デレマスSSです。
地の文の百合的な何かのはずです。
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1、ソファーの向こうのアイツ
アイツは、いつもウチがソファーでファッション誌を読んでると反対側に座ってる。
難しい顔をしてパソコンと向き合ってたり、ウチが読もうと思ったファッション誌を読んでたり……
プロデューサーは、アイツを『偉いヤツ』って言ってた。
話すことも無いし、別にジャマでもないけど……
アイツはファッションに詳しいらしいから……ちょっとだけ、ちょっとだけだけど気になっていたりする。
今日もアイツはウチの反対側に座った。
でも、いつもと同じじゃなくて、パソコンも雑誌も読まないで考え事をしてるみたいだ。
ウチは、雑誌のページより、アイツのことが気になってる。
今日は新しいパンク系ファッションの情報が書いてあるはずなのに……
「なぁ、少し時間いいか?」
それは、いきなりやってきた。
少し緊張しているような声が聞こえる。
その声の主を見ると、ウチの右目と視線が交わった。
アイツは、ウチに話しかけている。
少しだけ心臓がドキッと音を立てて、ウチの警戒心が総毛立つ
「な、なんだよッ」
つい、強い言葉で相手をけん制してしまう。
「おいおい、そんなに警戒しなくてもいいんじゃね?」
相手はさっきの声とは違う、余裕のある声になる。
たしかコイツは、プロデューサーとかと話してるときはこんな感じだった。
「お前、よくファッション誌見てるよな?」
む……
「お前じゃない!ウチは早坂美玲だッ!」
「ん…悪ぃ、じゃあ美玲。ファッション誌よく読んでるよな?」
すぐに名前で呼んできた。
まぁいいか。
「読んでちゃ悪いのか?」
「そういう意味じゃなくて、ここを見てくれ」
そう言うと、今日発売の雑誌のページをめくって見せてくる。
そこにあったのは、発売予定って言葉と一緒に載っていた……
黒と赤のチェックで暗めな色調で作られたミニスカート
それはスカートの途中に段が出来ていて、2段のミニスカートって感じだ。
「美玲から見て、これは欲しいに入るか?」
う~ん……色はすごく好きだけど……この構造……あ!そうだ!麗奈なら……
「ウチは買わないと思うけど、こういうのが好きなヤツなら知ってるぞ?」
「そうか……ソイツもうちのアイドル?」
「麗奈」
「あぁ、あのイタズラ好きな。確かにアイツのスカートはこのテイスト多いな」
え?コイツ、麗奈の服装知ってるのか?
「何だ?意外そうな顔して……市場調査は大切だろ。ただでさえ、ここは選ばれた逸材しか居ない場なんだしな」
ウチの顔を見るなり、ウチの考えてることを当ててきた。
「お前……スゴいな」
「お前じゃねぇよ。桐生つかさ」
すっごくイジワルな顔をして、言い返してきた。
さっきのお返しってことなんだろ?……何だか悔しい。
「つかさ」
「呼び捨て?まぁいいか。で、何?」
「この色は、嫌いじゃない」
「そっか……まぁ、参考にはなった。サンキュウな」
「別に……ぁ」
「お、そろそろ時間だ。じゃあな」
アイツ……つかさは、ウチの意見を聞くと少し嬉しそうに頷いて忙しそうに部屋を出て行った。
ウチの言葉、最後まで聞いてくれなかったけど……
これが、ウチとアイツの最初の会話
2、廊下のアイツ
今まで、アイツ……えっと、つかさとの仕事はやったことが無かった。
でも、そんなことを考えていたら、プロデューサーがつかさも居る仕事を取ってきた。
事務所の数名で出るミニライブ
ウチはいつも通りインディヴィジュアルズで出る。
つかさはソロって言われてた。
練習はいつも通り、ウチが2人を机の下から引っ張り出して連れて行く。
少しは自分から動けばいいのに……いつもきっかけ待ちだ。
でも、レッスン室に来ればマジメにやる。
やらなかったら、ひっかくだけなんだけどなッ!
つかさとは一緒の練習時間にならなかった。
ライブの日も朝からアイツには会えなかった。
先に会場に行ってるって、プロデューサーは言ってた。
その時、
「美玲がつかさのことを訊くとは思わなかった。何かあったのか?」
って言われたけど、何か聞かれなく無くって……
「ウ、ウルサイ!ひっかくぞッ!」
って誤魔化してしまった。
何でだろう……まぁ、いいか。
会場に着いたら、本当につかさは先に着いていた。
現場のスタッフさん達と会場のチェックをしたり、手伝いをしていた。
指示を出したり、一緒に荷物を運んだり止まらず動き続けていた。
「つかさは、緊張しやすいから先に入ってスタッフの手伝いして緊張をほぐすんだ」
プロデューサーはウチに聞こえる程度の小声で、教えてくれた。
「それでも、直前にまた緊張のピークが来るんだけどな」
って、少しイジワルに笑いながら言った。
「アイツ……疲れないのか?」
ウチは、そんなアイツがライブ前に疲れちゃうんじゃないかと思ったけど……
「本人曰く、『普段から鍛えてる人間なめんな』だってさ」
と、プロデューサーは大げさに肩をすくめながら言った。
「ふ~ん……じゃあ、ウチはウチで準備するからなッ」
ウチは、そんな妙に大げさなプロデューサーを無視して控室に向かった。
その途中で、自動販売機を見つける。
……ウチは、その前で立ち止まってしまった。
目に映ったのは、スポーツドリンク
アイツ、ずっと動いてた汗もかいてたし……
「後は音響チェックな!スピーカー位置は大丈夫だったし、出力確認よろしく!」
その時、廊下の奥からこっちに向かいながらしゃべるアイツの声が聞こえてくる。
ガコンッ!
気付けば、ウチはスポーツドリンクを買っていた。
アイツの姿が見える。忙しそうに紙を見たりスタッフと話したりしてる。
アイツは……ウチに気付いた。
「美玲?お前先発組だし、そろそろ着替えだろ?何でこんな場所に……」
最初からアイツに怒られる。
ウチは……それがちょっと嫌で!
「う、ウルサイ!つかさはコレでも飲んでろッ!」
ウチは、ちょっと乱暴にスポーツドリンクを渡して、控室に向かって走ってしまった。
控室に入ったウチは……少しだけ乱暴だったこと……後悔したけど、
アイツにちゃんとライブで活躍できるとこを見せてやりたくて、衣装に着替えだす。
ウチの少しイライラしてる空気に、2人が衣装のまま化粧テーブルの下に潜ろうとする。
「輝子!乃々!ライブ衣装なんだから、そんな場所入っちゃダメだろッ!」
ウチはそれを止める。ハァ……もう……
「今日はいつもよりちょっと気合が入っただけだから、イライラしてないぞ?」
そう言うと、輝子はフヒって笑って、乃々は少し複雑な顔をする。
「着替えてメイクしたら、最後のチェックだからなッ」
ウチは、そう告げて衣装に着替える。
ライブは大成功で終わった。
プロデューサーはすごく嬉しそうに全員を褒めている。
ウチ達にも頭を撫でたりしながら褒める。
いつもなら、ひっかいてやるんだけど……このときだけは、受け入れてやる。
その後は、着替えてそれぞれプロデューサーの車に乗ったりして帰るんだけど……
ウチがプロデューサーの車に向かおうとしたら
「美玲」
聞き覚えのある声に呼び止められた。
この声は……
「つかさ?」
「お疲れさん」
振り向くとスマホを片手につかさが立っていた。
「お疲れ」
「さっきは、ありがとな」
スポーツドリンクのことかな。
ウチは気にしなくていいって言おうと思ったけど……
「そのお礼だ。ディナーに付き合えよ」
って、イキナリ言ってきた。
「はぁ?」
「さっき、アイツには連絡して、もう車は出てるはずだから逃げ道は無しな?」
「え?おい、ちょっと待てッ」
しかも、断る道は無いらしい。
「じゃあ、アタシの迎えに乗れよ?さっきは断れない状態で渡されたんだから、お返しだ」
「え?要らなかったのか?」
ウチは、本当は飲み物が要らなかったんじゃないかと急に不安になる。
「いや、あのタイミングで渡されたのは最高だった。だから、お返ししてやるんだ」
「何だよ……それ」
ウチは少しあきれる……何だよコイツ
「ちなみに何か食いたいものあるか?」
ウチは、そんなつかさの態度が何か嫌で困らせてやろうと思って
「肉!」
とだけ言ってやった。
「肉な……じゃあ、あそこでも行くか。食わせてやるよ。最高の肉」
つかさは、ウチの言葉を聞いてイジワルな顔をして電話をする。
「あ、店長居る?今手が離せない?じゃあ、桐生つかさが2名でこれから行くって言っといて。……そうそう。じゃあ、よろ」
コイツ……本当に凄いんだな。
自分の名前言ったあと、電話に出てた人の声がすっごく丁寧になってた。
その後、ウチは超高級な店で、しかもエラそうなシェフが目の前で焼いてくれる高級肉を食べることになって、
すっごく緊張して……美味かった美味かったけど、何か……すっごく疲れた。
つかさは、そんなウチを見て笑いながら食べていた。
アイツ……ウチで遊んでるんじゃないよな?
そんな一晩だった。
3、ソファーの隣のアイツ
ライブの後は、またいつもの日常に戻った。
大きな仕事は少し先になるみたいで、いつも通りの仕事やレッスンの日々になる。
いつもと違うのは……今日は、アイツが、うちの隣に座った。
「つかさ……狭い」
「しゃあないだろ?ソファーが混みあってんだし」
今日は、ソファーを使う人ばっかりで、最後に来たのがつかさだった。
一番広いやつは、雪美と肇と楓が雑誌を見ながら猫の話をしている。
一人用のは、1つは晶葉が占拠して何か機械をイジッてて、もう1個はみちるが座ってパンを食べてる。
「……仕方ないな。今日だけだぞ?」
「へいへい」
ウチは仕方なく許してやったけど、つかさは空返事でメールチェックをしている。
まったく……せっかく譲ってやってるのに……
「そういえば美玲……」
雑誌を読んでいると、つかさが急にウチに話しかけてくる。
ウチは、つかさがさっきやった空返事のお返しだと思って無視してみる。
「……はぁ、このへそ曲がりは……よっと!」
そういうと、ウチの体が掴まれて、急にぐるんと動く。
「え?え?」
目の前に……つかさの顔がある。
「な、何だよッ!」
「ん?無視すんのが悪い。で、やっぱりそうだった」
「な、何がだよッ」
「おぉ、テンパってんな……その眼帯のハートの部分ってこの前、出た新作のパッチだろ?」
……眼帯のことだった。
そう。今日は、前から気になってたハートモチーフが手に入ったから無地の眼帯に付けてみていた。
「悪いのかよッ!」
「そうすぐ吠えるな、な?」
「吠えてなんか無いッ」
「はいはい。似合ってるなって思ったんだよ。うちの商品だってのもあるしな」
「え?」
つかさがウチの眼帯を褒めてる?
「やっぱセンスあるわ。眼帯に使われるとは思わなかったけどな」
ウチのこと……褒めてる?
何で?
「ん?美玲、聞こえてんのか?」
「……」
何だろう……何て言っていいんだろう……ウチは、迷子になってる。
とにかく、何だか恥ずかしくてソッポを向いてしまった。
「ハァ……まぁ、いいか。じゃ、アタシは仕事だから、じゃあな」
つかさはため息をつくと仕事に行ってしまった。
ウチは凄くダメなことをしてしまったって分かるから……空いたとなりが寂しくて……
ソファーに横になった。
さっきまで居たアイツの温かさが逆に寂しくて……自分の気持ちを整理できなくなった。
4、テーブル越しのアイツ
その日は、ちょっと変わった仕事だった。
プロデューサーが取ってきたんじゃなくて、つかさが持ってきた仕事らしい。
ファッション雑誌の特集
最近のアイドルの私服調査っていうヤツ
その中に……ウチも入っていた。
まゆとか、彩華とか、楓とか、モデルをやってた奴らの中にウチが居る。
ウチは……ちょっとだけ乃々の気持ちが分かった気がする。
しかも、レッスンの都合でウチが1番最後になった。
その日、ウチは午後のレッスンを終わらせて、シャワーで汗を流して、
いつもの私服だけど、メイクさんに化粧をしてもらう。
出来るだけ、プライベートのウチに近い化粧をしてもらう。
そのとき、メイクさんにいつものやり方を少し変えると見違えるようになるって教えてもらって、
ちょっとだけ……この仕事をやってよかったかなって思った。
事務所に戻ったウチに待ってたのは、カメラマンと記者の人と、つかさ。
プロデューサーは他の仕事があるみたいで、居なかった。
写真を撮ってもらって、着ている服のブランドの話をして、つかさが監修する。
つかさ……何度も可愛さを活かせって言ってる。
「ウチの今日のコーデはカッコイイだぞッ!」
って言ってみたら、少し可愛いってディレクションが減った。
コイツ……譲らない気だなッ!
少しだけ、負けたくない気持ちになる。
でも、アイツの真剣な顔を見て、ちょっとだけ言うのを止めてみた。
それでも、いろいろ意見を交わしていたら遅くなってた。
記者さんやカメラマンが帰ったあと、
アイツが1つだけ提案してくる。
「アタシのワガママに付き合ったお礼に好きなものをご馳走してやる」
って、……ウチは前の高級店でのことを思い出して、
そんなに値段がかからないけど、好きな食べ物を考える。
「ハ、ハンバーグ……とか」
ウチは、何となく肉だけど、ハンバーグが食べたくなった。
「また肉か……本当に食べ盛りだな……よし、行くぞ」
「今日はどっかに連絡しないのか?」
「ん?あぁ、ちょっとな」
そう少しだけ笑うと荷物をまとめて来いって追い出される。
プロデューサーに報告とかするから時間があるらしい。
ウチは、つかさの言うとおりに荷物をまとめて戻ってきたら、
つかさも荷物をまとめてウチを待ってた。
「よし、行くか」
「なぁ、どこに行くんだよ?」
この前みたいな店じゃないよな?って疑問が消えないウチは、
やっぱり、つかさに訊いてしまう。
「それはな……」
「はいはい。迎えに来たぞー」
すっごく間の悪いプロデューサーが現れる。
「コイツが知ってっから、コイツの車に乗ってりゃ着くよ」
「つかさ、プロデューサーをコイツ呼びはないだろ?」
「へぇへぇ、プロデューサー様。じゃ、運転よろ!」
プロデューサーを軽くあしらって出ていく。
ウチは置いてかれないように追っていくことにした。
車の中でも二人にはぐらかされて、今日の仕事の話になる。
二人がウチのこと褒めるから、ちょっと……二人の顔が見られない……。
ダメだってわかってるんだけどなぁ……。
そんなことを考えていると、車が賑やかな明かりの中に入る。
「なぁ、ここって……」
スーパーマーケット……だよな?
確か、いろいろ揃うタイプの店だ。
「今日は、美玲をアタシの家に泊める。必要なものを買って、ここからは歩いて帰るから」
ハァ!?
いきなりの宣言に言葉が出ない。
「まぁ……何だ。つかさなりの労いだから受け取ってやれ。寮には連絡してあるしさ」
プロデューサーは、そんなウチに軽く言葉をかける……いや、待て、待って!
「じゃあ、行くぞ」
つかさは、ウチの腕を引いて車を降りる。
車のドアを閉めると、プロデューサーは車を動かして去っていく……
つかさは、ウチに腕を絡めたまま店に連れて行く。
「美玲の好きなハンバーグは牛か?合挽きか?」
「ど、どっちでも……」
ウチはまだ冷静になれなくて曖昧な返事しか出来てない。
「そっか……じゃあ、アタシの作りやすさ優先でいいか」
「つかさが作るのかッ!?」
「……そんなに意外か?」
あ、ちょっと怖い顔してる。
「ごめんなさい……」
「あ、いや……怒ってるわけじゃねぇよ」
……何だろう、こういうやりとり嫌いじゃない。
そんな気持ちになって、ウチは少し落ち着いてきた。
「洋服は、美玲好みの試作がウチにあるから勝手に使っていいから、買うのは食べ物な」
「試作!?なぁ、それっていいのか?」
「社長なめんな」
そう言うと、少しエラそうに、ニッて笑う。
それがちょっと面白くて笑ったら、怒られた……この人、理不尽だ。
買い物が終わって、そこからもう少し歩いて、
すごく高そうなマンションみたいな建物に着く……
「なぁ、もしかして……」
「ここの最上階な」
「え?」
「じゃ、行くぞ」
豪華なオートロックを潜り抜けて、上部の階に直通するエレベーターに二人で乗り込む
エレベーターの中で落ち着かないウチの手を優しく、つかさが包む。
緊張すんなって言ってなくても分かる優しい笑顔が見える。
うぅ……この人……ウチは少しだけ素直になろうと笑って返そうとしたら、
変な顔になっていたみたいで笑われた。
……ちょっとだけ、素直になりたいって思った。ちょっとだけ……だけど……
部屋に着いたウチ達は、手洗いうがいをして、ウチは客間で待ってるように言われた。
ファッション誌のバックナンバーが置いてあるから、ウチはそれを読むことにした。
「悪ぃ、糠床の世話してからハンバーグ作るから……って、やっば……美玲」
いろいろ言いながら、最後に言葉に詰まってる。
「どうした?」
ちょっと気になってキッチンに行ったら、
シンプルなエプロンを着てるつかさが居て……
ちょっとだけいつもより大人に見えて、いいなぁって思った。
「昨晩からの残りのカレーがあんだけど、辛いのダメか?」
「少し辛いくらいなら……」
「……じゃあ、美玲はハンバーグ定食だな。じゃ、もうちょっと待ってな」
そういうと、つかさに追い出されてしまった。
手伝えるときになったら言えよ!って言ったけど、また空返事だった。
こういうときは言うことを聞いてくれないんだろうなぁ……
ウチは諦めてファッション誌を読むことにした。
いろいろ読んで、ふと部屋を見てみたら、ピンクで、すっごくもこもこのパーカーを見つけた。
とっても可愛くて、ちゃんと耳も付いてて、ウチ好みだ。
それを見ていたら……
「やっぱそれ気に入った?今日の寝間着ってか、欲しけりゃやるよ」
「え!?いいのかッ!?」
「試作の1つで、それは複数試作品があるから、それくらいなら問題ねぇよ」
……うぅ、本当にいいのか?
「今度、合宿あんだろ?持ってけばプロデューサーのヤツがビビるかもな」
「本当に、本当に……いいのか?」
「だから、いいって言ってるだろ」
「あの……その……あ、ありがと」
つかさの顔が見れなくて……俯きながらお礼を言うと、頭に温かい感触が来る。
そのまま優しく撫でられて……その、ちょっと頬とかが緩みそうになる……。
「ほら、冷めないうちに夕飯にするぞ?」
「うん……」
その日食べたハンバーグは、今までで一番美味しくて、
ちょっとだけもらった、つかさのハンバーグカレーも美味しかった。
その後……歯磨き粉のミントがダメだって言ったら子供だって笑われたりしたけど、
つかさとの時間が本当に楽しくて……すっごく幸せな夜だった。
5、ウチの隣は、つかさ
次の日の朝、ウチが客間に用意された布団から目覚めると、とてもいい匂いがした。
布団を畳んで、リビングに行くと……
「お、目が覚めたか。顔洗ってきな朝飯は大事だからしっかり食べような」
すでに身支度を綺麗に整えたつかさが味噌汁を作ってた。
ウチは、すぐに顔を洗って、食卓に戻る。
「よし、今日も可愛いな。じゃあ、いただきます」
「え?え!?……あ、い、いただきます」
しれっと可愛いって言うの……卑怯だ。
そんなこと言われたら、料理の味が分からなく……あ、美味しい。
「この漬物……美味しい」
「だろ?それ食えんの特別なヤツだけだからな?」
「特別?……そ、そうか……」
ちょっと味わって食べよう。
そんな幸せな朝食を食べて、つかさと一緒に事務所に行くことになった。
直通エレベーターの中では、また手を繋いでいた。
今度は、ちょっとだけ、昨晩より心も近くなった気がする。
事務所に着くまでの間、話しているときに……つかさに『わんこ』みたいだって言われた。
ウチはカッコイイ狼だ!
って主張したけど、聴く耳持たずで『わんこ』って言いながら頭を撫でてきた。
「他の人の前では言うなよ!絶対だぞッ!」
って言ってみたら、
「じゃあ、二人っきりで甘やかしたくなったら『わんこ』って呼ぶからな」
なんて言って笑ってた。
その顔が嬉しそうで幸せそうで……ウチは逆らえなかった。
渋々頷くウチを見て、つかさは満足そうな顔をしてる。
ウチの隣の幸せそうなつかさ……その……す、好きだなんて、まだ言えないけど……
いつか、素直なウチの言葉で、伝えたいな。
以上です。
メロンソーダは、美玲の好物で、
チーズカツカレーは、つかさが自分を例えるのに使った料理です。
そんなあとがきで今回は締めます。
願わくば誰かの暇つぶしになりますように……
このSSまとめへのコメント
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