岡崎泰葉「星辰の空の下で」 (28)
―――帰り道
――プラネタリウム、良かったですね。
また一緒に来られて嬉しかったです。ありがとうございました。
ふふ、私すっかりプラネタリウムにハマってしまって。
都会ではあんなにたくさんの星を見ることなんてできませんから。
さて、次はいつにしますか?
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……え? ええ、またご一緒できればいいな、と思ってますよ。
春、夏、秋、冬……。どの季節の星座もきっと素晴らしいと思います。
天体の勉強にもなりますし。
プロデューサーも静かな場所なら、息抜きになるんじゃありませんか?
……ふふ、良かった。そう言ってくれると思っていました。
少しでも英気を養ってもらわないと、お仕事にも支障が出てしまいますからね。
……なんて、今のは建前で。
本当は……プロデューサーと、少しでも一緒にいたいからです。
事務所では、こんなふうにふたりきりで話せる時間なんてほとんどありませんから。
あったとしても、レッスンやお仕事のことだったり……。
それでも私、嬉しいんです。
いつも真面目なお話ばかりですけど、プロデューサーと言葉を交わすのが……とても嬉しいの。
いつまでも話していたい、私を見てもらいたい……そう思ってます。
……もっと正直に話しますね。
プラネタリウムの最中も……ずっと見てました。プロデューサーの横顔。
……ごめんなさい、せっかく連れてきてもらったのに。
でも、どうしても……プロデューサーのことが気になってしまって。
星は見れました。……プロデューサーの瞳に映った星。
まるで未来を見ているようで……純粋で、真っ直ぐな瞳……。
素敵でしたよ。
照れないでください。……恥ずかしいことを言ってる自覚はありますけど。
で、でも伝えたかったんです。この暗い夜道なら、お互い顔も見えにくいでしょう?
今しかないと思って……だから……その。
…………。
…………。
……あの。
手、繋いでくれませんか……?
…………。
温かいですね。プロデューサーの手。
それに、……大きくて、優しい。
年少の子たちのこと、よく撫でてあげてますよね。
大人気なんですよ、プロデューサーは。
ええ、桃華ちゃんや薫ちゃんから聞いています。撫でてもらうとふわふわして嬉しくなる、って。
ふふ、薫ちゃんは素直ですけど、桃華ちゃんは……いえ、なんだかんだ嬉しそうに話してくれますよ。ほんとです。
……それで、ですね。
わ、……私も。
頑張ったら……ちょっとだけでも、いいですから。
な、撫でてくれたら……とっても……。
あっ! い、今じゃないです! そうじゃなくて、お仕事でいい成果を上げられたときとか……!
誰もいないからとかじゃなくて、あ、あうぅ……!
……、こ、こんなふうにいつも?
そう、ですか……。いつも、こう……。
ぇへへ……。
こんな、幸せな気持ちになれるんですね。
もっと早くにお願いすれば良かった……。
…………。
もっと、近くに……。いい、ですか……?
腕、絡ませられるくらい……もっと。
ん……。
どきどき、伝わってますか?
プロデューサーといるだけで、こんなに鼓動が早くなってしまいます。
どうしてだと思いますか?
……私の言っている意味、伝わっていますか?
私。……私は、プロデューサー……あなたのことが――
――好きです。
.
…………。
…………。
……分かってます。バカなこと言ってるって。
でも仕方ないじゃないですか。好きになってしまったんですから。
あなたのことが。
一番最初のレッスンのとき、言ってくれましたよね。
自分を表現してみて、って。
それを思い出して、毎日、毎晩、考えました。
自分のことを……自分のこの気持ちのことを、何度も。
アイドルの仲間やあなたと交流して、笑顔をもらって。
お仕事を……この世界を楽しむことを思い出すことができたんです。
あなたのおかげなんです。
あなたが手を引いてくれた。
あなたが励ましてくれた。
あなたが笑ってくれた。
……それだけなんです。それだけ、なのに。
気づいたら、好きになってたんです!
……こんな気持ち、心の奥にしまっておくべきだって思いました。
伝えてしまったら、今までの関係がすべて崩れ去ってしまうんじゃないかって、怖くなりました。
それ以前に、アイドルとプロデューサーです。……許されるはずありません。
それでも、しまい込むにはこの想いは大きくなりすぎてて……。
怖くても、許されなくても……もう自分にウソ、つけなくなっちゃってて……!
……ごめん、なさい。
ごめんなさい、ごめんなさい……!
好きになってごめんなさ――
あっ。
あ、ああ……!
ダメ、ダメ……です……。放して、抱きしめ、ないで……!
なんであなたが謝るの……なんで、私が悪いのに……!
気づけなくてごめんって……なんで……っ?
ダメなのに、こんな、こんなのっ……!
うぅ、……ぁぁあ……っ!
すき、好きでいて、いいんですかっ……!?
こうしてっ、ずっと抱きしめて……くれるんですか……!?
デート、またプラネタリウムにっ……、デート、してっ、ぇぐ、くれるの……!?
いっぱい、いっぱいっ! 好きって……ぐしゅっ、好きって言ってもぉ……! ぅうう……!!
――うぁあああぁぁぁあん……!!
―――
すんっ。
すみません、泣きっぱなしで。
……もう寮に着いたんですか。ありがとうございます、手を引いてくれて。
子どもみたいでしたよね……ふふ、なんだか気持ちがごちゃごちゃしちゃって。
気持ち、全部ぶつけたからかな……。今はもうすっきりしました。
――あ。ちょっといいですか?
好きです。好き、大好き。
うん、満足しました。
……どうしました? 言いたくなっただけです。
ふたりのときはもう素直でいようと思いまして。
大丈夫、誰も聞いてませんよ。私たちだけです。大好きです。
……ふふ、照れた顔も素敵ですね。
もっと言ってもいいですか?
ダメ? ふふふっ。
今度のデートも楽しみです。
プラネタリウムじゃなくて、本物の星空を見に行くのも楽しいかもしれませんね。
もちろん大好きなあなたとふたりで。
ええ、隙あらば言っていきます。それこそ星の数に負けないくらい言い続けます。
大好き。
……あ、どうせなら私の故郷の長崎まで行きませんか? 海が綺麗ですし、きっと星もよく見えますよ。
ついでに両親に挨拶も……ごにょごにょ。
いえ、なんでも。好きって言ったんです、好きって。
それじゃまた明日、事務所で。
さすがにみんなの前では言いませんから安心してください。
……ん。撫でてもらうの、癖になりそう……。
うん、たくさん撫でて……。ふふ、えへへ……。
好きです、全部好き。
あなたが大好き。
――そういえば、まだ聞いてません。
あなたの口から。
……どうして渋るんですか。私だけバカみたいじゃないですか、こんなに好き好き言って。
羞恥心がないわけじゃないんですよ、気持ちが上回っているだけで……。
さ、早く。もしかしたら寮から誰か出てきてしまうかもしれません。
好き、って。ほら――
「愛してる」
.
――――は。
……………………え。
……あ、はい。おやすみなさい。
――違います待って!
言い逃げは卑怯です! わ、私も……あ、あい……あぁもう!
愛してますっ!
――振り返って笑った彼の頭上、遥か天空に、一筋の流れ星が見えた。
おわり
というお話だったのさ
プラスタ泰葉がなんか今までにないくらいすごいデレてくれるすごい
(星辰揃えるってなぁに?)
クトゥルー神話のことなのか
すまん関係ないんだ
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