一ノ瀬志希「嫉妬と」城ヶ崎美嘉「興味」 (31)
キミはいつもオンナノコのニオイをたっぷりつけて帰ってくる
だからあたしはそれを塗り潰す
それでも
キミの夢の中までは
あたしで満たすことはできない
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「んふふー、おはよ」
「…おはよ…」
「また美嘉ちゃんのこと考えてた?熱心だねー『プロデューサー』」
「…マジか。寝言くらい勘弁してくれよ」
「まーキミからは唾液のニオイはしないからね?許してあげよー。なんて、にゃははははっ」
あたしの胸の中に渦巻いている何か
これが、嫉妬なのかなー?
あたしのニオイで満たせない不満と
あたしのニオイを塗り替えられる存在への興味がせめぎ合う
「ねーねー、美嘉ちゃんに一回会ってみたいなー♪」
「流石に最前線のアイドルに対して、はいそうですかってわけにはいかねーよ。それに…」
「それに?」
「お前の考えていることくらい大体予想がつく」
「…♪」
そして、あたしたちはまた交わる
「んじゃ行ってくる」
「はーい♪」
はいそうですか、って引き下がらないのも
カレはわかっているだろう
そろそろ、美嘉ちゃんがどんなコなのか…
見てみたいと思った
もっと詳しく、ニオイを知りたいと思った
「さてさて…」
とはいえ、細かいスケジュールを聞き出すことは出来ていない
普通の相手ならちょちょいとニオイを嗅がせればいいけど
カレはあたしの薬に対して、驚異的な耐性があるのだ
それが、あたしがここにいる理由でもあるんだけど
「前のあたしなら、こんな悠長なこと考えなかったよねー」
これは実験
最終的には、総当たり
何日くらい、繰り返したかな?
「ねー、そこのキミ♪」
「…アタシ?」
「キミだよキミ♪」
…ビンゴ
カレのニオイと『カレから一番強く感じる』ニオイ
姿は繕っているけれど
ニオイまでには意識は向いてない
あたしは、確信と共にクスリを振りまいた
「…ん…」
「目覚めはどうかな城ヶ崎美嘉くん、にゃははははっ♪」
「…アンタっ、一体なんのつもり…!」
「変な事はしないよ?あたしはただ、キミのニオイにキョーミがあるだけ♪」
「…やっ…!」
…なるほど
やっぱり、いいニオイがする
カレが夢中になるのもよくわかる
「このっ…ヘンタイっ!」
「協力してくれたら、キミのプロデューサーの極秘情報をあげよー」
「…!?」
このコは男を知らない
カレのニオイをちらつかせれば
きっと、簡単に堕ちる
「…アイツの何を知ってんの、アンタ…」
「そだねー…唾液のニオイとか?キスは基本的に毎日するからねー♪」
「……なっ…?!?!」
「だけど、時々寝言で美嘉ちゃんのことを言うんだなこれがー。…だから、気になったワケ」
「アイツが…アタシ…の…?」
「…キミ、かなり愛されてるよね」
美嘉ちゃんの様子が少しずつ変わっていく
下半身から感じ取れるニオイが、それを教えてくれた
「エッチなこと考えてるね?カレとヘンタイごっこ、したいよね?」
「ちがっ…違…うっ…!」
「美嘉ちゃんは、どんなキスをイメージしてるのかにゃー?」
クチビルとクチビルが触れ合う…その寸前
「…うにゃっ?!」
「…何やってんのさ志希」
「プロデューサーっ!?」
あたしの体はカレの腕に引き寄せられていた
あのコに意識が向いてたせいで気づかなかった
帰ってくる時間はちょっと早かったけど
まーカレと美嘉ちゃんを『あたしたちの家で会わせる』のも、目的の一つだから
これでいいんだけどね
「…すまんな美嘉、もっとしっかり止めておけばよかった。大丈夫か?」
「え、えーと、結局そのコは…プロデューサーのカノジョなわけ?」
「…まあ、そうなるな」
「……マジ…」
美嘉ちゃんスッゴい落ち込んでる
よっぽどカレに惚れ込んでたねーこりゃ
「志希はしばらく鼻クリップな」
「…え゛っ、待ってそれって」
カレいわく、その時のあたしは死んだ魚みたいな目をしていたとか
ニオイ断ちはあたしにとって死活問題だ
「キミ…気づいてるよね、美嘉ちゃんの気持ちにも」
「……そう言われても」
あたしたちの出逢いは、化学反応を起こした
美嘉ちゃんも、キミのオンナになりたいと思っている
あの匂いは、そういうことなんだ
「おまえと美嘉を混同してるつもりはないんだが…これ以上どうすればいいのかな」
「…んふー…あたしにもわかんない」
あたしはキミのオンナで
あのコはキミのアイドル
キミは、ちゃんと区別していたはず
じゃあなんで、あたしはわざわざアイドルになったのか
…それは
アイドルとしても、キミを独占したかったからなんだろうね
どの夢の中でも、キミのモノでありたい
…夢では匂いはかげないんだ
「んちゅ…んう、美嘉ちゃんは、キミのことを考えて…シてるよ」
「……おまえなー…」
「にゃはははっ、流石にこんなこと言ったら考えちゃうよね♪」
あたしだけでは作れない匂い
…なんでだろ
美嘉ちゃんに作られたキミの匂いも
あたしは…ダイスキなんだろう?
塗り潰してるつもりだったのに
あたしの中にも、美嘉ちゃんの匂いがこびりついていたのかな?
キミを通して、あたしの中に
「はにゃ~…お疲れ様。今日は何回イったかなー♪」
「なあ志希」
「んー?」
「…愛してる」
「♪」
匂いで気持ちはわかってはいるけれども
言葉で改めて伝えてくれるのは、なんだか嬉しくなる
「そーそー。キミは元々あたしをアイドルにする考えはなかったのかにゃ?」
「おまえ飽き性だし。…それ以上に俺は、おまえを独占したかったんだろうさ。志希って女を」
カレいわく、アイドルは幻想を売るものらしい
誰か一人のモノではない、という幻想だ
カレはあたしを、男がいてもおかしくない雰囲気…要は素のあたしを売り出したワケだけど
「癖を除けば、おまえレベルの逸材はそうはいない。それこそ、美嘉に負けないと俺は考えている」
「…ふーん…」
これまであたしをアイドルにしなかったのは
あたしに負けず劣らずの独占欲の仕業のようだ
やろうと思えば、騙し騙し売り出すことはできたのだから
「つくづくキミも筋金入りのヘンタイだよねー♪」
「…今それ言うかな?」
「遠回しの羞恥プレイみたいな感じ!にゃはははっ♪」
「…こいつ」
「うひゃあっ♪」
キミだけが知っているあたしのハダカを
みんな想像するんだから
今日はここまで
ひさびさにエロ重視でない話をやると表現に苦労しますな…
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