【ガルパン】 タイムドラッヘ (164)
全国大会一回戦 大洗女子学園vsサンダース大附属 試合終了直後
茨城県某所 上空
ババババババババ
麻子「……」フルフル
沙織「麻子、大丈夫、きっと大丈夫だよ」
麻子「そんなのわからない。おばあは昔から心臓が弱かったんだ」
麻子「ちゃんと健診にいけって言ってたのに……こんなことなら、無理矢理にでも行かせるべきだった」
沙織「麻子のせいじゃないよ。あの麻子のおばあちゃんなら絶対すぐ元気になるって!」
麻子「いや、私のせいだ。私がしっかりおばあを見てれば……もっと帰ってれば……」
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エリカ「……」
麻子「いやだ……もう後悔したくないのに……おばあ」
エリカ「……うるさいわね!うじうじするな!」
沙織「ちょ、ちょっと!麻子は今…・・」
エリカ「後悔したところで昔には戻れないのよ!そんなことで悩むならこれからどうするかを考えなさい!」
麻子「……わかってる」
エリカ「ほら、もうすぐ病院につくわよ」
沙織「もしかして、麻子を励まそうとしてくれたの?」
エリカ「は?何言って……」
ガクンッ!!
エリカ「なっ!?」
沙織「きゃっ!何!?」
グラグラグラ
麻子「かなり揺れてるぞ」
エリカ「わ、わからないっ、急に機体に衝撃が……とにかく掴まって!」
ヒュゴゴゴゴゴゴゴ
沙織「ちょっとこれ、落ちてない!?」
エリカ「黙ってて!今機首を上げる……!」
グルングルングルングルン
麻子「うぐっ……」
沙織「わわああああ!?」
エリカ「戻れっ……!上がれっ!!」
グググッ
==================================
エリカ「はっ!?」ガバッ
沙織「あれ?ど、どうなったの?」
麻子「うー……」
ババババババ
エリカ「……機体は安定してる」
沙織「良かったぁ……」ホッ
麻子「全員、気絶してたのか」
エリカ「みたいね。危ないところだった……」
沙織「それってまた墜落しそうになるんじゃないの!?」
エリカ「とりあえず大丈夫よ。病院が見えてきた。さっさと着陸して点検するわ」
ババババババ シューン
ガチャ
エリカ「着陸成功。ほら、早く行きなさい」
麻子「……いつか恩は返す」ペコリ
エリカ「必要ないわ。隊長に言われたから乗せただけよ」
病院職員「ちょっと君たち!ウチのヘリポートで何してる!?勝手に着陸したのか!」
沙織「この子のおばあちゃんが緊急入院したんです!」
麻子「名前は冷泉久子。そっちから私に電話が……」
エリカ「うちの隊長が着陸許可をとってるはずなんですけど」
病院職員「そんな連絡はもらってないですね。そういうことならご家族の方は案内しますが、ヘリはすぐに移動させてください」
エリカ「隊長が連絡を忘れるはずがないから、何かの手違い?……まあいいわ。あとは自力で帰れるわね」
沙織「う、うん。ありがとう」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
麻子「……いない!?間違いなくこの病院から電話をもらったのに」
職員「そう言われましても……とにかくそのような方が搬送されたという記録はございません」
麻子「そんなバカな」
沙織「おばあに電話してみたら?」
麻子「うん……駄目だ、圏外になってる」
沙織「じゃあ私の……も圏外だ。ていうか病院で携帯使っちゃダメじゃない?」
麻子「こっちに公衆電話があったはずだ」タタッ
ピッピッピ プルルルル
久子『もしもし』
麻子「!!おばあ!大丈夫!?」
久子『いきなりなんだい!?』
麻子「びょ、病院からおばあが倒れて運び込まれたって電話が」
久子『馬鹿なこと言ってるんじゃないよ!人を病人扱いして!私はピンピンしてるよ!!』
麻子「だ、だって……うん、ご、ごめん。じゃあ切るから」
久子『高校生になったばっかりなんだから、私の心配じゃなくて自分の心配をしな!』
麻子「……え?」
久子『今度寄港するときはちゃんと顔出すんだよ!』
プツ ツーツー
沙織「元気そうだね……受話器から声がはみ出して聞こえたよ」
麻子「よくわからんが、良かった……だが沙織、嫌な予感がする」スタスタ
沙織「えー、なに?どこ行くのよ?」
麻子「そこの、受付にあるカレンダーを見てみろ」スッ
沙織「んー、あれ、年が1年前になってる?」
麻子「……売店に行くぞ」スタスタ
沙織「待ってってば!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガチャガチャ
エリカ(計器類もエンジンも異常なし……これなら飛ばせるけど、一体何であんなことが……)
沙織「良かった!まだいた!大変だよ!」タッタタ
エリカ「??なに?もう済んだの?」
麻子「驚かないで聞いてくれ」
エリカ「いやだから何よ?」
麻子「私達は、1年前の世界にタイムスリップしてる」
エリカ「は???」
沙織「信じてもらえないかもしれないけど、本当なんだよ!みてこれ!」
バッ ガサッ
エリカ「新聞……?日付は1年前、確かにこのニュースも見覚えあるけど、何?
これで私を騙そうとしてるわけ?」
沙織「違うよ!マジで売ってたんだから!」
麻子「新聞だけじゃない。テレビも見たし、町も少し歩いたが、間違いない。ここは1年前の世界だ。
ヘリでみんなが気絶したあの時、何かが起きたんだ」
エリカ「そんな、映画じゃあるまいし……」
麻子「親にでも電話してみると良い。すぐに本当だと分かる」
沙織「なぜか携帯はずっと圏外で使えないから、逸見さんのも同じだと思うけど」
エリカ「……確かにね。さっきから隊長に連絡とろうとしても繋がらなかったし」
麻子「公衆電話がある」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エリカ「……」ピッピッピ
プルルルル
まほ『はい』
エリカ「あっ!隊長!」
まほ『ん、誰だ?公衆電話からと表示されていたが。ウチの隊員か?』
エリカ「エリカです!ちょっとトラブルがありまして」
まほ『……ふざけるのはやめてくれ。逸見ならここにいる。確かに声は似ているが……』
エリカ「……え?」
『隊長、私に御用ですか?』
まほ『いや、なんでもない。いたずら電話だ。それよりみほは何処に行った?』
『副隊長なら……』
ガチャンッ
エリカ「……あ、あ、ありえない!」ガクガク
沙織「どうしたの!?」
エリカ「私がいた……!電話のむこうで隊長と一緒に、私がいたのよ!それに、副隊長って……」
麻子「そうか。1年前の世界には1年前の私達もいるんだな。迂闊に知り合いに電話するべきじゃなかった」
エリカ「……信じたくないけど、もう受け入れるしか無いわね」
沙織「どうしよう、私達戻れるの!?」
麻子「わからん。SFでよくあるのは、時空の裂け目みたいなものに私達が入ってしまったパターンだな。
気絶した時と同じ場所にもう一回いけば、そこから戻れるかもしれない」
エリカ「来た空路を引き返すってことね」
沙織「何もやらないよりはいいよ!そうしよう!」
エリカ「待ちなさい。もう日が暮れてるわ。
このドラッヘは最新の航空機と違ってレーダー類は無いに等しいから、夜間飛行は危険よ」
麻子「なら明日まで待つしか無いか」
エリカ「そうね。とりあえず病院から離れて、人目の付かない山の中にでも駐めるわ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
茨城県某所 山中
エリカ「ここなら大丈夫ね。あとは明日まで待って……」
麻子「だったら、ここで一旦解散にして明日の昼に集合にしてもらっていいか」
沙織「麻子、この状況で昼まで寝るつもり?」
麻子「違う。いや、眠気には勝てんが違う。おばあに会いに行きたいんだ。
1年前のおばあに会って、ちゃんと健康診断を受けるように説得する」
沙織「いいの?そんなことして……」
麻子「過去を変えることになっても、おばあの心臓発作が起きることがわかってるのに何もしないなんて……できない」
沙織「……うん、わかった。私も一緒に行くよ」
エリカ「勝手にしなさい。出発は明日の13時。遅れないでよ」
麻子「すまないな」
沙織「じゃあまた明日!」
タッタッタ……
エリカ(はぁ……未だに自分に起きてることが信じられないわ)
ガサッ
エリカ(1年前の新聞……そういえば、1年前ってことは今頃)
ガサガサ
エリカ「戦車道ニュース……高校生全国大会、優勝候補黒森峰、1回戦を勝利……」
エリカ「同じく優勝候補のプラウダも2回戦に進出し、早くも決勝での両校の対決が期待されている……」
エリカ「……」
エリカ(起きることがわかってるのに何もしないなんて……か)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日 集合時間
沙織「お待たせ!ほら麻子、しっかり」
麻子「眠い」
沙織「こっぴどく叱られてたけど、健診行くって約束してもらってよかったじゃん」
エリカ「来たわね。さっさと出発するわよ。席につきなさい」
沙織「うう、怖いなあ。いきなり墜ちたりしない?」
エリカ「安心しなさい。飛行自体は何の問題なかったわ」
沙織「え、もう飛ばしたの?」
エリカ「……ん。まあちょっと、試験飛行をね」
麻子「……」
エリカ「行くわよ!」
ババババババババババ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エリカ「例のポイントに来たけど……」
沙織「何も起きないじゃん!もー、やっぱり戻れないのぉ?」
麻子「動きが大事なのかもしれない。あの時と同じように機体を飛ばせるか」
エリカ「地面スレスレまで急降下しろってこと?」
沙織「えー!?麻子、高いの苦手じゃなかったの?」
麻子「優先順位の問題だ」
エリカ「同じ動きを再現するにしても、あの時は急降下しながら機体が回転もしてたし、とても同じなんて」
麻子「右に4回転、左に3回転半だ」
エリカ「お、覚えてたの!?あの状況で!?」
沙織「さすが麻子。こういう時だけ冴えてる」
エリカ「……いいわ。やれることは全部やってやるわ!いくわよ!掴まって!」
グイイイイイイイン ヒュゴゴゴゴゴゴゴ
沙織「ひえええええ」
麻子「今だ」
エリカ「ふんっ!」
グルングルングルングルン
==================================
麻子「……」パチ
沙織「う、うーん。あっ……!」
エリカ「んっ……!」ガバッ
ババババババババババ
沙織「操縦!操縦!」
エリカ「……わかってるわよ!とりあえずどこでも良いから着陸する!」
ババババババババ シューン
沙織「あ、携帯が繋がる……華に電話してみよう」プルルルル
麻子「おばあに……」プルルルル
エリカ「……」プルルルル
沙織「もしもし華!?今日の日付ってさ、うんそうだよね!ありがとう!え、ごめんねー!もう大丈夫だから」
麻子「おばあ!よかった、心臓発作になってないなっ、わ、わかった、怒鳴らないで……」
エリカ「隊長……はい、すぐ戻ります」
沙織「やった!戻ってきたよ私達!」
麻子「うん……おばあも元気だった」
エリカ「散々な目に合ったわね。じゃ、ここでお別れよ」
沙織「えー、こんなすごい体験したのにこんなさっぱりと終わっちゃうの?」
エリカ「私は忙しいのよ。さよなら」
バババババババババババ
沙織「私達も、帰ろうか」
麻子「ん」コクリ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大洗女子学園
華「沙織さん、冷泉さん。良かった。ご無事だったんですね」
優花里「お二人が突然いなくなって、皆で心配してたんですよ!」
沙織「ごめんってばー」
沙織「そうか、おばあの入院が無かったことになったから」ヒソヒソ
麻子「私達が消えた事実だけ残ったのか」ヒソヒソ
柚子「みんな揃ったのね。はあ、良かったぁ」
沙織「小山先輩。なんか迷惑かけちゃったみたいで、すいません」
柚子「いいのよ。それより、これから全校生徒を集めた緊急集会やるのは知ってるよね?」
麻子「なんだそれは」
柚子「あれ?とにかく、そろそろ講堂に集合だからお願いね」
沙織「あ、はい」
講堂
ザワザワ
華「緊急集会、一体何でしょうか」
沙織「ウチの生徒会のやることだからねー。また戦車道関連かな?」
優花里「昨日の試合は残念でしたね。ですがいい思い出になりました」
麻子「ん?」
華「始まるみたいですよ」
杏「みんな、今日集まってくれたのは他でもない。我が校は、今学期を持って廃校になる」
「「「「えぇ~~~!?」」」」
ザワザワザワザワ
杏「実は、戦車道の全国大会で優勝すれば廃校取り消しのチャンスがあった。
……だが昨日行われた1回戦で我チームは健闘したが敗退した」
杏「みんな、本当にすまない」
桃「うぁああああん、かいちょおぉおお」ボロボロ
杏「生徒や学園艦住人の今後については決まり次第、追って通知する。……以上だ」
優花里「そ、そんな……あんまりです」
華「戦車道の裏にそのような事実があったなんて」
沙織「ちょっと待ってよ2人共!?会長達もみんなどうしちゃったの!?」
麻子「……」
沙織「昨日の試合!私達は勝ったじゃん!」
優花里「武部殿、何を言ってるんですか」
華「沙織さん、悔しいですけど私達は負けたんですよ」
沙織「2人こそ何言ってるの!?みぽりんの指揮で大勝利したもん!そういえばみぽりんはどこ!?」
華「みぽりんさん……?」
優花里「誰でありますか?」
沙織「みほだよみほ!」
麻子「西住さんを知らないのか」
華「ごめんなさい、そのような方は私は存じ上げません」
優花里「西住、みほ?黒森峰の副隊長のことですか?その方ならもちろん知っていますが」
沙織「いやいやいや!みぽりんは私達の隊長でしょ!」
麻子「沙織、落ち着くんだ。悪いが、沙織は廃校のショックで混乱してるみたいだ」
優花里「そうですか……私もショックですし無理もありません」
麻子「秋山さん。質問がある。逸見エリカという人を知ってるか」
優花里「ええ。黒森峰のNo.3の方ですね。次期副隊長とも言われてます」
麻子「その人は、去年の大会で活躍したか」
優花里「はい。特に決勝での活躍は有名ですよ。まるでプラウダの戦術を知り尽くしたかのような戦いで……」
麻子「……そうか。だいたいわかってきたぞ。悪いが沙織を保健室に連れて行く」
華「それでしたら私も」
麻子「いや、大丈夫だ。ほら沙織、行くぞ」グイッ
沙織「ちょっと、麻子」
優花里「あ、お、お大事に!」
沙織「もう、保健室なんて行かなくて大丈夫だよ」
麻子「わかってる。行くのは保健室じゃない。黒森峰だ」
今日はここまでです
沙織「黒森峰?そういえばみほが黒森峰の副隊長って言ってたけど……
あ、直接会って確かめるのね!」
麻子「いや、たぶん西住さんに会ったところで私たちのことはわからない。
五十鈴さんたちと同じで、私達とは違う記憶を持ってるはずだ」
沙織「じゃあ、どうするの?」
麻子「あの時、戦車喫茶で西住さんは『元副隊長』と言われていた。
あの険悪な雰囲気、過去に何か良くないことがあって黒森峰を去ったんだろう」
麻子「私達がタイムスリップしたのは1年前。そして今のこの状況。ここまで要素が揃えば、誰が原因かわかるだろ」
沙織「もしかして……麻子がおばあちゃんを助けたみたいに?」
麻子「きっとあの逸見という人が、過去で何かしたんだ。西住さんの転校を阻止するために」
沙織「でも学園艦までどうやっていけばいいわけ?」
麻子「戦車道の大会期間中だ。またすぐにどこかに寄港するはず」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2日後
関東地方某所
麻子「ここで黒森峰の2回戦の試合がある」
沙織「学校休んで来ちゃったけど良かったのかな……みんな転校にの準備とかで大忙しなのに」
麻子「そもそもタイムスリップが無ければそうはならなかった。本来なら私たちはまだ負けてない」
沙織「う、うん。それにみぽりんと友だちになったことが消えちゃうのが一番嫌!」
黒森峰生徒「すいませんが、試合前に選手と会うことはできません。お引き取り下さい」
沙織「あのっ!大事な用があるんです!」
黒森峰生徒「プレゼントなどはこちらでお預かりしてまとめて渡しますので」
麻子「別にファンじゃない」
黒森峰生徒「とにかくお帰り下さい」
沙織「どうしよう。全然近づけないよ」
麻子「仕方ない。西住さんの携帯に電話してみよう。番号は同じはずだ。試合前で携帯を切ってなきゃだが」
沙織「そっか。ケータイも私達と一緒にタイムスリップしたから登録されたままなんだ。それで、出たら何て言うの?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ブーブー
みほ(電話?知らない番号だ)
ピッ
みほ「もしもし?」
『副隊長!大変です!会場の入口でうちの生徒たちが騒ぎを!怪我人も出てます!』
プツッ
みほ「えっ!?あのっ?」
みほ「だ、誰かな。でもうちの隊員だよね。行かないと!」
ダダッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タッタッタ
みほ「はあはあ、あれ……騒ぎになってない」
沙織「あ!来た!」
麻子「すまない、こんな呼び出し方をして」
みほ「???あの、すいません、あなたたちは……?」
沙織「……やっぱり忘れちゃってるんだね。わかってたけどちょっとショックだったり」
エリカ「副隊長!」ツカツカ
麻子「!」
沙織「あーー!」
エリカ「あなた達……もしかしたらと思ってたけど、来たのね」
麻子「説明してもらうぞ」
沙織「あなたのせいで大変なことになってるんだから!」
みほ「えっと、エリカさん、お友達?」
エリカ「まあそんなところ。副隊長、もう試合が始まるんだから早く戻ってください。ここは私が」
みほ「よくわからないけど……エリカさんがそう言うなら、うん。先に戻ってるね」
エリカ「私もすぐに戻りますから」
エリカ「で、何しに来たの?」
麻子「もう一回タイムスリップして、変えたことを元に戻そう」
エリカ「はあ?そんなこと出来るわけないじゃない」
麻子「やってみなきゃわからない。1回出来たことが出来なくなる方が、信じられない」
エリカ「……仮にそうだとしても、私は戻す気なんてないから。
大体、あなたのおばあちゃんもタイムスリップのお陰で助かったんでしょ」
麻子「……」
沙織「それは!命に関わる重大なことだったし」
エリカ「こっちだって重大よ!副隊長に、黒森峰に何があったのか知らないでしょ!?
何?変えていいことと変えちゃいけないこと、あなたたちの裁量で決めるわけ?」
沙織「う……」
エリカ「もう二度と来ないで。これから大事な試合なんだから。黒森峰は新しい歴史を歩むのよ」
麻子「私達の学校は歴史に幕を閉じることになった。西住さんがいなくなって、1回戦で負けたことになって」
沙織「そ、そうだよ!私達も知らなかったけど、大洗は戦車道で優勝できなかったら廃校にされちゃうんだよ!」
エリカ「廃校……?ふ、ふん!どうせあんな戦車じゃ、1回戦で勝ったところで優勝なんて無理だったわよ」
麻子「決めつけられても困る」
エリカ「っ……!もう時間だから!失礼するわ!!」
ダッ
沙織「あ!逃げた!!」
ここまで
==================================
1年前 黒森峰女学園
エリカ「……」コソッ
エリカ(来てしまったわ……)
キョロキョロ
エリカ(ここは確かに1年前の黒森峰。副隊長もいるし私もいる……
あの事故を防ぐには、それとなく決勝のプラウダの戦術を誰かに伝える必要があるわね)
エリカ(隊長か副隊長に伝えても……過去の私との話が噛み合わなくなって変なことになるかも)
エリカ(だったら、やっぱり信頼できるのは……)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ガチャ
1年前エリカ「ふう、今日も西住隊長はかっこよかったわ」
エリカ「おかえりなさい」
1年前エリカ「きゃああああ!?」
エリカ「大声を出すな!」ガシッ
1年前エリカ「むぐっむぐっ」
エリカ「自分に触るのって変な感じね……」
1年前エリカ「むぐっ!むぐ!」ジタバタ
エリカ「思ったより肉が……もっと鍛えなさいよ。ってこの頃はまだこんなもんか」プニプニ
1年前エリカ「むー!むー!///」ジタバタ
エリカ「ほら、落ち着きなさい。安心して、私は1年後のあなたよ」
1年前エリカ「ぷはっ、な、な、な!?だれっ。なんで?」
エリカ「鍵持ってるから。1年後も同じ寮だもの」
1年前エリカ「てっ、ていうか!なんで私が私の部屋に!?なんなのよ!?」
エリカ「ちゃんと説明するから」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1年前エリカ「それでドラッヘでタイムスリップしてきたと……」
エリカ「ええ、信じられないでしょうけど」
1年前エリカ「面と向かってあなたとこうして会ったら、信じるしか無いじゃない……」
エリカ「それで、本題。私達、いえあなた達黒森峰は全国大会で1回戦突破したところよね?」
1年前エリカ「そうだけど」
エリカ「結果から言うと、私達は決勝戦で敗れることになるわ」
1年前エリカ「!?そんな馬鹿な!!私達が負けるはずがない!」
エリカ「本来ならそうだったわ。だけど決勝で起きたある事故ですべてが狂ってしまった」
1年前エリカ「事故?」
エリカ「敵の奇襲を受けた赤星の車輌が川に滑落し、副隊長がフラッグ車の指揮を放棄して救助に。
結果、フラッグ車が撃破されて敗北」
1年前エリカ「そんなっ、じゃあ赤星達や副隊長は!?」
エリカ「それは全員無事だったわ」
1年前エリカ「そ、そう」
エリカ「だけど副隊長はその事件がきっかけで、戦車道を辞めて転校してしまった」
1年前エリカ「……」
エリカ「だから、私はあなたにその事故を防いでほしいの。
決勝戦の相手の配置や戦術は忘れたくても忘れられないくらい覚えてるわ」
1年前エリカ「……出来ない」
エリカ「は?なんですって?」
1年前エリカ「黒森峰が敗北するなんて信じられないけど、全力で戦って負けたならそれが全てでしょ。
未来の情報を持って結果を変えるなんて卑怯なこと、出来るわけ無いわ!」
エリカ「くっ……あなたの言いたいこともわかる。だけど、事故が起きていいの?仲間が危険な目にあっていいの?」
1年前エリカ「……」
エリカ「副隊長を失っていいの?隊長に悲しい思いをさせていいの?」
1年前エリカ「それは……」
エリカ「私の情報を利用して勝てだなんて、卑怯なことはさせないわ。ただ、あの事故を回避してほしい。それだけよ」
1年前エリカ「……わかった」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドォン!! ズバァッン!
まほ「こちら隊長車。奇襲に成功、プラウダの主力部隊と交戦を開始した」
まほ「一気に攻め落とす。別働隊、警戒しつつ敵の左翼から回り込め」
みほ『こちら別動隊。了解しました』
ゴゴゴゴ
エリカ「こちら3号車。後方、異常ありません」
エリカ(そろそろね……)
エリカ『10時の方向に敵影!!』
小梅『!!!停止!!』
ヒュンッ ドォンッ!
みほ『7号車、大丈夫ですか!?』
小梅『はい、逸見さんが気付かなかったら危なかったです』
みほ『敵の攻撃を受けました。このまま応戦します!』
エリカ「ふぅ……」
エリカ(これで、本来の事故は防げた筈……あとは、不慮の事態が起こらないように敵を確実に仕留める)
===================================================================
現在 全国大会決勝戦会場
エリカ「……」
まほ「エリカ」
エリカ「……あっ、隊長!すいません!」
まほ「どうした、考え事か」
エリカ「何でもありません。御用でしょうか」
まほ「いや、用というほどじゃないんだが……」
エリカ「?」
まほ「この戦いが終わったら、私達3年生からお前たちに本格的に世代交代することになる。
私は、エリカを副隊長に推挙するつもりだ」
エリカ「……光栄です」
まほ「みほは強い。だけど自分に自信が持てない、そういう子だ」
エリカ「ええ」
まほ「誰かがみほを支えなければならないんだ。これからは、エリカが支えてやってほしい。お前とみほがいれば、黒森峰は更に強くなる」
エリカ「はい。黒森峰のために、私に出来る事ならなんでもします」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
みほ「エリカさん、お姉ちゃんと何の話してたの?」
エリカ「大したことじゃないわ。最後のブリーフィング、始まるわよ副隊長」
みほ「あ、うん……今回も相手はプラウダだから、エリカさんにみんな期待してるよ」
エリカ「え?」
みほ「去年のエリカさん、決勝戦で大活躍だったし」
エリカ「……去年は去年、今年は今年よ」
みほ「うん。でも、エリカさんがいれば大丈夫かなって、なんとなく思っちゃうんだ」
エリカ「はぁ、しっかりしてくださいよ副隊長」
みほ「は、はい」
エリカ(そうね。これからも私が支えてあげないと……この頼りない次期隊長を)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ズズズッ ザバァッ
『副隊長!!!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌朝 新聞朝刊より抜粋
『全国高校戦車道大会、決勝で大事故』
『試合中に車輌が崖から転落』
『副隊長・西住みほ選手が車外へ投げ出され重症』
『大会は中止。次回以降の開催は未定に』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大洗女子学園
沙織「ほら、麻子!ちゃんと歩いて」ズルズル
麻子「眠い……」
沙織「もー!廃校になるまでこれ続ける気!?」
麻子「私はまだその事は諦めてない」
沙織「でも、どうしようもないじゃん、これ以上……」
麻子「それをどうするか考えてるから寝るのが遅くなって起きれないんだ。しょうがないだろ」
沙織「昔から起きてないでしょ!」
優花里「……」
沙織「あれ、ゆかりんだ。おはよー」
優花里「ああ、おはようございます武部殿、冷泉殿」
沙織「今日はずいぶん遅いね?寝坊したの?」
優花里「あのニュース、知らないんですか!?戦車道大会の決勝の話です」
沙織「だってもう大会関係ないし……」
麻子「決勝は一応録画したがまだ見てないな」
優花里「大変なんですよ……!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
沙織「重症!?そんな!!」
麻子「……」
優花里「命に別状は無いそうですが……私はみほ選手のファンだったからショックで眠れなくて」
優花里「しかもネット上では早くも戦車道自体に批判が及んで……マスコミも安全性を叩き始めて」
優花里「うぅ、このままでは戦車道自体が無くなってしまうかもしれません!」
沙織「戦車道なんてどうでもいいよ!みほの所に行こう!?」
優花里「な、何を言ってるんですか。私達なんかが会いに行けるわけないじゃないですか!」
沙織「そ、そりゃ今は他人かもしれないけどさ……」
優花里「冷泉殿!武部殿の様子、変じゃないですか?」
麻子「そうだな。変だ」
沙織「ちょっと麻子!」
麻子「また学校を休んで生徒会に余計な詮索をされたくない。西住さんの所には放課後に行くぞ」
優花里「ええっ!?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
黒森峰女学園 学園艦附属病院
まほ「みほ、何か欲しいものはあるか。食べ物でも、飲み物でも、ボコのぬいぐるみでも」
みほ「大丈夫。勝手に飲食しちゃ駄目って言われてるし、ボコはもうたくさん持ってきてもらったし」
まほ「そうか……痛まないか?」
みほ「う、ううん。平気だよ」
まほ「5箇所も骨折して痛くないわけ無いだろう」
みほ「……あはは」
ガラガラガラ
エリカ「入りますよ。外にいた報道の奴らはみんな追い払ってきました」
まほ「すまないな、エリカ」
みほ「ごめんね、エリカさん」
エリカ「謝らないで下さい!二人とも、謝るのは私の方です」
まほ「何を言ってる。私達がエリカに頼りすぎて油断していたのが原因だ」
みほ「うん、本当にごめん……エリカさんがいれば大丈夫なんて無責任なこと言って」
エリカ「違う……全部私が悪いの。私が変えちゃったから」
まほ「エリカ……?」
トントン
職員「西住さん、お友達が面会をしたいと来ているんですが……」
みほ「???」
まほ「大勢で押しかけたら迷惑になるから、隊員たちには来るなと伝えたはずだが」
エリカ「……野次馬かもしれません。私が追い払ってきます」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
エリカ「まさかと思ったけど、また来たのね。今度は何?」ギロッ
優花里「逸見エリカ殿……本物を見るとすごい威圧感です」
沙織「友達のお見舞いに来ちゃ駄目なわけ?」
麻子「話がある」
華「お花、持ってきました」
エリカ「あなた達ねぇ……」イライラ
長らくお待たせしました。今日はここまでです
沙織「みぽりんの様子はどう?」
エリカ「み、みぽりん……?あの子なら大怪我してるから会えないわよ。そもそもあなた達、知り合いですらないでしょ」
優花里「あの、大怪我とはどのくらいなんでしょうか?」
エリカ「部外者に教えることじゃないわ」
優花里「うぅ」シュン
エリカ「ほら、帰りなさい」
麻子「話があると言ってるだろう」
エリカ「話すことなんて何もないわ」
沙織「いいから聞いてよ!」
まほ「騒がしいな。何かあったか?」
エリカ「隊長!申し訳ありません。すぐに追い払いますので」
沙織「みぽりんのお姉さん!私達、みほの友達なんですけど!」
エリカ「ちょっと!勝手に……」
華「私と秋山さんは付き添いですけど」ペコリ
まほ「そうか。他校に友人がいるとは知らなかった」
沙織「あの、会えませんか?」
まほ「少しくらいなら大丈夫だろう」
エリカ「隊長!?こんな子たちを……」
まほ「わざわざ他の学園艦から来てくれたんだ。みほも喜ぶだろう」
沙織「ありがとうございます!」
まほ「ただし、静かにな」
まほ「みほ。他校の友人が見舞いに来てくれたぞ」
みほ「え……誰だろう」
まほ「どうぞ。私とエリカは外で待ってるから」
沙織「みーぽりん!」
麻子「静かにしろと言われただろ」
みほ「みぽりん?あ、確か……2回戦の前に会った、エリカさんのお友達……でしたよね?」
沙織「覚えててくれたんだね!あ、静かに静かに」シー
麻子「一人で騒ぐな」
みほ「あはは、うっ、いたたぁ!」
沙織「大丈夫!?ごめん笑わせちゃって」
みほ「だ、大丈夫、です。久しぶりに笑ったから……あ、そっちの方もエリカさんのお友達ですか?」
優花里「え、私は逸見殿とは……」
麻子「色々ややこしいからそういうことにしておいてくれ」ヒソヒソ
優花里「り、了解であります」ヒソヒソ
華「五十鈴華と申します」ペコリ
優花里「秋山優花里です!」
沙織「そういえば、私達もまだ自己紹介してないことになってるんだよね」
みほ「ことになってる……?」
麻子「冷泉麻子。よろしく」
沙織「私は武部沙織!みぽりんって呼んで良い?」
みほ「良いですけど、もう呼んでたような……」
沙織「そうだっけ?」
華「沙織さんは人と仲良くなるのが上手ですから」
沙織「距離はぐぐっと詰めるのが彼氏を作る近道だよ♪」
華「彼氏出来たことないでしょう?」
沙織「それを言わないでよー」
みほ「あはは……いたたっ!」
麻子「あまり西住さんを笑わせるな」
沙織「笑われるようなことしてないもん」
みほ「ふふ、知り合ったばかりなのに、皆さんと話してるとなんだがとても楽しいです」
沙織「みぽりん……」
優花里「あ、あの、差し出がましいようですがお体の具合はどうでしょうか……?」
みほ「えっと、しばらくは入院してなきゃいけないけど、元通り生活できる様になるって……」
優花里「では戦車道にも復帰できるんですね」
みほ「先生にはそれも大丈夫って言われました、でも……」
優花里「でも?」
みほ「私はもう、戦車道辞めようかなって……」
沙織「えっなんで?」
華「沙織さん。あれだけ辛い怪我をされたのですから……」
みほ「ううん。違うんです。この怪我は自分のミスでしたから、痛いけど頑張れば平気です。
でもこれから先、私のせいでもっと酷い目に遭う人が出るかもしれない……そう思うと怖くて」
優花里「そうでしたか……」
エリカ「ほら、面会は終わりよ。帰りなさい」
沙織「えー、もう?」
麻子「そうだな。行こう。で、逸見さん」
エリカ「何よ?」
麻子「話がしたいとさっきから言ってる。聞くだけでも聞いてほしい」
エリカ「だから、あなたと話すことなんて」
みほ「エリカさん?冷泉さんと……何かあったの?」
エリカ「なっ何もないわ」
麻子「ここだと西住さんに迷惑がかかる。場所を移して2人で話そう」
エリカ「……しょうがないわね。聞くだけよ」
なが~く間が空いてしまいました
当初予定していたオチに矛盾があることに気づき放置気味に他のSSに浮気して逃げてましたすいません
予定は変えるけど完結はさせます
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エリカ「それで?先に言っておくけどタイムスリップは二度としないから」
麻子「西住さんがあれだけの目にあったのに、それでいいのか?」
エリカ「良いわけないでしょ!だけど、仮にもう一回過去に行けたとして、状況を改善できる保証はある?」
麻子「ない」
エリカ「ふん。話にならないわね。過去に戻って余計なことしてさらに悪化するくらいなら、このままの方が……」
麻子「西住さんも転校してないから?」
エリカ「……は?」
麻子「怪我が治ればまた一緒に戦車道が出来るから?」
エリカ「……」
麻子「これからやり直せるから?」
エリカ「何が言いたいの?」
麻子「やり直すのは無理。西住さんは戦車道を辞めると言ってたからな」
エリカ「はぁ!?」
麻子「さっき病室で言ってた。やっぱり聞いてなかったか」
エリカ「どういうこと!?なんであなた達に言って私には何もっ……」
麻子「知らん。とにかくそういうことだ」
エリカ「なんなのよ……なんで……」
麻子「悪化させるくらいならこのままで良いと言ってたが、悪化ならもうしてるってことだ。
たぶん、時間の流れは私達には簡単に変えられないんだ。きっと、流れに逆らっても揺り戻される」
麻子「私もおばあの為にとやったが、これからどうなるかわからない。
倒れて病院に運ばれなくなった代わりに、別の発作を起こすかもしれない」
麻子「だから戻そう。変えたことを」
エリカ「……」
エリカ「黒森峰に無理やり残しても、あの子は戦車道を辞めてしまう。でもあなた達のところに転校していれば、弱小校でも戦車道が出来る……」
エリカ「……ああっもうっ!!わかったわ!協力するわよ」
麻子「よし。じゃあ早速」
エリカ「待ちなさい!その代わり……元に戻ったらあなた達、絶対に決勝まで来なさいよ」
麻子「……おうよ」
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ブーブー
沙織(麻子からメール!)
沙織「華、ゆかりん、ごめん!ちょっと麻子と用事があるから先に帰ってて!」
華「何かあったんですか?」
優花里「あの、お手伝いできることがあるなら言ってもらえれば」
沙織「ううん、大丈夫。ありがとう!」
華「そうですか。では、お気をつけて」
沙織「うん!」タタッ
沙織「あっ……」ピタ
華・優花里「?」
沙織「ふたりとも、また会おうね!」
優花里「もちろんであります!」
華「ええ。また明日、学校で」
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ガラガラガラ
エリカ「……」スタスタ
みほ「あ、エリカさん」
まほ「友人との話は終わったか」
エリカ「はい。お騒がせしました」
みほ「ううん。楽しかったよ」
エリカ「隊長、やり残していた仕事を思い出したので一旦学校に戻ります」
まほ「わかった。苦労をかけてすまない」
エリカ「いえ。隊長のお役に立てるならなんでもします」
みほ「今日はありがとう。えっと……また来てくれる?」
エリカ「……ええ、また会いましょう」
みほ「う、うん!待ってるね」
エリカ「それはこっちの台詞」
みほ「え?」
エリカ「決勝で待ってるわ。元副隊長」
エリカ「それでは隊長、失礼します」ペコリ
ガラガラガラ ピシャッ
まほ「……みほ、エリカにはあのこと話したのか?」
みほ「ううん、まだ話せてなくて……」
まほ「そうか……」
みほ「エリカさん、何を言いたかったのかな……」
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茨城県某所 上空
ババババババババ
エリカ「この辺りのはずよ」
沙織「やっと着いたよ~。ほら麻子、起きて」ユサユサ
麻子「ん……到着か」
エリカ「こんな時に寝れる神経が羨ましいわ」
麻子「急降下しながら右に4回転、左に3回転半」
エリカ「わかってるわよ。ここまで来たら成功を祈るしか無いわ」
エリカ「行くわよ!掴まってなさい!」
グイイイイイイイン ヒュゴゴゴゴゴゴゴ
沙織「ひいいい!何回やっても慣れないー!」
麻子「うるさい」
エリカ「頼むっ!」
グルングルングルングルン
===================================================================
ババババババババ
エリカ「っ……!」
エリカ「起きて!」
麻子「もう起きてる」
沙織「んぅ…?せ、成功した!?」
エリカ「わからないけど、この感覚は……」
麻子「だぶん成功してる。問題は今がいつなのか」
沙織「あ、そっか。前と同じ時間に戻ってるとは限らないんだ!」
エリカ「そもそもこうやってタイムスリップ出来てるのが奇跡よ」
麻子「周りの建物の様子を観ると、少なくとも大昔に飛ばされたりはしてないみたいだな」
沙織「で、これからどこに行くの?とりあえず学校に行ってみる?」
エリカ「馬鹿。そんなことして過去の私達やチームメイトに会ったらどうするの。さらにややこしくなるわよ」
麻子「まずは病院の方に向かってくれ」
エリカ「了解。すぐに着くわ」
バババババババババババ
麻子「……!待った。2時の方角に機影だ」
エリカ「え?どこよ?」
沙織「麻子、目も良いから」
麻子「ドラッヘだな。黒森峰のマークが見える」
エリカ「……本当ね。私も確認した。黒森峰にドラッヘはこの隊長移動用の機体しか存在してないわ」
沙織「ってことはあれは過去の私達!?」
エリカ「過去といえば過去だけど、今は同じ時間にいるわけだから、うーん」
麻子「時間帯と向かってる方角からして、病院を発って人目の付かない着陸場所を探しているところだな」
エリカ「なら追いかけるわよ。見つからないように距離を取って、着陸したところで接触しましょう」
麻子「いや、あれは1回目にタイムスリップした私達なんだ。着陸場所はわかってるだろう」
エリカ「先回りしろってことね。ったく、その適応力はなんなのよ」
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茨城県某所 山中
エリカ「ここなら大丈夫ね。あとは明日まで待って……」
麻子「だったら、ここで一旦解散にして明日の昼に集合にしてもらっていいか」
沙織「麻子、この状況で昼まで寝るつもり?」
麻子「違う。いや、眠気には勝てんが違う。おばあに会いに行きたいんだ。
1年前のおばあに会って、ちゃんと健康診断を受けるように説得する」
沙織「いいの?そんなことして……」
麻子「過去を変えることになっても、おばあの心臓発作が起きることがわかってるのに何もしないなんて……できない」
沙織「……うん、わかった。私も一緒に行くよ」
エリカ「勝手にしなさい。出発は明日の13時。遅れないでよ」
麻子「すまないな」
沙織「じゃあまた明日!」
タッ
エリカ「待ったー!」
麻子・沙織・エリカ「!?」
沙織(以下沙織B)「なになになになに?!逸見さんが2人?!」キョロキョロ
麻子(以下麻子B)「お、おばけ……じゃないな」
エリカ(以下エリカB)「えっえっ!?何よあなた!?」
ガサガサ
沙織(以下沙織A)「ほら!いきなり飛び出すから驚いてるじゃん!」
エリカ(以下エリカA)「悪かったわね!急がないとバラバラになりそうだったんだから仕方ないじゃない!」
麻子(以下麻子A)「とりあえず落ち着いてくれ。タイムスリップには気づいてるんだからもうひとりの自分を見たくらいなら驚かないはずだ」
エリカB「いや驚くわよ!」
沙織B「わ、私と麻子も出てきた!?」
麻子B「……過去の私達か?」
麻子A「いや、未来の私達だ。お前達と言ったほうが良いのか。私達はお前達が経験したことをすでに経験して、もう一度ここに戻ってきた」
沙織B「えーっと?聞きたいことたくさんあるけど、なんで戻ってきたの?」
麻子B「過去を変えたことで何か不都合が起きたのか」
麻子A「私同士だと話が早いな」
麻子B「まさか、おばあに何かあったのか!?私が1年前のおばあに干渉して何か……」
沙織A「大丈夫!麻子のおばあちゃんは元気だから!」
麻子B「そ、そうか」ホッ
沙織B「ちょ、ちょっとまって。じゃあ不都合って」
エリカA「……」
麻子A「そこの逸見さんが、西住さんの転校を阻止した」
エリカB「はぁ!?」
エリカA「……まあそうなるでしょうね。やろうと思いついたのはこの後だったし」
エリカB「そ、それでどうなったのよ」
エリカA「あまり他の子に聞かれたくないわ。ちょっとこっち来なさい」
エリカB「……ええ」
麻子B「それで私達はどうすればいいんだ」
麻子A「何もせずに戻るだけでいい」
沙織B「ちゃんと戻れるの!?」
麻子A「来るときと同じ動きをすれば戻れる。私達も実証済みだ」
沙織B「良かったぁ……」
麻子B「このまま戻ったらおばあはどうなるんだ。倒れたんだぞ」
麻子A「私もわからない。でも、ダメなんだ、過去を変えたら絶対に何か悪いことが」
麻子B「だけどおばあに、も、もし何かあったら……」
麻子A「そんなの私だって心配だ。同じ私なんだから。で、でも……」グスッ
麻子B「うう……嫌だ……」グスッ
沙織A「麻子!」
沙織B「麻子!」
麻子A「うっ…ううぅ」ポロポロ
麻子B「うぁ……うぅ」ポロポロ
沙織B「よしよし。大丈夫だから、ね?未来の私達を信じよう?」ギュ
沙織A「ほら、麻子がしっかりしないと。もう一人の麻子が安心して戻れないでしょ?」ナデナデ
沙織B「麻子のおばあちゃんなら絶対大丈夫だよ」ヨシヨシ
沙織A「めそめそしてたらまた怒鳴られるよ?」ポンポン
麻子B「ううっ、ひっぐ、うん……」ゴシゴシ
麻子A「おう……」
エリカA「こっちは話つけてきたわ……って」
エリカB「何やってんのよあなた達」
麻子A「な、なんでもない。こっちも大丈夫だ」ゴシゴシ
エリカA「何、泣いてたの?」
麻子B「そっちこそ、二人とも目が赤いみたいだな」
エリカB「気のせいよ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌朝
ババババババババ
エリカA「ドラッヘ1よりドラッヘ2。これより当該エリアに入る。降下の準備を」
エリカB『ドラッヘ2了解。本当に言われたとおりにやれば戻れるんでしょうね?』
エリカA「完璧に操縦すれば絶対に成功する。あなたの腕は私が保証するわ」
エリカB『はいはい。ドラッヘ2準備完了』
エリカA「了解。こちらドラッヘ1、これより降下。手本を見せてあげる。こちらが済んだら後に続くように」
エリカB『了解。健闘を祈る』
エリカA「降下開始。それじゃあお先に未来へ戻るわよ」
沙織A「うん!」
麻子A「頼む」
グイイイイイイイン ヒュゴゴゴゴゴゴゴ
グルングルングルングルン
===================================================================
ババババババババ
エリカ「っ!」
沙織「っ!戻ってきた!?」
麻子「元に戻ってるならおばあが搬送されてるはず。病院に向かってくれ」
エリカ「もうすぐ着くわ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タッタッタッ
沙織「命に別状はないって!良かった!」
エリカ「……そう。何よりだわ。あと病院で走るな」
沙織「ありがとね!逸見さん!」
エリカ「お礼を言われる筋合いは無いから。じゃ、私は帰るわ」
沙織「もう帰っちゃうの?」
エリカ「私は忙しいのよ。あなたもこんな所にいないであの子の傍にいてあげたら?」
沙織「うん。そうするね」
エリカ「ああそれから。私達が体験したことは誰にも話さないようにね」
沙織「えー?」
エリカ「えーじゃない!特に……いや、なんでもないわ」
沙織「特に誰?みぽりん?」
エリカ「なんでもないって言ってるでしょ。じゃあね」
沙織「もー。どこまでも意地っ張りなんだから」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日
沙織「みぽりーん!会いたかったーー!」ダキッ
みほ「えぇえっ!?沙織さんどうしたの?」
華「積極的ですね」
優花里「まるで感動の再開のようなノリです」
久子「あんたたち!!病室で騒ぐんじゃないよ!!」
麻子「お、おばあ、おばあが一番声大きいから……」
沙織「良かったー良かったよー」シクシク
みほ「う、うん。元気そうで良かったね」
麻子「西住さん……」
みほ「はい?」
麻子「絶対に決勝まで行こう。私達も全力でやる」
みほ「……うん!」
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全国大会 決勝戦
亜美「両チーム!隊長・副隊長、前へ!」
みほ・桃「……」スタスタ
まほ・エリカ「……」スタスタ
エリカ「……ふっ。お久しぶり。弱小チームだとあなたでも隊長になれるのね」
みほ「……」
エリカ「たまたまここまで来れたからって、いい気にならないでよ」
みほ「ううん。たまたまじゃないよ」
エリカ「えっ?」
みほ「みんながここまで頑張ってくれたから。私を決勝戦に連れてきてくれたの」
エリカ「と、とにかく見てなさい!邪道は叩き潰して……」
みほ「それに、エリカさんが『決勝で待ってる』って言ってくれたから」
エリカ「!!」
エリカ「あ、あなた……」
みほ「よろしくお願いします!!」
\ヨロシクオネガイシマス/
まほ「行くぞ」
エリカ「はい」
エリカ「……まあいいわ。あなたは私が倒してあげる。転校したこと後悔させてやるわ」ニヤッ
みほ「はい!」ニコッ
『試合開始!!!!』
おわりです
ありがとうございました
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