岡部「また、駄目かっ…!!」
岡部「――クソッ、クソッ!」カタカタカタ
岡部「跳べよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
――バシュゥゥゥゥゥン!!
「はぁ……はぁ……ッ!?」
(タイムリープ成功……か?)
ダル「んぉ?どしたんー?いきなり荒い息遣いして、体調でも悪いん?」
「ッ!?お、おぉ!マイフェイバリットライトアームダァァァルではないかぁぁぁ!!」
ダル「へっ!?え、えぇ?あ、えと……まじでどしたん?なんか変だお?」
「変とはなんだ変とは!相変わらず失礼な奴だな、まったく」
「この脅威のマッドサイエンティストを捕まえて変などと」
「いや、待てよ? マッドサイエンティストなのだからむしろ変でなのが当たり前なのか? しかし……」
ダル「あぁ! なんぞ、それおかりんの真似かぁ。唐突すぎてびっくりしたおw」
「やはり変と言われるのはプライド的にだな……って、真似だと? 一体なんの事だ、ダルよ」
ダル「またまたぁ、悪乗りが過ぎるってーの。 て、言うかなんでおかりんのケータイ持ってるん?」
ダル「牧瀬氏」
岡栗「えっ」
岡栗(どうやら俺は、クリスティーナになってしまったらしい)
岡栗(先程のダルからの呼び掛けでその事に気が付き、ついつい動揺して逃げ出してしまった……)
岡栗(しかし、ブーツとはなんと歩きにくいのだ。助手め、面倒なものを履きよってからに)
岡栗(グヌヌ、更に言えばなにやら太股から踝にかけてはスースーするし、上半身は長袖だから逆に暑いし)
岡栗(助手はずっとこんな不便極まりない格好をしていたと言うのか……天才少女の癖に服装の機能性、合理性等は考えていないのだな)
岡栗(とは言え、今はこの格好を甘受するしかないか。まずはこうなった原因を考えるべきだろう。)
岡栗(タイムリープをしたら俺が助手になってしまった。そしてその手にあったのは俺の、岡部倫太郎の携帯電話)
岡栗(この事象から考えられる事は……そうだな)
未来の俺:タイムリープ、自分の携帯へ発信。
↓
現時間軸の岡部倫太郎:不明、恐らくラボに携帯を忘れたまま外出中。
↓
同助手:俺の携帯が鳴っているのに気が付き、通話を受ける。
↓
俺(岡栗):助手の脳に俺の記憶が送信され、見た目は助手、中身は俺な存在が誕生。
岡栗(恐らくこんな所だろうか? しかしこれは……)
岡栗(助手が言っていた理論では、このような事態が起きる可能性は低かった筈だ)
岡栗(確か、他人が人格データを受け取ってしまった場合は、なにかしらの齟齬が生じて失敗)
岡栗(または……廃人になる可能性がどうとか言ってなかったか?)ダラダラ
岡栗(くっ、助手め……危ないことをしてくれよって)
岡栗(……しかし、今からどうしようか)
岡栗(この時間軸のこの時刻、現時点ではタイムリープマシンは完成していないので、更なる過去に跳び、岡部倫太郎に戻るのは不可能)
岡栗(かと言って電話レンジではどうしようもないしな……)
岡栗(仕方ない、助手がタイムリーブマシンを完成させるのを待つ……か?)
岡栗(あれ?なにかがおかしいぞ…なにか……が――)
まゆり「あれー?紅莉栖ちゃんだぁ!トゥットゥルー☆まゆしぃです!」
岡栗「えっ」
岡栗(つ、ついまゆりからも逃げてしまった)
岡栗(だが、よく考えたら拙い……非常に拙いぞ)
岡栗(そう、俺が元に戻るには、助手が……紅莉栖がタイムリープマシンを完成させる必要がある)
岡栗(――その紅莉栖は、俺だ)
岡栗(紅莉栖が俺で俺が紅莉栖で……いや待て違う、この時間軸においてこの時間軸の俺はあくまでおれであって……くそ、落ち着くんだ俺!)
岡栗(ようは……この時間軸において、牧瀬紅莉栖は存在しない)
岡栗(厳密に言えば牧瀬紅莉栖の精神は、だが)
岡栗(つまり……タイムリープマシンは完成しな、い?)
岡栗「詰んでね?」
―――完
岡栗(いやいやいやいや、待て待って待つのだ、待ってくださいこの野郎!)
岡栗(終わっては駄目だ、諦めたら色々と終わってしまう!!)
岡栗(だが、だがどうすると言うのだ!?)
岡栗(タイムリープマシンの完成に助手の存在は不可欠)
岡栗(だというのに、助手はいないのだぞ!?)
岡栗「クソッ!クソォォォッ!!」
オカリン「……じょ、助手?どうしたのだ、一体?」
岡栗「!!?」
岡栗「あ、あ……」
岡栗(お、俺だ!目の前に俺が!! 白衣を着込んだ俺ガイル!!)
オカリン「ん?」
岡栗(え、これどーすんの)
オカリン(な、なんで助手は黙ってるのだ?なんか眉間に皺が寄って……まさか、怒ってるとか?)
オカリン「な、なにかあったのか助……い、いや紅莉栖よ」ダラダラ
岡栗「………」
岡栗(よ、呼び掛けられた!?どうすれば……は、話すべきなのか?しかし、いったい何を)
オカリン(なんだかわからんが、絶対怒ってる!ど、どうする俺……助手は怒ると怖いし、この表情だと海馬に電極を突き刺されかねん)
岡栗リン「「あ、あの……」」
((か、かぶったぁぁぁぁぁぁ!!?))ダラダラ
岡栗「あ、あぅあ……」
オカリン「ぬ、ぬぅぅ……」
岡栗(や、ヤバい……どつぼにはまった)
オカリン(こ、こうなってしまっては普通に会話を始めるのは互いに気まずい)
岡栗(どうすれば、どうすればいいん……そうだ!こんな時こそ)
岡栗「フ、フゥーハハハ!お、岡部倫太郎よ!このクリスティィーンナッ!こと牧瀬紅莉栖になにか用か? ん?い、言ってみるがいい!」
オカリン「フ、フゥーハ……は?」
オカリン「えっ」
岡栗「あ゛っ」
岡栗「あ、えっと……その」ダラダラ
オカリン「えっ……えっ?」
岡栗(やっちまったぁぁぁぁ!!?鳳凰院凶真に頼る癖が、クソッ! 明らかに不審がられているではないか!)
岡栗(どうする!?こ、このまま鳳凰院凶真で押し切るか、それともいっそ逃げるか!?)
岡栗「ど、どどどどど……」
オカリン「……ど?」
岡栗「――どっせぇぇぇぇい!!」
オカリン「ぬわっ!?く、紅莉栖!?待て、紅莉栖ゥゥゥゥゥ!!?」
岡栗「跳べよぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
岡栗(全力で走れ俺ェェェェェェ!!!)
真夜中になにしてんだろ、俺
岡栗「ハッ……ハッ……」
岡栗(ぐぅぅ……呼吸が、しんどい)
岡栗「カハッ……ハァッ……」チラッ
オカリン「ぜぇ……はっ…はっ……く、紅莉栖!ま、待て!!」
岡栗(付いて来るな俺ェェェェェェ!!)
岡栗「はぁっ…はぁっ…や、柳林神社……か!!」
岡栗(壁を乗り越えて、植え込みに隠れらればッ!!)
岡栗「と、跳べよぉぉぉぉぉぉぉおお!!」
オカリン「ちょ、あぶ――紅莉栖ゥゥゥゥゥ!!!」
岡栗(華麗に、着地する――ッ!!)
――グリッ!!
岡栗「んほぁぁぁぁぁぁ!!?」
オカリン「く、紅莉栖ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ルカ子「え、えぇっ!?牧瀬さん!!?」
オカリン「まったく、無茶をするからだ馬鹿者!コラ、暴れるんじゃない!!ルカ子、至急救急キットをここに!!」
岡栗「あ、足が!足がぁぁぁぁぁああ!!」バタバタ
ルカ子「は、はい!ま、牧瀬さん、すぐに持ってくるので動かず待っててください!!」
岡栗(くっ……な、情けない)
―――――
―――
―
ルカ子「はい、これで手当ては完了です」
岡栗「あたた……か、感謝する、ルカ子よ」
ルカ子「えっ」
岡栗「……じゃ、なくて、あ、ありあり、ありが、とう。漆原さん」ダラダラ
ルカ子「あ、はい。大事がなくて、本当によかったです」ニコッ
岡栗(あ、危なかった。しかし手際の良さといい、この笑みといい。やはりルカ子は普通の女よりも女らしいな)
岡栗「だが、男だ」ボソッ
ルカ子「はい?」
岡栗「い、いやいやいや。なんでもない……わよ?」
ルカ子「? そう、ですか」
岡栗(だぁぁぁぁ!喋りにくい!!)
続きは明日昼頃書こうと思う
おやすみおまいら
―――――
―――
―
ルカ子「はい、応急処置完了です」
岡栗「あ、あぁ、感謝する」
ルカ子「いえいえ、大事はなかったようで本当によかったです」ニコッ
岡栗(漆原ルカ……見た目、仕草、処置の手際。全てが完璧で、美少女にしか見えない可憐な笑み……)
岡栗「だが、男だ」ボソッ
ルカ子「えっ?なんですか?」
岡栗「いや、なんでもない……わ。迷惑を掛けた……わね?」
岡栗(くぅぅぅ……不便すぎるッ!)
オカリン「助ぉ手ぅよぉ、処置は終わったようだな。ルカ子、流石は秋葉を守護する巫女だ!見事な手際だ、腕を上げたようで喜ばしい限りだぞ、フゥーハハハ!」
岡栗(……端から見ると俺痛いな)
正直寝たりない
寝落ちするかもだが
書いていこうと思う
岡栗(それから、この時間軸の俺は鳳凰院凶真モードに入り、ルカ子に妖刀五月雨の素振りを始めさせた)
岡栗(この俺はタイムリープを体験した俺ではない為だろう、その一時はどこか平和に満ち溢れ。清流が如き穏やかさで時間と言う名の川は流れていった)
オカリン「よし、今日の鍛錬はここまでた!助手よ、ラボへと戻るぞ」
岡栗「わ、わかった」
岡栗(俺とて、この数時間を怠惰に過ごしたわけではない。ひたすら考え事に費やしていた)
岡栗(まずこの世界線におけるラボメンへの接し方や身のフリ方。こちらは無口キャラを演じて言葉少なに返事をする事でクリアした)
ルカ子「あ、あの岡……きょ、凶真さん、ありがとう御座いました!!」
オカリン「うむ、いずれ来るラグナロックに備え、ますます精進するように!では、エル・プサイ・コングルゥ」
ルカ子「え、えとえと……エル・プサン・ジャンガリー?」アセアセ
オカリン「違ぁぁぁぁう!エル・プサイ・コングルゥ、だッ!!」
ルカ子「はぅぅ!エ、エル・プサイ・コングルゥ!、です……」
岡栗(そして、なによりも大事な今後のことなのだが、こちらに関しても光明が見えた)
岡栗(『記憶とは、積蓄されて行くものである』とは、誰の台詞だったか。その正しさを身を持って実感する事になったのだ)
岡栗(要はどういうことかって? つまりだな、なんとこの体には牧瀬紅莉栖としての知識、岡部倫太郎としての知識両方がインプットされていたのである!)
岡栗(それに気付けたのも、ぼーっと階段に腰掛け、考えに耽ることができたおかげだろう)
岡栗(しかし、助手……表層意識が俺にすり替わっても「マイフォーク……」といつの間にか呟いてしまう程のフォークへの執着。誠に天晴れだと言えよう)
オカリン「さて、今度こそ行くぞクリスティーナ!」
岡栗「……あぁ」スッ
岡栗(俺の中に紅莉栖の知識が生きている以上、恐らくタイムリープマシンは作り出せる)
岡栗(設計図はしかと、思い浮かべた。帰ったらすぐにでも電話レンジの改造に着手せねば……)
岡栗「痛っ…!」フラッ
オカリン「おっと……だ、大丈夫か?クリスティーナ、まだ痛むようだな」ガシッ
岡栗「………」
オカリン(……ま、まだ怒ってるんだろうか。口数が少なすぎるぞ、助手よ)ダラダラ
オカリン(お、俺が一体なにをしたというのだ!く、くそ、かくなる上はっ)
オカリン「……ク、クリスティーナ。乗るが良い」スッ
岡栗「!?」
岡栗(お、おんぶだと?俺が、俺におんぶぅ!?なんなんだこのシチュエーション!)
岡栗「い、いや、遠慮しておく」
オカリン「ダメだ、歩けないのだろう?まったく、ブーツなんかで無茶をするからだ、馬鹿者。つべこべ言わずにさっさと乗るが良いザ・ゾンビよ!」
オカリン「……ラボメンが傷付いたならば手を貸し、共に歩むのがラボの長たるこの鳳凰院凶真の仕事だからな」
岡栗「………えっ」ドキッ
岡栗(ちょっと待てドキッってなんだ!?おい、落ち着け俺!!)
オカリン「……紅莉栖?」
岡栗「うぁ……」ドキッ
岡栗(だからドキッじゃない!俺の中の紅莉栖落ち着けェェェェェェ!!!)
―――――
―――
―
オカリン「ほら、着いたぞ」ガチャ
岡栗「………//」
岡栗(う、迂闊だった。紅莉栖の知識が残っているならば、紅莉栖の感情も残っていてもおかしくはない)
岡栗(伝統的魂の在処、紅莉栖も悩んでいた問題が目の前に立ちはだかるとは……)
オカリン「ただいま帰ったぞ!」
ダル「お、オカリンどこいってたん?ケータイ忘れてたお」
オカリン「おぉ、どこにやったかと思えばラボにあったのか。少しルカ子と鍛錬をだな……おや、助手はまだ入って――」
岡栗(おっと、俺も早くラボに入るとするか)スタスタ
ダル「――あ、そういえばオカリン。昼に牧瀬氏がオカリンのケータイ握り締めてハァハァして……あっ」
オカリン「えっ」
岡栗「」
岡栗(は、端から見たらそうなるのか!?)
ダル「あ、いや、えと、その……」ダラダラ
オカリン「えっ……えっ?」
岡栗「」ダラダラ
ダル「ま、牧瀬氏!」
岡栗「な、なんだ!?」ビクッ
岡栗(流石は頼れるスーパーはカー!どうにかこの場を誤魔化すのだ!)
ダル「これはそういうフラグがたったと見て、イケメソな僕は早急に席を外した方がいい系?」キリッ
岡栗「死ね、氏ねじゃなくて死ね」ガンッ
ダル「ありがとうございまおふうっ!!」
ダル「」ピクピク
オカリン「………」ガタガタガタ
岡栗「フーッ!フーッ!!」
岡栗(こ、こんな事をしてる場合ではない!早くタイムリープマシンを完成させて戻らないと……)チラッ
オカリン「か、海馬に電極は勘弁をっ!」ヒィッ!
岡栗「………//」ドキドキ
岡栗(ナルシストとホモに……同時に目覚めてしまいかねん)汗ダラー
岡栗「た、タイムリープマシンの製作に入る!邪魔をしないように!!」スタスタ
オカリン「は、はいぃ!!」
カーテン、シャッ
岡栗「つ、疲れる……」
カチャカチャ……カチャカチャ……
フゥーハハッ……フハッフハッ……
カチャカチャ……カチャカチャ……
まゆり「トゥットゥルー☆まゆしぃです」ガチャ
オカリン「お、おぉ、まゆりか」ホッ
岡栗(まゆら、か。アイツは変なところで鋭いからな、話すと気付かれかねん)カチャカチャ
まゆり「あれー?ねぇねぇオカリン、どうしてダルくんは白目でピクピクしてるのかな?」
ダル「」ビクンビクン//
オカリン「あ、あれだ!発作だよ発作!」チラッ
オカリン(下手なことを言えば俺もあぁなるかも……)ダラダラ
まゆり「発作?まゆしぃにはよくわからないのです」
オカリン「そ、そうか、まぁ、そんなもの気にせずくつろぐがいい。バイト上がりで疲れているだろう?」
まゆり「うんー!ありがとうオカリン!!」
まゆり「あっ!まゆしぃはじゅーしからあげなんばわん☆を買ってきたのです!チンしてくるねー♪」
オカリン「ちょまっ!!」
カーテンシャッ
まゆり「あぁぁ!紅莉栖ちゃんもいたんだー!トゥットゥルー☆」
岡栗「……とぅ、とぅっとぅるーまゆり」
岡栗(空気を読めまゆり!そして邪魔をしないように言ったんだから、ちゃんとブロックせんか俺ェェェェェェ)ギロッ
オカリン「ひぃっ!!」ビクッ
まゆり「あれあれ?紅莉栖ちゃん元気ないねー、どうしたのかな?まゆしぃは心配なのです」
岡栗「い、いや。そんなことはない……わよ?」ニコッ
まゆり「そうかなぁー?お昼も急に逃げちゃうし、まゆしぃは悲しかったんだよー」
岡栗「す、すまな……ごめん、ね?まゆり」ニ、ニコッ
岡栗(ひとりにしてくれェェェェェェ!!)
岡栗「あ、まゆり。電話レンジはもうレンジとしては使えん……使えないし、向こうに行っててくれ……るかな?」
岡栗(グヌヌ、女言葉を使わねばならんとはなんたる屈辱……タイムリープマシンができるまでの辛抱だ、くそっ)
まゆり「あー、そうだった!まゆしぃはすっかり忘れちゃってたのです」ショボン
オカリン「ほ、ほらまゆり。助手は電話レンジ(仮)の改造で忙しいようだし、邪魔をしてはいけない!こ、こっちにくるんだ」汗ダラー
岡栗(ナイス俺ェェェェ!!さぁさぁ、まゆりも早く言うことを聞いて出て行くのだ!)
まゆり「そっかぁー、邪魔しちゃってごめんね紅莉栖ちゃん……」
岡栗「い、いやいやいや。構わんぞ、そちらでゆっくりと休むが良い」ニコニコ
まゆり「? なんだか、紅莉栖ちゃん喋り方がオカリンそっくりだねー?」
岡栗「」
岡栗(マ、マッハで墓穴掘ったぁぁぁぁ!!ど、どうする!?どうすればいいのだ!?)
ダル「それは僕も気になってた罠」スッ
オカリン「のわっ!?生きて……もとい、起きていたのかダル!!」
まゆり「あ、ダルくんおはようトゥットゥルー☆」
岡栗(お前は寝てろよぉぉぉぉぉぉ!!)
ダル「牧瀬氏、今日変だお?ハァハァした後も喋り方もろオカリンだったし、いきなり走って行っちゃうしさ」ジトー
岡栗「う゛っ」
岡栗(ダルにはタイムリープ直後の俺を見られているし……逃れようがない)汗ダラー
オカリン「そ、そうなのか?何かあったのなら、話を聞くぞ助手よ。さぁ、さぁ!包み隠さず話してみるのだ!」
岡栗(殴られ役のダルが復活した瞬間強気になりやがった)
岡栗「ぐぬぬ……」
ダル「こうなったオカリンは止まらないし、言うだけ言ってみたほうが楽になるかもしれないお」
オカリン「さぁさぁさぁ、助手ぅ!!話せ!おまえの罪を教えろ!!」
岡栗「う、ううぅぅ……」
岡栗(……もう、言うしかないのか?)
オカリン「さぁっ!さぁさぁっ!さぁぁぁぁ――」
まゆり(?)「――……トゥットゥルー★オカリン、ダルくん」
「「「!!?」」」
――……ゴゴゴゴゴ
瞬間、空気は凍り、不思議な威圧感がラボに充満する。
肌がチリチリと焼けるような感覚に、俺は威圧感の正体に気付いた。
殺気だ。
電話レンジ(仮)を起動した時のようにビルが揺れる程の、濃厚な殺気が溢れかえっていた。
その発信源は、まゆり。
まっちょしぃ「ねぇ、二人とも。紅莉栖ちゃんは嫌がってるのに、なんで聞き続けちゃうのかな?……かな?」ゴゴゴゴゴ……
いや、もはやそれはまゆりと呼べるほど生やさしい存在ではなかった。
思考を停止したくなるほどの恐怖、世界の深淵を垣間見たかのような絶望、そして
――圧倒的暴力の権化、鬼がそこにいた。
ダル「あ、あぁぁぁ……」ガクガクガクガク
オカリン「な、なんだよこれ、なんだよこれぇぇぇぇ!!」
まっちょしい「まゆしぃは、二人には少し反省が必要だと思うのです」
鬼はそう呟くと、手に持っていた唐揚げの箱を掲げた。
恐怖に支配され、逃げ出すことはおろか、一時も視線をはずせない俺を含めた三人の視線はそこに固定される。
まっちょしい「ねぇねぇ、二人共♪ここに、じゅーしからあげなんばわんがあるでしょ?」
まばたきの合間に、それは起こった。
唐揚げを包んでいたはずの箱はどこかに消え失せ、鬼の手に残ったのはゲル状に変化した唐揚げの姿。
まっちょしい「三秒後の貴様等の姿だ――ッ!!」
鬼の、一方的な殺戮が始まった。
――to true.(トゥットゥルー)
――mad you she death.(まゆしぃです)
えぇ、その呟きが聞こえた瞬間でした。
なんて言うんですかね、こう……
ブレたんですよ、はい。
写真の手ぶれみたいに、鬼の姿がね。
気付いたら、視界からは鬼が消えてましてね。
どこだどこだと、見渡そうとしたら……
――ボッッッッ!!!
そう、いきなり耳元でそんな音が聞こえたんです。
そしたらね、まるで大型車…いや、高速戦闘機にでもはねられたみたいに、飛んだんですよ。
え?なにがって?
はは、やだな。
決まってるじゃないですか、人が、ですよ。
樽みたいなおでぶも、電柱みたいな白衣も。
同時にすっ飛んでいったんです。
二人の体はラボを横切って、窓の向こうに消えていきましたよ。
ガラスってね、勢いよく割れるとこんなに綺麗に散るんだなって。
何故か私はそんな場違いなことを考えながら見てました。
二人の姿が見えなくなってから、今思い出したみたいに慌てて窓際に駆け寄ったんです。
そしたらね、そこで、笑ってるんですよ。
儚げに星を見つめて、夜空へと手を伸ばした少女が。
いつの間にか鬼はいなくなっていて、落ちていった二人はぐったりしながら、少女の細腕に引きずられて夜の街に消えて行きました。
この間、30秒。
呟きが聞こえてから、私が窓に駆け寄るまでは宣言通り、僅か3秒の出来事でした。
それからはもう、静かでしたね。
私も動けなくなっちゃって、腰が抜けて座り込んでました。
あの二人はどうなるんだろう、とか。
一体何が起きたんだろう、とか。
そんな事を考える余裕もなく、ただただ呆然としててね。
ふと気付いたら、笑い出してました。
きっと、笑うしかなかったんでしょうね。
余りに突飛で、非現実的すぎて。
岡栗「ハ、ハハハ、ハハハハハッ!!」
紅莉栖「フゥーハハハ!!どうしてこうなった!!」
――fin
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