八幡「それは文化祭から始まった」 (11)
「千葉の名物、踊りと祭り!」
「同じ阿保なら踊らにゃ~~sing a song!!」
明るさ・華やかさ・生命力。
そんなさまざまな要素が混じり合いながらそこかしこに溢れ出し一つの空気を作り上げはじめていた。
この頃のことで覚えていることがある。
私はタクシーに乗っていた。
車はちょうど藤色と薔薇色に染まった夕空の下、ビルの谷間を滑るように進んでいる。
私は言葉にならぬ声で叫び始めていた。
そうだ、私にはわかっていたのだ。
自分は望むものすべてを手に入れてしまった人間であり、
もうこの先、これ以上幸せにはなれっこないのだということが
劇場版 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
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私が育ったのは、まるで映画の舞台になりそうな「地獄の台所」と呼ばれる所だった。
アパートの住人達は皆貧しくて大変な生活だったが、助け合って暮らしていた。
私達は利根川でよく泳いだ。
いつも20人くらいの子供達がいて、桟橋から飛び込んだり、本当に楽しかった。
思い返せば、あの利根川のゴミ溜めの中を泳いでいたんだ。
そんな私が今は当たり前のように文化祭に参加している。
私はこのとき、青年時代の苛立たしい気持ちから救われたような開放感に包まれた。
嵐のような感激に圧倒され、神がこの時代に生きる幸福を与えてくれたことを心から感謝した。
この文化祭のために七百人を超える学生や来客が最後の血の一滴まで遊ぼうと覚悟し、自発的に体育館の下に立ったのだ。
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