勇者「ファンタジー世界の短編集的な」 (68)

思いついた短編を書いていきます

これ書いてほしいみたいなのあったら言ってください

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1463423235

【だからぼくはまおうになった】

「近づくなよ、バケモノ」

「喋っちゃいけません!」

「ああ、あれが」

………オークと人間の間に生まれた子ども

それがぼくだった

……昔、この村は魔物による暴行、陵辱、強姦が多発していた

毎日毎日人が死に
毎日毎日父親の分からない子どもが生まれていた

………軍によって統治され、今はもうそんなことはなくなり

村の人達は安心して生活をおくれるようになった

…………一部を除いて、は

「出ていけバケモノ」

「この村に魔物は必要ない」

「そうだ、いっそのこと殺しちまえば」

「そうだ、殺せ殺せ!」

「魔物なんか死んじまえ!」

………魔物によって産み落とされた子は、次々と処刑されていったんだ

首の切り落とされる音を何回も聞いた

肉の裂ける音を何回も聞いた

脳が潰れる音を何回も聞いた

死ぬ間際の雄叫びを、何回も聞いた

僕はいつ殺されるんだろう?
まだ?
まだ?
僕の番はまだ?
……はやく、殺してよ

……ある日
ぼくは、少女に出会った

とても素朴で可愛らしい

白いスカーフの似合う女の子だった

その娘はほかの人たちと違った

僕のことをバケモノなんて呼ぶこともなくて

暴力を振るうこともなくて

ただただ、ぼくに優しく話しかけてくれた

優しく、微笑んでくれた

……ある日、彼女がいじめられていた
殴られて蹴られて、痣だらけになっていた

……考えるよりも先に足が動いてた
僕は女の子を連れて子どもたちから逃げた
振り払い、振り払い、森のおくまでやってきた

ザッ、ザッ、
ザッ、ザッ、

走る音
さっきの子たちが追いかけてきたんだ
ザッ、ザッ、
ザッ、ザッ、

僕は走った、彼女を連れて

ザッ、ザッ、
ザッ、…………

行き止まり

ザッ、ザッ、
ザッ、ザッ、

さっきの子たちがやってきた

いっぱい石を投げてきた

痛い、痛い

でもそれ以上に

彼女を傷つけられたのが、許せない

ぼくは彼らを殴った

思い切り、思い切り

殴って蹴って、泣くまで殴った

ザッ、ザッ、
ザッ、ザッ、

少年たちは逃げ出した
村へ村へと帰っていった

……『大丈夫……?』

彼女は心配そうに僕を見つめてた

大丈夫だよと答えると

『良かった……』

ホッとした顔でそういった

続けて

『さっきはありがとう……』

と彼女は微笑んだ

僕は照れて、そっぽを向いた

真っ赤になってる僕を見て、彼女はまた微笑んだ

『おうちはどこなの?』

『名前はなんていうの?』

『私の名前は………』

いろんな話をした
いろんないろんな話をした

しばらくすると夕日が落ちて、暗くなって

カラスがカーカー鳴き出した

『じゃあ、また明日』

彼女はにっこり微笑んだ

大きく手を振る彼女に、僕も大きく手を振り返した

また、明日

明日、明日も楽しみだ

早く明日にならないかな

………

…………

……………

「魔物と仲良くしてたって!?」

「あの娘………」

「…………」

「……魔女だ………」

「魔女だ、魔女だ………!」

「あぁ、魔女に違いない!」

「魔女だ!魔女だ!」

「殺せ!殺せ!」

「処刑しろ!」


…………次の日、彼女は死んだ

ギロチンにかけられて、死んだ

彼女は、泣いてなかった

………遠くで泣きじゃくる僕を見て、微笑んでいた

首の切断される音

人間がに分割される音

どばどば広がる赤い液

………彼女は死んだ、

そこには人であった肉塊が転がっているだけだ


どうして……
どうして………彼女は死んだ………?

………彼女は……なにもしてないのに………

なんで………しんだの………?

「次はお前の番だ!」

「さあ来い!バケモノ!」

どうして………

……………ドウシテ?

………この世界は、平等じゃない

善悪の価値観は、とうに無くなって

あるのは利害関係と感情論だけだった

そうか………それなら………

それなら………ぼくは……

ぼくは…………この世界を…………

…………………

……………………

………………………

…………………………

ずっとずっと、昔の話

今日の分はここまで

【この手の中に残ったモノ】

………

終わった

すべてが

『魔王が死んだってよ!』

『やっと平和になる……』

『宴だ宴だァ!』

『英雄だ!英雄が帰ってきたぞ!』

『勇者様!ありがとうございます!ありがとうございます!』

『勇者よ、よくやった!これで国も平和になるじゃろう』

『勇者様!勇者様!』

……………

英雄……英雄、か………

魔王が死んで、どれくらい経ったっけ?

『勇者様のお陰でこの国も随分平和になったもんだ』

『中央の復興もだいぶ進んでるらしいな』

『ほんと、勇者様様だよ』

…勇者………

あれ……俺は何のために……

『これで俺たちも安心して生活が遅れるってもんだよな』

『あー、俺も勇者様みたいに強くなりてー』

『ハハハ、お前にゃ無理だって』

………何のために、勇者になったんだっけ?

魔王を倒すため?

世界を救うため?

誰かを守るため?

………いや、違う

じゃあ……なんで…俺は………

《勇者……必ず魔王を倒してくれ………》

《勇者様…もう、私ダメみたいです
えと……私、信じてますから
勇者様が世界を救ってくれるって……》

《ハハ……僕はここまでみたいだ
あとは頼んだよ……勇者……》

……なんで俺は、あんな犠牲を払ってまで………

………正義のため?……俺にしかできないことだったから……?

…………なぜ、なぜ俺だけが

……皆、みんな死んだのに……なぜ……俺だけ………

……なぜ、俺だけがすべてを背負う必要があったんだ……?

………それが皆の願いだったから?

だから、俺は……勇者に……なったのか………?

………じゃあ……今の俺は………?

魔王を倒した今、俺は……俺は一体何なんだ?

俺が存在する意義は?

勇者じゃなくなった俺の居場所は?

………みんな、みんな死んでしまったのに

……俺が生きる意味は?

《勇者様!必ず魔王を倒しましょうね!》

《勇者!あれだあれ!例の森ってのは!》

《あぁ、勇者
起きていたのかい?
……ん、僕は少し考え事をしていた………君もかい?》

……あぁ、懐かしい……な……

…………

……結局

……俺には一体何が残った?

………魔王を倒すことによって俺は何を得たんだ?

……富?名声?

………いや、違うだろ

………俺が欲しかったのは、そんなものじゃなくて

俺が……欲しかったのは………

………………

もう、遅い……か………

もう……全て終わってしまったんだ

…………

……結局

……俺には一体何が残った?

………魔王を倒すことによって俺は何を得たんだ?

……富?名声?

………いや、違うだろ

………俺が欲しかったのは、そんなものじゃなくて

俺が……欲しかったのは………

………………

もう、遅い……か………

もう……全て終わってしまったんだ

……………

ずっと魔王を倒すために戦ってきた筈なのに

正義を背負って戦ってきた筈なのに

……魔王がいなくなった

その時点で

俺はもう、勇者じゃない

俺には、存在意義がない

………俺には、もう、なにもない

正義

期待

俺にしかできないことだったから

『ハハハ、笑わせるな』

『お前が今まで戦ってきた理由は』

『単なる自己満足だったはずだろ?』

『正義として振りかざしていたソレはお前の我儘』

『事故を満たすためのモノだったんだろ?』

『その結果が、このザマだ』

『ホント、笑えるな』

『なぁ、勇者様?』

あぁ……そうだ

俺が…今まで戦ってきたのは

単なる自己満足だった

それで……自分を満たすことに存在意義を見出していただけだ

……そして、この手の中には何も残らない

残ったモノは

これ以上ないほどの空白だ

…………ハハ、もう、いいか

自己満足の時間はもう終わりだ

……期限切れの勇者は、ここらで引っ込もうかな

…………あぁ、みんな

いつかまた、何処かの世界で会えたら

その時は、きっと

もっと、平和な世界で

………

それでは

さようなら、

勇者様

…………………ギィ

……………………ギィ…ギィ……

…………………………ギィ……………

今日の分はここまで

あ、一応世界観は全部繋がっています

【影の世界と孤高の少年】

何のために僕が居るのか

何のためにここに在るのか

僕を僕たらしめるものは何なのか

存在する為の定義

存在する意義

証明してくれ

誰か

僕を

教えてくれ

その意味を

『この世界には2つの文明がある………というのは昔から様々な論者が唱えている』

『諸君らも一度は聞いたことがあるだろう』

『この世界には光の文明と影の文明……即ち私達の今暮らしている世界と影の世界とに分かれているんだ』

『この2つの文明は常に隣にあり続けながら、決して交わることはない』

『臨界点……あるいは境界線とでも言うべきか』

『今私達に見えている影、その影こそがもう1つの文明だ』

『と言っても……目に映る影自体が影の文明というわけではない』

『視覚に映るソレは一握りの情報でしかない
本来は複雑に混ざり合っている情報が簡略化されていると言っても良いね』

『私達の脳ではそれを処理できない
視覚として受け取れる情報というのも限られてくる』

『最も、その情報を受け取ることができたとして、果たしてそれがなんなのかを理解することができるのかは分かりかねるが』

『影というのは私達にとってはただの情報でしかない』

『が……それは私達の視界に映る情報だ
本質というのは全く違うと言っても良い』

『その本質を私達に理解することは不可能だろう』

『逆も然り。彼らも私達の文明を受け取り理解することは不可能に近いだろう』

『さて……この影の世界については諸説あるが…………』


彼等がいるから僕が存在するのであれば

僕がいるから彼等が存在するのであれば

僕は………彼等は……何なんだ?

なぜ、僕だけがこの世界に在る?

神はなぜ、この世界を創った?

なんだ、この世界は

影の文明……ハハ、なんだよ、それ

この世界には文明なんて立派なものはない

在るのは僕と、どこまでも広がるこの暗闇の世界だけだ

僕に繋がれたこの影が全て

これが、彼らの世界を構築している全てだ

その世界に在るのは影として認識されている僕だけなのに

彼等は、それに気づいちゃいない

なぜ、ぼくだけがこの世界に在るのか

彼等を彼等たらしめる為に有るのだとしたら

僕を肯定するものは?

否、無

これが、僕に課されたものだとしたら

神は……何故僕だけを

………あぁ、眠い、な

とても、眠い………

……誰か、僕を

救って、くれよ

僕の意味を

存在の意味を

教えてくれよ

………

今日はここまで
眠い頭で書いたら意味の分からない上にオチのない話になってしまった……
ここから繋がる話もそのうち書きます……このままだと消化不良すぎますから………

【叛逆者】

「僅かでも疑わしき者は処せ」

「魔に取り憑かれたものは生かしておいてはならない」

「魔女は悪だ」

「悪は滅さられるべき存在だ」

「常に疑いの目を忘れるな」

「魔女に、死を」

………いつからだっけか

こんなことが言い出されたのは

「魔女は生かしておいてはならない」

それは絶対的な仕来り

守るべき掟

『やめてください!私は魔女なんかじゃない!

『ママ……ママ……』

『やめろ!私の娘は………!!』

『ああ神よ、どうか彼女をお助けください………』

『なんで……わたしが………』

『呪ってやる………呪ってやる………!!』

『姉さん!待って!!行かないでよ!姉さん!!』

…………………

……

『これで魔女がまた一人減った』

『魔女は悪だ』

『殺せ!殺せ!』

『魔女は皆殺しだ!!』

『殺せ!殺せ!』

『魔女に絶対的な死を』

………

………本当は気付いてる

俺も

俺以外の奴らも

気が付いてるはずだ

こんなことをしても、なんの意味もないってことくらい

魔女……?

ハハ、おかしいだろお前ら

なんだよ、魔女って

そんなもんが存在するわけねぇじゃねえか

なんなんだ

ストン

なんなんだよ、これは

グチャ

なんで人が殺されてんだよ

パン

『助けて、助けてッ!』

『ここから出して!』

『お願い………』

『ウッ……ウッ……』

『ああ、神よ……』

今日も牢屋から悲痛な叫びが聞こえてくる

嗚咽を交えた怒声が聞こえてくる

言葉でですら無い声が、聞こえてくる

………

……おかしい、おかしい

…こんなのは、おかしい

そんなことは、わかってる

………だが、俺には、どうにもできねぇよ

ハハ、そうさ

自分以外のことなんてどうでもいいんだよ



誰が死のうと、俺には関係ねぇ

……

………

『……おじさん、いつも暗い顔してるね』

牢屋の中から聞こえる声

『いつもいつも耳を塞いで、辛そうな顔してる』

うるせぇよ、なんだよ、おまえ

『わたし?わたしは……』

『ううん、名前なんて無いよ』

『小さい頃、捨てられちゃったから
覚えてないだけだけどね』

クスッとわらう声

そうか……まぁ今から死ぬのなら名前なんて必要ないかもな
魔女さんよ?

『フフッ、たしかにそうだけど
随分ひどい言い草だね』

否定しないのか?

『うん。みんなが私を魔女であると思ったんなら
きっと私は魔女なんだよ』

……そうか

『ねぇ、衛兵のおじさん
あなたはいい人?』

……俺が良い人ならこんな仕事はやってねぇよ

クスクスと、わらう声

『でも、おじさんいつも苦しそう
いつも泣きそうな顔で何処かを見てる
悪い人ならそんな顔、しないと思う』

…………

『フフッ、ほらまた辛そうな顔してる』

うるせ

『フフッ、おじさんきっと悪い人じゃない』

おれが?どうして?

『なんとなく、なんとなくわかるんだそういうの』

……へ、その予想は多分間違ってるぜ
魔女さんよ

『フフッ、そうだとしても
私はいい人だと思う』

………次の日も…

その次の日も

その次の日も

そいつは俺に話しかけてきた

……………

『……ねえおじさん、幸せってなんだと思う?』

なんだよ、急に

『フフッ、なんとなく』

……俺は生まれてこの方幸せなんて言葉とは無縁の生き方をしてきたからな
人様の幸せなんざ分かんねぇ

『おじさんらしいね』

うるせ

『フフッ』

『……わたしね、今まで幸せなんてなんなのかわかってなかった』

『幸せを感じたことが無かったの』

……………

『どこに行っても居場所なんてなくて』

『幸せを感じる出来事なんてなかった』

……なんだ、ただの不幸話か?

『フフッ、最後まできいてよ』

『わたしね……牢屋に入れられてから
ずっと幸せだった』

……どうしてだ?

『……今まで居場所なんてなくて
私の存在価値なんてなかったから』

『でもここに来て、私には居場所ができた
みんなの為に死ぬことが存在価値だって知ることができたから』

…………

『……でもね、ほんとはそんなことよりも』

『おじさんといっぱいいっぱいおしゃべりできたことが楽しかった』

…………

『まともな会話なんて今までしたことなくて
会話する相手なんて自分しかいなくて』

『ここにきて、やさしいおじさんといっぱいいっぱいおしゃべりできた』

『それで分かったんだ
ああ、これが幸せなんだって』

……俺は優しくなんてねぇよ
根っからの悪人……最底辺の人間だ

『ううん、違うよ
おじさんはやさしいひと』

『もし他の人に優しくなくても
他の人からみたら最底辺の人でも』

『わたしにとっては、とってもとってもやさしいひとだよ』

……………

『フフッ、どうしたのおじさん?また辛そうな顔してるよ?』

……うるせ、お前だって同じだろーが

『……フフッ、バレちゃった』

『………今までいっぱいいっぱい話せて楽しかった』

『いっぱいいっぱい、幸せなんだって感じられた』

『……だからおじさん、ありがとうね』

…………

『私は明日死んじゃうけど、おじさんといっぱい話せて楽しかった』

『幸せだったよ』

『……あれ、なんだか眠くなってきちゃった…………』

……もう、夜も遅い
明日に備えて寝ておけ……

『フフッ……そうするね
……死ぬのに備えるってなんだか可笑しいね……』

『フフッ……』

………そうだな………

『………』

『………』

『………』

小さな小さな寝息が聞こえる

あぁ、初めて聞いたな

こいつの寝息

……明日……か………

俺もそろそろ……寝ないと、な………

〘……おじさん、いつも暗い顔してるね〙

〘フフッ、おじさんきっと悪い人じゃない〙

おいおい

〘……ねえおじさん、幸せってなんだと思う?〙

〘おじさんといっぱいいっぱいおしゃべりできたことが楽しかった〙

なんだよ、俺
情が移っちまったってのか?らしくもねえ………

〘ううん、ちがうよ
おじさんはやさしいひと〙

〘わたしにとってはとってもとってもやさしいひとだよ〙

…………

〘……だからおじさん、ありがとうね〙

……あぁ、そうか

俺は……コイツを………

…………

ハハッ、ほんと、らしくもねえよ

どうしちまったってんだよ、俺

ハハ……でも

だとしたら………俺は……俺の幸せってのは………

………………

………………

………………

『これより魔女の処刑を始める』

『さぁ魔女よ、処刑台に立つが良い』

『殺せ!殺せ!』

『殺せ!殺せ!』

『殺せ!殺せ!』

………ザク

『こっ……ハッ………?』

ドサッ

『え………?』

『………なんで、教祖様が………?』

『………あれ、は……』

『衛……兵………?』

………………

『……は、んぎゃ、く、しゃ』

『…叛逆者だ…………!』

『魔女に楯突く叛逆者………!』

『殺せ!魔女もろとも殺せ!』

『そうだ!叛逆は許されない!』

『教祖様を殺めた叛逆者を殺せ!』

『殺せ!殺せ!』

『殺せ!殺せ!』

……あいもかわらず、うるせぇ奴らだな………

『お、じさん……?』

…………よう

『どうして?どうしてこんなこと……?』

ん……なんでだろうな
気が向いたから……って理由じゃダメか?

『お、じさん……』

………さて、おしゃべりしてる場合じゃないな
取り敢えず、コレを片っ端から片付けねえと

肉を切り裂く感覚

喉を突き抜く感覚

心臓を突き刺す感覚

ああ、今俺が殺してるのは人間じゃない

意思を奪われた人形だ

恨み

呪い

怨念

聞こえてくる言葉は、俺の耳に入らない
届かない

ああ

なんだ

殺すって、こんなもんか

ああ、今、撃たれた

痛みはない

脇腹を刺された

痛みはない

左手が吹っ飛んだ

痛みはない

痛みはない

あるのは、達成感

安心感

幸福感

それだけだ

………ハハ、終わった、か

『おじさん………おじさんっ………!!』

……おっとっと……いきなり抱きついてくるなよ……体制が崩れちまう

フラフラ

ドサッ

『おじさん!?おじさん!!おじさん!!』

そんなにおじさんおじさん言うんじゃねえよ
俺はまだそんなにおじさんじゃねーんだ

『どうして……どうして………私なんかの為にこんなこと………?』

勘違いだな、そりゃー

『え………?』

お前の為じゃない、俺の為だ
俺がこうしたいと思ったからこうしただけだ

『……………』

カフッ……おっと、痛みは感じないが流石に体にガタがきてる
こりゃーもうすぐ死ぬな、うん

『おじさん……死んじゃいやだよ………おじさん………ッ!』

ハハッ、何泣いてんだよ
いつもみたいに笑えよ、フフッて

『…………』

ハハッ、しょっぺえ涙だなおい
……ああ、そういえば前お前に言えてないことがあったな

『…………?』

ほら、前に幸せってなんだと思うとかなんとか聞いてきたろ?
……いま、ようやくわかったよ

俺もお前と同じ

お前と話してる時が一番幸せだった

お前と話してる時、俺は俺でいられた

空白じゃない、俺自身でいられた

『…おじ……さん……』

そして、今

今この瞬間が俺の一番の幸せだ

なにより……お前がいまここにいてくれる

生きて、俺の横にいてくれる

これが、俺の幸せだったんだ

『…………ッ』

ガフッ……ゲホッ………あぁ、やべぇ
もうそろそろ限界っぽい

『ッ!おじさん!おじさん!
しっかりして!おじさん!』

『死なないでよ!おじさん!ねえ!』

ハハッ、悪いがそいつは無理だよ
……もう、地獄からのお迎えが来てるらしい
俺は、そろそろ行くよ

『おじさん………ッ!』

ハハ、だからそんなクシャクシャな顔して泣くなって………
喜べよ……いつもみたいに笑って……
お前は生きたんだ……

『おじさんが……おじさんがいてくれなきゃわたし………!』

ハハッ、何言ってやがんだ
お前は、俺がいなくても、幸せになれる
なんとなく、わかるんだ

『……おじ………さん……ッ………』

あぁ、あったけー
このお前の手の温もり、俺は地獄まで持ってくよ
だからお前も、生きてけよ
この世で
せっかく生きてんだから、さ


ハハ、ああ、もう、無理だ

『    』 

はは、もう、こえもきこえねー

……ああ、きもちいーな
……こいつ、こんなにキレーな顔してたんだ
ま、俺から言わせればまだまだガキ臭ぇが……な……

ああ、ハハッ

それじゃあ

おやすみ

またいつか

今回はここまで
今までで一番長く書いたかな……後半かなり駆け足になっちゃったけど……
全10編くらいまで書ければいいなぁと思ってます

【NewGame】

ドクン ドクン



ドクン ドクン



ドクン ドクン

命を刻む、音が聞こえる

一定のリズムで紡がれる存在証明

ドクン

ああ、また

ドクン

また、僕は、ここに

ドクン

ドクンドクン

ドクンドクンドクン

«continue?»
→はい
→yes

ハハ……またこれか……

これじゃ……選ぶ余地……無いじゃないか……

ゲームヲサイカイシマス

ゲームヲサイカイシマス

ゲームヲサイカイシマス

機械的な声

否、最早コレは只の音だ

ああ、

ぼくは

何故

……何故…

……ぼく、が………

…………



…………………

ああ

暗い、な………

………………あれから

あれから一体何回目なんだろうか

僕は何回死んだんだろうか

何回ここに戻って来たんだろうか

ハハ………もう、思い出せないくらいたくさん死んじゃったな…………

………残ったのは、僕と彼だけ

僕と彼だけが、生き残った

じゃあ、何故僕が?

彼ではなく……なぜ、ぼくだけが……

いや……もうそれを考えるのはやめようかな

無意味

無意味

無意味でしかない

意味があるとしたら

それが僕に課された運命だからだろう

なら

ぼくは

どうすれば

どうすれば、良いんだ

ああ

考えるのも、面倒くさくなってきちゃったな

もういっそ

この永遠を

受け入れてしまえば

楽になれるのかもしれない

永遠の死を、永遠の生を

僕に課された運命を

……だけど

きっと

あの2人は

そんなこと許しちゃくれないよね

ハハ……まったく

僕は…面倒ごとが嫌いなのにさ

………ハハ……

…………………どうすれば

どうすればこの永遠から抜け出せる?

もう何回も考えて

考えて

考えて

考えて考えて考えて考えて

そして、失敗

失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗失敗

おなじことの、繰り返し

『死』

『死』

『死』

『死』

彼の死を何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

何度も、見てきた

僕は…何もできなかった

………きっと、彼が死ななければ

それが、最上級の幸福に繋がる

きっと、僕は

そのために

ああ

ハハハ……

そんなに僕に、

何を期待してるんだい?

僕は……僕には

何にもできないのに

ああ、

ああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

『………大丈夫か?』

あ…………

『顔色悪いぞ?』

………あぁ、“  ”
起きていたのかい?

『ああ……少し、眠れなくてな
んで、どうしたんだ?こんな夜中に』

……ん、僕は少し考え事をしていた………君もかい?

『ああ、まあそんなとこ
ハハ、俺らしくもねえよな。考え事なんてさ』

……あはは……たしかに、そうかもしれないね………

『………』

……………

『明日、だな』

………うん

『明日で全てを終わらせ………
いや、始めよう』

…………うん

『俺達はやっと、ここまで来た
あとは……やるべきことをやるだけだ』

…………

『…………そうしなきゃ、あいつらにも怒られちまう』

……うん、そうだね
…………きっと、凄く怒ると思う

『はは、ちゃんとやらねーとまた魔法ぶっ放されちまうしな
……だから、絶対勝とう』

………うん

『……ああ、そして
2人で生きて帰ろう……必ず』

…………うん、必ず

『……ハハ、なんか辛気臭くなっちまった
……じゃあ、俺はもう寝るよ
お前も早く寝といたほうがいいぜ!』

……はは、そうする

……………

………………

…………………

……勝とう、か

………………………

…………そう、だね

………勝たなきゃ、いけないよね

………

ハハ、なんだ、簡単な事じゃないか

………勝てばいい

……………勝てばいいんだ

それで全てが報われるなら………

………ぼくは、それで

『ゴハァッ………グッ………』

《貴様等では勝てん、諦めろ》

『ざけんな………諦められっか………』

『グッ……クッ………!』

《……………………》

…………クッ………

『ゲホォッ…………!』

……“  ”!しっかりするんだ………!

《………この世界は》

《…………この世界は貴様等が命を懸けてまで守るべき価値があるのか?》

『……ハァ……………』

……グッ…………

『ハハ………たしかに』

『この世界は俺達が命を懸けてまで守る価値なんて無いのかもしれない………』

………………!

《…………………》

『……だがな……んなこたーどーでもいいんだ』

『…………仲間との約束を守りたい…………それだけだよ、世界を守る理由なんてのは………』

………………………

《………そう、か》

《約束………か…………》

《………守れもしない約束は、約束とは言わん》

《…………逝け》

ブワン

『ク………………ッ……………!』

すべてが

とまって

みえた

それが

ぼくの

すべき

ことだと

しゅんじに

ぼくは

りかいした

……………………

『………あ?………おい…………おい………!』

《…………》

《……………見事だ》

ぐさ

ぐさ

ぼくのむねに

けんがつきささった

ぼと

ぼと

まおうのみぎてが

ひだりてが

せつだんされて

じめんにおちる

《……………見事だ》

『…………ウワァアァァアア!!!!!!!!!』

『アアァアアァアァアアアアァアアァアァアアアアァアアァアァアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

まおうのくびが

ひだりあしが

みぎあしが

かたが

にくが

ぼとぼと

ぼとぼと

くずれおちる

《…………………》

まおうがしんだ

しんだ

しんだ

とてもあっけなく

しんだ

そして

したいが

ころがりおちた

『おい!?大丈夫か!?しっかりしろ!!おい!おい!!』

………ハハハ、僕にしては、戦いが苦手な上出来だね………

『おい!死ぬな!!頼む………頼むから…………!!!』

……ハハ……僕はここまでみたいだ
あとは頼んだよ……“  ”……

『………おい!?おい!!!起きろ!!!起きて、くれ…………!!』

………………

ああ、終わった

終わった

終わった

終わって

ぼくは

しんだ

何回目だっけ?

おぼえてない

何回目だっけ?

だから、おぼえてないって

でも、これで

きっと

世界は

救われる

だから

あとのことは

君に任せるよ

後処理は苦手なんだよ

ハハハ

………ああ、また

«continue?»

また

これか

………でも

→いいえ
→No

はは

相変わらず

一方的な選択肢だ

………はは

これで終わり、

僕の運命はこれだったんだ

……はは、なんだか、すっきりした

………じゃあ、ぼく、は

……あの2人にでも会いに行こうか

…………………ハハ、また、怒られそうだな

……うん、でも

…………それはそれで、たのしみだな………

ゲームヲシュウリョウシマス

ゲームヲシュウリョウシマス

ゲームヲシュウリョウシマス

ピー

ピー

ピー

ピー

ピー

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今日はここまで……
ずっと書きたかった話をやっとのこと書けました……
急いで書いたのでかなり読み辛いと思います……ごめんなさい

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