──────── 【連れて参りました、我が王よ】
【御苦労、後は四天王達に任せる】
【主は下がれ】
──────── 【……】
【なんだ珍しく余の顔など見おって、何かあるのか】
──────── 【あの王女を招いたのは、何故かと】
魔王【フン、知れた事よ……『魔王』たる余に相応しかったからだ】
魔王【余はあの娘を花嫁に迎え、そして人間どもを支配すべく戦争へと参るのだ】
魔王【破壊と滅びしか知らぬ悪竜の貴様には、少々理解できぬ趣かな?】
──────── 【……】
──────── 【そのようだ】
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~~【牢屋】~~
姫「……」
姫「それだけ大きな体で音を消して移動できるのは、魔法の類いかな?」
悪竜【……】
悪竜【どうやって手足の枷を解いた】
姫「コツがあってね」
悪竜【丁重に扱えと言われてはいるが、それでも君は囚われの身だという事を忘れるな】
姫「……そうだったね、でも私は貴方に言わなきゃ」
姫「『ありがとう』」ニコッ
悪竜【…………】
悪竜【それだ、それが私には分からない】
悪竜【君は何故、何の抵抗もせずに連れられて来たのだ】
姫「来たかったからかな」
悪竜【囚われると分かった時の君は、そこで初めて抵抗をしたじゃないか】
姫「そうだね、捕まるのは聞いてなかったから」
悪竜【私や魔物達を恐ろしく思わないのか】
姫「微塵も」
悪竜【……】
姫「それで、私はこれからどうなるのかな」
悪竜【……我が王、魔王の花嫁にされる】
姫「魔王?」
悪竜【魔物の王】
悪竜【世界最強の存在、全ての魔の王だ】
姫「最強……伝説の『魔女』よりも?」
悪竜【そうだ】
姫「……そう、なら私なんかじゃどうにもできないね」
姫「少しだけ残念かな」
悪竜【残念、とはなんだ? まるで何か目的があったように】
姫「自由と愛が欲しかったの、私」
悪竜【…………?】
< 【そこで何をしている、白トカゲ】
悪竜【……四天王、炎猿】
炎猿【ほぉぅ~? この人間の女が西の大国、エストの王女か!】ズッシズッシ
炎猿【思ったより細身なんだなぁ? てっきり俺ァ筋骨隆々の女かと思ってたぜ】
炎猿【何せ……】
グルルルゥ・・・ッ
悪竜【…………】
炎猿【……あ?】
悪竜【我が王が四天王を呼んでいたぞ、いつまでもこんな所で油を売っている暇があるのか】
炎猿【……】
炎猿【口に気を付けろよ、白トカゲ】ズッシズッシ……
悪竜【……】
姫「……大きいのね魔物って」
姫「私、初めて見たよ」
悪竜【さっきの奴や私は特別だ、大抵は大きくない】
姫「そうなんだ?」
悪竜【…………】
姫「……」
姫「何か聞きたいことがありそうだね」
悪竜【何故分かる】
姫「教えてあげない」
悪竜【ヌゥ・・・】
姫「私が気になる?」
悪竜【……ああ、私は君という存在が分からない】
姫「心が読めるの?」
悪竜【違う】
悪竜【だが人間に関して言えば私は大抵の感情を読み取れる】
悪竜【王女、君から読み取れるのは『寂しさ』に他ならない】
姫「……」
悪竜【何故だ、君は恐怖というものが無いのか】
姫「そんなものよりも私はずっと孤独だから、無いよ」スタスタ
< スッ・・・ピトッ
悪竜【……!!】
悪竜【貴様……ッ】ズサァッ!!
姫「触られるのは嫌だった?」
悪竜【気安く触れるな、人間……!】
姫「ごめんなさい」
姫「でも、それが私の答えだよ」
姫「私は寂しいの、こうして誰かと触れ合って、愛し愛されたかった……でも無理だった」
悪竜【ヌ・・・】
姫「私の限界はお父様とあの国から出て、貴方に触れること」
姫「これが私の『精一杯出来たこと』だった……その事実が、私は寂しいの」
悪竜【……】
悪竜【自由とは触れ合う事か、では君の言う愛とは何だ?】
姫「……?」
姫「愛は、愛だよ」
悪竜【人間の発情している状態だろう】
姫「違うよ、愛は……」
姫「…………」
悪竜【?】グルル…
姫「……あなたは、愛というものを知らないんだね」
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悪竜【……】
悪竜【……知らなくて問題は無い筈だが】
姫「あるんじゃないかな」
悪竜【……】
姫「心があるのに、愛を知らないのはとても哀しいことだよ」
姫「ずっと温かさも知らないで生きるのは、きっと辛いから」
姫「私は辛いから」
悪竜【……】
悪竜【お前は愛を知らないのに、語るのか】
姫「愛を求めてるからこそ語れる、一度は愛を経験してるけどそれを忘れてしまいそうになってる」
姫「だから私は……」
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