提督「日本への帰国命令ですか?」 (141)
艦これ二次創作です
オリ解釈、オリ設定、キャラ崩壊注意
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454924323
大使館付武官「はい、アメリカの本格参戦に合わせて我が国は太平洋をアメリカ海軍と共に解放します」
提督「なんですって!アメリカが参戦!ようやくですか!」
大使館付武官「はい、眠れる巨人もようやく目を覚ましました」
提督「これでヨーロッパも何とかなるはずです!大型艦扱いになれていないクリークスマリーネに派遣され戦術などの講義や実戦での指揮を続けてもう2年ほどになりますが圧倒的戦力差に泣かされてきましたからね!」
提督「北海を失いバルト海に閉じ込められて以来、ドイツ海軍を主体としつつロシアのバルチック艦隊などで構成したバルト艦隊は消耗していく一方でこのままでは物量に押し流されるところでした!」
提督「アメリカが参戦して大西洋の敵を挟み撃ちにしてくれれば勝機はあります!本当によかった・・・」
提督「傷つきながらも狂信ともいえるような勝利への希望をたたえた笑顔で戦う彼女たちを見ているのは辛かったけれどこれでもうそんなことはなくなりました!」
提督「勝利は必ず我らのものにして見せます!」
提督「必ずやいい報告が出来ると思うので期待していてください!」
ど「いや、提督。あなたは日本へ帰国してもらいます」
て「分かりました!日本へ帰国ですね?って日本へ帰国!?どういうことですか!?」
ど「あなたは横須賀の新たな司令官に任命されました。推薦したのはあなたの元上官です」
て「元上官が私を横須賀の司令官へ推薦して任命されたのですか!?何故ですか!!」
ど「・・・現在、アジアでもアメリカやイギリス、オランダ、オーストラリアなどの艦隊と共同してアジアを開放する作戦を展開する予定ですが、我が軍は続く勝利によってたるんでしまっています」
ど「12時間ほど前に深海棲艦によって横須賀、つまり首都圏が攻撃されました。原因は指揮をとるべき提督が私用で艦娘数人と鎮守府を離れていたこと、迎撃に出た艦隊が敵の攻勢を甘く見ていて返り討ちになってしまった事です」
ど「血相を変えて横須賀の提督が戻ってきたときには空襲によって鎮守府は半壊、周辺海域では民間船舶を含む多くの通常艦艇が撃沈されました」
ど「さらに悪いことに首都東京においても深海棲艦の偵察機と思われる機体による機銃掃射で被害が出ました。」
ど「幸いなことに爆撃機や雷撃機は軍事施設や艦船への攻勢にしか投入されていませんでしたがそれでもむやみやたらに撃ちまくられたことで多くの建造物に微々たるものとはいえ被害があり、数十人の死者とその三倍の負傷者もでました。」
大使館付武官「さらにその攻撃で発生した大混乱により二次災害が発生、さらなる人的、及び物的損失が発生」
大使館付武官「そしてその恐怖は海軍への怒りへと変わりました。」
大使館付武官「勝利を重ねていると報道されていたのにもかかわらず首都が空襲を受けたことで世論は激高、海軍大臣は辞任、元横須賀司令官は自決しました。」
大使館付武官「共に外出していた艦娘たちは代わりがいないとはいえお咎めなしとは言ならず無期限の外出禁止令が出されました。」
大使館付武官「さらには海軍関係者による艦娘との淫行の噂などがゴシップ紙の記事にされかけ、ネットではあることない事が大量に噂されています。」
大使館付武官「陸軍もしたり顔でこの海軍の不祥事を大きく非難しています。」
大使館付武官「一部の過激派は海軍を解体しすべての指揮権を陸軍の物とすべしと声高に叫ぶほどです。」
大使館付武官「この事態を収拾するために海軍は最大限の努力を尽くしていますがなかなかに難しい。」
大使館付武官「あなたは日本から離れて地獄のヨーロッパ戦線で戦っていました。」
大使館付武官「海軍省はそんなあなたであれば世間の印象も改善されるはずと考えています。」
大使館付武官「それに、海軍がたるんでいて一部では悪い噂も流れるような状態であったのも事実。」
大使館付武官「ここであなたが海軍を叩き直し、威信を取り戻すことが出来れば事態も収拾できるはずです。」
提督「なんてことだ・・・そんなことが・・・我々が冷たく不穏な海で絶望的な防衛戦を続けているとき日本ではそんなふざけた事件が・・・」
提督「このまま志半ばでドイツを離れるのは無念です。ですがアメリカの参戦もありますし、なにより命がかかった戦場で死んでいく者がいるのにのんきにしている愚か者どもを放っておくわけにはいけません。謹んでお受けいたします。」
ミスりました
面目ない
「て」は提督のて「で」、「ど」は在ドイツ大使館付武官の「ど」です
提督「(こうしてドイツを離れることになったわけだが、バルト艦隊司令部は私に最後のあいさつの機会をくれた)」
ドイツ将校「{全員気を付け!提督より重要な話がある。心して聞くように}」
提督「(こうして彼女たちの前に立つのは最後になるかもしれない・・・どうかそうではありませんように)」
提督「{皆には一つ伝えることがある。本日をもって私は日本へ帰国し、アジアでの戦闘の指揮を執ることになった}」
提督「(みんな目を見開いている。このことが信じられないようだ)」
提督「(何度かこのような機会があったが規律正しいバルト艦隊の艦娘たちがこのようにざわめいている所を初めて見たな・・・)」
提督「{出来ることならばここに残り君たちと勝利の日まで戦い続けたいと思っている。しかし、私には日本でやらなくてはいけないことが出来た}」
提督「{二年間、私は君たちや優秀なるバルト艦隊の提督たちに教えられるだけのことを教えてきた}」
提督「{私が保証する。君たちは数ある海で一番の激戦区を戦い続けているたぐいまれ無い優秀な艦娘たちだ}」
提督「{そして、バルト艦隊将校たちは最高の指揮官へと成長してくれた}」
提督「{そんなバルト艦隊があればヨーロッパの防衛はもちろん、北海やグレートブリテン島、そして大西洋の解放であっても決して不可能ではない。}」
()は心の中で思っていること
{}はドイツ語で話しているってことにしておいてください
提督「{場所は違えども私もまた諸君らと共に戦い続ける。いずれ来る勝利の日を目指して}」
提督「{さらばだ諸君、君たちと戦えて光栄だった。いずれ必ず、また会おう}」
提督「(・・・先ほど多少ざわめいたもののいまは完璧な規律を取り戻している。流石だ)」
提督「(涙を流しつつも決してうろたえない君たちは、やはり最高の艦娘たちだよ)」
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提督「(お偉方との挨拶も済ませてベルリン駅に着いた。まさか勲章を授与されるとは)」
提督「(ウラジオストク行きの電車はもうすぐ来るはずだ)」
???「{アトミラール!}」
提督「{この声、ビスマルクか}」
ビスマルク「{ヤー、提督。私よ}」
提督「{外出許可は取っているんだろうな?}」
ビスマルク「{もちろん、私が規則違反をすると思ったかしら?}」
提督「{いや、そんなことはないと思っていた}」
ビスマルク「{ふふっあなたは正しいわ}」
提督「{それで、ビスマルク。何をしに来たんだ?もうそろそろ電車の時間だ}」
ビスマルク「{ナイン!もうそんな時間なの?もっと早く書類を片付けられれば良かったわ・・・}」
提督「{それは残念だったな}」
ビスマルク「{ええ、本当に・・・提督、私はお別れをしに来たの}」
提督「{今日昨日話をしただろう}」
ビスマルク「{あなたが一方的に話しただけじゃない。何か言おうと思っても呆然としてて、気が付いたらあなたがいなくなってたのよ?そんなのあんまりじゃない}」
提督「{そうかもな。すまなかった。だが、急に決まったんだ}」
ビスマルク「{わかっているわ。あなたはとても優秀ですもの}」
提督「{ありがとう。・・・おっと、列車が来た。もう時間だ、行かなくては。さらばだビスマルク。生きてまた会おう}」
ビスマルク「{待って!アトミラール!}」
提督「{どうしッんむ!?}」
提督「(ビスマルクは抱き着いてきてキスしてきた)」
ビスマルク「{・・・アトミラール。愛しているわ。ヤーパンに行ってしまっても、ずっと。また生きて会いましょう・・・}」
提督「{・・・ありがとうビスマルク。しばらくお別れだ}」
提督「(軍が用意した緊急の列車だったからかすぐ出発した。ビスマルクはずっと駅に立って見送ってくれた。涙を流しながら、それでも笑顔で)」
提督「(さらばバルト海、さらば戦友たちよ。ここでみんなと戦えて本当によかった)」
提督「(ビスマルク・・・ドイツ海軍を代表するということはバルト艦隊の代表ということだ。後のことは頼んだぞ)」
提督「(プリンツ・オイゲン・・・君の親しみやすさは多国籍の艦隊では重宝するはずだ。仲の良くない軍隊に勝利はない。君に期待しているぞ。)」
提督「(Z1、レーベレヒト・マース・・・君はドイツ駆逐艦の長女だ。他の駆逐艦たちは君を常に見ている。君は妹たちの良いお手本となるべき艦娘だ。)」
提督「(そして私は君の真面目で真摯な性格はそれに足ると思っている。自信をもってこれからも励んでくれ)」
提督「(Z3、マックス・シュルツ・・・君のコーヒーはとてもおいしかった。君は気が利くから艦隊でも周りのサポートが出来るだろう)」
提督「(・・・もっとみんなに言っておきたいことがたくさんあった。今になって思いついても遅すぎが。願わくば生きて再会できますように・・・)」
提督「(何事もなく日本へ帰国できた)」
提督「(軍令部へ出頭して改めて横須賀鎮守府への着任を拝命した)」
提督「(そしてそのまま横須賀鎮守府へ向かうこととなった)」
提督「(帰国して以来、不祥事についての話を聞かされたこととドイツでの規律正しい艦隊になれていたからかいい印象は無に等しい・・・)」
提督「(だが、そうもいっていられない。ここにいる艦娘たちが新しい戦友となるのだ。よくない印象にとらわれてはならない)」
???「あの・・・提督さんですか?」
提督「いかにも私が提督だ。そういう君は艦娘か?」
電「はい、暁型4番艦電です。どうか、よろしくお願いします・・・」
提督「そうか、改めて自己紹介しよう。私は提督だ。こちらこそよろしく頼む」
電「はい、提督さん。電は新しい司令官をお出迎えするように臨時司令官の鹿島さんに頼まれているのです。電についてきてください・・・」
提督「分かった、頼むぞ電」
電「はいなのです」
提督「(どうも緊張しているのか、オドオドとした子だな)」
電「(はわわわ、ドイツ帰りの鬼提督さん!本人を前にするととっても怖いです・・・)」
提督「あー、電この鎮守府に所属している大型艦を確認したい。戦艦と空母では誰が所属しているんだ?」
電「ここにいるのは戦艦は長門方のお二人と航空戦艦の伊勢型のお二人が所属しています」
電「空母では赤城さん、加賀さん、翔鶴さん、瑞鶴さん、それに軽空母の鳳翔さん、龍驤さんもいます。」
提督「そうか、分かった。ありがとう。それにしても随分と大きな戦力だな。支配領域は大きいのだからあまり戦力を集中させるべきではないのではないだろうか」
電「最近各艦隊が再編されたのです。ここの横須賀は中部太平洋に突出した敵の攻撃艦隊を迎え撃つ要衝ですから」
電「この前の奇襲もあって敵の攻撃艦隊を殲滅することを目的に可能な限りの戦力が横須賀に集められたのです」
提督「そうか、にしても私は敵は大規模な機動部隊による攻撃としか教えられていない。詳しくはここで聞けと言われているのだが君は何か知っているか?」
電「奇襲があった時、電は第六駆逐隊の皆と対潜哨戒に出ていました。緊急無線が入って帰投したときにはすでに攻撃は終わっていました」
電「ですので、攻撃の規模から少なくとも四隻の空母ヲ級による奇襲攻撃としか知りません。迎撃に出たのは青葉さんを中心とした重巡、駆逐艦で構成された艦隊でしたが護衛艦隊と思われる戦艦タ級二隻を中心とした艦隊に撃破されて撤退したそうです」
電「損傷した皆さんは呉に回航されて現在入渠中です。被害を受けた船渠は現在急ピッチで修理中ですがあと一週間はかかるそうです。ですので、現在は二つしか使えません」
提督「そうか、派手にやられたものだな・・・」
電「はい・・・」
読み辛くてすいません・・・
もしよろしければ改善点などを教えて下さると助かります
執務室前
電「つきました。ここが司令官のお部屋です」
提督「そうか、ご苦労だった」
電「ありがとうございます。鹿島さん、新しい司令官をお連れしました」
鹿島「あら、もういらっしゃいましたか。ありがとう電。どうぞ入ってください」
提督「失礼する。私が今度この横須賀へ着任することとなった提督だ。よろしく頼む。」
鹿島「初めまして提督さん。練習巡洋艦鹿島です。よろしくお願いします。うふふっ」
提督「うむ、早速だが現状を把握したい。鹿島、君にはその説明と各種業務の引継ぎを頼む」
鹿島「分かりました。では、こちらへどうぞお掛けになってください。電ご苦労様でした。下がっていいですよ」
電「はい、失礼いたします。司令官さん、鹿島さん」
鹿島「では提督さん、現状の説明と各種業務の引継ぎを開始いたします。よろしいですか?」
提督「問題ない、始めたまえ」
ご教授ありがとうございます!
参考にして頑張ってみます!
鹿島説明中
鹿島「以上が現在の状況となります」
提督「つまり船渠の修理が完了し次第敵への攻撃を開始、現状の戦力で撃破せよってことか」
鹿島「簡単に言えばそういうことになります」
提督「修理には一週間かかる。その間は哨戒以外は必要ないと」
鹿島「はい、作戦開始まで艦娘たちは可能な限り休ませておけとのことです。船団護衛も他が受け持ちます」
提督「分かった。哨戒の当番は君が作った予定でいい。完璧だった」
鹿島「お褒めにあずかり光栄です。えへへ」
提督「ご苦労。だが最後に一つ聞いておきたいことがある」
鹿島「どうしました?」
提督「私の前任者の話だ」
鹿島「……」
ありがとうございます!
提督(途端に目に見えて沈んだな。だが地雷だろうが何だろうが確認せねばならない)
提督「私が聞いているのは彼が私用で鎮守府を離れることが一週間に一回あるかないか程度の頻度であったこと」
提督「そしてゴシップ紙に艦娘との淫行があったことを記事とされそうになったことぐらいだ」
提督「君は前提督が出かける際によく彼のかわりを務めていたいたそうだが違いないな?」
鹿島「……はい、そうですね、違いありません」
提督「君から見て彼はどの様な人間だった?」
鹿島「あの方は、間違いなく優秀でしたよ。それだけは、絶対に間違いありません……」
提督「そうか。どうしてそう思った」
鹿島「限られた戦力で船団護衛、哨戒、そして敵への攻撃を効率よく行っていました」
鹿島「前提督が着任して以来、資源の備蓄と高速修復剤の貯蓄も増える一方で他の鎮守府へ支援物資を送る程だったんですよ」
鹿島「人柄もとても優しく頼りになる人でした。私たち艦娘の命が第一だと常日頃から言っていました」
鹿島「無謀な作戦を命令された時も軍令部まで出向いて抗議したんです!」
鹿島「その結果、その作戦は無理のないものへと変更され無事に一名の戦死者も出さずに成功させました」
鹿島「休暇の時も、いつも海上か鎮守府にいる私たちに休暇の時ぐらい都市部へ遊びに行くぐらいできてもいいはずだと許可を出してくれていたんです」
鹿島「もちろん、防御がおろそかにならないように一度に出かけるのは少数でした。ちゃんと考えていたんです!」
鹿島「最初の頃は彼も出かけることはありませんでした。けれどある日私たちは気が付いたんです」
鹿島「彼は、私たちのことを考えてくれていても彼自身のことなんて全く考えていなかった」
鹿島「横須賀で、誰よりも一生懸命に働いていたのは彼だったんです!いつもずっと鎮守府にいて仕事をしていました」
鹿島「前提督が休暇をとっている所を見たことがありませんでした」
鹿島「そのことを尋ねたら何て言ったと思いますか?『君たちと違って俺は書類仕事をしているだけだ」
鹿島「そんな俺が命を懸けて戦っているお前たちのように休む資格なんてないさ』って言ったんです!」
鹿島「その時私は思いました。この人のためなら私は何でもできると!命すら惜しくないと!」
鹿島「だから私たちは皆で提督にもきちんと休んでいただけるように言ったんです」
鹿島「でも提督は首を縦に振ることはありませんでした。『俺が休んだら誰が指揮を執るんだ?』と」
鹿島「『俺のことはいいから楽しんできな』といって微笑むんです」
鹿島「ですから私たちは秘書官として働く時に提督の仕事を変わることが出来るように勉強しました」
鹿島「休暇の時もずっと勉強しました。海軍大学校まで行って無理を言って他の生徒と一緒に抗議を受けたりもしたんです」
んです」
鹿島「そしてある時、トラック泊地の司令官が空襲によって戦死なされました」
鹿島「ですが軍令部は代わりの選出に手間取っているようでした。そこでうちへ連絡があったんです」
鹿島「私たちが提督補佐のために大学校まで出向いて勉強に励んでいることは聞いている」
鹿島「そこで前提督に変わりが決まるまでの短期間トラックへ着任してもらいたい」
鹿島「そしてその間の横須賀鎮守府の指揮を新人の少将と君たちに任せたいとのことでした」
鹿島「前提督を危険な最前線へ送ることについて悩みました」
鹿島「しかし、私たちが十分に提督が休暇をとる間くらいは代役が出来ると証明するチャンスでした」
鹿島「前提督は私たちが最近休暇で何をしていたのかを知って驚いていました」
鹿島「そして『軍令部はああいっているが出来るか?』と言いました」
鹿島「私たちは、『任せてください。司令官がお帰りになるまで役目を果たしてみせます』と宣言しました」
鹿島「そして私たちは一か月の間少将さんと協力して勤めを果たしてみせました!」
鹿島「前提督が帰還したときに言ってくれました『大役を果たした君たちには感謝してもしきれない」
鹿島「そこでお礼がしたいと思っているんだが、何か欲しいもの、やりたいことはあるか?』と」
鹿島「そこで私たちはこういいました。『提督、私たちは休暇を提督と一緒に過ごしたいんです。どうか私たちと一緒に休暇をとってください』と」
鹿島「そうしたら提督は笑っていったんです。『そこまで言われたら仕方がないな、可能な限りはそうしよう』と」
鹿島「軍令部も提督の外出に許可を出しました!」
鹿島「一週間前までは何の問題もなかったんです!あの日、奴らが空襲してくるまでは!」
鹿島「あの日、私たちは敵艦隊発見の報告を受け戦闘準備をしていました。敵は重巡を基幹とした高速戦隊でした」
鹿島「本隊の準備が出来るまで、哨戒中だった青葉さんたちを再編して時間稼ぎのために敵部隊への牽制を行うよう命じました」
鹿島「青葉さんたちが出撃した後、すぐに奴らが現れました」
鹿島「あれは間違えなく敵の新型機でした!従来の物より大型で、高速だったんです。」
鹿島「おそらく航続距離だって長くなっているはずです。だから気づくことが出来なかったのでしょう」
鹿島「敵機が視認されてすぐに対空戦闘を始めましたが、敵は巧妙に対空戦闘を始めた艦娘や対空砲を攻撃してきたんです」
鹿島「満足な対空攻撃が出来なくなった後に第二派と思われる航空部隊が現れました」
鹿島「付近の飛行場も同時に攻撃を受けていたようで援護を求める連絡も不可能と言われました」
鹿島「第二派の敵機は工廠、船渠、オイルタンクなどといった重要な場所を正確に空爆していきました」
鹿島「幸い、湾内であったこともあって撃沈された艦娘はいなかったものの鎮守府は半壊、民間人の犠牲も……出てしまいました……」
鹿島「鎮守府へ戻ってきた提督は、顔面蒼白で状況を確認していました……」
鹿島「被害の確認や修繕の手配をしているときに青葉たちが帰還しました」
鹿島「戦闘の混乱のため無線が混信していて使えず状況確認が出来ていませんでしたが、どうやら敵には戦艦も存在していたようでした」
鹿島「青葉の報告によると、確認された敵戦艦はその圧倒的な火力や雷撃してきたことを鑑みるにレ級で間違いないだろうとのことです」
鹿島「レ級なんて……ソロモンでしか確認されていませんでした……!そんなものが太平洋を越えてはるばる横須賀まで出てくると、誰が想像できますか!?」
鹿島「敵の新型機だってそうです!そんなものがあるなんて情報は入っていませんでした!」
鹿島「そんなのって対策のしようがないじゃないですか!!いったいどうしろっていうんですか!?」
提督「鹿島、落ちついてくr」
鹿島「もし!!あの時に!!司令長官が!!横須賀にいらっしゃったとしても!!決して防げたものではありません!!」
鹿島「なのに……なのにどうして彼が……前提督が死ななくてはならなかったのですか……!?」
鹿島「それまで数多くの功績を残してきたあの人が……なぜ自決を……!!」
鹿島「あの人は……あの奇襲のことを差し引いても評価されるべき優秀な人でした!!」
鹿島「そんな人を殺してしまうようなこの国は守るに値しません!!」
提督「鹿島!」
鹿島「知っています!!今まで散々評価してきた上層部が!!手のひらを返してすべては前提督の失態だと発表したこと!!」
鹿島「何も知らない一般人が!!自分たちの平和を当たり前だと思い込んで!!たかが空襲を一回受けた程度でヒステリックに!!」
鹿島「教えてやりたいですよ!!私たちがいるおかげで平和に生きていられるんだと!!お前らの安全は私たちの屍の上にあるんだと!!」
鹿島「誰も彼もが彼を罵倒する!!彼が今までどれだけ日本を大事に思って努力してきたかも知らずに!!彼を死に追いやったんです!!」
鹿島「信じられますか!?私たちが命を懸けて守ってきたものは!!こんな……こんなものだったんです……!!」
鹿島「こんな……自分たちが守られて当然だと……信じてやまない……こんなくだらない奴らのために……あの人が……」
鹿島「あの人の命は、あんな奴らの命よりずっとずっとずぅっと価値があったんです!!なのに!!」
鹿島「復讐してやる!!いつか奴らに思い知らせてやる!!お前らが殺したのは最高の軍人で!!お前らが敵に回したのは私たちで!!それが何を意味するのか!!」
提督(こいつ……錯乱している……それにあの目、何かを見ているようで何も見ていないような光のない虚ろな目……バルトでも何度か見た目だ……)
提督(すべてに絶望して、投げやりになった人間の目だ。それほど前提督を慕っていたということか)
提督(見た目はしっかりしてそうだと思ったがどうも中身は子供のようだな)
提督(しかし、こいつの主観でしかないが、話を聞く限り前提督は悪い人間ではなかったようだな)
提督(だが、優秀ではなかったようだ。軍人とは己を犠牲にしても民間人を守らなくてはならない)
提督(軍人と民間人は決して同じ存在ではない。同じ人間であっても、負っている責任が違うのだ)
提督(人間の心は弱い。そのため、人々が一丸となって戦うためには戦う人間への絶大な信頼が必要だからだ)
提督(よって、軍人は安心して命を預けられるという信頼にこたえていかなくてはならない)
提督(さもなくばバラバラになり満足に抵抗することも出来ず少しずつ殺されていくことになる)
提督(休日を外で過ごせないなど、大勢の命が掛かった戦争において大した問題ではない)
提督(部下のことは大切に思っていても共に休暇で街へ繰り出すなどするべきではないのだ)
提督(前提督、貴官は優秀な軍人になるには優しすぎたようだ。教師か何かになっていればよかっただろうに)
提督(そして、何故自決なんてしてしまったのだ。そんなこと、逃げているだけではないか)
提督(すべてやめてしまいたくなっても、決してやめてはいけないんだ)
提督(人生というのはゲームとは違う、自分が死ねばそれですべて終わりなんてものではない)
提督(自分の死が周りに及ぼす影響を考えなくてはいけない。自分が投げだしたものがどうなるのか考えなくてはいけないんだ)
提督(苦しくても、つらくても、戦い抜かなくてはならない)
提督(見ろ、前提督。お前は彼女の心を壊してしまったのだ。もしかしたら彼女だけではないかもしれない)
提督(バルトではこんなことなかったのだが、仕方あるまい。これが逆境を知らないものと知っている者の違いか)
提督(正直やっていられない。バルトでビスマルク達が命を賭して戦っているのに日本ではこんなくだらないことが起きているとは)
提督(しかし、アジアで勝利することがヨーロッパでの戦闘を終わらせるために必要だ)
提督(私は日本に生まれたが、今や日本よりもヨーロッパのことばかり気に掛けるようになってしまった)
提督(あの絶望的な戦争を共に戦った彼らとは血や国籍を超えた絆でつながっているのだ)
提督(生きてみんなと再会するために、私は一年でアジアを解放する)
提督(そうしてヨーロッパへ進撃する。これだけの戦力があれば大西洋の解放も夢ではない)
提督(やってやろうではないか。すべては勝利の日のために)
本日はここで落ちます
明日か明後日には再開します
提督「いい加減にしろ!!貴様!!」
鹿島「っ!?」
提督「先ほどから黙って聞いていれば、やれ守る価値がないだの復讐してやるだのグチグチと!!」
提督「お前は何者だ!?」
鹿島「はいぃ!?何をいきなり怒鳴ってるんですか!?」
提督「答えろ鹿島!!お前は何者だ!?」
鹿島「私は私です!!いったい何が言いたいんですか!?」
提督「お前の名前、艦種、所属を言ってみろ!!」
鹿島「なんでそんなことを!!」
提督「いいから言え!!上官命令だ!!」
鹿島「っ……私は鹿島。練習巡洋艦香取型の二番艦、鹿島。所属は横須賀鎮守府です」
提督「ほぅ……つまり貴様は栄えある帝国海軍横須賀鎮守府に所属する香取型二番艦、艦娘鹿島だと言うのだな?」
鹿島「どうやら新しい提督は頭のめぐりがお悪いご様子ですね?そうだと言っているんですよ」
提督「嘘を吐くな!!!!」
鹿島「ひ…!」
提督「貴様が横須賀鎮守府に所属する軍人だと?笑わせるではないか」
提督「軍人としての使命を忘れて守るべき民間人に数多くの死者を出しておきながら」
提督「それを非難されて逆切れか!全く持ってありえんな!」
提督「貴様は言ったな?復讐してやると、自分たちを敵に回したと?」
提督「お前は守るべきものに銃を向けるのか?今までなんのために戦ってきた?」
提督「貴様の尊敬する、愛してやまない前提督殿のためか?あるいは自分自身の幸せのためか?」
提督「はっきり言おう。お前も、前提督殿も軍人じゃない!!我々と一緒にするな!!」
提督「我々は命を懸けて戦っている。それはひとえに日本、ひいては全人類のためだ」
提督「深海棲艦なんて言う得体のしれないバケモノ共から人々を守るためだ!!」
提督「一度、そう決心して軍人になったその時から、我々はもう人じゃない。軍人なんだ」
提督「我々は休暇をとれないのは嫌だ、街に出かけられない嫌だ、死ぬのは嫌だなんてわめいたりしない」
提督「深海棲艦を一匹残らず駆逐して平和を勝ち取るまでは、休暇がなくとも、街に出かけられずとも、命の危険があろうとも、決して気にしない」
提督「今何もなくとも、それがずっと続くなどどうして思い込める?」
提督「自分が休んでいるまさにその時に、敵が自分の大切な人を殺すかもしれないのにどうして休んでいられるのだ?」
提督「日本の戦局はこの前まで安定していたらしいが、なぜそれをおかしいと思わない?」
提督「敵に余力があるはずなのに攻勢が始まらないのは、それは敵がさらに大規模な攻撃のために準備しているからだ!」
提督「敵がこれから攻撃すると教えてくれるとでも思ったか?笑わせる」
提督「敵は新型の航空機を使用してきた?お前は敵を何だと思っている?」
提督「大方、ゲームであるようなやられ役、決して自分たちの先を行くことはないとでも思っていたのだろう?」
提督「残念ながらこれは戦争で、敵は我々と同じように新兵器を開発して投入してくるのだ」
提督「我々のもとに最初から烈風があったか?大和型の2人がいたか?」
提督「敵に烈風を作ったからこれから投入していく。大和型が進水したから気をつけたまえよと言っていたか?」
提督「レ級はソロモンにしか出てこないと思っていた?これが殺し合いだと言うことを忘れていないか?」
提督「一航戦、二航戦は極めて優秀だ。しかし太平洋でしか活動させていなかったか?インド洋や珊瑚海に投入していなかったか?」
提督「考えればわかることだ。久しく戦っていなくて頭の中が花畑にでもなったか?」
提督「お前は司令長官がいても防げたものではないと言ったな?確かにそうだ」
提督「だが司令長官程のお方、元帥閣下ならばそんな奇襲を受けないように考えて行動していた」
提督「防げる防げない以前の問題だ。そんなことは起こり得ない」
提督「上層部が手のひらを返したと言ったな?それは間違いだ」
提督「上層部は前提督の功績を高く評価してはいたが、最近の奴の気の抜けようには困っていたのだ」
提督「しかし注意しようにも世論がそれを許さなかった。マスコミに踊らされた人々や一部の間抜けが英雄には多少の休息が必要だと批判を許さなかったのだ」
提督「奴自身も勝利や成功を味わいすぎて自分が万能になったとでも勘違いしたのだろう。そんなことはありえないのに」
提督「余裕が出来たのにそれを休暇なんぞに使うから、してやられるのだ」
提督「お前も艦娘なら知っているだろう。奴ら一体一体の戦闘力は、一部の例外を除いて大したものではない」
提督「だが、それを補って余りある物量が脅威なのだ」
提督「敵の出現率が一定だと思っていたのか?もしそうだとしたら救いようがない」
提督「日本はアジアで最大の艦娘数の国だ。確かに勝利を重ね、東アジアを解放した」
提督「しかし、かつて解放した地域には通商破壊の部隊やら侵攻を目的とした艦隊が侵入してくる」
提督「だと言うのに未解放の海域には今まで以上に強力な敵が待ち構えている」
提督「明らかに敵の出現率が増えているのだ。この際、生産力とでも言おうか」
提督「敵は我々と同等か、それ以上の技術発展を続けており、物量や生産力に至っては最初から圧倒的に負けている」
提督「現状でも解放した地域の維持に精一杯で新しい海域の解放はアメリカが参戦するまで不可能と思われるほどだった」
提督「敵の生産力の上限は不明だ。だが、頭がないと考えて行動しなくてはならない。その上昇率も分からん。ここでまた膠着したらどうする?アメリカは一つしかないぞ?」
提督「取り返しのつかないことになる前に、すべてを終わらせなくてはならないのだ」
鹿島「……」
提督「鹿島、お前は復讐すると言ったな?自分たちが守っているからこそ生きているのにそれを当然と思っているのが許せないと」
提督「奴らなんてくだらなくて、前提督の命と比べるべくもないと」
提督「だが今こうして君が生きていられるのは彼らのおかげだ。それを忘れるな」
提督「確かに彼らは君たちのように命を懸けて戦っているわけではない。だが、彼ら一人一人もまた後方で戦っているのだ」
提督「我々の食糧、医療品、娯楽品、それらは彼らの努力の上にあるのだ。事故で死んだ者もいるだろう。我々もまた、彼らの屍の上に立っている」
提督「我々が毎日食事をして、風呂に入り、多少の娯楽としてテレビやインターネットを楽しめるのは彼らのおかげだ」
提督「我々が使っている資源もまた、彼らに不便を強いて用意しているものだ。君は街へ出たのだろう?なら知っているはずだ」
提督「道路を走るのは自転車かバスばかり。レストランだって戦前に比べれば倍以上の値段だ。かつて24時間営業だった歓楽街も今では夜に眠る」
提督「戦争が始まってもう3年は経つが、かつての賑わいは失われてしまった」
提督「だが、彼らは信じているのだ。いつの日かあの日々が戻ってくると」
提督「だからこそ不便を耐えられる」
提督「彼らは信じているのだ。いつの日か我ら海軍が深海棲艦どもを一掃すると」
提督「だからこそ彼らは自分たちの仕事をこなしている。我々が我々の仕事をこなしていると信じているのだから」
提督「だと言うのに東京は空襲された。数多くの人命が失われ、街に多くの被害が出た」
提督「敵に攻撃されたのだ。海軍曰く、勝利は目前とのことなのに」
提督「おまけに戦うべき前提督が同じく戦うべき艦娘たちと一緒に街ですごしていた」
提督「戦いそっちのけで、自分の仕事をそっちのけで、遊んでいたんだ。おまけに艦娘との淫行まで噂されていた」
提督「事実はどうであれ、それだけあれば十分だ。怒りを抱くのは」
提督「考えてみろ。もし従業員がその重要性も考えず休暇をとり、医薬品の製造がストップしてしまったがために助かるはずだった戦友が死んでしまったら」
提督「想像してみろ。もし前提督が欠陥のある車両で事故にあってなくなったら。それを作った人間は、恋人のために金を稼ごうとパーツを横流しして安い二級品を使用していたとしたら」
提督「お前は先程ヒステリーを起こして叫んでいたが、彼らもまた同じだ」
提督「今回の空襲で亡くなった人にもまた、前提督を思うお前のように大切に思っている人が居たんだ」
提督「他の人間より危険があるだとかそういうことは関係ないんだ。お前は自分でこの道を選んだ」
提督「例えば我々は医者がどれだけの責務を負っているのか知らないし、そのつらさなど理解できない」
提督「他の人間は我々軍人の責務を知らないし、死と隣り合わせの恐怖や責任へ対する苦悩を理解できない」
提督「だが、医者はそれ相応の報酬を受けている。我々もまた然りだ」
提督「みんなが自分の責務を果たしているからこそ社会は成り立つ」
提督(鹿島は相変わらず濁った眼をしている。私なりに自分の思いを言ってみたが何の反応もないとは……)
提督(クソッそもそも私はカウンセラーじゃないのになぜこんなことをしているんだ。泣きたくなってきた。)
提督(戦いに絶望したものを見たことはあってもこんなタイプに会うのは初めてだ。どうすればいいのかわからん)
提督「鹿島、やってしまった事はもう戻らん。彼は死んだ。彼を殺したのは非難した人々ではない」
提督「深海棲艦だ。そして君の敵も深海棲艦だ。もし君が、誇りある帝国海軍軍人ならば目を覚ませ」
鹿島「……あの事件以来、もう何もかもがふわふわしているんです」
鹿島「すいません提督。取り乱してしまいました。提督の仰る通りです」
鹿島「少々具合が悪いんですが部屋で休むことを許可してくれますか?代わりの者をここへよこしますから」
提督「……分かった。ゆっくり休んでくれ」
鹿島「ありがとうございます」
鹿島退出
提督(……ドイツに帰りたい。あそこは地獄だったが共に戦う戦友たちは最高だった)
提督(ここでやっていけるのだろうか?不安になってきた)
提督(なんにせよ、私はできうる限りのことをするだけだ。)
提督(ビスマルクに会いたい……)
ど「」
て「」
なんかかわいい
十分程して
コンコン
?「失礼します。鹿島に秘書官の代理を頼まれましたの。入ってもよろしいかしら?」
提督「ああ、入ってくれ」
熊野「初めまして。最上型四番艦、熊野と申します。よろしくお願いしますわ」
提督(熊野か。話には聞いていたがお嬢様然としているがしっかりものだそうだ。しかし顔色が少し良くないな。鹿島のように目が死んでいると言うことはない。と思うが……)
提督「熊野か、初めまして。私は提督だ。こちらこそよろしく頼む」
熊野「早速ですが提督。お昼は召し上がられましたかしら?」
提督「いや、そういえば食べていなかったな。もう一時か」
熊野「そうでしょうと思って食事を用意しておりますの。召し上がるかしら?」
提督「ありがとう。君は気が利くな」
熊野「お褒めにあずかり光栄ですわ。では用意するのでしばらくお待ちになっていただけます?」
提督「うむ」
提督(この子はしっかりしているように見える。しかし鹿島のこともあるから油断はできないな)
提督(資料によれば熊野も前提督配下の艦娘だったとのことだ。いろいろと聞かなくてはなるまい)
提督「ほう、カレーか」
熊野「はい。提督には横須賀の味を知って、慣れ親しんでもらわなくてはなりませんもの」カチャカチャ
提督「分かった、堪能させてもらおう。……ところで、君が作ったのか?」
熊野「残念ながら違いますわ。これは調理係が作ったものでしてよ」
提督「そうか」
熊野「提督は私の手料理を食べたいのかしら?」
提督「そうだな。もし機会があればぜひいただきたいな」
熊野「フフッでは機会がありましたら振舞って差し上げますわ」
提督「それは楽しみだ」
熊野「あまり期待せずに待っていてくださいな」
提督「期待せずにか」
熊野「ええ、期待せずに、ですわ」
提督「分かった。ではこのカレーを頂くことにしよう」
熊野「召し上がれ。……まあ、作ったわけではないのですけれど」
提督食事中……
提督(熊野と雑談しつつ食事を終わらせた。彼女はドイツについてとても興味を持った。いつか行ってみたいとのことだ)
提督「ごちそうさま。とてもおいしかったよ」
熊野「お粗末さま。気に入ってくださったのならうれしい限りですわね」
提督「ああ、気に入ったよ」
熊野「本当かしら?それなら貴方はここでうまくやっていけますわ」
提督「いけると思うか?」
熊野「いけますわよ。きっと、ね」
提督「だといいが」
提督(本当にな)
熊野「では御片付け致しますわね」
提督「ありがとう。……熊野、作業を続けながらでいい。聞きたいことがあるのだがいいか?」
熊野「ええ、問題ありませんわ。どうかしまして?」カチャカチャ
提督「そうか。……先ほど鹿島から説明を受けた時、君はあの日に迎撃に出ようとしたところを攻撃されて大破したと聞いた」
熊野「……ええ、そうですわ。」
提督「あの日のことを詳しく教えて欲しい」
熊野「……分かりました。あの日、警報が鳴った時、私は午前の訓練から帰投してシャワーを浴びていましたの。」
熊野「慌てて終わらせて外に出たら、武装して待機せよと命令されました」
熊野「哨戒中の艦隊を再編して敵の足止めに向かわせるからその間に迎撃艦隊を編成して出撃するとのことでした」
提督「鹿島が指揮を執っていたと聞いている」
熊野「ええ。提督が不在の際は、いつもあの方か扶桑さんか山城さんが提督のかわりを務めていましたから」
熊野「ともかく鹿島さんの指揮のもと私は選抜されて、いざ抜錨して沖に出ようとしたところで南東の方角に敵機が見え始めましたの。」
熊野「全艦対空戦闘用意の号令が来て攻撃に備えましたわ。」
提督「第一波の敵機の数は二百機ほど、そのうち半分が鎮守府を攻撃したと聞いている」
熊野「ええ、そうらしいですわね。けれど最初に見えた敵は二十ほどでしたわ」
熊野「中高度を飛行していて、緩い編隊を組んでいましたの。威力偵察か何かだと思いましたわ」
熊野「その目標に対して対空攻撃を初めたところで、敵の艦攻多数が超低高度を飛行してこちらへ向かっていることに気が付きましたわ」
熊野「背筋が凍るとはあれのことを言うのですわね。あと三十秒もあれば攻撃を受けるぐらい近づかれていましたわ」
提督「鎮守府を攻撃したうちの半分以上が艦攻だったらしいな」
熊野「ええ、そうでしたわ。まるで津波が押し寄せてくるように見えましたの」
熊野「必死で艦攻を迎撃していたとき、いきなり爆発が起こりましたの」
熊野「後で聞いたのですが、敵の急降下爆撃をうけたそうですわ」
提督「迷彩された艦爆隊の高高度からの急降下爆撃を受けたと聞いている」
提督「今まで奴らが迷彩を施したと言う話は聞いたことがない」
提督「他の目標に気をとられていた上に、攻撃直前には艦攻による雷撃の危機でパニックに陥っていたとあれば気が付くのは無理だったろうな」
提督「……よく考えたら鹿島は敵が迷彩を使ったなど説明の時こそ言っていたが、激高しているときはそんなこと言っていなかったな」
熊野「激高?鹿島さんが?」
提督「……それについては後で話す。今は君の話を続けてくれ。」
熊野「分かりましたわ。と言ってもその後は何も話すことはないのですけれど……」
熊野「爆発の後、気が付いたら私は湾内で浮かんでいました。」
熊野「武装はすべてお釈迦になっていて、私にできたことは何とか岸まで戻ることだけでしたの」
熊野「桟橋に上がったところで意識を失いましたわ」
熊野「そのあと目覚めたのは二日後で、その時には、もうすべてが終わっていましたの」
どうも、作者です
コメントやアドバイスをありがとうございます!
いろいろと拙いですがこれからもどうぞよろしくお願いします
提督「そうか、ご苦労だった。すまないな、つらいことを思い出させてしまって」
熊野「いいえ、当たり前のことですから。それに、これはたぶん、疎かな私への罰なのですもの」
提督「罰?」
熊野「ええ、そうですわ。」
提督「どういうことだ?」
熊野「私は罪な人間ということですのよ」
提督「罪な人間……何が罪なんだ?」
熊野「これを言えば軽蔑されるかもしれませんが、それは当然のことですわ。だから、あなたに、お話しします」
熊野「私はね、提督。わたくしは、あの日まで戦争をよく知らなかったのですわ」
熊野「私は深海棲艦を打倒し、平和を取り戻すために全力を尽くすと誓い、そうしてきたはずでしたの」
熊野「けれど、それは単なる自己満足でしかなかったのですわ」
熊野「訓練や実戦をこなしてきましたけれど、それは私にとって退屈な日常をとても特別で、胸がドキドキする物に変えるスパイスでしかなかった」
熊野「そう、たとえるのなら部活動のようなものですわ。放課後に仲間と練習をして、大会に挑む」
熊野「大会に出た時は、まるで自分が他の生徒とは違う特別な存在に感じますもの」
熊野「けれど実際は、放課後数時間と休みの日に練習するだけのただのお遊び、プロとは全く違います」
熊野「私は、プロでなければいけませんでしたのに、やっていることはお遊びだったのですわ」
熊野「課せられた訓練以上のことをしようとは思わなかった。勝利が当たり前のものだと信じていた」
熊野「そして、自分が特別な存在だと思い込んでいたんですの」
熊野「救えませんわよね、私。やっていることは部活動ではなくて、人類の命運をかけた戦争ですのに」
熊野「私の考えていたことは、自分がいかに充実した生活を送れるかどうかだけでしたの」
熊野「フフッエステに行くことなんて、何の意味もないのに。」
熊野「身だしなみを必要以上に整えることなど、時間の無駄でしかないのに」
熊野「それに気づくこともなく、私は守るべき者たちの血と涙を浴びて、自分の幸せを求めていましたの」
熊野「そうしている間にも敵は進化していったと言うのに、私はむしろ退化していましたのよ」
熊野「私の怠惰のせいで多くの人が亡くなられましたわ」
熊野「出来ることなら時間を戻したい。昔の自分を殴り飛ばしてやりたい」
熊野「でもそんなことは出来ないから、せめてもの償いとして私は戦いますの」
熊野「一刻でも早くこの戦争を終わらせることが、今の私にとって自分の命よりも大切ですから」
熊野「私はその罪を背負ってずっと戦い続けなくてはなりませんの。いえ、戦い続けたいですの」
熊野「これが私の罪。そして償い。ご理解いただけましたかしら?」
提督「……ああ。しっかりと理解した。熊野」
熊野「ありがとうございます提督。もし必要であれば、何でも私に仰ってくださいね」
熊野「勝利のためなら何も惜しみません。死んで来いと言ってくださっても結構ですわ」
熊野「それが勝利のためならば、私は喜んで死ねますもの」
提督「君の覚悟は分かった。だが一つ正しておこうか」
熊野「正す?」
提督「そうだ、正す。熊野、君は先程自分の命も惜しくはないと言ったな?」
熊野「ええ。そう思っていますもの」
提督「私は君の死んでもいいは死んでも構わないと言うことだと思う」
熊野「構いませんもの」
提督「熊野。死んでも構わないということは、死を覚悟することとはまた違う」
熊野「死を覚悟する……?」
提督「そうだ。困難な任務に際して目標の達成のために命を顧みないが、生きて目標を達成すると言う意志を持つ事だ」
提督「死ぬかもしれないから嫌ではだめだ。だが、死ぬかもしれないけどいいでもだめなんだ」
熊野「では、何がいいんですの?」
提督「死ぬかもしれないけど死なないだ」
熊野「……どういうことかしら?」
提督「俺もこういうことは得意でないから分かりづらいかもしれない」
提督「だが一つ言いたいのは、死に逃げるなってことだ」
提督「死ねば許されるわけではないし、死によって物事が解決することはない。前提督のことを考えてみろ」
提督「自決することは、並大抵の人間ではできない事だ。しかし私は評価しない」
提督「彼は生きるべきだった。生きて失敗を取り戻すべきだった」
熊野「生きて失敗を取り戻す……」
提督「そうだ。どんなに非難されて、死にたくなっても戦い続けるんだ」
提督「もし彼が生きていれば、君や鹿島たちを支えることが出来たはずだ」
提督「評価されるほど素晴らしい指揮が執れるのならば、挽回することもできたはずだ」
提督「だが彼は、自決などと言う安易な逃げをしてしまった」
提督「もし彼に会えるなら言ってやりたい。死ぬ勇気があるなら辛くても生きろと」
提督「もう彼は死んでいて、話すことは叶わないが、君はまだ生きている。」
提督「今ならまだ私の言葉も届くはずだ。だからこそ言おう」
提督「君もまた、彼のそれに近い道を行こうとしている」
提督「君は今、自暴自棄になっている。おそらくだが無理のある生活を続けているのではないか?」
熊野「いいえ」
提督「いや、体調が優れないはずだ。顔色が悪い」
熊野「……そんなことありませんわ。気のせいですわよ」
提督「では君は何時に寝て何時におきている?」
熊野「……零時に寝て、四時に起きていますわ」
提督「ほう、では四時に起きて何をしているのだ?」
熊野「ちょっとした自己鍛錬ですわ。そう大変ではありませんし、必要ですもの」
提督「そうか。ではもう一つ聞こう。普通は任務が無ければ朝八時には訓練、座学などが始まるがそれは午後五時には終わるはずだ」
提督「そのあと君は零時までの間、何をしているのだ?」
熊野「……自己鍛錬ですわ」
提督「君はそんなことを続けて体がもつと思うのか?」
熊野「最初はきつくとも、慣れれば問題ありませんわ」
提督「いや、体を壊して終わりだ。そんなことに意味はない」
熊野「大丈夫ですわ」
提督「いや、大丈夫ではない」
熊野「……ではどうすれば……どうすればいいんですの!?」
熊野「私は強くならなくてはいけませんの!!この戦いを終わらせなくてはならないんですの!!」
熊野「そのためには一刻も無駄には出来ませんわ!!」
熊野「今まで私は時間を無駄にしていましたわ!!だから少し無理があるくらいでなくては挽回できませんの!!」
熊野「教えてくださる提督!?あなたの言う通りこれに意味がないのならば私はどうやって挽回すればいいんですの!?」
提督「……生きることだ」
熊野「生きること……?」
提督「そうだ、無理のないスケジュールに変更しろ。体調管理は大切だと言うことを改めて考えろ」
提督「決して命を粗末にするな。困難な任務に際して死ぬ覚悟は必要だが、死を目標にするな」
提督「苦痛は赦しでも、贖罪でもない。必要以上の危険を冒すな」
提督「……君は過去の自分の行いを顧みて反省している。それは当たり前のことだが、失敗が大きいほどすることが難しくなる」
提督「それが出来た君はたいしたものだ。だからこそ惜しい」
提督「その目標が死になってしまっていることがとても口惜しい」
提督「私は転んでから立ち上がったものは転んだことがないもの以上に成長して強くなると思っている」
提督「君は今、まだ転んだままだ。だからどうか立ち上がってくれ」
提督「生きて、戦って、勝利しろ。それこそが君が求めているもののはずだ」
熊野「生きて、戦って、勝利する……」
提督「さっきも言ったが俺はこういったことは得意ではない」
提督「だが、これが俺なりに考えた君への言葉だ」
熊野「……提督、紅茶を頂きたいのですけれどよろしいかしら?もちろんあなたの分も用意いたしますわ。お願いいたします」
提督「構わない。御馳走になろう」
提督(果たして私の思いは彼女に届いたのだろうか)
しばらくして執務室
熊野「提督、お待たせしました。アールグレイですわ」
提督「アールグレイか。聞いたことがあっても飲んだことがないな。いや、もしかしたら知らずのうちに飲んでいるのかもしれないが」
熊野「そうですの?なかなかおいしい茶葉でしてよ。本当はハーブティーが良かったのですけれど、この前処分してしまったのでありませんでしたわ」
提督「ハーブティー?紅茶とは違うのか?」
熊野「ハーブティーは紅茶と違いチャノキ以外の葉や花を使ったお茶ですわ」
提督「ふむ?よくわからないな。まあおいしければ何であってもいい」
熊野「それぞれの違いを愉しむこともまたいいですわよ。今度新しく買ったら入れて差し上げます」
提督「そうか、よろしく頼む」
提督(こうして二人で応接用のソファーで紅茶を嗜んだ。しばし無言の時間が流れる)
提督(熊野はカップの中の紅茶に視線を落としたままだ。何か考え事だろうか)
提督(彼女の横顔からは、何を考えているのかは分からなかった)
熊野「……おいしいですわ」
提督「……そうだな、おいしいものだ」
熊野「提督、私は自分を死ぬべきだと思っていますの。守るべきものの屍の上に立っている私は、何かを楽しんだりしてはいけない」
熊野「苦しんで、苦しんで、戦いの中で死ぬべきだと思っていますの。ですからあの日以来、食事も飲み物も食堂で配給されるものだけしか口にしていませんでしたわ」
熊野「もちろん、配給の食事もおいしいですし、水だって悪くありませんわ。それでもやはり甘いものが欲しくなったり、お茶が欲しくなったりしますの」
熊野「でもそれを口にしてはいけない、自分がしたいことをしたり、何かを楽しんだりするような資格なんてないと思っていますから」
熊野「でも、提督。今日あなたの話を聞いてなんとなくわかった気がしますわ」
熊野「私は死ななくてはいけないと思っているけど、本当は死にたくないと思っていますの」
熊野「とても怖くて、生きたくて仕方がないですわ。甘いものだって食べたいし紅茶だって飲みたい。」
熊野「けど、多くの人を殺してしまった私にはそんなことする権利はないと思って、」
熊野「犠牲にしてしまった人のためにも、自分を殺して、死ぬまで戦い続けなくてはいけないと思っていましたわ」
熊野「けれどね、提督。あなたの『生きて、戦って、勝利しろ』という話を聞いて、私は生きてもいいのかもしれないと思いましたの」
熊野「私は、頑張って戦って、生きて平和を迎えてもいいのかもしれないと思いましたの」
熊野「ねえ提督。私は、熊野は生きてもいいのかしら?紅茶を飲んでもいいのかしら?ケーキを食べてもいいのかしら?」
熊野「……死ぬためじゃなくて、生きるために戦ってもいいのかしら?その権利はあるのかしら?」
提督(熊野は涙目でこちらを見つめている。話しているときも鼻声になりがちだった)
提督(おそらく苦しみ抜いたであろう彼女の瞳は不安に揺れていた)
提督(熊野は救いを求めていた)
提督「……もちろんだ。熊野、君は生きていい。人は誰だって失敗する。だが、決して失敗を理由に死ななくてはいけないなんてことはない。生きてはいけないということは絶対にない」
提督「生きろ、熊野。犠牲になった人々へ申し訳なく思う気持ちや自分の失敗を反省する気持ちは忘れるな。だが、それを足枷にすることは決してしてはいけない」
提督「死んだ人々のためにもお前はお前らしく生きるんだ。死にそうでも死ぬな。生きて、勝つまで戦え、そしてすべて終わったら残りの自分の人生を楽しめ」
提督(……)
提督「……熊野、お前は頑張った」
熊野「提督……うぅ……提督!」
提督(熊野は私に抱き付いてきた。そしてわんわんと泣いた。十分程泣き続けた後、泣き疲れて眠ってしまった)
提督(仕方がないから執務室の隣にある私の部屋で寝かせた。)
提督(すうすうと眠る熊野の寝顔をみて、この子もまたいろいろと苦悩する年頃の女の子なのだと思った)
提督(この子と話をして、少しは力になれただろうか。もしそうであればうれしい限りだ)
提督(……しかし私はこうも思ってしまう。煩わしいと。悩み事があろうとも自分の職務はきっちりとこなしてもらいたいと考えてしまう。)
提督(頑張ったと言ったが、もう少し頑張ってほしいものだ)
提督(……もう夕暮れだ。初日とはいえ、引継ぎ以外には仕事らしい仕事をしていない)
提督(一週間後には作戦開始だと言うのに、その作戦についても概要を軍令部と話しただけだ)
提督(こうしている間にも時は流れる。ビスマルク達も戦っている。こんなことをしている暇はないのだ)
提督(一刻も早く欧州へ助けに行かなくては。その為にはさっさとアジアを解放する)
提督(秘書艦は寝てしまったからな。とりあえず自分でやるしかない)
提督(まずは作戦についてだ。明日には再び軍令部へ赴いて決定しなくてはならない)
提督(今日中に草案を作らなくては。実はもうすでに考えはまとまっている)
提督(これをさらに纏めてより良いものとするためにも経験豊富な艦娘の意見が欲しいところだ)
提督(ここに所属している中でいえば……長門がいいだろうな。我が国を代表する艦娘だ)
提督(放送で呼び出すように頼んでおくか……いや、せっかくだから自分で呼びに行くか)
提督(作戦会議に呼ぶ他の艦娘の選定も頼まなくてはならないからな。呼び出してから言ってもらうのは二度手間だ)
提督(それにこの鎮守府を見て回ってみたい。雰囲気を知ることは重要だ)
提督移動中
提督(とりあえず熊野宛に机の上にメモを残してきたし、私がいない間に目覚めても大丈夫だろう)
提督(通常は艦娘やいくらかの必要な人員しかいないここも現在は再建のために多くの人間がいる)
提督(いたるところで工員の大声や工具や重機の音が鳴り響いていてうるさいぐらいだ)
提督(しかも一刻も早い修繕のために夜通し働いているらしい。実はこういう雰囲気は賑やかで嫌いではない)
提督(だが艦娘の宿舎は被害を受けた船渠や工廠に近いため、これでは就寝に影響がありそうだ)
提督(執務室のある棟は少し離れた門の近くあって来客の宿泊用にそれなりの部屋がある)
提督(就寝の時はそちらの使用を許可する必要があるか)
提督(そうこうしているうちに艦娘の宿舎に着いた。警備兵の敬礼を受けつつ中に入る)
提督(玄関を入ってすぐに談話室があるらしいな。そこに行けば誰か居るはずだろう)
提督(扉は開けっ放しになっていて中から声がする。誰かいるようだ。よかった)
提督「失礼する。私は新たに着任することになった提督だ。突然の来訪ですまないが長門はいるか?」
長門「提督!?失礼しました、私が長門です。このような場所までわざわざいらっしゃるとはどうなされたのですか?」
提督「驚かせてしまって申し訳ない。熊野が秘書艦をしてくれていたのだが急ぎで別の用があってな」
提督「そこで私自ら君を呼びに来たと言うわけだ」
長門「そうでしたか、御足労頂きありがとうございます。改めまして、私が戦艦長門です。敵戦艦との殴り合いならお任せください」
提督「こちらこそ帝国海軍を代表するような面々の指揮を執ることが出来るとは光栄だ。戦局は風雲急を告げるが君たちとなら乗り越えることが出来ると確信している」
提督「では早速本題に入ろうと思うのだがその前に他の者も自己紹介してくれるかな?」
陸奥「はい、長門型二番艦陸奥です。弾薬庫は今度は大丈夫なので安心してください。よろしくお願いします」
伊勢「航空戦艦伊勢型一番艦、伊勢です。後部飛行甲板とカタパルト二基で航空戦力を運用可能です。よろしくお願いします」
日向「同じく航空戦艦伊勢型二番艦、日向です。推して参ります。よろしくお願いします」
赤城「一航戦、赤城です。空母機動部隊を編成するなら、私にお任せください。よろしくお願いします」
加賀「一航戦、加賀です。ヨーロッパの戦いを経験なさった提督に指揮を執っていただけるとは光栄です。よろしくお願いします」
翔鶴「五航戦、翔鶴型一番艦翔鶴です。先輩方に少しでも近づけるように瑞鶴ともども頑張ります。よろしくお願いします」
瑞鶴「同じく五航戦、翔鶴型二番艦瑞鶴です。艦載機がある限り負けはしません。よろしくお願いします」
提督「うむ、よろしく頼む。では本題に入ろうか。皆も知っているとは思うが一週間後、船渠の修理が完了すると同時に進出してきた敵攻撃艦隊を撃滅する」
提督「そこで大体の作戦概要を作ったが君たち艦娘の意見も聞きたい」
提督「ついては戦艦、空母巡洋艦、駆逐艦の各艦種から一人か二人ほど選定して二○○○に本棟の会議室に来てもらいたいのだ」
提督「人選は長門、君に任せる。よろしく頼むぞ」
長門「了解いたしました、お任せください」
提督「よろしい、では失礼する。急で申し訳なかったな」
長門「そのようなことはございません。ありがとうございました」
提督「うむ」
提督退出
伊勢「いや~驚いたね。まさか向こうから来るとは」
陸奥「本当にそうね。心臓が飛び出るかと思ったわよ」
長門「期を見て熊野が私たちを呼び出して挨拶の場を設けると言う話だったからな。この展開は予想外だった」
瑞鶴「今日一日ここで待ってた意味がありませんでしたね。やっぱこっちから挨拶しに行けばよかったんじゃないですかね?」
翔鶴「でも急に訪ねていくわけにはいかないでしょう?」
瑞鶴「まあね。けど、これじゃあなんか私たちが挨拶にも行かないような礼儀知らずみたいでなんか嫌じゃない?」
加賀「……提督もいきなり訪ねてきたのだから、それも察していらっしゃるわよ」
赤城「そうですよ。それにしてもあの方が噂のドイツ帰り提督ですか。思っていたより若そうな方でしたね」
瑞鶴「そうですよね!数にも経験にも負けるドイツ艦隊を指揮して帰国までヨーロッパを守り通したって聞いていたから髭とかはやして貫禄のある人かと思っていましたよ」
陸奥「帰国命令がいった時にまだドイツを離れるわけにはとか言っていたらしいわよ?」
伊勢「へえ!すごい責任感がある人なのか、あるいはドイツ大好きな人なのかしらね?」
日向「あるいはマゾなのかもな。ヨーロッパの戦況は絶望的だと聞く。一番強い深海棲艦は北海にいる奴らだって話だ」
日向「あのロイヤルネイビーを有するイギリスが本国を失いカナダへ撤退するほどだからな。あながち間違ってはいないのかもしれん」
日向「そして大陸側でも一般人が東へ東へと疎開しているらしい。まともな神経していたらやっていけないって聞いているぞ」
伊勢「もしそうだったとしたらすごい複雑だよね~なんというか、やっぱりマゾとかそういう特殊性癖はちょっとな~」
翔鶴「でもそれでもすごい人ですよ!私だったらそんな事耐えられそうにありません」
赤城「翔鶴さんだって敵空母との戦いで大破しながらも敵空母を全部撃沈したほどですからすごい人ですよ。自信をもってください」
翔鶴「ありがとうございます赤城さん!」
瑞鶴「赤城さん赤城さん!私はどうですか?」
加賀「あなたはまだまだよ。翔鶴が戦っていた時にあなたは航空隊の発艦に手間取って出遅れていたでしょ」
瑞鶴「うぐぅ!でもでも、この前のマラッカ海峡の戦いではシンガポールへ迫る敵を瑞鳳、千歳、千代田と協力して撃退しましたよ!ヲ級を八隻沈めたんだから!」
加賀「先制攻撃した上、敵は飛行場攻撃にかかりっきりで一切攻撃してこなかったのだからあれくらいできて当然。それにそうやって自分の戦果を誇る所からしてまだ半人前よ」
瑞鶴「ぐふぅ!」
赤城「まあまあ。当たり前なことを当たり前にこなせることは案外難しくて大切よ。瑞鶴さんもすごい人です。」
瑞鶴「赤城さん!やっぱりどこかの青い方と違って優しいですね!」
加賀「あらあら、ヒヨコがピヨピヨうるさいわね。困ったわ、しつけてあげましょうか」
翔鶴「瑞鶴!なんてこと言うの貴女は!先輩に失礼でしょう!」
瑞鶴「はぁい。すいませんでした加賀先輩」
長門「どちらにせよあの新しい提督は期待できる人だと言うわけだ。ソロモンの敵と同じかそれ以上の敵と渡り合ってきたのだからな」
長門「あの奇襲攻撃を聞いた時はどうなるかと思ったが、提督なら何とかしてくれるはずだ。トラックからわざわざやってきたかいがある」
長門「とりあえず私は提督に頼まれた仕事をこなさなくてはならない。戦艦からは私と伊勢、空母からは赤城、巡洋艦からは那智と神通、」
長門「駆逐艦からは……そうだな……陽炎を選ぼうと思うのだが意見がある者はいるか?」
伊勢「いいんじゃない?」
翔鶴「問題ないと思います」
長門「よし、では私は他の者に声をかけてくる」
陸奥「はいはーい。行ってらっしゃい」
長門(さて、提督の作戦とやらがどんなものか楽しみだ。彼が今の停滞している我が軍を変えてくれる人物であることを祈ろう)
毎回アドバイス・感想をありがとうございます
すいません。細かい構成とか考える前に書き始めてしまったので冗長になっていますよね……
なるべく無駄がないように頑張ってみます
お目汚しではありますが、暇潰しにでも読んでいただければ幸いです
執務室
提督メモ「長門に用があるから艦娘寮へ行ってくる。もし目が覚めたなら、すぐ戻るから待っていてくれ」
熊野「さて、そろそろ紅茶が入りましたわね」
熊野「……うん、おいしいですわ」
熊野「……はあ」
熊野(まさか提督の前で号泣して、泣き寝入ってしまうとは。失態ですわ。なんと恥ずかしいことを……)
熊野(でも、提督の言葉を聞いて救われましたわ。私は生きてもいいのですわ)
熊野(これからはあの方についいていきましょう。死ぬためではなく、生きるためにあの方と共に戦いましょう)
熊野(そしていつの日か戦争が終わったら、もう一度エステへ行きますわ。)
ガチャ
提督「熊野、起きていたか。」
熊野「はい、お帰りなさいませ、提督。先ほどはみっともないところをお見せしましたわ」
提督「そんなことはない。気にするな」
熊野「そうですか……提督、本当にありがとうございました。提督のおかげで私、本当に嬉しかったのですの。救われましたわ」
提督「当たり前のことを言っただけだ。もし助けになれたのならよかった」
提督「さて熊野、早速だが一仕事頼む。この後二〇〇〇からここの会議室で作戦会議だ」
提督「よってそれについての資料を作成して配布しなくてはならない。手伝ってくれ」
熊野「承りましてよ!」ニッコリ
提督(……いい笑顔だ。熊野はどちらかというと美しい系だな。……っと、なんていうことを考えているんだ俺は)
熊野「提督?どうかいたしまして?」
提督「ッ!?オホン!いや、何でもない。早速取り掛かろう」
熊野「はい!」
一九五五 本棟会議室前
提督「長門、もう来ていたか。流石帝国海軍だな」
長門「提督。いえ、当然のことをしたまでです」
提督「伊勢に赤城だったな。よろしく頼むぞ」
伊勢「私がどの様に力になれるか分かりませんが、やれるだけやってみますよ」
赤城「今度の作戦のお役に立てるのであれば光栄です」
提督「後の三人はそれぞれ重巡、軽巡、駆逐艦か」
那智「はい、初めまして提督。妙高型重巡洋艦二番艦那智です。よろしくお願いします」
神通「初めまして……川内型軽巡洋艦二番艦、神通です。どうかよろしくお願いします……」
陽炎「初めまして。陽炎型駆逐艦一番艦、陽炎です。ご指導ごびぇっ……ご鞭撻よろしくお願いします」
提督(那智か。足柄の姉だったかな?向こうでは妹の方が有名だったが、姉なだけはあるな。凛とした佇まいは安心できる)
提督(神通、帝国海軍に数ある軽巡洋艦の中で一番のやり手と聞くがそんな印象は受けないな。自信がないようで心配だ)
提督(陽炎は駆逐艦の中でも一番経験と性能がとれている陽炎型のネームシップだ。噛んだことはともかく優秀な子のはずだ)
提督「うむ。私が新しくここに着任した提督だ。よろしく頼む」
那智(これが噂のドイツ帰りか……若いな)
神通(ドイツの戦況は厳しいと聞きますが、いったいこの窮地にどんな作戦を立てたのでしょうか……気になりますね)
陽炎(かっかんだーっ!……もうヤダ……死にたいよ……せめていじってほしい……笑いものにされた方がまだまし……!)
陽炎(なにが『私のあいさつを使ってください』よ!とりあえず不知火は許さない(泣))
提督「さて、少々早いがみんな揃っている。作戦会議を始めよう。入って席についてくれ」
提督「……では、以上を以て作戦会議を終了する。続報を待ってくれ」
一同「了解しました!」
艦娘移動中
伊勢「いやー、にしても面白い作戦だとは思うけどね。果たしてうまくいくかな?」
那智「うまくいくも何も、我々で何とかするのだろう」
伊勢「でも三倍はある敵と決戦だよ?いつものように六隻艦隊じゃなくて不規則な連合艦隊まで編成してさー」
伊勢「おまけに反航戦に持ち込むと見せかけて敵前回頭で強引に丁字有利に持ち込めなんて、一歩間違えればこっちが丁字不利だよ」
長門「そこが我々の腕の見せ所だろう。この長門が指揮を執るのだから、タイミングを間違えはしない」
伊勢「そういう長門が一番危ないんだよ?問題ありませんなんて言っちゃってさ」
伊勢「一番最初に回頭とかめった撃ちにされるじゃん。死ねって言われているようなものだよ?」
長門「私はビックセブンと呼ばれるうちの一隻だ。その誇りにかけてそう簡単に沈みはしない」
長門「それに改良型タービンと強化型缶をわざわざ搭載するのだ。敵前でのろのろと回頭するようなことはしない」
長門「危険は最小限だ。提督だってそれを知っているから私に先頭を命じたのだろう」
伊勢「まあそうかもしれないけどさー……こんな危険な作戦なんていままでなかったよね……」
長門「むしろこれが普通なのだろう。我々がぬるま湯に長くつかりすぎていただけだ」
那智「同感だ。今までの指揮は消極的過ぎた。このままでは戦争は終わらせられない」
神通「確かにそう思うところはあります。提督の皆さんは優しすぎましたから……」
赤城「それにこの今までにない窮地では、これくらいの危険を顧みなければ守るべきものも守れませんよ」
赤城「あの子たちを降ろさなくてはいけないのは残念ですが、作戦のためならば仕方ありません」
赤城「勝つためならなんだってできますよ」
伊勢「まあそうなのかもしれないけどさー……陽炎はどう思う?」
陽炎「うぇっ!私ですか?」
伊勢「そうそう」
陽炎「うーんそうですね……まあ確かに博打的かなと思いますけれど、ほかにいい案もないし仕方ないんじゃないですかね」
陽炎「言われたことを実行するまでですよ」
伊勢「言われたことを実行するまで……ずいぶん肝が据わってるわね」
陽炎「駆逐艦は無茶言われるのも命かけるのも慣れてるんですよ」
伊勢「ふーん……仕方ない、か……まあそうなのかもね」
翌朝、提督私室
提督(……朝か。今日は軍令部で作戦を打ち合わせて発令しなくてはならないな)
提督身支度中
コンコン
鹿島「失礼します、提督。お迎えに参りました。鹿島です」
提督「鹿島か。今日は熊野じゃないのか?」
鹿島「……熊野には体調不良のため昨日一日臨時で頼んだだけですから」
提督「そうか、『体調不良』はもう治ったのか?」
鹿島「ええ、おかげさまでよくなりました。ありがとうございます」
鹿島「昨日のことは疲れがたまっていたために起こしてしまった不始末でした。どうかお許しください」
提督「あれが君の本音ではないのか?」
鹿島「まさか、提督の話を聞いて改めて考え直しましたから」
鹿島「ありがとうございました。目が覚めました」
提督「……そうか、ならよかった。戦場では、たまにああして錯乱するものもいる」
提督「バルトでもそうだった。だが、君のように自分を取り戻せたものは他の者より一回り成長していた」
提督「君もその一人だろう。改めてよろしくお願いする」
鹿島「はい、よろしくお願いします。……本当に、ありがとうございました」
鹿島(……)
鹿島(うふふ、本当に感謝していますよ提督)
鹿島(怒りの炎が燃え盛るあまり、冷静さを失っていた私の頭を更なる怒りで冷やしてくれたのですから)
鹿島(具体性のない海軍と一般市民という復讐対象を前にして混乱していた私の前に、あなたという人間が来てくれた)
鹿島(そのおかげで私の復讐のイメージは明確になった)
鹿島(今の私は心は怒りで荒れ狂っていますが頭は清水のように冷静です)
鹿島(まずはあなたを破滅させます。何とかして次の迎撃作戦を失敗させる)
鹿島(そうすればあなたは前提督と同じ苦しみ、いや、それ以上の苦しみを背負うでしょう)
鹿島(そうすれば生きていればいる程苦しむ。自殺すればそれはそれでよし)
鹿島(あなたの絶望の表情を見るのが、打ちのめされた姿を見るのが楽しみでたまりません……)
鹿島(それに、海軍は度重なる不祥事で今以上の批判を受けることになる)
鹿島(上の首も二つの意味で飛ぶこともありえるし、陸軍の下に付属する一部署になるかもしれない)
鹿島(もしそうならなくとも東京が大きな被害を被れば、国内は今まで以上に混乱する)
鹿島(そうなれば、あとはもう破滅へのカウントダウンを数えるまで)
鹿島(海軍が壊滅して対抗手段が無くなれば、後は滅びが避けがたいものとなる)
鹿島(こうして一般人共は思い知るでしょう。自分たちが愚かだったと)
鹿島(でももう許しません。間に合いません。自分たちの愚かさに苛まれながら、死の恐怖におびえながら皆殺しにされなさい)
鹿島(そうして私の復讐は終わるのだから)
少しして執務室、作戦まであと六日、午前六時三十分
鹿島「……うふふ」
提督「どうしたんだ?」
鹿島「いえ、何でもありません」
提督「そうか、ならいいんだが」
鹿島(危ない危ない……ついぼうっとしていました。気をつけなくちゃ)
提督「今日の予定は分かったか?」
鹿島「はい、軍令部に赴いて最終的な作戦を決定して発令するのですね?理解しました」
提督「そうだ。そういうわけだから資料をまとめておいてくれ。私は食堂で朝食をとってくる」
鹿島「分かりました。お任せください」
提督(たまに凄みを感じることがある気がするが、大丈夫だろう。それより今日の作戦会議だ)
鹿島(これは……早速チャンス到来ですね)
提督退出
鹿島(……ふむふむ、なるほど。三段階に分かれた迎撃作戦ですか)
鹿島(第二段階では攻撃に来た敵艦隊を殲滅……敵前で逐次回頭!?)
鹿島(こんな艦娘を危険にさらす作戦、前提督であれば考えもしなかった)
鹿島(やはりあなたは死んで当然の人間ですね、提督……)
鹿島(この作戦は綿密な計算の上に成り立っている繊細な作戦……)
鹿島(だからこそ少しの計算外でもろく崩れ落ちる。まるでガラス細工のように崩れ去る)
鹿島(……やはり一番の難関で最重要なタイミング、敵艦隊を丁字戦に持ち込み撃破する所ですべてを台無しにする。これが最善ですね)
鹿島(そう、すべてを台無しにするには大きな事件が必要です……例えば作戦中に一般人が紛れ込むような……)
鹿島(……そうだ、あのゴシップ紙の記者を利用するときが来ましたね。いずれ拷問して殺そうと思い、調べていた甲斐がありました)
鹿島(それに目撃者が必要です。黙殺されないように、誰かが見ていなくては)
鹿島(記者が生き残れば最高ですが、可能性はありませんからね)
鹿島(……陸軍だ!あいつらなら海軍にばれないように偵察可能でしょう)
鹿島(それに陸軍の過激派海軍攻撃のためならばなんだって利用する奴らです。そんな事実があれば嬉々として利用するでしょう)
鹿島(いいですよ鹿島!冴えてます!……けど時間がありませんね、即行動しなくては)
鹿島(まずは、軍令部での作戦会議で確定した作戦情報を入手しなくては。ついでに次への布石も打っておきます)
某所
ゴシップ紙記者「くそっ絶対うけることは分かっていたんだよ。案の定、ネットで大炎上じゃねえか」カチカチ
ゴシップ紙記者「それが何?国家のために出版差し押さえ?ふざけやがって……てめえらの身からでた錆じゃねえか!」ピロリン!
ゴシップ紙記者「うん?新着メール?なんだよなんだよ……ってオイオイオイ!マジかよ!」
ゴシップ紙記者「釣りかも知れねえけどほかにあてなんてねぇんだ。のってやろうじゃねえか!」カタカタカタ
同日、軍令部にて、作戦まであと六日、午後一時
元帥「……よし分かった。ではこの作戦でいくことにする。これにて作戦会議は終了だ」
全員「はっ!」
提督「さて、無事作戦案も通ったし帰るとするか」
鹿島「はい、お疲れ様でした」
提督「改めて修正を加えた作戦案を皆に通達しなくてはならないな」
鹿島「そうですね、資料の作成などはお任せください」
提督「分かった。いつまでにできる?」
鹿島「今日一日あれば可能です」
提督「わかった。よろしく頼む」
鎮守府、作戦まであと六日、午後三時
あきつ丸「資料作成のお手伝いでありますか?」
鹿島「ええ、そうです。この後の作戦でみんな忙しくて……そこであきつ丸さんお見かけしたのでお聞きしてみたのですけど……」
あきつ丸(本気でありますか?今は陸軍の指揮下にある自分に海軍の最高機密たる作戦の資料作成を頼むとは……)
あきつ丸(陸軍から可能な限り海軍の情報を収集せよと命令されてないとでも思っているのでしょうか?)
あきつ丸(以前から海軍の腑抜けっぷりには失望していましたが、まさかこれ程とは!あるいは泳がされているのでありましょうか)
あきつ丸(どちらにせよ、これは絶好のチャンス!虎穴に入らざれば虎子を得ずとも言うし、この秘密兵器を見抜けるわけがない!断るなど言語道断であります!)
あきつ丸「自分が役に立てるのであれば光栄であります。ぜひお手伝いさせていただきたい」
鹿島「ありがとうございます、あきつ丸さん」
鹿島(うふふ、あなたが陸軍より海軍を探れと指令を受けていることは把握しています)
鹿島(これは好機でしょう?乗ってくると思っていました。臨む限りを陸軍に伝えなさい……)
四時間後
鹿島「はい、これで完了です。お疲れ様でした」
あきつ丸「ふぅ、やっとでありますか。デスクワークも結構きついものでありますな」
鹿島「ふふっそうですね。では私は提督へ報告に行ってきます。ご協力ありがとうございました」
あきつ丸「いやいや、そう言われるほどのことはしていません!もしまた何かあればいつでもお声がけ頂きたい。自分は時間が空いていますので」
鹿島「はい、よろしくお願いしますね。あと、一つ言っておくことがありました」
あきつ丸「何でありましょうか?」
鹿島「このこと、周りには内緒にしてくださいね?中には陸軍のことなんて信頼するなって子もいますから……」
あきつ丸「……そうでありますか。分かりました。しかし、鹿島殿はなぜ自分へ手伝いを頼んだのでありますか?
鹿島「……この一大事ですから、今は陸だの海だのと言っているような場合ではありません。皆が協力して事に当たるべきですから」
鹿島「それにあきつ丸さんが何か悪いことをするような人ではないと知っています」
あきつ丸「そうでありますか、そういっていただけるのであればありがたい」
鹿島「では、失礼いたしますね」
あきつ丸「はい、お疲れさまであります」
あきつ丸(やはりこんなスパイのような真似は、心に来るでありますな)
あきつ丸(申し訳ない、鹿島殿。これも日本のためなのであります……)
鹿島(何度か席をはずして一人っきりにさせましたし、これで情報は陸軍に渡ったでしょう。まずは第一関門クリアですね)
鹿島(次は第二関門です。明日か、遅くとも明後日にはクリアしないと)
同日、執務室、午後七時三十分
鹿島「提督、失礼いたします。資料作成が終了いたしました」
提督「鹿島か。うむ、ご苦労。では確認させてもらおう」
提督「……よし、問題ない。引継ぎの時と言い、さすがだな」
鹿島「はい、ありがとうございます」
鹿島(黙れ死ね消えろお前に褒められたところで気持ち悪い以外の感想はないんですよとっととお亡くなりになってください)
提督「夕食は食べたか?通常訓練はもう終了しているし任務がないから全員がここにいる。この後予定を早めて作戦の説明を行おうと思うのだがもし必要なら時間をとるぞ?」
鹿島「この後作戦説明ですか?流石に急ではないでしょうか」
提督「時間があれば別の日にするがな。それにみんな軍人だ。眠くて作戦会議に出られませんなどと言うやつはいないだろう?」
鹿島「え゛っ!?……そうですね、はい。そうだと思います」
提督「……お前、まさか」
鹿島「違います!私じゃありませんよ!」
提督「では誰だ?」
鹿島「それは、その…うぅ、そんな目で見ないでください!加古さんです!」
提督「カコ?誰だか知らんがそんなやつがいるのか?」
鹿島「戦闘の際はすごいのですよ?ただ、平時は、その……」
提督「そいつも以前から横須賀にいたのか?」
鹿島「……どういう意味ですか?」
提督「そいつもまた、眠けりゃねていいと甘やかされていたのかってことだ」
鹿島「……いいえ、彼女はトラックにいましたから。ソロモン帰りです」
提督「そうか。鹿島……いや、やはり何でもない。それより食事はどうする?」
鹿島「そうですね、頂きます」
提督「分かった。では一時間後、二〇三〇に集会場に集合だ」
鹿島「分かりました。では失礼します」
鹿島退室
提督(ふむ、それとなく探ってみたがやはり前提督を侮辱されると一気に本性が現れるな)
提督(もはや悪い宗教かなにかだな)
提督(このまま軍属にいさせるのは危険か?だが今は非常時で人手が足りていない……)
提督(問題行動を起こしているわけではないし、そのそぶりもない、か)
提督(いや、後悔してからでは遅い。やはり解体を進言しておこう。こういうやつはえてして大惨事を引き起こす。後悔は先に立たないのだ)
提督(……そういえば前提督の配下が誰かを聞くのを忘れていたな。熊野に確認しよう)
提督(それにカコ?っと言ったか。そんなやつがいるとは信じられん)
提督(個人面談でもするべきだろうか……)
提督(……ビスマルクに会いたい。彼女はいったい何をしているだろうか?)
提督(あと一時間ほど時間がある。軍紀で電子メールは許可されていないが手紙なら書ける。出してみるか……)
同日、艦娘寮集会場前、午後八時半
提督「一人足りないようだがどうした?」
鹿島「……体調不良で欠席です」
提督「体調不良?作戦開始までもう時間がないぞ。回復しそうなのか?」
鹿島「提督はお怒りになるのでしょうね。彼女はあの日以来ショックで引きこもっています」
提督(またこの手の問題か……豆腐メンタルすぎる……)
提督「……そうか」
熊野「それについては私からお話ししますわ」
提督「熊野か」
熊野「彼女は、鈴谷は私の相棒ですから」
提督「分かった、ありがとう。だが後で頼む。皆を待たせてはいけないからな。行くぞ鹿島。君も席へ戻れ」
鹿島「はい」
熊野「分かりました」
提督・鹿島入室
鹿島「これより提督から六日後に行われる南鳥島奪還作戦の説明があります。心して聞いてください」
提督「楽にしてくれ。では説明を始めよう。この作戦は三段階に分かれている」
提督「硫黄島から敵離島棲鬼へ航空攻撃を加えることで敵を硫黄島攻略へ誘い出す第一段階」
提督「誘い出された敵艦隊を迎え撃ち、これを撃滅する第二段階」
提督「そして返す刃で南鳥島を奪還する第三段階だ」
提督「まず、第一段階では硫黄島のから陸上航空隊と空母から降ろした航空隊、攻撃機約二百に戦闘機約二百五十を加えた総数四百五十機以上で離島棲鬼へ攻撃を行う」
提督「この際重要なのは敵艦隊へは攻撃を加えないことだ。敵に反撃を決意させなくてはならないからな」
提督「なお、~」
加古「……ふあぁあ、ねむい」
古鷹「ちょっと加古!寝ちゃダメだよ!」ボソボソ
加古「だって話が長いんだもん……何すればいいかだけ言ってくれればそれで十分だよ……」ボソボソ
加古「それにこんな夜にやらなくても明日にやればいいじゃん。まだ時間あるんだから」ボソボソ
古鷹「何言ってるの!ちゃんと作戦全体を把握しておくのは大事だよ!それに作戦の確認も早くしておくべきだって!むしろ準備時間が短いぐらいだよ!」ボソボソ
加古「はいはい、分かったよ」ボソボソ
提督「~。次に第二段階だがここでは四個の打撃艦隊にて敵を迎撃する。第一艦隊は長門、陸奥、那智、羽黒、~」
加古「…」
提督「第二艦隊は伊勢、日向、高雄、愛宕、~」
加古「……」
提督「第三艦隊は川内、神通、那珂、~」
加古「………」
提督「~由良、鬼怒、阿武隈、~」
加古「…………zzz」
古鷹「加古!」ボソボソ
加古「寝てない!寝てない!起きてるよ~」ボソボソ
提督「~。第三段階は南鳥島への直接攻撃だ。敵が釣れたら転進する機動部隊による航空攻撃を主力とする」
提督「なお、航空隊は半数ほどを降ろしているが第一段階離島棲鬼へ打撃を加えておくので問題ない」
提督「持てるだけの力を以てして敵を撃破し、南鳥島を解放するのだ。仮に攻撃が不十分だった場合、打撃艦隊から行動可能な艦を再編して攻略へ向かわせることとなる」
提督「被害の大きい艦は即刻帰還して高速修復剤による修理を経たのちに~」
提督「~」
加古「……あー無理だこれ。落ちるわ。」
加古「しかたないよね……もう夜だもの……」
加古「……zzz」
提督「では編成だが、~」
提督「第二機動艦隊に五航戦、龍驤、加古、……おい、そこのお前」
古鷹「ッ~~!?加古!加古!起きて!どうしてまた寝てるの!?」ボソボソ
加古「んあ?」
提督「そこの重巡、貴様今何をしていた?」
加古「え?いや、えっと~起きてました!起きてましたよ!」
提督「ほぅ、では第二機動艦隊の構成を言ってみろ」
加古「第二機動艦隊の構成?えっと……五航戦の人たちと龍驤さんと私と……あと駆逐艦の……えーっと……陽炎と不知火だっけ?」
提督「……メンバーは空母と貴様までしか発表していない。それにその二人はもうすでに他艦隊所属と伝えたはずだ。お前、寝ていただろう?」
加古「いやー、その、すいません……寝ていました」
提督「……」
加古「でも作戦はあとで古鷹に聞いておくので大丈夫ですよ。問題ありません」
提督「…話はそういうことではない。貴様、それでも軍人か?」
古鷹「てっ提督!申し訳ありません!加古はその……よく眠る方でして!この後よく言って聞かせるのでどうかご容赦ください……!」
提督「……貴様が加古か。ということは隣のお前は古鷹か?」
古鷹「はい!」
提督「後で聞くから大丈夫、か……重巡加古、お前は現刻をもってして営倉入りだ。場所は分かるな?」
加古「営倉……」
古鷹「提督!どうか、どうかご容赦ください!」
提督「駄目だ、すぐに出ていけ。おって連絡する」
古鷹「お願いします!許してやってください!」
提督「くどいぞ!貴様も軍人なら弁えろ!」
古鷹「!!」ビクッ
加古「古鷹、そんなことしなくていいよ。すいませんでした提督。現刻より加古は営倉入りします」
古鷹「加古……」
提督「さて、説明を再開するぞ。第二機動艦隊は~」
三十分後
提督「他に質問のある者はいるか?……よし、以上で説明を終了する。夜分遅くまでご苦労だった」
鹿島「起立!敬礼!」
午後九時半、本棟の臨時第六駆逐隊の部屋
電「それにしても、新しい提督さんは怖い人なのです……」
暁「あら電、怖がっているの?もう、お子様なんだから!」
電「お姉ちゃんは怖くないのですか?」
暁「それは……こ、怖くなんかないわよ!当たり前じゃない!」
雷「でも加古さんが寝ているのをああして怒られたのは初めて見たわ」
雷「トラックの提督はなんだかんだ言っても笑っていたし、ああして怒鳴らなかったもの」
暁「確かにそうね。あんな怒りっぽい提督で大丈夫かしら?」
響「でも説明中に寝るのは良くないよ。今までああして怒られたことがなかったことの方が不思議だね」
雷「それはトラックの提督が優しいからじゃない?」
響「優しさと甘やかすことは違うよ。私は新しい提督は甘やかす人じゃないと知れてよかったと思う。皆、強く怒られないことをいいことにやりたい放題だったからね」
電「そうですよね……電達も怒られないように気をつけなくちゃ」
雷「そうね!きっとそれが提督なりのやさしさなんだわ!けどあれじゃ敵もたくさん作っちゃうから……私が司令官の味方になってあげなくちゃ!」
暁「ふふん!頼れるレディーの出番ってわけね!」
一方、艦娘寮談話室
古鷹「……」
那智「まあ、なんだ、古鷹。元気を出せ。何も解体になったりしたわけじゃない」
羽黒「そうですよ、その……きっと許してくれますよ」
高雄「普段あまり問題にされなかったから気にしていなかったけれど、説明中に寝入るのは確かに問題だったわね……」
愛宕「そうねぇ、やることはちゃんとやっていたからねぇ」
那智「普段問題にされないだと?トラックは大丈夫なのかそれで?」
高雄「提督は優秀な方ですから。何の問題もなかったわ」
愛宕「そうよ、あの人は優しいし優秀だし理想の提督よ!」
那智「その割には主力が配備されているのにいつまでたっても珊瑚海を解放できていないようだが……」
愛宕「それは戦力不足が問題なのよ……数はともかく性能や練度が今までと桁違いだったわ。珊瑚海とソロモン海は本当に地獄の戦場だから……」
那智「たしかガダルカナルといったか?あそこに陣取る敵が強力と聞いたが」
高雄「それもそうだけどポートモレスビーが本命ね。ガ島は、本当は私たちが拠点にするべく整備したのだけど深海棲艦に攻撃されて逆に拠点として活用されているわ」
愛宕「最初は取り戻そうと躍起になって無茶したから、結果多くの輸送船が沈んじゃったわけ」
愛宕「艦娘は撃沈されたものはいなかったけれど金剛型の比叡さんと霧島さんを始めとして多くの子が被害を受けたわ」
高雄「その結果資源不足が深刻になっちゃって大きな攻勢は暫く出来ないってわけ」
那智「そうか、そちらも大変なのだな」
愛宕「ねぇ、それよりインド洋はどうなのよ?」
那智「こちらはあと少しの戦力と資源があれば解放は容易いはずだ。だが、それがないから困っている」
羽黒「そうですね……恐らく軍令部が太平洋でなくインド洋解放を優先すれば、半年もかからずに解放できるかと思います……」
那智「一年前の攻勢ではセイロンをあと一息というところまで追いつめたが、太平洋方面での戦闘優先の為に攻撃が中止された」
羽黒「みんな頑張っていたのに最後の最後で中止になって……あの悔しさは今でも鮮明に覚えています」
那智「結果、セイロンの連中も盛り返してきた。イタリア紅海艦隊やイギリス東洋艦隊の提督たちは、それはもう涙ながらに日本にインド洋の解放優先を訴えたそうだ」
羽黒「けどその時にトラック方面で司令官さんが戦死なされて、そちらへ戦力を集中することとなったから拒否したそうです……」
古鷹「……よし、決めた!」
那智「うわっ!びっくりしたな……驚かせないでくれ」
愛宕「そうよぉ!心臓が止まるかと思ったじゃない」
古鷹「みんなひどくない?私を慰めてくれてたのにさぁ……」
羽黒「ごっごめんなさい!こっちに来てからこうして話す機会がなかったものですからつい……」
高雄「まあ私たちが来て三日目だから。いろいろ忙しくて時間が取れなかった分、一気に話しちゃったわ。ごめんなさいね」
古鷹「そうだけどさぁ……まあいいや。それより、私も営倉入りしてくるね!」
那智「何?どういうことだ?」
古鷹「加古が寝ちゃったのを起こさなかった私も悪いしさ、一緒に誰かいるってだけで安心できるから」
古鷹「だから私も営倉入りしてくるよ。じゃあね!」
愛宕「あらあら、加古もいい姉を持ったものね」
那智「ああ、素晴らしい友情だな」
高雄「では私たちももう少し友情を深め合いますか」
羽黒「そうですね」
少しあと、営倉
提督「加古、出てこい。そこに座れ」
加古「はい」
提督「もう一度貴様に問う。何故寝た?」
加古「眠さに抗えなかったからです」
提督「そうか。今まで何も言われなかったのか?」
加古「言われてます。けど、やるべきことをやれるのであれば別にいいと言われてそこまで強く言われたことはありませんでした」
提督「やるべきことをやれるのであれば、か。貴様はその睡眠癖が深刻な問題を引き起こすことになるかもとは思わないのか?」
加古「考えもしませんでした」
提督「そうか、なら今後はよくよく考えろ。お前の責任はお前が思っているよりよほど大きい」
提督「作戦行動において作戦全体を把握しておくことは重要だ。もし無線機が壊れたら?上官が戦死して指揮権が貴様にあったらどうする?」
提督「戦場で何が起こっているかわからないでは命取りになる。それでお前だけが死ぬならまだいいが貴様の双肩には日本という国が掛かっているんだ」
加古「はい……」
提督「では、今後どうするべきかわかるな?」
加古「もう居眠りはしません。改めます」
提督「そうか、では貴様に処分を言い渡す。今夜は営倉入りだ。期限は明日の九時までとする」
加古「はい。分かりました」
提督「ではそのように」
加古「ありがとうございました」
古鷹「提督、失礼します!」
提督「なんだ貴様は?」
古鷹「古鷹です!お願いがあって参りました!どうか私も営倉入りにしてください!」
提督「なんだって?」
古鷹「今日、私は加古が寝ていたのに起こすことが出来ませんでした!私にも責任があります!」
古鷹「ですから、私も営倉入りするべきです!」
提督「何を言っているんだ。お前は営倉入りするほどのことをやらかしたわけではない。自分の部屋で寝ろ」
古鷹「しかし!」
提督「しかしではない。営倉入りは少しとはいえ体調を崩す恐れがある。日本の興亡を懸けた作戦を目前として、できれば避けたいのだ」
提督「しかし加古はそれだけのことをしでかした。重要な説明中に居眠りなど言語道断だ」
提督「本当は営倉入り三日にしてやりたいところだったが、一晩だけにしたのもそれが理由だ」
提督「お前も自分の立場と責任をわきまえろ。自己満足のために国を疎かにするな」
古鷹「はい……」
提督「よろしい。では部屋に戻れ」
古鷹「はい……」
加古「古鷹」
古鷹「加古……」
加古「私は大丈夫。それに提督が言っていることはもっともだよ。あたしもちょっと最近腑抜けてたみたい」
古鷹「……そっか。分かったよ加古。じゃあまた明日ね。お休み」
加古「お休み古鷹。提督もおやすみなさい」
提督「……体を壊すなよ」
加古「はい、気をつけます」
提督移動中
古鷹「では提督、私は寮へ戻るので失礼します。おやすみなさい」
提督「分かった。ゆっくり休むと良い」
古鷹「はい、ありがとうございます」
鹿島「……提督は先程のやり取りを見ても何も思わないのですか」
提督「何?加古と古鷹のか?」
鹿島「そうです。何故古鷹さんに加古さんと共に営倉入りすることを許可なさらなかったのですか」
提督「そのやり取りが聞こえたのなら、私が行ったことも聞こえただろう」
鹿島「古鷹さんの加古さんを想う気持ちが分からないのですか?」
提督「……わからんな。そんなこと、自己満足にしかならん。」
鹿島「そうですか……人の気持ちが分からないお方なのですね」
提督「私にとっては世界が掛かっている戦場でそんなことを言っていられる奴の気持ちの方が分からないがな」
提督「何か言いたいことがあるのならはっきり言ったらどうなんだ?私が気に喰わないのだろう?」
鹿島「そんなことはありませんよ……ただ、もう少し人の心を理解してもいいのではないですか?」
提督「戦いが終わってから考えよう」
鹿島「そうですか」
鹿島(こいつが何を考えているのか気になったが機械のような人間だということしか分からない。やはり殺すしかないですね)
鹿島「提督、明日外出許可を頂きたいのですが構いませんか?」
提督「何のためにだ」
鹿島「大きな作戦の前です。戦いの前に日頃手に入れられないような菓子などを仕入れて壮行会をしたいので、その買い出しですよ」
提督「壮行会?聞いていないぞ」
鹿島「ええ、言っていませんでしたので。その許可もいただけますか?」
提督「まあいいが酒類はやめておけよ?今は敵の攻撃がいつ来てもおかしくない」
鹿島「分かりました。酒類は出しません」
提督「では車両などの手配もするか?」
鹿島「大丈夫です。宅配便を使いますので」
提督「そうか、分かった。明日の秘書官は誰がする?」
鹿島「熊野さんに頼みましょうか?彼女は提督のお気に入りでしょう?」
提督「冗談でも言っていいことと悪いことがあるぞ」
鹿島「よく話しているじゃないですか。あの日私が秘書官代理を頼んだ後、熊野さんは雰囲気まで変わりましたよ?何かあったんじゃないですか?」
提督「ただ話をしただけだ。お前にもしたようにな。できればお前にも変わってほしかったが」
鹿島「……あなたの変わるが何を指すのかによって変わりますね」
提督「まあいい。さて本棟にもついた。今日はこれで終わりだ。戻っていいぞ。」
鹿島「分かりました。ありがとうございました」
どうも作者です
最近いつ投稿するとか書いていないことに気が付きました
すいません……
いろいろと感想とか改善点の指摘をしてくれると幸いです
よろしくお願いします
今日はこれで落ちます
次は明後日になると思います
提督「明日は通常執務に加えて鈴谷とやらと話をするのと鹿島の解体申請か」
提督「……とりあえず今日はもう寝よう」
提督「……」
提督「……zzz」
ビスマルク『あなたが日本から来た提督かしら?』
提督『そうだ。よろしく頼む。ところで、君は誰だ?』
ビスマルク『私はビスマルク。我がドイツ海軍の誇るビスマルク級戦艦の栄えあるネームシップよ』
提督『あのビスマルクか。噂はよく聞いている。君が中心として行った通商破壊で今のバルト戦線があるという話だ』
ビスマルク『確かに私の努力もあるけれど、メインはU-ボートよ。彼女たちのおかげだわ』
提督『ああ、ウルフパックといったか?戦果は絶大だと聞いている』
ビスマルク『ええ、そう。彼女たちはよくやっているわ。それに対して私たちは……』
提督『……安心しろ、ビスマルク。確かにドイツ軍は艦隊決戦のドクトリンが弱い。だが、それを補うために私がここに来た』
ビスマルク『聞いているわ。あの大和を有する海軍大国からアドバイザーが来るからもう心配はいらないって』
ビスマルク『大型艦を失うなって命令もあったけれど、それでも私たちの戦法は消極的過ぎたわ。』
ビスマルク『それが改善されればもう勝利を逃さずに済むわね』
提督『任せてくれ。君たちドイツ艦は優秀だ。すぐに敵を圧倒するようになるだろう。私も全力を尽くす』
ビスマルク『ありがとう提督。期待しているから、是非よろしくね』
提督『ああ、任せろ』
提督私室、作戦まであと五日、午前五時三十分
提督「……朝か。ずいぶんと懐かしい夢を見ていた気がする」
提督「まだ少し時間があるが起きるとするか。今日はやることがたくさんあるからな」
三十分後、執務室
熊野「失礼します。あら、提督。もうお仕事をなさっているのですか?」
提督「今日は忙しいからな。さっさといつもの仕事を終わらせなくてはならん」
熊野「そうですか。ではお手伝いいたしますわ」
提督「ああ、頼むぞ」
午前十時
提督「……よし、これくらいでいいだろう。午前に終わらせられたのは僥倖だ」
熊野「流石に疲れましたわ……提督はよくこともなげにこなしますわね?」
提督「こういうことばっかりやっていたからな。それより今日一番の課題、鈴谷とやらのことについてだ」
熊野「ええ。では彼女についてお話ししますわ。お茶を飲みながらでもいいかしら?」
提督「その方が話しやすいなら構わん」
熊野「ありがとうございます」
熊野「……はいりましたわ提督。どうぞ」
提督「ありがとう。……流石にうまいなそこらの紅茶とは比べるべくもない」
熊野「ありがとうございます、提督。では話を始めますか」
熊野「私が言っていい事ではないかもしれませんが、事が事ですから」
熊野「すべて包み隠さずお話ししますわ」
熊野「……私は鈴谷と共に一年ほど前にここへ配属になりました。航空巡洋艦に改装するためでしたわ」
熊野「改装終了後に南方へ戻る予定でしたが中部太平洋から本土への敵の圧迫が大きくなってきたとのことで横須賀にとどまることになりましたの」
熊野「来てから半年の間に、鈴谷は前提督が好きになっていましたわ」
熊野「まあ、私から見て丸わかりでしたが本人はひた隠しにしているつもりだったみたいです」
熊野「前提督も、言っては申し訳ないのですが朴念仁でしたので。気づくこともありませんでした」
熊野「でも去年のクリスマスイブにいろいろあって鈴谷と提督が一緒に休日をとりましたの。そこで告白したみたいですわ」
熊野「戦争が終わるまで待ってくれと言われたそうですが、あのにやけ顔は見ていて腹立たしくなるほどでした」
熊野「……今となってはあの顔でもいいので笑った鈴谷を見たいのですが」
熊野「ともかく、イブ以来前提督と鈴谷は仲良くなりました」
熊野「それから機会があれば一緒に過ごしていたみたいですわ。もちろん前提督は人気がありましたのでそこでもひと悶着あったりなかったりしていたのですが」
提督「つまり、要は好きな男が死んだからショックで引きこもったというわけか」
熊野「そうですわ。けど、そのような言い方はあんまりではなくて?」
提督「熊野、君も忘れているのかもしれないが我々は今戦争をしている」
提督「恋愛をするなとは言わないが、それを弁えてくれ」
熊野「……はい」
提督「あいつをここへ呼び出すか、それとも私が出向くかだが。一応呼び出してみるか」
提督「十一時にここへ来るように伝えてくれ。君もそれまでは席をはずしてくれ。私は少しやることがある」
熊野「承りましてよ」
熊野退出
提督「ふぅ……」
提督「有線電話かこのタイプの電話は久しぶりに使うな」
提督「……」カチャッガッチャン
軍令部「……こちら軍令部。横須賀提督ですね?」
提督「そうだ。至急四課へ、出動動員担当へ話がある。つないでくれ」
軍令部「分かりました。しばしお待ちを……」
提督交渉中
艦娘担当官「……やはり艦娘鹿島の解体は許可できない」
提督「何故だ!さっきも説明しただろう!あいつの精神状態は著しく業務へ悪影響を与えている!」
艦娘担当官「この差し迫った戦況でただでさえ少ない戦力を減らすことは許可できないとのことだ」
艦娘担当官「一大事の為わざわざ海軍大臣にまでご連絡して判断を仰いだ結果だ。受け入れたまえ」
提督「どんな強敵よりも厄介な味方一人の方が容易く敗北を導くことは明白でしょう……!」
艦娘担当官「くどいぞ!そこを含め何とかするのが提督だろう!貴官も横須賀の提督を拝命したならばそのぐらい何とかして見せろ!」
提督「……了解。わざわざ感謝する」
艦娘担当官「……我々も皆提督の指揮に期待している。今回は協力できなかったが出来ることなら何でもする覚悟だ」
提督「こちらも無理を言ってすまなかった。では執務があるので失礼する」
艦娘担当官「了解した。失礼する」ガチャン
提督「……シャイセ!」
提督(こうなっては鹿島を手元において何か変なことをしないように監視するしかないな)
提督(何もなければいいのだが……)
同刻、横浜、喫茶店
ゴシップ紙記者「にしてもねぇ。どうして海軍の関係者が俺みたいな人間を相手にするのかねぇ」
鹿島「……まともな新聞社相手ではすぐにバレて差し止められますし、そもそもこのような誘いに乗りませんから」
鹿島「あなたのような相手でないと情報を渡すことも出来ないのですよ」
ゴシップ紙記者「まあそうかもな。要するにあんたは五日後に小笠原の東で起きる決戦を取材してほしいというわけだな?」
ゴシップ紙記者「あんたが信頼に値する人間であることを証明するために、この明日の訓練出撃表の写しで出ていく艦娘を確認する」
ゴシップ紙記者「そして信用できると判断すれば小笠原まで行ってあんたの用意した小型船で沖まで出て取材すると」
鹿島「ええ。あなたの小型船はボロボロに偽装されています」
鹿島「あの空襲で沖に出ている船は軍艦から漁船までことごとく攻撃を受けました」
鹿島「その多くは未だ漂流しており、当該海域にも多数の漂流船や木片などが存在しています。敵はもちろん、海軍にだってばれないでしょう」
ゴシップ紙記者「そうかい」
ゴシップ紙記者(まあ他にうまいネタもないんだ。どちらにせよ小笠原まで行ってみるかね)
鹿島(どちらにせよこの手の者はいい情報があれば放ってはおけないでしょう?それに情報は本物です)
鹿島(この男は必ず行くでしょう。のこのこと、自分が海の藻屑になるとも知らずに、ね。フフッ)
ゴシップ紙記者「にしてもこれがばれたらあんたの身だってただじゃすまないだろ?どうしてこんなことする気になったんだ?」
鹿島「海軍が嫌になったんですよ。では私はこれで失礼しますね。お代は置いていきます。おつりは取っておいてください」
ゴシップ紙記者「おつりって……コーヒー一杯に一万おいていくやつがあるかよ」
鹿島「まあ、少ないですが手間賃みたいなものですよ。あなたの記事、楽しみにしています」
鹿島退店
ゴシップ紙記者「にしてもきな臭えな。怪しすぎるだろ。何か裏がある気がするんだが分かんねえな」
ゴシップ紙記者「だがまあこういう博打は打ち慣れてるからな。それにうまくいけば大儲けだ。やってやろうじゃねえか」
ゴシップ紙記者「とりあえずこの手の記事を喜ぶ出版社と仲間を探さなくちゃな」
鎮守府 午前十一時
提督「……来ないか」
五分後
熊野「失礼しますわ提督。申し訳ありません。強く言ってみたのですがダメでした」
提督「そうか。ではこちらから出向くとする。案内してくれ」
熊野「分かりました。ですが、どうかお手柔らかにお願いいたします。おそらく、とても危うい状態ですので」
提督「……それは鈴谷次第だな」
艦娘寮、鈴谷の部屋前
熊野「ここですわ。……鈴谷、提督がいらっしゃいましたわ。出てきなさい」
鈴谷「……」
熊野「……鈴谷!出てきなさい!」
鈴谷「……」
提督「あいつはずっと引きこもって部屋から出ていないのか?流石に食事や風呂には出てきているのだろう?」
熊野「……いえ提督。ほとんど部屋から出てきていませんわ」
熊野「食事を食べに行かないので部屋の前においています。食べ終えた後の食器が部屋の前においてあるので食べてはいるようなのですが」
熊野「風呂も部屋にシャワーがあるので湯船に浸かってはいないようですが不潔ということはないはずです」
熊野「鈴谷は汚いものを嫌っていますから。シャワーすら浴びないということはないでしょう」
提督「部屋にシャワーだと。どうしてそんなに設備がいい?」
熊野「分かりませんわ。設計した方にお聞きになってください」
提督「……まあいい。鈴谷!聞こえているな?私は新しく横須賀に配属となった提督だ!」
鈴谷「……」
提督「ほう、上官を無視か?大した奴だな。お前の現状に免じて一度だけチャンスをやろう。返事をしろ鈴谷!」
鈴谷「……」
提督「……警告はしたぞ?」カチャ
熊野「提督!?何してますの!?」
提督「私の後ろにいろ、熊野」
熊野「やめてください提督!!鈴谷!!早く出ていらっしゃい!!鈴谷!!」ダキッ
提督「熊野!言う通りにしろ!」
熊野「何をするおつもりですの!?」
提督「安心しろ!危害を与えるつもりはない」バッ ガァン!
熊野「ひゃっ!?」
提督「さて、鍵が開いたな。行くぞ熊野」
熊野「……ッ!提督!!乱暴すぎですわ!!」
提督「鈴谷、貴様私の命令に背いたからには覚悟できているのだろうな?」
鈴谷「ぅ……ぁ……!」パクパク
提督「返事くらいしたらどうだ?」
熊野「提督!鈴谷の気持ちも考えてみてください!こんな方法でいいと思ってますの!?」
提督「君こそ軍人がこのような態度でいいと思っているのか?」
熊野「軍人と言ったって人間ですのよ!?」
提督「もう作戦まで時間がないのだ。のびきった戦線は戦力不足を引き起こした」
提督「戦えるものには戦ってもらわなくてはいけない。もう余裕はない」
提督「聞いているな?鈴谷」
鈴谷「な……なんなのお前!?何してんの!?いきなりやってきて銃撃って!!」
提督「今から十分やろう制服に着替えろ」
鈴谷「意味わかんない!!早く出て行ってよ!!」
提督「早く出て行ってよじゃない!自分が何をしているのかわかっているのか?小さい子供みたいに引きこもって!」
提督「お前が引きこもっている間に何が起こったのか知っているのか?」
鈴谷「知るわけないじゃん!もうどうでもいいの!放っておいてよ!!」
提督「放っておいてだと?ではお前は軍人としての責務を放棄するのか?」
鈴谷「知らない!知らない!知らないよもう!何もかもどうでもいいの!もう死にたいの!!鈴谷は!!」
提督「死にたいというわりには食事もしてシャワーも浴びているようだが本気でそう思っているのか?」
鈴谷「それは……」
提督(少なくとも自分から死ぬ気はない)
提督(荒治療になるが仕方ない。もしものために用意した空砲が役に立つ時が来たかな)スッ ガチ ガチャン コン
提督「よかろう、これを貸す。私がドイツの友人から貰った銃だ。これですべてを終わらせるがいい」
鈴谷「何、言ってるの?」
提督「どうした?死にたいのではないのか?」
鈴谷「……」
熊野「提督、本当に何言っていますの……?冗談はよしてください」
提督「ふむ、自分でできないなら私が代わりにやってやろうではないか」カチャ
鈴谷「ひっ……!」
熊野「提督、やめてください。あなたは錯乱なさっています。まともとは思えません」
提督「熊野そこを退け君はまだ死ぬべきではない」
熊野「ここに死ぬべきものなどいません」
提督「聞いていただろう。鈴谷は死にたいそうだ。今のこいつは見ていられん」
提督「ならばここで楽にしてやるのが情けというもの」
熊野「そうではあr」
提督「熊野、少し黙っていてくれ」
熊野「ッ……」
提督「さて鈴谷、貴様なぜ涙を流している?」
鈴谷「……」ブルブル
提督「分かっている。うれしいのだろう?これですべて終わる。残酷な現実ともおさらば出来るからな」
鈴谷「いや……」
提督「守るべきものを守れなかったばかりか挽回することもなくおめおめと死を迎えることになるのだ」
提督「つまらん人生だったな。勝利することもなく戦禍の中でまさか戦うこともなく死を選ぶとは」
提督「貴様の怠惰のせいで死んでいった者たちにあの世で謝ってくるといい。」
提督「申し訳ありません。私はあなた方を殺してしまったばかりか、戦うことからも逃げ死ぬ道を選びました。と」
提督「もっとも、お前は地獄へ落ちるだろうからその機会もないかもな」
鈴谷「やめて……」
提督「他の者たちはまだ戦う道を歩んでいる。皆が血を流している間にお前はただ涙を流していただけだ」
提督「悲劇のヒロイン気取りは楽しかったろうな?」
提督「前提督殿も幸せ者だ。ここまで思われているなんてな。もっとも、軍人としては無能以下だが」
鈴谷「ッ!!やめて!前提督のことを悪く言わないで!」
提督「ほぅ、本当に随分慕っているのだな?だが考えてもみろ」
提督「みすみす本土を、しかも首都圏を攻撃されたのは史上初だ!」
提督「お前は死んでいった者たちの気持ちを考えたか?自分のことしか考えていないだろう!」
鈴谷「そんなの……でも!私たちは全力を尽くした!それでもできないなら仕方ないじゃん!」
提督「恋愛に現を抜かして、余力があっても敵への攻撃を行わずに街へ繰り出しておいて、全力を尽くしたか」
提督「いい加減娑婆っ気を抜いたらどうだ!民間人と軍人は違うのだ!」
鈴谷「うるさい!じゃあ休まずに働いて死ねっていうの!?」
提督「違う。休まず働けと言うだけだ」
鈴谷「そんなの無理じゃん!」
提督「無理なわけあるか!私はドイツで見てきた……軍人どころか民間人までが休む暇もなく働いていた」
提督「こことは違い、向こうでは死が身近だった。それでもみんな勝利を信じて戦っていた!」
提督「それがどうだ!こっちに帰ってきたら下らん世間話や惚れた腫れたを第一に考えてついでに戦争しているというような有様ではないか!」
提督「まったく戦争しているとは思えん!」
提督「そういった事もまた必要ではあるだろうが、戦争が第一であることを忘れるな!」
提督「向こうでは娯楽施設なんてほとんどなかった!夜間には灯火管制が敷かれた!」
提督「高いビルは攻撃で倒壊したし、戦禍のために人々は故郷を追われ奥地へ逃げた!」
提督「艦娘たちだって命を懸けて戦った!時には大破していようが戦闘を継続しなくてはならないことがあった!」
提督「日本と違い目の前に深海棲艦の本拠地があったヨーロッパでは少ない戦力で必死で抵抗するしか道はなかった」
提督「それでもその圧倒的物量差でイギリスは多くの国民と共に本国を失い、フランス艦隊の一部とドイツ艦隊、ロシア艦隊はバルト海に押し込められた」
提督「想像してみろ、今では太平洋各地に散っている深海棲艦がすべて日本海に現れたらどうなるか!」
提督「君たちは知らないかもしれないがイギリス本土撤退作戦では数万もの人間が死んだのだ!!」
提督「中でも私の記憶に残っている悲劇がある。一年ほど前にグレートブリテン島からの完全撤退を決定した後、軍艦から漁船までが総動員されて人々を大陸へ運んでいた時だ」
提督「その中に大きな客船があった。定員1500名ほどの船に一万人近い難民がのりこんでいた」
提督「ポーツマスからシェルブールへ向かっていたその客船が、シェルブールまであと10キロのところで撃沈された。潜水艦にやられたのだ」
提督「冬のドーバー海峡に放り出された難民たちのほぼすべてが数分の内に凍死した。生き残ったのは混乱の中で奇跡的に救命ボートを展開できた百名足らずだ!!」
提督「救援のために駆け付けた艦娘たちが見たのは死体で埋め尽くされた海だった。私も写真を見たが、ッ……」
提督「……その後、北海の制海権を完全に失った!バルトに押し込められた後のバルト艦隊の艦娘たちは沈むかもしれないから撤退するなんてことは出来なかった!下がる場所はもうなかった!」
熊野「提督……」
提督(私としたことが、熱くなりすぎた。ああクソ。鹿島の件と言い今回と言い日本に来てから私はなっていないな)
提督「……次の戦いはこの国の命運を左右する大きな戦いとなる。敗北すれば、あの地獄が日本でも再現される」
提督「我々の使命はそれを絶対阻止することだ。その為には万全の準備を整えなくてはならない」
提督「鈴谷、改めて問おう。もうすべて終わりにしたいか?」
鈴谷「……知ってたはずだけど、改めて気づかされた。前提督も数居る犠牲者の内の一人にすぎないんだね」
鈴谷「でも鈴谷にとってはね、誰よりも大切な人だったんだよ。けど、もうないんだ。大切なものは、全部なくしちゃった」
鈴谷「止められたはずだったのに、死ぬのを止められなかった。あの時どうすれば前提督を止められたのか分からないよ」
提督「お前の大切なものは前提督だけか?そこでお前をかばっている熊野はそうではないのか?」
鈴谷「熊野……」
熊野「……鈴谷、私には貴女の苦しみを本当に理解することはできません」
熊野「けれども、貴女を失いたくないですわ。鈴谷。お願いだから立ち上がって」
熊野「私もともにあります。一緒に平和な世界で旅行すると約束したでしょう」
熊野「失くしたものはもう戻らなくても、新しく大切なものは作っていけますわ」
熊野「だから、お願い」ギュッ
鈴谷「……熊野」ジワッ
鈴谷「……提督、鈴谷はまだ間に合うのかな?提督のことは嫌いだし気に喰わないけど」
鈴谷「熊野のために戦うよって言ったら私を信じてくれる?」
提督「……もちろんだ。だが決戦までに艦勘を取り戻すために訓練漬けになってもらう」スッ
鈴谷「訓練漬けかぁ。まあ、仕方ないよね。ありがとう熊野。私、もう一度頑張るよ」
熊野「鈴谷……!」
鈴谷「提督、申し訳ありませんでした。すぐに用意して伺いますから、少し時間をください」
提督「十二時三十分まで時間をやるから昼食もすべて済ませてから来い」
鈴谷「分かりました」
提督「熊野も、鈴谷についていてやれ。一緒にいるだけでも心は安らぐものだ」
熊野「はい、承りましてよ」
提督「では、後ほど」
このSSまとめへのコメント
医者がどれだけの責務を負っているのか知らないし、そのつらさなど理解できない
他の人間は我々軍人の責務を知らないし、死と隣り合わせの恐怖や責任へ対する苦悩を理解できない
だが、医者はそれ相応の報酬を受けている。我々もまた然りだ
説得力あるなぁ、今のマスゴミに見習ってもらいたいくらい
たまにはこういうシリアスな感じも面白い
続き楽しみにしています
ごちゃごちゃ言う方もいますが、続き楽しみにしています。頑張ってください。
これは、なんというシリアスで重厚なお話。
すごく楽しみです。続き待ってます。
長くなりそうだけど頑張って完結させてほしいな
ほんわかSSも良いけど徹底的に軍人な提督は貴重
続き楽しみにしてます!
こういう感じのシリアス系のストーリーは好きです。アンチ気にせず続きプリーズしてください。あと、世界観がマブラヴを連想させますね。
面白いの見つけたと思ったが、続きなくて残念
このSSで、あざとくて割りと好きだった鹿島が嫌いになってきたよ・・・。
だからとりあえず、那珂ちゃんのファン辞めます。
逃げたwwwそれでも軍人か?それとも死にたあのか?
↑興奮しすぎ