勇者「まずは人参を切ります」
魔王「切ったところから食べていきます」
勇者「おや、人参がありません。いったいどうしたのでしょうか」
魔王「なんと」
勇者「しかたがないのでもう一本使います」
魔王「少しづつ食べていきます」
勇者「なぜか、人参が少ないような気がします」
魔王「不思議です」
勇者「仕方がないので、玉ねぎは多めに使うことにします」
魔王「お、玉ねぎですね」
勇者「まずはさっくり半分に」
魔王「そしてその片方はわたしの口の中へ」
勇者「玉ねぎをみじん切りしていきます」
魔王「切ったそばから口にかきこんでいきます」
勇者「おや、きったはずの玉ねぎがありません。いったいどうしたのでしょうか」
魔王「謎は深まるばかりです」
勇者「野菜はもうないので、いそいそと白いご飯を取り出します」
魔王「食べた後でした」
勇者「ご飯はありませんでした。困りました、これではチャーハンがつくれません」
魔王「それは困りました」
勇者「チャーハンは諦めて、お味噌汁をつくることにします」
魔王「なんと」
勇者「ラッキーなことに、冷蔵庫にネギとお豆腐がありました」
魔王「わお」
勇者「まずはネギを」
魔王「端からかじって」
勇者「切っていきます」
魔王「そしてわたしの口の中へ」
勇者「切っても切っても、ネギの山ができあがりません。不思議です」
魔王「実に奇妙なことです」
勇者「僅かばかりのネギがまな板に張り付いているので、とっていきます」
魔王「ひもじい」
勇者「次にお豆腐を切ります」
魔王「お豆腐ですか」
勇者「まずは豆腐を手の上にのっけます」
魔王「横からわたしの両手がそれを挟みます」
勇者「そして包丁を」
魔王「お豆腐をさらって、食べます」
勇者「入れようと思ったのですが、いつのまにか豆腐がなくなっていました」
魔王「わお」
勇者「鍋に水を張り、切った野菜を入れていきます」
魔王「わたしは静かにそれを見守ります」
勇者「まずは硬い物から先に煮ていきます」
魔王「お湯が熱いので野菜が悲鳴をあげています」
勇者「どんどん入れていきます」
魔王「熱い……っ!? な、なんだここは! だ、誰か助けてくれ! 嫌だ! ボクは煮られたくない! 熱いよう熱いよう!」
勇者「煮えているかを確かめる為に、お箸でつつきます」
魔王「な、お前大丈夫か!? しっかりしろ! くっ、くそおおおお! やめろォ! そいつに……そいつに手を出すな! やるならボクを、あっ、あ、い、いたい!」
勇者「煮えてきたようなので、お豆腐を入れていきます」
魔王「食べました」
勇者「お豆腐がありませんでした」
勇者「最後に仕上げ。ネギは後にして、先にお味噌を入れます」
魔王「お味噌の良い香りがします」
勇者「少量ずつ、お玉の上でといていきます」
魔王「味見は任せてください」
勇者「そしてちょうど良いので、火を止めます」
魔王「いっぽうわたしは、お鍋の中身をおいしくいただきます」
勇者「…………おい」
魔王「勇者にばれたので、これにて退散いたしますね」
勇者「てめええええええええ待てえやこらあああああああああああああ!!!」ドドドドド
魔王「」テレポート! テレポート!
~おしまい 腹へった
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