凛「母の日の」桃華「決闘ですわ!」 (21)

桃華「おはようございます…あら?」

薫「せんせぇ!『かたたたき』って、この漢字であってる?」

P「えっと、どれどれ…字が崩れ過ぎて『戸月叩き』になってるな。まだ習ってない漢字なんだから、無理して使わなくていいんだぞ、薫」

薫「んー…かおる、もう少しがんばってみる!」

P「薫は偉いなぁ!頭を撫でちゃおう」

薫「えへへー!あ、桃華ちゃん!おっはようございまー!」

桃華「おはようございます、薫さん。プラスチック製の安全なものとはいえ、ハサミを持ったまま余所見をするのはよろしくなくてよ」

薫「あ、そうだよね!気をつけまー!」

P「おはよう、桃華。薫はそれ、書き終わったら呼んでくれ。ミシン目カッターで一枚ずつ切り離せるようにしてやるからな」

桃華「薫さんは何を作ってらっしゃるの?」

薫「かたたきけん!」

P「肩叩き券、な。しかも10枚綴り。いやーほら、もうすぐ母の日だろ?お母さんへの、いつものお礼にプレゼントするんだってさ」

桃華「そうでしたの…ふふっ」

薫「?」

桃華「あ、いえ、その…決して薫さんを笑ったわけではないんですの。ただ、とても素敵だな、と思って」

薫「すてき?」

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桃華「ええ。薫さんが頑張っている姿を見ると、何だかわたくしまで暖かい気持ちになりますもの。どんな高価な品であろうと、 そこに優しさがなければ人の心は動かせません。贈り物とは、どんな気持ちを込めるか、どれだけの気持ちを込めるかが大切なのだと改めて感じました」

P「贈り物の価値は、それに込められた想いにある、ということか…いいこと言うじゃないか、桃華」

桃華「そ、そんな…頭を撫でられるほどのことでは…ふふふっ…」

桃華「…あら、この『歌のプレゼント券』も薫さんが作ったものでして?」

P「いや、それは俺が母の日に贈るプレゼントだ」

桃華「…え!?」

P「GW特番の収録に雑誌のジューンブライド特集の準備と、この時期も皆のプロデュースで忙しいもんだからさ。幸か不幸か、肩を叩きに帰ることもできなくてな。でも歌なら、どれだけ離れていても電話越しに聞かせられるだろ?」

桃華「…えっと…そう、ですわね」

P「これも10枚綴りで、一枚につき一曲リクエストに応えるシステムだ。アカペラだけど、逆にそれが郷愁を誘うと思うんだよね」

桃華(郷愁というより哀愁ですわね…)

P「いい大人がこんなもの贈るのはおかしいかなーって不安だったんだけど、桃華のおかげで自信が持てたよ!」

桃華「それは…良かったですわ」

桃華(プロデューサーちゃま…余程お疲れなのかしら…しかし本気ならマズイですわ…)

桃華(プロデューサーちゃまの歌。わたくし個人としてはフォートナムメイソンの紅茶セット相当、もしくはそれ以上の価値を見出せるものですし、ギフトとしては肉親ならギリギリ大丈夫…いや、軽傷で済むかもしれません…しかし相手がわたくしの両親となればどうでしょう)

桃華(通例、両家にご挨拶に行く場合、手土産の一つでも持参するもの。わたくしの両親に対する結婚報告は、プロデューサーちゃまに来るべき試練の一つ!しかし今のプロデューサーちゃまなら最悪、うまい棒のバラエティパック片手に結婚を申し込みに来かねませんわ!そうなれば婚約を認めてもらうなどとても…)

桃華(プロデューサーちゃまには櫻井家の跡取りになって貰わないといけませんもの。ここでプロデューサーちゃまの価値観を矯正する必要がありますわ…二人の未来のために!)

桃華「そういえば、今年の母の日のプレゼントはフラワーギフトが人気だそうですわ。プロデューサーちゃまはどう思います?」

P「まぁ、いくら豪勢な花束を用意したところでなぁ。やはり『手作り』というキラーワードには敵いませんよ」

桃華「プロデューサーちゃま、忙しくて時間が無いなら、何も手作りにこだわることはないと思いますの。店先で相手の喜ぶ顔を思い浮かべながらプレゼントを選ぶ。それは、とても素敵なことだと…」

P「…いや、金はかけたくてもかけられないんだよ。俺の財布の紐を握っているのは俺自身じゃない、ちひろさんだ…」

桃華「そ、そうですか…」

桃華「し、しかしレディへの贈り物なら花と詩に敵うものはありませんわ!手作りの花束、これなら鬼に金棒です!やはり社会人となると、贈り物にセンスも問われると思いますの!」

P「なるほど…桃華が言うと説得力があるな。よし、そうと決まれば植物採集だ!プロダクションから出た先、目についた野花を片っ端から摘んでやる!」

凛「甘いよ、プロデューサー」

P「急に現れるな、凛」

凛「プロデューサーがいるところに渋谷有り。私達の関係は、光と影、月と太陽、神とピッコロ大魔王、高橋朝雄の原作に対するちばてつやの『あしたのジョー』…もはやそういうレベルなんだよ」

P「そうなんだ…で、甘いって何が?」

凛「実家が花屋という商売柄、ときどき耳にするんだけどね。道端で摘んだ花が他人の私有地に咲いていたものだった場合、トラブルに発展してしまうケースは少なくないんだよ」

P「へぇ、じゃあ迂闊に花なんか摘めないな。あ、じゃあ夕美に分けて貰おう!きっとカーネーションも育ててるだろ」

凛「確かに、この前夕美のマイガーデンを見せてもらったけど、綺麗なカーネーションが咲いていたよ。でもプロデューサー、カーネーション栽培の難しさを知ってる?」

P「難しいの?」

凛「一年草…つまり植えてから一年で枯れちゃうことが多いと言われるし、花は虫が付きやすくて病気にもかかりやすいんだ。それでも夕美が目一杯注いだ愛情のおかげで一輪だけ綺麗な花を咲かせていたよ」

P「一輪…」

凛「日頃お世話になってるプロデューサーのためとなれば、良い子の夕美は躊躇うことなく差し出すだろうね。苦労して育てた、たった一輪のカーネーションを…」

P「…ダメだ、夕美に甘えることはできない」

凛「そうだね。そこで私からも提案。きっとプロデューサーのお母さん…いや、お義母さんも喜んでくれるプレゼントを考えたんだ」

桃華「今この方、義理の母と書いて『おかあさん』と読みましたわ!?」

P「…その心は?」

凛「孫の顔、だよ…」

桃華「!」

P「いや、まず相手探しから始めないといけないんだけど…」

凛「相手なら探さなくてもここにいるよ、プロデューサー」

P「…凛」

凛「私の蒼空へと飛ばそう?希望の種…」

P「君がいればまた一つ花は咲く…か」

桃華「な、何の話をしてらっしゃるの?」

凛「桃華はまだ知らなくていいんだよ。そのまま綺麗に育ってね」

P「って何を馬鹿なこと言ってるんだ…実を言うと、もう頭が回らないんだ…もう三日もロクに寝てないからな」

凛「もう今日は帰って寝なよ」

P「そうだな…今日の仕事は粗方片付いたし、ちひろさんに相談して早退させて貰おう…」

凛「というわけで仕切り直しだよ、桃華。明日、プロデューサーに母の日の贈り物について、お互いにプレゼンテーションするっていうのはどう?」

桃華「そのプレゼンでプロデューサーちゃまの心を掴むことが、そのままお義母様の心を掴むことに繋がるというわけですわね。望むところですわ!」

薫「せんせぇ!かけたよー!あれ、せんせぇ?」


【翌日、決戦の日】

凛「今日は宜しくね、未央」

未央「事態がよく飲み込めないんだけど…とりあえずプロデューサーの母の日のプレゼントを考えればいいんだね?」

凛「プロデューサー、昨日はよく眠れた?」

P「ああ。俺、どうかしてたよ…歌のプレゼント券って…」

凛「目が覚めたようで良かったよ。さて、そろそろ向こうも来る頃だね」

桃華「お待たせしました」

薫「おはようございまー!」

千枝「お、おはようございます!」

雪美「…P……おはよう…」

千佳「P君おはよー!」

凛「卑怯だよ、五人がかりなんて!」

未央「落ち着こうしぶりん、確かに五人いるけど全員小学生だから!」

桃華「助っ人を呼んではいけない、そんなルールありませんでしたわよね?だからそちらも未央さんを連れているのでしょうし…加えるなら、その人数も制限されていなかった!その気になれば、仕事中の若葉さん以外ならLMBGからまだまだ仲間を呼べますわよ!」

凛「くっ…これは強敵だね、未央!」

未央「いや、もう相手が残りの誰を呼ぼうと戦況が劇的に変化することは無いから!」

卯月「皆さん揃いましたね!今回の審判を務めます、島村卯月です!頑張ります!」

未央「見かけないと思ったらしまむー審判だったんだ」

卯月「ではルールを説明します!お互い持ち時間を10分とし、時間内に母の日の贈り物についてプレゼンを行って下さい!プロデューサーさんに採用された方が勝者です!あと武器の使用は禁止なので、皆さんボディチェックさせて貰いますね!」

未央「そこまで殺伐とする要素ある!?」

卯月「雪美ちゃん、このメリケンサックは没収させてもらいます!」

未央「思わぬところからホコリが出てきた!」

凛「それにしても数の利を取られたのは痛いね。少しでもこちらが有利になるように、ユニットの仲間である卯月に審判をお願いしたのは失敗だったよ」

未央「しぶりん一番卑怯じゃん!発想が小悪党のそれだよ!」

P「あ、ごめん。朝会議に間に合わなくなるんでお互い持ち時間5分に変更して下さい」

未央「もうグダグダになってきてるし!」

卯月「それでは先攻、後攻をコイントスで決めます!」

桃華「表ですわ」

凛「表で」

未央「そこは譲りなよ、しぶりん!」

桃華「…よし、表が出ましたわ!こちらから参りますわよ!薫さん、千佳さん、お願いします!」

千佳「P君、千佳のタンバリン聞いててねー!薫ちゃん、せーのでいくよー!」

薫「はーい!せんせぇ、かおるはドラムたたくからねー!」

凛「軽快なBGMを流すことによって、自分達に好印象を与える空間を作ろうというわけだね。バッファーを連れてくるとは…やるね」

未央「なんか解説始めちゃったよ…」

P「二人とも可愛いなぁ…」

桃華「わたくしがオススメする母の日のプレゼントはこちらです!」

未央「おぉ、かわいい小物入れだね!」

桃華「こちらは、わたくしが作りましたの!千枝さんにお裁縫を習いながらですが…」

千枝「これフェルトで出来てるんです。桃華ちゃん、とても頑張ったんですよ!」

P「へぇ、よく出来てるな。カーネーションを模した飾りまで付いてるのか」

桃華「ええ、実物が用意できなくても、これならカーネーションのプレゼントが出来ますの!」

P「良いアイデアだな…あれ?桃華、その指の絆創膏…」

桃華「!こ、これはその…あまり針の扱いには慣れていないものですから…間違って自分で刺してしまっただけで…」

P「大丈夫か?よしよし、痛かっただろう…」

凛「どれだけバフ付けてくるの!?こっちだって…未央、絆創膏持ってきて!」

未央「いや、『お裁縫中のミス』っていうのがポイントなわけで、ただダメージ痕残せばいいってもんじゃないからね!プラモじゃないんだから!」

P「しかし俺も裁縫が得意というわけではないからなぁ…こんな上等なもの作れるかどうか…」

桃華「それなら桃華が教えてさし上げますわ!」

千枝「いえ、桃華ちゃんはまだ不慣れだと思うから、ここは千枝が…ね」

桃華「そ、そうですわね」

未央「ユニット内の嫌な上下関係が垣間見えたよ!?」

凛「桃華はLMBG内では新参者だからね」

卯月「はい、桃華ちゃんチーム、時間になりました!プロデューサーさん、プレゼンを受けた感想は如何でしたか?」

P「千佳が疲れちゃってタンバリンを叩く手を休めるところとか、薫がドラムスティックを落とすところあたりがツボでしたね」

未央「外野ばっかり見てるよこの人!」

凛「次は私達の番だね。いくよ、未央…ん?なに、この悲しげな音色は…」

未央「モーツァルトの別離の歌だね。音源は…」

雪美「…ぷは……私の…ハーモニカ……」

凛「まさかデバフまで用意してたの!?くっ…とことん不利な状況だけど、負けないよ!」

未央「端から見てるとしぶりんが率先してアウェーに飛び込んでるようにしか見えないんだけど…」

凛「私の提案する母の日のプレゼントは…これだよ!」

桃華「フェルトの小物入れ…ですか?」

未央「被っちゃったよ!」

P「凛が作ったのか」

凛「うん、海に習って作ったんだ。二ヶ月前くらいに」

未央「いや、駄目じゃん!それだと家にあった適当な手作り品を持ってきただけでしょ!?せめて今回のプレゼン用に新作を作ってきなよ!」

凛「未央はどっちの味方なの!?」

未央「私の手を振り払いながら悪路を突っ走ってるのはしぶりんだよ!?」

凛「まぁ確かにこれだけだとインパクトが薄いので、今回はこれに実家の花屋から持ってきたカーネーションを付けます」

未央「通販か!もうプレゼンもへったくれもないよ!」

凛「実際に買うとなると結構な値段になるけど、私のプレゼンを選んでくれるなら無料にするよ」

未央「もう最悪だよ!この一言に尽きる!」

凛「ほら見てプロデューサー、絆創膏」

未央「だから!」

卯月「はい、凛ちゃんチームもそこまでです!」

凛「未央、お疲れ」

未央「何そのやりきった感!どうすればあのプロセスを経てそんな良い顔ができるの!?」

卯月「それではプロデューサーさん、結果発表をお願いします!」

桃華「プロデューサーちゃま、桃華を選んで下さいまし!」

千枝「プロデューサーさん、千枝と一緒にお裁縫しませんか!?」

薫「せんせぇ、かおるともっかい『けん』つくろー?」

千佳「P君、魔法少女ごっこしよー!」

雪美「P…私を……選んで」

凛「パジェロ!パジェロ!」

卯月「た、大変なことになっちゃいましたね」

未央「うん、どうしようプロデューサー…ってあれ?何でそんなホッコリした表情になってるの?」

P「あぁ、いや…ウチの母親、事あるたびに俺の心配ばかりしてくるんだよ。体壊してないか、うまくやれてるか、って。まぁ俺の方から滅多に連絡しないのが原因なんだけど」

P「うまくやれてるかは分からないけどさ、お前達のおかげで、毎日こうやって楽しく過ごせてることを報告すれば、ちょっとは安心してくれるかもな」

卯月「…ふふ、そうですね!きっと安心してくれますよ!」

未央(何だかんだで、この事務所はプロデューサーのおかげで上手く回ってるんだなぁ…)

結局プロデューサーはみんなと一緒に、二日かけてフェルトで写真立てを作り、それを母の日のプレゼントにした。

写真立てには、プロデューサーと、事務所のみんなで撮った集合写真が入っていた。これがまた、みんな良い笑顔で写っててさ。

後日、私はプロデューサーがお母さんと、楽しげに電話で話すのを見た。上手くいったようで良かった良かった!

凛「次は父の日…かな」

桃華「望むところですわ!」

未央「もうやめなって!」

おしまい

>>6

ガチャで爆死して母の日のプレゼントに悩む親不孝なPという設定です

ちっひ期待してた方がいたら申し訳ない

お暇つぶしになれば幸いです。
依頼出してきます

大事な一言を忘れていました

読んで下さった方、
お付き合い頂き、ありがとうございました

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