相葉夕美「まじかるストロベリィ」 (61)
※クロスではありません、デレマスです。
設定や性格が一部異なります。
原作ドラマ化して346プロのアイドルが出演している、くらいの感覚でご覧ください。
~chapter0:相葉夕美、大学生~
http://i.imgur.com/7hJPgZn.jpg
大学の帰り道、小さな鉢植えを拾った。
花壇の端に置いてあったその鉢には、
「ひろって下さい」って小さなカードが添えられていた。
植物を粗末にするってことには悲しくなるけど、
この鉢の持ち主さんにはきっと事情があったんだよね。
「それにしても珍しい、なんて花なんだろう」
私もそれなりに植物には詳しいつもりなんだけど、ちょっとどんな品種だか見当がつかない。
とりあえず独り暮らしの部屋の隅、小さな私の園芸コーナーにその鉢を持っていく。
「みんな、新しいお友達だよ」
仲間に囲まれたその植物は心なしか嬉しそうにしていた。
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夜、夢を見た。
小学生くらいの小さな可愛い女の子。
さっき公園で見つけた鉢を手に持って微笑んでいる。
「拾って下さって、ありがとうございます」
http://i.imgur.com/QnT1Hro.jpg
そうか、さっきのお花の…妖精さんかな?
植物にも心がある、って信じてお世話してるけどこうやってあらためてお礼言われると嬉しくなっちゃうね。
今日はちょっといいことしたから神様がご褒美でこんな夢見させてくれたのかな?
布団の温もりを感じながらそんなことを考える。
もうすぐ目覚めの朝が来るはず…
「おはようございます」
目が覚めるとやっぱり女の子の姿が目の前にあった。
ありす「私、ありすと申します」
あの花は魔法苺(マジカルストロベリー)といって持ち主の愛情で育つらしい。
ありす「それで…私たち妖精は、ご主人様の愛情を獲得するべく精一杯ご奉仕するのです」
それでその服装なの…かな?
ありす「はい、見てください。このメイドコスチューム!」
ああ…このコ…
ありす「漢のロマンですよね!!」
絶対何か勘違いしている…
夕美「とりあえず朝ごはん食べようか」
ありす「はい、お手伝いします!」
トーストを焼きながらTVを付ける。
「続きましては気象情報です」
うん、今日もいいお天気になりそう。
ありす「ご主人様、これがテレビですね」
ありすちゃんは瞳をキラキラさせながら画面に見入っている。
夕美「そうだよ、初めて見たのかな」
ありす「はい…うわぁ…うわぁ…」
夕美「そんなに喜んでもらえるとなんだか嬉しいね」
~数日後~
ありす「んー、ふふー、おそうじー」
気が付くとありすちゃんの服装が少し変わっていた。
さすがに常識とのギャップを感じたんだね…
夕美「ありすちゃん、良かったらこれ使ってみる?」
ありす「なんですか、これ」
夕美「タブレットっていうんだよ。いろんな事が調べられるの」
大学で先生からお古をもらったんだけど私はあんまり使わないんだよね。
夕美「ほら、こうやって使うんだ。音声でも入力できるよ。なにか調べたいことはあるかな?」
ありす「そうですね…それじゃあ『ご主人様』、『悩殺』」
え…ちょっとその検索結果は…
夕美「見ちゃダメー」
急いでタブレットを取り上げる。
えーと、えーと…フィルタリングってどう設定するんだろう?
~chapter1:魔法苺~
ありす「ご主人様の部屋は、植物がたくさんあるんですね」
夕美「一人暮らしだからあまり置けないんだけどね」
ありす「鉢植えやプランターがこんなにたくさん、凄いです」
夕美「ふふ、ありがとう。そうだ、今日は天気がいいから外に出そうか」
ありす「あ、私も手伝います」
夕美「ありがとう」
ありす「えーと、これはこっちで、この鉢はここに並べて…」
夕美「ねえありすちゃん」
ありす「はい」
夕美「自分(魔法苺)の鉢だけ日当たりのいい場所に置いてない?」
ありす「そ、そ、そんなことはないですよ」
ありす「この花、きれいに咲いていますね」
夕美「キンギョソウだよ、私の誕生花の一つなんだ」
夕美「花言葉はおしゃべりとか清純な心っていうんだよ」
ありす「へぇー、ご主人様は物知りですね」
夕美「そういえば魔法苺の花言葉ってなんなの?」
ありす「え!?、えーと…えーとですね」
夕美「あれ、もしかして無かったとか?」
ありす「…さらば青春の時です」
夕美「古いよ…」
ありす「ご主人様は花を育てるのが上手いんですね」
夕美「私ね、いつか大きな家に住んで広い庭でガーデニングするのが夢なんだ」
ありす「素敵ですね」
夕美「今はアパートだから小さいお花しか育てられないけど…」
夕美「大きな樹とかバラ園とか育ててみたいな」
ありす「わあー、とっても素晴らしい夢だと思います」
夕美「えへへ…でもそれにはいっぱいお金が必要になるね」
ありす「はい…ご主人様」
夕美「なあに?」
ありす「もう卵かけご飯は食べ飽きました…」
夕美「ごめんね、明日バイト代入るから美味しいものでも食べに行こうか」
ありす「ご主人様、見てください!」
夕美「ん、どうしたのかな?」
ありす「やっと私(魔法苺)にも実が付きました」
夕美「わあー、小っちゃくて可愛いイチゴだね」
ありす「ご主人様がいっぱい愛情を注いでくれたおかげです」
夕美「ふふっ、そうかな」
ありす「あの…ご主人様…」
夕美「なーに?」
ありす「私のイチゴ食べてみますか」
夕美「え?」
ありす「じつは、この実には願い事を叶える力があるんです」
夕美「え、じゃあそのイチゴを食べれば…」
ありす「前に言ってましたよね、大きなお庭でガーデニングしたいって」
夕美「その夢が叶うかもしれないんだ」
ありす「はい」
夕美「うわー、ありがとうありすちゃん」
ありす「えへへ…あ、ちょっとベランダに出てきますね」
ガラガラ…
ありす「…星がきれいだな…」
ありす「ご主人様…ありがとうって言ってくれた…嬉しいな…」
ありす「……」
ありす「また…独りぼっちになっちゃうのかな……」
ガラガラ
ありす「あ、ご主人様」
トン
夕美「やっぱりこのイチゴ、ありすちゃんに返すね」
ありす「どうして…」
夕美「うーん、夢は自分で叶えた方が楽しいし…」
夕美「それにこのイチゴ食べたらありすちゃんが消えちゃいそうな気がして」
ありす「……」
夕美「あれ、図星だったの」
夕美「今の私はおっきなお庭よりもありすちゃんが側にいる方が楽しいんだからね」
ありす「はい、ありがとうございます」
夕美「あれ、でも、もしこのイチゴ食べて『ありすちゃんとずっと一緒にいられますように』ってお願いしたらどうなるのかな?」
ありす「え、それは…イチゴは願いをかなえてくれて…」
ありす「でも…私はイチゴを食べられたら消えてしまって…」
夕美「分からないんだ」
ありす「はい、すいません…」
夕美「それじゃあ、ちょっと試してみようか」
ありす「え、ダメですよ!」
夕美「大丈夫、大丈夫」
ありす「ダメですよー」
夕美「ふふ、ちょっとだけ。半分だけならいいと思わない?」
ありす「ゆるしてくださいー」
~chapter2:鷺沢文香とーじょー~
ピンポーン
ありす「あ、ご主人さま、おかえりなさ…」
ガチャ
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文香「あの…ここは…相葉さんのお部屋では…」
ありす「い、いえ…違います」
ありす「(だ、誰…?)」
文香「でも…表札が…」
ありす「違います」フルフル
夕美「ただい…あれ…文香さんじゃないの?」
文香「あ…夕美さん」
夕美「どうしたの、うちに来るなんて珍しいね」
文香「はい…あの…この子が…」
夕美「ん?」
ありす「えーと…あの…違います…違うんです……そうじゃなくてですね…」
文香「お邪魔します」
夕美「今お茶を入れるからリラックスしててね」
文香「あの…そちらは…妹さんですか」
夕美「え、そ、そうなの。今両親が海外に行っててね」
ありす「……」
夕美「ほら、ありすちゃ…ありす、ご挨拶」
ありす「あ…相葉ありすです…よろしく…」ペコリ
文香「これはご丁寧に。私、鷺沢文香と申します」ペコリ
夕美「文香さんは同じ大学のお友達なんだよ」
ことっ
夕美「はい、カモミールで淹れたハーブティーだよ」
文香「ありがとうございます。とても良い香りですね」
夕美「それで今日はどうしたの?」
文香「あ、はい。この前お借りした本をお返ししようと思いまして」
夕美「そうだったんだ。でもわざわざウチまで来なくても…大学でも良かったのに」
文香「いえ、夕美さんのお宅が丁度アルバイト先に向かう途中でしたので」
夕美「そうなんだね。もう読み終わったの?」
文香「はい、だいたいは…必要な事柄はメモいたしましたから」
ありす「なんの本なんですか」
文香「植物の文化と歴史についての本です、レポートに必要だったもので」
夕美「でもなんだか文香さんに私が本を貸すなんて変な感じだね」
ありす「そうなんですか?」
夕美「文香さんはね、読書家でとってもたくさんの本を読んでいるんだよ」
文香「いえ…そのようなことは…ただの書痴ですから」
ありす「……」
~chapter3:延原訳~
ありす「わ、私だって本くらい読みます」
文香「そうなのですか!どのようなジャンルの書籍を好まれますか」
ありす「あの…ミステリーとか」
文香「ミステリですか、それは素晴らしいです!どのようなジャンルでしょうか、フーダニットですか、新本格ですか?ハードボイルドや法廷物もいいですよね。歴史ミステリやトラベル・ミステリ、ああ日常の謎というのも面白いですし…」
ありす「えーと…その…ホームズを」
文香「Sir Arthurですか、良いですね!!最近ではどのような作品を読まれましたか」
ありす「えーと……えーと…」
夕美「ふふっ、ありすはいつも読んでる途中で眠っちゃうんだよね」
ありす「ち、違います。寝る前に読んでいるんです」
夕美「うふふ」
ありす「わ、私にだって読めない漢字とかあるんです。表現とかもちょっと難しくて…」
文香「もしよろしければ、ありすさんの読んでいる本を見せていただけますか」
ありす「え…まあいいですけど。はい、これです」
文香「あの…私は電子書籍というものに馴染みがないのですが、これはどう操作すれば良いのでしょうか?」
夕美「あ、これはね、こうしてこうやって…」
文香「なるほど…こういうものですか」
夕美「どう、分かる?」
文香「ふんふん…なるほど…」
ゴソゴソ
文香「あの…差し出がましいようですが、よろしければこれをどうぞ」
夕美「あれ、これもホームズの本…」
パラパラ
夕美「わあー、挿絵がきれい…」
文香「ありすさんの読まれていた出版社のものはとても流麗な訳でヴィクトリア朝の雰囲気を良く醸し出しているのですが、子供が読むには少々表現が難解だと思われます」
ありす「はあ」
文香「こちらの本は入門用に優しい言葉を使っていますし、収録されている作品も代表作ばかりなので初めて読む方にもお勧めできると思います」
夕美「すごいね文香さん、ホームズ持ち歩いていたんだ」
文香「いえ、たまたまです。先日立ち寄った古本屋で偶然見つけて、昔読んでいたのが懐かしくなってつい購入してしまいました」
パラパラ…
ありす「あ…においがします」
文香「古い本には…読んできた人たちの思い出が詰まっているものです」
文香「ページの折れ目や手垢の汚れ、紙のにおいも、本とそれを手に取ってきた人たちの気持ちが詰まっていると…私はそう思います」
ありす「そうですね」
文香「よろしければお貸ししますから、今夜からはそれを読んでみてはいかがですか」
夕美「借りちゃって大丈夫なの?」
文香「はい、その本も新しい出会いを喜んでいると思いますので」
ありす「ありがとうございます」
~chapter4:green hand, green thumb~
文香「ところで…もしよろしければ…少し相談に乗っていただきたいのですが…」
夕美「うん、私で良ければ…なにかな?」
文香「実は…植物を育てるのが…上手くいかないのです」
夕美「どんなふうに?」
文香「はい、大学に入って…独り暮らしを始めて…部屋が殺風景なので植物でも置こうかと思ったのですが…」
夕美「それはいいアイデアだね」
文香「育てる花が…すぐに枯れてしまうのです」
ありす「!?」
夕美「どんな育て方してるか詳しく聞かせてもらえるかな」
文香「はい、書物を紐解いて…自分なりに調べてみたのですが」
夕美「どんなことを?」
文香「そうですね…植物の育成には三大要素として窒素、リン、カリウムが必要だと分かりました」
夕美「うん、そうだね」
文香「そこで…リンが多く含まれるというマッチを与えてみました」
夕美「へぇっ?マッチってあの火をつけるやつ?」
文香「はい。あ、でもちゃんと粉末にしましたよ」
夕美「いやいやいや、そういう問題じゃなくてね!!」
文香「あと、カリウムを多く含むと読んだので納豆も与えてみました」
夕美「納豆!?」
文香「はい、ひきわり納豆です」
夕美「そこはどうでもいいから!!」
文香「あ、夕美さんは大粒派でしたか」
夕美「だからそうじゃなくて!!」
文香「もしかして…栄養のやり過ぎでしょうか」
ありす「まっち、なっとう…」ガクガクブルブル
夕美「(さっきまで文香さんに懐いていたありすちゃんが震えている)」
文香「なにせ植物を育てるのは初めてなもので…」
夕美「もう、文香さんたらいろんな事を知ってるのに…ちょっと待ってて」
文香「はあ」
ガサゴソ
夕美「はいこれ」
文香「なんでしょうか、このアンプルは?」
夕美「活力剤って言ってね、普通の鉢植えならこれをさしておくだけでかなり違うから」
文香「そうなのですか…このような便利なものが」
夕美「肥料は種類ややり方がいろいろあるからちょっと難しいんだよ」
文香「そうなのですね」
夕美「うちにはたくさんあるからいくつか持っていくといいよ」
文香「よろしいのですか」
夕美「うん、さっきの本のお礼だよ」
文香「ありがとうございます」
文香「夕美さんは植物を育てるのがお上手なのですね」
夕美「上手っていうか…好きだからかな」
文香「なにかコツのようなものはあるのでしょうか」
夕美「うーん、そうだなあ…」
夕美「ねえ文香さん。ありすの頭を撫でてみない?」
ありす「えっ、?」
文香「ありすさんを、ですか?」
夕美「うん」
文香「でもどうして?」
夕美「いいからいいから、物は試しっていうでしょ」
文香「はぁ…」
ありす「あの……私ですか」
夕美「うん、ちょっと協力してね」
夕美「ほらどうぞ」
文香「で、では…いきますよ…」
ありす「は、はい!いつでも…どうぞ…」
さわ…
ありす「……」ビクッ
文香「あ、痛かったですか」
ありす「いえ…大丈夫です…」
さわさわ…
文香「これくらいで…どうでしょうか…」
ありす「えへへ…なんだか…ちょっといいかも…」
文香「これで…いいのでしょうか…」
ありす「はい…なんだか…安心します…」
夕美「ねえ文香さん、今頭を撫でる時どんなことを考えた?」
文香「あの…あまり激しくしてはいけないと思い…様子を見ながら」
夕美「うん、ありすの反応を見ながら少しずつ加減したよね」
夕美「お花もね、一度に手をかけすぎるとストレスになることがあるんだ」
文香「はあ、ストレス…ですか」
夕美「そう、だからお花の反応を見て今どんな気持ちかなって考えながらお世話してあげるといいと思うよ」
文香「花の…気持ちですか…」
夕美「うん」
文香「そのようなこと…考えたこともありませんでした」
夕美「よく観察するとね、お花にもいろんな表情があることが分かるんだよ」
文香「なるほど…さすが夕美さんですね」
夕美「えへへ…」
文香「それではそろそろお暇いたします」
ありす「文香さん、本を貸していただいてありがとうございました」
文香「あの、読んだら感想を聞かせていただけますか」
ありす「はい、約束します」
夕美「ああ、ちょっと待って文香さん」
文香「なんでしょうか」
夕美「はいこれ、持ってってね」
文香「ずいぶん古びた本ですが…園芸の入門書ですか?」
夕美「うん、私が昔ガーデニングを始めた頃に読んでいた本」
文香「ところどころ破れて、土も付いていて…」
夕美「良かったらこれを読んで参考にしてみてね」
文香「はい、ありがとうございます」
文香「ずいぶんと読み込まれてますね…きっとこの本には夕美さんの植物への思いが込められているのでしょうね」
夕美「えへへ」
文香「それではまた…学校でお会いしましょう」
夕美「うん、またね」
本日投下ここまでです。
また書き溜めたら続き投稿します。
~chapter5:do re mi fa だいじょーぶ ~
夕美「それじゃあ学校に行ってくるからね、お留守番よろしくね」
ありす「はい、行ってらっしゃいませ」
ありす「それじゃあ今のうちにお掃除でもしましょうか」
パタパタパタ…
………
ありす「これで掃除とお洗濯は終わったから次は台所でも…」
ありす「あれ。お弁当忘れてる…ご主人様の」
ありす「もう仕方ないご主人様ですね、私が届けてあげましょう」
次は大学前~、大学前~
ありす「ここがご主人様の通う大学ですね」
ありす「ふふん、タブレットで調べればこんなものです」
ありす「さてと…ご主人様のクラスは…」
ぽちぽち
ありす「向こうの方角ですね。待っててくださいね、ご主人様」
うろうろ…
ありす「あ、あの建物は…なんでしょうか」
ありす「おかしいですね、目の前に見えているのが工学部のはずなのに…」
ありす「G○○GLEマップの現在地だとあれは私の後ろにあることになってます」
ありす「古い端末だからGPSの精度が悪いのでしょうか…」
ありす「と、とりあえず人が多く向かっている方へ行きましょう」
ぞろぞろ
ありす「ちょうど学生さんが大勢向かってます…あれについていけば…」
ありす「…すごい人混みです」
ムギュ
ありす「ああ、ちょっと押さないでください」
ありす「まったくいい大人なのにわき見しながら歩くなんて…」
ありす「こんなことで日本の将来は大丈夫でしょうか」
ありす「とりあえず人混みをなんとか抜け出さなくては…」
ありす「ふう、ようやく一息つけました」
ありす「さてここはどこでしょう…」
キョロキョロ
[Department of International Studies]
ありす「………読めません…」
通りすがりの外国人教師「Hey girl, did you get lost?」
ありす「えーと、えーと…その…」
通りすがりの外国人教師「What's happen?」
ありす「その…あの…」
ありす「ご、ご主人さまー、助けてくださいー」
ダダダダダ
愛梨「ねえ、夕美ちゃん、聞いた?」
http://i.imgur.com/U0Le5zh.jpg
夕美「なんの話?」
愛梨「なんかね、学校の中に小学生くらいの子供が入り込んでいるらしいの」
夕美「まあウチの大学は開放的だから、外から人が入ってくるのは珍しくないけど」
愛梨「そうそう、よく近所のおじさんが犬を散歩させてるものね」
夕美「それで何か変わったことでもあるの?」
愛梨「うん、私も噂で聞いたんだけど、その女の子が人を探しているらしいの」
夕美「じゃあ迷子になったのかな?」
愛梨「それがね、なんでも大きな声でご主人様、ご主人様って呼んでいるらしくて…」
ガタッ
愛梨「あれ、夕美ちゃん?どこ行くの、授業中だよ」
夕美「ごめん愛梨ちゃん、私ちょっと出てくるから!」
ありす「うう…ご主人様ぁ…どこですかあ…」
美波「ねえ、そこのあなた」
http://i.imgur.com/Icggopo.jpg
ありす「えっ?私ですか…」
美波「どうしたのこんなところで、誰か探しているの?」
ありす「えーとその…ご主人様に会いに来たんですけど…広くて…」
美波「ご、ご主人様!?」
美波「(こんな小さくて可愛い子にご主人様なんて呼ばせているとは、なんて羨まし…じゃなくてふしだらな)」
美波「(…でもここで親切にしておけば、仲良くなってお知り合いになれるかも)」
美波「あの…もし良かったら私も一緒に探してあげましょうか?」
ありす「え、いいんですか」
美波「ええ、ちょうど今は空きコマだから」
ありす「ありがとうございます」
美波「そう、ありすちゃんて言うの。可愛らしいお名前ね」
ありす「そうですか、へへ…」
美波「それでその…ご主人様は理学部だったわよね」
ありす「はい、そう聞きました」
美波「ああ、それならこっちから行った方が近いわよ」
ありす「そうなんですか。美波さんは詳しいんですね、それにとっても綺麗だし」
美波「そうかしら。ふふっ、褒められると嬉しいな」
美波「(よしっ!今のところ悪い印象は与えてないわね、このままもっと仲良くなれたら…)」
夕美「あ、ありすー!」
ありす「あ、ご主人様ー」
夕美「もお、どうしたの?いきなり学校に来るなんて」
ありす「はい、お弁当です」
夕美「あ、届けてくれたんだ。ありがとう」
ありす「えへへ…」
美波「(え…女の子だったの…)」
ありす「あ、この人に案内してもらってたんです」
美波「あのー、お二人は…どういうご関係で…」
夕美「あ、姉妹なんです、姉妹。ね、ありす」
ありす「えっと…うん、お姉ちゃん」
美波「ほ、本当に実のご姉妹で」
夕美「う、うん…あまり似てないって言われるんだ…アハハ」
美波「(実の妹+女同士+ご主人様=……)」
美波「ま、参りました…」
夕美「ん?」
夕美「あ、妹がお世話になりました。私1年の相葉夕美って言います」
美波「あ、新田美波です…よろしく…」
ありす「えーと、美波さんありがとうございました」ペコリ
美波「(か、可愛い!!)」
美波「(頭を下げた時に長い髪がふわりと前に流れてきてそれを手で戻そうとするんだけど戻りきれなくてちょっとだけ気にしながらも私の方を見上げて微笑むその姿が…)」
夕美「あのー、美波さん?」
美波「あ、ごめんなさい。つい見とれちゃって」
ありす「?」
美波「ソ、それじゃあ私はこれで」
夕美「うん、ありがとう」
~chapter6:public garden ~
夕美「私はまだ授業中だから、どこかで終わるまで待っててね」
ありす「はい、でもどこで待てばいいでしょうか」
夕美「うーん、それもそうだね」
ありす「この中はよく分かりません…また迷ってしまうかも」
夕美「それじゃあ、あそこに行こうか」
てくてく
ありす「ご主人様、ここは?」
夕美「園芸部の温室だよ、いろんな植物を育てているんだ」
ありす「すごいですね」
夕美「うーん、多分この時間ならいると思うんだけど」
夕美「せんせー、いますかー」
ヘレン「どうしたの、騒がしいわね」
http://i.imgur.com/WpqSFqK.jpg
夕美「あ、先生。おはようございます」
ヘレン「どうしたの夕美、まだ授業中じゃないの。サボりとは感心しないわね」
ヘレン「この学校の講義はそこそこのレベルよ。まだ世界に通用しないものもあるけれど」
夕美「あのー、実は妹を預かって欲しいんです」
ヘレン「妹?初耳ね」
夕美「ほら、ありす」
ありす「は、初めまして。相葉ありすです」
ヘレン「なかなか良くできた子ね。世界レベルになる素質があるわ」
夕美「学校に忘れ物を届けてくれたんですけど、私はまだ授業があるので」
ヘレン「分かったわ、私が預かるから心配しないで学生の本文を果たしていらっしゃい」
夕美「ありがとうございます」
ありす「ここは暖かくて…いろんな植物がいっぱいあるんですね」
ヘレン「そう、ここは世界レベルの植物園よ」
ありす「世界レベル、そんなにたくさんの植物たちがいるんですか」
ヘレン「種類は豊富だけど、少し違うわね」
ありす「どういう意味ですか?」
ヘレン「この温室が世界レベルなのは、世界レベルの私が管理しているからよ」
ありす「よく分かりません」
ヘレン「精進しなさい、あなたにも世界のレベルが分かる日まで」
ありす「(大学というのは変わった人が多いんですね…)」
ありす「あそこにある大きな木はなんていうんですか」
ヘレン「あれはLepidodendron、リンボクよ」
ありす「あそこにある小さなシダのような植物は」
ヘレン「あれはCooksonia、クックソニアよ」
ありす「あれは、イチョウにしては葉が細いですね」
ヘレン「Baiera、バイエラ属よ」
ありす「どれも見たことありません、ここには珍しい植物がたくさんありますね」
ヘレン「The Lost World、失われた世界という小説を知ってるかしら」
ありす「いいえ、聞いたことありません」
ヘレン「世界レベルの名著よ、読んでみることをお勧めするわ」
ヘレン「せっかく来たのだもの、大学の中を案内してあげるわ」
ありす「ありがとうございます」
てくてく…
ヘレン「ここが図書館よ!」
ありす「わぁ…本がいっぱいあります」
ヘレン「世界レベルとはいかないけれどかなりの蔵書を備えているわ」
てくてく…
ヘレン「ここが情報処理センターよ!」
ありす「パソコンがいっぱい並んでますね」
ヘレン「ここから世界中の研究機関につながっているのよ」
てくてく…
ヘレン「ここが体育館よ!」
ありす「広いですね、見たことのない器械とかおいてあります」
ヘレン「世界のレベルに挑むためのトレーニングが行われているわ」
ヘレン「ここが学食よ!」
ありす「わぁ…私学食って初めて見ました」
くきゅるるる…
ありす「あ、これは…その…」
ヘレン「フフ…その音はカレーライスね。待ってなさい、今食券を買うから」
チャリンチャリン
ありす「あの…いいんですか?」
ヘレン「世界レベルを目指すためにはまず腹ごしらえからよ」
ありす「ありがとうございます」
学食のおばちゃん「はい、カレーお待たせ」
ありす「わあ…これが学食のカレーですね。いただきます」
ぱくぱく
ヘレン「どう、あまりおいしくないでしょう」
ありす「いえ…けっこういけます」
ヘレン「そう、エコノミーでいい子ね」
~chapter7: The sunrise from the Adriatic Sea~
ヘレン「お腹もいっぱいになったしそろそろ戻りましょうか」
ありす「はい」
てくてく…
ヘレン「ここが体育館よ!!」
ありす「はあ…さっき見ましたけど…」
ヘレン「何度見ても構わないのよ、世界ではね」
てくてく…
ヘレン「ここが情報処理センターよ!!」
ありす「ここもさっき来ましたけど…」
ヘレン「世界の情勢は日々刻々と変わっているわ、一秒も気を抜いてはいけないの」
ありす「はぁ…」
てくてく…
ヘレン「そして、ここが図書館よ!!」
ありす「だからさっき来ましたって!もしかして帰り道が分からないんですか!?」
ヘレン「世界レベルの私が道に迷うわけないわ。黙ってついて来なさい」
文香「あれ、ありすちゃんではありませんか」
ありす「あ、文香さん!!」
文香「どうしたんですか、こんなところで?」
ヘレン「あなたは確か…」
文香「鷺沢文香です、園芸部の相葉夕美さんの友人です」
ヘレン「ああ、そうだったわね。何度か温室にも顔を出したことがあるでしょう」
文香「はい、それでありすちゃんは今日はどうしてここに?」
ありす「ごしゅ…お姉ちゃんにお弁当を届けに来たんです」
文香「そうだったのですか、偉いですね」
ありす「えへへ…」
文香「ちょうど良いところでお会いしました、私も植物園に同行してもよろしいでしょうか」
ヘレン「別に構わないわよ」
ありす「ぜひお願いします!!」
文香「ありがとうございます」
てくてく…
ヘレン「それで何か用なの?夕美はまだ授業中よ」
文香「いえ、実は植物を分けていただこうかと思いまして」
ヘレン「植物を?」
文香「ええ、昨日夕美さんとお話ししたときに、育てるのによさそうな植物を選んでいただけるということでしたので」
ヘレン「そうだったのね」
文香「あの…先生?」
ヘレン「何かしら」
文香「温室に向かうにはこちらの道ではないのですか?」
ヘレン「時には道を外れて野に咲く花を見るのも楽しいものよ」
ありす「こんどは上手く育てられるといいですね」
文香「ありがとう、実は…この前夕美さんにアドバイスを受けてから、新しい鉢を育ててみたのですが…」
ヘレン「どうなったの」
文香「また、枯らしてしまいまして」
ありす「ど、どうして…」
文香「はい、夕美さんにいただいた活力剤のおかげでしばらくは良かったのですが」
ありす「はい」
文香「どうにも葉の色つやが良くないようなので自分でも栄養を与えてみることにしました」
ヘレン「何を与えたの」
文香「はい、千川印のエナジードリンクというものを買ってきたのですが」
ありす「そ、それを植物に!?」
文香「はい、どんな生き物も元気にすると書いてありましたので」
ヘレン「それでその結果は?」
文香「2,3日は元気いっぱいになったのですが…力を使い果たしのかぐったりとしおれてしまって…」
~chapter8: こんなん出ましたけど~
ヘレン「着いたわ、世界レベルの植物園よ」
ありす「本当に良かったです、文香さんと出会えて」
文香「それで…どんな植物が私にはよいのでしょうか?」
ヘレン「…ここにあるのは主に研究用よ。素人が育てるのは難しいんじゃないかしら」
文香「そうですか、夕美さんは育てるのに簡単なお花もあると言っていたのですが…」
ありす「(それはご主人様のレベルから見た話じゃないでしょうか、というか文香さんに育てられる花がこの世に存在するのでしょうか)」
文香「あの…あそこにある鉢植えは、なんでしょうか」
ヘレン「分からないわ」
ありす「ここには先生も知らない植物があるんですか?」
ヘレン「違うわ。いくら私が世界レベルでも今朝誰かが置いて行った鉢までは面倒見切れない、つまりそういう事」
文香「誰かが置いて行った?」
ヘレン「そう、時々いるのよ、迷惑な人が。今朝来たらいつの間にかあったわ」
ありす「あ、カードが添えられています…『ひろって下さい』って」
ヘレン「まったく無責任な話ね」
ありす「本当ですね」
文香「それであの…結局この植物はなんという種類なのでしょうか」
ヘレン「いくら私が世界レベルでも世の中のすべての事を知り尽くすわけにはいかないわ」
ありす「やっぱり知らないんじゃないですか!」
ヘレン「己の未熟さを素直に認める、それも世界レベルには必要なことよ」
文香「あの…もしよろしければ…この鉢、私が持っていってもよろしいでしょうか」
ヘレン「その鉢を?あなたが育ててみるの?」
文香「はい。こうして出会えたのも何かの縁ですし」
ヘレン「そう、いいんじゃない」
文香「ありがとうございます」
ありす「あ、あの…困った時はごしゅ…お姉ちゃんにまず相談してくださいね」
文香「はい、分かりました」
ヘレン「ビニール袋をあげるわ、これで持っていきなさい」
文香「ご親切に…ありがとうございます」
夕美「えー、それで文香さんがその鉢植えを持っていっちゃったの?」
ありす「はい、ご主人様はあの鉢のこと知ってたんですか?」
夕美「ううん、そうじゃないんだけど…」
ありす「ご主人様、どうかしましたか?」
夕美「ありすちゃん。ウチに来た時のこと、覚えてないの?」
ありす「いえ、気が付いたらご主人様の部屋にいましたけど…」
夕美「そうなんだ…あのね…」
ありす「それじゃあ私の鉢も同じように」
夕美「うん、小さなカードが添えられて公園に置いてあったの」
ありす「で、でも…それだけで同じと決めつけるのは」
夕美「あの先生でも知らない植物がそうあちこちにあると思う?」
ありす「そ、それじゃあ」
夕美「ま、まあ…たまたま珍しい植物だったって可能性もあるけど…」
ありす「あの…ご主人様」
夕美「なあに?」
ありす「私は…あの鉢が特別なものでもそうじゃなくても…文香さんに拾われて嬉しかったです」
夕美「ありすちゃん…」
ありす「だって独りぼっちでいるのは寂しいですから…」
ありす「きっとあの鉢も仲間が欲しくて、それでここに来たんじゃないでしょうか」
夕美「うん、きっとそうだね」
夕美「(ありすちゃんはきっとあの鉢に自分の姿を重ねていたんだね)」
夕美「それに鉢から妖精が出てくるなんてそんな事が次々と起こるなんて…」
♪prrrrrrrrr
夕美「あ、電話だ」
文香『あの…もしもし…夕美さんでしょうか』
夕美『あ、文香さん。ちょうど今話していたところだったの』
文香『あの…こんなこと信じてはもらえないと思うのですが…あの鉢を持ち帰ったら…その…変なものが現れまして…』
以上で終わりです。お付き合いいただいてありがとうございました。
機会があれば続きを書きたいと思います。
それでは依頼出してきます。
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