―――――事務所―――――

ｶﾞﾁｬ
藤居朋「おはよー！」

緒方智絵里「絶対にフレアビキニ！　あの胸のフリフリがカワイイんだよっ！」

白菊ほたる「いいえ！　普通のビキニにパレオの組み合わせです！」

智絵里「むむむ……！」

ほたる「ううう……！」

朋「ちょ、ちょっと二人とも！？　どうしたの！？　け、ケンカ！？」

智絵里＆ほたる「「朋さんに似合うのはこっちの水着（です）！！！」」

朋「ええ！？！？！？」

智絵里「朋さんはあのスレンダーさがウリなんだからっ！　胸にフリフリをつけて、相対的にウエストが細く見えるフレアがいいの！」

朋「やけに説明口調ね」

ほたる「確かにスレンダーさをウリにすることは賛成ですけど……、でもスレンダーを推すなら胸を隠さずに、パレオの巻き方でスレンダーさを前に出すのもいいと思うんです……！」

朋「スレンダー連呼やめて」

智絵里「これじゃあ埒が明かないね……」

ほたる「はい……、もう3時間ですか……」

朋「3時間！？　あたしについての話題なのにこういうこと言いたくないけど暇なの！？」

智絵里「もういっそ折衷案としてスクール水着とかどうかな？」

朋「どこで折り合いをつけたらそこに着地するの！？」

ほたる「いいですね……！　その上にセーラー服とか、ランドセルとかはどうでしょう……？」

朋「あたし知らないからね」

智絵里「ほたるちゃん！　そんなわきの……わけのわからないこと言っちゃダメだよっ」

朋「いま脇って」

ほたる「はい……、反省しの……しなくちゃいけませんね……」

朋「いま志乃って！」

智絵里「じゃあしょうがないね……」

ほたる「はい……」

智絵里「ちょっと――“話し合い”――しよっか」ﾄｺﾄｺ

ほたる「そうですね、それも――“運命”――ですね」ﾄｺﾄｺ

朋「待って！！！　目が怖いわよ！！！　どこ行くの！？！？」

智絵里「あっ、朋さん！　おはようございます！」

朋「見えてなかったんだ」

ほたる「少し、お話しをするだけですよ？」

朋「そういう雰囲気じゃなかったけど！？」

智絵里「今日のレッスン、残念ながら2人だけになりそうですねっ」ﾌﾌﾌ……

朋「智絵里ちゃん」

ほたる「あれ？　智絵里さん、サボるつもりなんですか？　不慮の事故か何かで……」ﾌﾌﾌ……

朋「ほたるちゃん！？」

智絵里「このクローバーの葉が4枚散る時、真の――“チカラ”――を見せてあげる……」

朋「バトルマンガ色を出さないでもらっていいかな！？」

ほたる「その喉元にかかる死神の鎌が見えないんですか……？　その節穴ではクローバー探しに時間がかかるわけですね……」

朋「ほたるちゃんノリノリね！？」


朋「こんなセリフを言う機会が来るとは思わなかったけど！　あたしのために争わないで！！！」

智絵里「……なんて、冗談ですよっ」

朋「ええ……」

ほたる「もちろんです……」

朋「そ、そもそも、どうして水着の話になったの？」

ほたる「あ、まだ話してませんでしたね……、これです」ﾍﾟﾗｯ

朋「企画書……？　えーっと、“海開きイベント開催”……？」

智絵里「はいっ！　水着でのお仕事なんですよ！」

朋「あ、そうだったの！　去年もやったなー、海でのイベント！」

智絵里「つかささんはそこまで胸が大きい人ではなかったから大丈夫でしたよっ」

朋「フォローを先打ちするのやめてくれないかな」

ほたる「牛乳……、飲みますか？」

朋「ほたるちゃんの優しさが痛い！」

朋「えっと、イベントのお仕事って、あたしたちは何をするの？」

ほたる「えっと、前半は水難事故防止講習をするみたいですね」

朋「1日署長の時も思ったけど、よくあたしたちにオファー出すわよね」

智絵里「またひと笑い起こしますかっ」

朋「ほらもう心構えが芸人のそれだもん」

ほたる「後半は、自由に遊んでいていいみたいです」

朋「え？　お仕事は？」

智絵里「その遊んでる自然な姿を写真撮影してくれるらしいですよ」

朋「撮影……。ってことは……！？」

智絵里「はいっ！　写真集の発売が決まったんです！」

朋「え！　すごいじゃない！」

智絵里「500ページの大ボリューム！」

朋「辞書！？」

智絵里「写真集には、『5枚集めると、握手会への参加を賭けた抽選会に参加するための抽選会に参加するための抽選券になるチケット』が4～5冊に1枚入ってます！」

朋「売り方エグっ！！！！！」

朋「どんな水着にするか悩むわね……」

智絵里「ほたるちゃんはレーザーレーサー？」

朋「アスリート！？」

ほたる「智絵里さんはウェットスーツですか？」

朋「海女さん！？」

智絵里「ちょっと――“話し合い”――しよっか」ﾄｺﾄｺ

朋「もうその流れはいいから！！！」

～当日・ビーチ～


朋「いい天気！　晴れてよかったわね～」

ほたる「本当によかったです……」

智絵里「じゃあ、早速着替えてきましょう！」

朋「はいはい～」


―――――――――――――――


智絵里「わ、ほたるちゃん、かわいい！　黒を基調としたワンピースタイプだねっ」

ほたる「智絵里さんも、ピンクの水着、とっても似合ってますよ」

智絵里「あとは朋さんだけど……」

朋「お、おまたせ……」

智絵里＆ほたる「！！！」

智絵里（う、上はフリフリのついたフレア系で）

ほたる（腰にはパレオ……！）

智絵里＆ほたる（かわいい……！！！）

朋「い、いやー、せっかくだから2人の意見をどっちももらおうかなーって……。どうかな？」

智絵里「ディ！」

ほたる「モールト！」

智絵里＆ほたる「ベネ！！！」

朋「急にイタリア語！？」

～水難事故防止講習～


朋「みなさんこんにちは！　今日は集まってくれてありがとね！」

ほたる「海で早く遊びたい気持ちはわかりますが、その前に少しだけ、私たちのお話を聞いてください」

智絵里「海には危険がいっぱいあるんですよっ！　生きて帰りたいならせいぜい耳を傾けるがいいですっ！」

朋「ワードチョイスがいちいち不穏なのよね」

智絵里「では、まずは準備体操をしましょう！」

朋「海中で脚を攣ったりしたら本当に危ないからね！」

智絵里「まずは右脚を体の後ろ側に上げて、左手でその右脚の甲を持ちます。そのまま前かがみになって右手で左足の親指を掴みましょう！」

朋「なにこの体勢めっちゃキツいんだけど！！！」

智絵里「そのまま首の運動～」ｸﾞﾙｸﾞﾙ

朋「この体勢の意味は！？！？」

智絵里「みんなもやってみよう！」

朋「無理無理無理！」

ほたる「しっかりほぐしましょうね……」ｺﾞｶﾞｺﾞｷﾞｶﾞｷﾞｸﾞｺﾞ

朋「人体から起こり得ない音が聞こえるんだけど！？」

智絵里「続いてもも上げ20秒スクワット20秒休憩10秒を5セット！　始めっ！」

朋「部活じゃないんだからメニュー組まないでくれないかな！？」

ほたる「」ｸﾞｷｯｯｯ!!!!!!!!

朋「なんかヤバい音して動かなくなったわよ！？　ほたるちゃん！？」

智絵里「ケガ率10％なのに練習するからだよ……」

朋「そのパワプロみたいな価値観やめて！！！」

智絵里「続きまして、左手を左肩の前あたりにもってきてください」

朋「？」ｽｯ

智絵里「そして、右手をおへその前あたりでぶらぶらさせましょうっ。おへそについた砂を払うような感じですっ」

ほたる「？」ﾌﾞﾗﾌﾞﾗ

朋「これ……なんの運動なの？」ﾌﾞﾗﾌﾞﾗ

智絵里「エアギターです」

朋「それを今やる意味は！？」

多田李衣菜「いえーい！！！」

朋「李衣菜ちゃん！？！？」

エアギターと聞いて我慢できずに駆け付けた リーナ.T.D「なんかロックな気配を感じたんだよね！」

朋「なんなのそのロックレーダー」

エアギターと聞いて我慢できずに駆け付けた リーナ.T.D「海でみんなでエアギター！　ロックだね！」

朋「さっきから名前が鬱陶しい！！！」

智絵里『あの、誤解しないでほしいんですけど、李衣菜ちゃんは悪い人じゃないんです』

朋「なんで括弧の形が変わったの」

智絵里『ただちょっと、頭の中がロックでいっぱいで……』

朋「その言い切ったみたいな顔つきやめて」

智絵里「公式が言い出したらおしまいですよねっ！」

朋「リアクションに困る発言もやめて！！！」

※リーナ.T.Dさんはお仕事のため帰りました


智絵里「次は、溺れてしまった人への対応についてです！」

朋「うん、まず、溺れている人を見かけたら、慌てずに、近くのライフセーバーさんを呼ぶの！　間違っても、自分で助けようとしちゃダメだからね！」

ほたる「そして、陸に上がった際に意識がなければ、救命処置をとります」

智絵里「今日は、ほたるちゃんが意識のない人の役、わたしが助ける人の役で実際にやってみます！」

朋（大丈夫かな……）

ほたる「どうしますか？　一度意識を飛ばしますか？」

朋「平気な顔で言わないで！！！」

智絵里「まずは意識があるか確認しますっ」

智絵里「ほたるちゃん！　大丈夫？　火葬がいい？　土葬？」

朋「他にセリフなかったの！？」

ほたる「……」

智絵里「……」

智絵里「……では以上で講習を終わりに」

朋「諦めないで！！！」

智絵里「冗談ですよっ」

朋「冗談に聞こえないのよ……」

智絵里「まずは、気道を確保します。顎の下を軽く支えて持ち上げつつ、頭を後屈させましょう」

ほたる「」ｺﾞｷｺﾞｷｺﾞｷｯ!!!!!!

朋「ほたるちゃん！！！」

智絵里「こ、このように、力を入れすぎてはいけません」

朋「自分で若干引いてるのはおかしくない！？」

智絵里「そして、周りの人にAEDを持ってくるように頼みましょう」

朋「そうそう、ちゃんと協力してね」

智絵里「そちらの方、LEDをお願いします！」

朋「AED！！！！！　それだと電球が届いて終わりだけど！？」

智絵里「その間に心臓マッサージです！　両手の甲を重ね、相手の体と垂直になるように心臓の上に構えます」

朋「だいたい、30回くらいが目安なのよね」

智絵里「はいっ。だいたい、1分間に100回のペースがピッタリなんですが、なかなか意識するのは難しいですよね？　そこで今回は、ちょうどいいリズムの歌を見つけてきましたっ」

朋「おお、準備がいいわね！」

智絵里「その曲は、アンパン〇ンマーチですっ」

朋「へぇ～、そうなんだ！」

智絵里「実際に、ほたるちゃんにやってみましょう」ｽｯ

智絵里「なんのためーにーうーまれてー、なーにをしーてーいきるのかー」ｸﾞｯｸﾞｯ

朋「声に出す必要はないし歌詞の抜き出す場所に悪意があるし！」

智絵里「なんのためーにーうーまれてー、なーにをしーてーいきるのかー」ｸﾞｯｸﾞｯ

智絵里「なんのためーにーうーまれてー、なーにをしーてーいきるのかー」ｸﾞｯｸﾞｯ

朋「なんでそこだけリピートするの！！！！！」


※本当に1分に100拍くらいです

智絵里「そしてお待ちかねのTPP！」

朋「A！E！D！！！　いっこもあってないから！！！」

智絵里「さすがにこれは人形にやるので、ほたるちゃんは下がっていいよ」

ほたる「ご武運を……」ｻｯ

朋「下がり方かっこいい」

智絵里「説明書きにしたがって、体にシートを貼り付けます」ﾍﾟﾀﾍﾟﾀ

智絵里「そして、自動音声の指示を聞いてから……」

智絵里「発破ぁ！！！」ﾎﾟﾁｯ

朋「掛け声いらない！！！」

智絵里「以上！　水難事故防止講習でしたっ」

朋「ま、まあ、遊ぶ時は気をつけてね！」

智絵里「わたしは海より山が好きですっ」

朋「このタイミングで言うかな！？」


～水難事故防止講習（？）終了～

ほたる「お疲れさまでした……」

朋「お疲れさま！」

智絵里「あとはもう、遊ぶだけですねっ」

朋「智絵里ちゃんは最初から遊んでたでしょ」

智絵里「ほたるちゃん、首、大丈夫？」

ほたる「？　ありますよ？」

朋「いや、有無の話じゃなくってね？」

智絵里「あるの！？」

朋「あるよ！？」

朋「じゃ、なにしようか？」

ほたる「やっぱり、砂浜といえばこれじゃないですか？」

朋「あ、バットとスイカ！　ということは……」

智絵里「叩いてかぶってじゃんけんぽん？」

朋「バットとスイカで！？　流血沙汰よ！？」

智絵里「スイカ割りですねっ」

朋「わかってるなら最初から言ってほしいんだけど……」

ほたる「わ、私、やってみていいですか？」

朋「ほたるちゃん乗り気～！　いいわよ！　サポートしてあげる！」

智絵里「はい　ぜんりょくで　さぽーと　するね」

朋「感情はどこに置いてきちゃったのかな智絵里ちゃん」

朋「じゃあ目隠しして……」

智絵里「バットを地面に立てて、額をあててグルグルするんだよっ」

朋「うんうん、10回くらいかな？」

智絵里「ほたるちゃんの三半規管をなめちゃダメですよっ！　100回いきましょう！」

朋「ええ！？」

ほたる「……」ｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙｸﾞﾙ

朋「速っ！！！！」

智絵里「かき氷買ってきますねっ」

朋「せめて見届けてあげて！！！」

ほたる「おわりました……」ﾌﾗｯ

朋「なんで立てるの！？」

智絵里「朋さん！　指示を出さなきゃですよ！」

朋「そ、そうだった！　えっと……右よ！」

智絵里「まっすぐ！」

朋「あ～、もう少し左！」

智絵里「→＼↓＋P！」

朋「コマンド！？」

ほたる「波動拳！」ｺﾞｫｯ!!!

朋「なんか出た！？！？」

朋「左！左！」

智絵里「まっすぐだよ！」

ほたる「？？？」ﾌﾗﾌﾗ

朋「ほ、ほたるちゃん！　そっち海だから！　引き返して！」

智絵里「まっすぐ！」

朋「言うと思ったけども！！！」

朋「引き返してって！」

ほたる「？？？」

ｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞｺﾞ

朋「な、なにこの音！？」

智絵里「あ、大きな波が急に！！！」

朋「ええ！？　……ってことは」

ほたる「」ｻﾞｯﾊﾟｧｧｧｰｰｰﾝ!!!!!!!!!!!!!!!

朋「ほたるちゃん！！！！！」

智絵里「おわり」

朋「おわらせないの！！！」

智絵里「あれ？　もう長さ的にもオチかなって……」

朋「そんなこと言ってる場合！？　ほたるちゃん助けなきゃ！　……ってもうあんな遠くに流されてる！」

智絵里「波に飲まれよっ！」ﾄﾞﾔｧ

朋「緒方ァ！！！！！」

朋「と、とにかくライフセーバーさんを」

智絵里「いいえ、ライフセーバーさんとはいえ、ほたるちゃんを抱えての移動はリスクがあります」

朋「じゃあどうやって！」

智絵里「フレンチクルーラー！」ﾊﾟﾁﾝ

椎名法子「呼んだ！？」ｼｭﾀｯ

朋「法子ちゃん！？」

智絵里「ほたるちゃんがね？　ドーナツが食べたいんだって！」

法子「おお！　ほたるちゃんもようやくドーナツの良さに気づいたんだねっ！」

智絵里「だから、あそこのほたるちゃんにこのドーナツを届けてあげてほしいなっ」

朋「いやそれ浮き輪……」

法子「おっけー！！！！」ｼｭﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞﾊﾞ

朋「速すぎない！？！？！？」

智絵里「なんとかとドーナツは使いようですっ！」

朋「その一言は必要ないからね！？」

～救出成功～


法子「じゃあ、またドーナツが欲しくなったら呼んでねっ！」

ほたる「ありがとうございました……」

法子「じゃーね！」ﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯ

朋「台風みたいだったわね……」

智絵里「台風にも穴があるからドーナツみたいなものですねっ」

法子「呼んだ！？」ｼｭﾀｯ

朋「たった今走っていったのに！？」

朋「……っていうかほたるちゃん、大丈夫なの！？」

ほたる「あと3時間遅かったら危なかったですね……」

朋「余裕しかないわね！？」

智絵里「海に揉まれよっ！」ﾄﾞﾔｧ

朋「そのシリーズはもういいから！！！」

ほたる「さっきの波動拳のコマンド、間違えてましたよ」

朋「どうでもよくない！？」

ほたる「そういえばスイカは……？」

朋「あ、スイカ割りしてたんだっけ……？」

智絵里「あそこに落ちてるよっ。流されなかったみたいだね」

ほたる「せっかくなので、取ってきますね」ﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯ

朋「あ、ほたるちゃん」

智絵里「あんなに急がなくても……」

朋「ね」ﾌﾌｯ

ﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯﾀｯ　ﾂﾙｯ

朋＆智絵里「あ」

ｸﾞｼｬｧｧｧｧ!!!!!!!!

智絵里「頭からスイカに突っ込んで割りましたっ！」

朋「ほたるちゃん！！！！！！」



おわり