佐藤心「夜の事務所でふたりきり」 (26)
心「ただいまー☆ レッスン終わったよ、プロデューサー♪」
P「おかえりなさい、心さん」
心「今日はきつかったぁ……やっぱマストレさんのレッスンはガチガチ☆ はぁとの筋肉もガチガチ☆」
P「もう日が暮れそうですからね。遅くまでお疲れ様です」
心「お、ねぎらっちゃう? ご褒美くれちゃう?」
心「はぁとねー、今度のお休みに連れてって欲しいお店があるの♪」
P「誰もご褒美あげるなんて言ってませんよ」カタカタカタ
心「ちぇー」
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心「プロデューサーは、まだ仕事終わってない感じ? パソコンと格闘中?」
P「はい。今日はだいぶやらなきゃならないことが積み重なっていて」
心「そうなんだ♪」
心「………」ニュッ
P「なんですか、画面のぞき込んで」
心「あっ、これはぁとの名前が載ってる! 次のお仕事とか?」
P「まあ、その辺のスケジュール管理も課題のひとつですね」
心「ふーん♪ いやぁ、はぁとも最近売れっ子だからスケジュールの調整にも一苦労ってやつ?」
P「ええ、うれしい悲鳴です」
心「うふふ☆ ぐふふふふ☆」
P「笑い方、気持ち悪いですよ」
心「ところでシャンプー変えたんだけど、どう? いい匂いする?」
P「すごい話題転換だ」
心「頭近づけてるんだから、香りとかするでしょ♪」
P「……あざとい」
心「あざとくない☆」
P「好きな香り」
心「ありがと☆」
P「………」
P「………よし」
心「終わった?」
P「いえ、ひとつ片付いただけです。まだ何個か残ってます」
心「そっか」
P「というか、心さんは何してるんですか」
心「テキトーにファッション誌読んでる♪」
P「帰らないんですか」
心「んー……」
心「ねえ、プロデューサー」
P「?」
心「今夜は、帰りたくないの……」
P「なに恋愛ドラマみたいなこと言ってるんですか」
心「いっぺん言ってみたかったの☆」テヘペロ
P「はあ」カタカタカタ
心「ほらほらぁ、プロデューサーも乗ってきて♪」
P「ほう」
心「たまにはお芝居するのも楽しいよ?」
P「へえ」
心「女の子が恥じらいながらダイタンなセリフ言ってるんだから」
P「女の子?」
心「さっきまで生返事だったくせにそこだけ反応すんなおまえー!」ペシペシ
P「痛い痛い」
心「まったく、失礼しちゃう☆」
心「女はいくつになっても、恋をしているときは女の子になれるんだぞ☆」
P「恋、してるんですか?」
心「………」
心「た、たとえばの話ね?」
P「いやでも自分で自分のこと女の子だって言ってたし」
心「それはお芝居の設定上の話なのぉ!」
心「突っ込んじゃらめぇ♪ らめぇ~~☆」イヤンイヤン
P「ごまかし方がエロいです」
心「らめなのぉ☆」
P「とりあえず、俺はまだ仕事中なのでもう少し静かにしてもらえると」
心「あ、はい。すんません」
P「………」カタカタカタ
P「……ん~~っ。あー、肩が凝ってきた」
心「まだ終わんない感じ?」
P「ええ。まだですね」
心「もう7時だよ? 日も完全に沈んじゃったし」
P「しょうがないですよ、たまには残業も」
P「それより、心さんはいつ帰るんですか?」
P「雑誌も読み終わって、暇してるみたいですけど」
心「え? あー、うん」
心「……そうだ! プロデューサー、肩揉んであげる♪」
P「いいんですか?」
心「うんうん☆」
心「さっき読んだ雑誌に、ちょうどマッサージの記事があったから」
心「むしろこっちが試させてほしいな♪」
P「では、お言葉に甘えて」
心「じゃあ、ムチ持ってくるから待っててね♪」
P「およそマッサージでの用途がわからないブツの名前が出てきてるんですが」
心「ここでマッサージとかけまして、SMプレイとときます」
心「………」
P「………」
心「………」
P「……その心は?」
心「どちらもキモチよくなるでしょう☆」
P「50点」
心「やん♪ きびすぃー☆」
P「だいたい、アイドルの事務所にムチが置いてあるわけ」
心「時子ちゃん」
P「……ありますね」
心「どう? 気持ちいい?」
P「はい。はぁ~……」
P「心さん、肩揉むの上手ですね」
心「小さい頃は、パパの肩を毎日揉んであげる娘だったんだぞ♪」
P「へえ。それは親孝行な」
心「今は、アイドルなんて安定しない職に就いちゃってるけどな☆ 迷惑もたくさんかけたし」
P「安定しないのは事実ですけど、時々テレビで頑張ってる姿を見せられているんだから、十分親孝行ですよ」
心「そうかな」
P「俺はそう思いますよ」
P「もし、まだ足りないと思うなら……今よりもっと上を目指して、毎日テレビに映るくらいのアイドルになりましょう」
心「……ふふ、そうだね♪」
心「よーし、頑張るぞ!!」グリグリ
P「いっ!? 痛い痛い痛い!」
心「あ、ごめん! つい力が」
P「………」
P「………」グ~~
心「あ、お腹の虫が鳴ってる♪」
P「みたいですね。確かに、腹が減ってきた」
P「何か食べようかな……あ」
心「どうしたの?」
P「この部屋、ちょうど食料がほとんど切れていることを思い出しました。お菓子とかもなくなっていて」
心「あ、そうなんだ。じゃあ、出前でもとる?」
P「出前か……割高だけど」
心「腹が減っては戦ができぬ、でしょ? それに、今から近くのコンビニ行くのも疲れるだろうし♪」
心「さあさあ、なに頼む? おいしそうなのたくさんあるぞ☆」
P「心さん。一番は自分が食べたいからじゃないんですか?」
心「突っ込んじゃらめぇ♪」
P「気に入ったんですかそれ」
心「ピッツァ頼もうよ、ピッツァ! ここにチラシあるし」
P「ピザ? まあ、出前としては定番ですね。確か店も割と近いところにあったはずだし」
P「それにしますか」
心「やった♪ ピッツァだ♪」
P「発音」
心「ゴルゴムゾーマ頼んじゃう?」
P「光と紗南に影響受けてますね」
心「ん~~♪ ピッツァおいしい☆」モグモグ
P「ゴルゴンゾーラ、普段食べないけど意外とイケますね」
心「でしょ?」
P「栄養補充もできたし、もうひと頑張りしますか」
心「あれ? もういいの?」
P「あんまり食べ過ぎると眠くなっちゃいそうなので」
P「腹八分目で止めておきます」
心「あはは、まるで子どもみたいだー♪」
心「じゃあ、はぁとが残り食べておくね。今週の消費カロリー的に、このくらいは食べてもいいはずだし♪」ハムハム
P「お願いします」
P「………」カタカタカタ
P「………」カタカタ、ターンッ
P「ふう。やーっと全部終わった」
P「心さん、俺も帰るのでそろそろ……」
P「……そういえば、さっきからずっと静かだな」
P「心さん?」
心「すー……すー……」スヤスヤ
P「……ソファーで寝ちゃってたのか」
P「心さん。起きてください」
心「んぅ……きすみーぷりーず……」
P「アイドルの寝言としてそれはどうなんだろう」
心「んぁ……P……?」ポワポワ
P「起きましたか。もう9時前ですよ」
心「あ……私、寝ちゃってた?」
P「ええ、それはもうぐっすりと」
心「そっかー……はは、自分がお腹いっぱいになって寝ちゃうなんて」
P「まるで子どもみたいですね」
心「あー、さっきのはぁとのセリフ、覚えてたな?」
P「コーヒー淹れたけど、飲みます? 眠気覚ましにちょうどいいですよ」
心「ありがと」
心「……うん、あったかい」
P「淹れたてですから」
心「プロデューサーの前だと、たまーに童心に帰っちゃうことがあるんだよね☆」
P「割といつも子どもっぽいような」
心「黙っとけ☆」
心「なんていうか、アレだよね」
心「プロデューサーと一緒にいると子どもに戻るってことは、ひょっとして昔を思い出させるものがプロデューサーにあるのかも?」
P「昔を思い出させるもの?」
>>11 修正
心「でもホント、子どもみたい♪」
心「プロデューサーの前だと、たまーに童心に帰っちゃうことがあるんだよね☆」
P「割といつも子どもっぽいような」
心「黙っとけ☆」
心「アレだよね」
心「プロデューサーと一緒にいると子どもに戻るってことは、ひょっとして昔を思い出させるものがプロデューサーにあるのかも?」
P「昔を思い出させるもの?」
心「もしかして……小さい頃、すでに出会っていたとか!」
心「かつて遊んだことのある想い出の男の子と運命の再会……いやあん、スウィーティー☆」
P「それはスウィーティーというかロマンが過ぎませんか?」
心「でもありえなくはないでしょ? はぁと、小さい頃に遊んだ男の子の名前、全部覚えてるわけじゃないし」
心「閉ざされた記憶の向こうに、約束の彼との真実が……」
P「ないない」
心「もう、ノリ悪いぞプロデューサー!」ブーブー
P「もし会ったことがあるなら、俺のほうが忘れませんよ。心さんみたいな人」
心「えっ」
心「そ、それはもしかして、こんな美少女の姿を忘れるわけがない的な」
P「絶対ガキ大将タイプだっただろうから、会ってたら忘れないです」
心「そういうことだろうと思ったわ☆」
P「はは……さて。コーヒー飲み終わったら、そろそろ帰りましょうか」
心「うん♪」
P「歩きですよね? 駅まで送りますよ」
心「さっすがプロデューサー♪ イケメン☆」
帰り道
心「今日は星がよく見えるね♪」
P「一日中晴れでしたからね。今も雲ひとつなさそうだ」
心「どれがなんの星座とかはよく知らないけど、なんとなく眺めているだけでも楽しいよね♪」
P「俺も、夏の星座だとさそり座と夏の大三角くらいですかね。自信あるのは」
P「それでも、たまにはぼーっと星を眺めるのもいいかもしれませんね」
心「だね☆」
心「そうだ。だったら今度、長野に遊びに来る? 東京よりも空が綺麗だぞ☆」
P「長野かあ」
心「宿代はタダですむし」
P「タダ? それってまさか」
心「にこにこ」
P「麻理菜さんの実家に泊めてもらうんですか?」
心「ウチに来いよ! なんでマリナルの家に行こうとするの!?」
P「心さんの実家ですか。そういえば、まだうかがったことがなかったですね」
P「わざわざお母さまが東京に来てくれた時に、挨拶はさせていただきましたけど」
心「周りなんにもないけど、いいところだよ♪ 空気もおいしいし♪」
P「それは魅力的ですけど、担当アイドルの実家に泊めてもらうのはどうなんだろう」
心「かたいこと言うなって♪」
心「それか、泊まるのがダメなら、ご飯だけでもどう? ウチのママの料理、おいしいぞ♪」
P「ご飯ですか。……まあ、そのくらいなら」
心「やった!」
心「いつにする? 来週?」
P「そんないきなり行けるほど暇じゃないでしょう、心さん」
P「スケジュール、結構カツカツなんだから」
心「てへぺろ☆」
心「………」
P「心さん?」
心「……そうだよね。はぁと、暇じゃないんだよね」
心「総選挙、9位だったし。人気、出てきてるんだよね」
P「出てきてるなんてものじゃないですよ。もう立派な人気アイドルです」
心「……そっか」
心「へへ……うれしい」
P「俺もうれしいです。あなたの努力を近くで見てきたつもりですから」
P「心さんの積み重ねてきたものが、たくさんの人に伝わっている。やっぱり、達成感はあります」
心「そうだね♪」
心「……でも、はぁとだけじゃないよ」
P「?」
心「ついやりすぎちゃうアイドルシュガーハートを、ずーっと支えてくれて、一緒に走ってきてくれた人」
心「プロデューサーの努力や積み重ねも、ちゃんと見てきたんだから」
P「心さん……」
心「だから……うん」
心「サンキュー、プロデューサー☆」
心「これ、あげる♪」
P「この箱は……」
心「ネクタイ。新しいの欲しいって、この前言ってたでしょ?」
心「はぁとの感謝の気持ち、受け取っておくれ☆」
P「あ、ありがとうございます……」
心「なんだよ、もっと喜べ☆」
P「いえ、すみません。突然渡されたものだからびっくりして」
P「うれしいです。というか、こっち、まだなにも用意してなくて。すみません」
心「いいのいいの、はぁとが勝手にあげただけなんだから♪」
心「ていうか、『まだ』ってことは」
P「……一応、お祝いの品は考えていまして。まだ決め切れていないので、手元にはないんですけど」
心「本当? それは楽しみにしておかないと♪」
P「あんまりハードルあげないでくださいよ」
心「楽しみ~、楽しみ~♪」フンフンフーン
P「はあ……わかりました。存分に期待しておいてください」
心「おう☆」
心「はぁとも、今回は既製品だけど、クリスマスあたりには手作りのマフラーとかあげちゃうつもりだから♪」
P「もうすぐ駅ですね」
心「そうだね……はあ」
P「どうしたんですか、ため息なんてついて」
心「ああ、うん。やっと渡せたなあと思って」
P「このネクタイですか?」
心「そうそう♪ 朝からずーっと機会うかがってて、でもなかなかタイミングがつかめなくて」
P「もしかして、今日夜まで残ってたのは」
心「そういうこと♪」
P「渡すタイミングなんていくらでもあったじゃないですか。わざわざこんな時間までいる必要なかったのに」
心「それはそうなんだけどさ……ほら、なんていうか」
心「こう、改まって感謝の気持ちを伝えますーってなると……照れくさくて」アハハ
P「……心さん、そういうところは不器用ですよね」
心「ほっとけ☆」
心「おかげで美女と一緒に夜道を帰れることになったんだぞ? 感謝しろよ☆」
P「はいはい、ありがとうございます」
心「それでよし♪」
心「ありがとう♪ 駅まで送ってくれて」
P「大したことじゃないですよ。どうせ俺、家近いですし」
P「明日は休みですよね」
心「久しぶりの休みだー☆」
P「ゆっくり睡眠をとってください。また明後日から頑張ってもらうので」
心「任しといて♪」
心「プロデューサーは、明日も仕事?」
P「はい」
心「そっか。がんばってね☆」
P「ありがとうございます」
心「じゃあ、そろそろ電車出るから行くね」
P「気をつけて帰ってください」
心「うん♪ またね!」
P「また」
P「………」
P「さて、俺も帰るか」クルリ
心「プロデューサー!」
P「はい?」
心「明後日からも、はぁとのプロデュースをよろしく!」
心「Pじゃなきゃ、ダメなんだからなー!」
P「………」
P「はい、もちろんです!」
心「よーし!」
心「じゃあ、また!」
P「………」
P「……頑張ろう」
P(彼女と別れ、ひとり家路へ)
P(残業帰りのわりに、不思議と足取りは軽く)
P(それはきっと、彼女のスウィーティーな贈り物のおかげなのだと思った)
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
佐藤心さん、ボイスおめでとうございます。脳がとろけました。
なんとか自引きしたので僕は幸せ。
今後の一層の活躍を願っています。
過去作
橘ありす「Pさんが誕生日にイチゴしかくれなかった」
橘ありす「雪美さんがスマホを片手にうろうろしています」
佐藤心「不器用はぁと」
などもよろしくお願いします
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