佐藤心「風にあそばれて」 (13)

アイドルマスターシンデレラガールズ、しゅがーはぁとこと佐藤心さんのお話です。

地の文あります、短いです。
色々あれですけど、大目に見て頂けると幸いです。

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 そろそろ日付が変わろうかという時間にはぁとは一人で歩いている。

仕事が思ったより押してしまったのでプロデューサーからは直帰で良いと言われたのだが、仕事終わりにプロデューサーに会えないのはどうにも違和感があるので事務所に寄る事にしたのだ。

 今から事務所に行けば終電が無くなってしまうのだが仕方ない。事務所の仮眠室にでも泊まれば良い事だ。

総選挙が始まってからというもの、普段よりも仕事が増えている。もっと言ってしまえば中間発表が終わった後、はぁとの仕事はより増えたのだ。オフが1日もなくなってしまうくらいには忙しい毎日を送っている。

「Pa5位かぁ……」

 所詮は中間発表でしかないが、はぁとが属性別5位になったのだ。

「26でアイドルやるって言った時は猛反対にあったなぁ……☆」

 元々アイドルに興味はあった。でも、一歩を踏み出す勇気がはぁとにはなかった。

 普通に学校卒業して、普通に就職して、普通に結婚して、普通に歳とって、普通に家族に看取られる。はぁとの人生はそんな平坦なはずだった。

 でも、20代も半ばに差し掛かった誕生日の日、このままで良いのだろうかという恐怖を感じた。

夢を追うのを諦め、他の人と変わらない人生を歩んでいく。そんな人生に後悔はしないのだろうか。

 そんな事を考えるようになって、落ち着いて自分が歩いてきた道を思い出してみた。山も谷もない、平坦な道。とてもつまらない道を。

 ここで踏み出さなければ後悔する、直観的にそう思ったけど、やっぱり一歩を踏み出す勇気ははぁとにはなかった。

 あの時は気の迷いだと思い込むことで、平坦な人生を捨てるのを踏みとどまってはみた。でも、1日経って、1か月経って、また1年が経っても恐怖は消える事はなかった。

 むしろ、時間が経つにつれ、歳を重ねる毎に後悔だけが通り過ぎて行った。

 後悔ばかりの人生を歩んでいたはぁとだったけど、26になってようやく一歩を踏み出す勇気が湧いてきた。遅すぎたかもしれないけど、後悔しなくてすむような人生の入り口に立てたのだ。

「アイドルになったはいいけど、色々大変だったなぁ☆」

 毎日毎日レッスンと営業ばかりで顔出しで歌って踊れるような仕事は何一つなかった。

 他人から見ればしょうもない仕事ばかりしていたはずだが、はぁとは毎日が楽しくて仕方なかった。だって、今までの平坦な毎日ではなくて、必死になれるような日々が過ぎていったのだから。

 そりゃたまには泣きたくなる日もあったけど、泣きたくなるって事はそれだけ感情が動かされるような人生になったと言う事だ。アイドルになる前では泣きたくすらならなかったのに比べれば幾分マシだろう。


 日付が変わって30分ほど経った頃、ようやく事務所に辿り着いた。普段ならばこんな時間まで誰かが居ることは少ないのだが、総選挙の時期は違う。プロデューサーなりスタッフなりがほぼ常に誰かしら居るのだ。

 実際、事務所に来てみればちひろさんもまだ居て、プロデューサーが先ほど仮眠を取ると言ってソファに横になったと教えてもらった。

 ちひろさんはと言うと気を利かせてくれたのか、コンビニに行くと言いいながらノートパソコンを片手に財布を机の上に置いたまま出て行った。あの感じだと30分くらいは戻ってこないだろう。

「はぁとは良い人たちに巡り合えたんだなぁ……☆」

 ちひろさんの優しさに感謝しつつ、アイドルになれた事を改めて嬉しく思う。ちひろさんにもプロデューサーにもアイドルになっていなかったら会えなかったのだから。

「それもこれも、プロデューサーがはぁとを見つけてくれたからだぞ☆」

 目の前のソファでよだれをたらしながら寝ているプロデューサーの頬をつつく。

 はぁとを見つけてくれて、スポットライトに照らされるステージに連れ出してくれたはぁとの勇者様。

 今はよだれたらしながらアホ面で寝ているけども、いや……普段も割とアホだけど、やる時はやるし、仕事中は思わず見とれてしまうほどにはカッコいい。

 どうにもならない日々を過ごしていたはぁとには、一歩を踏み出すだけで勇気を使い果たしてしまった。平坦な道ばかりじゃつまらないとは言え、独りぼっちでは這い上がるようにしか進めない道を歩くのは到底無理な話だった。

「プロデューサーと一緒だったからここまで来れたんだよね」

 アイドルになってからは躓きながら転びながら進む道だったけど、プロデューサーと二人だから歩いてこれた。

 一人では挫折してしまったかもしれない険しい道だったけど、プロデューサーと二人だったから平気だった。むしろ、這い上がるくらいで丁度良かったのだ。

 プロデューサーがどう思っているのかはわからないが、平坦な道じゃなくて這い上がるようにしなければ進めないような険しい道だったから、ここまで来れたとはぁとは思っている。

もし、平坦な道ばかりだったのならつまらなくて途中で辞めてしまっただろう。でも、険しい道だからこそ、二人一緒じゃなきゃ進めなかったからこそ、はぁとだけが歩を止めるわけにはいかなかった。

 ようやくここまで這い上がって来たのだ。あと、ほんの少しだけ頑張ってみればもっと違う景色が見れるだろう。

「プロデューサーと歩く明日だから、這い上がるくらいで丁度いいんだぞ☆」

 勇者様の頬に軽く口づけをして、赤くなった顔を誰にも見せないようにこそこそと仮眠室に向かう。

 明日もはぁとはプロデューサーと這い上がるようにして歩いていくのだ。

End

初代グルグルのedかな?
あれ結構好きなんだよね
ただし次の作品のドキ伝テメーはダメだ

以上です。

タイトルと本文を奥井亜紀さんの「Wind Climbing 〜風にあそばれて〜」から拝借しました。
魔法陣グルグルのEDでした。久々に聞く機会があったのですが相変わらず良い曲過ぎて泣けてきます。
私には一体いつ一緒に歩いてくれるキミが現れてくれるのでしょうか。早く画面の向こうに行く技術を作ってください。

総選挙はいよいよ明日の5月9日の18時59分までです。
しゅがはさんは中間発表で属性別Pa5位まで来ています。
属性別3位までに入れば声が実装されます。何卒、『佐藤心』に清き一票をお願いします。
あと、『神谷奈緒』にも是非ともよろしくお願いします。

総選挙終了までもう時間が無いですが、声無しアイドルは声帯実装を目指して頑張りましょう。

それでは依頼出してきます。

シュガハさんはわかるが奈緒はアニメにも出だし声あるやん

>>8
ドキ伝はまぁ……その……ね? うん……あれはあれで……うん……。

>>10
奈緒も担当なもので……最近はしゅがはさんばっかりですけど、一番最初に担当になったのは奈緒なので。

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