幸子「カワイイボクとダイエットですよ!」 (149)
幸子と一緒にダイエットをする話です。
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モバP(以下P)「……」カタカタカタ
ちひろ「……」カタカタカタ
P「……」カタカタカタ
ちひろ「……」カタカタカタ
時計>ポーンポーン
ちひろ「よしっ」カタカタカターン
ちひろ「プロデューサーさーん、お昼ですよー。休憩時間ですよー」ガタッ
P「あ、もうこんな時間ですか」ターン
ちひろ「ささっ、ご飯にしましょ。実は今日、ちょっとお弁当を多く作り過ぎて……」ツカツカツカ
ちひろ「……ん? プロデューサーさん。デスクの上にあるそれは一体なんですか?」
P「あっ」ギクッ
ちひろ「私にはどうにも、空のお弁当箱に見えるんですけどねー」
P「いや、それが……あはは」
ちひろ「早弁とかいーけないんだー! 早苗さんに言ってやろー!」
P「まあ、その早苗さんから頂いたお弁当なんですけどね」
ちひろ「むっ。それなら、まあ今回は見逃しますけど……今度から仕事中の早弁は止めて下さいね」
P「はい、すいません」
P「じゃあ、お昼にしますか」イソイソ
ちひろ「……早弁したのに、まだ食べるんですか?」
P「ええ、まあ。まだまだ行けますよ」ヨイショ
ちひろ「新しく取り出したそのお弁当箱は……また誰かの差し入れですか?」
P「はい。これはまゆのですね」パカ
ちひろ(わーお。ご飯の上におっきなハート。他の食材も……手が込んでますねー)
P「で、こっちは雪美のです」パカ
ちひろ(可愛らしい猫ちゃんのお弁当箱の中身は……これまた小さなハートがいっぱい。人参が猫ちゃんの形してて可愛いですねー)
ちひろ(まゆちゃんのと比べて全体的な完成度は低いですけど、そこが頑張って作った感があっていいですねー)
ちひろ「って、2つも食べるんですか?」
P「2つじゃないですよ」ゴソゴソ
P「こっちが輝子のキノコ弁当、でこっちは七海の海鮮弁当、こっちのバスケットがみちるから」
P「この大きなおにぎりが茜。ドーナツの盛り合わせが法子。この眼鏡が入った弁当が言わなくても分かりますよね」スチャ
P「あとこれ。紗南が作ってくれた弁当なんですけど、ほら。ゲームのコントローラーみたいになってるんですよ」
ちひろ「はぁー」ポカーン
ちひろ「え、どうするんです? そのお弁当の山」
P「勿論食べますよ。全部。残さず」
ちひろ「ひぇー」
P「ちひろさんもその後ろに隠した弁当くれるんですよね?」
ちひろ「うっ……き、聞こえてたんですか?」カァァ
ちひろ「いや、でも流石にこの量を全ては……」
■■■
P「――ごちそうさまでした」パン
ちひろ「行けちゃうんだよなー」
ちひろ(あの尋常じゃない量を食べきるなんて、これは……)
ちひろ「やっぱり男の子ですねー、さすがー」ウンウン
P「ははは。照れますね」
P「さて、じゃあ感想返しでもしますか。まゆには『いい味付けだった。卵焼きの微妙な甘さ加減がベネ』と」スラスラ
ちひろ「はー、マメですねー」
P「みんなから感想聞かせてくれって言われてるんですよ。将来の役に立てるからとかで」
ちひろ(うーん、攻めてますねー)
P「雪美には『どんどん上達してきたな。ペロから教わったことをちゃんと吸収できていて、この先が楽しみです』と」
ちひろ(ペロちゃんって料理できるんだ……)
P「ちひろさんのお弁当も美味しかったですよ。特にあの里芋に味が染みてて……」
ちひろ「ど、どうも……えへへ。目の前で感想言われるとなんか照れますね」
■■■
P「……っと」カタカタカタ
P「そろそろ……かな」チラッ
ちひろ「どうしたんですかPさん? 時計なんか見て」
ちひろ「あ、そっか。そういえばそろそろあの子が帰ってくる時間ですね」
P「ええ」
ちひろ「3週間ぶりですか。いやー、長い海外ロケでしたねー」
P「ですね。もう長いこと声聞いてないから、会うのが楽しみですよ」
ちひろ「あれ? 確かプライベート用の携帯渡してましたよね。Pさんの携帯に直接繋がる」
ちひろ「あの子の事だから、毎日暇があればPさんと連絡を取ってるものとばかり……
P「渡してた携帯、向こうで壊しちゃったみたいなんですよ。何か川に落ちてワニと追いかけっこするハメになったとかで……」
ちひろ「よく無事でしたね……」
P「何か焦ったのかクロールじゃなくてバタフライで逃げきったらしいですよ」
P「向こうのスタッフと連絡とって、定期的に本人の様子を聞いてたから問題はないんですけどね」
ブゥーン……キキー
アリガトウゴザイマシタ! カワイイボクノサインヲドウゾ! ゼヒカホウニシテクダサイネ!
ちひろ「と、話してたら噂のあの子が帰ってきたみたいですね」
ダッダッダ
バタン
ガチャ
幸子「みなさーん! ボクが! カワイイボクが帰ってきましたよー!」ドヤーン
幸子「3週間ぶりですね!」
幸子「皆さんに会えなくてボク寂し……じゃなくて! カワイイボクに会えなくて皆さん寂しかったんじゃないですか!?」
幸子「さあさあ! カワイイボクとお話したい人は並んで下さいね!」
幸子「……」ワクワク
幸子「……って、誰も来ないですね」キョロキョロ
幸子「事務所の中が随分と閑散としてますね……」
ちひろ「ふふっ、お帰りなさい幸子ちゃん」ツカツカ
幸子「あっ、ちひろさん! カワイイボクが帰ってきましたよ!」
幸子「……ああの他の人たちは?」
ちひろ「ごめんなさいね。今、皆お仕事やレッスンで出払ってて」
ちひろ「今事務所にいるのは、私とプロデューサーさんだけなんですよ」
幸子「むっ、そうですか……ならしょうがないですね!」
幸子「そっか……Pさんもいるんだ」カガミトリダシ
幸子「……」カミトトノエ
幸子「よし。今日もボクはカワイイですね!」ドヤーン
幸子「さあPさん! カワイイボクが帰ってきましたよ!」
P「幸子ー、お帰りー」ドスドス
幸子「……! この声はPさん……!」パァァ
幸子「んんっ! はいはい、今帰りましたよ! ボクを大好きなPさんは3週間もボクと会えなくてさぞ寂しかったでしょうね!」
幸子「ええ、そうでしょうそうでしょう! 感動の余り強く抱きしめたい、その気持ちはよく分かります」
幸子「本来ならアイドルとプロデューサーという間柄、決して許される行動ではないですけど……今日は特別です!」
幸子「さあさあ! 3週間ぶりのカワイイボクを好きなだけ抱きしめてもいいんですよ」クルッ
P「おっす幸子」ドタプーン
幸子(振り返ったボクの目に入ってきたもの)
幸子(それをPさんと呼ぶには、あまりにも大きすぎた)
幸子(大きく、分厚く、重く、そして巨大過ぎた)
幸子(それは正に肉塊だった)
幸子「うわああああああ!?」ズコー
幸子「だ、誰ですかあなた!?」
P「誰ってお前……俺だよ俺。モパPだよ」
幸子「な、何言ってるんですか……! ボ、ボクのPさんはこんな拳法殺しの人みたいな体型じゃないですよ!?」
幸子「え、え、え……えぇぇぇぇぇ!?」
幸子「ちょ、ちょっと誰か! ボクのプロデューサーを詐称してる巨大不審人物が事務所に侵入してるんですけど! で、であえー!」
P(久しぶりに会ったからか、動揺してるのか? 仕方ない)
P「落ち着けって幸子。ほら『Pチャーン……醤油とってにゃぁ……うぇぇ……かけすぎちゃったにゃああ゛』これでどうだ?」
幸子「そ、その絶妙に似てない物真似はPさんそのもの……た、確かに声もPさんですけど……」
P「おいおい、3週間会わなかっただけで俺の顔忘れるとか、流石にショックだぞ」
幸子「ショックなのはこっちですよ! 一体何がどうなってそんな体型になっちゃったんですか!? ボクが知らない間に世界線が変動しちゃったんですか!?」
P「そんな体型って……俺別に何も変わってないと思うけど」
幸子「自覚がないにも程がありません!? スーツのボタンとか今にも弾け飛びそうなんですけど!?」
幸子「これ! これみて下さい!」サッ
P「これって……スマホの待ち受け画面か。幸子と一緒に映ってる男……あ、俺か」
幸子「そうですよ。このシュッとした自分と、今の自分を見比べてみて下さい」
P「うーん」
P「……確かに、少し太った気がする」
幸子「少しどころじゃないですよ! 3週間ぶりに会ったボクがあまりにショックで机に突っ込むレベルですよ! ほら今頃になって頭にカワイイタンコブが!」プクー
P「幸子は大げさだなぁ。はっはっは」
幸子「ら、埒が明かない……」
幸子「ちひろさん! ちひろさーん!」
ちひろ「はいはい。ここにいますよー。はい、絆創膏持って来たから頭見せて……って、もう治ってますね」
幸子「これは一体どういうことですか!」ビシッ
ちひろ「えっと……何が?」
幸子「Pさんですよ! ボクがちょっと海外に行ってる間に、物凄いことになってるじゃないですか!」
幸子「これみて下さい。もう別人じゃないですか!」サッ
ちひろ「幸子ちゃんと一緒に映ってるの……え、これプロデューサーさん?」
ちひろ「えっと」チラ
P「もぐもぐ……うーん、乃々が作ったこの手羽先、癖になる味だな」ムシャムシャ
ちひろ「せ、成長期ですかね?」
幸子「んなわけないでしょう!?」
ちひろ「た、確かに別人ですね」
ちひろ「あ、あはは……毎日会ってるから、全然変化に気づかなかったのかしら……」
幸子「原因は? 何か原因でもないとあんな風になりませんよ! 毎日一緒にいたなら、何か気づかなかったんですか?」
ちひろ「そう言われても……普通に仕事して、普通にアイドル達とコミニュケーションを取ってる様子しか見てませんし……」
ちひろ「しいて言うなら、ちょっと食欲が旺盛だなぁ……と。でも、まあ食欲の秋だし、許容範囲内かなぁって」
幸子「ちょっと旺盛なくらいで、ああはなりませんよ」
幸子「他にきっと原因があるはず……例えば晶葉さんの人体実験……いつも飲んでる怪しいドリンクの副作用……まゆさんのストーキングによるストレス……着ぐるみが体と同化した……」ウムム
幸子(この事務所には思い当たるフシが多すぎる……)
バタン
かなこ「あ、幸子ちゃん。お帰りー」パタパタ
幸子「かなこさん。ただいま帰りましたよ。ボクの楽しい海外ロケについてさぞ聞きたいでしょうけど、今はそれどころじゃないので」
かなこ「ちょうどよかったー。ケーキ焼いてきたから食べてね」カチャカチャ
幸子「あ、どうも」
幸子(ふぅ……とりあえず甘い物でも食べて落ち着くことにしましょう)
幸子(ほほう……カワイイボクほどではないですけど、小さくて中々カワイイケーキですね)
かなこ「はい、プロデューサーさんはこっちです」ドン
P「おう、いつもありがとうな」
幸子「……」
幸子(変ですね。ボクの目が正しければ、プロデューサーさんの前に置かれたケーキ、どう見てもホールごとなんですけど)
幸子(しかもかなり大きめの。8人くらいで食べるケーキ)
P「いただきまーす」ムシャリ
幸子(そしてやっぱりボクの目が間違いじゃなければ、Pさんがそのホールケーキにフォークを突き刺して、パクパク食べているような……)
P「うめーうめー」
P「……ふぅ」
幸子(そしてあっという間に完食)
P「相変わらずかなこのケーキは美味しいなぁ。ほんとに、店出せるレベルだなこれ」
P「何かの企画で出してみるか、店」
かなこ「え、ええ! い、いいですよ。そんなお店なんて……私は、身近な人に食べてもらうのが一番うれしいから……」チラッ
P「そうか残念だな。おかわりある?」
かなこ「はいどうぞ!」サッ
P「いただきまーす」
幸子(そして現れるホールケーキ)
幸子(あっという間に平らげ、そしておかわり。目の前で繰り広げられるのは、非現実的な光景)
幸子(でも、ボクが口に入れたケーキはしっとりしてて、サッパリ甘くて……)
幸子「現実だこれ!?」
P「はい!」ムシャ
かなこ「はい」サッ
P「はい!」ムシャ
かなこ「はい」サッ
P「はい」ムシャ
幸子「ストーップ! ストップストップ! わんこケーキ一旦ストップ! 自分で言ってなんですけど、わんこケーキって何ですか!?」
幸子「ち、ちひろさん! これは一体どういうことですか!」
ちひろ「お、男の人ってよく食べるんですねー」メソラシ
幸子「そういうレベルじゃないですよ! おかしいですよちひろさん!」
■■■
幸子「つまりこういう事ですか?」
幸子「普段常識的な範囲行われていた、プロデューサーさんへのお菓子やお弁当の差し入れ。それが気が付けばあんな風にどう考えてもおかしい量になってしまっていた、と」
ちひろ「で、ですね」
幸子「そしてその原因は……ボクの長期海外ロケ。事務所の中で常識人枠であるボクがプロデューサーさんの側にいなくなったことで、ストッパー役がいなくなってしまった、と」
ちひろ(幸子ちゃんが常識枠かどうかはこの際置いておくとして……アイドルのみんなが色んな面でちょっとやり過ぎそうになった時、まず最初にそれを止めるのは幸子ちゃんの役目でしたからね)
P「こういう差し入れにしろ、アイドルとのコミニケーションにしろ、アイツらがめちゃくちゃやりそうになった時、必ず幸子がストッパーに……っていうか、ツッコミ入れてくれてたような……」
幸子「まったく……ボクがいないと皆は本当に駄目ですね!」
幸子「……いや、本当に」ハァ
ちひろ「ごめんなさい。本来ならプロデューサーさんの補佐をする立場の私が止めなきゃいけなかったんだけど」
幸子「まあ、いいです。それよりもこれからの事です」
P「これから?」
幸子「そうです。プロデューサーさんのその体型を何とかしないと」
P「別に大丈夫だろ? 今の所何も問題ないし」ボリボリ
幸子「言った側から何食べてるんですか!?」
P「レッスンから帰ってきた杏に渡す予定の飴」ボリボリ
幸子「食べちゃ駄目な奴ですよねそれ!?」
幸子(くっ、何とかしようにも、本人に全く危機感が無い……!)
幸子(こんなんじゃ、いつまでたってもあのカッコいいプロデューサーさんが戻ってこない……!)
幸子(仕方ないですね……!)
幸子「プロデューサーさん! 病院に行きますよ!」
P「病院? 何で?」
幸子「そんな急激に太ったんだから、絶対体のどこかを悪くしてるはずです! さあ、行きますよ!」グイグイ
P「幸子は心配性だなぁ」
ちひろ「いってらっしゃーい」フリフリ
☆病院☆
医者「あんた死ぬよ」
P「えっ」
医者「急激な体重増加により体の各部位が悲鳴をあげている」
医者「このまま体重が増えたり、減る傾向が見られなかったら、死ぬ。間違いなくな」
P「死ぬって、え……」
P「そ、そんな馬鹿な……ははは。ちょっと太ったくらいで死ぬとか」
医者「医者のオレからみてお前に足りないものがある。危機感だ」
医者「――お前もしかして、自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?」
P「……」サァー
医者「そうだな……大体3週間くらいで死ぬ。こう……血管がパーンと。汚い花火みたいに。体の内側から弾け飛ぶだろう」
医者「あの地球人のようにな……」ニヤリ
幸子(誰なんですか……)
P「あ、あわわ……」ガクガク
幸子(と、とにかく!)
幸子(よし。これでプロデューサーさんに危機感を抱かせることができましたね!)
幸子(このお医者さんがボクのファンだったおかげで、協力してもらえて助かりました!)
幸子(3週間以内に死ぬなんてありえないですけど……まあ、嘘も方便ということで)
幸子(このままだと将来的に体に悪いのは本当みたいですし)
幸子「さっ、プロデューサーさん。行きますよ」ギュッ
P「……あ、ああ」
☆事務所☆
バタン
幸子「ただいま帰りましたよ」
ちひろ「あ、幸子ちゃん。どうだった?」
幸子「ええ、実は……」
P「さて、ya○hoo○袋で遺書の書き方でも調べるか……」カタカタ
幸子「ちょっとちょっと!? 何してるんですか!?」
P「いや、3週間後に死ぬらしいし、遺書書いとかないと。文香辺りに聞いてもいいかもな」
幸子「潔すぎでしょう!?」
P「医者に死ぬって言われたらもうしょうがないだろ。早めに引き継ぎの準備しとかないと……」
幸子「いやいやいや! 痩せればいいだけの話でしょう!?」
P「痩せる?」
幸子「そうですよ! ダイエットですよ!」
P「……その手があったか」
幸子「むしろその手しか無いですよ。なにいきなり生を放棄しようとしてるんですか。こっちがビックリですよ」
P「いや、でもダイエットって言っても、俺したことないし、どうすれば……」
幸子「全く……Pさんはボクがいないと本当に駄目ですね!」ドヤーン
幸子「ボクに任せて下さい」
幸子「3週間でボクがPさんを元のカッコイ……んんっ! 標準体型に戻してあげます!」
ちひろ「えっと……ダイエットをするんですか?」
幸子「ええ。今日からボクがプロデューサーさんに付っきりでダイエット指導をします」
幸子「ちょうどお休みもたくさんもらえましたからね!」
ちひろ「そういうことなら、お願いね」
幸子「任せて下さい!」ドン
ちひろ「幸子ちゃんも一緒にダイエット頑張ってね」グッ
幸子「……え? な、何言ってるんですか?」
ちひろ「何って……幸子ちゃんもちょっと太ったみたいだし、一緒にダイエットするんじゃないのかなぁって」
幸子「は、はぁ!? カ、カワイイボクが太るわけなんてないですよ!」
P「いや、ちょっとふっくらしてるぞ。ロケ先の飯を食べ過ぎたんだろ」
幸子「い、いやいや……そんな馬鹿な」
幸子「た、確かに普段より少し食べ過ぎたと思いますけど、でも食べられる時に食べておかないとあのロケでは生き残れなかったし……でもそんな……」ブツブツ
ちひろ「はい体重計」スッ
幸子「……」ゴクリ
幸子「だ、大丈夫……大丈夫……ボクはカワイイ……カワイイボクは太らない……」ソロリ
カチリ
幸子「……」
幸子「……」
幸子「い、一緒に頑張りましょう! プロデューサーさん!」ナミダメ
■■■
☆ダイエット準備☆
P「しかしダイエットって言ってもな……走ったり、泳いだりするのか?」
幸子「普通はそうですね。でもプロデューサーさん? ボク達がいるのはどこですか? そう、アイドル事務所です!」
幸子「アイドルの必須技能、それはズバリ体型維持!」
幸子「皆さん体型を維持する為に、レッスン以外にも色々やってますからね!」
P「そうなのか?」
幸子「当たり前でしょう? 仕事柄、短期間で体重を落としたり増やしたりしないといけませんし。みんなそれぞれ体重をコントロールする為のテクニックを1つや2つ持っているものです。アイドルですからね!」
幸子「勿論ボクも秘密のダイエットテクニックを持ってますけど……これはプロデューサーさんには荷が重いのでオススメできません」
幸子「では事務所に皆さんに一斉にメールを送信して、と」メルメル
幸子「というわけでアイドルの皆さんに協力して貰って、ガンガンダイエットをしましょう」
幸子「……の前に」
P「ん? なんだ」
幸子「とりあえずPさんの体重を計っておきましょう。さあ体重計に乗ってください」
P「分かった」
カチリ
幸子「えっとPさんの体重は――142kgですか」
幸子「うぅ……分かってはいましたが、かなり多いですね」
幸子(あれ? この数値……)
P「へぇ、142kg。自分のことながら、よく肥えたなぁ」
P「ん? この数値……」
P「おっ、幸子の身長と一緒じゃん!」
幸子「ああっもう! 言わないで下さいよ! ボクも気づいて敢えて言わなかったのに!」
P「お揃いだな」
幸子「こんなに嬉しくないお揃いは初めてですよ! もうっ!」プンスコ
幸子「こんな嫌なお揃いからはさっさと抜け出しますよ!」
☆千川ちひろのドリンクダイエット☆
ちひろ「はい! というわけで最初は私がお手伝いさせてもらいますね!」
ちひろ「私はアイドルじゃないですけど、是非協力させて下さい!」
ちひろ「2人が痩せられるように、私頑張っちゃいますっ」グッ
P(相変わらずちひろさんは天使可愛いなぁ)
幸子「えっと、それでちひろさんのダイエット方法は?」
ちひろ「はい! では、これを飲んでください」スッ
>毒々しい色のドリンク
幸子(うわぁ……見ただけで飲んじゃいけないって分かる色だ……)
幸子「い、いやいや。こんなえげつない色のドリンク飲むわけ……」
P「いただきまーす」スッ
幸子「うわあああああ! 何躊躇なく飲もうとしてるんですか!」バッ
P「何だよ幸子。せっかくちひろさんが協力してくれてるのに」
幸子「色! この色! 警告色バリバリの! ついでにコポコポ泡立ってるこれ!」
幸子「どう考えても体に悪いやつじゃないですか!」
ちひろ「大丈夫ですよ。そんな体に悪い物なんて飲ませるわけないじゃないですか」ニコ
ちひろ「ほら、ドリンクの容器を見てください」
幸子「容器? あ、これ……いつもPさんがちひろさんに貰って飲んでる栄養ドリンク……」
ちひろ「ですです♪ だから安心して飲んでくださいね♪」
幸子「いや、この色を前にして何一つ安心できないんですけど」
幸子「だ、大体このドリンクは何なんです? ダイエットと一体何の関係が……」
ちひろ「飲んだら痩せます。問答無用に」
P「すげえ!」
幸子「怖い!」
ちひろ「詳しく説明するとですね。このドリンクって製造過程にどうしても100本に1本くらいの確率で、不良品が出るんですよ」
ちひろ「でどの辺りが不良品かっていうと、まあ……スタミナが回復する以外に、別の副作用が出ちゃうんですね」
ちひろ「飲んだら透明になったり、体が赤く発光したり、最初に見た相手を好きになったり、SAN値が下がったり、無性に神にカブを捧げたくなったり……」」
幸子「あの、これ捨ててもいいですか?」
ちひろ「まあまあ、ここからが本題です」
ちひろ「今2人に渡したその不良品ドリンク。もう分かると思いますけど……副作用で痩せます」
幸子「広告とかでよく見る、飲んだら痩せる薬みたいなものですか?」
ちひろ「いえいえ。あんなのと一緒にしないで下さい。これは本物です。飲んだら嫌でも痩せます」
幸子「げ、原理は? ほ、ほら、脂肪が燃焼するとか、食欲を抑えられるとか……」
ちひろ「さぁ……」クビカシゲ
ちひろ「よく分かりませんけど、なんか痩せます」ニコリ
ちひろ「ではどうぞ♪」
幸子「諸々の説明を聞いて、さあ飲もう!って気持ちにならないんですけど……」
ちひろ「でも、Pさんはもう飲んでますよ?」
P「うめーうめー」グビグビ
幸子「わぁー!? は、吐きだして下さい! 今すぐ!」ドスドス
P「腹パンはやめろ。その攻撃は俺に効かない」ポヨンポヨン
P「うーん、特に変わった様子はないけど」
幸子「ほ、本当ですか? 気分悪くないですか? 吐き気は? 眩暈は?」
P「いつものドリンクを飲んだ後と同じ、『もしかして自分って大統領より強いんじゃないか?』って万能感に身を包まれてるよ」
幸子「あのドリンク飲んだ後、いつもそんなこと考えてたんですか……」
ちひろ「はい体重計です」スッ
カチリ
P「どれどれ……おっ、3kgも痩せてるじゃん」
ちひろ「ダイエットの第一歩ですね! おめでとうございます!」ギュッ
P「ありがとうございますちひろさん!」ギュッ
幸子「え、えぇー……」
ちひろ「もう1本あるけど、幸子ちゃんも飲む?」
幸子「……」
>毒々しい色のドリンク
幸子「……」
>毒々しい色のドリンク
幸子「……」ムニ(お腹の肉を触る音)
幸子「……」
幸子「……い、いただきます」
モバP……142kg⇒139kg(-3kg)
幸子……?kg⇒?kg(-0.3kg)
☆白坂小梅のホラー映画ダイエット☆
P「ここは小梅の部屋か」
幸子「ええ。次に協力してくれるのは小梅さんです」
幸子「是非協力するから、部屋に来て欲しいとのことなんですけど……」
幸子「でも何で部屋なんでしょうか」
P「まあとにかく入ろうぜ」
ガチャ
小梅「……あっ。やっと来た……!」テトテト
小梅「Pさんと幸子ちゃん……ま、待ってたよ……えへへ」
小梅「こ、こっち来て……!」グイグイ
幸子「こっちって……ベッドですか?」
小梅「うん。まず……Pさんが先に座って」グイグイ
小梅「そ、それから……幸子ちゃんがPさんの足の間に座って」グイグイ
幸子「え? な、何です? なんなんですこれっ?」
P「とにかく小梅の言う通りにしよう」ヨイショ
幸子「そ、それで……この恋人同士が部屋で映画を見る時みたいな体勢に何か意味があるんですか……?」モジモジ
小梅「え、えへへ……幸子ちゃん正解」
小梅「今から、み、皆で一緒に映画を見るの」
幸子「あの……ダイエットの意味知ってます?」
小梅「うん大丈夫っ」フンス
小梅「私のダイエット方法は完璧……! あの子もそう言ってるから……!」
あの子『……』コクコク
幸子「はぁ……」
小梅「電気を暗くして……」カチッ
小梅「じゃ、じゃあ……始まり始まり……」パチパチパチ
ピッ
ブゥン
ゾンビ『グアアアアアアアアア!』ブシャアアアア
幸子「わにゃああああ!? え、映画ってホラー映画ですかぁ!?」ビクビクンッ
幸子「は、はわわ……! ボ、ボクちょっと唐突にレッスンに行きたくなったので、失礼を……!」ガタン
小梅「きょ、今日は休んで、ね? 幸子ちゃんが、に、逃げないようにお願い」
あの子『……』コクン
シュルシュルシュル
幸子「ひぃぃぃぃっ!? どこからともなく包帯が現れて、ボクとPさんを縛っていきます!」
P「おいおい、ボンレスハムになっちゃうよ。はっはっは」
幸子「あなた余裕ですね!」ナミダメ
小梅「じゃ、じゃあ続き再生するね」
ゾンビ『フシャアアアアア』
幸子「ひぎゃあああああ!」ガタガタガタ
ゾンビ『UUURRRRYYY!!』
幸子「にゃあああああああ!」ガタガタガタ
P(これは……)ブルブルブル
P(幸子の恐怖が引き起こす震えで俺の体が刺激されて……)ブルブルブル
P(そうか! 小梅のダイエット方法は……!)ブルブルブル
小梅(え、えへへ……気づいたPさん?)
小梅(この間みんなで映画を見てる時に、ぶるぶる震えてた幸子ちゃんを見てこのダイエットを思いついたの)
小梅(幸子ちゃんが引き起こす振動で脂肪を刺激して、燃焼させるダイエット法……)
小梅(な、名付けてサチトロニック!)ドヤーン
P(語呂のアレさは置いといて……小梅、お前……天才だな!)
小梅(え、えへへ……)テレテレ
幸子「いやあああ! もおおおおお! やだああああああ!」ガタガタガタガタ
P「お゛お゛お゛お゛。こ゛れ゛ぎぐわ゛あ゛あ゛あ゛」ブルブルブル
アイラブユー……チュッ
オウイエース カモンカモーンナノー
ギシギシギシアン ギシアンアン
幸子「びにゃああああぁ! ひぎ……って、うわ、な、何ですかこれ! きゅ、急にエッチなシーンが……!」カァァ
P「ホラー映画にはよくある」
幸子「ちょっ、やだっ……あ、あわわわ……」
P「ゴア表現も凄かったけど、こっちも頑張ってるな」
小梅「ふ、2人とも楽しそう……」
小梅「……」ウズウズ
小梅「わ、私も……!」スクッ ギュッ
P「ん? この背中の感触は小梅か?」ブルブルブル
小梅「み、見てるだけじゃ退屈だから、私も……ダメ?」
P「いや、いいぞ。この振動、1人で味わうのは勿体無いからな」ブルブルブル
小梅「えへ、えへへ……楽しいね」ブルブルブル
あの子『……』ジー
あの子『……』フワリ ギュッ
あの子『……』ブルブルブル
ゾンビ『ピニャアアアアアア(低音)』ガシャーン
ハニイイイイイ
ミキイイイイイ
ブシャー
幸子「ひいいい! 愛を確かめ合っていた2人がああああああ!」ブルブルブル
小梅「こ、ここからが最高だよ……ゾンビになった恋人同士が、2人で協力して敵のゾンビを全部、食べていくの」ワクワク
小梅「あ、ネタバレしちゃった……えへ」コテン
幸子「聞いてるだけで怖い!」ブルブルブルブル
小梅「これが終わったら、続編も用意してるか、ね。す、すごい楽しみ……」
幸子「ぴ、Pさぁん……」ジワァ
P「続編でもこの2人が出るのか……楽しみだ」ワクワク
幸子(あ、詰んでるますねこれ)
■■■
P(その後、続編の続編まで視聴したが、途中で限界を迎えた幸子が失神してしまったので、この映画館紹介はお開きとなった)
P(シリーズ最終作まで一緒に見られなかった小梅は少し残念そうだったが、それでも十分満足したのか肌がツヤツヤしていた)
P(俺も久しぶりにじっくり映画を見ることができて楽しかった)
P(ちなみに1作目の主人公達は、2作目の冒頭で新主人公達にあっさり殺された)
P(洋ゲーとか洋画って前作主人公あっさり殺すよな)
■■■
モバP……139kg⇒138kg(-1kg)
幸子……?kg⇒?kg(-0.8kg)
小梅……34kg⇒33kg(-1kg)
あの子……0.021kg⇒0.021kg(±0kg)
☆渋谷凛のKKダイエット☆
幸子「……」ゲンナリ
P「大丈夫か幸子? 映画そんなに怖かったのか?」
幸子「はぁ!? べ、別に! こ、怖くなんか無かったですし! ホラー映画なんて見慣れてますからね! もう怖く無さ過ぎて、逆に途中で眠っちゃいましたもん!」
P(失神だろ……)
ツカツカツカ
?「あ、やっと見つけた」ポン
幸子「ひわぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!?」ビクビクーン
幸子「ゾンビが! ゾンビが追ってきた!?」ギュッ
P「落ち着け幸子」ダキツカレ
?「……え、なに? ちょっと肩叩いただけでしょ。ていうか、くっつき過ぎじゃない?」
幸子「へ? え、えっと、その声は……凛さん?」
凛「うん。とりあえず離れたら?」
P「よう凛。見つけたってことは……俺たちを探してたのか?」
凛「ん。メール見てね。ダイエットに協力しようかと思って」
凛「私的には正直、プロデューサーは今のまま方が都合がいい……んんっ!」ゲフンゲフン
P「?」
凛「えっと、アレだよ。早く痩せないとプロデューサー死んじゃうんでしょ? それは困るし」
幸子(え、3週間で死ぬって信じてるんですか凛さん……)
凛「とにかくダイエット。手伝うから」
P「いや手伝ってくれるのは嬉しいんだけど……凛が?」
凛「なに? 私じゃ何か問題でもあるの?」ムッ
P「いや、だって凛の体型からダイエットって言葉は縁遠いなぁって。滅茶苦茶スレンダーっていうか、落とす肉ないだろ」ジー
凛「そんな事ないよ。私だって食べ過ぎてちょっと太ることもあるし。奈緒達と結構ハンバーガーとか食べに行った後とか、結構気にしてるし。グラビア撮影の前とか、特にね」
P「へー、そういうもんか」ジー
凛「ていうかプロデューサー私の体ジッと見すぎ。セクハラ1歩手前だよそれ」ジトー
幸子(……と言いつつ、業界用語で言うザラマンではない様子)ムムム
幸子(でもこれは強力な味方ですね! なにせ凛さんは第3回シンデレラガール! きっとそれに相応しいダイエット方法を教えてくれるはずです!)
P「どんなダイエット方法なんだ? 難しくないのがいいんだけど」
凛「簡単だよ。それにすぐ終わるし。そうだね、かかる時間は大体5分くらいかな。落ちる体重に誤差はあるけど、調子がよくて素材もいい時なら、3kgはいけるよ」
幸子「え!? ご、5分で3kgですか!?」
P「凄いな……」
凛「まあ……それほどでもないけど」ポリポリ
幸子(凄い……流石シンデレラガール。その称号は伊達ではありませんね! ボクも精進しないと……!)
凛「じゃあ早速やろっか。やり方は……ん、私が最初にやって見せた方が分かりやすいかな」
幸子(シンデレラガールのダイエットテクニック……一体どんなものなんでしょう……!)ドキドキ
凛「じゃあプロデューサー。上着脱いで」
幸子「は!?」
P「え、上着? 俺が脱ぐのか?」
凛「うん。それで下に着てるシャツをこっちに渡して」
幸子「ちょ、ちょっと待ってください!」
凛「……なに幸子」
幸子「い、いやいや! 今から凛さんがダイエット方法を実践してくれるんですよね? それがどうしてPさんがシャツを脱ぐことになるんです?」
凛「必要だから。いいから早く渡して。見たくないの? 私の――蒼《ダイエットテクニック》」
P「まあまあ幸子。必要だって言ってるんだから、いいじゃん。ほら」ヌギヌギ
凛「ありがと」スッ
凛「……うわ。ズッシリしてるね。汗かきすぎでしょプロデューサー」
凛「……」
凛「……」ゴクリ
幸子「あ、あのー……凛さん?」
凛「え? あ、ああ……うん。じゃあ始めるよ」
凛「えっと、方法はさっきも言ったとおり簡単だから。用意する物は誰かの衣服、できるだけ匂いが染み付いてる物がいいかな」
P「ふむふむ」
幸子(……なんでしょう。今までたくさんの過酷なロケで鍛えた第6勘が告げてます。これはアカーン!と)
凛「で、深く深呼吸」スゥー
凛「目一杯息を吸い込んで、深く吐く」ハァー
凛「それから――」
ガバッ
凛「一気にシャツに向かって顔をダイブ!」
凛「後はもう流れでとにかくKK……あ、クンカクンカってことね。身を任せてKKすればいいから」クンカクンカ
凛「はぁはぁはぁ……」クンカクンカクンカ
凛「これ、はぁはぁ……すごい……はぁはぁ……」クンカクンカ
凛「最近プロデューサーが太ったせいか、今までと匂いも違ってて……もう……はぁはぁ」クンカクンカ
凛「はぁはぁ……ほら、分かる? 凄い汗出てきたでしょ?」ジワァ
凛「これ5分くらい続けてたら、3kgなんてあっという間に落ちるから」ダラダラ
凛「まあ、いつも夢中になり過ぎて30分くらい続けちゃうんだけどね。だから水分はしっかり用意してて。脱水症状で倒れたら洒落にならないから」
凛「さ、もうやり方は分かったでしょ? プロデューサーには私のシャツ貸してあげるから」ヌギヌギ
凛「シャツ以外はちょっと……流石に恥ずかしいし。でもどうしてもって言うなら……」
凛「……あれ? さっきから2人共静かだね。どうしたの?」
凛「……」
凛「……どこ行ったの?」キョロキョロ
モバP……138kg⇒138kg(±0kg)
幸子……?kg⇒?kg(±0kg)
渋谷凛……44kg⇒43kg(-1kg)
☆高垣楓のせいやくダイエット☆
幸子「……はぁ、はぁ……凛さん、追ってきてないですよね?」
幸子(まさかあのクールな凛さんが、あんな……)
幸子(ボクが知ってる凛さんは、ボクと同じ常識人枠だったはず)
幸子(最近ボクもお仕事が忙しくて、暫く会ってなかったけど……あんな風になるなんて)
幸子(きっと頂点まで辿り着くには、色々と大切な物を捨てないといかないんだ……常識とか)
幸子(シンデレラガールって闇が深い……)ブルブル
P「KKダイエット俺もやってみたかったんだけどなー」
幸子「馬鹿なこと言わないで下さいよ。凛さんならまだしも、Pさんがあんな事したら絶対に通報されます」
幸子「次です次! 次こそはまともなダイエット方法を教えてもらいますよ!」
■休憩室■
幸子「あれPさん。休憩室に誰かいますよ」
P「ん? お、アレは楓さんだな」
楓「……ふぅ」タメイキ
楓「困ったわ……どうしようかしら」
楓「誰かに相談……いえ、これは自分で考えないといけない問題ね」タメイキ
幸子「ど、どうしたんでしょう楓さん」
P「何か悩み事があるみたいだな」
P「それにしても物憂げな表情で物思いに耽ってる楓さんはミステリアスで見惚れるなぁ」
幸子「むっ」
幸子(た、確かに女のボクから見ても、今の楓さんには目を奪われてしまいます)
幸子(ボクは事務所で一番カワイイですけど、ああいった大人の魅力に関しては、まだまだ醸し出せないですからね)
幸子(ですがいずれ、カワイさと大人の妖艶な魅力を持ち合わせた最強のアイドルになる予定です)
幸子(その時のボクを見たPさんの反応が、今からでも楽しみですね!)
P「楓さん。何か悩み事ですか?」ツカツカ
楓「あら? プロデューサーと……幸子ちゃん?」
幸子「悩み事だったらカワイイボクが聞いてあげますよ!」ドヤァ
幸子「ボク達はトップアイドルを競い合うライバルですけど、その前に同じ事務所の仲間ですからね!」
楓「えっと……もしかして、独り言聞こえてました?」
P「ええ、まあ」
楓「そんなに大きな声で独り言を言っていたなんて、恥ずかしい……」カァァ
楓「大きな声過ぎて、沖縄まで届いてないか心配です」
幸子(悩み事のせいでダジャレにキレが……いや、いつも通りですね)
楓「じゃあお言葉に甘えて、相談させてもらいますね」
P「どうぞどうぞ」
幸子「カワイイ上に頼りになると評判のボクに任せてください!」
楓「あのね」
楓「幸子ちゃんから『Pさんのダイエットに協力して下さい』ってメールが来てから、今まで『ダイエット』を使ったダジャレをずっと考えていたのだけど」
楓「困ったことに何も浮かばないの」コマリガオ
楓「ダイエット……だいえっと……だい、だい……うーん……ダイエーでダイエット……」
楓「ダイ……だい……台……」
楓「……!」ピコーン
楓「足踏みダイエットに使う台、えっと、どこにいったかしら?」
楓「……♪」ドヤァ
楓「ふふっ、お悩み解決♪」
幸子「そうですか」
幸子「……そうですか」ゲンナリ
幸子「えー、じゃあ楓さんのお悩みも解決したようですし、ボクとPさんはこれで……」
楓「まあまあ。私もダイエットに協力させてください」
P「協力してくれるんですか?」
楓「ええ、勿論です♪ 何てたって私達はライバルである前に仲間ですからね♪ ふふっ」
幸子(うーん、正直心配です。楓さんは基本的に何を考えてるか分からない人ですし)
幸子(まともなダイエット方法は期待できないような……)
楓「あら幸子ちゃん。何だか不安そうな顔。忘れてるかもしれないけど、私、モデルやってたのよ?」
幸子「あっ、そういえば……」
楓「ここだけの話、モデルをしてた頃からお世話になってた、とっておきのダイエット方法があるの」
楓「このダイエット方法、何度も多用したのよう……なんて、ふふっ」
P「元モデルのとっておきダイエットか……これは期待できるな、幸子!」
幸子「そ、そうですね……」
楓「ふふっ♪」
幸子(これだけ自信満々の表情なんだから……大丈夫のはず、多分)
楓「じゃあ早速、教えますね」
楓「このダイエット方法を私は《せいやくダイエット》って呼んでます」
幸子「せ、製薬ですか? その、お薬を使ったりは、あんまり……」
幸子(いえ、既に副作用目的にバリバリ怪しいお薬ドリンクを服用しちゃったわけですけど)
楓「ふふっ、違うわ幸子ちゃん。製薬じゃなくて――誓約。誓約ダイエットよ」クスクス
P「なるほど……誓約ダイエットか」
幸子「ごめんなさい。名前を聞いてもさっぱりどんなダイエットか分からないです」
幸子(まともなダイエット方法じゃなさそうなのは、分かりましたけどね!)
楓「うーん、言葉で説明するのは難しいので、実際にやってみますね」
楓「ちょうどいい機会ですし。この1週間、皆と居酒屋巡りをしてたから、私も体重が気になってて」
楓「それにこの後、水着撮影もあるんですよ、ふふっ」
P「体重計をどうぞ」スッ
楓「ありがとうございます♪」
カチリ
高垣楓……56kg(標準体重49kg)
楓「あら、やっぱり」クスクス
幸子「あ、あの笑い事じゃないと思うんですけど……」
幸子「水着撮影前に7kgも太ってちゃダメですよね!?」
P「そうですよ楓さん。これは流石に……」
楓「ふふっ、2人に怒られちゃいました」ペロ
楓「じゃあ水着撮影までに元の体重まで……7kg落としますね」
幸子「あ、あの撮影はいつ?」
楓「14時入りだから、あと……20分ね」
幸子(ど、どう考えても無理……!)
幸子(なのにあの余裕な表情は一体……!)
楓「ふんふんふふーん……はい」スッ
楓「まず一升瓶を用意します。この中には私がしょっちゅう飲んでるお気に入りの焼酎が入ってます」
楓「それをコップに注ぎます」
P「俺がやりますよ」トクトクトク
楓「ふふっ、ありがとうございます」
楓「コップになみなみと注がれた焼酎を目の前に置きます」コトン
楓「はぁ……いい香り。このままカワイイ幸子ちゃんとまんまるして可愛くなったプロデューサーを肴にくいっといきたいですね……」ホゥ
楓「では、ここからが本番です」
楓「今、私の前には美味しそうなお酒が手の届く位置にあります」
楓「ですが」
楓「私、高垣楓はここに宣言します」
楓「私は、絶対に、このお酒を――飲まない!」クワッ
幸子P「!?」
楓「何があっても、絶対に、飲み――ません!!!」ドドドドドド
幸子「い、一体何を言ってるんですか楓さん? これは何の意味が……」
P「待て幸子。体重計を見ろ!」
カチカチカチ……カチリ
幸子「へ、減ってます! 1kg減った! え!? ど、どういうことです!?」
楓「……ふぅー。これが私が編み出した《誓約ダイエット》です」
楓「自分に対して誓約を課し、それを絶対に、何があっても遵守するという覚悟を決める」
楓「そうすることで、こう……アレがこうなって、ドドドドドー……と。そんな感じで体重が落ちます。簡単でしょ?」
幸子「一番重要なところが分からないんですけど!?」
楓「うーん、私もよく分からないですけど、自己暗示で極度のストレスが何やかんやで……ね♪」
幸子「ね♪って言われても……」
P「よく分からんが、実際に体重は落ちてるし、これもダイエットの一種だろ」
楓「それにしても……1kgだけですか。むーん」
楓「少し誓約が軽かったかもしれませんね。ちなみに減る体重の量は誓約の重さ、そしてそれを遵守する覚悟がどれだけ伴っているかで変化します」
楓「分かりやすーく説明すると、いっぱい体重を落としたければ、凄く重い誓約を自分に課して、それを心の底から遵守する気持ちを込めればいいんです」
楓「というわけで、もう少し重く……そうですね」ウーン
楓「私、高垣楓は、金輪際――お酒を飲まないと、誓います!」ドドドドド
カチカチカチ……カチリ
『53kg』
楓「……くっ、ふぅっ……はぁ……ふぅ」ダラダラ
楓「これで……4kg、ですね。ふぅ……ふぅ……」
P「だ、大丈夫ですか楓さん。汗が……」フキフキ
楓「ありがとうございますプロデューサー。このダイエット方法は誓約が重ければ重いほど、体に負担がかかるんです」
楓「昔はこんなに疲れなかったんですけど……歳でしょうか、くすん」
楓「でも……まだ足りないですね」
P「楓さん! これ以上は……!」
楓「大丈夫ですよプロデューサー。あなたの前でかっこ悪いところは見せたくないですから」
楓「これが最後です。私の輝き――見ていてくださいね」
楓「私、高垣楓は……今週末にプロデューサーと約束していた……温泉旅行に……くっ、うっ……はぁ……!」
楓「いき……いきっ、行き――ません!」ドドドドド
カチカチカチカチ……カチリ
『48kg』
楓「ふ、ふふっ、ちょっと通りすぎじゃいましたね。あ、あれ」フラリ
P「楓さん!」ガシッ
楓「あ、プロデューサー……ありがとうございます。ふふっ、プロデューサーの体、柔らかくて安心しますね」
楓「私の輝き、見てくれましたか?」
P「はい。見てましたよ。キラキラ……輝いてました。いい……ダイエットでした」
楓「だったら頑張った甲斐がありました。……ねえ、プロデューサー。もう少しこのままで、いいですか?」
P「こんなだらしない体でよかったら、好きに使ってください」
楓「ふふふっ、役得ですね」ギュッ
幸子「……」
幸子(何だこれ……)
楓「それにしても、7kgも痩せちゃったから、流石に疲れました……」フゥ
>焼酎
楓「ふふっ、いただきます」ゴクゴク
楓「はぁ……おいし♪ 回復回復♪」ゴクゴク
幸子「ちょっと! ちょっとちょっと!?」
楓「……? ザ・たっちの物真似? 似てないけど可愛いわね♪」クスクス
幸子「違いますよ! なに普通にお酒飲んでるんですか!? さっきの誓約は!?」
楓「せいやく?」
幸子「そ、それ飲まないって、何だったら禁酒もするって!」
楓「ああ……そういうこと。ええ、確かにさっき、私は心の底から真剣にその誓約を遵守する覚悟を抱いてたけど……」
楓「でもさっきはさっき。今は今」
楓「幸子ちゃん、いつまでも過去に囚われていちゃかっこ悪いわよ……なんて、ふふっ」クスクス
幸子「え、えぇー……」
幸子(な、なんてガバガバなルール……)
幸子(というかこれ、本当にダイエットなんですか……)
幸子(う、うむむ……まあいいです! 本気で思いこむだけで実践しなくてもいいなら、ボクも試してみましょう)
幸子「えっと、そうだ。手鏡を用意して、と」ノゾキコム
幸子「うん、鏡に映るボクもカワイイですね!」
幸子「じゃあ、えっと……ボク、輿水幸子はここに宣言します!」
幸子「ボクは金輪際、自分のことを、カワイイと言わな――」
楓「ストップ幸子ちゃん!」グワシッ
幸子「ひょあ!?(うわぁ!?) ふぁ、ふぁふぃふふんふぇふふぁ!?(何するんですか!?)」モゴモゴ
楓「今のは軽率よ幸子ちゃん。全身の細胞、その60%が『カワイイ』で構成されてる幸子ちゃんが、そんな誓約を遵守したら、思い込みとはいえ……間違いなく死んでいたわ」
幸子「ふぇ!?」
楓「それくらい危険なダイエットなの。だから安易な気持ちで実践しちゃ……めっ、よ」
楓「だからプロデューサーも、このダイエットをする時は用法容量を守って……」
P「宣言します! 俺は金輪際、卯月のお尻を見ても、圧迫祭りをしないなんて、絶対に――思いません」ドドドドド
幸子(何か最低な宣言してます!?)
P「ぐぅ……! こ、これは確かにキツイ……! 信じられないほど負担が……!」
カチカチカチ……カチリ
P「お、でも一気に10kgも体重が――ぐはぁ!?」ベシャア!
幸子(うわあああああ!? Pさんが血を吐いたあああああ!)
楓「あ、あわわわ……大変……! は、吐いた血は、ハイターで綺麗にしないと……」
モバP……138kg⇒128kg(-10kg)
幸子……?kg⇒?kg(±0kg)
高垣楓……56kg⇒48kg(-8kg)
P「幸子ォ! 今何kg!?」
幸子「えっとPさんの今の体重は……128kgですね」
P「ほー、最初が142kgだったから、もう14kgも痩せたのか」
P「1日でこれとか、かなり順調だな!」
幸子「そうですね。ただ……肝心のダイエットの内容がまともなものではないんですよね。この事務所には普通のダイエット方法を知っている人はいないんでしょうか……」
ニョワー メールダヨォ
幸子「おっとメールですね。次の協力者からです」
P「次は誰が手伝ってくれるんだ?」
幸子「ヒントは――1位の人です」
P「ジョセフ?」
幸子「誰ですか!? 卯月さんですよ!」
卯月「えへへ、呼びましたかっ」ピョコン
P「お、卯月」
卯月「お疲れ様ですプロデューサーさん! 今日は宜しくお願いしますね? 島村卯月、ダイエット指導頑張ります!」グッ
P「ジャージを着てるってことはレッスン終わりか? 時間割いてもらって悪いな」
卯月「いえいえ、いいんですよっ。プロデューサーさんにはいつもお世話になってますから。是非協力させてください!」
幸子「それで卯月さん。その……ダイエットの方法なんですけど……」
幸子(今までの経験から考えるに、どうせまともなダイエット方法じゃないでしょうけどね)
幸子(さぁ……来るなら来て下さい……!)
卯月「えっと、私のダイエット方法は……」ゴソゴソ
幸子(音楽プレイヤー?)
卯月「これでよし。今からお2人には、音楽に合わせてダンスをしてもらいます!」
卯月「私の動きに合わせてくださいね! 大丈夫です、簡単なダンスですから!」
卯月「じゃあミュージック……スタート!」
~~~♪
P「お、S(mile)ING!」
卯月「さあ、プロデューサーさんと幸子ちゃんも! ワン、ツー、ワン、ツー!」キュッキュ
P「どっかで見た横ステップだな……」
幸子「あ、あの……本当にこれだけですか? ただダンスをするだけなんですか?」
卯月「へ? そうですけど……」キュッキュ
幸子「ふ、普通だ……」
卯月「むっ、いいじゃないですか普通でも。こうやって体を動かすのが1番のダイエットなんですよ? さあさあ! 2人も早くステップステップ!」キュッキュ
幸子(ほっ……よかった。そうですよね。みんながみんな、アレなダイエット方法を実践してるわけじゃないですよね)
幸子「よし! さあPさん! ボク達も卯月さんを見習って、体を動かしますよ!」キュッキュ
卯月「それワンツー、ワンツー!」キュッキュッキュ
P「ほっほっほ」キュッキュッキュ
幸子「ふっ、ふっ、ふっ」キュッキュッキュ
幸子(単調な動きですけど、これ、結構いいダイエットになりますね)
幸子(毎日続けたら、いい具合に体幹が鍛えられそうです)
幸子(卯月さんが1位になれたのは、こういった地味だけど基本的なトレーニングを欠かさなかったのもあるんでしょうね)
幸子(ボクも頑張らないと……)
幸子(それにしても……)
P「ほっ、ほっ、ほっ」キュッキュッキュ
幸子(Pさんが思ってた以上に動けてるのが驚きですね。あの体でよくもまあ……)
幸子(卯月さんの後ろで、全くテンポも遅れずに……やりますね!)
P「ほっほっ……相変わらず卯月のお尻はいいな……圧迫祭り開催したいなぁ……」キュッキュ
幸子(何か不穏な発言が聞こえた気がしましたが、聞こえなかったことにしましょう)
幸子「ふっ、ふっ……!」キュッキュ
幸子(ふぅ……もう10分くらいステップしてますね。流石にそろそろ……ボ、ボクはまだ全然大丈夫ですけどね!)
幸子「そ、そろそろ1回休憩しませんか? ほら、Pさんもいきなり激しい運動して倒れられたら困りますしね!」キュッキュ
卯月「あ、ダメですよ幸子ちゃん!」キュッキュ
幸子「え? ダ、ダメって……」キュッキュ
卯月「途中で止めちゃダメです! ちゃんと1000回ステップするまでノンストップですよ?」キュッキュ
幸子「せ、千回って……い、いやいや!」キュッキュ
卯月「1000ステップ奉納する前に止めたら、横ステップ神様から天罰が下っちゃいますよ?」キュッキュ
幸子「何を言ってるんですか卯月さん!?」キュキュッ
卯月「横ステップ神様はちゃんとステップを奉納したら、余分な贅肉を持って行ってくれる優しい神様なんですよ?」
卯月「その代わり途中で諦めちゃう子にはとっても厳しいんです」
卯月「噂では途中で止めたら、五感のうちのどれかを持っていかれるとか……」
幸子「邪神じゃないですか!?」
卯月「そんなことないですよ! いい神様だって、ちひろさんも言ってたもん!」プクゥ
幸子(ひ、ひぇぇ……全然普通のダイエットじゃなかった……!)
卯月「さあ! まだまだこれからですよ!」キュッキュ
卯月「私に続いてください――ダイエットなんて誰でもできるもん!」
P「ダイエットなんて誰でもできるもん!」
幸子「な、何の儀式なんですかこれ……」
卯月「ほらほら幸子ちゃんも! ダイエットなんて誰でもできるもん!」
幸子「ダ、ダイエットなんて誰でもできるもん……!」
卯月「えへへ! いい感じです!」
卯月「残り800回……頑張りましょうね!」
モバP……128kg⇒118kg(-10kg)
幸子……?kg⇒?kg(-1kg)
島村卯月……45kg⇒43kg(-2kg)
幸子「……もう横ステップはこりごりです」
P「そうか? 俺は横ステップ特訓のお陰で、ステップ時の無敵時間が0.1秒も伸びたぞ?」
テッテッテ
?「……やっと……見つけた……」ギュッ
P「おお? 背中に飛びついて来たのは……雪美か」
雪美「えへへ……正解……ペロもいるよ……」
ペロ「ミャア!」
幸子「えっと雪美ちゃん? ボク達に何か用ですか?」
雪美「ダイエット……手伝いに来た……」グッ
雪美「私に……任せて……!」フンス
幸子「いや、ダイエットって……雪美ちゃんはまだ子供だし……」
雪美「ううん」フルフル
雪美「私だって……アイドルだから……自分磨きしてる……お肉付かないように……頑張ってるから」
雪美「……それに……アイドルである前に……女でもあるから……ね、P?」ウインク
P「よくわからんがその心意気やよし! 早速、雪美先生のダイエットレッスンを受けようじゃないか!」
雪美「えへ……えへへ……先生……」テレテレ
幸子(大丈夫かな……)
☆レッスン室☆
幸子「それでレッスン室に連れて来られたんですけど……ここで何を?」
雪美「今からするのは……鬼ごっこ……」
雪美「私がよくペロと一緒に……やるの……」
雪美「ペロ足速いから……すごく疲れる……」
幸子「鬼ごっこ、ですか」
幸子「なるほど! 随分と可愛らしいダイエットですね!」
雪美「えっと……じゃあペロと私が逃げるから……」
雪美「幸子はペロを……Pは私を捕まえて……ね?」
P「よし。張り切って捕まえるか!」
幸子(ペロさんを捕まえる……簡単に終わりそうですけど、それだと雪美ちゃんに悪いので、適当に手を抜くことにしますか)
雪美「じゃあ……よーい、どん」
タタッ
ペロ「ミャー……」カベギワ
幸子「さてさて、早速追い詰めましたよ」
幸子「じゃあカワイイボクが捕まえちゃいますからねー」
ペロ「ミャッ!」スゥッ
幸子「はい、捕まえたー……ってアレ? 今確かに捕まえたはず……」
ペロ「ミャァ」
幸子「い、いつの間に後ろに……」クルリ
幸子「えいっ」バッ
ペロ「ミャッ」スカッ
幸子「今度こそ捕まえ……ってアレ? 手応えが全く……それに今、ペロさんが消えたような……」
ペロ「ミャー?」クシクシ
幸子「……とりゃ!」バッ
ペロ「ミャッ」スゥ
幸子「き、消え……い、今確かにボクはペロさんに触ったはず……!」
幸子「でも触った瞬間に、影みたいに掻き消えた……!」
ペロ「ミャー」
幸子「そしてまた背後に……」
ペロ「ミャー」
幸子「え? 背後だけじゃなくて……横からも……」
ペロ「ミャー」
ペロ「ミャー」
ペロ「ミャー」
ペロ「ミャー」
幸子「……」
幸子「え……なんですかコレ? 気が付いたら、ペロさんに囲まれてるんですけど」
ペロ「ミャー」スゥ
ペロ「ミャー」スゥ
幸子「しかも現在進行形で、数が増え続けてる……」
幸子「あ、これ幻覚ですね! この間のロケで3日ご飯食べなかった時に見ましたよ!」
幸子「でも今はちゃんとご飯食べてるのに……あっ、そうか。ちひろさんから貰ったドリンクですね! アレの副作用に違いありません! フフーン、即座に原因を見出すなんて、ボクは本当に賢いですね!」
幸子「幻覚ということは、ロケで族長に教えてもらった呪文が……アレ? 幻覚、消えませんね」
?「当然にゃ。今幸子ちゃんが見ているのは幻覚じゃないにゃ!」
幸子「この声は……」
?「名乗るほどの者じゃないにゃ。ただのレッスン帰りの猫ちゃん大好きアイドル――前川みくにゃ!」ドドーン
幸子(名乗ってる……)
幸子「で、みくさん。この現在進行形でポコポコ増え続けてるペロさんは幻覚じゃなかったら、なんなんです?」
みく「さっきも言ったとおり幻覚じゃないにゃ。勿論魔法でもなければ、サイキックでもにゃい、晶葉ちゃんが作った発明品が原因でもない……」
みく「――ズバリ技術にゃ!」
みく「猫ちゃん特有のしなやかさ、俊敏さ、爪の鋭さ、肉球の柔らかさ、そして気まぐれな性格……」
みく「それら全ての要素を極限まで高めた時に発現する猫の技術――猫能」
みく「ペロちゃんが今使っているのは、その内の一つ――猫歩き(キャットウォーク)」
みく「猫ちゃんが持つコタツで丸々のんびり屋さんと獲物を捕まえる狩人の俊敏さ……静と動――その相反する二つの動きをコントロールした時、まるで分身しているかのように見えるのにゃ!」
幸子「えぇー……」
雪美「みく……正解……流石猫耳系アイドル……」
みく「えっへんにゃ!」
みく「ちなみに猫耳系アイドルを名乗るくらいだからみくも同じことが出来るにゃ」シャシャッ
幸子「うわ……みくさんがいっぱい……」
雪美「私も……できる……」シャッシャッ
幸子「レッスンルームが雪美ちゃんとみくさんとペロさんの分身でいっぱいに……」
幸子「えいっ」
ペロ「ミャッ」ハズレ
幸子「こ、こっちですか!」
ペロ「ミャッ」ハズレ
ペロ「ミャッ」
ペロ「ミャミャッッ」
ペロ「ミャミャミャッ」
幸子「捕まえたと思ったら、どんどん増えていく……」
幸子「こ、こんなの捕まえられるわけないじゃないですか!」
幸子「ねえPさん!」
雪美「……きゃあー……捕まっちゃったー……」ギュッ
P「おいおい雪美は鬼ごっこが下手だなぁ。もっと上手く逃げないと」
雪美「えへへ……Pが……上手いから……」
雪美「捕まっちゃったから……幸子がペロを捕まえるまで……こうしててね……?」ギュゥ
幸子「……」
幸子「茶番だあああああ!」
モバP……118kg⇒118kg(±0kg)
幸子……?kg⇒?kg(-2kg)
佐城雪美……30kg⇒30kg(±0kg)
ペロ……4.5kg⇒4kg(-0.5kg)
幸子「はぁ……はぁ……つ、疲れました……」
モバP「お疲れ幸子」
幸子「Pさんは全然疲れてないですね……というか、雪美ちゃんとイチャイチャしてただけですもんね」ジトー
モバP「いや別にイチャイチャは……」
幸子「あれがイチャイチャじゃなくてなんなんですか! もうっ」プンスカ
ペタペタペタ
モバP「ん? 誰か近づいてくるな。アレは……芳乃か」
芳乃「悪い気を感じる方角に歩いていましたら、まさかそなたに会うとはー」
芳乃「むむむー……」
芳乃「なるほどー、先ほどからわたくしが感じていた悪い気はそなたから発せられているものでしてー」
モバP「え? なに? 俺悪い気とか出してんの?」
芳乃「ええ、それはもうー」
芳乃「ここにみっちりと悪い気が詰まってるのでしてー」ムニムニ
モバP「腹を摘むな腹を」
幸子「悪い気というか、脂肪ですね」
芳乃「……」ムニムニ
芳乃「……」ムニムニ
芳乃「ふふふー……癖になる触感なのでしてー」ムニムニ
芳乃「ですが悪い物に違いはありませぬのでー、わたくしが祓って差し上げましょうー」
モバP「つまりダイエットに付き合ってくれるってことか?」
芳乃「でしてー」
芳乃「ふむ……ここは滝行がいいかとー」
幸子「た、滝行ってあの……お坊さんが滝に打たれて修行する……あの?」
芳乃「いかにもー」
モバP「痩せるのかアレ?」
芳乃「滝行は健全な精神を養う鍛錬でしてー」
芳乃「そして健全な精神は健全な肉体に宿るのでしてー」
モバP「つまり心を鍛えれば、自動的に肉体も鍛えられるってわけか」
幸子「で、でも滝行なんてどこでするんです? この辺りに山なんてありませんよ」
芳乃「ふっふっふー……わたくしが見つけた、とっておきの場所があるのでしてー」
芳乃「こっちこっちでしてー」テクテク
ドドドドドドド
芳乃「……」
モバP「……」
幸子「……」
ドドドドドドド
幸子「あ、あのー……」
芳乃「お静かにー。滝に打たれている時は、心を無にするのでしてー」
幸子「いや、でも……」
芳乃「渇! ……でしてー」
幸子「は、はぁ……」
ドドドドドドドド
ドドドドドドドド
幸子「……や、やっぱり無理ですよ! 無理無理!」
芳乃「確かに過酷な鍛錬ですが、必ず自らの力になるのでしてー」
幸子「で、でももう……限界です! だってここ――」
ドドドドドド
カポーン
キャキャー コレコレハシルナー マッテオジイチャーン
ワイワイキャッキャ
幸子「――健康ランドじゃないですか!」
幸子「滝行とか言ってますけど、これ上からお湯が落ちてくるやつじゃないですか!」
幸子「過酷どころか、いい感じに肩に当たって気持ちいいですよ!」
幸子「そして恥ずかしい! 周りの人の視線が恥ずかしい! さっきからボク達を見てちっちゃい子供が『修行ごっこしてるー』とか指差して笑うんですよ!」
幸子「ボクのすぐ目の前にお爺ちゃんが立ってて、さっきから代わって欲しそうな目でボクを見つめてくるんですよ!」
パシャパシャ
パシャパシャ
幸子「ぎゃー!? カワイイボクに気づいた一般人の方が写真をー!? ポーズを! せめてポーズを撮らせてください!」
芳乃「……ではここまでにしましょうー」
芳乃「では鍛錬も終わったことなのでー」
芳乃「そなたーそなたー、そろそろ露天風呂にも行ってみたいのでしてー」
モバP「お、行くか」
芳乃「えへへー、ここの露天はたくさん種類があって楽しいのでしてー」
芳乃「そなたとここに来るのをずっと楽しみにしていたのですー」
幸子「……もしかしてダイエットに付き合うというのはただの建前で、本音はPさんと遊びに来たかっただけですか?」ジトー
芳乃「ぷひゅーぽふー」
幸子「口笛下手ですね!」
幸子「……はぁ、もういいです。せっかくだから楽しみますよ! ええ!」
幸子「はい、お爺さん。お待たせしてしまってすいませんでした! ……え? ボクのサインが欲しくて待ってた? ……ど、どうぞ」
幸子「で、では改めて……」
幸子「行きますよ2人とも! 全部のお風呂を制覇しますよ!」ダダッ
モバP「あ、おい、幸子走るな!」
ステーン
ギニャー!
ボチャーン
モバP「ああ、転んでそのまま水風呂に……」
芳乃「お見事なのでしてー」パチパチ
幸子(その後もボクとPさんは、事務所に皆さんに協力してもらい、たくさんのダイエットに挑戦しました)
幸子(晴ちゃんにとサッカー、茜さんとラグビー……有香さんと空手……友紀さんと野球観戦……サーフィン、バスケット、ベリーダンス、サバゲー……色んなスポーツで汗を流しました)
幸子(ありすちゃんや文香さんにはダイエット知識の面で協力してもらいました)
幸子(勿論、健全なダイエットばかりではありませんでした)
幸子(輝子さんの体にきのこを生やすことで、余分な脂肪を吸収させるキノコダイエット)
幸子(事務所危険度ランク上位アイドルのお山を揉みに行く過酷な登山)
幸子(時子さんにひたすら『豚よりも豚』と罵られる)
幸子(晶葉さんが作った、ダイエット用ウサちゃんロボ……という名の殺戮マシーンと戦うことになったり……)
幸子(普段まゆさんがしてるストーキングを1日体験したら、マンションの壁を登ったり、車の下に張り付いたりで思っていた以上に過酷でした……)
幸子(そういえば凛さんがリベンジに来たと思ったら、自分に首輪をつけて「犬の散歩って結構体力使うんだよ」って言ったときは、嫌な汗が流れましたね……)
幸子(思えば色々なダイエットに挑戦しました……)
幸子(そして。その甲斐もあって――)
モバP……70kg(目標体重65kg)
幸子……40kg(目標体重37kg)
幸子「や、やりましたねPさん! まさかこの短期間でここまで……!」
幸子(ふふふ……Pさんもほぼ前と同じシュッとしてカッコよくなりましたね! 恥ずかしいから言いませんけど!)
P「……」
幸子「ってどうしたんですかPさん?」
P「おしまいだ……もう終わりだ……」ガタガタ
幸子「本当にどうしたんですか!?」
P「明日で期限の3週間だろ……死ぬ……明日までに5kgなんて無理だ……。体が内側から弾け飛んで死ぬ……クリ○ンみたいに……」ガタガタ
幸子(そ、そういえばそういう嘘吐いてたんでしたっけ……)
幸子(今更嘘だったなんて言えない……)
幸子「……仕方ありませんね。Pさん、今からボクの部屋に来て下さい」
モバP「え? あ……そうか、死ぬ前に最後の晩餐を……」
幸子「違いますよ! ……ボクのとっておきのダイエット方法を教えてあげます」
☆幸子の部屋☆
幸子「さて、じゃあ早速始めますよ」
幸子「こっちに来てください」
スタスタ
モバP「これ……全身鏡か」
幸子「ボクのダイエットはこの鏡を使います」
幸子「じゃあ鏡に向かって立ってください。それからボクの後に続いて」
モバP「お、おう」
幸子「行きます」
幸子「――ボクはカワイイ!」ドヤーン
モバP「えっ」
幸子「なにぼやっとしてるんですか。ボクの後に続いて下さいよ」
幸子「もう1回――ボクはカワイイ!」ドヤーン
モバP「ボ、ボクはカワイイ」
幸子「違いますよ! もうっ!」
モバP「えぇ……いや、意味が分からないんだが幸子」
幸子「ですから鏡に映る自分を褒めるんですよ。心の底から自分を褒めることで、自分に自信を持つんです」
幸子「強固な自信は自分の内面を変革させ、内面の変化は外面――自分の容姿にも現れるんです」
幸子「つまり本気で自分のことをカワイイと思えば、体も自然にカワイクなっていくんです!」
幸子「理想の自分に……理想の体型に……!」
モバP「思い込むだけで痩せたら苦労しないだろ」
幸子「でもボクは今までこうやって体型を維持してきたんです。それに楓さんのことを思い出してください。アレも思い込みの力でしょう?」
モバP「……確かに」
幸子「分かったらリピートアフタミーです!」
幸子「ボクはカワイイ!」ドヤーン
モバP「お、俺は……カッコイイ」
幸子「なに恥ずかしがってるんですか! もっと心を込めて! 世界で一番自分がカッコイイと! 本気で思うんです!」
モバP「お、俺は……カッコイイ!」
幸子「そうですその調子です! ボクはカワイイ!」
モバP「俺はカッコイイ!」
幸子「ボクはカワイイ!」
モバP「俺はカッコイイ!」
幸子「ボクはカワイイ!」
モバP「俺は世界一カッコイイ!」
幸子「ボクは宇宙一カワイイ!」
幸子「――」
モバP「――」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
翌日
モバP「おはようございまーす」
幸子「おはようございます! カワイイボクが来ましたよ!」
ちひろ「おはようございます2人共♪ ……わっ、プロデューサーさんに幸子ちゃん。体型が……」
幸子「ええ、以前のカワイイボクに元通りですよ!」フフーン
モバP「いやー……お陰で命が繋がりましたよ」
ちひろ「命? ……とにかくよかったです♪ それにしても凄いですねー、たった3週間でここまで……」
幸子「それは勿論ボクの――」
モバP「全部幸子のお陰ですよ」
幸子「へっ?」
モバP「幸子がいなかったら俺、ダイエットなんてする気にもならなかったですからね。もしダイエットを始めたとしても、1人だととても続かなかったと思います」
モバP「幸子がいたお陰で途中で諦めず、楽しくやり遂げられたんですよ」
モバP「ありがとうな幸子」ナデナデ
幸子「あ、えっと……ど、どういたしまして」
幸子「……えへへ」モジモジ
幸子「んんっ」
幸子「本当にPさんはボクがいないと駄目ですからね! 仕方がないので、これからも側にいてあげますよ!」
幸子「ボクはカワイイ上に優しいですからね!」
幸子「……これからも宜しくお願いしますね、Pさん♪」
おしまい。
最後駆け足になってしまいましたが、これで終わりです。この後、痩せてるP派と太ってるP派に分かれて水面下のバトルが繰り広げられる的なオチにしようと思いましたが、幸子がカワイイのでここで終わります。
お付き合い頂き、ありがとうございました。
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