使用していたティーガー…ですよね?」

杏「うん、決勝で戦ったのと同じティーガーだ」

沙織「それで、この中の人ってこと?」

杏「ううん、この戦車そのものだ」

華「? どういうことでしょう?」


杏「…この戦車、自動操縦機なんだよ」

優花里「自動操縦…!?なんですかそれ!?」

みほ「…あ、聞いたことあるかも…」

麻子「私はさっぱりだ。西住流絡みか?」

みほ「私が黒森峰にいたころに、お姉ちゃんとお母さんがそんな話をしてたような…」

杏「そう、この戦車は黒森峰が開発して、保管してあるんだ」

杏「もちろん公式戦には使用不可能だし、練習ですら出てこないみたいだからね」

沙織「黒森峰、こんなの持ってるんだ…」

杏「読んで字のごとく、本当に自動で動くんだ。操縦、装填、砲撃まで全自動でね
  言うまでもなく、ものすごく強い」

杏「聞いたところだと、あの西住まほを持ってしても勝てず、強すぎて練習にならないって理由で封印されたらしいよ」

みほ「こんな戦車があったなんて…」

沙織「会長は、なんでこれを知ってるんですか?」

杏「実は、ちょっと前に黒森峰から連絡があってね」

みほ「お姉ちゃんから?」

優花里「では、今回のお話というのは…」

杏「…うん。この自律機と戦ってみる気、ない?」

麻子「なるほど、そういうことだったか」


杏「全国優勝の実績かわからないけど、打診があったんだ。あんこうチームなら、これを倒せるかもしれない…ってね」

杏「もうすぐ寄港だけど、黒森峰の学園艦も同じところに寄せてるから、その時にやる形になると思うけど」

杏「…で、どうする?」

優花里「はいっ!はいはいっ!是非!是非やらせてくださいっ!」

杏「はい秋山ちゃん早かった」

沙織「ゆ、ゆかりん、テンション高いね…」

優花里「自律機ですよ!戦車が自動で動くんですよ!これを見ずして何が戦車道ですか!」

麻子「秋山さんならそう来ると思った…」

杏「冷泉ちゃんはどう?」

麻子「私も、興味がないといえばウソになるな」

沙織「うん、私も気になるし」

華「そうですね。わたくしも是非」

杏「西住ちゃんは…やっぱ行きづらい?」

みほ「…いえ、もう大丈夫です。お姉ちゃんとも話したいですし」

杏「うんうん、ありがとねぇ」

杏「それじゃ、時期見てまた連絡するから。よろしくねー」




~~~後日、黒森峰女学園~~~




みほ「お姉ちゃん!」

まほ「来たか、みほ」

みほ「元気だった?」

まほ「ああ。みほも元気そうだな」


優花里「…まほ殿、ずいぶんと柔らかくなった感じですね」

沙織「笑った顔、みぽりんにそっくりだね」


まほ「早速だが本題に入ろう。こっちだ」



~~~



優花里「おお、これが…!」

まほ「自動操縦のティーガーだ。私たちは『自律機』と呼んでいるが…」

沙織「外見は決勝で見た戦車と変わらないね」


優花里「あ、あのう、中を拝見しても…」

まほ「ああ、構わないよ」

優花里「では失礼して…ほほおー…!これが…!ほぉー…!」

華「あらあら…」

麻子「アレな時の秋山さんになったな」

みほ「アレな時って…あ、でもなんとなくわかるかも」

沙織「二人してちょっと酷くない!?」

まほ「操縦桿は自動で動くから、そっちの一式で装填を行ってる
   通信手や車長は不要だから、他と変わっているのはそこの装填装置だけか」

優花里「あれ?でも、これだと…」

まほ「ああ、装填は基本的に凄く遅い」

まほ「ただ、砲撃の狙いは正確だ。必ず戦車の中心を捉え、射撃する」
   当たる場面でしか射撃しないし、砲弾は必ず戦車の中心だ。多少の加減速では砲弾をかわせない」

麻子「勝つだけなら、動きながら当たるまで撃てば良い…けど、それじゃあ練習にならないな」

まほ「当然、射撃は早い。お互いに停車した時、砲撃までは最速で行ってくる」

みほ「…これ、どうやって勝つの…?」

まほ「情けない話だが、私たちにはどうすることもできなかったよ」


華「…」

沙織「…?華?どうかした?」

華「あ…いえ、何でもありません」

沙織「?」

華「(聞けば聞くほど勝てる気がしませんね……ですが、何でしょう。この気持ちは…)」

華「(この感覚、以前のサンダースや黒森峰の時も…)」

まほ「さて、早速だが始めるか。私は戦車と、演習用を準備しておく」

みほ「うん。それじゃあ、作戦を伝えます」

麻子「実行するのは私たちだけだけどな」

優花里「最強の戦車と1対1とは…なかなか燃えるシチュエーションですぅ!」

華「ええ、頑張りましょうね」

沙織「…あれ?もしかして私、今日仕事ない?」




~~~~~~~~~~~~~~~


~~~~~~~~~~~~~~~



みほ「場所は少し狭いこの広場のみ。基本的に、一瞬で勝負がつくと思ってください」

沙織「大会でまほさんと戦った場所に似てるね」

みほ「ええ。ですから、同じ作戦を取ろうと思います」

みほ「まずは1発砲撃してけん制しつつ、加速して一気に距離を積めます」

みほ「そのまま回り込んで停車、そこで砲撃します」

麻子「まほさんと戦ったときそのままの戦術か。また履帯がやられてしまうぞ…」

華「私も以前と同じですね。任せてください」

みほ「ただし、あまりに近距離だと、おそらく相手の偏差射撃が先になってしまいます」

みほ「ですから、以前よりも大きく距離を取ってください。お互いの砲塔同士が離れる程度の距離を進みます」

麻子「了解」


まほ「待たせたな。こちらの戦車も準備できた。いつでも始めてくれ
   そちらの合図で起動しよう」

ティーガー『…』ゴゴゴ…


優花里「あれが…」


みほ「みなさん、用意はいいですか?」

麻子「いつでもいいぞ」

優花里「装填準備、完了してます!」

みほ「では、対自律戦車訓練を開始します!パンツァー・フォー!」

ゴゴゴッ

まほ「始まったか」

ピッ

ティーガー『…』ブロロロロ…

みほ「相手も回り込むような形でこっちに…」

みほ「華さん、この状態で当てられますか?」

華「…いえ、相手も動き回っていますし、こちらが砲身を向けると車体をズラしているようです」

みほ「やっぱり停止射撃しか…」

麻子「どうする?前と同じ感じでいいか?」

みほ「はい、お願いします!」

沙織「(やっぱりやることないなぁ…)」


みほ「華さん!」

華「ハイッ!」

ドォォン!

ティーガー『…』スッ

みほ「側面からそのまま背後に回ります!麻子さん!優花里さん!」

麻子「はいよ」

優花里「次弾用意します!」

Ⅳ号『』ゴォッ

みほ「華さん、依然と同じように停車します。0.5秒だけあれば行けますか?」

華「…いえ、0.3秒で十分です!」

みほ「わかりました、お願いします!」

優花里「次弾いけます!」

まほ「(みほは決勝と同じ戦略か…。これで、純粋に射撃速度の勝負になるが…)」

麻子「回り込むぞ」

ガリガリガリガリ…

華「…」

みほ「華さん、お願い!」

沙織「華っ!」

まほ「戦車が、止まる…!」



ギギギ…



ギギ…



ギッ…







ティーガー『ピピッ』
華「…!」



ドドォン!!




まほ「…!」

沙織「ど…どうなった、の…?」


優花里「う…」

みほ「これは…!」


Ⅳ号『』(白旗)
ティーガー『』(白旗)


優花里「どちらも白旗は上がっていますが…」

みほ「お姉ちゃん!」

まほ「…」

みほ「…結果、は…」

まほ「…残念だが」

沙織「ええっ?」

まほ「Ⅳ号の白旗が、ほんのわずかに早い」

みほ「そんな…」

沙織「華が、負けた…?」

華「…なんてこと…」

優花里「ど、どういうことですか!?五十鈴殿の射撃は完璧だったはず…!」

麻子「私が停車してから、射撃までの間隔はほとんど感じられなかったぞ」


まほ「…」

みほ「…お姉ちゃん…?」

まほ「五十鈴さん。今、どうやって射撃した?」

華「どうやって、と言われても…戦車が停止してから、引き金を引くだけですが…」

まほ「…そうだ。普通はそうするし、それしかない。五十鈴さんの射撃も、相当に早かった」

まほ「…しかし、それは人間の感度、動作でやれる限界の速度でしかない」

みほ「えっ…と…ど、どういうこと?」

まほ「Ⅳ号が停止して、その停止を確認するまでの時間。そして、停止してから引き金を絞るまでの時間」

まほ「…このわずかな時間が、Ⅳ号と自律機の射撃速度の決定的な差になっているんだ」

優花里「そんな…!」

まほ「砲塔が相手の戦車を捉えるまではほぼ同時…というか、どちらも砲塔は常に相手戦車に向いていたように見える」

まほ「つまり、最後に勝負を分けたのは停止してから射撃までのわずかな時間…」

まほ「戦車の動作、射撃までマシンでコントロールされている自律機と、人間の反応で射撃するⅣ号の差が出てしまっているんだ」

華「…そう、ですか…」

沙織「…ま、まーまー!そんな落ち込まないでよ!」

優花里「そうですよぉ!負けてはしまいましたが、あの射撃はお見事でした!」

華「…いえ、私は…」

華「…フフッ」

沙織「は、華?」


華「…どうしてでしょう。負けて悔しいハズなのですが…」

華「これほどまでに、気持ちが昂るのは初めてかもしれません」

みほ「華さん?」

華「まほさん。この戦車と、もう一度戦えますか?」

まほ「あ、ああ。一度整備してからであれば…」

華「では、お願いします」

まほ「そうだな。なら少し時間をくれ。また連絡しよう」

華「ええ、ぜひ」

沙織「華?どうしちゃったの?」

華「すみません、みなさん。また付き合っていただけますか?」

みほ「う、うん。私はいいけど…」

麻子「午後開始なら構わんぞ」

華「ありがとうございます」

沙織「華、こんな強引だったっけ?」

華「…ふふ。私も、人並みには負けず嫌いなんですよ?」

いったんここまでにします
残り半分程度ですが書き溜めてあるので、ざっと見直したら投下します

戦車戦の動作やら設定に関しては「こまけぇことはいいんだよ!」くらいで見ていただければ幸いです

再開
完結まで投下します

~~~~黒森峰女学園・西住まほ自室~~~~




みほ「お邪魔しまーす」

まほ「ああ。いらっしゃい。適当に寛いでくれ」

みほ「ごめんね、急に泊まりたいなんて言っちゃって…」

まほ「いや、構わないよ。妹が泊まりに来るなんて言われたら、断る姉はいないさ」

みほ「…ふふ、ありがとう」

まほ「残念だったな、今日は」

みほ「ううん、大丈夫。でも本当に凄かったなぁ、無人戦車…」

まほ「五十鈴さんの射撃も見事だった。負けてはしまったが、あの砲手なら全国大会優勝も納得だ」

みほ「でも、本当に珍しいの。あの華さんが、もう1回戦いたいだなんて…」

まほ「私も気になってはいたが。何かあったのか?」

みほ「…うーん、あるような、ないような…」

まほ「なんだ、歯切れが悪いな」

みほ「…うん、じゃあ話すね」


~~~回想:戦車喫茶にて~~~




みほ「アンダーマイニング効果…?」

優花里「…って、何です?」

沙織「あ、何かおいしそうな名前かも」

麻子「そんなだから太るんだろ」

沙織「なにおぅ!?」

麻子「そうだな、じゃあ例えば…沙織、私のことを起こしに来てくれるだろ?」

沙織「うん、そろそろ試合の日とかも自力で起きようね」

麻子「それで、1回起こしてくれるごとに報酬として1回1000円渡すとする」

沙織「あ、それなら喜んでやっちゃうかも」

麻子「…それで、しばらくその報酬でしてもらった後、報酬を払わなくなる」

沙織「え?くれてたのに?」

麻子「…さて、ここで質問だ。急に報酬を取り上げられて、ノーギャラで起こしに来てくれるか?」

沙織「…ううん…これまで以上に面倒になっちゃうかも…」

優花里「一度、報酬を渡されてるとなるとそうかもしれませんねぇ」

麻子「簡単に言えば、モチベーションの低下だな。報酬が絡むとこういう事態になりやすい」

麻子「要するに、途中までは私へのモーニングコールそのものが目的だったが、気づけば目的が報酬にすり替わっている状態だ」

沙織「なるほど。その例えはちょっと気になるけど」

麻子「…今、五十鈴さんがこういう状態になってる可能性が高い」

みほ「え?どういうこと?」


麻子「最初に五十鈴さんが戦車道を始めた時は、それほど深刻な目標もなかったはずだ」

麻子「ただ、戦車に乗ってみたい。砲撃が気持ちいい。それだけの理由だったろう」

麻子「…が、途中から戦車道のその先の目標ができてしまった」

みほ「それって、お母さんと対立した時のこと?」

麻子「ああ。戦車道を通じ、自らの華道を示すことで、お母さんに認めてもらうという目標だな」

麻子「全国大会優勝もそうだろう。この2つが、これまで五十鈴さんを突き動かしてきた目標だ」

麻子「…だが、今はそのどちらも失ってしまった」

沙織「戦車道は優勝したし、華道もお母さんと和解したし…」

みほ「何も不自由はないはずなのに、それが華さんにとって良くないことだなんて…」

麻子「元々、西住さんは戦車道そのものが目的だし、秋山さんは戦車が好きでやっている」

麻子「私や沙織は、そこまで大それた目標があるわけでもない。そんな悩みもないからな」

沙織「えー、私だって目標がないわけじゃない、けど…うう…」

優花里「大丈夫です。沙織さんは魅力的な女性ですよ」

沙織「ありがとぉ…」

麻子「端的に言えば、モチベーション不足だな」

沙織「…」

優花里「な、なるほど…」

みほ「確かに、そういう考え方もある、かな…」




~~~ここまで回想~~~


まほ「…なるほど」

みほ「それで、戦車道そのものの楽しさを思い出してほしくて」

まほ「…それなら、もう心配ないかもしれないな」

みほ「え?」

まほ「彼女、嬉しそうだったよ」

みほ「嬉しい?」

まほ「ああ」

まほ「大洗の試合は見ていたが、彼女、大会では一度も負けていないんじゃないか?」

みほ「…そういえば、勝負所で華さんが外したのは見たことがないかも…」

まほ「屈辱的…かはわからないが、とにかく彼女にとって、初めての決定的な敗北になっただろう」

まほ「彼女は、これまで勝ち続けてきた自分の戦車道に飽いているのかもしれないな」

まほ「もし、あの自律機に勝てるようなことがあれば…」

みほ「…で、でも、実際あれに勝てるの?」

まほ「私も不思議だ。弱点らしい弱点はないからな。しいて言えば、機構の問題上、装填が遅いくらいか」

まほ「だが、正確無比な敵戦車中心への射撃をどうにかしなければならない」

みほ「避けるのは難しいんだもんね…」

まほ「だが、彼女には何か勝算があるような雰囲気だった」

まほ「行進間射撃とか、もっと別の戦術であれば勝ち目もあるかもしれないが…」

まほ「やはり、以前と同じ戦術で勝たなければ意味がない、と考えているだろう」

みほ「私にはさっぱりだけど…」

まほ「…フフ、私も楽しみだ。彼女がいかにして、あの自律機を制するつもりなのか…」




=========


=========




まほ「…来たか、みほ」

みほ「よろしくね、お姉ちゃん」

まほ「Ⅳ号、自律機ともに整備済みだ。いつでも動かせるぞ」

みほ「ありがとう」

まほ「…」

みほ「お姉ちゃん?」

まほ「…勝算はあるのか?みほ?」

みほ「…私は…」

まほ「私はこの勝負、すべきではないと思っている」

みほ「え?」

まほ「私としては、五十鈴さんの意地もわかる。この勝負を見届けたいとも思う」

まほ「だが、もし負けてしまえば、今度は心に傷を負ってしまうかもしれない」

みほ「それは…」


華「…心配ありませんよ、まほさん」

まほ「五十鈴さん」

華「…覚悟はできています…いえ、そもそも、負けるつもりもありません」

華「これほどまでに、勝負を待ちわびている自分が怖いくらいなのです」

華「…やらせてください。後悔はしませんから」

まほ「…わかった」

みほ「華さん」

華「(…また、みほさんに無理を言ってしまいましたね。これで、本当に負けられません)」

まほ「では、用意ができればこちらも動かそう」

みほ「うん」


***************


みほ「みなさん、用意はいいですか?」

優花里「大丈夫です、西住殿っ!」

麻子「いつでも動かせるぞ」

沙織「私、頑張って応援するね!」

麻子「五十鈴さんの集中を乱すなよ」

みほ「…華さん?」

華「…」

みほ「華さん、手、震えて…」

華「…ふふっ、これが武者震いというものでしょうか」

沙織「華?大丈夫?」

華「ありがとうございます、沙織さん」

華「…みほさん、お願いします」

みほ「わかりました」

みほ「(自律機の性質、戦場の幅や奥行きを考えれば、別の戦術を立てるのがベストなんだけど…)」


華「…みほさん」

みほ「?」

華「…もう一つだけ、わがままを聞いてもらって良いですか?」

みほ「え?」

華「…前回と同じように、砲身が向き合うように調整してほしいんです」

みほ「…」

華「(本来なら、別の戦術がベストだとはわかっていますが…)」

華「(こうして勝たなければ、『五十鈴華』としての勝負に勝ったことにはなりませんから)」

みほ「…わかりました。この勝負、華さんに預けます」

華「…本当にありがとうございます、みほさん」

華「(みほさんは、何も言わずに私のワガママを聞いてくれました)」

華「(私も、応えなければなりませんね)」

みほ「…それでは、前回と同じ作戦でいきます。麻子さん、お願いします」

麻子「ほい」

みほ「パンツァー・フォー!」


ゴッ


まほ「(始まったか)」ピッ


ティーガー『』ウィィィィン


沙織「敵車両、動き始めたよ!」

優花里「西住殿、けん制射撃は?」

みほ「いえ、このまま側面へ!」

優花里「わかりました!」


ゴォォッ


麻子「常に捕捉されてるな。同じところまで滑らせるぞ」

みほ「はい!優花里さん、大丈夫ですか?」

優花里「装填完了してます!」

みほ「華さん!」

華「はい」

みほ「…0.3秒でいけますか?」

華「ええ、大丈夫です」

みほ「お願いします!麻子さん!」

麻子「ん」



ギィーッ!!



まほ「…来た!」




ギギギ…


みほ「華さん、お願い!」


ギギ…


優花里「五十鈴殿っ!」


ギッ…


沙織「華っ!」


ギィ…








ティーガー『ピピッ』
華「…!!」


ドドォン!!



みほ「うわぁっ!」

まほ「ダメか…!」


………


……






みほ「…」

沙織「…」

麻子「…」

優花里「…」

みほ「…し、白旗は…?」


Ⅳ号『』ゴゴゴッ…
ティーガー『』ゴゴゴ…


沙織「え…?何?何?何が起こったの!?」

麻子「今、当たった…よな?」

まほ「どちらも白旗は出ていない…!?何が…!?」

みほ「えっ…え、ええっ!?」

優花里「これは…!?」


みほ「あっ…!ゆ、優花里さん!」

優花里「は、はいぃ!」


ガコッ


優花里「五十鈴殿っ!!」

華「ありがとう、優花里さん…!」

華「…今度こそ、決めさせていただきます…!」


ドォォン!!



ティーガー『』シュパッ


みほ「や、やった、の…?」

沙織「や、やったぁ!やったよ、華ぁ!」

まほ「一体何が…?自律機が外した、のか…?」


麻子「何が起きたんだ…?確かに、ティーガーの砲弾が命中した衝撃はあった」

みほ「華さん、今、何を…?」

まほ「今の射撃、私の見る限りではほんのわずかに自律機が速かった…」

まほ「だが、射撃された弾は逸れて、わずかにⅣ号の車体をかすめただけ…」

まほ「まさか、自律機の故障か?そうでなければ、あの射撃がズレるなんてことはないはずだ」

みほ「それか、砲弾が風や障害物の影響で逸れたとか……!!」

沙織「みぽりん?」

みほ「…ま、まさか、華さん…」


華「…ええ。確かに私の射撃速度では、あの自律機を上回ることはできません」

華「ですが、相手が寸分の狂いもなく戦車の中心を狙ってくるとわかっているのであれば…」

華「その射線に私の砲弾を重ねて射撃することで、こちらの砲撃を敵砲弾に命中させ、急所をハズすことができます」

優花里「……えっ?」

まほ「砲撃に砲撃を命中させた、と?」

麻子「ムチャクチャだが、一応理屈は通ってる、のか…?」

沙織「な、なんでそんな簡単に…」

華「…フフ、簡単ではありませんよ。ただ、私の信じた道に従っただけです」


みほ「え、えぇっと、なんていえば…あ、あの、おめでとうございます…?」

華「いえ、私の方こそ、ありがとうございます」

みほ「え?」

華「(何故、今まで気づかなかったのでしょう)」

華「(私の戦車道は、優勝だとか、お母様に認めてもらうとか、そのためだけではなかったハズなのに)」

華「(…そう、全てはこの瞬間、この喜びのためにあるのですね)」

麻子「…何か、忘れていたことを思い出したみたいだな、五十鈴さん」

華「…あら、気づいていましたか」

沙織「さっすが学年主席ぃ!」

麻子「それはあんまり関係ないだろ」

優花里「五十鈴殿ぉ!あの砲撃、お見事でしたぁ!まさかあの戦車に勝てるなんて…!
    これは歴史的瞬間ですよぉ!あ、ギネス認定とかどうですか!」

沙織「ゆかりん、またアレな時の感じになってるよ?」

麻子「沙織も大概ひどいじゃないか」

華「…フフッ」

華「(…そうです。私だけではダメなんです)」

華「(このチームで、大洗のあんこうチームの一員として、私の戦車道はどこまでも続いていくのですね)」

華「…みほさん」

みほ「は、はい」

華「…これからも、よろしくお願いしますね」



 - 完 - 

以上です。ありがとうございました

某映画に影響されて、ラストシーンが書きたくなったので挑戦してみました
華さん主役SSもっと増えてください。沙織さんがなんでもしますから
ガルパンモノは初めてなんですが、戦車戦がホントに難しいですね…

本編は以上になります
最期にもう1レスだけ投下して、HTML依頼を発行してきます
ありがとうございました



【 次 回 予 告 】



…すまない。私はもうここまでのようだ


沙織「私、絶対あきらめないからね。麻子」


…私はもう、戦車には乗れない。乗りたくないんだ


みほ「…さよなら、麻子さん」


…さよならだ、西住さん



Girls und Panzer
 身魂の操縦手 -冷泉 麻子-

乙ー
さすがに元ネタ通り搗ち合って逸れた弾で致命傷を食らわすのは難しいか

>>48
特定早すぎィ!
流石に砲弾の挙動的にどうなんだとか、そういうのは三突の役目だろとか、いろいろ思ってボツになりました
次回とその次まで考えてはいるんですが、そっちはゼロから構築してます
いつになるかわかりませんが、よろしければそちらも是非お願いします

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom