勇者「ありがとな。 大好きだ」(27)
過度のエロがあるよ!!
少ないですけど。
勇者物ですが、戦いとか、そんなのは少ないです。
さらりと読んでくださいな。
軽く主な登場人物からどうぞ。
勇者
言わずとしれた主人公。
人の気持ちを考えない、知ろうともしない。
けれど、相手の意見は割と尊重する。
時に優しい。
魔法使い
胸がでかい。
勇者の仲間。
明るく、ヘコみ易い。
他
少女
魔王
王
淫魔
「仲間を選べ、か」
僕は勇者だ。
この世界に再び魔王が現れ、その影響を受けて活発化した魔物たちの始末に各国が追われている。
そこで、原因となっている魔王を滅ぼすため、勇者としてたてられたのが僕だ。
今、王から一人でもいいから仲間を連れて行け、と命令されたから、渋々酒場に向かっている。
「別に一人でもいいのにな」
コッソリ悪態をついてみる。
しかし王の命令が故に、逆らうことはできない。
だけど、何で仲間を連れていかなきゃいけないのだろう。
足を引っ張るだけの仲間なんて、居ても邪魔なだけなのに。
そうこうしているうちに酒場につく。
相変わらず、ここの人っ気は凄い。
真昼間なのにほぼ満席となっている。
「お邪魔します」
僕が入った瞬間に、全員が一斉にコッチを見てくる。
他人から言わせると、僕はどうやら女の子のような顔立ちをしているらしい。
だから僕はよく女の子だと間違われるのか、と今更ながら納得する。
「王に、仲間を連れて行けと命じられました」
マスターに声をかける。
「ああ、話は聞いているよ。 誰にするか決めた?」
「いえ」
実際誰でも良かった。
僕は剣も使えるし、魔法も使える。
「…?」
ふと、僕はひとりの、床に座り込んでいる女の子に視線が止まる。
彼女は俯いていて表情はわからないが、時折ぴくん、と動くから、多分寝ているのだろう。
彼女の髪は艷やかな黒で、腰ほどまで長い。
ああいう子は髪の手入れは大変だろうな、と少し同情する。
「ああ、彼女かい? 彼女は今時珍しく、すべての魔法をオールマイティに使いこなす子だよ」
へえ、と興味無さそうに呟く僕の顔を、マスターは訝しげに覗き込んでくる。
この世界の魔法は、大きく分けると三つある。
一つ、回復魔法。
二つ、攻撃魔法。
三つ、状態魔法。
普通の魔法使いなら、どれか一つを選び、その魔法専門の使い手となる。
けれど、稀に…ごくごく稀に、三つを使いこなす魔法使いがいる。
一つでも使いこなすのは苦労するというのに、三つも使いこなすとなると、
よほどのマゾか、僕のように物凄く変な奴ぐらいだろう。
と、僕の友達が昔言っていた。
「どうだい、彼女はかなりの魔法の使い手だ」
「別に、誰でも良いんですけど」
「…君はつくづく他人に興味を持たない子だね」
溜息をつかれた。
「じゃあちょっと起こしてく…のわっ!?」
「もう起きてますし、居ます」
さっきまで寝ていた彼女が、マスターのすぐ近くにいつの間にか立っていた。
そういえば、よくこの酒場でぐっすり寝ていられるな、と彼女の度胸に少し感嘆する。
「それじゃあさっきの会話は聞いてた訳だ」
「ええ、嫌です」
「なんでっ!?」
マスターが叫んだ。
お前が叫ぶな。
「なんでこんなムカツク奴に付いてかなきゃいけないんですか」
「おまっ、この子は王直属の勇者だぞ?」
「死んでも嫌です」
「僕も弱い奴を連れていくのは嫌ですね」
「…弱い?」
ぴくり、と彼女の眉が釣りあがる。
「今、君、私のことを弱い、って言わなかった?」
「それが何? なんか悪かった?」
心底わからなかった。
何故、事実を言えば人は怒るのだろうか。
「君は私より強いって言えるんですか?」
「言えなかったら、君を弱い呼ばわりはしない」
「へえ」
彼女は笑顔を見せた。
その瞬間。
「ひ…!!!」
ドガアアァァァンッ!!
マスターの顔が引き攣ると共に、店に爆音が響く。
客が一斉にこちらを振り向く。
床に、綺麗な穴が空いていた。
正確には、元・僕が立っていた場所。
まるで、そこには元々何も無かったかのような穴だ。
穴の中を少しのぞき込むと、先は真っ暗、相当深い穴らしい。
一瞬でここまでとは、凄いな。
「魔法は僕より上だね」
「っ、どこまでもムカツク人ですね」
「君は、剣は使える?」
「…」
黙っているということは、おそらく使えないのだろう。
「ふふ」
そのさまを見ていたら、自然と笑みが溢れてしまった。
僕は踵を返し、店から出ようと出口まで歩く。
「…何処、行くんですか」
「もう行く、じゃあね」
右手をドアに掛ける。
左手の袖を誰かに掴まれる。
「何?」
「…いい、私、付いてく」
「別に、いらないんだけど」
「消されたいんですか?」
彼女の右手に黄色い炎が宿る。
これ以上マスターに迷惑は掛けたくないな…。
「…分かった。 分かったからその物騒なモノは消してくれ。 マスターにこれ以上迷惑は掛けたくない」
だから言ったんだ。
仲間なんて面倒なだけなんだ。
こうして、すべての魔法が使え、かつ剣技に長ける勇者と、
すべての魔法を神がかり的に使いこなす魔法使いという、
奇妙な、とてもチートなパーティが出来上がった訳だ。
「この街をでてからずっと東に村がある。 その付近での魔物の動きが活発らしい」
「それで?」
「まずはその魔物を潰す」
「…君、可愛らしい顔して言うことはえげつないですね」
「それがどうした?」
「はぁ…」
昔からよく言われる。
お前は顔の割に口が悪い、と。
「そのまま村で一旦休んでから、次の目的地へと向かう」
「そう」
「君が居なければ今頃村に着いてた」
「へえ、関係ないと思いますけど」
こっちを睨んでくる。怖い。
「ごめん」
「なに怯えてるんですか」
「今まで見た全ての魔物より怖い目をしてた」
本心だ。
また攻撃を受けた。
もちろん防御した。
「ちっ…」
「威力は高いが、呪文の詠唱に時間が掛かりすぎだ」
「は?」
「その隙に、余裕で防御に入れる」
「これでも、学校ではピカイチの速さだったんですけど」
「それはその学校が低レベルだからだね」
「消す。 もう我慢できない。 消す」
彼女の指から一筋の光が出てくる。
その指が僕のほうに向けられる前に、防御魔法を唱える。
僕の前に防護壁が出され、その光を遮断する。
ふうん、レーザーか。中々高度な魔法だな。
「ここで僕を殺せば、君は国家反逆罪で処刑される」
「それでも良い。 君を殺せれば私は満足」
「だめだ病んでる」
思わず溜息が漏れる。
くだらない。
「…今、くだらないって言いましたね」
おっと、思わず口にだしてしまったようだ。
失敬失敬。
「ここで君が不毛な争い続けるなら、僕は君を殺す」
「…君には少しでも情けはないんですか?」
「僕は誰も信じない。 だから情は必要無い」
「…ああ、そう」
観念したようだ。
「行こう」
「…でも、ちゃんと連れてってくれるんですね」
「君が決めたことに、僕が干渉する理由は無い」
「捌けてますね…」
悪いか。
門をくぐり、街の外へ出る。
言わずもがなであるが、街の外には魔物はわんさかいる訳で。
「あ、魔物」
「早いな…まだそう歩いてないのに」
そう呟きながら、剣を抜く。
「そうですね」
彼女は杖を構える。
魔物はまだこちらに気づいていない。
一気に距離を詰め、敵がこちらに気付いた瞬間に…
「グギャ」
剣を一閃。
魔物がうめき声を上げ、どすんと倒れる。
「獣か。 皮を剥げば高く売れる」
「え」
ナイフを取り出し、魔物を切り裂く。
「え、え、えっ」
「何」
「うそ、ほんとに?」
何がだ。
なんなんだ、コイツは。
「うわ、わ、わ」
彼女は両手で目を隠しつつも、指の隙間からこちらを見ている。
僕は溜息をついた。
「…見るのが嫌なら目を瞑れ。 極力音を立てないようにする」
「う、うん」
何だコイツ。
だから面倒なんだ…。
わざわざ音を立てないようにして皮を剥ぐなんて、今までしたこともない。
「…と」
異変に気付く。
「な、なに…?」
「…なんだ、これは」
今目の前に転がってる魔物は、魔王の魔力を宿した動物の魔物の訳なんだが、
どうやら勝手が違うようだ。
「…魔王が強力になっている、らしい」
「な、なんで…?」
突然変異か…。
それほどまで魔王の持つ魔力は強力なのだろう。
「見たこともない内臓がある。 どうやらこの内臓が魔力の根源だな…しかも、小さいのにものすごい量の魔力を溜め込んでる」
「どういうこと?」
いつの間にか、彼女は屈み込み、僕と一緒になってその内蔵を見ていた。
大した神経だな。
「分からない…けど、一応これも取っておく。 魔力は逃げない」
プツリ、と血管や神経を丁寧に切り取り、液体で満たした瓶に沈ませる。
「それは?」
「魔法水。 これで腐らない」
あとは皮を剥ぐだけだが…。
「君は見ていて大丈夫か?」
「え? ああ、うん」
なんだそれ。
若干拍子抜けしたが、気にせず続けよう。
「…毛質が良い。 触り心地に弾力、保温性も申し分ない」
普通の魔物だったら、毛皮はベタベタしていて、加工しないととても使えたものじゃない。
剥ぎ取った毛皮をポーチにしまい、彼女の方へ顔を向ける。
「なに?」
「君の格好は寒そうだが、コートを仕立ててやろうか?」
「はぁ!?」
もうすぐ秋になる。
それなのに彼女は丈の短いスカートを履いていた。
おそらく上には一枚しか着ていないのだろう。
「多少つくるのに時間は食うが、着ていても支障はないと思う」
「そ、そりゃ…少し、寒いけど…」
「大きさ、丈は目算で分かる。 村に急ごう」
「え…!?」
彼女が咄嗟に胸を両腕で隠す。
むにゅ、と音がなりそうなほど、彼女の胸は大きい。
「? なにか不都合があった?」
「な、なんでもないっ!!」
少し顔が赤いようだ…怒っているのか?
親切心からなんだが…同行者のご機嫌取りまでしなきゃいけないのは、ほんとに面倒だ。
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