千早「春香との何気ない時間」 (41)
・春香さんと千早ちゃんの話です。
・前半から中盤にかけて地の文あり。
・全て書き溜めしてあるので早めに終わります。
では、よろしくお願いします。
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ガチャッ
梅雨に入り、からっとした暑さから一転、じめっとした暑さに早変わりした季節に
目まぐるしいな、と思いつつ今日も事務所のドアを開ける。
「765」と、今はすっかり草臥れた黄色いテープで貼られたドアを。
千早「おはようございます」
春香「おはようっ、千早ちゃん!」
一言で言うなら天真爛漫、いやこれは高槻さんね。 明朗快活、こっちの方が合ってる。
じめっとした空気を吹き飛ばすような、太陽のような笑顔で私を迎えてくれる大切な友達。
そんな彼女を見て、顔を綻ばす。 ふと、周りを見渡す。
千早「……誰も、居ないの?」
春香「うん、プロデューサーさんは営業で、小鳥さんはお休み」
半ば苦笑気味に、質問に答えてくれる。
その苦笑の意味は、なんとなく解る。
千早「またこんな朝早くから……。 律子は?」
そう、誰よりも早く出勤し、私たちの為に営業に出る。
本当は感謝すべきところなのだろうけど、少し心配になってしまう。
春香が来た瞬間に入れ替わりで出たのだろう。
春香「竜宮小町のライブ。 連日ライブだから泊り込みだって」
そう答えられてから、今や白より黒の方が割合の高くなったホワイトボードを一瞥する。
竜宮小町のメンバー、一人一人のイメージカラーで、一文ずつ色を変えてスケジュールが書かれている。
可愛らしい、律子って、意外とそういうところある。
千早「……ホントね」
春香「うん、だから千早ちゃんが来るまで退屈だったんだよ〜」
千早「ふふっ、そんなに時間も経ってないでしょう?」
春香「そうだけど、とっても退屈だったの! こんな朝じゃ皆にメールするのも悪いかな〜ってなったし!」
千早「まぁ、確かにそうね……」
机に顔と手を乗せ、ぶーたれる春香に苦笑しつつ、
顔を上げて左、時計を見る。 午前7時49分、早朝と言えるレベルだろう。
春香「そういえば、千早ちゃんはなんでこんな早くから?」
千早「えっ?」
春香「だって、今日のお仕事午後からだよね? レッスン?」
千早「あぁ……、えっと……」
そう言われて言い淀む。 隠す事では無いけれど、言う程の事でも無い。
けどこういう時、さっさと言った方が誤解が無くていいのよね。
お昼にやってた刑事ドラマで、取り調べの時に言ってたわ。
千早「あまり大した事では無いわ、ただ家に居てもする事が無いだけ」
春香「あぁ、解る! そういう時あるよね〜」
千早「えぇ、……そういう春香は?」
春香「ふぇっ?」
千早「春香だって、こんな早く仕事があるわけでも無いのに」
春香「あぁ、私も千早ちゃんと同じで……むっ?」
先程ホワイトボードで今日のスケジュールを見たので、春香の仕事も把握している。
正午からグラビアの撮影があるらしい、私には無理そうな仕事だ。
と、思考する事から離れ、目の前に意識を向けると、何かを思いついたような顔をする春香。
そして咳払い、姿勢を正し、顔を無表情に近づける。 ちょっと嫌な予感。
春香「あまり大した事では無いわ、ただ家に居てもする事が無いだけ」キリッ
千早「………それ、私の物まね?」
春香「えへへ、結構似てなかった?」
嫌な予感的中。
千早「…亜美や真美の方がまだ似てたわ」
春香「がーんっ!!」
両手を頬に当て、大げさにリアクションする。 まるでコメディアンね。
だって、言ってる途中で顔がにやけてたんだもの。
まだ亜美や真美の方がものまねに対してプロ意識を持っていたわ。
千早「しかし、来たのはいいものの……。 何して時間を潰そうかしら」
春香「あれ? いつもみたいに音楽聴かないの?」
あっという間に立ち直った春香に対し、半ば感心しつつも、
春香の中で満ちているだろう疑問を解消するためにも、質問に答える。
千早「今二人しか居ないのだし、私だけ趣味に没頭して、春香を放っておくなんて出来ないわ」
春香「千早ちゃん……! ありがと〜!」ガバッ
そんな言葉を掛けてくれると夢にも思わなかったのか、一瞬驚いた顔をして、
みるみる花を咲かせたかのように満開の笑顔を見せてくれる春香。
唐突に抱きついてくるものだから、少し声を上げてしまった。
千早「きゃっ、は、春香……!」
春香「千早ちゃんが優しく育ってくれて、私は幸せ者だよ〜♪」ギュー
千早「もっ、もう……春香ったら……っ! は、話を戻しましょう!」
春香「え〜、もうちょっとだけ〜…」
千早「ダメですっ!」
頑なに抱きつこうとする春香を引っぺがしながら、
私だって、もう少しこのままで居たいけど、なんて恥ずかしくて言えないから
心の内だけに秘めておく事にしよう、などと思っていた。
・ ・ ・ ・ ・
春香「ん〜、それにしても何しよっか」
千早「そうね……、二人で出来ることなんて限られているし」
春香「自主レッスン行こうにも、今日は撮影用の着替えしか持ってきてないし〜…」
千早「何か、持ってくれば良かったわね」
春香「たとえば?」
千早「えっと…、なにかしら……」
春香「……」
千早「……」
春香「………」
千早「………えっと」
春香「……うん! 取りあえず過ぎたことを悔やんでも仕方ないって事で!」
千早「それ、フォローになってるのかしら……?」
・ ・ ・ ・ ・
春香「むむむ…、仕方ない。 ならば春香さんの最終兵器を出すしか…!」ゴソゴソ
千早「最終兵器……?」
得意げな顔をしながら、いつもの鞄から意気揚々と取り出だしたるは、
リボン柄のシールがアクセントの、いつもの見慣れた花柄の紙袋。
それに何が入っているのか、765プロの仲間なら誰だってわかるだろう。
春香「じゃじゃ〜ん! クッキーですよ!クッキー!」
千早「随分と美味しそうな最終兵器ね」
春香「でしょ? 今日はチョコチップクッキーだよ〜」
千早「お茶、淹れてくるわね」
春香「あ、ありがと千早ちゃん! よしっ、では私はお皿に盛り付けをば……」
千早「……ふふっ」
給湯室まで足を運びながら、ただお皿に盛り付けるだけなのに、
やたらと張り切る春香を見ていたら、不思議と笑みがこぼれてしまう。
腕まくりをする仕草までして、本当にコメディアンのようね。
千早「さて……」
ふと思案、もう少し早く思い返すべきだった。 小さいながらも、大きい試練が待ち受けている事に、
その時の私は、思いもよらなかったのである。
千早「…そういえば、お茶ってどうやって淹れるのかしら」
・ ・ ・ ・ ・
春香「……」
千早「……」
春香「……千早ちゃん」
千早「……ごめんなさい、そういえば私、お茶の淹れ方知らなくって……」
春香「あっ、それ、なら仕方ないよね〜! うん、知らないものをやれって方が無茶振りだよ〜!」
千早「……本当にごめんなさい。 一応、努力して作ろうとしてみたんだけど……」
長めのテーブルの上には、春香の持ってきたクッキーが左右対称に盛り付けられたお皿の他に二つ。
紫色の湯気を放つ、ボコボコと未だに沸騰する湯のみがそこにあった。
千早「まさかこんな事になるとは……」
春香「あ、あはは……、どうやったらこうなるんだろうねっ? 最早奇跡だよ!」
千早「……奇跡でこうなるくらいなら、起こらない方が嬉しいわ」
春香「うっ……(千早ちゃんの顔がいちごババロアかと思ったらラズベリーババロアだった時の美希の顔くらい暗い…!)」
千早「……これ、捨ててくるわね」
春香「…!(千早ちゃんを元気付けるには…!) ち、千早ちゃん待って!!」
千早「春香? どうかしたの?」
春香「(これしか無い…!)そ、そそそそ、それ頂戴!」
千早「えっ、でも……」
春香「良いから! …だって、千早ちゃんが淹れてくれたんだもん、捨てるなんて出来ないよ…」
千早「春香……!」
春香「だからそれ、私飲むよ!!」
千早「で、でも……!!」
春香「……ッ!」バッ
この地球上、どこを探したって同じ液体は見つからないであろう暗黒物質(液体)を、
春香に飲ませることなど、出来るわけもなく。
そう思い春香に湯飲みを渡すことに抵抗していたら、反応しきれず奪われてしまう。
千早「は、春香……っっっ!!」
春香「ングッンッングッ……!! プハァ!!」
春香「美味い!!! もう一杯!!!!」バターン
千早「は、春香ぁぁぁぁぁーーーー!!!」
それだけ言い残して春香は床に突っ伏してしまった。
とりあえず、もう一杯と言っていたので、私は春香を仰向けにして、
もう一つの方のお茶(暗黒)を春香の口に注いだ。 痙攣していた。
・ ・ ・ ・ ・
春香「ふぅ…、なんとか九死に一生を得たよ……」
千早「無事でなによりだわ」
春香「気絶してる間、なんだかとても辛い衝撃に襲われた気がするんだけど……」
千早「きっと気のせいよ」
春香「そっか、気のせいかー! なら仕方ないよねー!」
千早「えぇ、さぁ春香の作ったクッキー、食べましょう?」
春香「なんだか話し逸らされてる気がするけど、うん!」
千早「……とっても美味しいわ」サクッ
春香「ホント? えへへ、やったぁ」モムモム
千早「いくらでも食べれそう」カリカリ
春香「そ、そんな褒めすぎだよぉ〜」マムマム
千早「本当よ、お世辞なんかじゃないわ」サクリンコ
春香「えへへ、ありがと。 ……あ、無くなっちゃったね」
千早「ご馳走様。 …私にはこういう才能無いから、憧れるわ……」
春香「そうかな? 作った事無いってだけで、才能が無いわけじゃないと思うけど」
千早「そうかしら……」
春香「そうだよ! ……んー……、なんなら、今やってみる?」
千早「えっ?」
下唇に人差し指を当て、しばし言いよどんだ後、意を決したかのように提案をしてくる春香。
そのあまりに突然の言葉に、思わず素っ頓狂な声が出る。
千早「そ、そんな……、材料とか無いし……」
春香「今から買ってくれば間に合うよっ。 それに、オーブントースター給湯室に置くようになったし!」
チラと時計を見る。 ただいまの時刻は10時半。
春香は二時間近く気絶していたということになる。
目覚める少し前まで、私が膝枕していたことを、春香は知らないけど。
千早「私には無理よ…」
春香「だいじょーぶ! 春香先生が居るからには、失敗はあり得ません!」ドヤッ
春香「だから……ねっ? 試しにやってみよ?」
千早「春香……」
春香「それに、今皆にもあげるつもりだったクッキーも食べちゃったし!」
春香「皆に作ってあげたら、きっと喜ぶと思うよ?」
千早「皆が……。 ……私、作ってみる!」
春香「やったぁ! じゃあ頑張ってつくろー!」
千早「精一杯、頑張るわ!」
・ ・ ・ ・ ・
春香「さぁ始まりました! 天海春香」
千早「き、如月千早の」
春香・千早「ゲロゲロキッチーン!!」
千早「(これ必要あったかしら……)」
春香「さて、まずは必要な材料から! 千早ちゃん!」
千早「え、えーと、薄力粉ととグラニュー糖、卵とバターね」
春香「いえす! 今回は千早ちゃんが居るし、比較的簡単なクッキーを作っちゃうぞっ☆」
千早「(春香のキャラがいつもよりおかしい……)」
春香「まずはバターだよっ! 塊をヘラで潰しながらほぐしてください!」
千早「わ、解っ「あーっ!!しまったー!!」え!?」
春香「なんて事だ! 私としたことが忘れてしまっていた!!」
千早「え、なになになんなの!?」
春香「これには下準備が必要なんだよ……!! 千早ちゃんとクッキー作るのが楽しみすぎて忘れてた……っ!」
千早「え、ということは、もう後戻りできないって事?」サァー
春香「いや、出来るよ?」サラッ
千早「…………は?」
春香「千早ちゃん何言ってんの? 作れないなんて一言も言ってないよー」ヘラヘラ
千早「……くっ!!!(腹立つ!)」
春香「因みに下準備は、薄力粉をふるっておくのと、バターを室温にしておくって事でーす♪」
千早「あ、そうだったの……」
春香「ほぐせれてるみたいだから良いけど、もしバターが堅すぎたら人肌程度のお湯で湯煎すると良いよっ♪
千早「成る程、崩してしまっても挽回出来るのね」
春香「そういうこと! ではそのバターを泡立て器で泡立てるよー!!!!!∩(>ヮ<)q」
千早「きゃっ、春香! いきなり大声出さないでっ」
春香「えへへ、ごめんごめん。 因みに春香さんは機械の泡立て器は認めないので人力で泡立てます!」
千早「え…、どうして? 便利で良いじゃない」
春香「便利だけで…、人が救えると思うなぁ!!!」ダァン
千早「人って…………」
春香「機械の泡立て器は悪魔だよ! 初めて使ったときはもう恐ろしすぎて出来なかったバク転が出来るようになったね!」
千早「そうなの……」
春香「聞けよ!!! そこは何があったの? って聞けよ!!!!」
千早「いや、詮索するのも悪いかと思って……」
春香「優しい……っ! 千早ちゃん超優しい! けど春香さん構ってちゃんだから聞いて欲しいなぁー!!」
千早「……じゃあ、何があったの?」
春香「えー?? それ聞いちゃうー??? まぁ、どうしてもって言うなら話すけどーぉ↑↑」
千早「…………」ビキッ
春香「あ、すいませんホントすいませんマジ調子乗ってましたゆるしてくだしあ」
千早「……ふぅ、それで、何でなの?」
春香「え? 特に何も無いけど? ただなんとなく機械使わないだけ」
千早「………ぬぁあぁ!!」ッダーン
春香「あぁ! 今まで耐えてた千早ちゃんが遂に台バンを!!!」
千早「もう! いい加減!! 作業に戻りましょう!!!」
春香「えー? 千早ちゃん面白いしもう少しやろうよー」
千早「……………春香?」ビキビキッ
春香「え、えっとー! まず泡立て器ですり混ぜてクリーム状にしまーす!!」アセアセ
春香「そしたら、グラニュー糖を2回に分けて加えて混ぜまーす!! 多少ザラツキが残っても全然大丈夫ですよー!」
千早「へぇ……、これで甘くなるのね?」
春香「うんそうだよ!(うわぁー、すっごく単純な事聞いてくる千早ちゃんデラ可愛いぞなもし)」
春香「あっ、そうだ! 千早ちゃん、卵二つ、卵黄と卵白に分けてくれる?」
千早「えっ……? 卵は卵じゃないの?」
春香「えっ」
千早「えっ」
春香「え……っと、卵って透明の所と黄色いところあるよね?」
千早「そうね、言われてみれば」
春香「言われてみれば!? ……ま、まぁ、その透明のとこと黄色いとこで分けて欲しいなーって」
千早「解った、やってみるわ?」
春香「解らないことがあったらいつでも言ってね!!」
千早「卵ってどうやって割るのかしら」
春香「……ん゛ん゛ん゛!??!?!??!??!」
千早「…………?」
春香「え? 何かおかしいこと言った? って感じの表情やめて! 首傾げるの超可愛い!」
千早「卵が割るもの、って言うのは知ってるんだけど、どうやって割るのか知らないの」
春香「な、成る程……! そういう時、あるよね! 答え知ってるけど過程知らないってやつ!」
千早「えぇ、だから教えてくれると助かるのだけど……」
春香「おっけ! 春香先生にまっかせなさい! まずは卵を机に向けて軽く叩いてみて!」
千早「ぜい!!」グッシャアアァア
春香「おいィイィイィイィ!? 軽くって言ったでしょうが!!」
千早「春香、この卵弱いわ!」
春香「鶏の産んだ卵に強いも弱いも無いよ!! そんな力で叩きつけたら割れるに決まってるよメーン!?」
千早「この前我那覇さんと出演した動物番組で見た卵は、もっと大きくて強かったわ!」
春香「あれダチョウの卵だからぁ!! だから今頭に「鶏の」って付けたでしょーが!!!」
千早「む……、もっと弱い力で叩きつければ良いのね」
春香「うんもっと弱い力って所は正解だけど、叩きつけるってのは春香さん不正解だと思うなぁ」
千早「…はっ」グッシャァ
春香「やっぱりねー!!」
千早「さっきよりも弱い力で叩きつけたのに…。 さっきの卵よりこの卵の方が弱いのね」
春香「千早ちゃーん!! 話聞いてるー!? 聞いてないかアハハー!」
〜〜5分後〜〜
千早「やっと割れたわ……!! 春香、割れたわ!!」
春香「うん、ある意味今まで割りまくってたんだけど、ちゃんと割れたね!!」
千早「これをもう一つ割らなきゃいけないのね……」
春香「んんー、そうしたかったんだけど、これだけで良いよ」
千早「えっ、そうなの?」
春香「うん、一応卵白も一緒にすれば一個で事足りるから。 それに……」
千早「それに?」
春香「もう、卵無いしね……」
千早「あぁ、成る程……。 それじゃあ仕方ないわね、やっぱりもっと買っておくべきだったのよ」
春香「あれぇー……? なんで私がダメみたいになってるんだろう…、確実におかしい……」
千早「それで、この後はどうするの?」
春香「あ、うん。 まず卵を溶いて、ゆっくりと加えながらヘラで混ぜ合わせるんだよ」
千早「卵を溶くのね、納豆と同じ要領でかき混ぜればいいのよね?」
春香「多分、大体の人が歩んできた、溶くものの順序が逆だと思うんだけど、それで良いよ!!」
千早「………っ、出来たわ!!」
春香「うん、ありがと!(卵溶けただけなのに満面の笑顔の千早ちゃんオメガ可愛いわぃー)」
春香「よしっ、溶き卵を加えながらヘラで混ぜ合わせて、最後に薄力粉を投入しまーす!」
千早「……この後はどうすれば良いの?」
春香「ん? 後は粉っぽさが無くなるまで混ぜれば殆ど完成だよー!」
千早「そうなの!? まだ只の黄色いどちゃどちゃにしか見えないんだけど……」
春香「どちゃどちゃってまた新しい擬音だね! 大丈夫だよー、焼けばすぐクッキーの完成だから!!」
千早「へぇ……、まるで魔法みたいね」
春香「えへへ、それだったら私は美少女魔法使いのまじかる☆ハルルンかなっ? なんちゃって!」
千早「………………ふふっ」
春香「めっちゃくちゃ嘲笑されたよ今!!!」
千早「いや、だって、ねぇ?」
春香「凄い目が冷ややか! まるでブレイクして加速度的に人気を博したものの、すぐに消える芸人を見ているかのよう!」
千早「まじかる☆ハルルンって……、無いわ……」
春香「そこまで言う!? 流石に私もキツイかなーって思ったけど、そこまで言う!?」
千早「まじかる☆ハルルンって……、星付ける? 普通」
春香「まだ追い討ちかけやがる超ひでぇ!!! しかもキャラ変わっちゃってるよ!!」
春香「もういいもん! とりあえずこれで生地は完成だから、スプーンとかで掬って幾つかに分けていくよ!」
春香「それで、その掬ったのをオーブンシートを敷いた天板に乗せていってね!!」
千早「これくらいなら私にも出来そうね……」
春香「うんそれフラグだからやめよう?」
千早「……ふんっ!」ッドチャ
春香「なんでヘラでやるのおぉおぉおぉ!? スプーンって言ったじゃん!」
千早「で、でも春香! 天板に乗ったわよ!!」
春香「そういうのじゃ無ぇからコレぇ!!!!」
千早「春香……、私たちアイドルなんだし、もう少し慎みを持ったほうが良いと思うわ」
春香「だからなんで私が悪いみたいになってるのかなぁ!?」
〜〜7分後〜〜
千早「……よしっ、これで最後ね」
春香「長く苦しい戦いだったと言わざるを得ないよ……」
千早「これで、焼くのよね?」
春香「うん、180度くらいで13分ほど焼けば完成だよっ!」
千早「えぇっ!? 180度も!? …溶けてしまわないの?」
春香「あはは、大丈夫だよ〜(千早ちゃんプロミネンス可愛すぎて私が溶けそうズラ)」
千早「凄いのね……」
春香「じゃあクッキー焼いていくよーっ」
〜〜三分経過〜〜
千早「…………」ソワソワ
春香「乙女よ〜♪ 大志をいだっけ〜〜♪」ペラペラ
千早「……春香?」
春香「テスートはチャット〜……♪ ん、どうかしたの?」
千早「雑誌読んでるみたいだけど、大丈夫なの?」
春香「あはは、そう簡単には出来ないよ〜」
千早「でも、もし何かあったら……」ハラハラ
春香「じゃあ、千早ちゃんが見守ってくれたら安心かな?」
千早「私が……? ……よし、頑張るわ!」
春香「うん、頑張ってね!(握りこぶし作って意気込む千早ちゃんギャラクシー可愛いよぉ)」
〜〜六分経過〜〜
千早「…………」ジー
春香(ふふ、凄い真剣に見てる。 可愛いなぁ〜…)
千早「! 春香! 大変よ!」
春香「え!? おかしいな、ミスは無かったハズ…。 どうかしたの?」
千早「クッキーが…! 茶色くなったわ!!」
春香「」
千早「どうしましょう…! きっと熱さでおかしくなってしまったのよ……!」
春香「あ、あの、千早ちゃん」
千早「冷やした方が良いのかしら…!」
春香「千早ちゃ……」
千早「いいえ、下手に開けたらクッキーがどうなるか解らないわ……!!」
春香「ちは」
千早「熱さに負けないように、応援歌でも歌ったほうが良いかしら……!?」
春香(もうこのままで良いや)
〜〜十分経過〜〜
千早「………………」ソワソワ
春香(もうずっとオーブンの前をうろうろしてる……)
千早「……ん………」
春香(あ、覗き込んでる。 もうちょっとだから頑張って〜)
千早「くっ………」
春香(開けたい気持ちをくっと堪えて眉根寄せる千早ちゃん可愛い)
千早「んんっ……コホン、スウィーッドーナッ♪ 甘い声に誘われていく〜♪」
春香「(歌で自分を誤魔化しに入った! でもその曲クッキーじゃなくてドーナッツだよ!!)」
千早「スウィーッドーナッ↓♪ やっぱり焦げたハート〜↓♪」
春香(若干テノール気味なのはなんでなんだろう! 曲にしては低くないかな!?)
千早「……って焦げちゃダメじゃない」
春香(セルフ突っ込み……!! 千早ちゃん、何時の間にそんな技を……!)
千早「焦げちゃ……ふふっ…ダメじゃない……ぷくくっ…」
春香(自分でツボに入ってるーーー!! 千早ちゃんの琴線に触れたんだね!!)
千早「………言うほど面白くないわね」
春香「ちゃうんかーーーーい!!!!」
千早「!?」
〜〜十三分経過〜〜
ピピピピ ピピピピ
千早「!!!!!!」
春香「あっ、焼けたみたいだねっ」
千早「はっ、春香っ。 私開けたい……!」
春香「良いよー、熱いからちゃんとミトンつけてね!」
千早「う、うん……!」
ガシャァ
千早「…………」
春香「うーん、良い焼き上がり♪ ちゃんと完成したねっ♪」サクッ
千早「…………」
春香「……うん、味も良い感じ♪ アクセントにお塩入れても良かったんだけど、要らなかったねっ」
千早「…………」
春香「…千早ちゃん、どうかした?」
千早「…本当に完成したわ」
春香「へっ?」
千早「本当にクッキーが完成したわ……、さっきまで黄色いどちゃどちゃだったのに……」
春香「まだどちゃどちゃ引っ張るんだ……」
千早「春香って、本当に魔法使いだったのね………!」キラキラ
春香「えへへ、そうかな? レシピ通りに作っただけだよー」
千早「いいえ、料理の出来ない私でも作れたのだもの、春香は魔法使いよ」
春香「……ん、ありがと! でも、これは千早ちゃんが頑張ったからだよ!」
千早「…そうかしら、私一人じゃ作れなかったし、やっぱり春香が凄いからよ」
春香「そんな事ないよ! 千早ちゃんが頑張らなかったら、こんなに美味しそうなクッキーできなかったよ!」
千早「春香…、ありがとう!」
春香「お礼は、皆に美味しいって言ってもらってからだよっ!」
千早「えぇ! 春香と一緒に作ったのだもの、美味しくないハズ無いわ!」
春香「うん♪ さて……、では! 今回のゲロゲロキッチン、完成した料理は!?」
千早「えっ、あっ、ち、【千早と春香の友情魔法のクッキー】です!」
春香「……えへへっ♪」
千早「……うふふっ」
ガチャッ タダイマモドリマシター
春香「あっ、プロデューサーさんの声! 千早ちゃん、早く持っていこ!」
千早「えぇ!」
おしまい
千早「でもまじかる☆ハルルンは無いと思うわ」
春香「まだ引っ張んのかよソレぇ!!!!!!!!!!!」
ほんとうにおしまい
これにておしまいです、ここまでお付き合い下さりどうも有難う御座いました。
はるちはわっほいはるちはわっほい!
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