みほ「会長のだいしゅきホールドの腰の感触が忘れられない」 (124)



ガルパンSSです。

※百合要素あり。苦手な人は注意


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1468845015


みほ(あの感触……小さくて可愛い会長の華奢な腰………柔かくてあたたかくて、思い出すだけでドキドキするしワクワクする)

みほ(両足でがっしり抱きつく『だいしゅきホールド』だっけ?見事すぎるよ)ハァ..

みほ(あぁ……会長の腰の感触に思いを馳せてると、その日の天気も勉強も、西住流だってどうでもよくなっちゃう。理念も礼儀も今後も全部。お姉ちゃん頑張って)

みほ(はぁぁ……会長の腰に勝てるものはこの世にないかも。あっ、ボコの可愛さならあるいは………………ううん、やっぱり会長の腰に軍配が上がる)

みほ(どうにかしてもう一度、会長に抱きつかれたいけど……どうすればいいんだろう)

みほ(正直な話、私と会長は戦車道の練習とか試合だと普通に話すけど、普段学校で会ってもそんなに会話しない……というか、最初に出会った時の印象が怖かったから、少し苦手だったんだよね……)

みほ(でも、戦車道の試合を経て、絆は確実に深まってるはずだし、今の私は腰の虜。少しくらいの怖さや恥ずかしさは跳ね返せるよ、きっと)ウンウン

みほ(とはいえ、いきなり『だいしゅきホールドしてください』なんてお願いしたら常識を疑われちゃう。段階を踏まないとダメだよね)

?「おー、西住ちゃんじゃん」

みほ「え?」

杏「やっほー。元気してる?」

みほ「か、会長!?」

杏「んぁはは。元気いーね」

みほ「は、はい………………」チラ

みほ(手を伸ばせば届くくらいの位置に会長の腰が……)

みほ(あの腰が私のお腹にくっついたんだよね)ゴクリ

杏「ん?どこ見てんの?」

みほ「!!」

みほ(いけない!つい凝視しちゃった!)

杏「……あぁ~、そゆこと」ニヤリ

みほ「え、ええと……///」

みほ(勘付かれちゃった!?)

杏「しょうがないなー」

みほ「え?」

杏「そこまで見つめられちゃあ仕方ない。西住ちゃんにあげるよ」

みほ「!!!」

みほ(あげる……!?まさか会長の腰を私の好きにしていいってこと!?人生、こんなに思い通りにいっていいの!?今年はなんなの!?いいことばかりだよぉ)

みほ「じゃ、じゃあ……遠慮なく……」

杏「ほい、どーぞ。じゃーん」

みほ「……………え?」

杏「私が干し芋をあげるなんて滅多にないよー?」ニコニコ

みほ「干し……芋?」

杏「しっかし西住ちゃんも目ざといねー。スカートのポケットのふくらみで干し芋入れてることに気付くんだもん。んまぁ、だからこそ戦車道で活躍できるのかな。視野広いってことだし」アハハ

みほ「………………」

みほ(腰を見つめてたんだけど……ポケットを見てたと勘違いされたみたい)

>>1 です
スレ立てはスマホでしました
このあとはPCで書き込みます


杏「…あり?干し芋いらないの?」

みほ「あっ、いえ、いただきます。ありがとうございます」

杏「あいよー」

みほ「……早速いただきますね」パク..モグモグ

みほ(ちょっとあったかい………って、スカートのポケットに入ってたということは、会長の腰の近くで温められてた干し芋……)

みほ「…………美味しいです。会長の」

杏「でっしょ?ここの干し芋ほんっと美味しんだよねぇ。にひひ」スッ

みほ「あ……」

みほ(会長が両手を頭の上で組んだせいで、制服の裾が上がって、お腹が………お、おへそが見えそうで見えない)ドキドキ

杏「私がハマるのもわかるっしょ?」

みほ「はい……わかります。細くてかわいいです……」ジー

杏「へー、干し芋がかわいいって変わった感想だね。ま、西住ちゃんっぽいけど」アハハ

みほ「ありがとうございます…………」ジー

杏「さてと」スッ

みほ(あっ、手下ろしちゃった……せめて一分間は欲しかったなぁ。残念だよ~)ハァ

杏「私は生徒会の仕事があるから、またね~」バイバイ

みほ「はい。干し芋ありがとうございました」

杏「あいよ~」テクテク..

みほ「………………行っちゃった」

みほ(会長のこと考えてたら急に現れたからビックリしたなぁ)

みほ(でも……干し芋美味しいし、お腹可愛かったし、収穫はあったよね)ウンウン

みほ(想像じゃない、生の会長を見て、改めて会長の腰の感触を味わいたい気持ちを再確認できたよ)

みほ(どうにかしてもう一度だいしゅきホールドをしてもらおう!)

みほ「よぉし…………くっつき作戦、開始です!パンツァー・フォー!」オー!


みほ「………………」

みほ(まず最初に確認しておかないといけないことがある。それは、会長以外の人の腰の感触について)

みほ(私の記憶では、会長の腰が至高という風にインプットされてるけど、考えてみれば会長以外の人にあんな風に抱きつかれたこと、あんまりないんだよね…)

みほ(だとすると、会長以外の人でも同じくらいトリップできるかもしれない)ウンウン

みほ(そうと決まれば、試してみよう。まずは頼みやすい人から………)




沙織「みぽりん、お願いって何?」

みほ「えっとね、いきなりこんなこと言われたら驚いちゃうかもしれないんだけど…」

沙織「なになに?」

みほ「沙織さんの腰の感触を味わいたいの。だから腰を私のお腹にくっつけてくれないかな?」

沙織「え、えええええ!?急に何を言い出すのみぽりん!?」

みほ「うん。驚くのはわかるよ。でもお願いしたいの」

沙織「いや、おかしいよそんなの!っていうか恥ずかしいし……///」

みほ「………………」

みほ(予想通り、最初は断るよね。でも沙織さんの場合は……)

みほ「え?でもこれってモテるためには常識だよね?」

沙織「………え?」

みほ「沙織さん知らないの?壁ドンがブームになったけど、今は腰ピトが流行ってるんだって」

沙織「腰ピト………?」

みほ「うん。腰をお腹にピトッとつける。相手はあなたに恋をする」

沙織「恋!?」ドキーン!

みほ「だから、ね?私のことは練習相手だと思って。私、沙織さんのこと応援してるから」

沙織「そ、そう?みぽりんがそう言うなら……」

みほ「じゃあ始めよう。私は立ってるから、少し助走をつけて私のところまで来て。そして両足を広げてジャンプして、私のお腹に腰がぶつかると同時に両足で私の体をロックする感じで…」

沙織「……わかった。じゃあ行くね!」タタッ

みほ(来る……)ドキドキ

沙織「っ!」ダンッ!

ドシッ!

みほ「ごふぅ!?」

沙織「あ」

みほ「…………!!」ズザーーーーッ!!

沙織「み、みぽりん!?ごめん、強く当たりすぎちゃった!足で捕まる前にふっ飛ばしちゃったよー!」

みほ「………だ、大丈夫だよ」ムクリ

みほ(失敗……会長と沙織さんの体重差を考慮してなかった。身構えないまま待ってたのもダメだよね。腰の感触を楽しみたいっていうバカンス気分が仇になっちゃった)

沙織「ごめんね~」ウゥ..

みほ「安心して沙織さん。私は平気だから。それと、体重もそんなに重くないから気にしないで。私が踏ん張れなかっただけで、沙織さんが重いとか太ってるとかじゃないから」

沙織「そんな言われ方したら気にするよー!」

みほ「今度は私座るから、お腹の上にまたがってもらえるかな?」

沙織「えー!?みぽりんのお腹に乗るの!?すっごい恥ずかしくない!?」

みほ「それら諸々を含めて、結果モテるみたい」

沙織「…………そ、そっか。じゃあやろう」

みほ「ありがとう」スッ

沙織「あっ、そのまま座ったら制服が汚れちゃうよ?このハンカチ使って」

みほ「ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。でも私は気にしないから大丈夫」


沙織「でもー……地面に直に座るのって女子的に…」

みほ「」ササッ

沙織「言い終わる前に!」

みほ「…………さ。お腹にまたがって」

沙織「う、うん………じゃあ、失礼しまーす…………重かったらごめんね?」

みほ「今度は覚悟してるから耐えられるよ」ニコ

沙織「重くないよって言ってほしかったなー。よいしょ」ノシッ..

みほ「ん……」

みほ(うーん……感触は悪くないんだけど……会長に比べたら全然……)

沙織「………………」

みほ「………………」

沙織「……み、みぽりん、平気?重くない?」

みほ「鍛えてるから平気」

沙織「やっぱり重いは否定してくれない……」ズーン..

みほ「…………もう大丈夫。ありがとう、沙織さん」

沙織「あ、うん」スッ

みほ「よいしょ」スクッ

沙織「みぽりん、砂ついてるよ」サッサッ

みほ「ありがとう」

沙織「……それで、どうだった?」

みほ「え?」

みほ(どうって言われても……)

みほ「ええと………………沙織さんらしかったよ?」

沙織「どういうこと!?体重が私らしいって!」

みほ「そういう意味じゃないんだけど……」

みほ(……でも少し疑問は解決したかも。誰の腰でも同じ感触じゃないってわかった。ただ沙織さんと会長じゃ身長は10cm以上違うし、体格差があるからかもしれない。次はその辺を少し調整しよう)

みほ「……沙織さん」

沙織「なぁに?」

みほ「麻子さんってどこにいるか知ってる?」

沙織「麻子?知ってるけど………もしかして麻子にも同じことさせようとしてるの?」

みほ「うん、お願いしたいなって」

沙織「なんで?」

みほ「なんでって……」

沙織「抱きつくのがモテなのはいいよ?でもそれとは別に、どうしてみぽりんが抱きつかれようとしてるのかがわかんない」

みほ「…………」

沙織「目的はなに?」

みほ「………………」

みほ(……普通なら誰にも言わない方がいいと思う。でも沙織さんだったら……)

みほ「実は……――――」


沙織「……なるほど」

みほ「この気持ち、わかる?」

沙織「んー……あれでしょ?猫の肉球触ると気持ちいい、的な」

みほ「そうなのかな……でも似てるかも」

沙織「それが同性の腰っていうのはちょっと引っかかるけど……みぽりんが積極的に動こうとしてるんだし、協力したいなって思うよ」

みほ「ありがとう!沙織さん、痩せてるよ!」

沙織「このタイミングで言われても嬉しくないよ!?絶対嘘じゃん!」

みほ「でも本当に嬉しい。心強いよ」

沙織「みぽりんには戦車道でいつも助けられてるからね。お安い御用だよ♪それにみぽりん、戦車道以外だと結構抜けてるから心配だしね」

みほ「ぬ、抜け……?そんなことないと思……いたいけど……うーん……」

沙織「まぁまぁいいじゃないの。じゃあさっそく麻子のところに行こう」

みほ「あ、うん」


【麻子の部屋】

みほ「お邪魔します……」

沙織「鍵が開いたままなんて不用心だなぁ、もう……」

麻子「ZZZZZZ…」

沙織「しかも寝てるし」ハァ

みほ「でも都合がいいかも。寝てる間なら腰をお腹に押し当てても気付かれない」

沙織「怖い発想だねみぽりん……」

みほ「ご、ごめんなさい。でも麻子さんに真っ向からお願いしても断られそうで…」

沙織「んー……確かに。じゃあ寝てる間にやっちゃおっか?」

みほ「はい!」

沙織「じゃあみぽりん、麻子の前に座って」

みほ「よい、しょ」スッ

沙織「で、私はみぽりんの後ろから麻子の両手を持つね。みぽりんは両足を持って。二人でタイミングを合わせて引っ張ろう」

みほ「わかりました」

沙織「よし、いくよ?せーの……」

みほ・沙織「おーえす、おーえす」

麻子「ZZZZZZ…」スーッ..

ピト

みほ「……!」

みほ(麻子さんの腰が…)ゴクリ

沙織「麻子の両手をみぽりんの背中に回して、っと」

みほ「ありがとう沙織さん。あとは私がやるよ。麻子さんの足を揺らして感触を縦横無尽に味わうから」

沙織「そ、そう……」

みほ「……………………」ユサユサユサ

みほ(会長同様、小柄で細身な冷泉さん。腰は細いし、柔らかい………でも………会長とは感触が違う……同じような体型でもこうも違うんだ)


麻子「ZZZ……ZZ…………」ユサユサユサ

麻子「………………?」ユサユサユサ

麻子「なんだ…………?体が………揺れてる………一体何が………」パチッ

みほ「……………………」ユサユサユサ

麻子「うわああああああああああ!!!!!!」

みほ「っ!」ビクゥ

沙織「ひっ!?」ドキッ

麻子「に、に、に、に……西住さん!?何故西住さんが部屋に!?何故両足を!?」

みほ「おはようございます」

沙織「お、おはよー、麻子」

麻子「はぁ、はぁ、はぁ……」

みほ「あ。足は離しますね。ごめんなさい」パッ..

麻子「び…びっくりした…………目を開けたら無言で私の足を揺らし続ける友人……悪夢に近いぞ」ブルッ

沙織「確かに……怖いかも」

麻子「かもじゃない。怖いに決まってるだろう!大体、どうして二人とも部屋の中にいるんだ」

みほ「鍵が開いてたので。こそどろ作戦です!」

麻子「こそどろ!?」

沙織「みぽりん何言ってるの!?安心して麻子。何も盗ってないから!」

麻子「………今後、私は二度と鍵をかけ忘れることはないだろう。それぐらい怖かった」

みほ「ご、ごめんなさい」ペコリ

麻子「いや……いい。それよりもわけが気になる。どうしてこんなことをしたのか。沙織はともかく、西住さんが単なる悪ふざけでこんなことをするとは思えないからな」

沙織「なんで私ならともかくなのよー。私が麻子を何度起こしてあげたかわかっ…」

みほ「沙織さん。ここは静かにしてた方がモテるよ?」

沙織「え、そう?じゃあ黙る」

麻子「では西住さん、説明を頼む」

みほ「はい。ええとですね……理由自体はシンプルなんですけど……――――」


麻子「………そうか」

みほ「はい」

麻子「理解できないこともない。西住さんのそれは人が持つ様々な嗜好のうちの一つだろう」

みほ「ですよね!」

沙織「…………」チョイチョイ

みほ「?なんですか?」

沙織「…………」ンー(口を指さす)

みほ「あぁ、喋ってもモテるよ、沙織さん」

沙織「ぷはー!良かった!って、麻子はみぽりんの話を聞いて、全然驚かないんだね?」

麻子「あ、ああ」

沙織「私は聞いた時すっごくビックリしたけどねー!」

麻子「普通に考えればそんなにおかしなことじゃないからな。例えば、ソファーの隙間に指を差し込むのが好きな人とそうでない人がいる。そういった類のものだ」

沙織「えー?でもイケメンとならともかく、女の子だよ?女の子と腰をくっつけるのって結構変わってると思うけど……」

みほ「………………」フゥーー....

沙織「あ、みぽりんが変って意味じゃなくって!」アセアセ

みほ「…………大丈夫。私、沙織さんのそういう素直なところ好きだから」ニコッ

沙織「そ、そう?いやー、照れ…」

みほ「…モテるかどうかは別だけど」

沙織「ええっ!?もうみぽりんったら意外と辛辣なんだから……」

麻子「変わっていると言われたら誰だっていい気分はしないだろ」

沙織「うーん………でもさ、麻子。もし私が麻子に『抱きついてほしい』って言われたらする?」

麻子「え?」

麻子「お、お前……」

麻子「……っ……ば、バカなこと言ってるんじゃない……///」

沙織「?どしたの、麻子。顔真っ赤だけど…」

麻子「う、うるさい!」

沙織「何故か怒られた……」


みほ「……なるほど……」フム

みほ(あの反応、そして表情……どうやら麻子さんは沙織さんのことが好きみたいだね)

麻子「!」

麻子「に、西住さんが考えているようなことは一切ないぞ?」

みほ「………わかりました。ではお互い協力して頑張りましょう」

麻子「協力?」

みほ「はい。私の目的の為に力を貸してください」

麻子「いや、私はもう寝たいと……」

みほ「あー……そう、ですか………………」チラ

沙織「?」キョトン

麻子「ま、待て!何を企んでいる!」

みほ「え?いえ、私はただ目を動かしただけですけど……」

麻子「……………………」

みほ「……………………」

麻子「……わ、わかった。協力する」

みほ「わぁ、ありがとうございます!」

麻子(このやり方、これも西住流なのか?)

沙織「…………よくわかんないけど、麻子も手伝うんだ?」

麻子「ああ、そうせざるを得ない」

沙織「?あ、そだ。みぽりん。言っておくけど、私はみぽりんの趣味?は変わってるって言ったけど、否定はしないからね!むしろ協力するよ!」

みほ「ありがとう沙織さん」

沙織「うん!」

みほ「……………………」

沙織「……………………」

みほ「……………………」

沙織(『協力するところがモテる』とか言ってくれないのね………変って言ったの意外と根に持ってたり?)ウーム

麻子「……それで?協力と言ったが、何をすればいいんだ?」

みほ「そうですね……うーん」

麻子「私と同様、生徒会長と似た体格の子を狙うか?身長的にはアヒルさんチームの磯辺さんが143cmで会長と1cmしか違わないぞ」

みほ「それもいいんですけど、麻子さんも145cmで会長とそれほど変わらないのに、感触は全然違いました……となると、磯辺さんも同じ結果になりそうです」

麻子「確かにな」

沙織「えー?そんなのわかんなくない?寝てばっかの麻子より、会長とか磯辺さんの方が引き締まってるだろうしさー」

麻子「失礼だぞおい。私はよく寝るが体型は維持している。それに生徒会長だって干し芋ばかり食べてグータラっぽい」

沙織「どっちにしてもさ、ダメ元で試してみよーよ」

みほ「……うん、そうだね」

沙織「じゃあ学校に行こう!」


【大洗女子学園】

麻子「………アヒルさんチームいないな」

みほ「そうですね……」

沙織「どこかでバレーの練習してるのかな?」

優花里「あれ?西住殿!?武部殿に冷泉殿も」

みほ「優花里さん?」

優花里「どうなさったんですか?お休みの日に三人揃って」

麻子「アヒルさんチームの磯辺さんに用事があってな」

沙織「ゆかりん、磯辺さん見なかった?」

優花里「アヒルさんチームの皆さんなら、ついさっきロードワークをすると言って出かけましたよ。かなりの距離を走るつもりみたいでした」

みほ「うーん……それじゃあ帰ってくるのは遅くなりそう」

麻子「当てが外れたな」

優花里「お役に立てず申し訳ありません」

沙織「ゆかりんが謝ることないって。あ、そうだ。ねえ、みぽりん」

みほ「なぁに?」

沙織「ゆかりんのも確かめようよ」

みほ「え?」

麻子「体格が全然違うぞ」

沙織「それでも!一応やって損はないでしょ?」

みほ「………そう、だね。うん、お願いしてみようかな」

沙織「うんうん」

優花里「?」

みほ「……あの、優花里さん」

優花里「はい!なんでありますか西住殿!」

みほ「だいしゅきホールドって知ってる?」

優花里「だいしゅ……??すみません……そのような作戦名は知りません。未熟者で申し訳ありません西住殿……」

みほ「あ、違うんだ。あのね、だいしゅきホールドっていうのは……――――」


優花里「な、な、な、なんと……そのような行為があったとは……さすが西住殿!戦車道以外の知識も豊富ですね!すごいですぅ!!」

みほ「それで、優花里さんがよかったらなんだけど、私にだいしゅきホールドしてくれないかな、って」

優花里「おおっ!なるほど!私が西住殿に抱きつけばいいのですね!」

みほ「うん」

優花里「そして両足で西住殿の腰をロックして密着する感じで、そして抱きしめるんですね!」

みほ「そうだね」

優花里「わかりました!不肖、秋山優花里!精一杯だいしゅきホールドを………って、ええええええええええええっ!!?」

みほ「?」

優花里「こ、これ、ものすごく恥ずかしいじゃないですかぁ~~~!!!」

沙織「気付くの遅いね」

麻子「全くだ」

優花里「に、西住殿に抱きっ……そ、そ、そ、そんなことできません~~~~~っ///」

優花里(確かに私は西住殿を尊敬してます!というか……好き、ですけど……///)

みほ「そう、だよね。うん、急に変なことお願いしちゃってごめんね」

優花里「!」ハッ..

優花里(しまった……恥ずかしさのあまり、強く拒絶してしまいましたが、よく考えたら西住殿に抱きつけるチャンスではないですか!!これをみすみす逃すわけにはいきません!!)

優花里「あ、あのっ!!」

みほ「?」

優花里「やっぱり…その……だ、だいしゅきホールドをさせてもらってもよろしいでしょうか!」

みほ「………いいの?」

優花里「はい!ビックリして断ってしまいましたが、西住殿のお願いとあれば、私が拒むことはありえません!」

みほ「優花里さん……ありがとう」

優花里「い、いえ……///」

沙織「さっすがゆかりん。忠義の塊だねっ」

麻子「………………私もあれぐらい素直だったらさっき……」ボソッ

沙織「?麻子、なんか言った?」

麻子「何も」

優花里「では……い、行きます。準備はよろしいでしょうか?」

みほ「うん。こっちはバッチリ」

優花里「あの、もし重くて抱えきれないと思ったら、躊躇なく地面に叩き付けていただいて結構ですから!」

みほ「し、しないよ。そんなひどいこと」

優花里「西住殿……相変わらず優しいですぅ……///」


みほ「抱きついた時、バランスが崩れて倒れそうになったら、途中でやめていいからね?」

優花里「了解であります!それでは……いきます」タタッ

みほ「…………」

優花里「破ッ!」バッ

ダキッ

優花里「////」

みほ「………………」

優花里(あぁぁぁ……夢にまで見た西住殿との抱擁……祝砲が聞こえますぅ……///)

みほ(うーん…………柔らかいし、いい感触ではあるんだけど……なんか違うかなぁ)

優花里(西住殿がこんな近くに………うぅ……幸せです!)

みほ「優花里さん、ありがとう」

優花里「あっ、はい」スッ

優花里(幸せな時間は過ぎるのが早いとはこのことであります……しかし!楽しみはまだまだこれから!)

優花里「………では、今度は西住殿の番ですね!私は準備万端です!!いつでもどうぞ!!」

みほ「え?」

優花里「……あれ?」

沙織「抱きつくのはゆかりんだけでいいんだよ?」

優花里「!!!」

優花里(そんな……!い、いえ、まだここからです!)

優花里「に、西住殿ぉ!西住殿も記念にどうですかぁ?」

みほ「私は大丈夫かな」

優花里「あぅ……」

優花里(万策尽きました…)

みほ「わがままでごめんなさい……」シュン

優花里「っ!?あ、謝らないでください西住殿!私が悪いんです!西住殿にだいしゅきホールドを行えたことで満たされていたのに!私がさらに上を求めたせいで………私のバカ!バカ!」モフモフモフモフ!

沙織「ゆかりんダメ!自分の頭をそんな勢いで叩くなんて!」

麻子「髪の毛の弾力でノーダメージのようだがな」

華「あら?皆さんお揃いで何をしているのですか?」

みほ「あ、華さん」

沙織「華こそどうして学校に?」

華「生け花のインスピレーションを得るために来たんです。普段とは違う、休日の空気の中にある戦車を見ることで何かが変わりそうな気がして…」

麻子「熱心だな。私なら休日に学校に来るなんてありえん」

華「それならどうして今日はこちらに?」

麻子「………西住さんの手伝いだ」

華「手伝い?」

みほ「そうなんです。実は……――――」


華「――――……なるほど。そうですか。わたくしにできることでしたら協力します」

みほ「ありがとう、華さん」

華「では、私もだいしゅきホールドをさせていただきますね。おそらく、みほさんの期待には応えられないと思いますが……」

みほ「いえ、そんな」

華「でも手を抜かず全力で、カチコミのような意気込みで挑む所存です」

みほ「あ、ありがとう」

優花里「西住殿!西住殿がバランスを崩した時はいつでもお支えします!安心して倒れてください!!」

華「すぅ……はぁぁ………花を生ける時の気持ちで……」

沙織「花を生ける気持ちで抱きつくってどういう感じ?」

麻子「相通ずるものがあるのだろうか……?」

華「……………………はあっ!!」ダダッ!

みほ「っ?!」ビクッ

優花里「走った!!」

華「はあああああ!!!!」バッ!

沙織「飛んだ!!」

ガシッ

麻子「挟んだ」

みほ・華「あ」グラッ

ドッシーーーーン!!!

沙織「倒れた~~~~!!!!」

優花里「西住殿~~~~~~!!!!」




華「すみません……ついリキが入りすぎてしまって西住さんを巻き込んでしまいました……」

みほ「私は平気。それより……」

華「?」

みほ「優花里さんこそ大丈夫?倒れそうな私を支えてくれなかったってことは、想像だにしないアクシデントに見舞われたからだと思われるけど」

優花里「うぅ……ずみばぜん……五十鈴殿の迫力にたじろいでしまい、西住殿をお守りできませんでした………申し訳ありません」

みほ「そうなんだ。優花里さんが無事でよかった」

優花里「私はなんてダメな人間なのでしょう……うぅう……」グス

華「落ち込まないでください優花里さん。わたくしが無茶をしすぎただけです。バックレた優花里さんに罪はありません」

優花里「五十鈴殿ぉ……」ウルウル

麻子「……どうする?もう一度やり直すか?」

みほ「いえ、大丈夫です」

麻子「やはりダメだったか」

沙織「うーん……あとは磯辺さんに期待するしかないかぁ」


数日後

みほ「………………」

みほ(磯辺さんにもだいしゅきホールドしてもらった。でもやっぱり……会長と同じ味は出なかった)

みほ(サイズ感でいうと似てるんだけど、根本的な何かが違う気がする……)

みほ(というより、やっぱり抱き心地って一人ひとり違うのかもしれない)

みほ(つまり、会長の腰の感触を味わうためには、会長に抱きついてもらうしかない………という結論に達した)

みほ「はぁ……」

みほ(一体どうすれば会長がだいしゅきホールドしてくれるんだろう?)

みほ(……だいしゅきホールドをする会長としない会長の違いを考えよう。まずしてくれた時の会長は、大学選抜との試合後でテンションが高くて…………………あ)

みほ(そうだよ!この手があったんだ!)


二週間後

沙織「そろそろ始まるね」

優花里「はい!練習試合とはいえワクワクします!」

華「他校と合同ですから、メンバーが豪華です」

麻子「大洗はプラウダ、グロリアーナ、アンツィオとのチームか」

みほ「はい。敵は黒森峰、継続、サンダース、知波単ですね」

優花里「うーん……どの組み合わせでも楽な戦いにはなりませんが……その四校はなかなか強そうです」

カチューシャ「なに言ってるのユカーシャ!」ザッ

優花里「ゆ、ゆか……?それって私ですか?」

カチューシャ「当たり前でしょ!?あなた以外にユカなんていないわ!それよりも、弱気なことを言ってるんじゃないわよユカーシャ!カチューシャが味方ってだけで負けるわけないんだから!ね?ノンナ」

ノンナ「はい。カチューシャは常勝です」

カチューシャ「ほうら!」

麻子「ほうら、と言われてもな」

アンチョビ「いいぞいいぞ!そのビッグマウス!ノリと勢いが素晴らしい!我がアンツィオに通ずるものがあるな!」ハー!

カチューシャ「あら?いいこと言うじゃないドゥチェーシャ」

アンチョビ「ドゥチェーシャ!?何故そうなる!確かに私は統帥(ドゥーチェ)だが……」

カチューシャ「だってアンーシャじゃ言いにくいもの」

アンチョビ「だったらアンチョビーシャでいいじゃないか」

カチューシャ「いやよ。長いもの。舌噛んじゃったら痛いし」

アンチョビ「ぬぅ~……まぁ、いいか」

ダージリン「あらあら。二人とも元気が良くて何よりね」クスッ

カチューシャ「む。何よダーーシャ。それは皮肉?」

アンチョビ「おいおいおい!ダーーシャの方がアンーシャよりおかしいだろ!」

カチューシャ・アンチョビ・ダージリン「」ワイワイガヤガヤ


みほ「………………」

優花里「うはぁ。こうして見ると豪華ですねぇ!今日の試合、勝っても負けてもいい経験になりそうですね!西住殿!」

みほ「……ううん」

優花里「え?」

みほ「絶対に勝たないとダメ……」

優花里「西住殿?」

華「何か理由があるのですか?」

みほ「……うん。この試合で勝ったら、喜んだ会長が私にだいしゅきホールドをしてくれるかもしれない、って思うんだ」

沙織「ま、まだ言ってるんだ」

麻子「もう二週間以上前の話だが…」

みほ「私の中では現在進行形です。なので、勝利を目指して真剣に戦います。パンツァー・フォー!」

沙織「早い早い!先走り過ぎだよみぽりん!まだ試合前!」

みほ「ご、ごめんなさい。つい熱くなっちゃって」

麻子「……西住さんでもそうなるんだな」

優花里「西住殿がそのような意気込みでしたら、皆さんを鼓舞してみたらいかがでしょう?勢いに乗れます!」

みほ「あ、うん。それはちょっと思ってた。プラウダ、聖グロリアーナ、アンツィオのメンバーは士気が高いけど、うちはちょっと微妙だから……」

沙織「え?そうかな?どうしてそう思うの?」

優花里「今の大洗は廃校を免れ、ホッと一息ついている状態と言いますか……この試合に対してもどこかお祭りを楽しもうとするような、どこか緩い空気が流れている気がしておりまして…」

華「なるほど……全国制覇をはじめ、数々の目標を達成したからこそ、モチベーションが低下し、リアルガチで戦う姿勢が薄れているというわけですね」

麻子「負けて失うものもないからな」

みほ「はい。当然、そんな気持ちではこの戦いに勝てません。お姉ちゃ…黒森峰は雪辱に燃えています。継続高校の実力は言わずもがな。サンダースの火力は我々以上、成長した知波単は侮れません」

沙織・優花里・華・麻子「………………」

みほ「この戦いは絶対に負けられないんです。会長にだいしゅきホールドしてもらうために…………そして大洗が今後なんか……色々頑張っていくためにも」

沙織「すごい私情……」

麻子「今回の練習試合も、西住さんが自ら連絡をして実現させたらしいしな」

優花里「一度決めたらその意志を貫き通す!芯の強さが素晴らしいです西住殿ぉ!!」

華「ではみほさん、大洗の各チームを鼓舞しましょう」

みほ「はい」サッ

みほ「……こほん」

みほ「皆さん。まもなく練習試合が始まりますが、今回の試合について話があります」


・カメさんチーム(生徒会チーム)

桃「ん?なんだこの通信は。会長、西住に何か指示をしたのですか?」

杏「ぃんやー?全然」

桃「独断か?だとしたら止めねば」

柚子「でも西住さんが意味のないことをするとは思えないよ」

桃「しかし…!」

杏「そだね。いいじゃん好きにさせれば」モグモグ



みほ「この試合に勝利した時は、後日、西住流が懇意にしているお店から出前をとり、勝利やったねパーティーを開催します。食べ放題、飲み放題です」



・アヒルさんチーム(バレー部チーム)

典子「パーティー!?」

妙子「すごい……!西住流が関わってるお店だから、きっと超豪華だよ!各国の郷土料理にアタックできるかも!」

忍「ステンレスでできたアツアツのネットの上で焼かれる肉……じゅるり」

あけび「どれだけ食べられるかチャレンジしたい……」


・カモさんチーム(風紀委員チーム)

そど子「ごくり………はっ!?ま、まったく!大騒ぎして風紀が乱れる危険性があることを提案するなんて!」

ゴモヨ「じゃあ私がそど子の分まで食べるよ。そど子はゆっくり羽を休めて」

パゾ美「私も」

そど子「ち、ちょっと待ちなさい!風紀委員長としてみんながちゃんとしてるか見張らないといけないわ!だから私も食べるわ!」



・レオポンさんチーム(自動車部チーム)

ナカジマ「気前がいいなぁ、さすが西住流」

スズキ「それに気合い入ってると言うか、今日の西住さん、普段と違って妙に声に力がある気がする」

ホシノ「わかる。いつもは『みなさん、頑張ってください。パンツァー・フォー』って、凛としてるけど可愛い感じだよね」

ツチヤ「似てる似てる」



・ウサギさんチーム(一年生チーム)

桂利奈「ついに念願のマンガ肉が食べれるかも……!?」

あや「さすがにないんじゃないかな?」

あゆみ「これは気合い入る……食べまくるぞー」

梓「最近体重が……でも食べたい…」

優季「試合してるうちに痩せるから大丈夫だよー」

紗希「……………………………………………………………………………………………………………………」



・アリクイさんチーム(ネット戦車ゲームチーム)

ねこにゃー「……ふ、普段足りてない分の栄養を摂取するチャンスですぞ」

ももがー「死ぬ気で食べる覚悟が決まったナリ」

ぴよたん「高い物から制覇してやるっちゃ」



・カバさんチーム(歴女チーム)

エルヴィン「食べ放題をエサにみんなの支持を得る……まさか西住隊長、独裁者への道を歩み始めたのか……?」

カエサル「いやいや、その逆。リキニウス・セクスティウス法……金のある者とない者のモチベーションを操作し、格差を埋める狙いだ」

おりょう「仲の悪い薩摩藩と長州藩を同盟させた龍馬のように、勝利パーティーで大洗女子の絆を深める作戦ぜよ」

左衛門佐「褒賞が欲しければ大将首を獲れという戦国時代の魂を思い出させようとしてるんじゃないか?」

エルヴィン・カエサル・おりょう「それだー!!!」


みほ「……ですが、もしこの戦いで敗北した場合は………」

みほ「皆さんのチーム名を変更します」




典子「なんだそんなことかー」


桂利奈「呼び名が二つ……燃えるぜぇーい!」



みほ「……では、今から変更後のチーム名を読み上げます」



みほ「まずは………メスブタさんチーム」



全員「えっ」


典子「…………………」

妙子「メスブタ……?」チラ

あけび「ど、どうして私を見るの?」

妙子「いや……」

あけび「?」ボイーン



みほ「アバズレさんチーム」



そど子「アバッ……な、なんてこと言うのよ!風紀が乱れてるどころじゃないわ!何がアバズレよ!大洗女子のどこがアバズレなのよ!」

ゴモヨ「お、落ち着いてそど子」

パゾ美「恥ずかしいから連呼しないで……///」



みほ「カマトトさんチーム」



桂利奈「かまとと………ってなに?」

あや「ごめん、私もわかんない……優季知ってる?」

優季「えー?私全然わかんなーい♪」

あゆみ「カマトトっていうのは、今の優季みたいなこと、かな?」

梓「どういうこと?」

紗希「カマトトとは、女性が世間知らずを装うために言った『カマボコはトト(魚)から出来ているの?』という文句から出来た言葉で、知っているのに知らないフリをすること。幕末の花柳界で普及したことから女性を対象に使われたカマトトは、のちに『うぶを装うこと』や『うぶな人(この場合、カマトト女ともいう)』といった意味で使われるようになった。一旦は死語となったカマトトだけど、宝塚歌劇女優の楽屋言葉として使われていたことから、現代に受け継がれた」

桂利奈「紗希が……!!」

あや「かつてないぐらい喋ってる!!」

あゆみ「どうしてカマトトで!?」



みほ「………バリネコさんチーム」



ホシノ「ばりねこ?そんな猫、いたっけ?」

ナカジマ「………………」

スズキ「………………」

ツチヤ「………………」

ホシノ「?どうしたの」

ナカジマ・スズキ・ツチヤ「なんでもない」


みほ「バリタチさんチーム」



エルヴィン「ばりたち……とはなんだ?」

おりょう「イタチの仲間ぜよ?」

左衛門佐「いや、太刀のことではないか?となれば我々のためにあるチーム名だ!」

カエサル「……ち、違う。バリタチっていうのはそういう意味じゃない」

エルヴィン「ん?意味を知っているのかカエサル」

左衛門佐「博識だな」

おりょう「ローマ史に関係ある言葉ぜよ?」

カエサル「いや、その……ひなちゃんとのことで調べたからたまたま知ってただけで……///」



みほ「リバさんチーム」



ねこにゃー「……こ、これっていわゆる……」

ももがー「うん……百合的な用語ナリ」

ぴよたん「ということは西住隊長も百合だっちゃ?滾る……!」



みほ「ズボネコさんチーム、スカタチさんチーム。以上です」

みほ「敗北した場合は、今挙げたチーム名で活動していきますのでよろしくお願いします」




桃「お、おい!西住!お前一体何を……!会長!」

柚子「これ、シャレ……ですよね?」

杏「んー…………わかんない」ニヒ

桃「会長~~~!!」

杏「ぃやぁ、だって知らないもんは知らないよ」

柚子「うぅ……もし負けたらメスブタさんチームって呼ばれるかもしれないんですよね?絶対嫌です……恥ずかしい…//」

杏「じゃあ勝とっか」

柚子「!」

杏「要は負けなきゃいいんだよ」

桃「確かに……」

杏「というわけで気合い入れてこーぅ」

桃・柚子「はい!!!」




みほ「ふぅ………」

沙織「み、みぽりん……チーム名の意味はよくわからないけど、あんなこと言って本当に良かったの?」

みほ「うん、大丈夫」

華「すごい自信ですね……」

麻子「勝った時にパーティーをすると言っていたが、チームメイト全員でとなるとかなりの金額がかかるんじゃないか?」

みほ「そうだね。でも全国優勝した時に店長さんが『いつでもお電話いただければ出張で料理を提供しますよ!』って言ってくれてて……」

沙織「本当?!それってタダで?」

みほ「うん。西住流の関係者でもあるお店だから」

優花里「それも西住殿の人格と戦車道の実力があってのことですぅ!さすがですねぇ西住殿!」

華「絶対に勝つ……そのために食べ放題をエサにしたのは正解だと思います。何故なら、わたくし自身がやる気バリバリですから」フフフ

麻子「しかし……相手が弱小校ならともかく………負けた時のチーム名を考えるとちょっとな」

沙織「あ、そうそう。気になってたのよねー。バリネコって何?どこの猫?ねぇ、教えてよみぽりん」

みほ「………麻子さんなら知ってると思います」

麻子「に、西住さん!?」

沙織「なーんだ。麻子も知ってるんだ?じゃあ教えて」

麻子「う、ぅう……///」

みほ「………………」

みほ(これでみんな負けたくないと決死の覚悟を決めるだろうし、パーティーのために必死に戦ってくれるはず)

みほ(絶対勝とう!パンツァー・フォー!)


ドォオォォォン.....シュパッ!

審判「フラッグ車撃破!!」

審判「勝者…………」

審判「大洗女子・プラウダ・聖グロリアーナ・アンツィオ合同軍!!」

ワァァッァァ!!!!



みほ「やった……っ!」

華「勝てましたね!」

沙織「ギリギリだったぁ………」

優花里「お疲れ様です西住殿!素晴らしい指揮でした!!」

みほ「ありがとう優花里さん」ニコリ

優花里「はあぁああ~~……その笑顔だけであと数年は希望をもって生きていけますぅ~~///」クネクネ

麻子「……なんとかなったか。これでチーム名を変えなくてすむ」ホッ

みほ「あはは。もともと負けても変えるつもりはなかったんですけどね」

麻子「…………へ?」

みほ「あくまで鼓舞する目的なので。第一、私だってあんなチーム名、恥ずかしくて呼びたくないから」

華「そうだったのですか。てっきりマジ発言かと」

沙織「うん……変更後のチーム名を読み上げた時も冷静だったし」

麻子「というか、あんな言葉どこで覚えたんだ西住さん」

みほ「あれは西住流の練習とか、あとは…………あ!」

麻子「ん?どうした?」

みほ「ごめんなさい!ゆっくりしてる場合じゃなかった!会長のところに行かないと!」ダダッ!

沙織「あっ、みぽりん!?」

みほ「今が一番嬉しい瞬間だから、この機を逃すとだいしゅきホールドが遠ざかっちゃう!私、行くね!」ダダダダ!

華「アグレッシブですね……」

優花里「あぅぅ……西住殿ぉ……そんなに会長がいいんですかぁ~……」シューン..




桃「終わりましたね、会長」

杏「そだねー」

柚子「あれ?」

桃「どうした?」

柚子「なんか……西住さんがすごい勢いで走ってくる」

桃「……本当だ。我々に用があるのだろうか」

みほ「はっ、はっ、はっ、はっ………………か、会長」ザッ...

杏「西住ちゃ~ん、お疲れ」

みほ「お疲れ様、です……」ハァ..ハァ..

杏「相変わらず冴えてたよ~♪やるねー」

みほ「い、いえ……」

みほ(戦闘後で高揚してる今のうちに……)

みほ「か、会長!」

杏「ぁにー?」

みほ「私たち、勝ちました!」

杏「そだね」

みほ「………………」

杏「…………………」

みほ(あれ?今、だいしゅきホールドの間を作ったんだけど……会長、動かない?も、もう一度……)


みほ「……お、思えば、今回の相手も強敵でしたね」

杏「うんうん」

みほ「それでも、皆さんで力を合わせたからこそ!こうして勝利を得ることができました!!」

杏「西住ちゃんいいこと言うね~」

みほ「そ、そんなことないですよ……///」

杏「謙遜しちゃって」ニヒ

みほ「………………」

杏「…………………」

みほ(これも不発?あ、もしかして)ハッ!

みほ(嬉しい時にはだいしゅきホールドするっていうのを忘れてるのかも!さすがの会長でもうっかりミスはあるだろうし……となれば、私が教えればいいよね)

みほ「あの……会長」

杏「ん?」

みほ「ひょっとして………大事なことを忘れていませんか?」

杏「大事なこと?」

みほ「はい。試合に勝った時にすべきことです」

杏「んんー……?」

みほ「………………」

杏「あ!そうだったそうだった!忘れてた!思い出したよ。西住ちゃんありがとねっ」

みほ「い、いえ。催促したみたいですみません。私の方は準備できてますからいつでも…」

杏「私が干し芋食べるの忘れるなんてね~」モグモグ

みほ「干し……芋…………」

杏「そ。勝った時が一番干し芋が美味しい瞬間なんだよ」モグモグモグ

みほ「……………………」




沙織「…………あれ?なんかみぽりん固まってない?」

華「本当ですね。遠くてはっきりとは見えませんが」

麻子「正直、こうなる気はしてたがな」

沙織「え?どうして?」

麻子「大学選抜との試合後に生徒会長が西住さんに抱きついたのは、ただ勝利したのが嬉しかったからじゃない。二度にわたる廃校の危機を阻止した喜びが大きく関わっている」

華「確かに……生徒会の人たちは学校にとても愛着を持っているようでしたし」

沙織「そっか。学校がなくなるーってヤバい状況から復活したんだもんね。そりゃ超嬉しくなって抱きつきもするかー」

優花里「うぅ……西住殿ぉ……私でよければ千でも万でも抱きつきますのにぃ~」ガクリ..

ミカ「おやおや。肩を落としてうつむいて………どうやら勝利の涙とは違うモノが流れているようだね」ポロロン

優花里「え?あっ、継続高校の……」

アキ「違うモノって?」

ミカ「言葉にすると失われる儚い粒さ」ポロロン

ミッコ「……どういうことよ……」

華「今日はありがとうございました。とても勉強になりました」

アキ「あ、いえいえこちらこそ」

ミカ「ふふっ、君たちはそうして、他者の血肉となるんだね。永遠に見聞きすることなど不可能だけれど、誰かによって語り継がれるのなら、それはある意味、世界を知ることに繋がるのかもしれないね」ポロロン

華「は、はあ……」

沙織「え、麻子、今のどういう意味?」

麻子「知らん」

ミカ「知らないというのは誇れることさ。知らないというのは”知る”へ繋がる道なのだから」ポロロン

優花里「???」

ミッコ「ミカ。その辺にしとこうよ。試合後の挨拶しに来たんだから、せめてお疲れ様でしたって言おう?目的を果たさないと」

ミカ「目的のために生きているんじゃない。生きる糧として目的があるのさ」ポロロン

ミッコ「ミカ……」ハァ...

ダージリン「自分の生きる人生を愛せ。自分の愛する人生を生きろ」ザッ

ミッコ「!?」

オレンジペコ「ボブ・マーリーですね」ザザッ

優花里「ダージリンさん!?オレンジペコさんも!」

ダージリン「ごきげんよう。何やら集まっていたものだから、つい寄ってしまったわ」

オレンジペコ「というより、ダージリン様がミカさんの格言っぽい言葉に対抗心を燃やしたみたいで」

優花里「なるほど」


ダージリン「……違うわ。秋山さんの元気がないように見えたので励ましに来たのですわ。対抗心だなんて、あらいやだ」

優花里「わ、私を励ます、ですか!?」

ダージリン「ええ。秋山さん……何があったのかはわからないけれど、うつむいていたあなたにはこの言葉を。『下を向いていたら、虹を見つけることは出来ない』」

オレンジペコ「チャップリンですね」

優花里「ダージリンさん……ありがとうございます!その言葉、心に響きました!」

ダージリン「それならよかった」ウフフ

優花里「これからはより一層、西住殿を見つめたいと思います!!」

ダージリン「そ、そう……」

ミカ「……虹を見つけるのもいいけれど、虹を作り出せるように生きることができたら、それは素晴らしいことだね」ポロロン

ダージリン「!…………」

ミカ「……………………」ポロロローン

ダージリン「虹を作ることが必ずしも良いとは限らないのではなくて?こんな言葉を知ってる?『幸せかどうかは、自分次第である』」

オレンジペコ「アリストテレスですね」

ミカ「……自分の中に虹を持たない者はどう生きればいいのだろう?いや、そもそも虹はどのような想いで空に架かるのか………虹以外に知る術はないね」ポロロン

ダージリン「……………………」

沙織「あれ?ダージリンさん、黙っちゃった?」

アッサム「……ミカさんのように日常会話とは程遠い返しをする人は苦手なようです。データがそれを物語っています」

華「格言で返すことが難しいからでしょうか?」

沙織「というか、アッサムさんいつの間に………」

ローズヒップ「私もいますわよー!」オホホ

ミカ「言葉は素晴らしい。だから人は言葉を喋る。でもそれは沈黙が存在するからこそ引き立つということを忘れちゃいけない」ポロロン

ダージリン「……………………」

オレンジペコ「ダージリン様………」

ダージリン「……………ひ」

ダージリン「一人ぼっちになるのはいやだけど、そっとしておいて欲しいの」

オレンジペコ「………お、オードリーヘップバーンですね……脈絡ありませんけど」

ミカ「本当の意味での一人ぼっちなんてあるのかな。自身の思考に住む肯定と否定はそれぞれ別人格のようなもの。どれだけ望もうとも一人ぼっちには決してなれないんじゃないかな」ポローン..

ダージリン「……………………」

ダージリン「な」

ダージリン「なかなかおやりになりますのね、ミカさん」ウフフ

オレンジペコ(あっ!ダージリン様が高貴な表情をキープしたまま、ものすごく悔しがっています!)

ミカ「風がそうさせているだけさ」ポロッロロ


ダージリン「………ペコ」

オレンジペコ「は、はい!」

ダージリン「ティーテーブルを用意なさい。あの辺りがいいわ」

オレンジペコ「わかりました」

ダージリン「…………ミカさん」

ミカ「なんだい」ポロロン

ダージリン「あちらで紅茶でも飲みませんか?お話の続きもしたいですし。もちろんアキさんとミッコさんも」

アキ・ミッコ「やった!」

ミカ「その行為に意味があるとは思えない」ポロロロロ

ダージリン「………………」

アキ「ちょっと、ミカ!」

ミカ「けれど……風向きを見るに、誘いに乗った方が良さそうだ。ありがたく頂くとするよ」ロローン..

オレンジペコ「ただいまご用意しますので、少しお待ちください」

アッサム「私も手伝うわ」

ローズヒップ「ワタクシも手伝いますわー!!」ズダダダーーッ!

ダージリン「ローズヒップはここで待ってなさい」

ローズヒップ「わかりましたですわー!!!!」!ッーーダダダズ

アッサム「脊髄反射で命令実行とは……やるわね」

オレンジペコ「………………」

オレンジペコ(ここから離れた位置にティーテーブルを置く……ダージリン様はきっと、ミカさんと直接対決するつもりですね)

オレンジペコ(そしてもしかしたら敗北するかもしれないと予感している。だからこの場での対決を避けた。ダージリン様が負けたら大ショックを受けるであろうローズヒップさんには負け姿を見せないように………)

オレンジペコ「……………………」

オレンジペコ(……といいますか、格言で敗北ってどういうことなんでしょう?)




優花里「ああ………聖グロリアーナの皆さん、行っちゃいましたね」

ローズヒップ「ワタクシは行っちゃってませんわー!!」

華「色々とお話しをしてみたかったのですが」

沙織「ミカさんたちいいなー。私も高級な紅茶とか飲んでみたかったよー。そしたらオシャレな紅茶フレーバー漂う女になっちゃって、モテモテに……きゃー!」

麻子「紅茶の匂いとモテは関係ないと思うぞ」

みほ「……………………」

沙織「えー!?そうかなー」

麻子「そうだ。西住さんもそう思うだろ?」

みほ「……………………」

麻子「…………………………ん?」

麻子「わああああああ!!!?西住さんいつの間に隣に!?!」

沙織「あ、ほんとだ。みぽりん戻って来てたんだ」

華「全然気が付きませんでした」

優花里「西住殿の接近に気付かないなんて……一生の不覚!まだまだ精進が足りないですぅ……」ハァ

沙織「それにしてもさー、麻子、ちょっとビックリしすぎだよぉ」

麻子「む、無表情でいきなり隣に立たれたら誰でも驚くだろう!!」

沙織「無表情?」

みほ「………………………」

華「みほさん……元気ないですね」

沙織「大洗に戦車道が復活するって聞いた時みたいな顔してる」

みほ「………………………」ブツブツブツ..

優花里「あれ?西住殿が何かおっしゃってますよ?」

沙織「どれどれ?」ソーッ

みほ「落胆は絶望の母、落胆は絶望の母、落胆は絶望の母、落胆は絶望の母………」ブツブツブツ..

沙織「こわい!!」

麻子「落胆は絶望の母……これはジョン・キーツだったか?」


沙織「みぽりんどうしたの!?」

みほ「絶望が純粋なのは、たったひとつの場合でしかない。それは死刑の宣告を受けた場合である……」

麻子「アルベール・カミュか。フランスの小説家だな」

ローズヒップ「あなたすごいですわー!まるでオレンジペコさんっぽいですわー!!」

麻子「たまたまだ」

ローズヒップ「そんなことないですわ!あ!ペコとマコで名前も似てますわ!!よかったですわねー!」ニコニコ

麻子「よかったと言われても……」

優花里「それより西住殿ですよ!どうして絶望的な格言ばかりを口にされるのか…皆目見当つきません!!」

沙織「いや、つくでしょ。会長にだいしゅきホールドしてもらえなくて落ち込んでるんだよきっと」

ローズヒップ「だいしゅきホールド?それは一体なんですの?」

沙織「え?それはその……///」

優花里「相手に抱きつき、そして腰に両足を回して挟み込む。というような感じのことです。全身で愛情を表すスキンシップですね」

ローズヒップ「うおおお!!ファンタスティックでやがりますわ!ワタクシもダージリン様にやってもらいたいですわー!!」

みほ「!」ピクン

沙織「だ、ダージリンさんに?それはまたハードル高いことを…」

ローズヒップ「だってしてほしいですわー!」

みほ「……ローズヒップさん、ちょっといいですか?」

ローズヒップ「はいですわ!」

沙織「あ、みぽりん復活した」

みほ「質問なんですけど、もしダージリンさんにだいしゅきホールドしてもらおうとする場合、ローズヒップさんはどのような手段を用いますか?」

沙織「まだ諦めてないんだ」

みほ「………人の足を止めるのは絶望でなく”諦観”、人の足を進めるのは希望でなく”意志”」キリッ

沙織「へ?」

優花里「ARMSですね!さすが西住殿ですぅ!!」

ローズヒップ「そうですわね!ワタクシだったら……」

みほ「………………」ゴクリ

ローズヒップ「無理矢理やりますわー!!」

みほ「!!」

沙織「ええっ!?」

優花里「なんと!」

華「まあ!アグレッシブですわね」

麻子「恐ろしいことを真顔で言ったな」

みほ「無理矢理?」

ローズヒップ「ですわ!お願いしてもきっと無理なのですわ!それなら、ダージリン様がお紅茶を飲んでる隙にお両足を掴んで持ち上げて走り出せば、ワタクシに抱きつくしかありませんわ!ミッションコンプリートですわー!」オホホホホ

沙織「明るく言ってるだけに怖い…」

みほ「会長を……無理矢理…………」



~~~~~~~~~~~~~~



みほ「会長……だいしゅきホールドしてくれないんですね」

杏「西住ちゃん?」

みほ「だったら仕方がないです。強引にさせてもらいます」ガシッ

杏「えっ」

みほ「まずは……靴下を脱がしますね」

杏「な、何を…」

みほ「靴下を会長という名の戦場から別世界へと前進させます。靴下・フォー」スルッ..

杏「あっ」

みほ「次はスカートです。スカート・フォー」スルスルッ

杏「や、やだ……///」

みほ「会長の下着姿……いいですね。どんどんフォーしますね。上着からブラまで一気にフォー」スルルルルル..

杏「……や……ぁ……///」

みほ「すごい……パンツだけの会長も可愛いです。その可愛さを味わいたい。爪先からじっくりと見ますね?私の視点・フォー」ノソー..

杏「っ……///」

みほ「ゆっくり…ゆっくりフォーしていきます。今、ふくらはぎ……今太ももにフォーしてます。そしてついに……」

杏「……わ、わかったから……もうやめて////」

みほ「え?」

杏「だいしゅきホールドするから……許して……///」

みほ「わかりました。ただし」

杏「?」

みほ「その姿のままお願いします!ぱんいち作戦です!」ニコッ



~~~~~~~~~~~~~~


みほ「……………………」

沙織「みぽりん?」

みほ「……………………賭けてみる価値はあるかも」

沙織「ないよ!無理矢理とか絶対ダメだからね!?」

華「そうですよ。そんなことをしたら、マッポにワッパをかけられてしまいます」

優花里「うぅ………もしそうなったら……私が身代わりになります!西住殿は必ず守ってみせます!!」

麻子「何を言っているんだ。落ち着け秋山さん。西住さんもだ」

みほ「………そうだよね。ちょっと胸が躍ったのは事実だけど、さすがに無理矢理はダメだよね」

沙織「そ、そうだよー。ローズヒップさんも、実行に移しちゃダメだよ?」

ローズヒップ「あたりきしゃりきのこんこんちきですわ!」

みほ「でも……希望が見えてきたかも」

優花里「希望、ですか?」

みほ「うん。今ローズヒップさんの意見は私の想像外だったんだ。だから色々な人に相談すれば、いい方法が見つかるかもしれないって思って」

沙織「あ、それ言えてるかもね。親友への恋愛アドバイスがきっかけでイケメンと恋に落ちたりするかもだし♪」

麻子「……あとでそのイケメンと親友が浮気してるのが発覚して修羅場か」

沙織「やだもー!なんでそういうこと言うの!」

優花里「今は試合が終わったばかりですから、他校の人がたくさんいます!話を聞けるチャンスですね!」

みほ「うん。ちょっと言ってくる」

優花里「わ、私もお供致します!」

沙織「私も」

麻子「えー……」

華「麻子さんも行きましょう」ヒョイッ

麻子「わ、わ……!下ろしてくれ!自分で歩けるから!」

沙織「華すごい………麻子を肩にかつぐなんて…」

ローズヒップ「いってらっしゃいですわー!できたらお土産よろしくですわー!!」

ローズヒップ「…………………………」

ローズヒップ「暇ですわー。一人で待つのは飽きましたわー」

ローズヒップ「でもダージリン様がここで待つようおっしゃいましたし、戻ってくるまで待つのですわー」




ダージリン「………………」

ミカ「………………………」

ダージリン「大切なのは問うことをやめないことだ」

オレンジペコ「アインシュタインですね」

ミカ「その問いは、風に流れて聞こえないのさ」ポロロン..

ダージリン「………………っ!」

オレンジペコ「ダージリン様……」

ダージリン「……心配は無用よペコ。私はまったく、これっぽっりも普段と変わらないわ。苦脳を最も隠す者が、苦悩に最も耐えうる者であるのだから」

オレンジペコ「イギリスのことわざですね」

オレンジペコ(口に出した時点で苦悩を隠せていないと思いますが……)

ミカ「その隠れた苦悩も、強風にあおられて露わになってしまうのさ」ポロロン

ダージリン「!」

ミカ「ふふふ……ずいぶん色々な格言を知っているんだね」

ダージリン「……ええ。何故なら、知識を増やすほど創造できるのだから」

オレンジペコ「料理家のジュリア・チャイルドですね」

ミカ「……無知を恐るるなかれ。偽りの知識を恐れよ」

ダージリン「!!!」

オレンジペコ「ブレ―ズ・パスカル……ですね」

ミカ「私は偉人の言葉にさして興味はないよ」ポロロン..

ダージリン「……………………」

ミカ「だが……君自身には興味がある」ジャジャン!

ダージリン「…………え?」

オレンジペコ・アッサム「!!?」

ミカ「戦車道での戦い方もそうだし、優雅な物腰、気品のある笑み……諸々全て、ね」ニコリ

ダージリン「……なっ……//」

ミカ「うつむかないでおくれよ。もっと君の顔が見たい」

ダージリン「何を……言ってるんですの……///」

ミカ「顔が赤い……熱に浮かされているようだ。でも心配することはないさ。一緒に風に吹かれよう」スッ

ダージリン「あっ……」

オレンジペコ(!ダージリン様の肩を抱いた!?なんと馴れ馴れしい)

ダージリン「い、いけませんわ。そんな……///」

アッサム「口では嫌がっていますが、何もせずに受け入れているわね……」

オレンジペコ「チョロインですね」

アキ「…………ねぇ、ミカのあれって本心かな?」

ミッコ「どうだろう?からかい半分な気もするけど」

アキ「でも本気にも見えるし…………はぁ……相変わらずミカは何考えてるかわからないわね」

ミカ「ふふふふ」ポロロローン...

ダージリン「も、もう……///」モジモジ




みほ「あ、いた。ノンナさん」

ノンナ「大洗のみほさんですか。今日はお疲れさまでした」

みほ「こちらこそお疲れさまでした」ペコリ

ノンナ「皆さんもお揃いで」

優花里「お疲れさまであります!」

沙織「ど、どうも」

麻子「…………」ペコリ

華「相変わらずタッパがありますね。モデルさんみたいです」

ノンナ「恐縮です」

みほ「あの……実は相談があるのですが……」

ノンナ「私で力になれるのなら……」

みほ「実は……―――――」

ノンナ「なるほど。私がカチューシャにdaisyuki-holdをしてもらうとしたらですか……」

沙織「すごい!発音綺麗!モテそう!」

麻子「だいしゅきが英語っぽいのは違う気がするがな」

ノンナ「……私の場合、プラウダ内に嘘情報を流しますね」

みほ「嘘情報?」

ノンナ「はい。daisyuki-holdをすることにより、血流が良くなって身長が伸びるという噂を広めるのです」

みほ「……なるほど」

ノンナ「それを聞いたカチューシャは、必ず一番に私に聞きに来ます。可愛らしく息せき切って、小さな歩幅でトテトテと…………あぁ……同志カチューシャ、愛しい……」

みほ「それで?」

ノンナ「私は噂が真実だと伝えます。しかしあまりにも見え見えの嘘ですから、カチューシャは信じないでしょう。そこで、クラーラとニーナを投入します」

ノンナ「そして噂が本当だと二人に主張させるのです。この時点でカチューシャはまず間違いなく噂が真実だと思います。仲間の言うことだから、と信用するのです。カチューシャのこの純粋さこそ、心が清く澄んでいる証拠。その白さはシベリアの雪を遥かにしのぎます。あぁ……カチューシャ……」

華「……この方法は会長に通じるのでしょうか?」

みほ「うーん……無理だと思う。カチューシャさんの場合、沙織さんと同じくらいのチョロさだからあっさり乗せられるけど、会長には通じないね」

沙織「あっさり!?みぽりんそんな風に思ってたの!?」

みほ「あ、ごめんね、つい……沙織さんなら優しいから全部包み込んで許してくれる気がして、甘えちゃってた……」

沙織「え?あ、そうなのー!?じゃあしょうがないよねっ!私、包容力あるから!!」

麻子「……こんな具合にか」ハァ

みほ「でもこの作戦、カチューシャさんには有効だろうね」

華「ええ。だいしゅきホールドをするのを恥ずかしがっているカチューシャさんに、周りの人たちが『隊長ともあろう方ができないんですか?』と煽り、『できるに決まってるでしょ?』という流れが容易に想像できます」

みほ「ノンナさん、相談に乗ってくださってありがとうございます」

ノンナ「うふふ。そう、もっとギュッと抱きつくのですよ同志カチューシャ。少しでも隙間が空くと身長が縮んでしまいますから」ブツブツブツ

みほ「聞こえてないみたい。じゃあ次に行こう」

優花里「見事な決断力ですぅ!」

麻子「いや、普通だろう」




カチューシャ「……ふぅ。私くらいになれば一人でだっておトイレ行けるんだから」テクテクテク

カチューシャ「ただいまー…………ん?」

ノンナ「あぁ、ダメですよカチューシャ……あなたに抱きつかれるだけでも私の体温は40度を超えてしまうというのに、それ以上愛らしい顔を見せられてしまっては私の理性がもちません(ロシア語)」ブツブツブツブツ..

カチューシャ「ノンナ?ボーッとしてどうしたの?っていうか、日本語で喋りなさいよ!」

ノンナ「理性が決壊してもいいと言うのですか?あぁ、そうですか。小さい体ながらあなたの内に秘めた情熱と愛情は全く揺るがないとそう言うのですね。いつでも私の全てを受け入れる覚悟があると。なるほどそこまでの決意があるのなら私ももう感情と熱情と欲望を抑える必要はありません。どれほどの氷塊でも溶かす私のカチューシャへの熱き魂の叫びを今、ここに吐き出すとしましょう(ロシア語)」ブツブツブツ

カチューシャ「な、なんなの?全然反応しない。カチューシャの声が聞こえないっていうの?」ムスー

ノンナ「あぁぁぁぁぁあ……カチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャ(ロシア語)」

カチューシャ「っ……」ブルッ

カチューシャ(一体なんなの?おトイレから帰還したばかりなのに寒気がするわ)

カチューシャ「…………ふぁあ……」

カチューシャ(でもとりあえず…………眠くなってきたから寝るとしましょ)

カチューシャ(いい夢を見れますように)コロン

ノンナ「カチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャカチューシャ(ロシア語)」




みほ「……今度は知波単学園の西さんのところに来てみました」

みほ「西さん。実はこれこれこういうわけなんですけど、どうしたらいいと思いますか?」

絹代「そうですね。私ならば突撃…」

みほ「アドバイスありがとうございました」ペコリ




みほ「さて、次はどこに行こうかな」

沙織「み、みぽりん、知波単学園の人に対して超クールだったね」

優花里「兵は神速を貴ぶを体現なされたのですね!西住殿っ!」

麻子「あの人たちは策を弄するタイプじゃないからな。西住さんと相性が悪い」

華「たまにはカチコミを決めるみほさんも見たいですけれど…………あら?あの方たちは」

ケイ「やっほー!みんな元気?」ハァーイ

みほ「ケイさん!」

アリサ「……次は負けないから」

沙織「アリサさんも」

華「あら?ナオミさんはご一緒じゃないのですか?」

ケイ「ナオミならあっちでアンツィオの子と話してたわ。すっごいモテモテなのよあの子」アハハハ

華「残念です。砲手としてナオミさんとお話してみたかったです」

みほ「……あの!ケイさん、質問があるのですが」

ケイ「なになに?なんでも聞いて?」

沙織「あれ?アリサさんに聞くんじゃないんだね?」

麻子「性格的に自分と違う相手の方がいいアドバイスを受けられると思ってのことじゃないか?サンダースの隊長はやたらポジティブっぽいからな」


みほ「ケイさんが……例えば、アリサさんにだいしゅきホールドをしてほしいと思ってるという前提で聞いてください」

ケイ「ンー?」

アリサ「は?」

みほ「その場合、アリサさんからだいしゅきホールドをされるために、ケイさんはどういう作戦を立てますか?」

ケイ「………………ミホ」

みほ「はい」

ケイ「私、その……ダイシュキホールドの意味がわからないわ。アリサ、知ってる?」

アリサ「い、い、いえっ!?し、しし知りません!タカシのハートをゲットするために色々ネットの海を検索しているうちに知ってしまい、なおかつ抱き枕相手に練習していた時期があるとか…………そんなこと全然ありません!」

麻子「…………おいおいマジか」

華「否定していますが、もはや全部ゲロっているも同然ですね」

ケイ「アリサも知らないみたい」

麻子「っ!?サンダースの隊長、気付いてないぞ」

華「驚きました……純粋な方ですのね」

ケイ「ねぇ、ミホ。教えてくれない?」

みほ「はい。まず○○で○○して○○を……」

ケイ「OH!わかったわ!エキサイティングね!」

みほ「それで、ケイさんなら……」

ケイ「私なら自分からするわ!」

みほ「え?」

ケイ「してほしいならまず自分から行かないとね!こうやって!」ダンッ..

アリサ「え?」

ダキッ

ケイ「アリサ捕まえたー♪」ギュッ...

アリサ「うわ、わわわ」フラフラ..

アリサ「隊長、近っ……近いです……」


ケイ「抱きついてるからねー♪」アハハハ

フワッ...

アリサ「あ…………隊長、いい匂い……」

ケイ「ワオ!ありがと!アリサもいい香りよ!」スンスン

アリサ「あぁぁ……か、嗅がないでください//」

ケイ「よいしょっと」スルッ

ケイ「はい、次はアリサの番よ?」

アリサ「え?あ、わ、私もですか?」

ケイ「もちろん!」

アリサ「わかりました。では……」バッ!

♪~

ケイ「あ、ごめん。電話だわ」クルッ

アリサ「ぅえええっ!?ちょ…急にどかれたら……!」

ドテーン!!

アリサ「あいたたたた……」

沙織「ぅわー……あれ絶対痛いよ」

優花里「完全に体重を預けに行ってましたものね」

ケイ「うんうん、わかった。それじゃね!っと、ごめんねアリサ」クルッ

アリサ「は、はい」

ケイ「アリサ!?ひざ擦りむいてるじゃない!どうしたの!」

アリサ「い、いえ、大したことないですから」

ケイ「ばかもーん!!ちゃんと消毒しないと大変なことになるかもしれないじゃない!ほら、おんぶしたげるから!」

アリサ「隊長…………では、お願いします」

ケイ「よいしょ、っと。じゃあ大洗のみんな、私たちはもう行くわ。ごめんね」

みほ「あ、いえ」

ケイ「またそのうち会いましょ!シーユー!」スタスタスタ..

沙織「行っちゃったね」

麻子「……西住さん、参考になったか?」

みほ「うーん……会長をおんぶしたいなぁとは思ったけど……その前の、自分からだいしゅきホールドするっていうのは……」

沙織「みぽりんの性格的に難しいかー」

みほ「そうだね。恥ずかしい、かな。だけどやってみる価値はあるね」

優花里「で、でしたら!慣れるまで私で練習なさってはいかがでしょう!不肖、秋山優花里、木人になったつもりで…」

みほ「ありがとう優花里さん。その気持ちだけで嬉しいよ」

優花里「そんな……気持ちだけと言わず、体も西住殿に捧げますぅ!」

みほ「あははは」

優花里「あっ……えへへへ」ニコニコ

沙織「…………ねぇ麻子。ゆかりんさぁ、みぽりんの笑って誤魔化す作戦にまんまと乗せられてない?最終的には否定も肯定されてないけど……」ヒソヒソ

麻子「言うな。秋山さんが笑顔ならそれでいいじゃないか」

華「ええ。ここでそれを指摘した場合、みほさんにハッキリと断られてしまうかもしれません。そうなったら優花里さんがマジヘコみしてしまいます」




みほ「――――ええと……多分この辺りに……」

沙織「次は誰?」

みほ「あのね……って、いた」

沙織「?」

みほ「こんにちは。あの……今日はお疲れさまでした」

ペパロニ「おー!お疲れ!」

沙織「この人って……」

優花里「アンツィオ高校のペパロニさんですね!パスタを作るのがお上手なんですよぉ!とても美味しかったですぅ!」

ペパロニ「おっ?なんで知ってるんだ?うちの屋台で食べたことのあるやつはアンツィオ以外でいるはずないし……」

優花里「あっ、しまった!」

ペパロニ「ちょっと顔をよく見せてくれないか?」

優花里「は、はい……」

優花里(まずいです……潜入作戦がバレてしまいます)

ペパロニ「ん~~~~~?」

優花里「………………」ドキドキ

ペパロニ「…………うん!間違いない!」

優花里「!」

ペパロニ「あんたとは会ったことがない!初対面だ!」

優花里「そっ……そうですよね!?」

ペパロニ「もちろん!私は一度会ったやつの顔は絶対忘れないんだ!特に可愛い子の顔はな!」ウィンク

優花里「な、なるほどー」

麻子「今日の試合前もそうだが、全国大会の二回戦ですでに会ってるじゃないか……」

ペパロニ「それで今日はわざわざパスタを食べに来てくれたのか?」

優花里「いえ、違います。西住殿が質問があるそうで……」

ペパロニ「そうか!じゃんじゃんしてくれ!」

みほ「ありがとうございます。では……――――」


ペパロニ「うーん……その……だいしゅきホール……なんだっけ?」

みほ「だいしゅきホールドです」

沙織「ドだけ忘れるとかすごいね」

ペパロニ「それがイマイチ理解できん。実際にやってみせてくれないか?」

みほ「そうですね……じゃあ麻子さん」

麻子「は?」

みほ「沙織さんにだいしゅきホールドしてください」

麻子「はあああ!?」

沙織「私?」

ペパロニ「悪ぃな。頼むよ」

沙織「確かに、言葉で説明されてもわかりにくいかぁ。じゃあ麻子」

麻子「い、いや、ちょっと……西住さん」

みほ「あれ?嫌、かな?だったら優花里さんと沙織さんでやってもらうしか……」

麻子「ま、待て!わかった。私がやる」

みほ「お願いします」

麻子「あ、ああ」

麻子「………………」サッ..サッ..

沙織「別に髪直さなくてもよくない?」

麻子「う、うるさい//」

みほ「準備は?」

麻子「…………オーケーだ」

沙織「私はこのまま立ってればいいんだよね?」

麻子「………………い、いくぞ」

タタッ..

麻子「っ……!」ダッ!

ガシッ!!

麻子「~~~~っ////」ギュゥゥゥ...

沙織「あ、あはは……///」

ペパロニ「ほうほう。これがホールド……なんだっけ?」

優花里「だいしゅきホールドです」

ペパロニ「それなわけだな」ウンウン

麻子「お、おい、沙織。どうして赤くなっている///」

沙織「そっ……それは麻子の方こそ///」

華「まあまあ♪」

ペパロニ「おっしゃ!やり方はわかったぜ!このだいしゅきホールドをアンチョビ姐さんにしてもらえばいいんだな?」

みほ「はい。ペパロニさんはどういうやり方をするのか気になって…」

ペパロニ「任せろ!姐さんは……あ、いた!」ダダダダ!

みほ「!行動が早い……」

優花里「私たちも行きましょう西住殿!」

華「急がないとペパロニさんにブッチギられてしまいますね」タタタ




沙織「…………///」

麻子「…………///」

沙織「ま、麻子ぉ……みぽりんたち行っちゃったよ?」

麻子「そ、そうだな」

沙織「離してくれないと動けないよー//」

麻子「そうだな///」ギュ..

沙織「ぅ……//」

麻子「……だが」

沙織「え?」

麻子「……も、もう少し……こうしてたい」

沙織「!!!」ドキン!

麻子「……だめ、か……?」シュン

沙織「あっ!だ、だめなことない!」

麻子「そ、そうか…………ありがとう」ニコリ

沙織「~~~っ!!」カァァ..

沙織(なにこれ!?顔がすっごい熱い!それに…………なんか……)




みほ「あ!ペパロニさんいた……」ハァ..ハァ..

優花里「追いつきましたね」

華「ペパロニさん、バリバリ体育会系ですね。息切れしていない優花里さんもですけど」ハァ..ハァ..

優花里「鍛えてますから!いつでも西住殿をお守りできるように!」チラッ

みほ「さて……一体どうやってだいしゅきホールドさせるんだろう?」

優花里「そ、そうですね!」

アンチョビ「ん?おぉ、そこの三人は大洗の!やぁ、今日は…」

ペパロニ「待ってくださいアンチョビ姐さん!」

アンチョビ「へ?なんだ急に」

ペパロニ「あの人たちへのあいさつの前に、私の頼みを聞いてほしいんす!」

アンチョビ「頼み?あー、パスタの素材をもっとこだわりたいんだな?気持ちはわかるが予算がない」

ペパロニ「えー!?マジっすか……!悲しいっす……」

アンチョビ「これ以上を求めると、おやつの回数が一回になってしまうからな。諦めるほかないんだ」

ペパロニ「そうっすか……」テクテク

みほ「あ、あれ?戻ってきた?」

ペパロニ「大洗のみんな。すまん!でも今のパスタも超美味いんだ!だから是非食べに来てくれよな!」

華「……あ、あの……だいしゅきホールドの話は…」

ペパロニ「あっ!やっべ、忘れてた!今からしてくるっす!」タタタ

みほ「…………す、すごい人だね」

華「あの人の生ける花を見てみたい気がします。きっとアグレッシブでサバイバルな作品でしょうね」

ペパロニ「……………………」

アンチョビ「ん?どうした?」

ペパロニ「姐さん。喋んのやめてもらっていいっすか?」

アンチョビ「…………はあ?」

ペパロニ「いや、私、忘れっぽいんで、話しかけられるとわけわかんなくなるんす。話終わるまででいいっすから」

アンチョビ「……いいけども」

ペパロニ「ありがとっす。じゃあ……」スッ

みほ「!!」

華「地面に両ひざをついた……」

優花里「まさか……」

アンチョビ「お、おいペパロニ……」

ペパロニ「アンチョビ姐さん!!お願いっす!」バッ

みほ・優花里・華「土下座……!」

ペパロニ「私にだいしゅきホールドしてくださいっす!この通りっす!!」ズリズリ..

みほ「!しかも……」

華「おでこを……」

優花里「地面に擦りつけていますよ!?」


アンチョビ「お、おい!やめろ!そんなことするんじゃない!立て!」グイッ!

ペパロニ「嫌っす!ペパロニ姐さんがだいしゅきホールドしてくれるまでは頭上げないっす!!」

アンチョビ「なんなんだそれは!だいしゅきホールドってなんだ!どうして土下座するんだ!!」

ペパロニ「わっかんねえっす!」

アンチョビ「お前がわからないなら私は絶対わからないじゃないか!!」

ペパロニ「でもなんかこうしちまったんす!こうでもしなきゃ、アンチョビ姐さんは、だいしゅき……なんたらをしてくれないんすよ!」

アンチョビ「ホールドだろ!?さっき自分で言ったのにもう忘れたのか!」

ペパロニ「とにかくお願いっす!姐さん!!」ズリリリ

アンチョビ「とりあえず頭を……」

ペパロニ「嫌っす!」

アンチョビ「…………わかったよ」ハァ

ペパロニ「姐さん!!」

アンチョビ「お前がそこまでするってことは、相当の理由があるに決まってる…いや、違う時もあるか。まぁいい。で?だいしゅきホールドとはなんだ?」

ペパロニ「それは…………あの!見本いいっすか?」

みほ「え?また?」

優花里「!し、しょうがないですよね西住殿!ここは私が…!」

みほ「うん。じゃあ華さんにやってあげて」

優花里「えっ」

華「あら」

優花里「に、西住殿……」

みほ「華さんだけ仲間はずれは嫌だな……優花里さんはそうしたかった?」

優花里「い、いえいえ!そんなはずないじゃあないですか!」

みほ「よかったぁ。じゃあお願い」

優花里「は、はい……!五十鈴殿、行きます!」

華「どうぞ」

ダッ..

ダキッ!

ギュ..

ペパロニ「あれがだいしゅき………フ……ヘ…………あ、ホールドっす!」

アンチョビ「な、な、な……///」

アンチョビ「なんだあれは~~~!!あれを私にやれと言うのか!!?」

ペパロニ「そっす」

アンチョビ「そっす。じゃないっ!あんな恥ずかしいこと……!」

ペパロニ「恥ずかしいっすかね?」

アンチョビ「恥ずかしいに決まってるだろ!大体、なんであれをやる必要がある!」

ペパロニ「それは……頼まれたからなんすけどー」

アンチョビ「頼まれた!?それで土下座までするのか!?ある意味すごいぞ!」


ペパロニ「あー、いや、正確に言うとちょっと違うっすね」

アンチョビ「?」

ペパロニ「きっかけは頼まれたからっすけど、アンチョビ姐さんにだいしゅきホールド?してもらうのを想像したら……なんかヤベー!ってなったんすよ。超してもらいたい感じになったんす。だから本心っすよ!」

アンチョビ「…………なんで?」

ペパロニ「アンチョビ姐さんが好きだからに決まってるじゃないっすか」

アンチョビ「っ!?」

ペパロニ「好きだから抱きしめて欲しいんすよ!」

アンチョビ「お、お前……何言ってるんだ!正気か!?」

ペパロニ「正気っすよ!だってパスタ茹でるのめっちゃ上手いし、新しいパスタのレシピとか考えるのすっげーし…………アンチョビ姐さんの特製パスタ最高っす!!」

アンチョビ「……ペパロニ。お前は好きなのは私じゃなくてパスタだ」

ペパロニ「違うっすよー!あー、もう!なんて言えばいいのかなー!!」

ペパロニ「アンチョビ姐さんは……カッコよくて、可愛い!で、頭いい!優しい!面倒見もいい!あとは…………たまになんかムラッとくるっす!!」

アンチョビ「む、ムラッ……!?」

ペパロニ「そっす」

アンチョビ「そっす。じゃないんだって!」

ペパロニ「自分でもなんでなのかわかんないんすけど、みんなの前で頑張ってる姐さんを見てると…………こう……ギューッて抱きしめたくなるっつーか……」

アンチョビ「ぅ……///」

ペパロニ「……あ、でもそれだと私がだいしゅき………………ホールドをする側になっちゃうっすね」アハハ

アンチョビ「…………もう、いい///」

ペパロニ「へ?」


アンチョビ「さっきからずっと恥ずかしいセリフを言って…………これ以上聞いてられるか!」

ペパロニ「姐さん……」

アンチョビ「し、してやる」

ペパロニ「?」

アンチョビ「だ、だいしゅきホールドしてやるから立て!」

ペパロニ「あ、は、はいっす」スクッ

アンチョビ「………………//」

ペパロニ「あはは……いざとなると……結構照れるっすね///」

アンチョビ「あぁ……///」

ペパロニ「…………///」

アンチョビ「…………っ……」バッ

ダキッ..

ペパロニ「ぅお……///」

アンチョビ「…………////」ギュッ..

ペパロニ「ね、姐さん……軽いっすね。ちゃ、ちゃんとパスタ食べてるっすか?」

アンチョビ「…………食べてる//」

ペパロニ「…………でもこんなに軽いと夏場とかへばって…」

アンチョビ「ん……ぅ……」チュ

ペパロニ「んむぅっ!?」ビクッ!!

みほ「!!!」

華「なんということでしょう!アンチョビさん、とっても大胆です!」

優花里「え?な、何がどうなってるんですか?五十鈴殿!だいしゅきホールドしたままじゃ見えないですぅ!手を離してください!下ろしてください!!」

アンチョビ「…………ん……」

ペパロニ「……な、なんでキス……///」

アンチョビ「……お、お前が……ずっと喋るから……うるさかったんだ//」

ペパロニ「す、すんませんっす……///」

アンチョビ「ふ、ふん……//」

ペパロニ「でも……嬉しいっす。アンチョビ姐さんの唇、柔らかくて……///」

アンチョビ「っ!ま、まだ喋るか。もう一度塞いでやる……//」

ペパロニ「っ……ん………///」



みほ「…………とりあえずここにいたら邪魔だから、違うところに行こう」

華「そうですね」

優花里「五十鈴殿!下ろしてください!!このまま移動するのは見せしめですよぅ!!!」

華「うふふ。恥ずかしがる優花里さん、とっても可愛いです。そして抱き心地が素晴らしくいいですね」

優花里「五十鈴殿ぉっ……///」




みほ「…………それにしても、ペパロニさんすごかったね」

華「ええ。行動力がパネェかったです」

優花里「女性にこういう言い方はおかしいかもしれませんが、非常に男らしい感じでしたね」

みほ「うん」

華「ですが……さすがに実行するのは難しそうですね」

優花里「ええ。土下座ですもんね」

みほ「うーん……確かに抵抗はあるけど…………周りに人がいない状況なら土下座してもいいかな?」

優花里「ぅええっ!?西住殿!?」

みほ「土下座したら会長がだいしゅきホールドしてくれるとしたら…………費用対効果はすごいよ」

華「確かに土下座に料金は発生しませんから0円ポッキリですが……」

優花里「しっ、しかし!」

華「……優花里さん。仮にみほさんが優花里さんに対して土下座をし、『だいしゅきホールドしてほしい』と言われたらどう思います?」

優花里「あの西住殿が土下座してまで私の体を求めてくれるなんてぇ!!秋山優花里、本日が人生最高の日だと確信しました!!」

華「ということは……会長にもある程度通用するかもしれませんね」

優花里「あ゛っ!ち、違います!今のは言葉のあやで……」

沙織「おーい!みんなー!」

みほ「あ、沙織さん」

華「麻子さんもいますね。はぐれたのかと心配していましたが、モーマンタイのようです」

優花里「……あら?手を繋いでいますね」

沙織「え?あ、こ、これは……///」

麻子「その…………沙織と付き合うことになった」

沙織「ちょ、麻子!」

優花里「ほほう!」

麻子「私が告白して、沙織が受け入れてくれた」

華「それはそれは……おめでとうございます」

沙織「な、なんかね、麻子の告白聞いてたら、すっごくドキドキしてきちゃって。だんだん麻子のことが好きになってきたの。女の子同士だってわかってるけど……それでも……大好きになったら関係ないよね?///」

麻子「……っ……//」

優花里「も、もちろんです!女の子同士の恋愛も素晴らしいです!ね?西住殿!?」

みほ「優花里さんの言う通りだよ。二人ともおめでとう」ニコリ

沙織「ありがとー♪」


麻子「…………その、なんだ。ありがとう、西住さん」

みほ「ううん、私は何もしてないよ」

麻子「いや、あのきっかけがなければ私は告白なんてできなかった。感謝してる」

みほ「…………うん」

麻子「だから……今さらながらだが西住さんに出来る限り協力したいと思う。今はどういう状況だ?」

みほ「色んな人に相談してきたんだ。それで、土下座したらどうかっていう方法を得たところ」

麻子「土下座……」

沙織「だ、だめだよ土下座なんて!女の子がすることじゃないよ!ううん、男の子もだけど!!」

みほ「でも……土下座するだけで幸せになれるなら、それは夢の片道切符だと思うんだ」

沙織「ファンタジーな言い方してもダメだよ!」

みほ「私は……だいしゅきホールドのためなら土下座してもいいと…」

??「すまない、ちょっといいか?」

沙織「え?」

みほ「あ!」

優花里「あなたは……!」

まほ「………………」

エリカ「……………」

優花里「黒森…」

みほ「お姉ちゃん!」

まほ「黒森お姉ちゃんではない。西住まほだ」

沙織「みぽりんのお姉さん…」

華「とそのツレの方……」

エリカ「だ、だれがツレよ!私は逸見エリカ!覚えなさい!」


みほ「お姉ちゃん……今日はお疲れ様」

まほ「みほもあなたたちもお疲れ様」

エリカ「隊長……」

まほ「ええ」

みほ「?」

まほ「……本来なら、試合について色々話そうと思っていた。しかしちょっと気になることがあってな。悪いが、話に割り込むような真似をした」

沙織「そ、そんな!全然いいですから!でも……その……気になることってなんですか?」

まほ「…………君たちの会話の中で、土下座という言葉がたくさん聞こえてきたんだが……どういうことだ?」

みほ「それは…………」

まほ「私の聞き違いでなければ、みほが土下座をするような話だったが……」

みほ「う……」

麻子「な、なんだ?無表情なのに睨まれているようなこのプレッシャーは……!」

優花里「歴戦の勇士がもつオーラのようなものでしょうか?」ゴクリ

エリカ「隊長の妹ともあろうものが、土下座なんて許されると思ってるの!?」ギロリ!

麻子「あ。こっちの人はやかましいだけでそれほど怖くないな」フゥ

華「痩せ犬が昼メシをねだっているかのようで微笑ましいですね」

エリカ「うるさいわねあんたたち!!」

まほ「みほ。答えなさい。あなたが土下座するというのはどういうこと?そこまでしなければ許されないようなことをしたの?」

エリカ「きっと裏切り行為ですよ隊長!」

まほ「裏切り行為なのか?みほ」

みほ「ち、違うよ!」

エリカ「じゃあ万引きとかですよ隊長!」

まほ「万引きとかなのか?みほ」

みほ「違う!」

エリカ「じゃあなんなのよ!」

まほ「じゃあなんなの?みほ」


みほ「え、ええと……」

みほ(どうしよう……理由を話したところで、お姉ちゃんが納得するとは思えない)

みほ(というより、土下座してだいしゅきホールドしてもらったとしても、土下座したことがお姉ちゃんの耳に入ったら、お母さんも知ることになるだろうし、そうなれば西住流の名を汚したことになって、最悪の場合は大洗から転校させられるかもしれない……そうなったら、会長のだいしゅきホールドはジエンドになっちゃう……)

みほ(つまり、おでこに土がつくくらいの土下座をしてだいしゅきホールドを懇願する『でこつち作戦』は使えない……)

エリカ「何黙ってるのよ!早く答えなさい!ほら!早く!」

まほ「……少し黙っていてくれるかエリカ。ずっと左方向から怒鳴られると左耳だけ聴力が下がる危険性がある」

エリカ「す、すみません隊長!立ち位置を変えながら怒鳴りますので……」

まほ「それならいい」

みほ「………………」

みほ(でこつち作戦がダメなら、ここで正直に答える必要はないよね。うん、適当に流しておこう)

まほ「みほ。答えて」

みほ「お姉ちゃん」

まほ「何?」

みほ「お姉ちゃん大好き」ニコッ

まほ「な……っ……///」

エリカ「はあ!?あんた急に何言ってんの!?」

みほ「今日は試合してくれてありがとう!すっごく嬉しかった♪」

エリカ「そんなぶりっ子みたいな手を使って隊長が騙されるとでも…」

まほ「エリカ」

エリカ「はい?」

まほ「いいじゃないか。こういう騙され方なら」

エリカ「………………へ?」

まほ「おそらくみほは、私の問いを面倒に思ったか、答えたくないと思ったのだろう。だからこのような手に打って出た」

エリカ「そうでしょうね。誤魔化す気ですよ」フン

まほ「でも……それでも大好きと言われれば悪い気はしない//」フフッ

エリカ(た、隊長が照れてる!?)

まほ「となれば細かいことは遠くへポイだ。帰ろう」クルッ

エリカ「ええっ!?土下座について聞かなくていいんですか?その…………妹さんが土下座するかもしれないんですよ!?」

まほ「!そうだった。いくらなんでも土下座はポイできない。みほ、土下座の有無だけは答えてくれ」

みほ「土下座は……しない」

まほ「本当か?」

みほ「うん。約束する」


まほ「そうか…………わかった。みほを信じるよ」

みほ「ありがとうお姉ちゃん」

まほ「……………………」

みほ「……………………」

まほ「……………………」

みほ「………?」

エリカ「隊長、これ以上待っても『お姉ちゃん大好き』とは言わないと思いますよ」

まほ「そうか……一回だけか。いや、だからこそ価値が出る」

みほ「………………!」

みほ(あ、ちょっと待って。土下座する理由を説明しづらいからつい流しちゃったけど、でこつち作戦に代わるアイデアは今無いわけだし、お姉ちゃんたちにも一応聞いてみよう)

みほ「あの……エリカさんと大好きなお姉ちゃんに相談があるんだけど……いいかな?」

まほ「!おい、エリカ!二回目がきたぞ!」

エリカ「そうですね」

まほ「妹の相談に乗るのは姉として当然のこと。存分に相談してくるといい」

みほ「ありがとうお姉ちゃん。でもまずはエリカさんからお願いしていいですか?」

エリカ「私?しょうがないわね……相談ってなんなの?早く言いなさいよ」

みほ「ここではちょっと……」

エリカ「は?いいじゃないのここで」

みほ「……お姉ちゃんに関わることなのですがそれでもいいですか?」

エリカ「そっ、それを早く言いなさいよ!じゃあちょっと離れたところで……」

みほ「はい」

まほ「なんだ?私には内緒の相談なのか」

みほ「ごめんねお姉ちゃん。プライバシーのアレだから」

まほ「プライバシーのアレなら仕方がないか」

みほ「でもただ待ってるのって退屈だよね……あ!そうだ!沙織さん」

沙織「なに?」

みほ「お姉ちゃんの話し相手をしてもらってもいいかな?」

沙織「え?別にいいけど」

みほ「ありがとう!じゃあお願いするね。爆笑必至のトークで場を繋いでね」ニコッ

沙織「ば、ばくしょう!?無茶だよみぽりん!」

みほ「あ、そうか。ただトークしてと言われても難しいよね…………じゃあテーマは『こんな桃太郎は嫌だ』からスタートで」

沙織「お題とかそういう問題じゃなくて!!」

みほ「行きましょうエリカさん」

エリカ「わかったわよ」

沙織「みぽりーん!!!」




みほ「……さて。これくらい離れれば大丈夫かな」

エリカ「まったく。面倒ね」

みほ「ごめんなさい」

エリカ「……いいわよ、もう。それで、相談って何よ。隊長のことって言ってたけど」

みほ「あ、はい。ええとですね。だいしゅきホールドって知ってますか?」

エリカ「知ってるわよ。いつか隊長にしたいと思ってるんだから」

みほ「それなら話が早いです。相談というのはですね、もしお姉ちゃんにだいしゅきホールドしてもらうには、エリカさんならどうするかが聞きたいんです」

エリカ「た、隊長のだいしぇ…しゅきぇホールドですって!?」

みほ「ごめんなさい。何言ってるか全然わからないです」

エリカ「ちょ、ちょっと興奮して噛んだだけよ!察しなさい!」

みほ「はい」

エリカ「……それにしても……あんたねぇ、想像してみなさいよ。あの隊長よ?凛々しくてクールで素敵なあの隊長が、だいしゅきホールドなんてするはずないじゃない。その時点で質問の前提が成り立たないわよ」

みほ「かもしれません。でも……」

エリカ「?」

みほ「そんなお姉ちゃんがだいしゅきホールドしてくれたら、たまらないんじゃないですか?」

エリカ「!!!」

エリカ「…………………………」



~~~~~~~~~~~~~~



まほ「エリカ……///」

エリカ「た、隊長……どうしたのですか?急に夜景の綺麗なレストランを貸し切った上に呼び出して。しかも女の子らしい清楚で純情乙女のような服まで着て……」

まほ「私は…………エリカが好きだ」

エリカ「!!」

まほ「だからこそ……ある衝動が抑えられないんだ」

エリカ「衝動……ですか?」

まほ「ああ。しかし…………それはとても私らしくなくてな。エリカに失望されてしまうのが怖い」

エリカ「わ、私は隊長に失望なんて絶対にしません!」

まほ「だが……」

エリカ「私も……隊長が好きです!大好きなんです!」

まほ「じゃあ…………してもいいか?」

エリカ「もちろんです!」

まほ「……ありがとう」ダキッ

エリカ「あっ……」

エリカ(隊長が抱きしめてくれた……隊長の体がこんなに近くに……体温と鼓動が私の中に流れ込んでくるようだ)ドキドキ

エリカ「た、隊長がしたいのは…………わ、私を抱きしめることだったのですね!」

まほ「…………それもある、が……違う」

エリカ「えっ?」

まほ「……………笑わないか?」

エリカ「あ、はい。誓って」

まほ「…………ゅきホールド」

エリカ「はい?すみません、聞こえませんでした」


まほ「だ、だ……だいしゅきホールド///」

エリカ「………………」

まほ「エリカに…………だいしゅきホールドしたい、んだ///」

エリカ(隊長……顔が真っ赤だ。よほど恥ずかしかったんだろう。長い睫毛の下で瞳は潤み、視線は下に向けられている。しかし反して鼓動は激しく、心拍数は上がっていく)

エリカ(なんて色っぽい。そしてなんと倒錯的なんだ。戦車道でも日常でも凛々しくあった、大人っぽい隊長の口から『だいしゅき』という幼子が言うような言葉が発せられることが、たまらなく欲情を誘う……)ゴクリ

エリカ(それも全部、隊長が私を好きであるがゆえだというのもたまらない)

まほ「だ、だめ……だろうか?」

エリカ「…………いえ、ダメではありません」

まほ「ぁ……//」

エリカ「ただし」

まほ「?」

エリカ「だいしゅきホールドをする前後は、赤ちゃん言葉でのおねだりをお願いします」ドン!!

まほ「なっ!?」

エリカ「だいしゅき、という言葉を使う以上、普段通りの言葉遣いでは違和感がありますから」

まほ「だ、だが…………」

エリカ「赤ちゃん言葉でお願いしてくれる隊長を見たいです!」ドン!

エリカ「何故なら、そんな隊長も好きだから!」ドドン!

エリカ「幼い隊長も今の隊長も愛したいんです!!」ドドドン!!

まほ「…………………………」

まほ「………………わ、わかった//」

エリカ「……すみません、聞こえませんでした」

まほ「わ…………わかった…………でちゅ////」

エリカ(隊長~~~~~!!!!!)

まほ「わた……ま、まほはぁ……え、エリカにぃ…………だ、だいしゅきホールドしたい……でちゅ…………ぅぅ……///」カァァァ..

エリカ(隊長~~~~~~!!!!!)



~~~~~~~~~~~~~~


エリカ「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ……///」

みほ「ど、どうしたんですか?急に舌出して……」

エリカ「どうしたもこうしたも……あんな隊長……///」

みほ「ふふ……お姉ちゃんのだいしゅきホールドを想像したんですね。どんな感じでしたか?」

エリカ「何言ってるのよ……してもらう前にノックアウトされたわよ」ハァハァ

みほ「……はい?」

エリカ「と、とにかく!あんたが相談したいのは、隊長はとても可愛いから妹として嫉妬するってことでいいのよね?」

みほ「全然違います」

エリカ「はぁ?それ以外に何があるのよ。あんな……赤ちゃん言葉とか想像させといて……///」

みほ「ええと……さっき言いましたよね?お姉ちゃんにだいしゅきホールドしてもらうために…」

エリカ「ああ……そんなこと言ってたわね」

みほ「それで……エリカさんならどうしますか?」

エリカ「………………真剣な話、でいいのよね?」

みほ「はい」

エリカ「私なら…………」

みほ「………………」

エリカ「告白するわ」

みほ「え?」

エリカ「私の気持ちを正直に伝えて、まず恋人になる。そしてそれからだいしゅきホールドをお願いするわね」

みほ「恋人……」

エリカ「ええ。少なくとも今の関係ではありえないわ。もし仮に今、隊長にだいしゅきホールドをお願いしたとしたら、怒られるか、あるいは失望されるでしょうね」

みほ「………………」

エリカ「これが私の答えよ」

みほ「ありがとうございました」

エリカ「ふん……じゃあ戻りましょう」

みほ「はい」




エリカ「隊長、今戻りました」

まほ「おかえり」

みほ「みんなごめんね、待たせちゃって…………あれ?」

沙織「………………」ズーン...

みほ「沙織さん、どうしたの?やけに暗いけど」

沙織「みぽりんの無茶ぶりに応えようとした私のなれの果てだよ……」

みほ「そっか」

沙織「軽い!必死になって頑張ったんだよ!?」

みほ「冗談だよ。ありがとう沙織さん」

沙織「……うん……」

まほ「武部さん」

沙織「へっ?はっ、はい!」

まほ「楽しい話をありがとう。面白かった」

沙織「ええっ!ずっと無表情だったのに!?面白かったならもっと表情頑張ってよ!!」

華「沙織さん。目上のチャンネーにタメグチはいけませんよ?」

沙織「そ、そうだよね。すみませんでした」

まほ「いや、いいさ」

沙織「はぁ…………もー!麻子も手伝ってくれたらよかったのに!」

麻子「私では力になれないジャンルだったからな」


まほ「……さて、次は私の番か?」

みほ「あ、うん……ええと……お姉ちゃん、だいしゅきホールドって知ってる?」

まほ「すまない……知識不足だ」

エリカ「!た、隊長」

まほ「ん?なんだ?」

エリカ「た、試しに一度言ってみてもらってもいいですか?『だいしゅきホールド』って」

まほ「構わんが」

エリカ「で、で、ではお願いします」

まほ「『だいしゅきホールド』。これでいいのか?」

エリカ(ヒャッホォォォゥ!最高だわぁぁあ!!!)グッ!

まほ「?よくわからないな」

みほ「では実際に見てもらった方がいいかな。優花里さん」

優花里「はっ、はい!西住殿!不肖、秋山優花里!西住殿のためなら例え火の中、水の中……!」

優花里(再び!西住殿にだいしゅきホールドできる瞬間がやってきましたぁ!)

まほ「秋山さんが見せてくれるのか。だいしゅきホールドとは一人でやることなんだな」

エリカ(やった!二回目がきた!)ワァ

みほ「あ、ううん。一人じゃなくて二人でやることなの」

まほ「そうか。ではもう一人は……エリカ、頼む」

エリカ「へ?」

まほ「ずいぶん詳しそうだからな」

エリカ「そ、それは……まぁ……」

エリカ(隊長以外の人と……しかも隊長の目の前で…………)ズーン

まほ「……嫌、か?」

エリカ「!い、いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ!!隊長の頼みとあらば、例え火の中、水の中!」

沙織「……あの二人、結構似てる?」

華「かもしれませんね。ボスであるみほさん・まほさんに寄りそうチンピラ、という感じがします」

麻子「それは語弊がありまくると思うぞ」

優花里「で、では……準備はよろしいでしょうか?」

エリカ「かまわないわ」

みほ「じゃあ優花里さん、ゴー!」

優花里「はいっ!」ダダッ

ダキッ!

エリカ「ッ!」

ギュー..

優花里「………………」

エリカ「………………」

優花里(あ、あれ?)

エリカ(……何かしら、この感じ……)


まほ「これがだいしゅきホールド……ふむ。この足の部分が『だいしゅき』なのか?」

みほ「うん、多分。ホールドと意味合いを兼ねてるとも言えるけど」

まほ「なるほどな」

みほ「それで……お姉ちゃんならこのだいしゅきホールドをしてもらう時、どうやってお願いする?」

まほ「相手によるな。年下なら頼めばいけそうな気はする」

沙織「……あの人に迫られたらオッケーしちゃう子、多そう」

麻子「女性ファンはかなり多いらしいからな」

みほ「うーん……」

みほ(確かにお姉ちゃんならその手で楽勝だろうけど…………あ、そうだ)

みほ「じゃあ相手がうちの会長だったら?」

沙織「みぽりん……!?」

みほ(お姉ちゃんならどうするのか、気になる)ゴクリ

まほ「角谷杏か…………そうだな。私なら、というより西住流ならこうする、というのでいいか?」

みほ「うん」

まほ「それならば…………再度廃校をチラつかすだろうな」

みほ「…………!」

沙織「!!」

まほ「角谷杏がだいしゅきホールドをしなければ大洗が廃校になるという状況を作り上げる。役員と結託してな。そして私自身も被害者のように振る舞う」

まほ「最終的に私が大洗を救う流れに持ち込み、廃校阻止の瞬間にもう一度だいしゅきホールドを引き出す。西住流なら間違いなくそうするだろうな」

華「マジですか……!」

麻子「鬼だな西住流……さすが勝利至上主義」

沙織「でもさすがに廃校を匂わせるのはやり過ぎだよ。ね、みぽりん?」

みほ「…………………………」



みほ『メガネザルさんチーム。廃校にするぞと脅しつつも結局廃校に出来ない感じでお願いします。パンツァー・フォー!』

役人『メガネザルさんチーム、了解しました』



みほ「…………いける、かも」

沙織「ダメダメ!絶対ダメだからね、みぽりん!!」

みほ「はっ……!つい……」

みほ(そんなことしたら会長、悲しむよね……うん。これは絶対ダメだよ)


まほ「……アドバイスになったかはわからないが、私からは以上だ」

みほ「あ、うん。ありがとうお姉ちゃん」

まほ「では私はそろそろ行くとする」

沙織「お疲れさまでした」

華「今日は来ていただいてありがとうございました」

麻子「…………」ペコリ

まほ「ああ。ではな」クルッ..テクテク

みほ「………………あれ?なんか忘れてるような」

優花里「…………」

エリカ「…………」

みほ「そうだ。二人がだいしゅきホールドしたままだっ…………あれ?」

優花里(な、なんなのでしょうか……この心地よい感触は……)

エリカ(……どういうわけか、この子とくっついてると安心するのよね……)

みほ(…………ちょっといい雰囲気になってる?意外かも)

沙織「ゆかりん。そろそろ離してあげなよ」

優花里「へ?あ、し、失礼いたしました」スッ

エリカ「ぁ……え、ええ」

優花里「すみません、ずっと抱きついてしまって」

エリカ「構わないわ。その……思ったより悪くなかったし」

みほ「エリカさんも今日はありがとう」

エリカ「……ふんっ!別にお礼を言われることじゃないわ。あ、それより隊長、お待たせして申し訳…………あら?」

みほ「お姉ちゃんならエリカさんをほっぽって先に帰ってるよ?ほら」

まほ「」テクテクテク

エリカ「た、隊長!!待ってください!!」ダダダダダ!

沙織「なんか、最後まで慌ただしい人だったね」

華「でも愛嬌があって可愛らしいですよね。野良犬みたいです」

優花里「あ!それわかる気がしますぅ!」

麻子「褒めている……のか?」

みほ「多分ね」アハハ..




まほ「エリカ?どうした?」

エリカ「ど、どうしたじゃないですよ……はぁ……はぁ……私を置いて一人で行ってしまうなんて……」

まほ「ん?そうだったのか。すまん」

エリカ「いえ……」

エリカ(隊長にとって私なんてその程度の存在ってことかしら……)ハァ

まほ「私の隣か後ろには必ずエリカがいるものだと思い込んでいたからな。確認するのを怠った」

エリカ「えっ」

エリカ(それって……///)

まほ「悪いクセだな。エリカがいて当たり前と思うなんて」

エリカ「そんなことありません!わ、私は隊長のことが……」

まほ「エリカが秋山さんと離れがたいと感じていることを察せなかった。反省している」

エリカ「え」

まほ「ずいぶんと長い間抱き合っていたな。だが、そうしていても違和感を覚えないほど似合っていたぞ」

エリカ「違っ……私は隊長を…」

まほ「心配しなくていい。うちの学校の連中には黙っておくさ。もし相談があるなら私が乗ろう。できるだけ力になると約束する」

エリカ「だから違っ…」

まほ「そうか……私では力になれないというのか……」ハァ..

エリカ「そっ……そんなことありません!隊長が力をお貸しいただけるのであれば、百人力です!!」

まほ「わかった。ではいつでも協力しよう。秋山さんと上手くいくといいな」

エリカ「あ、いえ、それはその…」

まほ「大丈夫。私が応援する。それとも、私の応援では不服だろうか?」

エリカ「不服なんて滅相も無い!」

まほ「よかった」

エリカ「はい!!」

まほ「では今後私はエリカが秋山さんと仲良くなれるよう協力すると誓おう。と、それはともかくそろそろ帰るとしようか」

エリカ「はい……」

エリカ「……………………」

エリカ「あぁぁぁ………」

エリカ(隊長の言葉を否定できない自分が憎い…………でも協力してくれる優しい隊長……好きです……///)




みほ「………………」

沙織「みぽりん。結局どうするの?」

みほ「うーん…………」

華「とりあえず会長に会いに行きますか?」

みほ「うーーーん……」

麻子「……どういう風にするのか決まらないのか?」

沙織「というか、色んな人の意見を聞いたけど、どんなのがあったっけ?」

華「ローズヒップさんが『無理矢理する』、ノンナさんが『周りに嘘情報を流してその気にさせる』、西さんが『突撃』…」

麻子「サンダースの隊長が『自分から先にする』、アンツィオのペパロニさんが『土下座してお願いする』、だったな」

沙織「無理矢理と土下座は論外だよねっ」

優花里「周りに嘘情報を流す、というのも……会長を騙すのは難しいでしょう」

沙織「みぽりんから先にするってのはどう?」

みほ「は、恥ずかしい……かな……///」

麻子「気持ちはわかるが、得られるモノと天秤にかければ自ずと答えは出る気がするが」

みほ「麻子さん…………」

麻子「…………私だって恥ずかしかったが、それでも動くことで結果として沙織と付き合えた。西住さんのお膳立てがあってだがな」

沙織「ま、麻子……///」

みほ「…………確かに……そうだよね」

みほ(もたもたしてると、会長の腰の感触の良さに気付く人が現れるかもしれない。ただでさえ会長のそばには副会長の小山さんと広報の…………か、か、かめ、かめやま……かめしま………………片眼鏡の……………………………………………………………………………………………………あ!河嶋さんもいるんだし)


優花里「そういえば、黒森峰のお二人にも聞いたんですか?」

みほ「うん。お姉ちゃんが『廃校をチラつかせる』」

優花里「な、なんと……」

みほ「エリカさんが『告白して恋人になる。そのあとにだいしゅきホールドをお願いする』って」

優花里「!!」

沙織「あ、それいいじゃん!一番まともだよ」

みほ「やっぱりそう……かな?」

沙織「そうだよー!」

みほ「告白……」

みほ(会長に……告白……)

優花里「い、異議あり!!」

みほ「?」

沙織「ゆかりん?」

優花里「こ、告白とか……行き過ぎですよぅ!もっとスクールライフを満喫しましょう!西住殿!」

沙織「んー、確かに急と言えば急かなぁ………………あ!じゃあさ、エリカさんのアイデアを少し修正したらいいんじゃないかな?」

優花里「?」

みほ「どういうこと?」

沙織「告白って何も愛の告白だけじゃないでしょ?罪の告白とか秘密の告白とか。だから、みぽりんは会長に愛の告白をするんじゃなくて、真剣にだいしゅきホールドをお願いしたいっていう気持ちを告白したらいいんじゃない?」

みほ「あ、なるほど……」

沙織「これって超名案じゃん!?」

みほ「うん!いいかも。ありがとう沙織さん」ニコッ

沙織「えへへへ」

華「沙織さん、やりますね。最後の最後にスゴワザが出ました」

麻子「……というか、一番最初に出そうなその案が今の今まで出なかったことが不思議だ」

優花里「確かに……皆さん個性的ということでしょうか?」

みほ「……よし。会長に会いに行こう」

みほ(自分からだいしゅきホールドしてほしいって告白するのはすっごく恥ずかしいけど……腰の感触のためだもん!頑張ろう!)




沙織「さて、会長はどこにいるんだろう?」

みほ「うーん……」

華「やけっぱちで探すのは無理でしょうし……」

麻子「携帯にかけて聞いてみればいいだろう」

沙織「そだね。ええと……」

??「その必要はないさ」ポロロン

沙織「!このポロロンは……」

ミカ「やあ」

沙織「やっぱり!継続高校のミカさん!」

ミカ「違う」

沙織「へ?」

ミカ「風が運んでくれたのさ」ポロロン

沙織「その返しこそ絶対違う!」

ミカ「おやおや。向かい風になってしまったよ」ポロロロン

ダージリン「素敵じゃない。人生の終着点にたどり着く時間を引き延ばしてくれるのだから」コポポポ

沙織「…………ダージリンさん?」

華「どうしてミカさんがダージリンさんの肩を抱いているのですか?」

ミカ「風がそうしろと囁いたのさ」ポロロン..

優花里「だ、ダージリンさんは一体どういうつもりで……」

ダージリン「人生で一番大事な日は二日ある。生まれた日となぜ生まれたかをわかった日」

オレンジペコ「マーク・トウェインですね」

麻子「ぅわ、いつの間に」

ダージリン「わたくしはなぜ生まれたのか……それが今日、わかったわ。こうしてミカと結ばれるためだったのよ」コポポポ..

みほ「決めゼリフで紅茶を注ぐのは、ミカさんがカンテレを鳴らすのと同じような意味なのかな……」

優花里「私の質問に答えているようで答えてませんね……」

ダージリン「あぁ……素晴らしい。幸福というものは、一人では決して味わえないものね」コポポポポ..

オレンジペコ「アルブーゾフですね。ソ連時代の劇作家の……って、わあ!こぼれちゃいます!カップをこちらに」カチャカチャ

ダージリン「ありがとうペコ」

ミカ「違う。風がやってくれたのさ」ポロロン

オレンジペコ「それ違います!私がやりました!もう……慌てたからちょっとこぼれちゃった……」ハァ


麻子「……結ばれると言ったが、それは二人が恋人になったということなのか?」

ミカ「違う」ポロロン

みほ・沙織・優花里・華・麻子「えっ」

ミカ・ダージリン「きっともともと私たちは一つだったのさ(ですわ)。だから元に戻っただけさ(ですわ)」ポロロン..コポコポ..

沙織「ね、ねぇ……これって」

オレンジペコ「バカップルですね。聖グロリアーナと継続の」

華「意外なようなそうでないような……」

アッサム「私のデータでは、相性はかなりいいようです」

ローズヒップ「デタラメであってほしいですわー!」オホホホ

優花里「ろ、ローズヒップさん……あの……気を落とさずに」

ローズヒップ「気なんて落としませんわ!落としてもすぐ拾いますわー!」

沙織「だ、大丈夫!きっといつかチャンスは来るよ!いい人と巡り合えるから!」

ローズヒップ「巡り合わなくてもだいじょぶですわー!」

沙織「え?」

ローズヒップ「ダージリン様とミカさんがケンカとかしたら、すぐにダージリン様を奪うのですわー!ゲットしますわー!」

沙織「そ、そう……」

華「すごいメンタルですね……ローズヒップさんの生ける花も見てみたいです」

ミカ「それより、君たちの会長さんがどこにいるのかを知りたいだろう?」

みほ「あ、はい」

ミカ「この道をまっすぐ行って曲がったところの広場にいたよ。道と言っても、人生や生きる意義と言った比喩的な意味での道ではなく…」

みほ「ありがとうございます」

ミカ「君たちの健闘を祈ります」ポロローン

ダージリン「ですわ」コポポーン..




みほ「!いた……」

杏「」アハハハ

桃「」フフフ

柚子「」ニコニコ

沙織「あそこでお喋りしてるね」

麻子「どうする西住さん。会長と二人にならないとまずいだろう」

みほ「うん……」

華「このままさりげなく近付いて会長さんをかっさらいますか?」

みほ「ううん、それはハードボイルドが過ぎるからちょっと…………あ、こえはり作戦というのはどうかな?みんなで大声で叫びながら近付く。すると会長たちはひるむはず。その時、私が会長の手を取って『ここは危険です!逃げましょう!』と連れ出す……」

沙織「なんかそれ、大騒ぎになっちゃいそうだけど……」

麻子「結局ハードボイルドになってるぞ」

優花里「最高に斬新です西住殿ぉ!!」

麻子「いや、さすがに無理があるだろう」

沙織「そうだよ。深く考えなくても普通に誘えば大丈夫だと思うよ?」

みほ「で、でも……あそこに私が行って、会長と二人で話したいって切り出すのは不自然に思われちゃう気がするよ……」

優花里「ですね!こうなったらもう全てを忘れて、いつも通り過ごしましょう!だいしゅきホールドなんてなかったんですぅ!」

みほ「それはだめかな」

優花里「でっ……ですよねぇ!?わかっていますとも!」

沙織「ゆかりん……」


麻子「心は決まってるんだろう?会長にだいしゅきホールドをお願いする、と」

みほ「あ、うん……」

麻子「だったら……私たちに任せろ」

みほ「え?」

麻子「……西住さんと会長が二人きりになれるよう私たちが協力する」

みほ「麻子さん……」

沙織「うんうん!私も協力するよ!」

みほ「沙織さん……」

華「もちろん、私もやります!どのような手を使ってでも西住さんと会長を二人にします。ステゴロで挑むくらいの意気込みです!」

みほ「華さん……」

優花里「わ、私は……やっぱり西住殿と…」

みほ「優花里さん……」

優花里「い、いえ、私は西住殿のだいしゅ…」

みほ「優花里さん……」

優花里「ち、違うんです。私は西住殿と付き合いた…」

みほ「優花里さん……」

優花里「………………………………私も協力します」

みほ「ありがとう。優花里さん」ニコリ

優花里「うぅ……その笑顔だけでも今年いっぱい頑張って生きていけますぅ……」

沙織「ふぁ、ファイトだよゆかりん!」

華「そうですよ優花里さん!ほら、タフマン飲んで元気出してください!」

麻子「……では行くぞ」




みほ・沙織・華・優花里・麻子「………………」ザッ..

杏「んぁ?」

桃「む?お前たち…」

柚子「あら。みんな、今日はお疲れ様」ニッコリ

みほ・沙織・華・優花里・麻子「お疲れ様でした」

桃「何か思いつめたような顔をしているが一体…」

沙織「か、河嶋さーん!ちょっといいですか?」

桃「なんだ?」

沙織「どうやったら河嶋さんみたいに立派な広報になれるのかを聞きたいなーって思いまして。お話聞いてもいいですか?」

桃「ほう。いい心がけじゃないか。構わんぞ」

沙織「わー、ありがとうございます!で、ではあっちの方に行きましょう!」

沙織(うわぁ……自分で言っといてなんだけど、超不自然だよこの誘い方!ここから離れる必要ないじゃん!怪しまれちゃうかもー!)

桃「…………そうだな。では行こうか」

沙織「え?あ、は、はい」

沙織(よかった……上手くいったみたい)ホッ

桃「会長!少しの間、出かけてきます」

杏「ん。りょうかーい」

桃「……武部。行くぞ」テクテク

沙織「あ、はい……」テクテク



桃「それで、一体何が聞きたいんだ?」

沙織「あー…………ええと………………明日の天気?」

桃「広報関係なさすぎだろ!まったく……」




華「小山先輩」

柚子「なに?」

華「あ、あのー……生け花のインスピレーションが湧く場所を探してるんですが、お付き合いしていただいてもよろしいでしょうか?」

優花里(い、五十鈴殿……!それはあまりにも強引ですよぅ!)

柚子「……うん、いいよ」ニッコリ

優花里「うぇえっ!?」

華「あ……ありがとうございます」

柚子「会長、私ちょっと行ってきます」

杏「あいよー」

柚子「じゃあ行こっか」テクテク

華「は、はい」

優花里「あっ……私も行きます」タタタ

麻子「……………………」

麻子(なんだ。怖いくらいに順調じゃないか。私がフォローする必要もなかった)

麻子(あとは西住さん次第だな。私は……とりあえず少し離れたところで待っていよう。なんか疲れたしな)フワァ..




杏「……………………」

みほ「…………………」

みほ(会長と二人きりになれた……みんなありがとう)

杏「西住ちゃ~ん」

みほ「は、はいっ!」

杏「西住ちゃんは行かなくていーの?みーんなどっか行っちゃったよ?」

みほ「あっ!わ、私は………大丈夫です」

杏「あそーう」

みほ「………………」ドキドキドキドキ

みほ(勇気を出さなきゃ、だいしゅきホールドしてもらえない…………でも……言い出しづらい……)

杏「……みんないなくなっちゃったし、私もどっかいこっかなー」

みほ「あ、ま、待ってください!!」

杏「んー?私になにか用あるの?」

みほ「そ、れは……その…………」

杏「………………」

みほ「………………」

みほ(言おう!言うしかないよ!みんなのお膳立てを無駄にはできないし、何より……だいしゅきホールドしてほしい!!)グッ..

みほ「…………会長」キリッ

杏「…………な、なに?」

みほ「お願いがあります」

杏「お願い?」

みほ「はい」

杏「………………」

みほ「………………いきなりこんなことを言われたら、ビックリするかもしれませんけど……」

杏「……うん」

みほ「…………私に」

杏「………………」

みほ「私に……もう一度だいしゅきホールドしてくれませんか!?」

杏「…………………………」

みほ「………………………」

杏「…………………………」

みほ(無反応!?これはやっちゃったパターン!?なんとかしないと!)アセッ


みほ「………………あ、あの……今のはいわゆるその……変な意味ではなく純粋な希望と言いますか……その……」ダラダラ..

杏「いーよ」

みほ「…………え?」

杏「そんなのお安い御用だよっ。思いつめた顔してっからもっと深刻なことかと思っちった」アハハ

みほ「あ……え……?」

杏「じゃあいくよー?」

みほ「は、はい!」

杏「そぉ~うれっ!」タタッ!

みほ「……!!」ゴクリ

みほ(来る……ッ!待ちに待った……会長のだいしゅきホールドがッ!!)

杏「っ……」バッ!

ダキッ!

みほ「!!!」

みほ(これ!この感触だよぉ!!)

みほ(あぁ……感動する……会長、柔らかい……)ジーン

杏「…………ょいしょっとお」パッ

みほ「あ……」

みほ(もう終わり?ちょっと短い気がするけど…………でもすごい満足感……)エヘヘ

杏「はい、おしまいっ!」

みほ「は、はい!ありがとうございました!」

杏「いーよいーよ。そんじゃ、私は行くよ。用はもう済んだっしょ?」ニヒヒ

みほ「あ……」

ズキン!

みほ(あれ?)

みほ(会長、笑顔だけど…………でもどこかが違う気がする)

みほ(なんていうか…………見てて、すごく胸が痛む。まるで、無理矢理笑顔を作ってるような……)

みほ「あのっ……!」

杏「そんじゃねっ。西住ちゃん♪」

みほ「は……はい………」

みほ「…………………………」

みほ(会長………?)




みほ「………………」

麻子「?浮かない顔だな。失敗したのか?」

みほ「……ううん、成功した……と思う」

麻子「思う?どういうことだ?」

みほ「会長にお願いして、だいしゅきホールドしてもらえたんだ。すっごく嬉しくて、感動した。でも……」

麻子「?」

みほ「……会長の笑顔を見たら、なんか…………すごく胸が痛んで」

麻子「………………」

みほ「自分でも理由がよくわからないの。会長はいつも通りなのに、どうしてこんな風に思うのか……」

麻子「…………西住さん。それは…」

沙織「みぽりーん!」タタタ

みほ「沙織さん……」

麻子「ずいぶん早いな」

沙織「会長が歩いていくの見えたから、話は終わったのかなって思って。それに河嶋さん、会長のところに行っちゃったし」

優花里「西住殿ぉおおおおおおおおおおおお!!!!」

華「優花里さん、少々声が大きすぎます。鼓膜に掌底かまされたみたいに痛みます」

みほ「………………」

みほ(協力してもらって目的は達成したのに、私がこんな暗い顔してたらみんなに悪いよね)

みほ「みんな、今日は色々と手伝ってくれてありがとう!」ニッコリ

麻子「……………」

優花里「そんなぁ~!西住殿のためとあらば、全身全霊を尽くすのが当然と言えますぅ!」

華「ええ。親友のために力を貸すのは自然なことです」


沙織「みぽりんにはいつも助けられてるからね~!で、結果はどうだったの?」

みほ「それは……」

沙織「って、聞くまでもないよね!今のみぽりんの笑顔を見れば」

華「そうですね。成功したみたいで嬉しいです」

優花里「………………そ、そうですよね~!西住殿、おめでとうございます!」

みほ「……うん、ありがとう。みんなのおかげだよ」ニコニコ

沙織「やったね!じゃあこの後はどうする?みぽりんの作戦成功パーティーでもする?」

華「あ……すみません。私はもう少ししたら家の用事を手伝わなくてはならなくて……」

沙織「そっかー……残念」

麻子「……私は眠い。目的は果たしたし、解散でいいんじゃないか?なぁ西住さん」

優花里「西住殿!私は五十鈴殿にもらったタフマンを飲んだおかげで、目がギンギンに冴えてますぅ!」

麻子「…………五十鈴さんが不参加じゃ味気ないじゃないか。せっかくなら全員揃っている時がいい」

優花里「そ、そうですよね……」

麻子「もう解散でいいよな、西住さん」

みほ「あ、うん。そうだね」ニコニコ

みほ(麻子さん……私を気遣ってくれて……?)

沙織「うーん……じゃあまた今度ってことで、今日はこれで解散しよっか」

みほ「うん」

沙織「それじゃ、途中まで一緒に…」

みほ「あ、ごめん沙織さん。私ちょっと寄っていくところがあるから」

沙織「へ?じゃあ私たちも一緒に…」

みほ「ううん、大丈夫。それじゃまた明日!今日は色々ありがとう!本当に助かったよ!」

沙織「あ、うん」

優花里「お疲れさまでした、西住殿!」

華「また明日お会いしましょうね」ウフフ

みほ「それじゃ!」タタタタタ!

麻子「………………」




沙織「みぽりん、ずいぶん急いでたね?」

麻子「………………」

沙織「麻子?」

麻子「私も寄るところがあったのを思い出した。みんなは先に行っててくれ」

沙織「え?」

優花里「そうなのですか……残念ですぅ」

麻子「じゃあな」

沙織「ま、麻子!」

麻子「ん?」

沙織「つ、付き合った初日だよ!?一緒に帰ろうよ!!」

麻子「う……///」

華「あらあら」ウフフ

麻子「…………すまん、沙織」

沙織「むー……」

麻子「……よ、夜……電話で話そう」

沙織「え?」

麻子「その……二人で話したいこともあるし……」

沙織「そ、そっか……だったらいっそのこと……泊まりに来る?」

麻子「な……っ!しょ、初日でそんなこと……!」

沙織「!?ち、違うよっ!何想像してるの!?ただお泊まりするだけだよ!」

麻子「あ、あぁ……そうか……すまん。お邪魔する」

沙織「まったくもう……///」

華「……では私たちは行きましょうか」

優花里「はい」

沙織「じゃあ後でね、麻子」

麻子「ん」

麻子「……………………」

麻子「………………さてと」テクテク




麻子「…………ちょっといいか?」

桃「ん?」

柚子「冷泉さん……」

麻子「……会長は?」

桃「……どこに行くとも言わずに行ってしまった」

麻子「そうか……」

柚子「………………」

麻子「…………聞きたいことがある」

桃「なんだ」

麻子「会長と……西住さんの話だ」

桃「………………」

麻子「さっき二人きりで会った後、西住さんの様子がおかしくてな」

柚子「………………」

麻子「……正直、西住さんの望みは割と荒唐無稽と言うか、先輩に対して若干失礼な側面もあるんだが、それでも西住さんは純粋にそれを望んでいて……私も少しだが協力した」

麻子「会長の性格なら西住さんのお願いに対して、笑って流すかあっさりやってくれるかのどちらかだと思っていたからな」

柚子「………………」

麻子「だが、会長と会ってからの西住さんの様子はおかしかった」

麻子「……私には理由がわからないんだ」

桃「………………それを何故我々に聞く」

麻子「西住さんと会長を二人きりにしようと、沙織と五十鈴さんがあなたたちを誘い出そうとした時……あまりにもあっさりと受け入れられたのが不自然だったからな」

麻子「もしかしたら私たちの狙いがわかっていたのかもしれない、と思ったんだ」

桃「…………さすがだな冷泉。見抜いていたか」

柚子「桃ちゃん……!」

桃「止めるな柚子。お前もさっきの会長を見ただろう?悲しさを隠そうと、無理矢理笑顔を取り繕って…………我々の前ですら強がっていつも通りに見せようと……」

柚子「それは…………」

麻子「……どういうことだ?」

桃「……あれは大学選抜との試合が終わった頃からだ……」

麻子「?急に何を……」

桃「いいから聞け。今のお前の問いに関係する話だ」

麻子「………………」




杏『…………かぁしまぁ』

桃『はっ!なんですか会長』

杏『最近さー、西住ちゃんとよく目が合うんだよねー』

桃『西住と?』

杏『そうそう。なんか私に言いたいことあんのかなー?かぁしま、西住ちゃんから私のこと聞いてない?』

桃『いえ、特に何も』

杏『……そっかぁ……ま、西住ちゃんと私ってあんま接点ないからねぇ~、そりゃそっか』アハハ

柚子『そんなことないと思いますけど……戦車道ではチームメイトですし、生徒会長と生徒ですから接点がないなんてことは……』

杏『…………でもあんま話とかしないし』

桃『…………会長?』

杏『ぁんでもないよ~っと。小山ぁ、干し芋ちょうだい』

柚子『はい、どうぞ』



桃「以前に比べ、会長との会話の中に、西住が出てくることが多くなった」




柚子『あら、こんなにいっぱい』

杏『んぁ?どしたー小山ぁ』

柚子『ファンレターが届いてるんです。全国大会はテレビ中継されましたし、新聞や雑誌で特集も組まれましたから、多少はあるかもしれないと思ってましたが、これほどとは……』

桃『この段ボールの中身が全部ファンレターか!?』

杏『あっはは、すっごいねぇ』ケラケラ

桃『ん?これは…………宛先ごとにまとめてあるじゃないか』

柚子『うん。ちょっと前に、ファンレターが届いたら受取人ごとに分けてもらって、全部仕分け終わったら生徒会室に運ぶようお願いしてあったから』

杏『ほうほう。大洗の一番人気は誰かな~?』

桃『ふむ…………どうやら西住が一番多いようですね』

杏『……………………ふーん』

桃『黒森峰でも戦車道やってたからっていうのもあるんでしょう。それに試合で活躍しているますし』

柚子『お姉さんのまほさんとか、女性人気がすごいですから、妹さんももしかしたら女の子に好かれるタイプなのかもですね』

杏『……………………』ムスー

柚子『会長?』

杏『これさぁ』

杏『西住ちゃんには渡さない方がいいかもねー』

柚子『え?』

桃『何故ですか?会長』

杏『……あー……だってさ、チヤホヤされると調子乗っちゃうよー?西住ちゃんがフワフワしてたら大洗はヤバいっしょ?』

桃『それは確かに』

柚子『……武部さんとかも危なそう……』

桃『ではこのファンレターはどうしましょう?西住の分だけここに保管しますか?それとも全員の分を保管しますか?』

杏『……………………』

桃『会長?』

杏『………………やっぱなし』

桃『え?』

杏『全員に渡すことにする。さっきの発言取り消しっ!』

柚子『会長……?』

杏『いやーぁ、よく考えたらさー、こんだけ頑張ったわけだし、少しくらいはチヤホヤされてもいいかもって思ってさ』

杏『っていうか、私もファンレター読みたいぞー!私宛のをくれー!』アハハハ

桃『ふふっ……』

柚子『会長ったら』ウフフ



桃「西住が関わると、私たちが見たことのない、今までの会長とは違う一面が現れた気がする」




桃『会長』

杏『ぁにー?』

桃『秋山優花里の西住に対する態度がまるで求愛行動であると、戦車道のメンバーたちの間で噂になっております』

杏『………………へー』

桃『ウサギさんチームの面々には、二人はすでに付き合っていると邪推する者までいる始末……』

柚子『さすがに女性同士だし、そんなことないと思うけど』

杏『……西住ちゃんってそっちの気があるのかね?』

桃『さあ……それはわかりませんが』

柚子『どうします?会長。変な噂が立つと、秋山さんはともかく西住さんは困りそうな気がしますが』

杏『……ほっとけばいいと思うよ』

桃『秋山を注意するだけである程度この問題は解決しますが……』

杏『いいっていいって。素直なのはいいことだよ~。変にプライド持つよりさー』

桃・柚子『???』



桃「時折、物憂げな顔をすることが増えた。何かを考え込んでいるような……諦めているような、そんな顔だ」




杏『えっへへへ……』ニコニコ

柚子『会長、ごきげんですね。何かあったんですか?』

杏『なんかさぁ、西住ちゃんが隊列のことについて相談に来てさー』ニコニコニコ

杏『戦車道のことなら私より全然西住ちゃんの方が詳しいのにね~?』ニコニコニコニコ

桃『あの……先ほどの予算案の続き、よろしいでしょうか?申し訳ないのですが、やはり目標とする数値が出せず……』

杏『んぁ?いいっていいって。そのままチャチャーッと進めちゃって』

桃『え?しかし』

杏『そんじゃあとはよろしくぅ~♪』テクテク..ガチャ..バタン

桃『会長……一体どうしたんだ?』

柚子『さっきまでは機嫌あんまり良くなかったのにね?』

桃『それを抜きにしても、あれだけはしゃぐ会長は見たことないな……西住と会った途端にああなるとは……』

柚子『うん……』



桃「――――だがそれも、西住と会い、話すだけで全てが変わる。生き生きとした会長らしい笑顔になるんだ」

桃「いや……より魅力的な、と言うべきかな」

麻子「それは……」

柚子「……うん。直接聞いたわけじゃないけど、わかるよ」

桃「あぁ、会長とは昨日今日の付き合いじゃないからな」

麻子「………………」

桃「だからさっき、会長が西住と別れて一人で戻ってきたということは……」

柚子「おそらく……上手くいかなかったんだな、って」

桃「私は!すぐにあとを追いかけたい気持ちでいっぱいだった!でも……」

柚子「もし私たちが行ったら、会長は……落ち込んだ姿を私たちに見せないよう、無理にでも明るく接しようとするはず……そんな負担はかけたくない……」

麻子「……………………」

麻子(今日、会長と二人で会ったあとに戻ってきた西住さんは落ち込んだ表情だった)

麻子(会長にだいしゅきホールドをしてもらったと言っていたのに何故……と思ったが……)

麻子(……これはおそらく…………)




みほ「………………はぁぁ……」トボトボ..

みほ(強引に一人で帰ることにしちゃった)

みほ(今日はみんなにお世話になったのに、自分勝手だよね)ハァ..

みほ「でも……」

みほ(あのまま一緒にいたら、笑顔を保てなくて、みんなに心配かけちゃっただろうし)

みほ「………………会長……」

みほ(どうして会長の笑顔を見た時、胸が痛んだんだろう?それにあの笑顔は……いつもの会長と違ってた)

みほ(もしかしたら会長は…………本当はだいしゅきホールドなんてしたくなかったのかも。後輩のお願いだから渋々やってくれたけど笑顔の裏では怒ってたとか……)シュン

みほ「はぁぁ……」

みほ(だいしゅきホールドしてもらった時はあんなに幸せだったのに…………)

みほ「………………気分転換にコンビニに行こう」テクテク


【サンクス店内】

みほ「……………………」

みほ「………………はぁ」

みほ(ダメだ……いつもならワクワクしてたまらないはずなのに全然気分が乗らないよ。まるでいつものサンクスじゃないみたい)

みほ(それは店舗が違うって意味じゃないし、店長が変わったわけでもない。なのにいつもと違うサンクス。これは私の心理状態がサンクスをそうさせてるんだよね)

店員「ありがとうございましたー」

みほ(…………結局15分で出ちゃった。悲しみの最短記録樹立……)ハァ

みほ(これからどうしよう……サンクスでダメならファミマにって気分でもない……)

みほ「……………………」

みほ(ダメだ…………何も考えないでいるとさっきの会長の顔が頭に浮かんでくる……その度に……胸が痛む)

みほ(どうしたらいいんだろう……?)

みほ(今みたいに……考えがまとまらなくて、何がなんだかわからなくなってる時は…………はっ!?)


しほ『戦場では常に冷静に。混乱に陥った時こそ、頭を切り替え、いつも以上の冷静さを取り戻すのです』


みほ「……………………」

みほ(お母さんがいつも言ってた西住流の心得……)

みほ「…………すぅ…………はぁ~~~…………」

みほ(深呼吸しながら、呼吸に意識を集中して、外界の情報をシャットアウトする)

みほ「………………………………」スッ

みほ(…………うん。落ち着いてきた)

みほ(今の私は、理由のわからないことで頭を悩ませて、答えを見い出せずにいる。となれば、まずは頭を悩ませている理由を明らかにすることが重要)

みほ(だけど、私には会長の笑顔を見た時にどうして胸が痛んだのかわからない。だったら、それよりもっと手前のところから探ることにしよう)


みほ(……そのためには私と会長の立場を入れ替えて、もし私が会長だったら……と考えてみれば、何か答えが見つかるかもしれない)ウン

みほ「ええと…………」

みほ(私は会長の呼び出しに応じた。そして会長が私に『だいしゅきホールドしてください』とお願いしてきた)

みほ(私なら、会長にだいしゅきホールドできるんだと喜ぶ……はず)

みほ(……パターンを変えよう。相手を会長から、か……か、か……かめ……かめやま………………あっ、河嶋さんだ。河嶋さんにしてみよう)

みほ(河嶋さんにだいしゅきホールドを頼まれる。うん、断るよね)

みほ(好きでもない人にそんなこと言われてもやるわけが…………)

みほ「あ、あれ?」

みほ(……好きでもない人にはやらない……ということは…………す、好きな人になら……やる?)ドクン

みほ(う、ううん!そんなわけないよ!私みたいな子を、会長が好きになってくれるわけないもん!)

みほ(それに、河嶋さんなら断るけど、もっと断りにくい……小山先輩とかに頼まれたら、私も……多分するだろうし)

みほ(あ、でも小山先輩も私のことが好きでお願いするわけじゃないよね。そんな相手だったら、やんわり断っても問題ないはず……)

みほ「会長の場合はどうだろう?小山先輩に頼まれたらだいしゅきホールドするのかな?」

杏『小山ぁ~♪』ダキッ

柚子『会長♪』ギュッ

みほ「む」ヌヌヌ...

みほ(考えるのも嫌だけど……でも多分すると思う。ただ、私の時みたいに無理に笑顔を浮かべることはない気がする)

みほ(そんな風に取り繕うのってどういう時だろう…………あ、さっき私がやったのがそうかな。周りに心配かけたくないから、落ち込んでるのがバレないように……)

みほ(あれ?だとすると、会長も落ち込んでた?いつもの笑顔と違って見えたのはそういうことだった……?)

みほ(でもどうして?もし私にだいしゅきホールドしたくないなら断ればいいはず)

みほ(それなのに、だいしゅきホールドしたあとに落ち込んだ……その理由を考えよう)


みほ(まずは、体のどこかを痛めた……うん、これはない)

みほ(あとは、戦車道の相談とか、真面目な話だと思ったのに、全然違う内容でガッカリした…………いや、会長はそういうのも楽しむタイプだからこれもないかな)

みほ(うーん………だいしゅきホールドを頼まれたことに落ち込んだっていうことは……だいしゅきホールド以上のことを望んでたってことだよね……)

みほ(ここでもう一度、私が会長だったらって考えてみよう。私が会長に呼び出されて、だいしゅきホールド以上のことを望むなら……何を望む?)

みほ「……………………」

みほ「…………愛の告白、とか?」

みほ「っ……///」

ドクン..

みほ「あ、あれ?」ドキドキ

みほ(なんだろう、これ?急に……ドキドキが……止まらなくなってる)ドキドキドキドキ

みほ(会長に告白されるのを想像しただけで…………なんか…………嬉しくてたまらない……///)

みほ(これって…………もしかしなくても……恋、ってやつなんじゃ……)

みほ「あ……」ハッ

みほ(だから、他の人にだいしゅきホールドされても、会長の時みたいな嬉しい気持ちにならなかったんだ……)

みほ(会長だから。好きな人だから。すごく幸せだったんだ……)

みほ(今さら気付くなんて、私ダメダメだなぁ……)

みほ(………………ん?ということは……もしかして会長も私の告白を……?)ドキ

みほ(な、なんて!そんなわけないよ!会長が……私を、なんて…………私なんて戦車道しか取り柄がないし、沙織さんが話しかけてくれるまで友達を作れないくらいだし……コンビニに長居するし……)

みほ(……でも…………もし……もしもだけど、会長が告白されることを期待してたとしたら……だいしゅきホールドをお願いされて落ち込むのも……わかる気がする)

みほ(好きな人に呼び出されて、告白を期待してるところに、だいしゅきホールドをお願いされる……これって、脈ありとは思えないもんね)

みほ(体目当てっぽいというか……少なくとも恋愛感情があるとは思えない。だって好きな相手に、告白するより先にだいしゅきホールドをお願いするって結構頭おかしい気がするもん)

みほ(恋だと自覚してなかったとはいえ、私、痛いことしちゃったよー……)

みほ「……って、これも全部会長が私のことを好きだったらっていう前提だけどね……」ハハ..

みほ「……………………」

みほ「そうだよ……会長が私のことを好きなんて、そんなことあるはずない……」

杏『西住ちゃ~ん』ニヒヒ

みほ「………………」

杏『西住ちゃんのおかげだよ。ありがとね♪』ニコッ

みほ「でも…………」

みほ(もし1%でも……可能性があるのなら……)

みほ(会長を悲しませたままで終わらない方法があるのなら…………諦めない!)

みほ「だって…………」

みほ「諦めたらおしまいだから!」ダッ!!!




みほ「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……」タタタタタ..

みほ(会長はどこに……?)

みほ「あっ!」

麻子「!」

桃「む」

柚子「西住さん……」

みほ「皆さん…………あのっ……会長がどこにいるか知りませんか!?」

桃「…………おそらく生徒会室だ」

柚子「一人になりたい時は、いつもそう」

みほ「あ……ありがとうございます!!」タタタタッ!

麻子「……………………」

柚子「どうやら、私たちの出番はないみたいね」

麻子「……自分で答えを出した」

桃「……ふんっ!会長を悲しませたら容赦しないぞ、西住」


【生徒会室】

杏「……………………」

タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!タッ!

杏(ん?誰か走ってるのかなー?元気でうらやましぃねー)

タッ!タッ...

杏「あり?」

杏(足音が止まった?)

ガチャ!

みほ「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

杏「……西住、ちゃん?」

みほ「はぁ……はぁ……っ、かっ……会長!」

杏「………………」

杏「」ニコッ

みほ「……!」

杏「どしたの西住ちゃん?息切らすまで走っちゃって。ふふん、よろしい、そんなに干し芋が欲しいなら分けてあげよーう」ニコニコ

みほ「…………いりません」

杏「そ?美味しいのに」

みほ「干し芋も、無理矢理作った笑顔も……」

杏「………………」ピクッ..


みほ「………………」

杏「…………………」

みほ「…………あ、あの!私!今から変なこと言います!でも……無理に笑顔を作らずに、怒ったら怒って、呆れたら呆れて欲しいんです!」

杏「………………」

みほ「な、なんか変な日本語ですけど、お願いします!」

杏「………………」

みほ「私……その……会長のことが好きなんだと気付かずに、会長の腰の感触が好きだと思ってたんです!」

杏「!!!」

みほ「本当に、ここ最近はずっと会長の腰の感触ばかり思い浮かべてて……それで今日は色んな人に相談して、会長にだいしゅきホールドしてもらおうと奮闘して…」

杏「………………」

みほ「その願いが叶ったことが嬉しくて!でも会長の笑顔を見た時に……胸が痛くて…………どうしてだろう?って考えた時、やっと私、自分の気持ちに気付いたんです!」

杏「………………」

みほ「あの…………今さらですし、自分でも何言ってるのかよくわからないぐらいですけど…………か、会長のことが好きなのは本当です!自信があります!!」

杏「…………それで」

みほ「は、はい!」

杏「西住ちゃんはどうしたいの?」

みほ「え?」

杏「私を好きだって言うけどさー、それで結局どうしたいの?」

みほ「うーん……もちろんだいしゅきホールドは何度もしてもらいたいですし、デートもしたいですね。あとキスもですし、お風呂場で体を洗いっこもしたいです」

杏「なっ……////」

みほ「?どうかしましたか?」

杏「あ、あっけらかんとすごいこと言ってっから…………でもさ、私たち女同士じゃん?そこんとこどうなの?」

みほ「え?それがどうかしたんですか?」

杏「……いや、普通に考えて……さ」

みほ「女の子同士でも何も問題ありません。会長が男性でも女性でも、結局好きになったと思います。よく言いますけど、好きになったのがたまたま同性だった、ということです。それに黒森峰なんかでは割と女の子同士のカップル多かったですよ?」

杏「…………マジ?」

みほ「はい」

杏「……………………そっか」

みほ「…………………」


杏「…………つーかさ」

みほ「はい」

杏「西住ちゃんが私のことどういう人間だと思ってっか知んないけどさ」

みほ「?はい」

杏「私さー、結構めんどくさい女、かもよ?」

みほ「はぁ」

杏「……西住ちゃんが他の女の子と話してるだけでも、なんかムーッてなっし」

みほ「普通じゃないでしょうか?私も会長が小山先輩とか、かめ……かめやま、かめしま…………あっ、河嶋さんと仲良さげに話してるの、少しヤキモチ焼きますし」

杏「…………最近、今頃西住ちゃんどうしてるかなーとか考えること多いし、付き合ったら束縛するかもしんない。後ろをとことこ追いかけたりとか」

みほ「私なんかを束縛してくれる…………わぁ……すごい嬉しいです!」

杏「……………………そ、それに…」

杏「私……」

杏「……む……」

みほ「む?」

杏「む………胸、小っちゃい……………よ?」カァァ..

みほ「か、会長…………////」

みほ(真っ赤な顔で上目遣いとか!!)ハワァ!

杏「ぁんだよっ……///」

みほ「可愛すぎです会長!そこまで考えてくれてたなんて!」

杏「だ、だって……!もしそうなった時にガッカリされたら…………泣くし……///」

みほ「会長~~~///」

みほ(あぁ……会長の愛情を感じる……こんなにも私のことを好きだなんて………………って)

みほ「…………あれ?」

杏「どした?」

みほ(私、会長に好きって言われてない。気持ちは伝わったけど、言葉として好きって言ってもらってない!)


みほ「あの…………私は会長のことが好きなんですけど、会長は……私のこと、どう思ってますか?」

杏「そ、れは…………まぁ、言わなくてもわかるっしょ。今の会話から考えれば」

みほ「………………私のこと好きじゃない……ってことですか……?」

杏「そんなわけないよ」

みほ「じゃあどうして好きって言ってくれないんですか?もしかして、私に同情して……」

杏「ち、違う違う!西住ちゃんネガティブすぎだよぅ」

みほ「だったら……なんで好きって言ってくれないんですか?」

杏「…………うぅ……」

みほ「会長……」ウルウル

杏「だからそのー…………理由は単純っていうか……好きって言いたくないんだよね……」

みほ「!どうしてですか……やっぱり私みたいなコンビニ狂いは嫌いと……」

杏「そうじゃなくて!」

みほ「………………」ウルウル

杏「なんで言いたくないかっていうのはさ」

杏「………い、一度好きって言っちゃったら、もう止まれなくなりそうだったからで……///」

みほ「え?」

杏「西住ちゃんを見ながら、好きって口にしちゃったら……多分……やばいから……///」

みほ「…………」ドキッ


杏「ず~~っと抱きしめてほしいとか、頭撫でてほしいとか……他にもいっぱい、変なこと考えちゃうと思うし……///」

みほ「~~~っ///」

杏「と、年上としての威厳もなんもなくなるくらい、ベタベタに甘えちゃいそうだったから……」

みほ「あっ……だから告白も私からされるのを待ってたんですね」

杏「い、言うなぁっ……もう……////」

みほ「会長……///」ナデナデ

杏「こ、こらぁっ……私は先輩だぞぉ!な、撫でるなよぅ……///」

みほ「会長が今言ったじゃないですか。頭撫でてほしいとか考えちゃうって。それに、先輩ですけど恋人でもありますよね?」

杏「ふぇっ……?」

みほ「だって、私は会長が好きですから付き合いたいです」

杏「う……///」

みほ「改めて、会長の気持ちを聞かせてください」

杏「…………私は……」

みほ「………………」

杏「………………西住ちゃんが……」

杏「…………好き///」

杏「…………だから…………わ、私と付き合って……ほしい……///」

みほ「はい。もちろんです♪これで私たち、恋人同士ですね」

杏「あ…………う、うん、そだね…………私……西住ちゃんの…………恋人」

杏「……………………えへへ///」ニヘラ

みほ「~~~~っ///」

みほ(か、会長!!可愛すぎです!!)

みほ(愛らしくて……我慢できない!!)

みほ「こういう時は…………」

杏「へ?」

みほ「だいしゅきホールドです!」ガバッ

杏「ぅわあああぁあ……――――」




杏「もう……西住ちゃん容赦なさすぎだって。すりすりしすぎ」

みほ「ごめんなさい……会長が可愛すぎてつい……」

杏「っ……まーいーけどさ///」

みほ「……なんか」

杏「ん?」

みほ「夢みたいです。会長が私のことを好きになってくれるなんて」

杏「………………」

みほ「私、特に頭がいいわけでもないし、お料理もそこまで得意じゃない。ドジで優柔不断だし、戦車道くらいしか取り柄がなくて……」

杏「………………」

みほ「私の周りにいる人たちの方が、よっぽど魅力的で素敵だから……私なんて…」

杏「……私さ」

みほ「?」

杏「大洗が大好きなんだ」

みほ「え?」

杏「小山や河嶋……他のみんながいるこの学校が」

みほ「は、はい……」

杏「そんな大洗が廃校になるって知らされた時…………かなりショックだったなー。あはっ、今まで生きてきた中であんなに頭が真っ白になったことはないねー」

みほ「………………」

杏「……で、色々手を尽くしてさ。みんな知っての通り、最終的に戦車道で全国優勝すれば廃校を阻止できるって約束を取り付けた」

杏「でもうちには戦車もほとんど残ってなかったし、経験者もいない。優勝なんて夢のまた夢……だからこそ役人もこの条件を受け入れたんだろうね」

みほ「………………」

杏「……けどさ、無理難題だからって諦めるつもりはなかった。精一杯やってダメなら仕方ないなんて嫌だ。絶対なんとかしてやる……そう思ったんだ」

杏「そんな時、西住ちゃんのことを知った」

みほ「!」

杏「戦車道の名門、黒森峰から転校してきた子。西住流家元の出身。それだけで何かしら事情があったとわかる。戦車道のないうちに来たことから、戦車道から離れたかったんだろうと察した…………でも」

杏「半ば強引に、私たちの都合で西住ちゃんを戦車道に引っ張り込んだ…………切羽詰まってたとはいえ、嫌な思いをさせちゃったよね。ごめん」

みほ「…………いいえ。それに最後は自分の意思で決めましたから」

杏「……ほんっと、西住ちゃんは優しいよね……」クス

みほ「そんなこと……」

杏「だからこそ、みんなが西住ちゃんに付いていくんだよ。仲間思いで、冷静で、判断力があって……頼れる西住ちゃんにさ」

みほ「褒めすぎですよ……//」


杏「そんなことない。だって、西住ちゃんのおかげで全国優勝できたんだから。大学選抜との試合に勝てたのもそう」

みほ「それはみんなが…」

杏「…………西住ちゃんはヒーローなんだ」

みほ「え?」

杏「大洗を……私の大好きな場所を守ってくれた、ヒーロー」

みほ「……………」

杏「特に頭がいいわけでもないし、料理もそこまで得意じゃない、ドジで優柔不断な、ね」ニヤリ

みほ「も、もうっ!」

杏「……正直、いつから西住ちゃんのことが好きになったのか、はっきりとはわかんないんだ。でも……気付いたらずっと目で追うようになってた」

みほ「!……」ドキ

杏「西住ちゃん、全っ然気付いてなかったでしょ?」ニヒヒ

みほ「は、はい」

杏「バレないように心がけてたからねー。どうせ片想いだと思ってたし。だから……」

杏「……西住ちゃんが私を受け入れてくれて…………すっげー嬉しい」

みほ「会長……」

杏「…………ありがとね」ニコッ

みほ「いえ!私こそ……会長みたいな素敵な人が私を好きになってくれるなんて思ってなくて!」

みほ「会長はとても可愛いですし、干し芋をモグモグ食べてるところ、癒されます!砲撃も上手で判断力抜群、リーダーシップがあるからみんなに慕われてて……」

杏「西住ちゃん……」

みほ「……でも、私も会長と同じで、いつから好きになったのか……わからないです。でも……だいしゅきホールドされた時の腰の感触が見事だったのは確実です」

杏「そ、そっか……腰の感触が……//」

みほ「あっ!?す、すみません!今のはヤラシイ意味じゃないです!その……女性的と言うか健康に育ったなぁみたいなことで……!変な含みはありませんから!西住流は性欲強いですけど!ほんと、真面目なアレですから!誤解しないでください!」アセアセ

杏「…………ふふっ」

みほ「?」

杏「あははは!慌てすぎだよ西住ちゃん」

みほ「は、はぁ……」

杏「別にそこまで焦らなくてもいいのに。ものっすごいアタフタしてんね~」ニヒ

みほ「っ……///」

杏「西住流は性欲強いとか、そんなことわざわざ言わなくても…………あははは!」

みほ「うぅぅ……///」


杏「あー、笑った笑った」

みほ「笑いすぎですよ……」

杏「あは、ごめんねっ。でも笑ったおかげで緊張がほぐれたよ~」

みほ「え?緊張してたんですか?」

杏「……まぁねー。さっきまでは結構パニくっててさ。何言ったかあんま覚えてないくらいだもん。今はようやくいつもの自分に戻ったって感じ」ニコ

みほ「でも……」

杏「どしたの?」

みほ「……さっきの」

杏「んぁ?」

みほ「緊張してた時の会長、可愛かったですよ?」

杏「っ……!?」

みほ「なんかちょっと弱気で甘えん坊な感じが、普段とのギャップで強烈でした。私がヒーローなら、会長はまさにヒロインですね」ニッコリ

杏「わ、忘れよう西住ちゃん!干し芋あげるから!」

みほ「特に、頭を撫でてほしいと言った辺りの可愛さは…」

杏「わー!わー!」

みほ「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに……」

杏「よくないっての。私は恋人とはもっとこう……ちゃあんと付き合いたいわけ」

みほ「それは私もです」

杏「お互いを高め合うっていうか……支え合う感じ。やたらイチャイチャするバカップルみたいなのは……ちょっと嫌なんだよね」

みほ「あ、確かにそうですね。浮かれすぎてる残念な感じは沙織さんで学んでますし、私も会長と同意見です」

杏「でしょ?」

みほ「よかったぁ。会長と私、理想の恋人像が一緒ですね」

杏「!う、うん……そだね//」

みほ「……………………」

杏「………………………」

みほ「…………ええと、では改めて」

杏「?」

みほ「不束者ですが、これからもよろしくお願いします」ニコッ

杏「あ……」

杏「うん。こちらこそ。よろしくお願いします――――」ニコッ




1ヶ月後

みほ「これで今日の練習は終了です。お疲れさまでした!」

全員「お疲れさまでしたー!!」

ワイワイガヤガヤ..

沙織「今日も疲れたねー!」

優花里「はい!でも楽しかったです!」

華「丘から下へ向かって砲撃するのは気持ちいいですね。戦車の上部にネリチャギを入れるようで」ウフフ

麻子「眠い……」

沙織「もー!麻子はいっつも眠い眠いって言うんだから」

麻子「自分に正直に生きてるだけだ……」

沙織「そのくせ夜は私を寝かせてくれないんだから困るよねー」

優花里・華「!!」

麻子「ばっ……!ばかっ!何言ってるんだ沙織……///」

沙織「えっ……あ、ご、ごめんね麻子……///」

麻子「い、今のは違うからな!」

優花里「…………わかっております。ですよねぇ?五十鈴殿」

華「ええ」

麻子「そ、そうか……ならいいんだ。まったく、沙織はうっかりしすぎだ」

沙織「ごめん……」

麻子「昨日の夜のことを思い出してしまう気持ちは痛いほどわかるが……TPOをわきまえろ」

沙織「でも昨日の……『もっかいして』っておねだりする麻子が可愛すぎて頭から離れないんだもん」

麻子「それを言うなら私だって。授業中も練習中も……感じすぎて息も絶え絶えになっていた昨日の沙織を思い出してしまう。その度に体がうずくんだ」

沙織「麻子……///」

麻子「……せ、責任とってもらわないとな」

沙織「じゃあ…………いこっか?」

麻子「………………///」コクリ




優花里「………………」

華「……………………」

優花里「行ってしまいましたね」

華「そうですね」

優花里「二人だけの世界という感じでした……」

華「仲睦まじくて羨ましい限りです」

優花里「全くです。あ、そういえば……西住殿、今日の練習でのことなのですが…………あれ?」

華「いませんね」

優花里「さっきまでいたのですが……」

華「探してみましょう」



優花里「西住殿ー」テクテク

華「みほさーん」テクテク

優花里「にしずみど……あ、いました!」

みほ・杏・柚子・桃「」

華「カメさんチーム……生徒会の皆さんと一緒ですね」

優花里「何を話しているのでしょうか?近付いてみましょう」テクテク




みほ「お疲れ様でした」

桃「ああ、お疲れ」

柚子「西住さん、お疲れ様」

杏「おつかれぃ~」

みほ「結構ハードで疲れましたね」

桃「そうだな。しかしだんだん形になってきた」

柚子「うん、いい感じだよ」

みほ「はい。でもやっぱり疲労が溜まってまして……杏さんに癒してほしいです」

柚子・桃「!!」

杏「えー?どうしよっかなー?」ムフフ

みほ「お願いします!」

杏「……わかった。みほのお願いならしょうがないねっ♪」

みほ「やったぁ!」

桃・柚子「………………」

杏「いくよー?ぎゅーーー……」ギュッ

みほ「ふわぁぁ……疲れが抜けていく……」

杏「私も。みほを抱きしめてるとすっごい癒されるんだよねぃ」ニコッ

優花里・華「………………」

みほ「……ありがとう杏さん。じゃあ今度は『西住流ゲーム』しようか?」

杏「ん、いいよー♪」

優花里(西住流ゲーム?)


みほ「せーのっ…」

みほ「まほ」

杏「普通」

みほ「しほ」

杏「嫌い」

みほ「しほ」

杏「嫌い」

みほ「みほ」

杏「好き♪」

みほ「ぎゅーっ」ギュッ..

杏「ん……っ……///」

柚子・桃「……………………」

優花里・華「…………………」

みほ「せーのっ…」

みほ「まほ」

杏「普通」

みほ「まほ」

杏「普通」

みほ「しほ」

杏「嫌い」

みほ「みほ」

杏「好き!」

みほ「えへへ。ぎゅ~~っ」ギュッ..スリスリ

杏「///」

みほ「全問正解。よくできました♪」ナデナデ

杏「ん……////」

柚子・桃「……………………」

優花里「………………今すぐここから離れましょう」

華「ええ」




華「―――――それにしても、みほさんたち……沙織さんと麻子さんに劣らず、仲睦まじかったですね」

優花里「はい……付き合い始めた当初は今までと変わらない感じでしたが、ここ最近はもうバカップル丸出しで……」

華「この前見かけた時は、みほさんが会長を膝の上に乗せて干し芋を食べさせてあげてましたね」

優花里「つい先日西住殿の背後からこっそり近付いたら、携帯の待ち受けがボコのパジャマを着た会長でした……」

華「あらあら」

優花里「西住殿が幸せそうなので私には何も言えないですけど…………でも…………うぅ……」

華「………………」

優花里「西住殿ぉ~……」ハァァ..

華「………………優花里さん」

優花里「はい……なんでしょうか五十鈴殿」

華「優花里さんは……私のことをどう思っていますか?」

優花里「え?急にどうされたんですか?」

華「……私、最近思うんです。沙織さんと麻子さんや、みほさんと会長を見ていると、幸せそうで羨ましいと」

優花里「それは……わかります」

華「ですが、私にはお付き合いしたいと思えるような方がいませんでした。ゆえに、恋愛などとは縁遠いものだと感じていました」

優花里「なるほど……」

華「しかし!わたくし自身が気付いていなかっただけで、素敵な方がすぐ近くにいることがわかったのです!」

優花里「あっ、新三郎さんのことですね?」

華「違います!新三郎は信頼できる人でありますけど、恋愛感情はもてません」

優花里「となると…………私のお父さん……!?」

華「ありえません!」

優花里「では一体誰なんですか?その素敵な方というのは」

華「………………優花里さんです」ニコッ

優花里「ゆかりさんです?ゆかりさん…………ん?」


優花里「ええええええええ!!??わ、私ですかぁああ!!?」

華「はい」

優花里「そっ、そっ、そんな、私が素敵なんてありえないじゃないですかぁ!」

華「そんなことありません。優花里さんはアグレッシブでポジティブで純粋で裏表がなくて……そんなオーガニックな優花里さんは素敵です」

優花里「オーガニックって……」

華「フワフワな髪には花を生けられますし、うっすらと香る床屋さんの匂いもグッドです」ニコリ

優花里「あ、ありがとうございますぅ……しかし…………私は西住殿が……」

華「最後まで諦めないその姿勢も素敵です!」

優花里「うっ……しかし……」

華「優花里さんはわたくしのこと、嫌いですか?」

優花里「!?い、いえ、そんなことないです!」

華「ではわたくしとお付き合いしてくれますか?」

優花里「そ、それはちょっと……」

華「不安なのはわかります!しかし安心してください!色々と勉強しますから!」

優花里「そういう問題ではなくてですね……」

華「わたくし、花を生けるだけではなく、散らす方にも興味が出てきています。なのでどちらを希望されても精一杯、集中してこなしてみせます」

優花里「あのぅ……意味がわからな…」

華「わからないのであれば、わかるまで教えます。では手始めにわたくしの部屋へ……」グイッ

優花里「へっ?あ、えっ、その……」アセアセ

華「布団という名の花器、優花里さんという可憐な花……はぁあぁ……」ウットリ

優花里「……な、何をする気ですか!?」

華「最初はちょっとした触れ合いですね。抱きしめながら両足を腰に絡めてもらいたいです」

優花里「うぇっ!?そ、それって……」

華「……わたくし、以前優花里さんにしていただいた、だいしゅきホールドの腰の感触が忘れられなくて……///」ポ

優花里「あ、う、え……?」

華「では、行きましょう!」グイグイグイ..

優花里「五十鈴殿ぉおぉ~~~~!!??」ズルズルズル..



おわり

今さらだけど、沙織⇒桃の呼び方は「桃ちゃん先輩」だった気がしてきた
間違ってたら脳内変換よろです

かなり長くなりましたが、読んでくれた人、どうもありがとう
html依頼出してきます

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