不良「金が俺たちを狂わせたんだ……」 (29)
― 空き地 ―
不良「ほら、ここ! あんま目立たねーし、俺らの溜まり場にちょうどいいだろ」
DQN「へえ、たしかにいいな!」
ピアス「ここならヤバイ会話なんかもできるね」
金髪娘「でも、あんまり騒ぐと、近所の家の奴らがうるさいんじゃない?」
不良「ンな連中は怒鳴り返してやりゃいいんだよ」
金髪娘「それもそっかぁ」
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不良「にしてもこないだはスカッとしたぜ」
不良「俺がボコってやった隣校の奴、全治一ヶ月だってよ。ざまあねえや」
DQN「へへへ、あのヤロウ、最後には涙流してワビ入れてたもんな!」
ピアス「ヒュー、スカッとする話だねえ」
金髪娘「キャハハハッ! かっこい~!」
DQN「オレも学校の授業で寝てたらセンコーがキレてきてよ」
DQN「ちょっと机蹴りながらメンチ切ってやったら、ビビリまくってやがんの」
不良「教師なんてそんなもんだよなァ! だっせーの!」
ピアス「いいね、いいねえ」
金髪娘「あんな奴らにアタシらを叱る権利なんてないよねえ~」
ピアス「ボクもオヤジが耳に穴なんか開けるなってキレてきたから、一発ひっぱたいたら」
ピアス「二度といってこなくなったよ。チョロイね」
不良「やるじゃん!」
DQN「ピアスぐれーでつべこべいうなってんだよな!」
金髪娘「かっくい~」
金髪娘「アタシもさ、親がスカート短すぎ露出多すぎってうっさいから、キレてやった~」
金髪娘「んもう、ホントうざったいんだから!」
不良「余計なお世話だっつんだよな! 女なんか肌出してナンボなんだしよ!」
DQN「お前のスカート、まだ長いぐらいだし! ヒヒヒッ」
ピアス「親なんてうっとうしいだけだよね。ボクらを生んだってだけなのにデカイツラしてさ」
不良「世の中下らねえカスばかりだけどよ、これからも俺ら、ガンガン好き勝手生きてこうぜ!」
ピアス「そうさ! 今を楽しもう!」
DQN「グダグダ説教こいてくる奴は全員ブチのめしちまえばいいんだ!」
金髪娘「キャハハハハッ!」
不良「――ん?」
DQN「どうした?」
不良「あそこ……なんか落ちてる」
金髪娘「ホントだ! カバンじゃない?」
不良「どれ……ちょっと見てみるか」
不良「結構重いぞ、これ」ズシッ
DQN「開けてみろよ。なんかワクワクしてきた」
金髪娘「え~? でも爆弾とかだったらヤバくない? ほら今、テロとかチョー流行ってるし」
ピアス「爆弾なわけないよ。こんな空き地爆破したってなんの意味もないし」
金髪娘「それもそっか」
不良「じゃ……開けるぜ」ジーッ
不良「――な、なんだこりゃ!? 札束がいっぱいだ!」
DQN「すげえ大金じゃねえか!」
ピアス「この束が100万だとして、軽く数千万は入ってるよ、これ!」
金髪娘「ウッソー、偽札じゃないの!?」
不良「いや……透かしは入ってるし……本物っぽい」ピラッ
不良「おっ、手紙も入ってやがる。どれどれ……」
不良「えぇっと……“競馬で大儲けしたけど、なんだか怖くなってしまったので全部捨てます”?」
不良「プッ、こいつ頭おかしいんじゃねーの!?」
DQN「意味分かんねー!」
ピアス「なんのために競馬やってたんだろうねえ、このバカは」
金髪娘「キャハハハッ、信じらんなーい!」
不良「へへへ……だったら俺らでありがたく頂いちまおうぜ」
不良「こんだけありゃ、新しいメリケンサックが買えるな」
DQN「メリケンサックどころじゃねーだろ。バイクだって余裕で買えるぜ」
ピアス「ヤバイクスリに手を出したりもできるねえ」
金髪娘「アタシ、新しい服欲しーい!」
不良「そうがっつくんじゃねえよ。金は逃げねえんだからさ」
DQN「だけどよ、こんだけの金を目の当たりにしたら、どうしても……なぁ?」
ピアス「うん……ちょっと気がおかしくなるぐらい、当然のことさ」
金髪娘「アタシ、心臓チョーバクバクいってるんだけど!」
不良「だ、だよなぁ……!」ゴクッ…
不良「大抵のことは叶えられそうな大金が目の前にあるんだもんなぁ……」
不良「……そういやよ、こないだテレビで見たんだが」
不良「100円ありゃ、発展途上国のガキを5人救えるらしいぜ」
DQN「え、マジで!?」
ピアス「仮にここにある金を一千万円として、50万人救えるってことか!」
金髪娘「すっごーい!」
不良「50万って……かなりでかい都市の人口じゃねえか!」
不良「この金がありゃあ、都市単位のガキどもを救えるってことかよ! パネェな!」
DQN「いやいや待てよお前ら。他にももっといい使い道がないか、考えるんだ」
金髪娘「たとえば?」
DQN「たとえば――」
DQN「満足な教育を受けられないガキどものために、学校を建てることもできる!」
不良「おおっ、そりゃいいアイディアだ!」
ピアス「素晴らしいね!」
金髪娘「キャハハッ、チョーやるぅ!」
DQN「へへへ……だろ?」
ピアス「あ、そうだ。こんな使い方はどうだい?」
不良「どんなのだ?」
ピアス「この金を、新薬開発に取り組んでる団体に寄付するのさ!」
ピアス「そうすれば、難病や奇病から救われる人が大勢生まれる!」
不良「悪くねえな!」
DQN「いいねいいねえ!」
金髪娘「あの……アタシにも考えがあるんだけど……」
不良「おう、話してみろよ」
金髪娘「アタシは……貧しくてオシャレもできない子供たちにオシャレさせてあげたい!」
金髪娘「女の子なんかは特に……」
不良「おおっ、そういうのもいいな!」
ピアス「可愛い洋服やキレイなドレスに憧れてる女の子が多いだろうしねえ」
DQN「この金がありゃ、そんな夢も簡単に叶えられるってわけだ!」
金髪娘「うん、だけどさ……アタシふと思ったんだけど――」
金髪娘「どんな夢も、自分で稼いだお金で実現しないとなって気もするの」
不良「う……! たしかに……」
DQN「あぶく銭でなんか成し遂げても、結局その後が続かなそうだしなぁ」
ピアス「それに……このお金を捨てた人も、もしかしたら気が変わるかもしれないしね」
不良「よし……この金の使い道は決まったな」
不良「……交番に届けよう!」
― 交番 ―
警官「なんだこの大金は!? お前たち、まさか強盗でもしたんじゃあるまいな!?」
不良「んなことしてねーよ! クソポリが!」
警官「くっ……! まあいい、落とし主が現れなければ、お前たちの物に――」
不良「いらねーよ。もしそうなったら、寄付に回してくれ。んじゃな」スタスタ…
警官「お、おいっ!」
不良「ふぅー……交番に届けたらなんだかさっぱりしたな」
DQN「ああ、オレらにあんな大金はやっぱ似合わないぜ!」
ピアス「ボクらはボクらの手で、自分たちの未来を切り開いていこうよ!」
金髪娘「キャハハッ、みんなすっごいいいカオしてるよ!」
不良「……決めた!」
不良「俺……この腕っぷしを生かすためにも警察官になる!」
DQN「オレも……これからは頑張って勉強するよ! 教師になるんだ!」
ピアス「ボクも……薬の開発に関われる仕事を目指して勉強するよ!」
金髪娘「アタシもファッションデザイナーになる!」
――――――
――――
――
不良「試験に受かったぜ! これで不良はもう卒業……だな」
DQN「オレも大学に受かった! やればできるもんだな!」
ピアス「ボクも薬学科に合格したよ。これを機にピアスは外すよ」
金髪娘「アタシも有名なデザイナーさんに弟子入りできることになったの! 嬉しいっ!」
不良「フン、みんな目がキラキラしてやがる……」
不良「どうしてこんなことになっちまったのか……。きっと……」
不良「金が俺たちを狂わせたんだ……」
― おわり ―
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