一方通行「アマガミねェ」 (91)

はじめまして。
別スレも進行中ですが、こういったものも始めてみようかと思います。
以下は注意点でございます。

アマガミ×禁書
禁書成分少なめ
地の文注意点
キャラ崩壊、キャラ混合アリ
登場キャラほぼ全てがアホ
設定矛盾アリ

こちらのSSは100%私の自己満足となります。
完全不定期更新で進行していきます。
ですが、もし楽しんでいただける方がいらっしゃいましたら幸いです。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1463366446

それでは少しだけ投下していきます。

「またゲームか」



「ああっ!今いいとこなんだから返して!ってミサカはミサカはあなたの足にすがりついてみたり!」



白い髪に白い肌。対して黒を基調とした服を纏った赤い瞳の少年、一方通行は昼からリビングでゴロゴロと転がりながらゲームに夢中となっている見た目10歳程度の少女、打ち止めからポータブルゲーム機を取り上げる。



「あン?何だこりゃ……所謂ギャルゲーっつーのか?」



「知らないのあなた、それはアマガミって言うんだよ。今学園都市で大流行してる恋愛趣味レーションゲームなのだ!ってミサカはミサカは珍しくあなたの知らない情報に胸を張ってみたり」

「張る胸なんざ無ェだろォが」



そう言いつつ一方通行はしげしげと画面を見つめる。
そこには黒髪ストレートの少女の画像が写っていた。



「アマガミねェ……こンなモンで楽しいモンなンか」



「あなたはゲームをあまりしないよね。せっかくだからやってみればいいんじゃない?現実世界のコミュニケーションの練習にもなるかも!ってミサカはミサカはさりげなくあなたをギャルゲーの深き沼に突き落とそうとしてみたり!」



「何で俺がンなこと……」

「いいからいいから!ほら!あなたもやってみてよ!ってミサカはミサカはすぐにセーブをこなすとニューゲームを選択してあなたにPSPを差し出してみたり!」



「ったく……」



渋々ながらも付き合ってやる一方通行。やはり打ち止めには甘い彼であった。

「寒ィ……」



かくして。
一方通行改めプレイヤー名鈴科進一は輝日東市の丘にある公園へと足を運んでいた。
とある人を待つために。



「……既に約束の時間はだいぶ過ぎたな……」



「何ですかァ、失恋ってヤツですかァ?」



「……寒ィ。いつもより寒く感じやがる」

「……」



鈴科進一は空を見上げた。
そこには綺麗な星空が広がっていた。
そう、彼は今この時この瞬間にデートに誘った女の子に約束をすっぽかされ失恋したのだった。



「何だっつゥンだろォな。俺をあざ笑うかのように空は綺麗なことこの上ねェ……」



しばらく進一は空に見とれていた。
まるでその行為を終えると自分の中で何かが壊れてしまうかのように。

「……た」



遠くからかすかに声が聞こえる気がする。
しかし今の進一にはそんな声など耳に入らない。



「なた」



徐々に、徐々にだが声が少しずつ大きくなっている気がする。



「あなたってば!」

ガラガラっ!と音を立てて襖が開かれる。
進一は突如差した光に目を細くする。



「もうあなた、またここに閉じこもってたの?学校遅刻しちゃうよ?」



「ら、打ち止め?」



そこにはちょうど打ち止めを高校生ほどに成長させたような少女が立っていた。



「もう、何言ってるのあなた、まだ寝ぼけてるの?」



「あァ……悪ィ」

進一はもぞもぞと押入れから這い出す。



「また天体観測?」



「あァ。アレは俺のロマンだ」



進一の部屋の押入れ。その押入れの襖の裏側には蛍光塗料で描かれた星が散りばめられていた。
進一は辛いことや悩みがあるとここに入って考え込む癖があった。
そしてそんな時は決まってあの時の夢を見るのだった。
今日と同じ、中学校の頃の失恋の夢を……。



「ミサカにも見せて」



「……ミサカだ?オマエは妹の設定だろォ。なのに苗字が違うのはおかしいだろォが」

「もう細かいことは気にしないの!とにかくあなた、学校行くよ!」



「お、おォ……」



進一は妹のミサカ(?)に流されながらも制服に着替え、一緒に登校を始める。



「ンで、結局オマエの名前はどうなってンだ?」



「あなた、あまりメタ発言は控えてくれないかな。ミサカは御坂琴音(コトネ)だよ」



「琴音……ねェ」

「ネーミングセンスにケチをつけるような発言は止めてくれないかな?」



「はいはい、ったく好きにしやがれってンだ……」



「それにしてもあなた、一緒に登校だなんて久しぶりだね」



琴音は進一の方を向くと嬉しそうに胸の前で手を合わせる。



「そォか?ンなコトねェだろ」

「そんなことあるもん!最近あなたはミサカをほって学校に行っちゃうんだから」



「大体オマエはもう16だろォが。兄貴と一緒に登校なんて歳でもねェだろ」



「ミサカはあなたと一緒に登校したいんだもん!」



「へいへい。善処しますよ」



「あ!てきとうに流したな!わかってるんだからね!」



そうこうしているうちに2人が通う輝日東高校の正門をくぐる。
正門から昇降口まではちょっとした広場になっておりよくある鉢植えなどが設置されている。
そこを他の登校者たちと同じように歩いていく。

「じゃあねあなた、また後で。授業はサボらないように!」



「それはオマエだろ」



軽口を叩いて昇降口で琴音と別れた進一は自分の上履きに履き替えると教室に向かうため廊下に足を踏み出した。
すると。



「よう鈴科!ただどいたどいた!」



下駄箱を抜けた先は丁度昇降口とは垂直になるように廊下が横長に設置されているわけだが、進一の向かって左側。
職員室などが並ぶ方からよく知った声が響く。

「うおおおお!」



そちらを見ると輝日東高校指定のブレザーを纏った黒髪をツンツンに立たせた少年がこちらへ向かって走ってきていた。



「……ハァ」



「よう大将!朝からため息はよくないぞ!」



進一はため息混じりにみをよじって少年を避ける。
とういうのも。

「「「待ってください上条先輩!!!!」」」



たったいま進一の真横を通過した少年、上条当麻は女子生徒の大群を引き連れているからだ。



ドタドタドタ!と複数の足音がせわしなく過ぎていく。
進一は静かにその様子を見送ると何事もなかったかのように教室へと向かうのだった。

というわけで

橘→一方通行(進一)
美也→打ち止め
梅原→上条当麻
でお送りしていきます。
このようにこのssではキャラの入れ替えがありますが、メインヒロインはそのままでいこうと思っています。
また、もちろんアマガミキャラは魅力的なキャラクターばかりですので、どこかで入れ替えたキャラクター達も登場させられれば良いかなと。

本日はこの辺りで。
また次回投下までおやすみなさい。

おいおい上条さんがモテモテなのは梅ちゃんになっても変わらないのか…?
撃墜王混ざってるのか…?

期待

どうもみなさまおひさしぶりです。
>>1です。
投下していきたいと思います。

>>20
上条さんをモテさせるのは最早義務感なところがありますね。

>>21
ありがとうございます。妄想の垂れ流しですが楽しんでいただければ幸いです。

ガラガラっと椅子を引く音が教室にこだまする。
鈴科進一となった一方通行は手提げ型のカバンを机の上に下ろすとゆっくりとイスに座る。
彼はどちらかというと登校が早い方であるのだが、今日は若干の寝坊をかましたため既に教室は他の生徒の話し声でざわめいていた。



「よっ!鈴科」



肩に触れた手の感触の方を見やるとそこには先ほど廊下を爆走していた少年の姿があった。



「今朝も元気だねェヒーロー」



「よせよ!あんなのふざけてるだけだって」



はっはっはと豪快に笑うこの少年は上条当麻。
進一の中学からの親友であり、良き理解者である。

「学校1のモテ男が何言ってやがンだか」



「上条さんがモテたりするわけないだろ。その証にほら、クラスのみんなは俺に興味ないだろ?」



そう言ってクラスを見回す上条。
進一の目には明らかに女子たちが聞き耳を立てている様子が伺えたが上条は全く気づいている様子がない。
彼はそういう人間なのだ。
学年を問わず密かに形成され、人数が膨れすぎて公認と部活と認められそうになっているほどの勢いのファンクラブを持つが本人は全く気づいている様子はない。
もう一度念を押しておこう、彼はそういう人間なのだ。



「まァ何でもいいけどよ」



進一は目を伏せながら静かに笑った。



「そんなことよりだ大将!朗報だぜ〜」

「ちょっと耳貸せよ!」



上条はぐいっと進一の頭を引っ張ると耳打ちを開始する。



「上条さんはこの土日に新たなお宝本を入手したのでございますよ」



ごにょごにょっと耳打ちされた内容に進一は目を鋭くした。



「ほォ……オレの目利きが必要ってワケか?」



「この喜びをお前と共に味わうために俺はまだあの本を開けていない!!!パッケージはもちろん年上女性だ!」



「何だ何だよ何ですかァ!週始めからテンション上げてくれンじゃねェか上条くゥン!」

進一たちが盛り上がっているとガラガラっと教室の戸が開き、進一たちのクラスである2年A組の教師が入ってくる。



「ほらほらお前ら、朝から元気なのは良いことだけどさっさと席につくじゃん」



「いよっ!黄泉川センセー!今日もバツグンですねえ!」



待ってましたといわんばかりに上条は全身ジャージにポニーテールの女性体育教師、黄泉川愛穂に野次を飛ばした。



「はいはい上条。出席してるのは分かったから早く席に戻るじゃん?」



黄泉川は慣れた様子でそう促した。
だらしない格好に気だるげな態度の彼女であるが、面倒見の良い正確に生徒からの人気は高い。
さらに言えば化粧すらろくにしていないが、それでも光るほどの類稀な美貌とプロポーションに男子生徒からの人気はより一層硬いものである。



「じゃあな、大将!お宝本開封の儀は週末に決行だ!」

そう言い残すと上条は自分の席に戻っていく。



これが彼。
鈴科進一の何気ない日常であった。



「つーことで連絡事項はこんなとこなんだが、最後に今日は創設祭の実行委員を決めなきゃいけないじゃん」



黄泉川はほとんど話を聞いてないであろう生徒たちの方を眺める。



創設祭。
進一たちが通う輝日東高校では毎年12月24日に創設祭と呼ばれる学園祭が行われる。



「まぁそれでだ。無理やり誰かにやらすっつーのはもちろん先生の気分も良くないじゃん。だから誰か立候補はいないか?」

ようは学園祭の準備として面倒臭い書類作業や飾り付けなんかを手伝ってくれるやつはいないか?という話だった。



しかし教室はしんと静まり返っていた。
わざわざ進んで面倒を引き受けようなどという見上げた生徒はそうそういないものだ。



「まぁ分かってたじゃん、どうせ抽選に……」



「先生」



すっとよく通った声が黄泉川の言葉を遮った。
教室の真ん中あたりから綺麗に真っ直ぐと伸ばされた手が上がる。
それに続いて静かに少女が立ち上がった。



「誰もいないなら……私がやります」



「おー、絢辻か。それなら大丈夫じゃん、じゃあ任せた」

「はい」



少女は返事をするとにこやかに笑って再び席に座った。



「それじゃ、ホームルームは以上じゃん。お前ら今日もしっかり勉強するじゃん」



黄泉川が教室を後にするとまたにわかに教室はざわつき始める。
1時限目が始まるまで10分ほどの空き時間があるのだ。



「いやー、流石絢辻さんだよな」



いつの間にか進一の席まで来ていた上条が腕を組みながらそう言った。



「容姿端麗文武両道。誰にでも優しい模範生徒と来てンだからなァ。まさに天下無敵ってヤツですかァ?」

「ホントだよなー。上条さんはもう絢辻さんと同じクラスだっつうだけで幸せを感じますのことよ」



進一の席は教室の左後方に位置するが、そこからも中央の人だかりがよく見えた。
その中心人物こそがさきほど実行委員に立候補した絢辻詞である。
進一の言葉通り、常に成績は学年上位で運動もそれなり。
誰とでも分け隔てなく柔らかい物腰で接する上に黒髪ロングストレートが美しい美少女ときている。



クラスの男子の実に約半数は絢辻詞の虜である。



「絢辻さん流石だね、なんでも手伝うから言ってね」



「今度勉強を教えてくれない?」



などなど。
囲まれた生徒たちから様々な声をかけられている。

「まァ絢辻さン人気にあやかろうとしてるっつゥとこですか?さながらハイエナとでも言うか」



「相変わらずキツイな大将。単に魅力的な絢辻さんと仲良くなりたいだけだろ。俺だってそう思うよ」



上条は笑ってそう言った。

「……」



進一は静かに伸びをした。
午前の授業が終わり現在は昼休みに差し掛かったところだ。
クラスの生徒たちは昼食の準備に取り掛かっている。弁当箱を取り出して広げ始める者、学内食堂へと友達を誘う者、ファンクラブの女の子たちから弁当箱の山を受け取っている者、と様々だ。



「ヒーローは相変わらずですねェ」



山積みにされた弁当箱を死ぬ思いで消費し始める上条の姿を見て進一はクスリと笑った。



さて。そろそろ自分も昼食を調達せねばなるまい。進一の家庭はあまり弁当が作られることがないため主には学内食堂で昼食を済ませるが、あまりに注文が遅くなるとメニューの売り切れが発生するのだ。

進一が学食にたどり着いた頃には既に1番人気のメニューであるスペシャルランチは売り切れていた。
しかしこれは想定内である。そもそも彼はそこまで量を食べる方ではないので、学生の喜ぶコストパフォーマンスに優れたスペシャルランチはさほど魅力的に映らなかった。



いつものように可もなく不可もなくの醤油ラーメンを注文し空いている席に座る。



「いただきまァす」



「あ!進一〜」



まさに麺をすすろうとしたその時。何処と無く気の抜けた女の子の声で進一の箸は止まった。

トタトタと足音を立てて一人の少女が近づいてくる。
両手で支えるお盆の上にはライス(大)、唐揚げが5つ、ハンバーグにサラダが一つと味噌汁が載せられている。



「いやいや〜空席を探してたから助かったよ〜」



茶色い癖毛のロングヘアーにベージュ色のセーターを着た少女はゆっくりと進一の向かいの席に座る。
ニコニコと楽しそうな顔は何か良いことでもあったのだろうか。



「よォ、梨穂子」



「えへへ、こんにちは、進一」



にこやかに挨拶を返すその少女は、進一の幼馴染である桜井梨穂子であった。

「それにしてもオマエ。スペシャルランチか。」



「これで350円なんだから買うしかないよねぇ」



「確かにコストパフォーマンスは馬鹿高ェけどよ。ついこの間までダイエットするって言ってたと思うンですがどうなンですかァ?」



「・……ほ、ほら進一、ハンバーグ半分食べる?」



「いらねェ」



「くっ……でも残すのは勿体無いもんねぇ」



「まァ別段痩せる必要もねェと思うけどな。健康的でイインじゃねェか?」

「そ、そうかな〜?でも痩せてる女の子の方がかわいいでしょ?」



「俺は女の子の魅力っつーのは体重や体脂肪率なンてくだらねェモンで決まるとは思わねェけどな。不健康そうなのはNGだが」



「し、進一がそういうならいっか……」



梨穂子はいただきますと元気よく言うともぐもぐと目の前の食事を食べ始める。



進一も自分のラーメンを少しすすった。



「ったく。幸せそうな顔しやがって」



「ふぇ?進一、なんか言った?」



「いや、何でもねェよ」



その後も楽しげに話をしながら二人は食事を共にした。

昼食を済ませて教室へと向かってい進一と梨穂子に声がかかる。



「あ、美琴ちゃん」



梨穂子は振り返ると手を振って少女の名前を呼んだ。



「オイオイ待て待て、どォしてオマエまで出てくンだ!」



肩口で切りそろえた茶色いショートヘア。
前髪の一部をヘアピンで留めている。
明るいキツネ色のセーターを着たその姿。



「御坂美琴さァン!?」



「……なによアンタ、うるさいわね」



進一は会心のツッコミを披露するが対する美琴は怪訝な顔をしている。

「っつーことはアレか?梨穂子の親友がオマエってことか?」



「そーよ、文句あんの?」



「文句っつーかよォ……。俺の妹が打ち止めだっつゥのに同じ学校に瓜二つの他人が居ればオカシイだろォが」



「ったく細かいわねー!しょせんゲーム!設定なんて大したことじゃないのよ!」



「それで、美琴ちゃんはどうしたの〜?」



梨穂子が会話を断ち切るように口を挟む。
進一は諦めた様子でそれ以降はなにも言わなかった。



「桜井アンタ、先生に頼まれごとされてたのすっぽかしたでしょ?」



「うぇ、そうだっけ??わ、忘れてたよ〜」

「もー全く……。まあそれはあたしがやっといたからいいものの、確りしてよねホント」



「えへへ〜、ごめんね〜。今度何か奢るよ」



「それでアンタは用事をサボって旦那様とお食事ってわけ?」



「そ、そんなんじゃないよ〜!鈴科君とはたまたま食堂で会っただけで〜!」



からかわれた梨穂子は両手を大きく振って否定する。



「ふーん。鈴科はどう思ってるの?」



「アン?別にどうもこうもねェだろォ」



ニヤニヤと質問を投げかける美琴であるが進一は動じない。

「ちょ、ちょっと〜、どうもこうもないってどういうこと〜!」



今度は梨穂子が頬を膨らませて進一に詰め寄る。



「な、何がだっつゥの!単なる冗談に過剰反応するンじゃねェ!」



「む〜」



「オマエのせいだぞ御坂!」



梨穂子は拗ねてそっぽを向いてしまう。
進一はび!っと美琴に指をさした。



「あはは、相変わらず仲の良いことで」



そんな様子を美琴は笑って眺めていた。

ということで絢辻さん、梨穂子とのエンカウントです。
香苗ちゃん→美琴。
上条さんの相棒といえば、ということで。
それでは今日はこの辺りで。
次回投下は一週間程度を目処に。
それでは次回までおやすみなさい。

まだかな

かなり放置してしまいました。
投下していきます。

>>42
お待たせいたしました。

「いやー今日も疲れた!帰ろうぜ鈴科」



1日の授業が終わり進一が荷物を片付けていると上条が声をかけてきた。
教科書がろくに入っていなさそうなぺらぺらの学生カバンを背負った上条は頭の後ろで手を組んで真一を待っている。



「何が疲れただ、オマエはほとんどの授業で寝てンだろォが」



「いやあ痛いところを叩かれましたなあ」



上条は頭を掻く。



「それはそうとヒーロー。すまねェが今日は先に帰っててくれ」



「ん?どうした、用事でもあるのか?」



「あァ。今日はお宝本の定期点検の日だからな。確認してから帰る」



「なるほどそういうことか。だったらちょうどいい、コレを渡しとくぞ大将!」

上条は紙袋をざ!っと進一に差し出す。



「朝言ってた最新のブツだ。丁重に扱えよ?」



受け取った進一に耳打ちしてニヤッと笑う上条。



「全く、オマエは食えないヤロォだ」


進一も合わせてニヤリと笑った。



暫く二人で笑いあうと上条は先に帰っていった。クラスに残っていた女子たちに微妙な目を向けられたのは言うまでもないが、二人は気付いてすらいない様子だった。
このような男子特有の世界観を醸し出すおかげで、学園中にモテモテの上条であるが、クラスからの人気は少し薄い傾向がある。



とはいえクラスの女子の半数ほどは上条ファンであることに変わりはないのだが……。



進一はそのまましばらくクラスで荷物整理をすると、クラスから自分以外の人気がなくなったことを確認してから教室を後にした。

向かう先は昇降口ではない。
進一は二年生であるためクラスも後者の二階に1するのだが、階段をさらに上がっていく。
3年校舎がある3階を通り過ぎさらに一つ上の階、つまりは屋上に到着する。



屋上の扉をゆっくりと開けると、そこにも人気がないかを慎重に確認する進一。



誰もいないことを確認すると屋上の片隅へと向かう。
そこには床に扉が設置されていた。
進一は南京錠の鍵をカバンから取り出すと静かに鍵穴を開け、扉を開けて梯子を降りる。
中に入った後はしっかりと内鍵を施錠する。



そこは美術準備室のような教室だった。
しかし備品の多くには埃が被っており、廊下側の窓やドアの磨りガラスには新聞紙が貼られている。
実はここは現在は使われていない教室の一つなのである。
そんな全てが時代に取り残されたかのような小さな教室の片隅に段ボール箱が一つ。



進一は静かにその段ボールを開く。



「寂しかったかァオマエらァ」



別に話かているが秘密のペットを飼っているなどというわけではない。
そこには進一のコレクションするお宝本が山積みに収納されていた。



そう。彼鈴科進一は学校にお宝本のコレクションを隠しているのである。

「しかし最初にここを見つけた時はビックリしたがなァ。今は勝手に南京錠をかけて自分の教室にしちまってるけどよォ」



進一はお気に入りのお宝本をすうさつとりだすと逆にカバンからお宝本を取り出し、交換するように段ボールへしまう。



「ただこういうスリルが堪ンねェよなァ。いつこの教室が再び使用されるかも分からねェ。ましてや出入りする所を見られるかもしれねェ。秘密基地の延長ってトコですかァ?」



長々と独り言を話すと進一は秘密の部屋を後にする。



屋上にでて南京錠をかける。
しっかりと施錠されていることを確認すると帰宅のために立ち上がった。



「あー!ごめんね遅くなって!」



ビクッと進一の方が震える。
後ろから声がしたからだ。
そちらを振り返ると一人の女子生徒が屋上に出てきた所のようだ。

とりあえず自分が秘密の部屋に出入りをしていた所を目撃された様子はないので進一はほっと胸をなでおろす。



トテトテと走ってくる少女。
輝日東高校の制服を見事に着こなした少女は見覚えがある。



すらっと伸びた手足に高い慎重。
まさにモデル体型というやつであろうか。あまり身長の高いほうではない進一と並ぶともしかすると少女の方が高いかもしれない。
黒いロングヘアは毛先だけクルリと円柱を形作るかのようにゆるいカールを描いている。
頭には小さな花柄がアクセントに入った黒いカチューシャをしている。



スッと伸びた鼻筋と少し深めの彫りにパッチリと開かれた両目は彫刻のような美しさを醸し出していた。
しかし本人が放つフランクな雰囲気により堅いイメージは一切感じられない。



進一はその少女を知っていた。
というより、輝日東高校に通う学生で彼女を知らない者はいない。
創設祭で行われるミスコンテストで二年連続優勝を果たす学園のマドンナ。



森嶋はるかであった。

こちらに駆けてきた森嶋はるかは進一の前までくるとピタッと立ち止まる。



「ごめんね、気持ちは嬉しいんだけど、アナタとは付き合えないや!」



そういうとサッと頭を下げた。



数秒。進一の思考が停止する。



「……は?」



「じゃあ、そういうことだから!頑張ってね!」



ひらひらと手を振って森嶋はるかはそのまま屋上から立ち去ってしまう。



「……なンだ……?」



「まあ、分かりやすく言えば、振られたってことになるのかな」



真っ白になっている進一は少女の声で我に帰った。

今まで気づいていなかったが進一の前には今度は違う生徒が立っていた。
切れ長の目に短い髪を後ろで結っている。



「ああ、自己紹介が遅れたわね、私は塚原というものよ。はるかとは昔からの友達なの」



そうだ。彼女の名前は塚原ひびき。森嶋はるかにいつも付き添い、たびたび事後処理をしているという……。



「ごめんね、はるかはああいう子だから。悪気はないのよ?」



「話も聞かずに断っちゃって、ほんとうにごめんなさいね。でも貴方だけじゃあないから、元気を出して。良くあることなのよ。それじゃあ」



そう言い残すと塚原ひびきもその場を後にする。



「一体……振られた……?」



「告白もしてねェのに振られるって………どォいうコトだ???」



結局進一はその日、頭を真っ白にしたまま帰路に着いたのだった。

今回は森嶋先輩とのエンカウントでした。
次回はまた一週間程度を目標にしたいと思います。
それではまた次回まで、おやすみなさい。

乙です

みなさまこんばんは。
>>52
ありがとうございます。

それでは投下していきます。

「どうするべきだろうか……」



小さな声で呟いて頭を抱えるのは上条当麻。
彼の机の上には白紙のままの紙切れが置かれており、その脇にはシャープペンシルが転がっている。



「どォするもこうするも、単なる進路調査だろォが」



「だからその進路をどうするかってんだよ!」



声をかけたのは進一だった。
彼はというと上条の前の席でちょうとイスの背もたれを抱きかかえるように反対向きに座っている。



「そりゃあ学年1の秀才さんである鈴科進一様にはたくさんの進路があることでございましょう!けれども!私こと上条当麻は勉強はからっきしで進路なんてのは非常に道が狭いわけなのでございますよ!」



「ったく……うるせェったらありゃしねェ」



喚き散らす上条に対して進一は耳を塞いだ。

「な~によあんたら。朝から元気ね」



「大体オマエは昔から将来は家業を継ぐって話だろ」



「いやー、そうなんだけどよ、一応進学も視野に入れて考えてるわけであってだな」



「ねえ、ちょっと」



「だいたいからして遊びたい盛りの10代後半と20代前半を寿司屋の板前で過ごすというのはいかがなものか!大学に進学すればまだまだ素敵な出会いが待っているのでは!と上条さんは思うのですよ!」



「お~い」



「だったらそのまま進学って書いときゃイイじゃねェか」



「そうなるとだなぁ、志望校ってのを決めないといけなくなるわけでな?大将はどうしたんだよ」

「俺か?俺は東京の学園都市内から研究室に推薦が来てるンだよ」



「は~ん、あんたら、このアタシを無視しようってわけね」



「か~~っ!やっぱり成績第1位の男は違うねえ!」



「大袈裟なンだっつゥの。文系科目はそこまで得意でもねェしっ____!!」



ガブリ。
進一の左耳にかすかな痛みがはしる。



「おォっ!?」



「んっふっふ~わはひをはひぬほうなんへはふねんははいはよ」



「あっははは、大将、こりゃいっぱい食わされたな」



さて、状況を説明しよう。
現在進一の左耳には女の子が噛り付いていた。
パーマのかかった黒髪のショートヘアを振り乱して暴れる進一に必死に食らいつく少女。
男勝りな印象を受けるのは綺麗な斜め眉のせいだろうか。

「わ、悪かった!悪かったから離せ薫!!」



「ふっ、分かればいいのよ分かれば」



耳を話すと腕を組んでニヤリと笑う少女は進一と上条の中学校からの悪友である棚町薫だった。



「大将が棚町さんを無視しだした時はどうなるかと思ったぜ」



「ひどいわねえ、学年1の美少女であるアタシが話しかけてあげてるっていうのに」



「全くだぜ、鈴科と棚町さんの固い友情はどこいっちまったんだ?」



「オマエだって悪ノリして無視してだろォが!こういうことになると思ったから相手してなかったンだよ!!」



耳のショックから立ち直った進一の渾身のツッコミが炸裂する。

「あはははは、まあまあ落ち着きなって進一」



薫は怒る進一を見てさらに一際大笑いする。
昔から進一をからかってはリアクションを楽しむことが多い。
そんな彼女であるが、フランクで付き合いやすく、小さいことを気にしないさばさばした性格と男勝りな印象を与えるが綺麗に整った容姿で学年では優等生の絢辻詞と二分する人気を誇る。



「はー笑った。それじゃあね、進路頑張って」



ひらひらと手を振ると薫は自分の席の方へ戻って行ってしまう。



「一体何だったンだよ……」



「か~~っ、分かってないな大将。棚町さんはお前を元気付けようとしたんだよ」



「元気付けるだ???」



「鈴科。お前は結構何でも顔に出るタイプだぜ?別に何も聞きゃしねぇけどよ。昨日何かあったろ?」



「……」



思い当たる節がないわけではない。
昨日の放課後。
突然学園のマドンナである森島はるかに振られた。朝からそのことを考えてはいたが……。



「あの薫が俺に気を使ったっつゥワケか……」



「なんだかんだで鈴科のことをよく見てるってことだろ。俺だってそうだ」



話しているうちにチャイムが響く。



「ま、悩みすぎんのは良くないってことだろ。じゃあな鈴科、また後で」



進一は友人たちから心配されているということを考え、若干照れながら席に戻った。

「ふい~~、よし、そんじゃ学食に行くとするか!」



「オマエはいつの間にこっちに来てンだよ」



午前の授業が終わるといつの間にか隣に立っていた上条へと進一は呆れながら笑いかけた。



「なに言ってんだよ大将、昼飯は学園生活の一大イベントだろ?そんじゃあさっさと行こうぜ!」



「わかったわかった。分かったから引っ張ンじゃねェ」



進一は上条に半ば引きずられる形で教室のドアをくぐる。二年教室が並ぶ長い二階廊下に出るとたん。



「あーーーーっ!いたあ!!!」



と、大声が廊下に響く。
上条は思わずびくっと首をすくめている。

どたどたと後方から誰かが走ってくる音が聞こえてくる。
どうやら声から察するに女子生徒のようだが、この声はどこかで………。



「君だよ君ー!探したよー!」



叫んだだれかはガシッと進一の肩を掴むとぐらぐらと揺さぶる。揺られながらも辛うじて後ろを確認するとそこには。



「も、森嶋先輩!?」



叫んだのは上条の方だった。
今まで森嶋はるかに掴まれていた肩がぐいっと今度は上条に引っ張られる。



「お、おい鈴科。どうなってんだよ、どうしてお前があの森嶋先輩と知り合いなんだ?」



上条は進一に肩を組む形で進一にそう質問する。



「あーー、なンつゥか。簡単に言うとフられたってのか?」

「なっ!?お前あの森嶋先輩に告白したのか!?」



「なわけねェだろォが!何だか知らねェけど勝手にフられたンだっつの!」



上条が驚きを隠しきれずつかみかかるほど森嶋はるかは人気で、かつ。様々な男子をフり続けていることで有名なのだ。



「その件で謝りに来たのよ!」



再び森嶋はるかによってぐるっと方向転換させられる。



どうやら進一と上条の話が聞こえていたようだった。



「ンで、謝るってのは何なンですか?」



むすっと答える進一。

「うっ、やっぱり怒ってるよね……。告白してきた子を間違えちゃうなんて……」



森嶋はるかはとてつもなくバツが悪そうな顔で手を顔の前で合わせる。



「ああ、先輩。それなら気にしないでください。コイツ気にしてないですよ」



上条が横から割って入った。



「え、でもでも、こんなに怖そうな顔しちゃってるじゃない?」



「あー、なんつうか。コイツ表情筋が硬いんすよ。だから今のコイツは全然怒ってない。目つきが悪いのは生まれつきなんすよ」



「ほ、ほんとに?」



「ほんとのほんと。親友の俺が言うんですから間違いないですよ、なあ鈴科」



「だァれの目つきが悪いンですかァ?」



ガシッと上条の頭を掴むと片手でギリギリと力を入れる進一。
どうやら目つきが悪いことを気にしているらしい。
上条を睨むその目はどこからどう見ても凶悪な目つきであるが。

「とにかく。先輩は悪かったと思ってンですよね?」



「う、うん、ほんとごめんね?勘違いしてて」



「だったらオレのコトはもうイインで。それより元のラブレターを出したヤツのトコにさっさと行ってください」



「えっ?」



森嶋はるかは素っ頓狂な声を上げた。



「だから。別にオレは気にしてないンで、本人の元に行ってやって下さい。そっちの方が重症でしょ」



「……」



「……何なンですかァ?オレの顔に何か付いてますかァ?」



ぽかんと口を開ける森嶋はるかに向かって進一はぐいっと顔を近づける。



「ふふ、アナタ、面白い子ね」

「あァ??」



今度は進一が調子の外れた声を上げた。



「てっきりもっと怒られると思ったのに、なんだか心構えして損しちゃったかしら」



「オイオイ何なンだコイツは」



急に楽しそうにし始める森嶋にあきれた様子の進一。
そもそもからして急にフられたり謝りに来たかと思えば楽しそうに笑ったり、不可解な事が多い人間だ。



「なんどもごめんね。はるかには悪気はないのよ」



「あ、ひびきちゃん」



森嶋の横からずいっともう一人の女子生徒が顔を出す。
昨日の夕方にも会った、森嶋はるかのフォロー役で名高い塚原ひびきだ。

「それは分かったっつーの。イイから早くもう一人の……」



「ふふ、ご心配なく、そのことなら解決済みよ」



「あなたの所に来る前にしっかりはるかに謝らせに行ったわ」



そう言いつつ塚原ひびきも笑顔を見せる。



「そォですか。だったらとっとと帰って下さい」



進一はそう言うと踵を返して食堂へ向かおうとする。
そもそも昼休みであり、食事をしないといけないという事実を今の今まで忘れていた。



「おいおい待てよ鈴科。お前の人を拒絶する性格は相変わらずだな……」



上条が鈴科の後を追いかけようとするが。



「あ~ん、あなたって不思議な子ね!」



がしっ!と進一の頭が急に何かに捕まった。

「うォっ!」



「何ていうのかな、あなたみたいなタイプの子には初めて会ったわ!つれない感じが猫ちゃんみたいね!!」



がしがしと頭を撫でられる感触が広がる。後頭部には柔らかい感触がしないでもない。



進一は森嶋に後ろからがっしりと頭を掴まれて胸にだかれ、無理矢理に撫でられているのだ。



コイツ……!見た目より胸がありやがる。流石は二年連続ミスサンタコンテスト優勝者って訳か……。侮れねェ破壊力だぜこりァ……!!



外見をどれだけ取り繕おうとも中身は一男子高校生である進一の思考は紳士的な方向へ一直線である。



「てめー鈴科!ラッキースケベだと!それは主人公の特権だぞ!?」



「はいはいはるか。その辺りにしておきなさい。また悪目立ちしてるわよ」

羨望の眼差しで進一を引き剥がしにかかる上条と、森嶋はるか専用事後処理担当である塚原ひびきの働きでなんとかふかふか地獄から脱出した進一。



「あ、危なかったぜ……もう少しで……」



「何が危なかっただよ!完全アウトですよこのやろー!お前だけ良い思いしやがって!」



冷静に平静心を取り戻そうとする進一に食ってかかる上条。



「あはは、あなたたち本当に面白い子ね」



「そうでしょ!?流石ひびきちゃん!分かってるわ!」



そんな様子を見て塚原ひびきと森嶋はるかも笑っていた。



「とにかくだ上条ォ。オレはこれ以上のやっかいはゴメンだ」



そう言い残すとだっ!と駆け出す進一。
元々目立つことを嫌う性格である進一はこのまま森嶋といるともっと面倒な事になっていくのを察知していち早く逃げ出したのだ。



「ま、待てよ大将!あの森嶋先輩の"盛り島"の感想を聴きだすまでは今日は返さねぇぞ!」



意味不明なことを叫んで走り出そうとする上条。



だがその前にくるっと振り向くと。



「じゃ、そういうことなんで森嶋先輩、塚原先輩!アイツはあんな奴ですが悪い奴じゃないんで仲良くしてやってください!今日はこのあたりで失礼します!」



と律儀にぺこりとお辞儀をすると進一を追って食堂へと走り出すのだった。

というわけで本日はこの辺りで。
薫遭遇と森嶋先輩イベントでした。
ではまた一週間程度で。
おやすみなさい。

乙です

おそくなりました。
投下していきます。

>>69
ありがとうございます。

「いや~今日も一日が終わったなー」



最後の授業が終わり、ざわつき始めた教室で伸びをしながら上条がこちらへ近づいてくる。



「それにしてもまさかあの森嶋先輩と知り合いになるとはな」



「嬉しそうな顔しやがってよォ」



「そりゃあそうだろ大将!全校生徒の憧れ、あの!森嶋はるかだ、嬉しくもなっちまうってもんさ!」



「そンなモンかねェ……俺には面倒臭そうな予感しか……」



「ちょっとあんた!」



突如として放課後の教室に怒号が響いた。
誰もが動きを止めて一瞬声の発信源を見る。



「聞いたわよ~~」



そちらにはずんずんと足音でも鳴らしそうな勢いでこちらへ向かってくる少女がいた。

「なんだよ御坂か……」



「なんだとは何よ失礼ね!」



がしっ!と注目の的であった御坂美琴が上条に掴みかかる。



その光景を見てクラスの面々は徐々に上条と御坂から興味を失っていく。



「あんた今日あの森嶋先輩と一緒にいたそうね!それも聞くところによると抱きしめられたとか!」



「なっ!?ちょっと待て!」



「ほォら始まった」



「言い訳があんなら言ってみなさい!」



「誤解でしてよ!上条さんは森嶋先輩に抱きつかれてなんかいません!それは鈴科の方でだな!そりゃあもちろん羨ましくはあったが……」



「羨ましかった~~……!」



ぎゅっと更に上条を掴む手に力が入る。

ぐえっと潰れたカエルのような声を出す上条。



クラスに残っていた生徒たちは、またいつもの痴話喧嘩が始まったよ……とうんざりした眼差しを向けていた。
コレが上条当麻人気が同学年に低い理由の一つである。
彼に迫るということは御坂美琴をかいくぐる必要があるのだ。



「オイオイいい加減に痴話喧嘩は止めやがれよ」



「そ、そんなんじゃないっての!」



痴話喧嘩という言葉に反応して御坂がばっと手を離し、顔を真っ赤にしてぶんぶんと手を顔の前で振る。



「俺が何したってんだよまったく……」



上条はというと制服のシワを直していた。



別にこの2人は付き合っているわけではない。
それどころか恐らく上条は御坂の好意に気づいてすらいない。
そういう関係の2人なのだ。



「まァとにかくだ。上条の言ってるコトはマジだ。絡まれたのは俺の方だ」



「……」



御坂はしばらく黙って進一と上条を交互に見つめた。



「ま、今日のところは勘弁しといてあげるわ」



「勘弁も何も!上条さんは許してもらう必要などないと思うのですが!」



「オマエは黙ってろ面倒臭ェ!」




げし!と上条の脳天にチョップをかます進一。



「な、なぜ俺ばっかりこんな目に……」



御坂はそそくさと教室を出て行ってしまう。

「ま、元気出せよ。オマエが悪い部分もあるぜ、確かに」



「全く心当たりがないのですが……」



「強いて言えばそういうトコロだわなァ、カカカ」



進一は小さく笑った。



「よし、仕方ねェ上条。元気がつく場所に連れていってやるよ」



「元気がつく場所?」



「ついてくりゃ分かる」



ニヤリと笑って教室を出て行く進一。上条には言われた通りついて行くしかなかった。



「おいおい一体どこに行くんだよ?こっちは体育館の方だろ?」



「分かってねェな上条。体育館の側にあるモンだ」



「体育館の側にある……?」

「今は冬だな?上条」



「そりゃあ誰だって分かってるだろ、もう12月だからな」



「ウチには体育館の側に温水プールがあるな?」



「……!」



「本来ならプールは冬の間使わないわけだが、ところが我が校は温水プールがあるわけだ」



「つまり水泳部の練習が……」



「冬に行ってる女子の水泳の補修が……」



「「見れる!」」



ガシッと2人は固い握手を交わす。




「流石だ鈴科。流石は紳士たる男だ」



「当たり前だ」



「さァ、そろそろだ」



「おい鈴科、こっちはプールの裏側だぞ?」

「オマエ正面から入って水泳部でもない俺らが入れてもらえると思うのかよ」



「そ、それもそうだな」



「こっから体育館の非常階段の方へ登ればだな……」



言いながら進一は鍵がかかった鉄格子状の扉に足をかける。
普段は体育館の非常階段は使えないように施錠されているのだ。



「登れば、どうなるんですか?」



「その先に楽園がだなァ……って、あァ?」



「?どうしました、先輩」



聞きなれない少女の声に振り向く進一。
するとそこには見慣れない少女の姿があった。
短く切り揃えた黒髪に少し目尻の上がった目は、なぜだか黒猫を連想させる。



「い、いや、その……やっぱり鈴科、忘れ物は今度にしようぜ、な……??」



あろうことか。女子生徒に覗きの現場を押さえられかけている。
上条は必死でフォローをいれた。

「あ、あァそォだな上条。ソレが良い」



ガチャガチャと音を立てて扉から降りる進一。



「忘れ物、ですか」



「そ、そォなンだ。体育の授業に忘れちまってよ」



「ふぅん。それなら、職員室にあるんじゃないでしょうか?なんなら私が連れて行きましょうか?」



黒髪の少女はにこりと笑ってそう言った。



「い、いや!今日は大人しく帰るとするか!大将!」



「そ、そォだな!そうしよう!」



だっ!と文字通り逃げるようにその場を後にする進一と上条。



「……アレがうわさの上条先輩と鈴科先輩ですか。なんというか、噂通りの方たちなんですね」



少女はポツリと呟くとプールの裏を後にした。

短いですが今日はここまでで。
七咲とのエンカウントでした。
続きはまた次回ということで。
おやすみなさいませ。

みなさまあけましておめでとうございます。>>1です。
2017年もよろしくお願いします。
続きは必ず書きますので、もうしばらくお待ち下さい。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom