千早「弔いの花は散る」 (3)

「あ・・が・・あぁ・・」

彼女は喉に手を当て必死に苦しんでいた。

深夜ーー誰もいないビルの、誰もいない屋上で。

細い体を必死に使い声を出そうとする彼女。

細いと言っても、その体は、見る者が見ればはっきりとわかるしなやかな筋肉を備えていた。

運動の為に使う筋肉ではなく、しなやかな声を出す為のものーーー

その体は、歌う為の体だった。

ズキッ

「ぐっ・・・」

しかし、彼女の体がバランスを失われていく。

目の前がだんだん暗くなっていき、そしてーーー

「・・・」

小さな身体が、ゆっくりと倒れていった。

と、その時、

ズサササササッ!!

誰かが倒れていく彼女を支えた。

「・・・・・・・・・」

わずかな月明かりの下、その人物の顔をはっきりと見る事は出来ない。

しかし、意識が途切れる寸前、彼女は胸の中でつぶやいた。

(・・・・・優・・・・・)


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彼女ーーー

如月千早がこの病院で過ごすようになって、一ヶ月が経つ。

病院は病気やケガを治す所、それが世間で言われている常識。

しかし千早に言わせると、全然違うという事になる。

白い壁に、白い天井。

白いシーツ、白いカーテン、白い服の医者に、白い服の看護師、白い色の何も入っていないお粥ーーーエトセトラ、エトセトラ。

白、白、白の、白づくし。

気持ち悪い。余りにもあり得ない。

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