武内Pと3人のアイドル (23)
超短編です。
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私が初めて担当したアイドル、彼女達は才能に溢れながら機会に恵まれず、中々人気が出ない状態が続いていました。
私は彼女達を輝かせるため、ひたすら努力をしました。
CDデビュー、ライブ、ラジオ出演にテレビ出演。
彼女達は少しずつ人気が出始め、その姿は順風満帆に見えました。
いえ、私は彼女達を本当の意味で見れなかったために、そのように見てしまっていたのかもしれません。
正直に申し上げますと、私は調子に乗っていました。
私の力で彼女達をアイドルとして輝かせることが出来ている、と。
私はたくさんの仕事を取り、彼女達の露出はどんどん増えていきました。
街でもテレビでも彼女達を見ない日はないようになっていました。
それなのに私は、彼女達自身を見ていませんでした。
私に付いて来ればトップアイドルになれると、道を示すことしかしてきませんでした。
彼女達は確かにトップアイドルに近付いていたのかもしれません。
彼女達は誰からも愛される存在になっていました。
そこにいたのは完璧なアイドル、弱点のない、非の打ち所のないアイドル達でした。
愛らしいながらも少し抜けたところのあった彼女も、
クールな中に隠れた優しさを持っていた彼女も、
元気なのに体力がなくてバテて照れ笑いを浮かべる彼女も、
どこにもいませんでした。
そんなことには気付かずに私は彼女達なら次のステップに進めると、新しい企画を考えていました。
「シンデレラプロジェクト」
彼女達を中心に次世代のアイドル達を一斉にデビューさせる。
あの765プロにも負けない最高のアイドルグループを作る。
そんな夢のような企画を考えていました。
シンデレラプロジェクトのメンバーが決まりはじめたころ、彼女達の一人が倒れました。
大きなライブ、冬の定期ライブの直前でした。
ライブが失敗したらシンデレラプロジェクトもなくなるかもしれない。
私は冷静さを失っていたのだと思います。
あろう事か倒れた彼女を責めていました。
ここまで連れてきたのは誰なのか、誰のおかげでここまで来れたのか、何でこんな時に倒れるんだ、と。
返ってきた言葉は私の予想とは違うものでした。
夢のアイドルになれたのは嬉しいが、自分を押し殺して完璧な自分を演じる辛さがわかるか。
アイドルの自分は本当の自分ではない、嘘の自分の人気が出ても嬉しくなんかない。
それでも頑張って来たのはプロデューサーのためだったのに、もうアイドルとして笑えない、と。
そのようなことを言っていたのだと思います。
正直に言うとこの後の言葉の印象が強かったので一言一句は思い出せません。
彼女は最後にこう言いました。
「私、もうアイドル辞める」と。
こうして3人は私の元を去って行きました。
私は止めることも出来ずにただ、立ち尽くしていました。
今西部長が彼女達を訪ねて話をして下さったのですが彼女達の意思は固く、諦めた方が言いとおっしゃいました。
私はダメなプロデューサーです。
ただ、それでも私には新しいアイドル達がいました。
シンデレラプロジェクトのアイドル達です。
次はうまく出来るだろうか、不安ばかりが募ります。
ただ、新しい彼女達のことはしっかりと見よう、個性を大事にしよう、笑顔でアイドルを続けられるように。
それは、大事にしたいと思います。
これから抜けた3人に代わるアイドルを見つけに行かなければなりません。
1人目はオーディションに来ていたあの子にしよう。
緊張でうまくアピール出来ていなかった不器用そうな彼女。
ただ、彼女の笑顔はとても素敵だったから。
こうして私の、私達の新しい物語は始まりました。
以上になります。
拙い文章で失礼しました。
BDで一期を見返していて今西部長の話に出ていたまっすぐで不器用な失敗した男の話を書きたくなり、一気に書き上げました。
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