【俺ガイルif】奉仕部の『本物』 (90)
俺ガイルのラストの予想ssです
八幡主観で行きます
場面はアニメ最終話の、観覧車の後のシーンから始まります
ちなみに、作者は原作未読でアニメのみです
それと、注意点があります
序盤はアニメと被っているところがあるのですが、そこに自分なりに八幡の回想を加えました
アニメで表現されている回想は↓のように表現しました
八幡(○○、○○。)
自分なりに加えたところは、( )も「」も無しで、↓のように表現しました
○○、○○。
駄文ですが、読んでいただけると嬉しいです
前置きを長々とすみませんでした
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1444138541
結衣「これからどうする?」
八幡「どうするって...そりゃ帰るだろ」
結衣「そうじゃなくて...」
由比ヶ浜は、そう言いながら前へ進む
そして、こう続けた
結衣「これからどうしよっか。ゆきのんのこと。それと、あたしのこと。...あたしたちのこと。」
雪乃「それは...どういう意味?」
雪ノ下は問い返すが、その答えは聞くまでもない
俺たちが、今まで先伸ばしにしてきた...俺たちの問題についての...『本物』についてのことだ
由比ヶ浜は振り返ると、何かを決心したような表情をしていた
拳を震わせ、唇も噛み締めている
結衣「ヒッキー、これ」
由比ヶ浜が俺を呼ぶ
手を震わせながら袋を差し出した
結衣「あの時のお礼」
あの時とはいつのことだ?
そう思っていると、視界の端で雪ノ下がモゾモゾと動きながら、首を横に振るのが見えた
結衣「あたしの相談、覚えてる?」
由比ヶ浜は、無理矢理俺の手を掴んで袋を受け取らせた
相談と言って真っ先に思い浮かぶのは、由比ヶ浜が最初に奉仕部に来て言ったことだ
『渡したい人がいるから、クッキーを作るのを手伝って欲しい』
そして、袋の中に入っていたのは...綺麗な形のクッキーだった
前に作ったときは、あんなにボロボロだったのに...
雪乃「由比ヶ浜さん...あなた、凄いわ」
結衣「あたしが自分でやってみるって言って、自分のやり方でやってみるって言って...それがこれなの。だから...ただのお礼!」
八幡「...礼ならもう貰ってる」
結衣「それでも...ただのお礼だよ」
この時、由比ヶ浜は目を逸らし、声を震わせていた
...しかし、それと同時に由比ヶ浜の中に、何か信念のようなものがあるのを感じた
結衣「あたしは全部欲しい...今も、これからも。あたし、ずるいんだ。卑怯な子なんだ...。あたしはもう、ちゃんと決めてる。」
決めてる、と。確かにそう言った
それはつまり、俺たちの...奉仕部のこれからの在り方は、由比ヶ浜なりの答えが出ているということだ
雪乃「...そう」
雪ノ下は、悲しそうで...どこか諦めたような様子だった
そして、由比ヶ浜は再び決意の表情を表し、こう告げた
結衣「もしお互いの思ってることがわかっちゃったら、このままっていうのもできないと思う。...だから、これが最後の相談...」
結衣「あたしたちの最後の依頼は、あたしたちのことだよ。」
やはりそうだ
そして、由比ヶ浜は『最後』と言った
俺たちはまだ、これから三年になる時期だ
長くはないが、まだまだ時間はある
それでも...『最後』と言ったのだ
結衣「ねえゆきのん、例の勝負の件、まだ続いてるよね」
突然、由比ヶ浜は話を変えた
雪乃「...ええ、勝った人の言うことを、なんでも聞く」
雪乃「ゆきのんの今抱えている問題、あたし答えわかってるの」
雪ノ下は驚きの表情を示す
雪ノ下の今抱えている問題...それは、おそらく『自分が無い』ということについてだろう
結衣「たぶんそれが、あたしたちの答えだと思う。それで...あたしが勝ったら全部もらう」
八幡(なにひとつ、具体的なことは言わなかった。口に出してしまえば、確定してしまうから。それを避けてきたのだ)
つまり、ここまでの俺の推測は...その言葉の通り推測でしかない
由比ヶ浜が本当に考えていることは分からないままだ
結衣「ずるいかもしれないけど、それしか思いつかないんだ。ずっとこのままでいたいなって思うの...どうかな?」
八幡(由比ヶ浜は、たぶん間違えない。彼女だけはずっと、正しい答えを見ていた気がする。それを受け入れてしまえばきっと楽だろう。けれど...)
それは、由比ヶ浜にとっての、由比ヶ浜が思う正しい答えだ
その答えは、雪ノ下にとっては...
結衣「ゆきのん...それでいい?」
雪ノ下「わたっ...しは...」
八幡(ああ、これは違う。間違っている!)
雪ノ下「わた...しは...!」
八幡(雪ノ下が自分の未来を誰かに委ねるだなんて、そんなことあっていいはずがない!)
...そうだ、そうなんだ
雪ノ下にとって、この答えは間違いなんだ
でも、今まで彼女はその間違いを選び続けたのだろう
だから、その答えを直さなければいけない
由比ヶ浜の答えは、回答は...既に始まっていた
雪ノ下が息を呑む
これまで見たことがない、弱々しい様子で...
由比ヶ浜は、そんな雪ノ下を、ただじっと見つめる
雪ノ下「私は、それでもかまわな---」
八幡「いや......その提案にはのれない。雪ノ下の問題は、雪ノ下自身が解決すべきだ」
雪ノ下がこちらをじっと見つめる
いつもの凛とした空気は、どこからも感じられない
八幡(由比ヶ浜結衣は優しい女の子だ。そう勝手に決めつけていた...。雪ノ下雪乃は、強い女の子だ...。そうやって理想を押し付けていた)
八幡「それに、そんなのただの、欺瞞だろ。...曖昧な関係とか慣れ合いの関係とか、そういうのはいらない」
八幡(馬鹿なやつだと思う。そんなのないって知っているのに。突き詰めてしまったら、何も手にはいらないとわかっているのに)
本当に馬鹿だ
俺も...由比ヶ浜も
そんな馬鹿なことを、友達のために体を張ってできるこいつは凄い
八幡「それでもちゃんと考えて、苦しんで、足掻いて、俺は...」
こいつらと、『本物』を築いて行きたい
結衣「ヒッキーなら、そう言うと思った」
なぜだろう
由比ヶ浜は笑っていられるのに...どこか悲しそうだった
本当は、雪ノ下自身の口からこの言葉を聞きたかったのだろう
雪ノ下「あたしの気持ちを勝手に決めないで。それに最後じゃないわ。比企谷君、あなたの依頼が残ってる」
由比ヶ浜が頷く
俺の以来が残っている
そして...雪ノ下に、よく言えたね、と
そう言いたげな表情で
八幡(間違っていてもいい。そのたびに、問いなおして、問い続けるんだ)
雪ノ下「あともう一つ。私の依頼、聞いてもらえるかしら」
結衣「うん。聞かせて」
由比ヶ浜は、笑っていた
雪ノ下と由比ヶ浜の二人と駅で別れ、十数分歩くと家が見えてきた
二人には『家まで送る』と言ったが、どちらにも『暗くないから大丈夫』と断られた
本当は少し気まずさもあるのだろう
ガチャ
八幡「ただいま」バタン
小町「お兄ちゃんおかえり~」
リビングから小町の明るい声が聞こえる
どうやら、入試の手応えは良かったようだ
...とはいえ、気を張っている可能性もあるし、どうなんだろう
八幡「えっと...どうだった?」
小町「ふふん...自己採点した感じではバッチリです!」ニコッ
良かった...
この感じなら大丈夫そうだな
小町「も~、お兄ちゃん安心しすぎ。まだ自己採点なんだから」
八幡「お、おう、悪い...」
小町「でも、お兄ちゃんが心配してくれてるはよくわかったよ。ありがとね! あ、今の小町的にポイント高~い!」
なにこの子ホント可愛いわ
そんな小町の受験がうまく行ってそうでホント良かった...
安心したところで、炬燵にモゾモゾと入る
暖かい...
本当に炬燵は人をダメにする
小町「ところでお兄ちゃん」
八幡「お、なんだ?」
小町「今日どこ言ってたの?」
八幡「あ? ああ~...」
う~ん、素直に言うと『由比ヶ浜と雪ノ下と一緒に水族館行った』ってことになるんだろうけど、茶化されそうだしなんて誤魔化そう...
小町「...なんかはぐらかそうとしてない?」
なんでわかるのこの子...?
エスパーか何かかな...?
小町「...お兄ちゃん、凄く疲れた顔してるよ?」
八幡「え...?」
小町「疲れた、っていうか...う~ん、迷ってるというか、悩んでるというか...そんな感じの顔」
八幡「...」
小町「無理にとは言わないけど、この前みたいに、ギリギリになるまで相談してくれない、っていうのは嫌だよ?」
この前というのは、修学旅行後の一軒のことだろう
...俺は良い妹を持ったよ。本当に
京太郎は出ますか?
いろはすSS見てたぞ
今回も期待してる
俺は事の顛末を全て話した
小町は『う~ん...』と可愛く唸っていた
小町「それで、雪乃さんの依頼って?」
八幡「...『それぞれの『本物』を明確にし、終了式の日にどれが私たちの『本物』に相応しいかを決めたい』だそうだ」
『本物』
俺が雪ノ下と由比ヶ浜に言った言葉だ
二人はその時、『よく分からない』と言っていた
俺も正直...よく分かっていない
要するに、奉仕部の...三人の在るべき形
小町「ふむ...なるほど。それで?」
八幡「? それで、とは?」
小町「決まってんじゃん! 雪乃さんと結衣さんのどっちが好きなのってこと! まったく、これだからごみいちゃんは...」
八幡「なっ、す、好き...とか...」
小町「違うの?」
今の話、好きとかそういう話だったか?
まあでも、異性として好きか否かで、当人同士や周りの接し方も変わるはずだから、外れてはいないのかもしれない
ただ...
八幡「好きとか...よく分からん」
小町「うえぇ...」
ガックリと肩を落としながら、小町は謎の声をあげた
ホント可愛い
...もしかして、これが好きって気持ち?
小町「なんて言うか...お兄ちゃんらしいなあ」
今度は肩をすくめながらそう言った
小町「なんて言うんだろ...じゃあ、つい目で追っちゃう人とか?」
考えてみる...
まあ、知り合いは目で追うな
となると、ぼっちだからそういう人も限られてくるわけで...
八幡「二人とも当てはまる」
小町「ん~、じゃあじゃあ! 可愛いな~、とか、綺麗だな~って思う人は?」
可愛い...
...ここで小町って言ったら怒られるな
でも、そしたら...
八幡「可愛いは由比ヶ浜、綺麗は雪ノ下だな」
小町「えぇ...。じゃあ、この人を支えたい、支え合いたいって思う人!」
八幡「!」
...なぜだろう
『支えたい』と、『支え合いたい』
要は、こちらから一方的に、または、お互いに支え合う
自分が行うことは変わりないのに...ここでなぜか、この二つで思い浮かぶ人はそれぞれ異なった
八幡「支えたい人は...雪ノ下だ」
小町「ほうほう」
八幡「でも、支え合いたい人は...由比ヶ浜だ」
小町「...」
ここで、小町がピタッと止まった
場の空気に、少しだけ緊張感が加わった気がした
小町「...あのね、お兄ちゃん」
八幡「...おう」
小町「お兄ちゃんが好きな人...小町には分かったよ」
八幡「! それは、どっちな---」
小町「でも、小町からそれは教えられない。自分で考えて、自分で見つけなきゃ...二人に失礼だよ」
...そう言った小町の表情は、先ほどの由比ヶ浜と同じように、悲しさを含んだ微笑みだった
今日はここまでにします
最後のほう遅くなってしまい申し訳ないです
こんな感じでボチボチやって行きます
>>7
京太郎...すみません、誰かわかりません
>>8
ありがとうございます!
でも、今回全然甘々じゃないです...
投稿再開します
ただ、今日は少ない上に中身も薄いです
すみません
あの後、軽くシャワーを浴びて飯を食った
小町が作ったオムライスだった
そういえば、帰ってきた両親も小町の様子を見て安心したようだった
その様子を見届けて、俺は自室に行った
八幡「...ふう」
それにしても疲れた
まさかあんなことになるとは...
だが、いずれにせよいつかは動き出さねばならない
それにしても...
八幡「まさか由比ヶ浜が言い出すとはな...」
俺はてっきり、由比ヶ浜は今の関係にもそれなりに満足しているのだと思っていた
...むしろ、満足していたのは、俺と雪ノ下だったのかもしれない
俺自身が、『本物』が欲しい、などと言ったのに...言っただけで満足していた
八幡「満足...してたのかなあ」
...ピピピピピピピ!!!
八幡「...」カツン
...喧しく鳴り響く目覚まし時計を止める
朝になっていた
いつの間にか寝ていたようだ
八幡「...寒っ」ブルブル
二度寝をしてやろうかという気になるが、生憎今日は学校だ
一日休みだったんだから、もう一日休んだっていいじゃない
小町「お兄ちゃ~ん! ごは~ん!」
...可愛い妹からこんなふうに呼ばれたら、行くしかないじゃない
いつも通り飯を食い、いつも通り登校し、いつも通り授業を受ける
何も変わらない生活
しかし...なんとなく部室に行くのがはばかられる
結衣「ヒッキー!」
後ろから由比ヶ浜に呼ばれた
振り返ると、少し気まずそうな表情をしていた
結衣「...行こ?」
そう言われると、なんとなく気まずくなったので、さっさと部室へ向かうことにした
いや、別に照れてないですよ、はい
結衣「...」トコトコ
八幡「...」スタスタ
無言で部室へ脚を運ぶ二人
そういえば、黙って移動することなんて滅多になかった
結衣「ねえヒッキー」トコトコ
そんなことを思っていたら、由比ヶ浜が声をかけてきた
八幡「おお?」スタスタ
結衣「...ううん、何でもない」トコトコ
八幡「...そうか」スタスタ
結局、この後部室に着くまでの間、一言も言葉を交わさなかった
以上です
あと、明日は投稿できそうにないです
その分、明後日頑張ります
再開します
ガララ
結衣「ゆきのん、やっはろ~!」
雪乃「こんにちは」
八幡「...うす」ガララ
いつも通りの挨拶
だが、雰囲気まではいつも通りではなかった
なんとなく、三人ともギクシャクしている
特に由比ヶ浜は、いつも雪ノ下の方に椅子を寄せるのに、今日はほぼ真ん中に陣取っている
雪ノ下「...今お茶を入れるわね」
結衣「あ、ありがと~」
いつも行われるやりとり
しかし、中身は全然違った
コンコン
そんな時、奉仕部のドアがノックされた
つい、ナイスタイミングと思ってしまった
雪ノ下「どうぞ」
いろは「失礼しま~す!」ガララ
...一色だった
いつも通りのあざとい仕草をしながら入ってくる
結衣「いろはちゃん、どうしたの?」
いろは「いや~、ちょっとお願いがありまして...」
雪乃「そう、ちょうど良かったわ。これからお茶を入れるから、座って待ってて頂戴」
そう、ちょうど良かった
このままだと、間が持てなくなるのも時間の問題だった
いろは「...は~い」
雪ノ下が紅茶を入れ終わって、四人の前に並べる
そこで、それまで由比ヶ浜と雑談していた一色も話をやめる
雪乃「それで、お願いというのは?」
雪ノ下が単刀直入に聞く
いろは「ええっと、もうすぐ卒業式じゃないですか?」
卒業式は再来週の土曜日だ
俺たちからしたら少し遠いが、確かに生徒会長の一色からしたら、もう少しだろう
いろは「 それで、あたし式辞とか言わないといけないんですよ。それでちょっとお手伝いして欲しいな~って」
雪乃「なるほど...」
結衣「ほわ~、式辞か~。なんか凄いね!」
また馬鹿っぽい感想を...
まあ、確かに一色が会長らしくなったのは、素直に凄いと思う
いろは「それが、まだほとんど決まってないんですよ~...」
八幡「なんでだよ。去年の原稿とか残ってんだろ。それをちょちょっと改変すればいいじゃねえか」
いろは「そうしたんですけど、被り過ぎだって言われてボツになっちゃって...。だから、先輩方に手伝って欲しいんです!」
まったく、先生方も面倒くさいことを...
自分たちもそうやって乗り切ってるだろうに...
雪乃「ちなみに、その原稿は今ある?」
いろは「はい、あります...」ゴソゴソ
そう言いながら、一色は2枚一組の原稿用紙を二組取り出した
机に並べられた、合計4枚の原稿用紙を眺めると、確かに類似点が多く感じられた
雪乃「確かに、ちょっと引用が目立つわね」
いろは「うう...そうですよね...」
雪ノ下も同じ意見だったようだ
雪ノ下「でも、所々しっかり変更してるところは好感が持てるわ」
由比ヶ浜「あ、ホントだ! こことか、こことか...あとここも!」
いろは「そうなんですよ! 分かっていただけて嬉しいです...」ウルウル
雪ノ下の言った通りだった
よく見ると、文章は多少稚拙だが、卒業生を労う旨がよく書かれている
八幡「ま、要は誤魔化すのが下手なんだな」
いろは「誤魔化す?」
八幡「お前は変えようという意志はしっかり持っているが、その気力を部分的に集中させている。その分、全体として変えてない部分が多くなる」
いろは「じゃあ、変えるのはちょっとずつでいいから、全体的に手を加えれば良かったんですか?」
八幡「まあ、そういうことになる」
雪乃「比企谷くんらしい小賢しい考えだけど、概ね正しいわね」
雪ノ下から毒を吐きながらの同意を頂いた
本当に彼女の破壊力は安定している
と、そう考えながら雪ノ下の方を見ると、由比ヶ浜が目をパチクリさせながら、頭の上に『?』を浮かべていた
雪ノ下「もう既に変更したところはそのままでいいでしょう。あとは軽く手直しするだけだから、ほとんど時間はかかりそうにないわね」
いろは「良かったです~。ほっとしました」ニコッ
八幡「じゃあ、ちゃっちゃとやって終わらせ---」
いろは「あ、ちょっと待ってください!」
一色が勢いよく俺の言葉を遮った
彼女を見ると、なぜかドヤ顔のような笑みを浮かべていた
結衣「どうしたの?」
いろは「実は、依頼ってこれだけじゃないんです」
雪乃「受けるかどうかはともかく、とりあえずお聞きするわ」
雪ノ下は、しっかりと予防線を張りつつも、一色の話を促す
いろは「えっと、まずは原稿の朗読の相手をしてもらって、アドバイスをして欲しいです。それと、卒業式の後で、体育館の片付けの手伝いをお願いします」
結衣「多分あたし達でも出来るけど、そういうのって生徒会の人がするんじゃないの?」
八幡「どうせ、他の生徒会のメンバーは卒業生からの寄付金の管理、それで取り寄せる美品の発注だとか、そんなんで忙しいんだろ。で、会長のコイツはいろいろ仕事あるしで別行動なんじゃね?」
いろは「そ、そうですけど...よく分かりましたね」
それくらいは分かる
けど...
雪ノ下「では、なぜ体育館の片付けだけなのかしら? 準備の方はどうするの?」
そこである
八幡「そこは俺にも分からん」
いろは「ええっとですね、準備は色んな部活の人に手伝ってもらうんですけど、卒業式の後は卒業生との交流があるだろうって配慮して片付けは無しにしてるんです。で、その穴埋めをお願いしたいんです」
なるほど、そういう流れか
雪乃「でも、それは私たちだけで何とかなるのかしら? 人数が少なすぎると思うのだけれど...」
いろは「ああ、当日は椅子を片付けるだけなんで、大丈夫ですよ。残りは体育館を使うクラブにお願いしてます」
雪乃「...わかったわ。その依頼、受けるわ」
いろは「よかった~、ありがとうございます!」
結衣「頑張ろうね、いろはちゃん!」
いろは「はい、結衣先輩!」
いろは「あ、そうだ。ちょっと生徒会室に荷物運び込まないといけないんですけど、先輩借りて行っていいですか?」
雪乃「ええ、持って行っていいわよ」
いろは「ありがとうございます~」
あれ、また俺の意思は関与しないんですね?
っていうか、どうせ物扱いなんですね
知ってますよ、うん
いろは「ほら、ボーっとしてないで行きますよ、先輩」
八幡「...おう」
ガララ
いろは「失礼しました~!」
結衣「ヒッキー、いってらっしゃ~い!」
八幡「...おう」ガララ
由比ヶ浜が手を振るのが見えた
...のと同時に、雪ノ下もひょこっと手を挙げているのが見えた
少しビックリしてしまった
いろは「さ、先輩行きましょう」
八幡「おう」トコトコ
二人で生徒会室へ向かう
いつもはペラペラ話しそうな一色だが、黙って歩いていた
まあ、疲れなくて助かるけど
何を考えるでもなく歩いていると、生徒会室に着いていた
一色が鍵を開ける
ガチャ
いろは「どうぞ~」
八幡「お邪魔します」
パタン
...あれ?
八幡「生徒会室に荷物を運び込むんじゃなかったのか?」
いろは「あ、あれ嘘です」
八幡「...はあ? なんで嘘なんかついたんだよ」
いろは「あ、別に大したことじゃないんですけど~、ちょっと聞きたいことがあったんで」
大したことじゃないんだったら、部室で聞けばいいじゃねえか...
っていうか、こういう状況で『大したことじゃない』って言う時は、たいてい『大したこと』の話だ
いろは「なんか先輩たちの雰囲気がおかしい気がしたんですよ~。なにかあったんですか?」
...なるほど、コイツとしては大したことじゃないな
でも、部室ではまあ聞き辛い
まあ、俺たちからしたら大したことだけどな
八幡「...お前には関係ないだろ」
いろは「ふーん...そうですか」
お、聞き分けがいいなコイツ
助かった...
いろは「言ってくれないと、きゃーやめてー、って叫んじゃいますよ?」ニコッ
...助かってなかった
全然聞き分けよくなかったよ
ってか、むしろ脅してきたよ
八幡「随分棒読みだな」
いろは「あ、雰囲気出して言いましょうか? 大声で」
八幡「勘弁してくれ...」
コイツ、本当に良い性格してるわ...
今日はこれにて終わります
投稿開始しますね
いろは「ほうほう、なるほどなるほど...」
俺が説明し終わると、一色は偉そうにそう呟いた
何故かは分からないが、無性に悔しくなった
っていうか、ホントはこういう話ってあんまり他人にベラベラ話すべきじゃないよなあ...
いろは「それで?」
八幡「...は?」
思わず聞き返した
一応全部説明したんだが...
いろは「先輩は、雪ノ下先輩と結衣先輩、どっちが好きなんです?」
八幡「それが分かったら苦労しないっつうの...」
いろは「...は?」
さっきの俺と同じ反応を返された
思わずオウム返ししそうになった
八幡「いやだから、それがわかったら分かったら苦労しないんだって」
いろは「えっと...え? 先輩は、自分が誰のことが好きか分からないって言ってるんですか?」
八幡「...ああ」
いろは「...」
一色は無言で俺を見つめている
しかし、彼女の目はこう物語っている
『お前頭おかしいんじゃねーの?』
勝手に俺が想像してるだけとはいえ、ぶん殴りたくなってきた
八幡「っていうか、この話って好きとかそういう話か?」
小町と話した時にも思った疑問をぶつける
いろは「...は?」
何コイツ本当にウゼエ...
ってか、それ今日何回目だよ
いろは「あのですねえ、そこまで来て『本当に仲がいい友達になりたい~』とかなるわけ無いでしょ...」
いや、かつての俺がそう思って突っ込んでいった結果、友達になりたいとすら思われて無かった事が多々あるんですが...
まあでも、恋愛脳っぽいのは見た目だけで、中身はクレバーな一色が言うのだから間違いないだろう
...多分だけど
いろは「はい、じゃあ話を戻します」
八幡「...おう」
いろは「結局先輩は、雪ノ下先輩と結衣先輩、どっちが好きなんです? 分からないんですか?」
八幡「...ああ」
いろは「...」
問答に一段落つくと、一色は黙り込んで考え始めた
そして、一言こう呟いた
いろは「...私にもまだチャンスあるか」ボソッ
八幡「は? 何のチャンスだよ」
いろは「え、分からないんですか?」
そう言いながら、一色は俺の方に顔を近づけてき---
近い近い近い近い近い!!!
いろは「先輩を奪っちゃうぞ、ってことですよ」ボソッ
八幡「! ...はいはい、あざといあざとい」///
あ、危うく惚れそうになった...
何なのコイツ、男にはとりあえずカマ掛けとくの?
いろは「...はあ、素に決まってるじゃないですか~」
やっと一色は離れて行った
なんでコイツはこんなに近づいてくるんだよ
そしてなんでちょっと不機嫌そうな表情なんだよ
いろは「ま、気になってたことは分かったんで、もう帰っていいですよ~」
なんかすごい上から目線で言われた
まあ、帰っていいんなら帰るけど...
八幡「お前、この後どうすんの?」
いろは「え、なんで乙女に予定聞くんですかもしかして口説こうとしてますかそれ金曜の放課後とかに聞いてくださいごめんなさい」
八幡「いや、どう考えても違うだろ...」
俺ってこいつに週一ぐらいのペースでフラれてんな...
あれ、一色に告白したことなんてあったっけ?
八幡「ま、じゃあ部室戻るわ」ガチャ
いろは「はい、お疲れ様でした~」
バタン
さっき来た道を歩いて帰る
途中で通りかかった教室には、勉強をしている者や、ただただ駄弁っている者、机に突っ伏して寝ているものなど、皆していることは様々だ
まあ、一つの教室に五人ずつくらいしかいないけど
...と、そんな風にボンヤリと教室を眺めながら歩いていると、ある教室に目が止まった
男女が二人っきりで窓際の椅子に腰掛けていた
リア充爆発しろ、などと思いながらその教室の前を通り過ぎた瞬間、ボソッっと、ある言葉が聞こえた
女「ウチらさ...別れよ?」
思わず足を止めていた
やはりリア充だったが、破局寸前だったようだ
男「...やり直すことはできないか?」
女「...もう、アンタの言うこと信じられないから、もう無理」
信じられない、と...彼女らしき女は言った
あの二人は付き合っていたようだ
つまり、まあ程度の差はあれ、互いのことを好きだと思い、信じていたのだろう
彼氏らしき男が何をしたのかは分からない
しかし...信頼関係は崩れた
二人は別れるのだ
男「...分かった」
男がその言葉を発するまでには、俺が長々と考え事をするには十分な時間が経っていた
自分の気持ちに整理がつかず、思考が追いつかなかったのだろう
...いや、きっとまだ、気持ちの整理はつかないままなのだろう
男「今までありがとう」
一連の会話を聞いた俺は、胸糞が悪くなって、その場から立ち去った
ガララ
結衣「あ、ヒッキーお帰り~」
八幡「...」ガララ
結衣「...え、無視!?」
由比ヶ浜に話しかけられたが、無視して席に着く
さっきのことでイライラし過ぎて、思わず強い口調になってしまいそうだったので、黙っていて正解かもしれない
雪乃「あら、先程よりも目が腐っている気がするわね。そんなに重いものを運ばされたのかしら?」
流石雪ノ下、無駄に観察力がある
これも無視する
結衣「ヒッキー、何かあった...?」
ここも黙秘を通したかったが、あまり黙り過ぎると更に追求を受けそうなので、一応返事だけしておく
八幡「...別に」
結衣「...そっか」
由比ヶ浜が、少し悲しそうに呟いた
それと同時に、雪ノ下がブルーライトカットの眼鏡をかけて、パソコンを開いた
少し操作をして、パタンと閉じ、眼鏡も外した
雪乃「依頼ももう無さそうだし、今日はここまでにしましょう」
八幡「...だな」
俺は、独りで足早に部室を出た
あの後、帰ってから飯と風呂だけ済ませてすぐに寝た
翌朝、そのせいもあって無茶苦茶早い時間に目が覚めた
二度寝をしてやろうと思っても、まったく寝付けない
仕方無く、体をゆっくりと起こし、朝食をとって早めに学校へ向かった
まだ2月ということもあり、肌に空気の冷たさが突き刺さる
...昨日の出来事も、俺の心に突き刺さっていた
いろは「先輩!」
チャリをこいでいると、後ろから一色に呼ばれた
白い息を吐きながら、一色が走ってくる
ゆっくりとチャリから降りる
八幡「...おっす」
いろは「はぁ、はぁ...お、おはよう、ごっ...ございます...」ハァハァ
八幡「とりあえず息整えろ」
いろは「は、はい...」ハァハァ
一色が大きく深呼吸をする
多少は呼吸が落ち着いてきたようだ
学校へ向かいながら、一色は深呼吸を続ける
いろは「...ふぅ、落ち着きました」
八幡「そうか。...で、何の用だ?」
そう尋ねると、一色は立ち止まった
幸い、まだ朝早いため、周りに通行人はおらず邪魔にはならない
いろは「えっと、その...」
一色は言い終わる前に、一度言葉を止める
そして、息が上がっているわけでも無いのに、大きく深呼吸をした
いろは「...昨日は、本当にごめんなさい!」
八幡「...え? な、何がだ?」
なぜか突然謝られてしまった
昨日といえば、一色とは一昨日のことを話しただけだった
いろは「その、先輩優しいから、無神経にいろいろ聞き出して、しかもそれに鬱陶しいコメントしちゃって...、本当に...ご、ごめ...」ウルウル
八幡「ちょ、ま、待ってくれ! どういうことだ?」
いろは「どうっ...どういうことって、そっ、それは---」ヒック
八幡「...そういうことかよ」
一色から聞いた話をまとめると、以下のようになる
昨日の部活の後、雪ノ下と由比ヶ浜は、俺の様子がおかしくなったことを不思議に思っていた
そこで原因は、直前に、俺が一色の手伝いに行った時に起こった『何か』であると踏む
そして、一色を尋ねて行ったところ、コイツは...何と言うか、生真面目に自分のせいだと思ったらしい
八幡「本当にすまない...。お前のせいじゃないんだ」
いろは「...ヒック、じゃあ、何が原因なんですか?」
八幡「...その、あれだ。お前と話した後、部室に戻る途中で...えっと、見知らぬカップルの破局シーンを目撃してしまって...」
いろは「...へ?」
俺が説明した途端、一色が泣き止む
それと同時に、ぽかんとした表情になった
八幡「それで、いろいろ思うことがあって...。その、悪かった」
いろは「...」
一色は黙り続ける
完全に俺のことを呆れている色を示す
いろは「...はあ、なんですかそれ。いろいろ考えちゃって損しました」
八幡「その...すまん」
いろは「もういいですよ。それに、どちらにしても、私もちょっといろいろ詮索しすぎちゃいました。こちらこそ、ごめんなさい」
え...なんかコイツ、えらく素直だな
なんかちょっと怖い...
八幡「えーっと、いやでもあれだ! お前にちょっと聞いてもらえたおかげで、少し楽になった。...ありがとな」
なんか思わず取り繕ってペラペラと話してしまった
今度は恥ずかしくなってきた
いろは「...な、何言ってるんですか先輩は随分と傷心につけ込んできますねでもちょっと今は無理ですごめんなさい!」
...二日連続でフラれた
もういいや、訂正しなくて...
いろは「っていうか、そんなことより、先輩は雪ノ下先輩と結衣先輩に、ちゃんと謝ってくださいね! さっきの話聞く感じだと、完全に八つ当たりじゃないですか!」
八幡「うっ...」
全くその通りだ...
後輩に面と向かって叱られた...
いろは「いいですね!?」
八幡「...はい」
今日はここまでにします
ありがとうございました
続きはまた明日
今日も投下して行きます
朝の一色とのやり取りの後、申し訳ない気持ちを抱えたまま一日を過ごした
そんな状況で、俺は俺なりの考えをまとめていた
そして放課後になり、俺はそそくさと部室へ向かう
結衣「ヒッキー!」
後ろから由比ヶ浜に呼び止められた
頭が混乱していて、由比ヶ浜を待つのを忘れていた
結衣「...なんで先行くし」
いつもならもっと強い口調で言いそうなものだが、今日は随分としおらしかった
そのことが、逆に胸に刺さった
八幡「わ、悪かった...」
結衣「うん...」
八幡「そ、それとな...詳しくは後で話すけど、昨日は、その...わ、悪かった」
結衣「...うん。ゆきのんにも言ってあげてね」
八幡「...ああ」
お互い間を空けながら話していたため、ほんの少ししか話してないが、もう部室に着いた
ガラッ
結衣「ゆきのん、やっはろ~!」
由比ヶ浜はいつもの様に部室に入る
...しかし、少し無理をしているのがわかった
八幡「う...うす...」ガララ
雪乃「...こんにちは」
重苦しい挨拶を交わした後、互いのポジションに置いてある椅子に腰掛ける
鞄を開けて文庫本を手に取ろうとする
...って、それじゃダメだ
無意識にやったわけじゃない
今の俺は、先伸ばしにしようとした
完全に逃げようとしてた
今切り出さなくては、一度先伸ばしにしたら絶対に言えない
少し深呼吸をする
そして、ゆっくりと目を閉じる
八幡「...雪ノ下、由比ヶ浜」
二人の名前を呼ぶ
姿は見えないが、おそらくピタッと二人の動きが止まった
結衣「...なに? ヒッキー」
再び深呼吸をする
目を開けて、俺は口を開ける
八幡「昨日は...本当にすまなかった」
雪乃「昨日、と言うと...少し態度がおかしくなっていた時のことかしら?」
八幡「...ああ。お前らは何も悪くなかったのに、八つ当たりをしてしまった」
結衣「なんで?...って、聞いちゃってもいいのかな?」
俺は無言で頷く
何と言うか...本当に情けない気持ちでいっぱいだ
八幡「結論から言うと...昨日の俺は、お前らと『本物』を築いていく気力が、自信が...無くなってた」
雪乃「...と言うと?」
八幡「自分から言い出しといてなんだが...俺は『本物』ってもんが、どうあるべきなのか分かってなかった」
二人の肩が、ビクッと上がるのが見えた
雪ノ下は目を閉じ、由比ヶ浜は泣きそうな顔をしている
八幡「小町と...昨日の一色に相談したんだ、そのことについて。そしたら...」
思わず言葉が詰まる
俺が今言おうとしていることは、奉仕部が、三人が明言してこなかったことだ
ハッキリさせてこなかったことだ
...崩れるのが怖いから
でも、それではダメなんだ
八幡「二人とも...恋愛についてだ、と言った」
結衣「あっ...」
由比ヶ浜が声を漏らした
ここで一度壊さなければいけないと分かっていても...やはり怖いのだろう
雪乃「...そう、それで?」
雪ノ下がそう言う
字面だけ見たら、気高く振舞っているが...彼女の声は震えていた
八幡「俺は、はっきり言ってそういうのは分からん。そして、そのことを言い訳にして逃げてきた。でも、小町と一色に言われて、俺はそのことに向き合おうと思っていたんだと思う」
雪ノ下と由比ヶ浜は、怯えたような表情を見せながら、俺の様子を伺う
八幡「そしたら、一色と話した後...どこぞのカップルの破局シーンを目撃しちまってな、そのとき正直...恋愛に、『本物』の一つの形に...嫌気が指した」
結衣「っ!」
雪乃「...なるほど」
八幡「でも...それでも、思ったんだ。そんな嫌気の指すものが、俺たちの正しい『本物』なのかどうかは...まだ良く分からん。でも...そういうのもアリだと思った」
結衣「...なんで?」ヒック
いつの間にか、由比ヶ浜は泣き出していた
隣の雪ノ下も、今にも泣き出しそうな表情をしていた
結衣「なんっ、なんで...。壊れちゃってもいいの...?」
八幡「ああ」
雪・結「「!!!」」
そうだ、壊れてもいい
そう自分に言い聞かせる
八幡「だって、俺たちは何回か関係を壊しかけたり、壊したりしてきた。でも...今もこうして一緒にいる」
雪乃「ふふっ...そうね」グスッ
結衣「ふえ?」グスッ
雪ノ下も、少し涙を流している
でも、彼女の表情は晴れやかだった
八幡「俺たちの『本物』が恋愛だろうが何だろうが...何回でもやり直せるってことだよ」
誤解だってなんだって解は解だ
それを少しずつ正解に持っていけばいい
静ちゃんに教わったことだ
結衣「でも...そんなことできるかどうか分かんないじゃん」グスッ
由比ヶ浜が、か細い声で、辛そうに言葉を紡ぐ
しかし...
雪乃「あら...由比ヶ浜さんらしくないわね」
八幡「だな」
結衣「私、らしく...?」ヒック
雪乃「私は、その...由比ヶ浜さんのこと...信用してるのだけど」///
結衣「!」
はい来ましたガチ百合
...流石にこういう時は茶化すのよそう
雪乃「私はこの先どんなことがあっても、由比ヶ浜さんと仲良くしていく自信があるし、由比ヶ浜さんもそうしてくれると信じてる」///
結衣「ゆきのん...」
雪乃「あ、後はあなたが私とそこのキモ谷君を信じてくれれば、私もあなたが信じてる人は信じるから、結果的に良い方向に行くと思うのだけれど...」///
一気にまくし立てながら、由比ヶ浜にデレる
かつ、俺はdisる
結衣「へへ...ありがとね、ゆきのん。...うん、私も自信ついてきた!」///
由比ヶ浜に笑顔が戻った
雪ノ下も、照れながらも嬉しそうに微笑んでいる
結衣「へへ...ゆきのんも、ヒッキーも...ありがと!」ニコッ///
雪乃「べ、別にそんな...」///
何と言うか、こちらまで照れくさい
なんなのこの状況...
いや、良い方向に転がったのは良かったよ、うん
結衣「でも、私だけじゃなくて、ヒッキーもゆきのんも、らしくなかったよね」
八幡「うっ...」///
雪乃「そ、それは...」///
いや、自分でも思いましたよ、はい
でも...ねえ...
あのまま逃げてたら流石にクズすぎるし...
コンコン
こんな時に誰か来たようだ
三人で目を合わせる
雪乃「...どうぞ」
ガララ...
ゆっくりと開けられたドアの向こうには...一色がいた
随分と怯えているようだ
いろは「えっと...失礼しま~す...」
結衣「いらっしゃい、いろはちゃん!」ニコッ
いろは「あ、これはもしかして...」
八幡「ああ、迷惑かけてすまなかった」
いろは「よ...よかった~」ヘナヘナ
一色がその場に座り込む
あざとさは無く、どうやら素であるようだ
彼女なりに心配してくれていたのだろう
いろは「...あれ?」
突然、一色が雪ノ下と由比ヶ浜の顔を訝しげに見つめる
...嫌な予感がする
雪乃「? どうかしたのかしら?」
いろは「もしかして、お二人とも泣いてました?」
雪乃「そ、そんなわけ...!」
結衣「そ、そうだよ! ちょっとしか泣いてないから!」
...二人とも焦って誤魔化そうとするが、全く誤魔化せていない
特に由比ヶ浜
一色からジトッとした視線が来る
いろは「先輩...ホンット屑ですね。一日に三人も女の子を泣かすなんて」
雪・結「「...は?」」
ここから下校時刻まで、俺は正座のままお説教タイムだった
一色から連絡が行ったのだろう
家に帰っても、小町からのお説教タイムだった
今日はここまでにします
それと、実は今週テストがあって更新できません
代わりに、水曜に短編(というか番外編)を書きます
土曜日から再開するつもりです
すみません
乙
テスト頑張ってな
大学生?
番外編載せます
(雪ノ下と由比ヶ浜に怒られたものの、上手く収まった
翌日も、いつもの様に放課後に部室に向かうが...
結衣「ヒッキー、早く! 早く部室行こ!」キラキラ
八幡「ちょ、あ、あんま手ぇ引っ張んな! ってか、なんでそんなに急いでんだよ!」
結衣「え? あ、いやぁ、その、えへへへへ...」
...なんか由比ヶ浜の様子がおかしい
まるで、欲しいものが目の前にある子供のようにはしゃいでいる
結衣「へへ...ふへへ...」
なにやら気持ち悪い笑みを浮かべながら足を進める
ガハマさんがおかしくなった...
でも、さっきは子供と表現したが、そうではなく、何と言うか...恋する乙女のようだ
...なんか考えた自分が気持ち悪い
結衣「...のん」ボソッ
八幡「え、なんだって?」
結衣「あ、やや、何でもないよ!」
...明らかになんかあるだろ
顔真っ赤だし
ガラッ
結衣「やっはろ~、ゆきのん!」ニコッ
雪乃「こんにちは」
由比ヶ浜はいつもより弾ませた声を出す
そして、雪ノ下の方へ駆けて行く
チュッ
八幡「は!?」
由比ヶ浜が...雪ノ下にキスをした
待って、訳が分からん...
雪乃「ちょ、由比ヶ浜さん、比企谷君もいるのだけれど...」
由比ヶ浜「えへへ、つい...嫌だった?」
雪乃「その聞き方は...狡いわ」
ナ...ナニコレ...
ドウイウジョウキョウナノ...
ガチユリジャン...
...はっ!
なんか思考が止まっていた気がする
いや、止まってなかったけど滑らかじゃなかった...
結衣「えへへ、ゆきの~ん」ダキッ
雪乃「ちょ、ちょっと! だからそういうのは...」
結衣「え~、我慢できないよ...」
雪乃「まったく...。じゃあ、ここに座りなさい」
結衣「ホントに!? やった~!」
なんか今度はハグしたり膝の上に座ったりし始めた
もうなんなのホント...
雪乃「...」ギュッ
結衣「あれ、ゆきのんどうしたの?」
雪乃「いや、違うの、これは...!」ギュー
結衣「もっと強く抱きついてきてるけど、何が違うの?」
雪乃「えっと...その...」
や、ヤバイ...
何かが始まりそうな気配だ...
八幡「お、お前ら...と、突然どうした?」
何とか疑問を口にする
二人は照れているのか、頬を赤らめる
完全に恋する乙女の顔だ
絶対そうだ
結衣「えへ、あのね...昨日の放課後、あたし達...つ、付き合うことに...なったんだ。...ね?」
雪乃「え、ええ...そうよ」
予想通りガチ百合でした、はい
八幡「い、一応言っとくけど...お前ら、女同士だよな?」
雪乃「それはそうだけど...あなたの昨日の話だと、私達の『本物』の在り方はどうあってもいいのでしょう?」
あ、いや、そうだけど...
これは想定外というか、何と言うか...
結衣「と、とにかく!...ちょっと早いけど、これがあたし達の答え...あたし達の『本物』。...どうかな?」
八幡「ど、どうかなって...」
雪乃「比企谷君...」
雪ノ下と由比ヶ浜が、俺に訴えかける視線を向けてくる
ど、どうすれば...
八幡「お、俺は...俺は、俺はああああああああああああああああああああああああああああ---」)
ピピピピピピピ
八幡「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」ガバッ
ピピピピピピピ
八幡「...」ピピピピ カチッ
目覚まし時計を止める
今俺がいるのは...自室だ
八幡「...夢かよ!」
小町「お兄ちゃんうるさーい!」
以上です
一連の出来事の後の約二週間、他には特に依頼はやって来ずに、ほとんど一色の手伝いばかりしていた
特に雪ノ下は、式辞の読み方を丁寧に教えていたため、一色の朗読の腕前は相当なものになっていた
由比ヶ浜も、場の空気を調節したり、一色の気分転換をしてくれたおかげで、スムーズに進めることができた
ちなみに、夢で見たようなガチ百合は怒らなかった
いろは「せーんぱい」
八幡「お?」
いろは「なにボーッとしてるんですか? 早く運びたいんですけど」
八幡「ああ、悪い悪い」
いろは「思ってないでしょ...。まあいいです、行きますよ。せーのっ!」
今、俺達は体育館の片付けをしている
本番でも、一色は練習通りに読み上げ、その姿は堂々としたものだった
本当にコイツは何げに有能なのである
結衣「いろはちゃん、こっちは一通り終わったよ~!」
いろは「わぁ、ありがとうございます~」
出た、あざといお礼
あれって女子にもする意味あるの?
雪乃「あとは、ステージの上に置かれているあの箱ぐらいなのだけど、どうすればいいかしら?」
いろは「あの箱は...う~ん、じゃあ、私と先輩で運んじゃうので、結衣先輩と雪乃先輩はここまでで大丈夫です。ありがとうございました!」
あ、俺の意志には配慮してくれないのね
まあ、あの箱も数があるだけで、軽そうだからいいけど...
結衣「ううん、こちらこそ!」
雪乃「一色さんも、お疲れ様」
いろは「生徒会の皆さんも、これで一旦終わりで~す。とりあえず、生徒会室で休んでてくださ~い」
副会長「会長、体育館の鍵貸して」
いろは「それじゃあよろしくです」
最初は面倒臭がっていた生徒会長も、すっかり板についている
...なぜだろう、少し悔しい
いろは「それじゃ、先輩! 運びますよ~!」
そんな生徒会長に呼びかけられ、俺は足を進めた
今、俺達は体育館裏の倉庫にいる
少し肌寒さを感じる
式典で使う備品はほとんどここに置いてあるようで、何と言うか異様な雰囲気だった
いろは「う、うぅ~...」
一色は持ってきた箱を棚に入れようとしているが、身長が微妙に足りておらず、唸りながら背伸びをしている
いつも通りのあざとさである
八幡「はあ...ちょっと貸せ」ヒョイ
いろは「あ、ありがとうございます...」
見るに見かねて、代わりに荷物を納める
一色は、いつものようなあざとさは見せず、素直に礼を言ってきた
いろは「あの...先輩」
八幡「あ? あ...わ、悪い」
荷物を納めるにあたって、一色に後ろから覆い被さるようになっていたため、困ったような声を出された
...ってか、密室でこんなことしてたら、それこそ勘違いされかねんな
八幡「あー、その、ほら...もう行こうぜ」
うん、早く退却するのがベストだ
でなければ通報されかねん
ってか、確かこいつも生徒会の何かがあるんだろ
いろは「あ...待ってください!」
八幡「!?」ビクッ
一色が突然大きな声を出した
思わずビクッとなってしまった
雪ノ下が居ようものなら、数々の罵声を浴びせられるような反応だったに違いない
いろは「その、先輩...」
ふと一色を見ると、頬が紅く染まり、恥ずかしげな色を出していた
思いがけず、可愛いと思ってしまった
八幡「な、なんだ...?」
いろは「私...」
いろは「...さ、さっきの式辞! う、上手くできてましたか?」
八幡「...は?」
拍子抜けした
随分間を空けた割には、言い方は悪いが、どうでもいいことだった
八幡「...ったく、ああ。凄かったよ。本当によく頑張ってた」
いろは「...へへ、先輩たちのおかげです」
素直に褒めたにも関わらず、意外な反応だった
いつもなら、色々捲し立てて、なんだかんだでフラれるのだが...
...いつもならフラれる、って自分で考えて悲しくなってきた
いろは「あ、それとですね」
八幡「ああ、なんだ?」
いろは「私、先輩のことが好きです」
...今、何て言った?
好きです?
いや、無いな。ありえない
俺の今までの黒歴史からして...えっと、えっと...とにかく、なにかの聞き間違いだ
ってか、一色なら普通に冗談で言ってきそうなもんだ
そうだよ、本気にすんな
いろは「先輩」
八幡「お、おう...」
いろは「私、本気ですよ?」
一色がじっと俺を見つめてくる
その目は、ディステニーランドの帰り道、彼女が見せたのと同じ色を示していた
いろは「ま、信じられないのも無理はないですね」
八幡「えっと、その...スマン」
いろは「謝らないでくださいよ。まったく...」
思わず俯いてしまった
顔は見えないが、一色は呆れたような表情をしているに違いない
八幡「...お前、葉山が好きなんじゃなかったのかよ」
いろは「やっぱ、そこですよね...」
先程から気になっていたことを口にする
彼女は、葉山に告白までしたのだ
そして、フラれた彼女は涙を流していた
それほどに思っていたということだろう
いろは「私、あの後考えたんですよ。色々と...」
思わせぶりに間を空ける
そして、暫く経ってから、再び口を開く
いろは「葉山先輩は...アイドルだったんです」
八幡「...は?」
いろは「もちろん葉山先輩も好きですよ。あんなにかっこよくて、優しくて、スポーツもできて...」
あ、あれ?
今告白されてるのって俺だよね?
あ、やっぱ気のせい?
いろは「でも...それだけでした」
八幡「だけって...それじゃダメなのかよ」
いろは「そうですね...。少なくとも、私の求めている物じゃありませんでした」
八幡「なんなんだよ? お前が求めてる物って...」
いろは「...内緒です」
八幡「...なんでだよ」
いろは「ふふ、それは自然と気がつきますよ。...それと、先輩の答え、もう分かってます」
不敵に笑いながら、一色は呟いた
俺の答えって何だ?
こいつには何が見えてるんだ?
いろは「せーんぱい!」
八幡「...おう」
いろは「告白の返事...聞かせてください」グスッ
...彼女は泣いていた
声も震えていた
いったい、どれだけの勇気を振り絞ったのだろう
彼女の様子と、俺の気持ちと...
そこから導き出される解は、俺も彼女も苦しませるに違いない
それを承知で言っているのだ
八幡「...スマン、お前とは付き合えない」
いろは「です...よね。それでも、私の気持ちを知ってもらえて...良かったです」
そう言う一色の目からは、涙が溢れ出していた
その姿を見て、彼女の事を逞しいと感じた
いろは「すみません...。涙が止まるまでここにいるんで、先輩は戻っててください」
八幡「...泣いてる奴を放っておいて、一人で帰れるかよ」
いろは「へへっ...お気持ちは嬉しいですが、それじゃあ...私の涙が止まりません」ヒック
八幡「...」
それに対して、俺は何も言えなかった
俺にできたことは、肌寒い倉庫の中に残る一色に、ブレザーを掛けてやることぐらいだった
以上です
テストは色んな意味で終わりました(絶望)
あれから部室に向かったが、紅茶を飲みながら本を読み、たまにどうでもいい話をして貶されるという、代わり映えのない部活だった
強いて言えば、三人で卒業式の手伝いについての回想をしたぐらいだった
...俺の心中は、とてつもなく揺らいでいたが
雪乃「...そろそろ下校時刻だし、これで終わりにしましょうか」
結衣「そだね~」
八幡「...だな。じゃ、俺帰るわ」
鞄を持って出口へ向かう
今日は何時もに増して帰りたい気分だった
結衣「...ヒッキー!」
由比ヶ浜に呼ばれて振り返る
何やら、不安げな表情でこちらを見つめていた
結衣「...ううん、なんでもない。お疲れ様!」
八幡「...おう」
結局、由比ヶ浜は何も言ってこなかった
振り返って、部室を後にする
その際、雪ノ下と由比ヶ浜の曇った表情が視界を掠めた
脱靴場に向かうと、下駄箱の上にブレザーとメモが置いてあった
メモを見ると、震えた文字で『ありがとうございました。まだ諦めてませんよ(`・ω・´)』と書いてあった
顔文字なんか使っても、気張っているのはバレバレだった
ブレザーを着ると、背中の一部が濡れていることに気付いた
八幡「...どうすりゃいいんだろな」
思わず、ポツリと呟いた
静「おや、君らしくない独り言だな」
...脱靴場の入口から、静ちゃんに見られていた
ドラマとかでよく見る、壁に肘をついて脚をクロス(?)させている
...男らしいポーズだ
八幡「...卑屈なのが俺の取り柄ですし、いつも通りですよ」
静「ははっ、そうだな。でも、君は迷ったりせず卑屈の道を突っ走り続けるからなあ」
卑屈の道って...
まあ確かに、俺の積み上げてきた黒歴史を糧にして、しっかりガッツリ決断してきたってのはあるけど...
静「今の君は...とてもじゃないけど見てられない」
八幡「雪ノ下には、いつも似たようなことを言われます」
その俺の言葉に、静ちゃんは乾いた笑いで答える
その後、なにやら歯痒そうな顔をした後、口を開いた
静「...君と少し話がしたい」
先生の車に乗せられて、走ること十数分
閑静な住宅街の中に、ポツリと佇んでいるラーメン屋に到着した
中に居るのも、店主らしきオッサン一人のみ
ぼっちの俺には親近感が沸く店だった
静「おっちゃん、坦々麺二つ~」
店主「...いつものじゃないんだな」
静「ああ、ツレの生徒の好みでね」
...なんかこう、THE・常連みたいな会話だった
ってか、坦々麺好きってわけではないんだけど
いや、好きだけど、特別好きなわけではない
静「知らないのか? 辛いものはストレス発散にいいんだぞ?」
あ、そうなんすか
別に俺、ストレス抱えてるってわけでは---
八幡「...いや、人の心の中を呼んだようなこと言わないでください」
静「ああ...いや、君が訝しげな表情だったから、ついな」
八幡「...はあ」
日常会話で『訝しげ』って使う人初めて見たよ
流石国語教師だな
静「...実に君らしくないな」
八幡「またそれですか」
静「ああ。ネガティブになりつつある思考回路を、無理矢理どうでもいいことに切り替えようとしている...。そんなところか」
八幡「そんなこと...」
...無いか?
俺は現実逃避しようとして無かったと言えるか?
いや、そんなことしてない
静「移動中も、どこか上の空といった様子だった。...でも、真剣に考え事をしている風でもない。ただボーっとしていた...そうだろう?」
八幡「...」
何も言えなかった
現に移動中は、一色のことも、奉仕部のことも考えて無かった
静「この前、雪ノ下や由比ヶ浜ともここに来たよ。話した感じだと...もう、ほとんど答えを出しかけてる」
八幡「...それは、どういう...」
ゴトン
店主「...お待ち」
静「とりあえず、先に食おう」
八幡「...はい」
そこから、二人で坦々麺を啜り出した
お預けを食らいながらの麺は、舌だけでなく、心にも辛かった
ここまでです
短くてすみません
ボチボチ更新していこうと思います
静「ふう、ご馳走様」
八幡「...ご馳走様でした」
静「とりあえず、ここを出ようか。おっちゃん、美味しかったよ」
静ちゃんは、そう言って店を出た
店主の男は、黙って椀などを洗っていた
飲食業には向いて無さそうな、如何にもな頑固親父そうな人だ
だが、そこがいいと思う人もいるのだろう
静「おい比企谷、もう行くぞ~」
静ちゃんに急かされたので、店主に軽く会釈してから外に出た
こっちを見る気配は全くなかったが
静「そこに公園があるだろう。あそこで話そう」
静ちゃんが指さした先には、小規模な公園が見えた
ただ、食事の間に辺りは真っ暗になってしまい、該当に照らされている部分しか見えなかった
八幡「分かりました」
既に歩き出している静ちゃんの少し後方を歩く
逆光になってシルエットしか見えないものの、そこにいた静ちゃんは、少し寂しそうだった
静「なあ、比企谷」
公園に着いてベンチに座ると、すぐに口を開いた
八幡「はい」
静「以前、私がした話を覚えているか」
八幡「...いつのですか?」
静ちゃんには、結構アドバイスを貰っているので、あの時とかアバウトに言われても...
静「ほら、クリスマスのちょっと前だ」
八幡「ああ、はい...。『誰かを大切に思うということは、その人を傷つける覚悟をすること』...でしたっけ」
静「ああ、そうだ。それで、今の君はどう思ってる?」
今の俺...
...今の俺は、一色を傷つけたことを悔やんでいる
もちろん、あそこで告白を受けたら、後々彼女をさらに傷つけることになる
...つまり、俺はここまで一色のことを考えてしまうんだ
八幡「俺にとって、一色は大切です。大切な後輩です」
静「だから、彼女を泣かせてしまって落ち込んでいる。同じように、君のことを大切に思ってくれていた彼女をな」
八幡「そう...ですね」
静「そこまで言えれば上出来だ」
そう言いながら、静ちゃんはカラカラと笑った
暗い公園に、彼女の笑い声が響く
静「さっきは、今の君を見てられないと言ったが...いやはや、心配ないな」
八幡「何がですか?」
俺がそう尋ねると、静ちゃんの笑い声はピタッと止んだ
静寂が辺りを包み込む
静「...私はな、前にも言ったが、自分だけが傷ついて物事を解決しようとする君を見ているのが...辛い」
八幡「別に、先生がそんな風に感じることは...」
静「何を言っている。生徒のことで、教師が悩むのは当然だ。...まあ、君は特別なのだがね」
八幡「...なんですかそれ」
静「君は本当に優しい。周りの者を、本当に正しい道へと導く。ただし...その人への信頼、自らへの配慮、それと...手段の選択は無いままで」
そう言った静ちゃんの顔は、今まで見たことがないほどに曇っていた
右手に握られた煙草のケースも、ぐしゃぐしゃになっていた
静「でもな...そんな君が、変わっている。変わり始めている。それは、一色への想いで十分に分かる」
八幡「でも、俺は...」
まだ、奉仕部の『本物』を見つけられない
雪ノ下と、由比ヶ浜との、関係性を...
静「まったく...君はさっき、私の話を覚えていたじゃないか」
八幡「...は?」
静「正解を探そうとするな。人の心は計算では導けない。...君の心もな」
正解を探さない...
つまり、以前静ちゃんが言っていた、「誤解を消す」方法
でも...
八幡「...どれが誤った解なのかが分かりません」
静「いいんだよ。悩み続けろ。他人の声には耳を貸すな。我が道を行け...お前の卑屈の道を」
結局あの後、雪ノ下や由比ヶ浜と何を話したのかは教えてもらえなかった
単に餌として使っただけのようだ
八幡「...ふう」
帰宅して飯食って風呂入って、ベッドの上に倒れ込む
カレンダーに目を遣る
終業式まで、残り一週間を切っていた
静ちゃんに言われたことを思い出す
八幡「卑屈の道、ねえ...」
卑屈...
ネガティブ思考だとか、ずる賢さだとか、そういう類のものが合わさった性格
それと、ずっと気になっていたことが一つ
八幡「支えたいか、支え合いたいか、ねえ...」
少し前に小町と話したことだ
この二つの違いは、一方的なものか、互いに行うものか、という点にあることは明白だ
静ちゃんが言うところの卑屈の道で、二つの差異を考える
『支える』
それは一方的な行為だ
これは自らの意志で行うため、相手の意志に与しない
つまり、相手からすると、迷惑だったり恩着せがましかったりするかもしれない
『支え合う』
対照的に、相手の意志に関与し合うため、行為はそのまま相手に伝わる
ただし、その行為が相手の希望を満たさないと、「自分はやっているのに相手はしてくれない」といった感情を生み出しかねない
八幡「ちなみに今までの情報は、俺のステルス機能で周囲に気づかれなかった結果、立ち聞きするような形で手に入れた情報である」
...自分で解説してて悲しくなった
しかも口に出しちゃったよ...
八幡「...まあ、よく分からんから置いとこう」
逆に考えてみる
俺の好きな人は誰だ?
...戸塚と小町だな
間違いない
好きどころか愛してるまである
八幡「...愛してる、ねえ」
小町への愛は家族愛だ
じゃあ戸塚は?
それこそ、一色が言うところのアイドルなのかもしれない
戸塚は可愛い、優しい、人畜無害
なんか最後のは褒め言葉じゃない気もするが、とにかく戸塚は天使
一緒に居たいなんて思ったらおこがましいまである...
八幡「~~~っ!」
いや待て
これじゃあまずいじゃないか
このままじゃ、あいつの言った通りになる
厳密に言えば違いはあるが、状況としては同じだ
これじゃダメだ
この答えでは...
結局あれから明確な答えは見つからないまま、終業式の日を迎えてしまった
学校に行きたくない
今日だけは、部室に行きたくない
そう思っているのに、体は勝手に動いていく
時間も止まってはくれない
気づけば、放課後になっていた
結衣「ヒッキー、行こ?」
八幡「...おう」
何回も繰り返したやり取りを行い、席を立つ
もうすぐ、決着の時だ
ガララ
結衣「...ゆきのん、やっはろ~!」
雪乃「こんにちは...由比ヶ浜さん、比企谷君」
八幡「おう...」
三人が一堂に会す
各々がいつもの位置においてある椅子に座る
でも、いつもとは違う、張り詰めた空気が漂う
雪乃「...とりあえず、紅茶を入れるわ」
雪ノ下はそう言って席を立つ
明らかに、空気に耐えきれずに取った行動だ
だが、俺も由比ヶ浜も、それに救われた
結衣「...は~、今日で学校も終わりだね~」
雪乃「そ、そうね...」
由比ヶ浜からすれば、なんとか空気を和ませようとしたのだろうが、明らかに逆効果だ
先程よりギクシャクしている
雪乃「どうぞ...」
雪ノ下が、俺と由比ヶ浜に紅茶の入った湯呑とマグカップをそれぞれ渡す
紅茶には、何やら気持ちを落ち着ける作用があるらしい
詳しくは知らないけれど
八幡「...」
なぜだろう
そんなどうでもいいことを考えられるくらいには落ち着いている
八幡「...なあ」
自然と口が開く
正直な所、まだ考えはまとまっていないし、そのことを口にしたくもない
だが、言わねばならない
八幡「俺たちの結論を---」
結衣「待って!」
由比ヶ浜が、俺の言葉を遮る
彼女の目は、少し潤んでいた
結衣「あたしが...最初に言う。あたしが言い出したんだもん。あたしから言わないと...」
声も震えていた
今にも泣き出しそうだが、彼女の目には火が点っていた
結衣「...あたしが欲しいもの、言うね」
雪乃「...ええ」
結衣「二人ともわかってるかもしれない。凄くわがままなこと言っちゃう。...ごめんね」
そう言ってから、ほんの少しの静寂のあと、再び彼女は口を開いた
結衣「あたしは、ヒッキーの...特別な存在になりたい。友達とか、そんなんじゃなくて」
八幡「!」
結衣「でも、そんな風になっても、ゆきのんとは今までみたいに...ううん、もっと仲良くなりたい。わがままだけど...でも、それが私の欲しいもの」
雪乃「そう...」
俺のこれまでの黒歴史にも、似たような経験はある
しかし、根拠はないがこれだけは言える
由比ヶ浜は...本気だ
これまでの奴らとは違う
雪乃「由比ヶ浜さん」
雪ノ下が呼びかけると、由比ヶ浜は少しビクッとしたが、凛々しい表情で雪ノ下の方へ向き直った
そして、雪ノ下はこう続けた
雪乃「貴方の願い、半分はわからないけれど...少なくとも、半分は叶わないわ」
結衣・八幡「「!!」」
雪乃「比企谷君、由比ヶ浜さん」
八幡「お、おう...」
結衣「うん...」
雪乃「私も考えたわ。奉仕部はどうあるべきか...いや、違うわね。私は奉仕部にどうあって欲しいのか」
言葉を紡いでいる雪ノ下は、ずっと下を向いていて、表情が見えない
しかし、なぜだろう
雪ノ下は笑っている気がする
雪乃「そして思ったのは...ここで完成させてはいけない、ということよ」
八幡「...それは逃げじゃねえのか?問題を咲き伸ばしにするってことだろ」
雪乃「あらダメ谷君。国語だけが取り柄のあなたが、文章読解をしくじるなんて、もうあなたには価値がないも同然よ?」
絶対コイツ笑ってるわ
ってかなんだよ、この状況でヘイト吐きまくるって
で、しかも先延ばしじゃ無かったらなんなんだよ
雪乃「『本物』。それは、その時々で変わるもの...成長するものよ。少しずつね。だから、焦ってはいけないの」
結衣「ゆきのん...?」
雪乃「比企谷君、由比ヶ浜さん...私と、友達になってください」
八幡・結衣「「!!!」」
正直、耳を疑っている
俺から『友達になってくれ』と頼んでも断っていたし、由比ヶ浜に迫られても明言せずに誤魔化していた雪ノ下が、自ら申し出たのだ...
雪乃「だから...由比ヶ浜さん」
結衣「...うん」
雪乃「あなたが良くしていこうとするだけではなくて、私もするから...あなたの思い通りにはなりそうにないわよ」
結衣「! ゆきのん!」
二人とも微笑んでいる
これは皮肉も何も入っていない、本音のやりとりだろう
雪乃「でも、まだ終わりじゃないわ」
雪ノ下の回答も終わったかと思いきや、続けて口を開く
雪乃「比企谷君」
そして、突然名前を呼ばれた
雪乃「私は少なからず、あなたに好意を寄せているわ」
結衣「!」
八幡「...は?」
雪乃「でも、さっきも言ったけれど、ここで完成させてはいけないのよ。だから、今できる精一杯をするわ」
雪ノ下は、いつも飾っているような感覚がある
冷静に、淡々と何事もこなす
故に、これまでは強い女の子だと思っていた
しかし、今の雪ノ下は違う
取り繕うことなく、必死に自分と向き合っている
今改めて、雪ノ下は強い女の子であると思う
雪乃「...それで?」
八幡「は?」
結衣「ヒッキーは...?」
二人から不安げに見つめられる
以前の一件で俺は思った
俺が欲しいのは言葉じゃない
理解されたいわけでもない
理解したい
理解していないと怖いからだ
しかし、完全に理解するというのは、独善的で独裁的で傲慢なことだ
しかし、互いにそう思えるならば...
八幡「俺は...」
短かった春休みが終わり、高校最後の一年が始まった
面倒くさい始業式もホームルームも終わり、部室へ向かう
ちなみに、今年は奉仕部の二人のどちらとも同じクラスにはならなかった
しかし...
結衣「ヒッキ~!」
由比ヶ浜はそれでも一緒に部室に向かおうとする
あんまりデカイ声で呼ばないで欲しいんですが...
小町「あ、お兄ちゃんと結衣さん!」
部室に向かっていると、また大きい声で呼ばれた
ラブリーマイシスター小町だ
分かってはいたが、小町はあっさりと合格した
結衣「小町ちゃん、やっはろ~!」
小町「結衣さん、やっはろ~です~!」
元気な二人に挟まれて歩いていると、もう既に部室の前だ
ちなみに、小町は奉仕部に入部するそうだ
ギュッ
唐突に手を握られる
握っているのは...由比ヶ浜だ
結衣「へへ...」
ガララ
結衣「ゆきのん、やっはろ~!」
雪乃「こんにちは。由比ヶ浜さん、小町さん、ダメ谷君」
以上で完結です
見てくださった方、ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
おもんな
百合の夢の部分いらない
味のないガムみたいな内容
終わり方雑じゃね?
僕は、結構好きでした。
また由比ヶ浜で違うのお願いします
ないわ〜ガハマさんエンドはないわ〜
八方美人と風俗嬢は付き合うと精神的にやられる(´・ω・`)