エレン「英霊達の鎮魂歌」 (70)
ざあああ……ざああああ……
エレン「…………」
『戦没者慰霊碑
クリスタ・レンズ
ユミル・×××
アニ・レオンハート
ライナー・レンズ
ベルトルト・フーバー』
アルミン「ここにいたのか、エレン」
エレン「……よお」
アルミン「サムエルから聞いたよ。月に最低一度はここに来るんだね」
エレン「……ああ」
ざあああ…………
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アルミン「ライナー……結局、結婚生活はどれくらいだったんだっけ?」
エレン「一ヶ月なかった。それで、クリスタが」
アルミン「君の責任じゃないよ。君はよくやった」
エレン「……こんなのが調査兵団兵長だ。笑えよ。こんなのが人類最強を襲名してんだ」
アルミン「リヴァイさんだってきっと、今の君の姿を見れば」
エレン「もう会えねえよ」
アルミン「…………うん」
エレン「もう三十路に差し掛かるってのに、この体は一向に衰えない。巨人を殺すためだけの体だ、俺はもうそれだけが生きる道なんだ」
アルミン「そんなことは、ない」
エレン「うるせえな団長さんよ。お前だってそうだろ。今まで色んな戦場をめぐって、色んな戦士を死なせてきた」
アルミン「戦死者の数を減らすのが僕の使命だ」
エレン「それでも、ゼロにはできない。必ず誰か死んでいく」
アルミン「死者の魂すべてを両肩に背負うのが君の仕事かい?」
エレン「そうじゃなきゃ、俺はいる意味がない」
アルミン「正直に言うと、アニたちの名前をここに刻むことを、君は許さないと思っていた」
エレン「クリスタに申し訳が立たないだろ」
アルミン「裏切り者だっていうのに?」
エレン「……なんだかさ、あいつらを殺したとき、すごい涙が出てきたんだ。戦場だってのに。誰が死んでも泣けなかったのに」
アルミン「それ、は……」
エレン「心のどこかでは、認めたくなかったけど思っていたんだ。あいつらは仲間だって。それを俺がこの手で……」
アルミン「そのおかげで君は超大型巨人、鎧の巨人、女型の巨人を討伐した英雄になった」
エレン「それを功績みたいに言ってんじゃねぇ……ッ!!」
アルミン「ごめん」
エレン「……調査兵団団長が、そう簡単に頭を下げるなよ」
アルミン「今はそんな大層な肩書きはない。君の幼馴染だよ」
エレン「ミカサが聞いてたら、ハブられたって涙目になるぜ」
アルミン「……その、彼女の体の調子は……?」
エレン「……ずっと、ベッドの上だ」
アルミン「…………」
エレン「『こんな体じゃエレンを守れない』だってさ。……今度は、俺があいつを守ってやらなくちゃならない」
アルミン「…………」
エレン「そうだ、もう誰一人として死なせない……ミカサは俺が守る、俺が守らなくちゃ……」
エレン「悪いな、見苦しいとこ見せて」
アルミン「ははは、今さらだよ」
エレン「それもそうだな」
アルミン「ところで、イェーガー班の調子は?」
エレン「まだ皮膚の硬質化にこぎつけたのは2人ってとこだな。今年の新入が13人もいてビビったが」
アルミン「毎年増えてるからね、新規に発見された巨人変身能力者は」
エレン「何人束になろうと負ける気はしねえけどな」
アルミン「君は年季が違うからね。そりゃ勝つさ」
エレン「俺は誰にも負けない。うかつに負けちまったら人類最強を名乗れない」
アルミン「……やっぱり、君は」
エレン「ああそうだ、今だって追いかけてんだ、あの人の背中を。……いつまでたっても追いつける気はしねえけど」
アルミン「そろそろ、雨がやむかな」
エレン「……アルミン。俺は、俺たちは、ここに眠る連中のために戦っていけるのか?」
アルミン「いけるかどうかじゃない。彼らに報いたいなら、僕らは戦うしかない」
アルミン「そして巨人を一匹残らず根絶する。それが僕らの悲願だ、そうだろう?」
エレン「……ああ!」
ざあああ……ざあ…………
エレン「……ッ、日差しが……」
アルミン「……雨が、やむ」
コニー「お、いたいた兵長!」
エレン「っと、コニーか。どうしたよ?」
コニー「アルミンをジャン……じゃねえ、分隊長が呼んでたぜ?」
アルミン「君って変なところで律儀だよね」
エレン「まっさらな頭なりに組織の中でがんばってんだろうよ、なあ坊主?」
コニー「うるせえ、この年でも坊主って結構勇気いるんだよ!」
エレン「はいはい、で、俺には何のようなんだ?」
コニー「ああそうそう」
コニー「嫁さんがお前のこと読んでたぞ、エレン?」
アルミン「…………えっと」
エレン「悪いコニー……嫁って、『どの』嫁だ?」
あ、ごめん10巻ぐらいまでの盛大なネタバレがあります
?????「もうエレン、どこ行ってたの!? ご飯冷めちゃうよ!」
コニー「おっと早速か。じゃあお邪魔無視は退散しますかね」
?????「ていっ!」
エレン「おいちょっ、っと! 危ねぇ!」
?????「ふふっ、エレンなら受け止めてくれると思って」
エレン「いきなり抱きついてくんなよ……ヒストリア」
ヒストリア・レイス「だってそこにエレンがいたから、仕方ないじゃない」ドヤァ
ヒストリア「いつからわたしがクリスタだと錯覚していた?」
ライナー「」
アルミン「まさかのレイス家の当主がこんなところにいるなんて誰も気づかないだろうね」
ヒストリア「運が良かっただけだよ、気づいたら私になってた」
アルミン(……だろうね、巨人との戦争が激化して、ウォール・シーナ内部でも争いがあった。結果的に……)
エレン(レイス家の本家を皆殺しにしたのは、壁の秘密を明らかにするために必要なことだった。クリスタがそこに返り咲いたのは本当にたまたまだ)
アルミン(きっとエレンは死ぬまで、たまたまだって言い張るんだろうなあ。あんなに綿密に作戦の打ち合わせをするエレンはなかなか見られないよ)
ヒストリア「ほら帰ろうよ」
エレン「おうよ……っと、アルミンはどうする?」
アルミン「ああ、ジャンの所に寄らなきゃいけないから」
エレン「おう、またな」
ヒストリア「みんなによろしく」
アルミン「うん」
アルミン(クリスタ・レンズは戦死したという扱いになった。対外的にはレイス家の跡を継ぐのに、兵士であったというのは政敵として攻撃する理由になりかねないからだ)
アルミン(ライナーとの結婚? 信じるのはコニー以上のバカだ、だってクリスタが死亡認定されたときライナーはもう壁外にいたし、二人の結婚生活とか物理的にあり得ない)
?????「あれ? アルミンじゃないか」
?????「ん、本当だな。調査兵団団長がこんなところで油を売っているのか、ハッハッハ」
アルミン「ああ、ライナーにベルトルト……今日は何を売ってるの?」
ベルトルト「猪の肉さ」
ライナー「アニが一撃で仕留めたからな」
アルミン「仕事しろよ」
ベルトルト「じゃあ僕食前酒買ってくるね」
ライナー「そろそろエレンとアニの結婚記念日だから、それにかこつけて騒ぐとするか!」
アルミン「仕事しろよッ!!」
アニ「あんたたち何騒いでんの……」
アルミン「ああもう、ベルトルトとライナーが」
ベルトルト「アルミン……君の知っているベルトルト・フーバーは死んだ」キリッ
ライナー「ここにいるのはボヤッキー、ドロンジョ、トンズラの仲良し三人組だけだ」キリッ
アルミン「働かざるもの食うべからずの社会の超基本原則を守れよ! 二人は、二人は昔は戦士だったのに……!」
ベルトルト「戦士は戦死したけどね」
ライナー「wwwww」
アニ(ここうるさいな……エレン会いたい……)
アニ「トンズラ、ボヤッキー、そろそろ夕食の準備だね。下ごしらえをやっておしまい」
ライナーベルトルト「「あいあいさー」」
アルミン(あ、料理は二人がするんだ)
アニ「キッチンレオンハート、午後の開店だよ」
アルミン「……また来るよ」
アルミン(やれやれ、幸せそうだね……トンズラも、ボヤッキーも、そしてドロンジョ・イェーガーも)
なんかヴヴヴ見てる感覚に似てる
アルミン(巨人との戦いは、人類が優勢になりつつある)
アルミン(人類最強の男・リヴァイさんが第一線を退いて以来、エレンが調査兵団の兵士長になった)
アルミン(超大型巨人を倒し、鎧の巨人を倒し、女型の巨人を倒し、人類の反撃の狼煙を見事に上げてみせた)
アルミン(人民の多くが彼の姿に希望を見出したし、僕らもまた、彼に引っ張られるように尊厳を取り戻しつつある)
アルミン(ライナーとベルトルトとアニを許したとき、エレンは泣いていた。きっと仲間だと信じ、裏切られ、それでも信じ続けたことが報われたからかな)
アルミン(クリスタとアニが、自分の人生を変えてくれた人に惹かれるのも仕方のないことだろう。それは……)
アルミン(それは彼女だって同じ……)
サシャ「あ、アルミン!」
リヴァイ「……お前か」
サシャ「もうおじさん、失礼ですよ人類の希望の右腕に!」プンスカ
リヴァイ「チッ」
アルミン「ああリヴァイさん、どうも」
リヴァイ「おい小娘、これはどうだ……」
サシャ「クンクン……及第点ですね」
リヴァイ「そうか……」
アルミン「あの、農薬の選別とかサシャの嗅覚に任せていいんですか?」
リヴァイ「少なくとも、売りつけようとおべんちゃらを言ってくる店員よりはな……」ナデナデ
サシャ「もう子ども扱いしないでくださいよ! これでも成人済みですよ!?」
リヴァイ「俺からすればどいつもこいつもガキだ」
アルミン(リヴァイさんは今、壁外にいる)
アルミン(エレンの活躍によって人類の活動範囲は大きく広がった。それはウォール・マリアだけじゃない、その外までもだ)
アルミン(壁外に初めてできた農園……その農場主がリヴァイさんとハンジさんだ)
リヴァイ「ほらさっさと戻るぞ小娘」
サシャ「はーい♪」
アルミン(なぜそこの手伝いをサシャがしているのかは分からない。本人いわく、あそこで育った野菜は普通のとは違ううまみがあって中毒性があるらしい)
アルミン(ちなみにリヴァイさん、エレンとアニの結婚式の時に野菜を両手いっぱいに抱えたままスピーチしてエレンを泣かせてた)
アルミン(今度予定されてるクリスタ……じゃない、ヒストリアとの結婚式の時もきっと感動的なスピーチをしてくれるんだろう)
ジャン「おう、いたか団長」
アルミン「ジャン。ごめんね遅れて」
ジャン「いいっての。それで話なんだがな」
アルミン(なんだろう、氷爆石の採掘場拡大か? 壁外調査予算の拡充か?)
ジャン「ミカサのためにベビー用品を買おうと思うんだが、どこで売ってるんだ……?」
アルミン「だから仕事しろよお前ら!!!!!」
ミカサ「この体じゃエレンを守れない……」
エレン「いいっての。お前も、そのお腹の中の命も、俺が守り通すから」ナデナデ
ミカサ「……エレン、ありがとう……」グスッ
エレン「……おう」
ヒストリア「いいなあ……私も、いつか」
ユミル「まあまあ、この調子ならそのうち大丈夫だっての」
ヒストリア「…………」ジーッ
ユミル「?」ハラボテ
ヒストリア「<●> <●> 」
ユミル「な、なんだよ、隙を突いてミカサの第一婦人に続いて私がお先にゴールインしたこと、まだ根に持ってるのかよ」ニヤニヤ
ヒストリア「ユミル、あなたがエレンの第二婦人になっている間、私が手中に収めた権力の大きさを思い知らせてあげる」
ユミル「」
アンタ・・・・・やる気エレンの人っつーか、予告の人だろww
エレン(人類は尊厳を取り戻した)
エレン(壁外に出るのはまだ危険だ。その危険な状況の中でハンジさんを孕ませたリヴァイさんはすごい。YLS(やっぱりリヴァイさんはすごい)!)
エレン(まあともかくとして、ミカサと結婚して、ユミルと結婚して、アニと結婚して、そして俺はヒストリアと結婚する)
エレン(アルミンやヒストリアの後ろ盾もあって、王国の制度そのものに切り込める日も近い)
エレン(大体調査兵団兵士長としてちょっと巨人を殺しまくって領土を3倍に増やしたぐらいで重婚法が通るぐらいだ)
エレン(壁がなくとも、人類が家畜の安寧でも虚偽の繁栄でもなく、真の自由を手にするのも近いだろう)
エレン(愛する人や、守りたい人民、俺を支えてくれた世界が、今、俺の両肩にはある)
エレン(そして、死んでいった仲間たちの無念も、渇望も、残滓も、すべて俺は抱えて往こう)
エレン(巨人のこの世界から根絶するまで、俺は彼らのために歌を奏でよう)
エレン(英霊達に捧げる、巨人どもの悲鳴と血飛沫の鎮魂歌を)
エレン(人類は負けない。絶対に負けない。俺がいるから。……俺が、いるから)
エレン(——そう。人類の反撃は、ここからだ……!!)
ヒッチ「あ、あの……」ハラボテ
エレン「ん?」
ヒッチ「に、認知してください……///」
エレン「」
妻達『…………』
正当な理由しかない暴力がエレンを襲う……!!
終わり
ありがとございましたー
>>55
どっこい違うんだなこれが
初の進撃ssでしたー、お眼汚しすみません
私の理想のエレンを書いたつもりです
またいつか書けたら、キースとピクシスとエルヴィンの三角関係でも書こうと思います
ではお休みなさい
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