凛「願いを叶える短冊?」 (35)
【モバマスSS】です
――――6月30日、事務所
凛「……まだ七夕には早いと思うけど」
ちひろ「ほら、今丁度プロデューサーさん達向けに七夕のイベントを開催してるじゃないですか」
卯月「そういえばここの所ちひろさん、織姫の衣装でコスプレされてる時がありますね!」
ちひろ「ええ、それでプロデューサーさん達にここまでして、普段からお世話になってるアイドルの皆さんに何もしないのもなぁと考えまして」
奈緒「ちひろさんにしては妙に普通な物……って思ったけどやっぱり違いますよね?」
ちひろ「もちろんです! その短冊は通常のものと違って、ちゃんと願えばすぐに願いが叶うように作りましたから!」
奈緒「……は?」
凛「ええっと、どういうこと?」
ちひろ「要するに、その短冊を持って願い事を呟けば、1枚につき1回、その場で願い事を実現させちゃうわけです」
卯月「その場で……どんな願い事でもでしょうか?」
ちひろ「流石に人類皆ゾンビになれや365日全部祝日になれですとか、世界へ与える影響が大きすぎる願い事は特定の方の許可が必要ですよ?」
凛「そういうのに許可出す人いるんだ……」
奈緒「いやいや誰だよ!? というか、ちひろさんこれ本当にそんなすごい短冊なの? 見た目が普通すぎてちょっと信じられない……」
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※千川ちひろ
http://i.imgur.com/TjheXoP.jpg
※渋谷凛
http://i.imgur.com/TEExYUw.jpg
※島村卯月
http://i.imgur.com/pR1o2W0.jpg
※神谷奈緒
http://i.imgur.com/ZxnMxUL.jpg
ちひろ「まぁ信じられなくてもいいので気が向いたら使ってみてください。ただし、一応注意事項としまして」スッ
ちひろ「①、これは先程も言いましたが、世界規模の願い事を叶えるには許可が必要になります」ペリッ
凛「……わざわざボード用意してるんですね」
ちひろ「分かりやすいでしょう? そして②、効果期限は7月6日の23時59分59秒まで、それを過ぎるとこの短冊は機能しなくなります」ペリッ
卯月「七夕の短冊なのに7月7日には使えないんですか?」
ちひろ「7日には普通の短冊を笹に飾って七夕を楽しんでほしいですからね。こういう部分はきっちり分けておきませんと」
奈緒「でも、逆に言えばどんな願い事でも叶えられれば7月6日まではずっと叶ったままってこと……?」
ちひろ「そうなりますね。きっと皆さんのことですから妙な願い事はしないと信じて設定しましたから、存分に楽しんで下さい!」
凛「楽しんでって言われても」
卯月「お願いすること……お願いすること……うーん」
ちひろ「焦らなくても時間はありますから。では私は他の子にも短冊を渡してきますのでこれで失礼します」ペコリッ スタスタ……
バタンッ
奈緒「……どうする凛? ちひろさんはああ言ってたけど」
凛「正直怪しすぎるよね。それに私はあんまりこういうので叶えたい願い事も思いつかないし」
卯月「あ、凛ちゃんもなんですか? えへへ、私もです」
奈緒「二人共、欲がないよなぁ」
凛「そういう奈緒はなにか叶えたいことでもあるの?」
奈緒「一応あるっちゃあるけど……でも、多分あたしのは叶わない気がするし、あとなんだか使うのが怖いし……」
凛「ちひろさんが無料でこんなのくれるなんて後で何かありそうだもんね……」
卯月「か、考えすぎですよ! ちひろさんだってそこまで酷い人じゃないです! ……多分」
奈緒「せめて使うとどんな感じなのか分かればいいんだけど……誰かもう使ってたり――」
コンコン
奈緒「……ん?」
凛「なにか今聞こえたよね?」
卯月「はい、なんだか扉をノックするような音が」
奈緒「でも入り口って鍵かかってないからノックの必要なんてないし……どこから」キョロキョロ クルッ
コンコンッ
奈緒「……え?」
コンコンコンッ
奈緒「えええええええっ!? 凛! 卯月! 後ろ、後ろ向け! 窓に、窓に!!」
凛「どうしたの奈緒そんなに慌て、て……!?」
卯月「え、ええっ!? か、加蓮ちゃん!? ど、ど、どどうして窓の外にいるんですかー!?」
加蓮『……(パクパク)』ヒラヒラ
凛「なにか喋ってるみたいだけど窓挟んでるから全然聞こえない……」
奈緒「いやそもそもここビルの13階なのにどうやって!? 窓に張り付いてるのか!? どうしたっていうのさ加蓮!?」バンバンッ
加蓮『……(パクパク)』
奈緒「いやわかんねーよもっと大きな声だせって!」
卯月「あ、あの奈緒ちゃん、加蓮ちゃんの声が聞こえないってことは、私達の声も加蓮ちゃんには聞こえてないんじゃ……」
奈緒「あっ、そ、そうか……だったらどうしたら!」
加蓮『……』ゴソゴソ ススッ
~~~♪ ~~~♪
奈緒「あっけ、携帯……この着信音、加蓮か!」ピッ
加蓮『もしもし奈緒、聞こえてる?』
奈緒「き、聞こえてるよ加蓮! 一体どうしたんだよ、なんで窓の外にいるんだ! そもそもどうやってここまで来たんだ!?」
加蓮『ちょっと落ち着いてよ、奈緒ったら慌てすぎ♪』
奈緒「落ちたらヤバイところに加蓮が居たら慌てるわーッ!」グワッ
凛「ちょ、ちょっと、奈緒、怒る前にまずは加蓮に事情聞いて。あと出来ればスピーカーモードにして」
奈緒「ふーっ……ふーっ……わ、分かった……それで、なんでそんなところにいるんだよ加蓮、中には入ってこれないのか?」
加蓮『アタシも開けそうなとこ探してみたんだけど、事務所のある階の窓は開けそうなとこがなくて』
奈緒「で、そもそもどうして13階にまで登ってこれたんだよ」
加蓮『んー、奈緒ってもう願い事を叶える短冊をちひろさんから貰った?』
奈緒「あ、ああさっき貰ったけど……ってもしかして加蓮使ったのか!?」
加蓮『せいかーい♪ 貰ってすぐ、この前奈緒と一緒に見たアニメのキャラみたいなすごい身体能力が欲しいなってお願いしたら叶っちゃった♪」
奈緒「叶っちゃったってなぁ……」
卯月「だからこんな高い所まで登ってこれたんですね!」
加蓮『そうそう、試しにいけるかなーってジャンプしてみたらあっさり届いちゃって。それに走っても疲れないし身体が軽いしすっごく楽しいの♪』
凛「加蓮ホントに嬉しそう……」
加蓮『今なら日焼けも水着撮影も、なんだって出来ちゃいそう! でもその前に街を飛び回ってみようと思って、だから奈緒も来る?』
奈緒「行かねーよ!?」
加蓮『ちぇー残念……でもしょうがないか、奈緒も凛も卯月も、短冊使ってないのならすぐに使ったほうがいいよ、きっと絶対楽しいから!』ニコニコ
奈緒「お、おう……考えとく……」
凛「私はまだいいかな、ちょっと願い事思いつかなくて」
卯月「私もです……」
加蓮『どうせ叶えるならおっきい願い事のほうがいいもんね♪ ふふっ、それじゃあアタシはこの身体能力を楽しんでくるから、またね』ピッ
加蓮「せーのっ!」ググッ ドンッ
グラグラッ
卯月「きゃあ!? す、すごい、加蓮ちゃんの跳んだ勢いで一瞬ビルが揺れました……」
凛「ち、力強くなり過ぎだよ加蓮……というかもう姿見えなくなったし」
奈緒「まったく……まぁ加蓮が楽しそうだったからよかったけど」
凛「相変わらず加蓮に甘いよね奈緒は」
奈緒「う、うるさい……!」カァァ///
卯月「でもこれでこの短冊が本当にスゴイ物だって分かりました……どうしましょう凛ちゃん?」
凛「まぁ使えなくなるまでは時間があるし、ゆっくり考えようよ。他の人がどんな願い事をするのかちょっと興味も出てきたし、主に奈緒のとか」
奈緒「あ、あたしのかよ!?」
卯月「そういえば奈緒ちゃんさっき「叶いそうにない」って言ってましたよね? なにをお願いするつもりだったんですか?」
奈緒「そ、それは……!」
ガチャ!
莉嘉「たいへんたいへんっ!! さっき外見てたら加蓮ちゃんが窓の外にしがみついてたっ!!」
凛「あ、莉嘉」
莉嘉「そ、それでさっきビルがグラグラって揺れたと思ったら加蓮ちゃんがすごい速さで飛んでいって!」
奈緒「あー、見てたよ。というかさっきまで話してたから」
莉嘉「そうなの!? 加蓮ちゃん一体どうしちゃったの?」
卯月「莉嘉ちゃんはちひろさんから短冊貰いました?」
莉嘉「短冊? そういえばさっきちひろさんに会って渡されたけど……もしかして加蓮ちゃんもう使った後だったってこと?」
凛「そういう訳みたい。すごいよね、加蓮があんな風になっちゃうんだから」
莉嘉「そっかー。じゃあここに集まってるみんなは、これからどういうお願いごとするのか相談してるとこなの?」
凛「そうだよ、特に奈緒がどういう願い事をするかについて――」
奈緒「あーそうだそうだっ! 莉嘉はなにか叶えたい願い事ってないのか!?」
凛(露骨に話題を反らされた……)
莉嘉「えっ、それはあるにはあるけど……」
奈緒「だったらせっかく短冊があるんだし今ここで願ってみたほうがいいんじゃないか? きっといいことあるって!」
莉嘉「……そうだよね、こういうのは使わないと勿体無いもんね☆ ありがとう奈緒ちゃん、アタシ決心がついた☆」
奈緒「お、なら良かった! ほら凛、次は莉嘉が願い事叶えてみるってさ!」
凛「うん、そうしたらこれだけ焦らされたし、次は満を持して奈緒の番だね」ニコッ
奈緒「うっ……や、やっぱりダメか……」ガックリ
卯月「それで、莉嘉ちゃんが叶えたいことってなんですか?」
莉嘉「えへへ、それはね~……『お姉ちゃんがずっと莉嘉の側にいてくれますように』だよ☆」
ピカッ!
4人「「「「きゃ!?」」」」
凛「ま、まぶしい……!」
奈緒「莉嘉の持ってる短冊からすごい光が!?」
卯月「め、目が眩んじゃいます……!」
莉嘉「わわわっ!?」
シュウウ
莉嘉「あっ、短冊が消えちゃった……」
凛「これって莉嘉の願い事が叶ったってこと?」
卯月「ど、どうなんでしょう……」
奈緒「お姉ちゃんがってことは美嘉のことだよな……でも確か美嘉って今週L.M.B.Gのダンスレッスンの手伝いしてるはずじゃ……」
凛「うん、私もそう聞いてる。莉嘉には悪いけど最近の美嘉の様子を見てたら流石にさっきの願い事は……」
――ダダダダダッ!
卯月「……? 凛ちゃん、なんだか廊下が騒がしくないですか?」
凛「そういえば誰かがすごい勢いで走って来てるような音が……」
バアンッ!
美嘉「莉嘉ぁあああ!!!」
莉嘉「お姉ちゃん!?」
奈緒「嘘だろおい」
美嘉「莉嘉っ、莉嘉! 莉嘉ッ!!」ギュウウウ
莉嘉「お、お姉ちゃん苦しいよ……」
美嘉「あっ、ご、ごめん、怪我はない? 大丈夫?」
莉嘉「う、うん、ヘーキ! えへへ……♪」
奈緒「美嘉どうしてここに、ダンスレッスンの手伝いしてたんじゃ」
美嘉「そんなものどうだっていい!!」
卯月「ええっ!? 正気ですか美嘉ちゃん!? あんなにL.M.B.Gのレッスンのお手伝い出来ること喜んでたじゃないですか」
美嘉「今にして思えば全然意味がわからない……アタシは、莉嘉の側にいてあげなきゃいけないのに……莉嘉が一番大事なのに!」ギュウ
莉嘉「あっ……お姉ちゃん、それ、ホント……?」
美嘉「当たり前じゃん!」
莉嘉「……もぉ、お姉ちゃん気付くの遅すぎ……お姉ちゃんは莉嘉の物なんだから……♪ もうどこにも行っちゃダメなんだから……!」グスッ
美嘉「ゴメンね、もうどこにも行かないから……L.M.B.Gのレッスンの手伝いも断ったし、もう大丈夫だから……!」
莉嘉「そうだよ、お姉ちゃんはそうでなくっちゃ……アタシのお姉ちゃん……アタシだけの……」ギュウ
卯月「あ、あの~……」
莉嘉「わひゃあ!?」ガバッ
凛「あ、これ完全に私達のこと忘れてたみたい」
奈緒「え、ええとだな、その、美嘉はこれからどうするつもりなんだ?」
美嘉「どうするって、なにが?」
凛「L.M.B.Gの手伝いも断ったんでしょ? 本当にいいの?」
美嘉「もーなんなの皆して、アタシのいる場所は莉嘉の隣以外ありえないんだから問題ないって!」
奈緒「お、おお……」
奈緒(よく見たら美嘉の目に生気がないぞ!?)
莉嘉「えへへ、それじゃあお姉ちゃん、今からどこかに遊びに行こうよ! 二人だけで☆」
美嘉「ならさっきまで1人にしちゃってたお詫びに、莉嘉の行きたいところならどこにだって連れてってあげる★」
莉嘉「いいの!? やったー!! それじゃみんな、アタシとお姉ちゃんは今から遊びに行ってくるね! ばいばーい☆」ヒラヒラ
美嘉「またね、皆」
バタンッ
3人「「「……」」」
凛「……奈緒」
奈緒「し、仕方ないだろあんな風になるなんて予想出来ないって!!」
卯月「短冊を使うのは慎重にしないといけないってことですね……」
凛「人に影響がありそうな場合は特にね。そうしないとさっきの美嘉みたいに……美嘉、どうなるのかな」
奈緒「す、少なくとも短冊の効果は七夕になったら切れるし大丈夫だって!」
凛「それまで一週間くらいはあのままってことだよね?」ジトーッ
奈緒「……も、もう気にしたって仕方ないじゃん! どうしようも出来ないんだから! だからそんな責めないでくれよ……」シクシク
凛「ごめんごめん、ちょっと意地悪しすぎた。そこは謝るよ。そうだよね、あとはあの二人のことを信じよう」
卯月「でも莉嘉ちゃん嬉しそうでしたし、美嘉ちゃんとは仲の良い姉妹なんですからきっと心配ないです!」
奈緒「そうだよな……さてそれじゃ、この短冊がスゴイってことは分かったし、今日はコレで解散と」
凛「させないよ?」
奈緒「う、うぅ……やっぱり誤魔化せないか」
卯月「そ、その私も、ここまで来たら逆にどの程度までいけば、この短冊でも叶えられない願い事になるのかちょっと気になっちゃいます……」
凛「それで奈緒はどうして自分の願い事は叶わないって思ったの?」
奈緒「ほ、ほら、ちひろさんも言ってただろ? 世界へ与える影響が大きすぎると許可がいるって? あたしのはその類になると思うし」
卯月「奈緒ちゃんの叶えたいことってそんなに規模が大きいんですか?」
奈緒「ま、まあね……だって『実は世界征服を企む悪の組織がいて、あたしはそれと戦う魔法少女』だった! みたいなそんなの……あはは」
凛「……奈緒そういうのホント好きだよね」
卯月「でもかっこ良くていいと思います!」キラキラ
奈緒「こ、こういう時は純粋な視線のほうが辛い……! けどほら、今さらっと言ったけどなにも起こらないしやっぱりあたしの願いは――」
――その願い! 世界レベルね!!
ピカッ!
奈緒「……嘘だろ短冊をポケットに入れてても反応するのか!?」
凛「ていうか今の声ヘレンさんじゃ!?」
卯月「ま、眩しい……!」
キィイイイイイインン!!
3人「「「うわああああっ!?」」」
――シュウウウウウウ
凛「……っ、卯月……奈緒……大丈夫……!?」クラクラ
卯月「だ、大丈夫です……」クラクラ
奈緒「あたしもなんとか……くぅ、光ったと思ったらスゴイ音までして……莉嘉の時には音はなかったのに、なんだったんだ?」コツンッ
奈緒「うん? なんだか手に感触が……なんで、これ」
卯月「……奈緒ちゃん、そのステッキどこから持ってきたんですか?」
奈緒「あ、あたしだって分からないよ!? 気づいたらこうして手の中にあって……! でもこのステッキ、まさか……!」
「GOAAABBAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
ビリビリ
卯月「ひゃあ!?」ビクッ
凛「な、なに今の音……叫び声みたいな……!」
奈緒「……おい、嘘だろホントに叶っちゃったのか……!?」
卯月「り、り、り、凛ちゃん! 外、外見てください!!」ガタガタ
凛「……すごいおっきい怪物がいる……」ボーゼン
怪物「GYAOOOOOOOOO!!!」
奈緒「」
卯月「て、テレビ……! テレビでなにか!」ピッ
TV『――たった今入りました情報によりますと、東京新宿区に突如として現れた超巨大生物は、周辺の建物を破壊しながら――』ピッ
TV『――奇妙なことにあの怪物の攻撃を受けた人間はカードとなってしまうようで、詳しい情報が入り次第さらに――』ピッ
TV『――げ、現在怪物から約500m離れた位置にて中継をしています! 幸い怪物の動きは遅くここからでもあっなにあれ腕がザリザリザリ』プツン
TV『――中継が途切れてしまったため、一旦スタジオでさらなる続報をお伝えしたいと思います』
奈緒「」
凛「……どうしよう」
奈緒「どうしようじゃないけどどうしよう凛!? い、いやあたしが不用意な発言したのがほんと悪いんだろうけどさぁ……!」
凛「わ、私も焚き付けちゃったから……で、でもこんな、人がカードになるとか建物がいっぱい壊されるなんて、そんな……」
卯月「こんなことまで叶えちゃうなんてこの短冊一体……!」
奈緒「と、とにかくなんとかしないとこのままじゃ街がああでもどうしたら……!」
TV『――つ、繋がっているでしょうか! わ、我々は今怪物の上空をヘリで飛行して撮影を……って、ちょっとあれ!? なにあれ!?』
TV『カメラちゃんとあれとって! そうあの学生っぽい格好の子! なにする気……!?』
奈緒「……え?」
TV『ちょ、なに、あの子を映そうとするとカメラの映像がぼやけるですって!? 言い訳はいいからちゃんと撮って!』
凛「……なんだろう、すっごい嫌な予感がする」
~~~♪ ~~~♪
奈緒「け、携帯!? は、はいもしもし!」
加蓮『もしもし奈緒? とりあえず簡単に聞くけど短冊になにかお願いした?』
奈緒「……ごめん、した。というかまさかと思うけどさっきテレビで言ってた学生っぽい格好の子って……!」
加蓮『あ、それアタシかな♪ 今なんかいきなり現れたおっきな怪物の目の前にいるから。あれ多分前に奈緒達が楽しそうに話してた――』
奈緒「ば、ばか何考えてるんだ!? 無茶するな逃げろ!」
加蓮『何考えてるはこっちの台詞。これ奈緒の願い事でしょ? ちゃんと戦う準備しててよね♪』プツッ
奈緒「おい加蓮! 加蓮ッ!? ああもう!!」
凛「……加蓮なにする気?」
奈緒「多分戦う気だ! 今の加蓮の身体能力なら多少は……」
卯月「わ、わわわ!? 凛ちゃん、奈緒ちゃん! テレビ、テレビ見てください!!」
TV『――暴れ続ける怪物に対し学生らしき子が突っ込んでいきます! なにあの速さ!? あの子ほんとに人間!?』
ドゴォオオオン!!
怪物「OAAAAAA!?」グラッ
TV『学生の攻撃が直撃し、怪物の体勢が崩れ――いや崩れません! しかしさらに学生の攻撃が続きます!』
ドゴォ! ゴンッ! ヒュオッ!
怪物「ARGUUUUUUUU!!?」
卯月「……す、すごい……ここから直接怪物を見てても加蓮ちゃんが押してるのが見えます!」
凛「顔は見えないけど多分今すごく楽しんでるんだろうな加蓮……」
奈緒「た、たしかにすごいけど……でも駄目だ! あいつは物理攻撃じゃ――」
怪物「OOOOOOOOOO!!!」ヒュン
ドグシャッ!
TV『あぁ怪物の腕が学生に!? 学生はものすごい勢いで吹き飛ばされてしまい――あ、うそ怪物がこっちみてザリザリザリ』プツン
凛「加蓮ーッ!?」
卯月(今の吹き飛ばされた方向……あれ? もしかして)
――ヒュオオオオオオ!!
奈緒「あ、やばい二人共伏せろ!!」
ガシャアアアアン!! ゴロゴロゴロ……
加蓮「げほっ……けほっ……あー、流石にちょっと痛かった……」ヨロヨロ
凛「加蓮!? うそなんで!?」
加蓮「怪物に吹き飛ばされた先に事務所があったから飛び込んでみちゃった♪ ……いたた」
奈緒「飛び込んでみちゃったじゃない!? 危ないことするなよ!」
加蓮「だってせっかくすごく楽しく身体が動かせるんだし、どこまで出来るか試してみたくって」
卯月「だ、大丈夫なんですか? 怪我をしているなら手当を」
加蓮「大丈夫大丈夫、ちょっと服とか汚れたくらいだから。それよりもほら奈緒、いい加減戦わないと」
奈緒「うっ……や、やっぱりそうなるよな……」
凛「……ねぇ加蓮、さっき電話かけてきたりしてたし、もしかしてあの怪物がなにか知ってるの?」
加蓮「あれは最近奈緒が考えてるオリジナルのアニメネタの……ラスボスだったっけ?」
奈緒「前半シナリオのボスだよ! あとアニメじゃなくて漫画! 比奈さん達と一緒に考えてるオリジナル魔法少女の同人誌の――はっ!?」
凛「……ふーん? つまり?」
奈緒「その同人誌みたいな展開が現実でもあってあたしが解決出来たらいいなとかちょっと考えたりしてたよ! それがこうだよ!? 悪い!?」
卯月「お、怒らないで……とにかく奈緒ちゃんだけがあの怪物をどうにか出来るなら、なんとかしてください~!」
怪物「GAAOAAAAAA!!!」ビビビ
凛「……ねぇ奈緒、なんだかあの怪物の様子おかしいんだけど」
奈緒「や、やばい!? あの様子、このままじゃここに向かってビームが!」
卯月「えええっ!? ど、どうしたら!?」
奈緒「こ、こうなったらやってやる……! 元々はあたしの願望だったんだ! あたしがどうにかしてみせる!」
加蓮「頼もしいことで」
奈緒「凛、あとで絶対笑うなよ!? 加蓮も!」
凛「いいから早くなんとかして!」
奈緒「よ、よし、いくぞ――エール・ステッキ!」シュピン
パアアアアアッ!!
卯月「奈緒ちゃんの身体が光に包まれました!?」
奈緒「魔法のエールで!」キラララ
シュピン! カァン! カァン! キィン! キュピン! パリィイン!!
http://i.imgur.com/7mhCxUo.jpg
奈緒「煌めく――今回は省略!」カァァ///
加蓮「変身までしたんだから名乗ればいいのに♪」
凛「……すごい……!」
怪物「GAAGYAAAAAAAA!!!」ググッ
ビィイイイイイイイ!!
卯月「ひええええ!? 攻撃が来ちゃいましたー!?」
奈緒「届かせない! エール・ガード!!」シュピン
カァアアアンン!
凛「わぁ……! 空中に現れた蒼い模様がビームをかき消したっ……!」キラキラ
加蓮「……凛?」
奈緒「よ、よし、いける、いけるよ! 加蓮! あたし魔法少女になってる!!」
加蓮「はいはいおめでと♪ あとはちゃんとあいつを倒してきてよ、魔法少女さん?」
奈緒「任せろ! すぐに平和な街に戻してみせるから! 行ってくる!」タンッ!
卯月「行っちゃいました……奈緒ちゃん1人で大丈夫なんでしょうか……?」
加蓮「大丈夫大丈夫♪ 奈緒曰く、こういうのにはちゃんとお決まりの展開ってのがあるらしいから」
卯月「はぁ……」
凛「奈緒ー! がんばれー!!」ブンブン
加蓮「こうやって凛がびっくりするくらいハマっちゃったし、きっと奈緒は帰ってくるよ。もちろん勝ってね♪」
――――1時間後、帰宅途中の大通り
凛「……恥ずかしい///」
卯月「凛ちゃんびっくりするくらい熱中してましたもんね!」ニコニコ
凛「やめて、卯月、ほんとやめて……///」
卯月「あの後結局騒ぎに気づいた比奈さんや千佳ちゃんが短冊を使用して奈緒ちゃんの救援に入って!」クルクル
卯月「怪物は無事倒されて、壊れた街もカードになった人たちも不思議な光でみーんな元に戻って!」クルクル
卯月「残った黒幕を倒しに3人共違う世界へ突入していくのを見たんです。凛ちゃんが熱中してたのも分かります!」
凛「……自分でもびっくりするくらい奈緒を応援してた……なんていうか、こういうの久しぶりで……」
卯月「私も普段と違う凛ちゃんが見れて新鮮でした! 加蓮ちゃんと一緒に帰れてたら、そのことでいっぱいお喋りしたかったなぁ」ニコニコ
凛「もう……///」
卯月「それにしても加蓮ちゃんは今頃また街を飛び回っているんでしょうか……」
凛「また街を見回ってくるっていって別れたからね、多分そうだと思う」
卯月「……どんな感じなんでしょう? あのビルの屋上を移り渡っていったり、建物の壁を走ったりするのって……」
凛「気になるなら卯月も加蓮と同じような願い事を短冊にしてみたら?」
卯月「そ、そこまでは……これだけなんでも叶うって分かった以上は、本当に大事な願い事に使いたいです」
凛「例えばどんな願い事に?」
卯月「えっ、ええと……その……」ゴニョゴニョ
凛「あれ、私なにか変なこと聞いたかな……?」
卯月「い、いえ! そういうわけじゃなくてですね、その……私が大事な願い事をする時はですね……」ゴニョゴニョ
凛「うん」
卯月「り……凛ちゃんかプロデューサーさんに関することが多いので……だから///」
凛「卯月……ふふっ♪」ニコッ
卯月「……えへへ♪ ――そ、そうだ、ところで凛ちゃん! あ、あの、今度のお休みの件なんですけど……」
凛「日曜日に二人で出かけようって話でしょ。大丈夫、スケジュールは確認してる。その日は私もちゃんとお休みだから」
卯月「……! 良かったぁ……最近ずっと忙しかったから、凛ちゃんと久しぶりに遊びに行けるのが本当に楽しみです!」ニコニコ
凛「ふふっ、大げさだよ、今だって行こうと思えば軽くどこかに遊びに行けるのに」
卯月「そ、それでもちゃんとしたお休みに朝から凛ちゃんと遊びにいけるのはまた全然違うんです!」
凛「私だってそう思ってるから心配しないでよ卯月」
卯月「……はい!」パァァ
凛「そこまで嬉しそうにされるのはちょっと照れるんだけど……まぁいいや、それで――」ピリリリリ
凛「電話? ……プロデューサーからだ。ちょっとごめん卯月――はい、もしもし」
卯月(こんな時間にプロデューサーさんからの電話って、なんでしょう? なにか緊急の……)
凛「……うん、うん……えっ、ちょっと待ってよ、その日は! ど、どうしても日曜日じゃないとダメ……?」
卯月「……え?」
凛「……うん、そっか……ごめん、ちょっとだけ待って――卯月、言いにくいんだけど……」
卯月「……お仕事が入ったんですか?」
凛「うん。今日の騒ぎや加蓮の様子を見てたプロデューサーがなにか企画を思いついたらしくて、そのテスト映像を撮影したいって……」
卯月「ほ、他の日は……!」
凛「私と加蓮と奈緒のスケジュールが上手く調整出来るのが現状日曜日だけで、他の日は誰かが必ず揃わないって……」
卯月「そう、です、か……」ションボリ
凛「卯月、あの」
卯月「分かりました! お仕事ならしょうがないですよね、凛ちゃんはもう大人気アイドルですから……だから、我慢します……」ションボリ
凛「――……ごめんプロデューサー、ちょっとだけ電話切らせて。うん、本当にちょっとだけ……ありがとう」ピッ
凛「……卯月。私さ、さっきまで短冊で叶えたい願い事ってなかったんだ。でも今出来た」スッ
卯月「凛ちゃん……?」
凛「『今度の日曜日は必ず卯月と遊びに行きたい』っていう願い事がね」
ピカッ!
卯月「きゃ!?」
シュウウ
凛「……短冊も消えた。これで願い事は叶ったかな」
卯月「り、凛ちゃんどうして!? 私と遊びに行くためなんかに短冊を使っちゃうなんて……!」
凛「なんか、なんて言わないでよ。卯月言ってたよね、短冊は本当に大事な願い事に使いたいって」
卯月「そ、それは……」
凛「だから私も本当に大事な願い事のために使いたくなっただけ。私の場合は……その、卯月かプロデューサーに関することになるし……」
卯月「……凛ちゃん!」ギュッ
凛「きゃ!? ふふっ、もぉ卯月ったら」ピリリリリ
凛「……もしもし。うん、ごめん電話切っちゃって、それで……そっか、今度の日曜日じゃなくて水曜日に変更出来そうなんだ」
卯月「短冊効果ですかね……?」
凛「そうだと思うよ――ううん、なんでもないこっちの話。それで……うん、私はそれでいいよ。……分かった、またねプロデューサー」ピッ
凛「というわけでテスト映像の撮影は水曜日なったから、日曜日は予定通りってことでいいよね卯月?」
卯月「はい! ……凛ちゃん、本当にありがとう!」
凛「感謝されるようなことはしてないってば。私も卯月と遊びたかっただけなんだから」
卯月「それでもです! ――あっ! ねぇ凛ちゃん、私、今度の日曜日に短冊で叶えたいことを思いつきました♪」
凛「へぇ、どんな願い事なの?」
卯月「それはですね――」
――その後、卯月の願ったことは凛との間にさらに深い絆を作り、二人の仲は七夕が過ぎても決して離れることはないのであった。
〈終〉
七夕が近くなって織姫のコスプレをして七夕くじキャンペーンしてるちひろさんを見て思いついたネタ
7月7日までまだ結構時間あるけどちひろさんがかわいい織姫の格好なんてするからわるい
読んでくださった方ありがとうございました
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