心「――てな感じでプロデューサーのところ行ったらさ？」

心「『魔法……少女？』って眉をしかめたんだぞー？　失礼しちゃうなあ、もう！」ﾌﾟﾝﾌﾟﾝ

梨沙「それはアイツが正しいと思う」

心「でも最後には、『今さらシュガーハートも魔法少女もたいして痛さは変わらないか』って感じで前向きに検討してくれるってさ☆」

梨沙「それもアイツが正しいと思う」

心「つーことで、梨沙ちゃんも一緒に魔法少女のステージに」

梨沙「えー……」

心「マジで嫌そうな顔すんな☆」

梨沙「だってねえ」

心「魔法少女が子どもっぽいってかー？」

梨沙「それもないことはないけど……魔法少女姿のハートさんと一緒にステージに立つのが、ねえ」

心「あー、なるほど」

梨沙「自分で言いだしたのに納得しちゃうわけ？」

心「ぶっちゃけ気持ちはわかっちゃうからな☆」

心「しょうがない♪ 追加で誘うのは飛鳥ちゃんだけにしとくか！」

梨沙「絶対アタシと同じ反応すると思う」

心「そんなことないない♪ 飛鳥ちゃん、この前こずえちゃんと一緒に魔法少女のアニメ見てたし♪」

梨沙「そうなんだ？　なんてアニメ？」

心「えーっと、なんだっけ。まどかなんたらってテレビに映ってたような」

梨沙「へー。どんなのか知らないけど、飛鳥も魔法少女に興味あるのかしら」

梨沙「そういえば、ハートさんはいつの間にプリキュア見始めたのよ」

心「千佳ちゃんに誘われてからねー♪ 若い子の趣味に合わせるのも大事なの☆」

梨沙「若作りも大変ね」

心「はっきり言うな☆」ｸﾞﾆｰ

梨沙「ほわっ！　はひふんのよーっ！」

心「あー、この柔いほっぺたがうらやましい」



ガチャリ


飛鳥「おはよう」

心「あ、飛鳥ちゃん。おはよー♪」

飛鳥「あぁ………ふわぁ」

梨沙「眠そうね。いきなりおっきなあくび」

心「さては夜更かししたなー？」ﾆﾔﾆﾔ

飛鳥「あぁ……苦しい未来が待ち受けていると理解していても、時折欲望のままにミッドナイトレディオショーを堪能したくなる。ボクの変えようのない性だね」

梨沙「要するに、深夜ラジオ聞いてたら寝れなかったのね」

飛鳥「そういうことだ……ふわぁ」

心「大丈夫？　この後すぐレッスンだよ？」

飛鳥「だいじょうぶ……身体を動かせば眠気も飛ぶさ」

飛鳥「それに。この程度、いつもの彼女とそう変わらないだろう」


こずえ「ふわぁ～……」

心「いやいや。あの子はなんていうか、特別っしょ」

梨沙「いっつも眠そうな顔してるけど、たまにきびきび動く時もあるし。よくわかんないわよね、こずえは」

そんなこんなでレッスン後


梨沙「確かにレッスン中は頑張ってたわね」

心「いつもと変わりなかったね♪」

心「でも……」ﾁﾗ



飛鳥「ふわぁ……」ﾄﾛｰﾝ

心「レッスン終わったらさらに眠そうになってる」

梨沙「身体動かして疲れたんでしょ」


飛鳥「………」ｺｯｸﾘｺｯｸﾘ

飛鳥「………」ｶﾞｸﾝｯ

飛鳥「！？」ｷｮﾛｷｮﾛ

飛鳥「………」

飛鳥「………」ｺｯｸﾘｺｯｸﾘ


梨沙「ぷっ」

心「眠いときってああなるよね♪ 首がこっくりこっくり揺れて、たまにがくんって大きく揺れて目が覚めるんだけど」

心「結局すぐまた眠くなるんだよな♪」

心「頭の上のくせっ毛も心なしかしなびてるし、ホントに省エネモードって感じ♪」

梨沙「なんか、見てて面白いわ」ﾌﾟｸｸ

飛鳥「ふわぁ……」

こずえ「ふわぁ……」

飛鳥「ふわぁ～」

こずえ「ふわぁ～」

飛鳥「ふわぁ」

こずえ「ふわぁ」


梨沙「なんかあくびの山びこみたいになってるわよ」

心「あくびがあくびを誘って連鎖状態☆ 見てるこっちまであくびが出そうでむずむずどきどきするぞ♪」

飛鳥「ふわぁ……空が青いな」

飛鳥「うん、青い。暖かい」ﾎﾟﾜﾎﾟﾜ

飛鳥「気持ちいい……」

心「いつもより語りがだいぶストレートだなぁ」

梨沙「メンドクサイしゃべり方する元気もないのね」

飛鳥「あの雲はハンバーグに似ているな……おいしいかな」ﾎﾟｹｰ

心「やん♪ いつものナマイキなのもいいけど、これはこれでカワイイぞ☆」

梨沙「ていうか、眠くてもひとりでつぶやく癖は変わらないのね」



こずえ「ふぁふぁふぁ」

心「こっちは毒タイプのジムリーダーだな♪」

飛鳥「ふわぁ……今日の夕食はカレーにしよう」ﾄﾛﾝ

梨沙「ハンバーグじゃないの？」

飛鳥「ハンバーグはお昼に食堂で食べる……自分ではうまく作れないから」

梨沙「ふーん。アタシは作れるわよ。前に練習したことあるから」

飛鳥「へえ」

梨沙「ふふん、どう？　食べたい？」

飛鳥「あぁ、そうだね。梨沙はなんでもそつなくこなすから、きっとハンバーグもおいしく作れるんだろう……ぜひ、食べたいな」ﾎﾟﾜﾎﾟﾜ

梨沙「ふ、ふーん。そこまで言うなら、今度作ってあげなくもないけど？」

飛鳥「あぁ。それは楽しみだ」

梨沙「や、やけに素直ね……調子が狂うわ」

心「照れてる？」

梨沙「照れてないっ」

心「ほーん☆」

梨沙「そのニヤニヤ顔、やめなさいよね！」

心「まあいっか♪ はぁともレッスン疲れたし、ちょっとソファーで横になって休憩☆」

こずえ「………」

心「はぁ～、ちゃんと体力補充しとかないとな♪」

こずえ「ふわぁ……こずえもー」ﾄｺﾄｺ

心「お、こずえちゃんも休憩する？」

こずえ「おひるねするー……」

心「そっか♪ 時間になったら起こしてあげるから、ゆっくり休めよ☆」

こずえ「うん……ふわぁ」ﾎﾟﾌｯ

心「………」

心「なんでナチュラルにはぁとのお尻に頭のっけてるの？」

こずえ「まくらー……きもちいいー」

心「まあ、軽いからいいか……お気に召したんなら使わせてやろう☆」

こずえ「せんきゅー……」

梨沙「……ああしているの見ると、ハートさんがオトナのお姉さんみたいに見えるわね」

飛鳥「………」ﾎﾞｰ

梨沙「だんだん反応がなくなってきた……アンタもお昼寝したほうがいいんじゃないの？」

飛鳥「あぁ……ふわぁ」

梨沙「……あ、そうだっ」

梨沙「（こーいう時に、アタシがオトナなことをちゃーんと教えてあげないと）」

梨沙「ねえ飛鳥。アンタもこずえみたいに、枕欲しい？」

飛鳥「……うん？」

梨沙「しょうがないわね！　ここはお姉さんのアタシが特別に貸してあげるわ！」




心「で、ひざ枕貸してあげてるわけだ」

飛鳥「すぅ……」

梨沙「ふふ、お姉さんっぽいでしょ？」

梨沙「普段エラそうな飛鳥を子ども扱いできるんだから、いい気分だわ♪」

心「いい気分なのは、飛鳥ちゃんも同じだろうけどねー」

飛鳥「ｚｚｚ」ｽﾔｽﾔ

心「ひざ枕なんて普段は絶対恥ずかしがるのに、よっぽど眠かったんだな☆」

梨沙「それにしても、本当に気持ちよさそうね。ひざ枕ってそんなにいいのかしら」

心「ひざ枕には不思議な魅力があるからな♪ 梨沙ちゃんだって、パパのおひざは気持ちいいんじゃない？」

梨沙「あー、確かに。ずーっとくっついていたくなっちゃう」

心「ま、人の体温っていうのはそれだけ安心できるものなわけよ☆ だからついつい枕にしちゃうの♪」

梨沙「……そこのこずえみたいに？」

こずえ「すぅー……すぅー」

心「はは、そーいうことだな♪ ひざだけじゃなくてお尻も同じ」

梨沙「へえ……」ﾁﾗ

飛鳥「………すぅ」

梨沙「幸せそうな顔してるわね」

梨沙「起きてる時もこんな感じでいれば、もっとかわいいのに」ﾂﾝﾂﾝ

梨沙「………」

梨沙「まあ、それだと飛鳥らしくないか」

その後


飛鳥「悪かったね。寝ぼけていたとはいえ、わざわざキミの手を煩わせてしまった」←復活

梨沙「………」ｼﾞｰｰ

飛鳥「……どうかしたかい？」

梨沙「うん、やっぱりこっちのほうがアンタらしいわね！」

梨沙「アタシみたいなかわいげがないけど！」ﾆｺｯ

飛鳥「？」


心「うんうん♪ なんだかんだ、あのふたりはあの関係がちょうどいいんだよね」

心「………」

心「ところで、はぁともそろそろ身体を起こしたいんだけど……」


こずえ「すやすやー……」

心「全然起きそうにないな、これは」ｱﾊﾊ

おまけ


その日の夜


心「そういえば、結局飛鳥ちゃんが見てた魔法少女アニメってなんなんだろ？」

心「調べてみようかな……えっと、『魔法少女　まどか』で検索したら出るか？」

心「あ、見つけた！　確かこの絵柄だったはず……どれどれ、内容はっと」ｶﾁｯ

心「………」



心「うわあ」

心「これ、全然スウィーティーじゃない」

心「飛鳥ちゃんが観るのも納得のストーリーだぁ……あの子絶対こういうの好きだし」

心「いまどきは、魔法少女にもいろいろあるんだなー」


ﾌﾞｰﾌﾞｰ

心「あ、千佳ちゃんからメールだ」


『おもしろい魔法少女のアニメがあるんだけど、こんどいっしょに見よ？』

心「ほうほう」ﾒﾙﾒﾙ


『いいぞ☆ なんてアニメ？』

『まどか☆マギカっていうんだよー』


心「！？」


『千佳ちゃん、全話見たの？』

『うん！　おもしろかったよー！』


心「………」


心「たいしたやつだ……」



おしまい