「初手、5八飛」 (2)
また今日も、墜落しそうになりながら将棋を指した。
既に自玉には「詰めろ」がかかっており、下手な受けはなお寄る。
それでも、相手の喉からは苦しそうな投了の声が絞り出された。
「負けました……」
まで、108手を持ちまして、瀬名竜王の勝ちでございます。
そこまで心の中で言ってからようやく顔を上げる。
強かった。
得意の横歩取りだったはずなのに、何度も負けを覚悟した。
今日もまた自玉を顧みず、墜落しそうになりながら将棋を指した。
終盤の入りから既に火のつきまくった玉頭をぼんやりと振り返りながら、感想戦で駒を動かした。
いつかこうやって将棋を指しながら死にたい。
若手棋士の称号の外れない年齢の僕は、早くも自身の人生の終りを考えた。
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