雪風「しれぇ! 野球賭博ってなんですかー?」
提督「頭痛が痛い……」
摩耶「いったいどこの日本語だよ、それは」
雪風「しれぇー!」
提督「どこからそんなダーティな言葉を仕入れてくるんだ」
摩耶「テレビのニュースじゃないのか? 最近、プロ球団の選手が野球賭博で何人もしょっ引かれてるらしいぜ」
提督「俺は新聞も読まんしテレビも見ないからなぁ」
摩耶「あたしもタイタンズの選手がそんなことしてたなんて聞いて、ショックだったし」
雪風「し・れ・えぇー!」
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提督「今度という今度はダメです!」
雪風「雪風、もう子供じゃありません!」
提督「野球賭博は、大人子供関係なく、犯罪なの!」
摩耶「でも、提督、月に一回くらい艦娘GPだかなんとかいって、あたしたちを馬に見立てて走らせてるじゃん」
提督「……あれは、日々戦いに明け暮れる兵士たちの慰みとしてだな」
雪風「雪風、聞いたことありません」
摩耶「なに? そうなのか。あっ――」
摩耶(もしかして、あたしマズった?)
提督(もしかしなくとも、だ。雪風なんかに賭けられたら、どんな大穴も当たりかねん)
摩耶(あちゃー、実はあたし、あれで結構儲けさせてもらってたんだよなぁ)
提督(しばらくは開催を見送る……)
青葉「司令官! しつれーしまーす! 次回の艦娘GPの取材を――」
提督「また間の悪い……」
青葉「情報によると、今回はあたらしい艦が進水するとかなんとか……」
提督「青葉、ちょっとこっちに来なさい」
青葉「ふぇ?」
提督(いいか、ここには雪風がいる。そして雪風には艦娘GPのことが露見しないように、俺が徹底的に情報を遮断してきた。この意味が分かるな?)
青葉(あー、もしかして、青葉やっちゃいました?)
提督(もしかしなくても、だ!)
雪風「ずるーい! 大人が汚い話してます。雪風も混ぜてください!」
提督(雪風の気を、なんとか艦娘GPからそらさねば……)
提督「わかったわかった。雪風には野球賭博がなんたるかを教えてやろう」
雪風「ありがとうございます!」
提督「よろしい。じゃあ、ここで二つのチームを用意する。ひとつは長門を筆頭とした戦艦・重巡さんチーム。もうひとつは、神通がキャプテンの軽巡・駆逐さんチーム。さて、どっちが勝つでしょうか」
雪風「長門さんのチームが勝つと思います」
提督「そうだな。軽巡もたしかに動ける連中は多いが、戦艦・重巡の連中は野球馬鹿だ。俺は滅多に行かんが、夜の食堂のテレビ番組が、シーズン中は野球固定で動かない、という苦情をよく耳にするのは、長門のせいだ」
摩耶「そうだったのか……」
提督「チーム長門とチーム神通が戦った場合、チーム長門が勝つのは当たり前だ。このままじゃ賭けが成立しないか、もしくはチーム神通のオッズがえらいことになる」
提督「そこで、ハンデを設ける」
雪風「ハンデ?」
提督「チーム長門が15点差で勝たないと、勝ちにならない、っていう風にな」
青葉「長門さん率いる戦艦チームだと、15点差でも苦しくないですかね」
提督「まぁ、それは胴元とハンデ師の判断次第だな。とにかく、賭けが偏らないようにハンデを設けるんだ」
雪風「なるほど!」
提督「そうして、そういう風に長門チームが15点差以上取らないと勝ちにならない、というのを、『長門チームからハンデが15点出ている』っていうんだ」
提督「基本的には存在しない。賭けた額の同額からテラの引かれた金額が、胴元から支払われる」
摩耶「テラ?」
提督「テラ銭、場代のことだな。胴元は賭けに勝った人からテラ銭を頂いて、それを収入にしている。反対に負けた人が常連さんだった場合だったりすると、負け額の1割バックのサービスがあったりする。ま、これはヤクザのやり口だな」
青葉「なるほどなるほど。そうやって客が飛ばないようにするんですね」
雪風「じゃあ、神通さんの軽巡チームと、天龍さんの軽巡・駆逐チームだと、どんなハンデを出しますか?」
提督「そうだなぁ。難しいが、神通から、0.5かな」
雪風「0.5? 野球に0.5点なんてありません!」
提督「まぁ、そうだよな。でも、これは賭博なんだ。どういうことかっていうと――」
>>9 一行抜けてました。冒頭に、
青葉「それじゃあ、競馬みたいにオッズなんかはないってことですか?」
を挿入。
提督「例えば、神通チームが3-0で天龍チームに買勝ったとする。この場合、神通チームに10万張ってた人は丸勝ちになって、10万からテラを引かれた金額を貰える」
提督「ここで、1-0で神通チームが勝ったとする。じゃあ、どうなると思う?」
青葉「なるほど! 賭博的には、0.5点分の勝ちになるということですね!」
雪風「???」
摩耶「ああ、なるほど。つまり、この場合は、10万ではなく、半分の5万からテラ銭を引かれた額しかもらえないっていうことか」
提督「そういうことだ。0-0で引き分けた場合は、神通チームに張ってた人は丸負け、天龍チームに5分勝ちになる仕組みだ」
雪風「??? 難しくてよくわかりません……」
青葉「青葉はばっちり理解しましたよー!」
提督「ま、覚えなくていいことだ。そもそも賭博は犯罪だ」
雪風「じゃあ、じゃあ、時津風のチームと夕立のチームだったらどうなりますか?」
提督「うーん……夕立のチームは打線はいいけど、ピッチャーがアレだし、時津風のチームも、わりとエラー多いしなぁ……。難しいところだが、さすがに夕立チームから1半……1半5くらいか?」
雪風「半?」
摩耶「5?」
提督「半、っていうのは、言うなら引き分けでも負けっていう意味だ。つまり、1点差だと丸負けということになる。それに0.5点の意味の5が付く」
青葉「つまり、2点差でも5分勝ちにしかならない?」
提督「そうだ。時津風チームにレーベとマックスが入ってなかったら、3半ぐらいで出したがな」
摩耶「しっかし提督。そんなに詳しいなら、鎮守府で公式大会でも開いて、提督が胴元すりゃいいじゃねぇか」
提督「馬鹿。そんなことしたら鎮守府の風紀が乱れるだろ。それに、こういうのは胴元が継続的に儲けていきそうに見えるが、そうじゃない」
提督「これは俺の知り合いの提督の話だが……鎮守府で定期的にサッカー大会をしていたらしい。もちろん、裏でその提督が胴元をしていてな。別の鎮守府の提督なんかも読んでいたらしい」
提督「はじめは調子よく胴元が買っていたが、ある時、ひとりの提督が負け込んでいたらしい。これじゃいかん、取り返せねばと、500万、1000万、2000万、とどこにでもよくある倍々ゲームの始まりだな」
青葉「それで、どこかで当てられてしまったと」
提督「そういうことだ。その提督は、しかたなく艦娘を売ったらしい」
摩耶「艦娘って売れんのかよ……」
提督「10年ほど前の話だ。当時は艦娘の移動ももう少し緩かったが、それが発覚したせいで、規制がキツくなったんだ」
青葉「何事も、うまい話には穴があるということですね」
提督「ま、そいつも馬鹿だっただけだ。上限を10万とかに抑えてれば、もう少しなんとかなっただろうに。欲が出たんだろうなぁ」
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