姉「弟君が倒れただって!?」 (14)
その報せを聞いたのは、期末試験の最終日の事だった。
最後の試験が終わり、ようやく試験勉強から解放された事で一息を着いた、丁度その時。
突然、教室の扉が強く開け放たれ、息を切らした担任教師が私の名を呼んだ。
そしてその一言は私の返事を待たずに告げられた。
弟が倒れたーーーーーと。
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姉「おいっ、どうしたんだよ!目を覚ましてよ!」
弟「」
医者「…すみません、手は尽くしたのですが…とにかく倒れた原因が不明でして……」
姉「原因不明って…どういう事なんですか!?弟は助かるんですか!?」
医者「…助けるつもりです…しかし、検査しても体に異常が見つからない…」
医者「いえ、昏睡状態になっているという異常は見つかったのですが…この様な症例は前代未聞でして…」
そして医者は弟が倒れた時の状況について所々言葉を詰まらせながら語った。
弟が倒れた時刻は最後の試験が終わる十分前。
急に具合が悪くなったようで、既に問題を解き終わっていた弟は保健室へと向かった。
そして、保健室に入って3分程で瞳孔を大小させながら倒れたそうだ。
更に保健医によると症状を聞いても部屋の四隅を見回して、言葉にならない声を発していたらしい。
弟は目が覚めない為、当然入院することになった。
医者から一通り説明を受けると、その日は出張先から飛んで帰ってきた両親の車で帰宅。
その夜、>>6から電話があった。
妹
電話の相手は妹だった。
中学のオカルト研究部と除霊師のバイトを兼任している、霊関係に精通した妹。
その妹が今回の件を聞いて、連絡をしてきたようだ。
しかし、妹のバイト先は弟の入院している病院からさほど遠くないはずだが、何故見舞いに来なかったのだろう。
妹「もしもし、姉ちゃn」
姉「もしもし、アンタ何で弟の見舞いに来なかったのよ!!」
妹「ま、まぁ、落ち着いて、今から何で来なかったか理由を説明するから…」
姉「…ふぅん、兄弟の見舞いに来れない理由ってのがどういうものか、聞かせて欲しいものね」
妹「…姉ちゃん、兄貴が倒れた事について原因不明…と言われたのよね?」
姉「…え、あぁ、うん」
妹「私は恐らく病院で検査しても兄貴が何故倒れたかは解らないと思う…」
姉「…もしかして」
妹「そう、この件には霊が絡んでると私は見た…」
妹「それでバイト先で姉ちゃんと兄貴の通う高校の除霊記録や七不思議、その他諸々の霊関係の記録を調べてたんだけど……」
妹「…姉ちゃんと兄貴の通う六条高校にはどうやら学校関係者すら知らない怪談があるみたいなの…」
姉「…えっ?私達生徒も知らない、怪談?」
妹「…まだ確信はないんだけどね、それを今調べてるところだからさ」
姉「…じゃあ、弟が倒れたのはその、私達も知らない六条高校の霊が関係してる…の?」
妹「…私はそうだと思ってるけど、まだ解らない」
妹「取り敢えず何か解ったら連絡するから…それと私は暫くは部活の友達の家にお世話になる事になったからパパとママに伝えておいてくれないかな?」
姉「…う、うん、解った…無理しないようにね…」
妹「解ってる、じゃあね」プツッ
翌日、私は授業中にも弟の事を考えていた。
まだ病院から連絡はなく、昏睡状態になって恐らくまだ目を醒ましていないのだろう。
妹からも連絡は入っていない。
この学校に存在する怪談や七不思議の類については私も知ってはいるが、
関係者すら知らない怪談とはどんなものなのか、考えずにはいられない。
何も手掛かりがないまま、私は考えを巡らせていた。
しかしどれだけ考えても今ある情報だけで推測するのは難しく、モヤモヤとした気分で放課後を待った。
放課後、私は保健室へと向かった。
弟が倒れた現場に居合わせた保険医に話を聞けば何か解るかもしれないと思ったからだ。
清潔感のある質素な保健室でボンヤリと外を眺めていると、ふいに声を掛けられ、私は声のする方へ振り向いた。
保険医「あら、どうしたの?部活がないなら早く帰りなさい」
姉「>>11」
今なら許してやるから素直に吐け
姉「今なら許してやるから素直に吐け」
保険医「……」
私はこの時保険医の沈黙が何を意味しているか解らなかった。
保険医は私の言葉に眉ひとつ動かさなかったが、確かにそこには僅かな沈黙があった。
保険医「貴女は確か弟君のお姉さん…だったかしら……昨日は大変だったわね」
姉「先生、聞かせて下さい…」
姉「弟が倒れた時の事を…聞かせて下さい」
同じ女でも見惚れてしまう程の美しさは時に怖くなる、とは正にこの事だろうか。
保険医の整い過ぎた顔には表情はなく、造り物の様な、けれども澄んだ瞳をこちらに向け、静かに口を開いた。
保険医「…貴女は既に気付いているかもしれないけれど、今回の件は」
姉「六条高校の、関係者すら知らない怪談」
保険医「…えぇ、そうよ」
姉「やっぱり…」
保険医「携帯、鳴ってるわよ?」
姉「あっ、本当だ…すいません」
電話の相手は妹だった。
妹「もしもし、姉ちゃん」
姉「もしもし、どうしたの?もしかして…」
妹「そのもしかしてよ!ウチのバイト先の資料室で六条高校からの過去の依頼記録を見つけたよ!」
姉「詳しく聞かせて」
妹「えぇーっとね、…六条高校創立以来5年に一度は必ず依頼を受けてるんだけどね」
妹「六条高校の創立は35年前、つまり創立した年も合わせて7回依頼を受けてるんだけど」
妹「2度目の依頼の時に、5年前の惨劇について聞いてみても誰一人憶えていなかったそうでね、同じ様に3度目の時も誰も2度目の時の事を憶えている人はいなかった」
姉「記録には残ってるけど、記憶には残らない、か…」
妹「うん…それとね、5年前の依頼に立ち会った私の先輩に当時の事を聞いてみたんだけど、教えてくれなかったのよ」
姉「忘れてるんじゃなくて?」
妹「うん、憶えているらしいんだけど教えてくれなかった……それについては禁句らしいの」
姉「うーん……私やっぱりオカルト的なことはよく解んないなぁ……取り敢えず今解ってる事をまとめてくれる?」
妹「オッケー、じゃあまとめるよ」
妹「今六条高校の怪談については解ってる事は、その怪談について私達除霊師は憶えていて、学校関係者は憶えていないこと、そして憶えていてもそれを5年後の依頼に臨む後輩に絶対に教えてはならないこと」
姉「その何故教えてはならないかが気になるね…」
妹「多分教えたら霊か何かを刺激してしまうとかだと思うけど、それについても調べてみるね」
姉「うん、お願いね…私もこっちで色々と調べてみる」
妹「オッケー、じゃあまた何か解ったら連絡するね!」
姉「うん、よろしくね」プツッ
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