春香「プロデューサーさんっ! 野球ですよ、野球!」 (200)

伊織「野球対決?」

やよい「ですか?」

P「ああ。来月に、765プロのみんなで野球の試合をやることになった」

響「なんでまた、野球なの?」

P「この前の番組で、春香が女子高校野球の選手と対戦しただろう?」

美希「ああ…あの、春香がマグレでホームラン打ったやつ」

春香「マグレじゃないよ!」

千早「相手は女子高校野球で全国大会優勝した投手だったわよね? マグレでしょう」

真美「絶対マグレだよ」

春香「もう、なんでっ!?」

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亜美「で、なんで試合なんてやることになったの?」

高木「その番組の時の天海君のバッティングを見て、ディレクターがティンと来たらしい」

律子「社長」

高木「彼は野球好きでな…是非とも、アイドルが野球の試合をする姿を見てみたいんだそうだ」

律子「見たいんだそうだって…そんなんで決めちゃっていいんですか」

高木「そんなものだ」

律子「それに、試合するには相手がいなきゃでしょう?」

P「それなら、もう決まってる。例の番組で春香と勝負した投手のところのチームだ。あちらもあれでは納得出来なかったらしくて、快く承諾してくれたんだと」

あずさ「あら? ということは、お相手さんは、その子のチームなんでしょうか?」

P「ええ、そうですね」

真「女子高校野球で全国大会優勝した投手…なんですよね? そのチームが相手ってことは…」

P「まぁ…そうなるな」

律子「ぜ、全国大会優勝チームが相手…? こっちはみんな素人ですよ…?」

雪歩「メ、メタメタのボロボロにされちゃうに決まってますよぉ…」

高木「その点は心配しないでくれたまえ、こっち側にはハンデがつくことになっている」

貴音「はんで…とは?」

高木「攻撃では、こっちは満塁の状態でスタート。守備では、相手は2アウトからスタートになる」

P「こっちは1本でも打てば得点、1アウトでも取ればチェンジってわけだ」

真美「でかいんだか小さいんだかよくわかんないね」

伊織「守備は少なく、私達の打席数は変わらないってわけね」

P「露骨に点差つけるよりは、こういう形にした方がいいってさ」

真「うーん…まぁ、仕方ないのかな。相手は本職だし…やらせはもっと嫌だし」

やよい「はんでって、どういう意味ですか?」

高木「それと…みんな、着いてきたまえ。移動するぞ」

春香「?」

バーン

やよい「わ、野球のグラウンド!」

春香「どうしたんですか、これ!?」

高木「ふふ、私の知り合いが球場を持っていてな。期間中、貸してもらったのだ!」

P「本番まで、練習場として好きに使ってくれていいそうだ」

真「練習場かぁ、ここで特訓ですねっ!」

春香「なんか、熱血って感じです! う~、燃えてきました!」

響「よしっ、それなら本番で勝てるようにみっちり練習だな!」

律子「みっちりって、そんな時間ないわよ。本分を考えなさい」

響「ありゃ」ガクッ

亜美「えー? せっかく借りたのにー?」

伊織「ま、仕事を蔑ろにするわけにはいかないものね」

千早「歌の時間がなくなるのは、ちょっと」

P「まぁまぁ、今日はみんな予定を入れてないから思う存分練習できるぞ!」

美希「ねぇねぇ。野球のトックンとか、やらなきゃダメかな? 疲れそうだし、いつもの仕事の方がみんな喜ぶって思うな」

P「…俺はどんな仕事でも頑張る美希の方が好きだぞ」

美希「そうなの? ハ…プロデューサーがそう言うなら、ちょっとくらい頑張ってみてもいいカモ」

高木「そこに道具を用意してある。とりあえず、遊び感覚でいいからやってみてくれたまえ」

春香「はいっ、了解です!」

P「みんな一応、本番までにバットを振れるよう、あとキャッチボールくらいは出来るようにしておいてくれ」

雪歩「じ、自信ないです…」

やよい「大丈夫ですよ雪歩さん! 野球のことなら私に任せてください!」

真「そういえば、やよいって弟達と野球やってるんだっけ?」

やよい「はい! 最近は、たまに弟達と一緒に草野球にも混ぜてもらってたりして!」

あずさ「それじゃ、今日はやよいちゃんがみんなの先生ね~」

やよい「えへへ…がんばります!」

やよい「じゃあ、まずはみんなでキャッチボールしましょう!」

春香「はいっ、やよい先生! なんちゃって」

真美「そんじゃまずはグローブ持ってこよー!!」

律子「…あれ? もしかして、私も…やるんですかね?」

高木「いや、律子君には監督をやってもらうことになった」

律子「え!? わ、私が監督…?」

P「へぇ、律子が監督やるのか」

律子「聞いてないんですけど?」

高木「ああ、今初めて言ったからな」

律子「本人のいないところで、そういうこと勝手に決めないでくださいよ…」

高木「おや。では別の人に頼むかね? 彼とか…」

律子「やりますよ。誰もやらないなんて言ってないでしょう。まったく…」

P(ほっ…)

真美「よっしゃー! 行くぜー!」ポンッ

やよい「真美! 真美のグローブはこっちだよ!」

真美「え? グローブって利き手じゃない方につけんの?」

亜美「ちょっと待って、これ両手につければ無敵じゃない…!?」

春香「どうやって投げるつもりなの」

ゴソゴソ

貴音「はて? これは…なんでしょうか?」

真「それは、キャッチャーミットだね。キャッチャーが使うグローブだ」

貴音「ふむ」

響「たかね、キャッチャーやってみたいの?」

貴音「きゃっちゃぁ…というのはよくわかりませんが、この形は少し気に入りました」

やよい「えっと、受ける人は、グローブを胸のあたりに持っていってー」スッ

雪歩「は、はい」スッ

やよい「投げる人は、できるだけ前の方でボールを放してください」シュッ

雪歩「わわ…!」

ポロッ

雪歩「あ…! ご、ごめんなさいぃ…」

やよい「だいじょーぶです! 最初のうちは捕れなくても、後で捕れるようになればいいかも」

やよい「とにかく、ボールに慣れてください! この球は当たってもあんまり痛くないですから!」

雪歩「ボールに、慣れる…」

真美「えいやー!」ポンッ

亜美「なんの!」パシッ

P「お、なかなかいい球投げるじゃないか」

律子「コントロールも意外に悪くないですね」

響「うりゃ!!」ビシュ

パシッ

真「おっと…! 響、やよいが言ってただろ、もっと前!」ヒュッ

P「あの二人はちょっと鍛えればすぐにでも使えそうだな」

律子「ですね、元々運動神経はある方ですから」

千早「んっ」ヒュン

美希「よっと」パシッ

P「お、美希。いい動きしてるじゃないか」

美希「えっ、そう? あはっ、ちょっとイイトコ見せちゃおっかな!」ヒュン!

千早「きゃ…!」パシッ

律子「この二人は、飲み込みが早いわね…ふむふむ」

春香「前の方、前の方…えいっ!」ブンッ

ゴトッ!

伊織「ちょっと、前すぎよ! 地面にぶつかってるじゃない!」

春香「ご、ごめんごめん!」

春香「ふーっ…気を取り直して天海選手、第二球目を投げまし…たっ!?」ズルッ

ヒューン

伊織「ああもう、どこ投げてんのよ!」タタッ

春香「あ、あはは…」

P「うーん…」

律子「うーん…」

あずさ「そーれっ」ポーン

貴音「む…」ポロッ

律子「貴音、最初のうちは普通のグローブ使った方がいいんじゃないの?」

貴音「そうでしょうか…」

P「ま、始めてすぐ上手くできるわけでもないし…気長に、だな」

春香(こうして始まった、野球の練習)

春香(キャッチボールの次は、プロデューサーさんがノックをしてくれました)

春香(ポジションなんてわからないので、私達は自由な場所に位置取って受けています)

P「それ!」キン!!

パシッ

やよい「えいっ」ヒュッ

伊織「きゃっ!」ポコン

真「…上手いなぁ、やよい」

P「今の、よく捕れたな。まるで高校球児だ」

やよい「えへへ…その『こーこーきゅーじ』だったっておじさんに、ちょっとコツを教えてもらったんです!」

亜美「ありゃ? うあうあ~、トンネル~」スカッ

真美「わっ! 落としちゃった…」ポロッ

あずさ「あら…? どこに行っちゃったのかしら。ボールも迷子になるのね~」キョロキョロ

春香(流石に、キャッチボールとは勝手が違うようで。私達はエラーを連発…)

春香(でも、その中でもやっぱり違うのは、やよいと…)

真「それっ」パシッ

響「よし!」

美希「キャッチなの!」パシッ!

P「いいぞ!」

春香(真に響ちゃんに、美希。この三人は、すぐにボールを拾えるようになりました)

春香(特に美希。面倒とか言ってたのに、どういうわけかやる気マンマンです)

春香(それから、ピッチャーを決めるための、投球練習…)

亜美「えいさー!」ヒョイッ

パシ

真美「ほいさー!」ポイッ

パシ

亜美「亜美の方が速かったよ!」

真美「ええ? 真美の方が速いって!」

響「そりゃ!」ヒュッ

ゴォォッ

ズバッ!

貴音「む」ポロッ

真美「うおっ!?」

響「えっへへー、球投げるのは自分が1番速いね!」

貴音「ですが…制球はあまりよくありませんね」

響「自分の速球なら、コントロールなんてなくてもなんくるないさー!」

雪歩「えいっ…!」ポーン

ノロノロ

パスン

貴音「ないすぼぉる」

伊織「おっそ…」

やよい「でも、コントロールは結構いいですよ!」

律子「次、春香投げてみて」

春香(よーし、ここは思い切って…)グッ

春香「そりゃ…あぁぁっ!?」グラッ

ドンガラガッシャーン

ゴォッ!!

貴音「!?」

バッシィィィン!!

貴音「く…」

ポロッ

律子「ちょ…何、今の!?」

亜美「転びながら投げた…!?」

あずさ「あらあら。春香ちゃん、すごいボールね~」

春香「いたた…あれ? あの、どうかしました…?」

見たことあるな、リメイクかな?

春香(その日から、私達は仕事の合間に練習を重ね…)

春香(…ると言うわけにもなかなかいかなくて。野球のことなんて忘れてアイドルの仕事に忙殺される日が続きました)

春香(そして3日後の昼頃…私達は全員、練習場に呼び出されました)

千早「あの。今日はどうしたんですか?」

伊織「練習してないこと? 仕方ないでしょ、仕事が忙しいんだから」

P「いや、そういうわけじゃなくてだな…」

小鳥「今日はみんなに、お客さんが来てるの」

春香「あ、小鳥さん」

小鳥「もう、聞いたわよ! 私がいない間に面白そうな話進めちゃって!」

律子「はいはい。もういいでしょう、その話は」

美希「ハ…プロデューサー、お客さんって誰?」

P「例の試合の対戦相手の人だ」

春香「え、対戦相手…ですか?」

P「ああ。南第六高校…通称、南六高(なむこう)の選手だ」

>>16
そうです
前回は途中で投げてしまいましたが今回はちゃんと完結まで書き上げました

小鳥「どうぞ、筒井さん、新谷さん」

筒井「こんにちは」

春香「あっ! お久しぶりです!」

筒井「ええ…お久しぶり」

千早「彼女が、春香と勝負したという?」

小鳥「女子高校野球の全国優勝投手ね」

筒井「南六高の筒井です。よろしくお願いします」ペコ

あずさ「あらあら、ご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いします~」ペコ

新谷「そんでうちがキャプテンの新谷だにゃ」

亜美「にゃ、だって真美」

真美「変な喋り方だにゃー」

伊織「はぁ、ありがちなキャラ付けよね」

新谷「そこ、馬鹿にするにゃ!」

雪歩「あの、今日は何の御用で…?」

筒井「私達、対戦相手の765プロさんがどのような練習を行っているのか気になりまして」

筒井「今日は、見学させていただきたいと思っているのですが」

やよい「練習を、けんがくですか?」

響「それって、偵察ってことか!?」

亜美「ダメダメ! うちの秘密特訓を見せるわけにはいかないのだ!」

律子「へぇ、隠すほど凄いことやってるわけ?」

亜美「うぐ」

P「まぁ、そういうわけで見られて困るようなこともないので」

小鳥「どうぞ、こちらのベンチに」

筒井「どうも」ペコ

新谷「それじゃ、見せてもらうとするかにゃ」

グッ

響「うりゃ!!」ヒュン

貴音「ないすぼーる」パシッ

真「せーの…」

真「そら!」キンッ

やよい「よいしょっと」パシッ

やよい「はいっ」ポイッ

P「おお、なんとか形にはなってるじゃないか」

律子「とりあえず、ですけどね」

筒井「ふっ…」

新谷「はぁぁ~…」

小鳥「? あの、何か…」

筒井「いえ、失礼」

春香(その日は二回目の練習でしたが、見られているということもあって気合十分! みんないい感じで動けていました!)

春香(けど…)

律子「今日は、わざわざ来てくださってありがとうございました」

P「どうでした? うちのアイドル達は」

筒井「あの、悪いことは言いません」

P「へ?」

筒井「試合、中止にしてください。無駄ですよ、これじゃ」

真「は…? なんだって…?」

春香「ちょ、ちょっと!? 何を言いだすんですか!」

筒井「TV中継あるんですよね? 国民の皆さんは、アイドルの人達がボロボロにやられる姿なんて見たくはないと思いますけど」

新谷「だにゃ。こんなんじゃ、ハンデなんてあっても話にならんにゃ」

響「なんだお前達! 自分達のこと、馬鹿にしてるのか!?」

新谷「馬鹿にしてると言うか…」

筒井「この程度なら、例え毎回満塁だろうと1点も与えずに勝ちますよ。私達」

新谷「コールドとかないのかにゃ? 試合が終わらないにゃ」

小鳥「ちょ、ちょっと…」

筒井「失礼。あんまりな練習でしたので」

春香「あ、あんまりって…」

伊織「…ま、そう言われるのも仕方ないかもしれないけどね」

やよい「え? 伊織ちゃん…」

千早「本職の人から見れば私達のやっていることなんて、おままごとみたいなものなのでしょう」

春香「ち、千早ちゃんまで…」

美希「ミキ達はアイドルで、野球選手じゃないの」

新谷「にゃんだ、そっちにもわかってるのがいるんじゃにゃいか」

春香「で、でも!」

筒井「?」

春香「私、この前ホームラン打ちましたよ!」

筒井「ああ、あったわね。そんなことも…不本意だけど」

春香「もう一度、私と勝負してください! また、ホームラン打ってみせます!」

P「お、おい春香…落ち着け…」

律子「南六高さんは、今日は見学に来たんだから…」

筒井「私は構いませんよ。あのマグレのホームランのことを、いつまでも言われるのも不愉快ですので」

春香「…!!」

筒井「………」ギュッ

春香(自前のグローブを右手にはめた筒井さんが、整地し直したマウンドに立ちました)

真「サウスポーか…」

新谷「にゃはは」

貴音「あの方が、捕手ですか」

雪歩「なんか、動きが凄く慣れてる感じ…」

やよい「わたしたちとは、ぜんぜん違うみたい…」

筒井「………」ザッ ザッ

春香(筒井さんは私には目もくれず、自分が投げやすいように土を均しています)

春香「あの、守備は…」

筒井「いりません。フェアグラウンドに…いえ、前に飛ばせたらそちらの勝ちでいいです」

響「あったまくるなぁ、あいつ!」

美希「春香、ナメられてるの」

亜美「はるるん! そんなヤツやっちゃえやっちゃえー!」

真美「かっとばせー、はーるーるーん!」

筒井「………」スッ

春香(ワインドアップ…来る!)グッ

ズバン!!

春香「………え?」

雪歩「速…」

新谷「審判?」

小鳥「ス、ストライク…」

新谷「次」

筒井「………」ス…

バンッ!!

春香「…っ」ブルン

小鳥「ストライク…!」

真「ああ、ミットに収まってから振ってる…」

春香(なに、これ…こんなんだったっけ…?)

ズバァン!!

小鳥「ストライク! バッターアウト…!」

春香「あ、あれ…」

筒井「もしかしたら…と思ったけど」

筒井「やっぱり、まぐれだったみたいね」

筒井「これでわかった? あなた達には私の球は絶対に打てやしない」

春香「………」

律子「春香…」

筒井「もう一度言いますが、試合の話…恥を晒す前に断った方がいいですよ。それでは」ザッ

真「待て!」

筒井「…?」

真「ボクとも戦え! ボクが打ってやる!」

響「自分も! こんなの見せつけられて、黙ってられるか!」

やよい「え、えっと…わ、私もやります!」

新谷「どうする?」

筒井「…いいわ。全員相手しても」

春香(筒井さんの球は…想像以上でした)

春香(高い運動神経を持つ真も…)

小鳥「ストライク、バッターアウト!」

真「な…」

春香(響ちゃんも…)

小鳥「ストライク、バッターアウト!」

響「こ、こんなの…無理だ…」

春香(そして…)

ゴン!

筒井「!」

ガシャンッ

小鳥「ファール!」

やよい「は、はやいです~…」ビリビリ

亜美「あーっ、フェンス! 前に飛んでたら勝ちなのに!」

真美「でも、当てた! すごい、やよいっち!」

やよい「もういっかい!」サッ

筒井「………」ヒュッ

ポーン

やよい「わっ!?」グラッ

新谷「にゃ」パシッ

小鳥「ストライク! バッターアウト!」

やよい「あぅ…」

雪歩「や、やよいちゃん、どうして…? あんな遅い球なのに…」

P「チェンジアップだ…あのストレートに混ぜられたらリズムが狂わされるぞ」

春香(唯一の経験者であるやよいも、所詮は草野球レベル…まるで歯が立ちませんでした)

新谷「チェンジアップまで使う必要あったかにゃ?」

筒井「…直球だけ見せて、勝てると勘違いされても困るわ」

真美「やよいっちまで…」

あずさ「すごく速かったわね…見えなくなっちゃいそう」

貴音「よもや、ここまでとは…」

亜美「うぅぅぅぅ…!」

小鳥「亜美ちゃん…」

春香「あ、あのさ! 今回は、負けたかもしれないけど…」

千早「まぁ…仕方ないでしょう」

伊織「そうね。こんなものよ」

雪歩「こんなの、無理だよ…」

美希「あふぅ」

春香「え…ちょ、ちょっと何言ってるのみんな」

律子「………無理、ですかね」

春香「え…」

律子「やはり、企画自体が無謀だったんですよ。断りましょう」

P「………そう、だな…」

春香「り、律子さんやプロデューサーさんまで…」

筒井「中止ですか。賢明な判断だと思います」

春香「ま、待ってください! 試合までは、まだ時間が…」

律子「春香、周りを見て」

春香「え…」

ズーン…

春香「み、みんな…」

律子「春香。あなた達はアイドルよ、野球選手じゃない」

律子「いくらハンデがあろうと、野球で勝つことなんて…最初から、不可能だったのよ」

春香「そ、そんなことないですよ! ねぇ、みんな!」

シーン…

春香「みんな…」

P「春香…」

筒井「ま…これで、もやもやしてた気分も少しは晴れたわ。わざわざ試合するまでもないわね」

春香「ま、待ってよ…」

筒井「あなた、まだわからないの?」

筒井「私は、最高の球を投げられるよう、毎日血が滲むような努力をしているのよ」

筒井「あなた達のような、バットもまともに握ったこともないような人に負けるわけがないわ」

春香「わ、私は…!」

千早「春香、もういいでしょう」グイッ

春香「千早ちゃん、放して!」

千早「彼女の言い方はあるかもしれないけど、本職の人に勝てなかったくらいでそんな…」

筒井「まぁ、あなた達のように大した努力もしてこなかった連中にはわからない感覚でしょうけど」

千早「……………」

千早「…………はい?」

新谷「アイドルは可愛けりゃみんなにちやほやされてるから楽だにゃー」

伊織「…なんですって?」

筒井「それでは。まぁ、何かの縁ですし今後はテレビの前で応援していますよ」

伊織「待ちなさい」

新谷「にゃ?」

伊織「アンタ達、今なんつった?」

新谷「にゃにって…」

千早「ちょっと水瀬さん。これくらいで腹を立てていては駄目よ」

千早「えぇ。謂れのないことで貶されたくらいで、腹を立てたりしては…」ゴゴゴゴ

筒井「…なにか?」

美希「やっぱ、試合やる? みんな」

新谷「へ?」

貴音「ええ。その方がよろしいようですね」

雪歩「私も…今のは、流石に聞き逃せないよ…」

あずさ「うん。そうね…やりましょ」

新谷「な、なんにゃこいつら…いきなりやる気出して…」

筒井「人の忠告は、大人しく受け取っておくものよ?」

響「ヘン、だーれがそんなん聞くか!」

筒井「私達に勝てるつもり? そんな体たらくで」

真「今は無理だよ。でも、必ず勝ってみせるさ」

筒井「口だけではなんとでも言えるわ」

やよい「口だけじゃないです! 765プロは負けません!」

新谷「ふーん。まぁ、それだけやる気あるなら、ハンデでちょっとはいい試合になるんじゃにゃいか?」

伊織「ハンデ? ねぇ、今ハンデとか聞こえたんだけど?」

亜美「別にいらないんじゃん?」

筒井「何…?」

千早「そうね、ハンデなんて必要ないわ」

律子「え」

美希「ミキ達、フツーに戦ってフツーに勝つよ」

筒井「…後悔するわよ」

春香(そう言い残して、筒井さん達は帰っていきました)

美希「と…いうわけなの」

P「お、お前らなぁ…」

真美「いいじゃん! あいつらスッゴイむかつくし、パンダなんかで勝っても嬉しくないよ!」

真「ハンデね」

亜美「そーだそーだ! 765プロの恐ろちさを見せてやる!!」

律子「まぁ、みんなが怒るのも無理はないですね」

小鳥「ええ、まぁ。あの言葉は、ちょっと…」

P「しかし…仕事もあるし、練習時間は限られてる。必死になって練習しても勝てるのか…?」

貴音「試合まで一ヶ月…時間は充分にありますよ」

P「は…まさか、お前達…」

春香「律子さん、プロデューサーさん! 試合までの仕事、全部キャンセルしてください!」

P「おいおい、何言ってるんだ!」

律子「そんなこと、できるわけないでしょ!!」

伊織「私からも頼むわ、律子。このままじゃちょーっとおさまりがつきそうにないのよね…」

響「うがー! あいつら、絶対に倒す!」

律子「私だってあの子達は頭に来たけど、そんなこと言われても…」

高木「いいじゃないか」

小鳥「しゃ、社長!? いつの間に」

高木「やる気があるというのは素晴らしいことだ。彼女達が燃えているのなら、それをサポートするのが我々ではないかね!?」

律子「え、えぇ…?」

高木「諸君、仕事に関しては私がなんとかしておこう! だから気にするな!」

P「しゃ、社長まで…」

春香「ありがとうございます! よーし、みんな練習しようっ!!」

律子「あーもう、頭が痛い…」

律子「それじゃ、まずは基礎技術から! 基礎がないと何も身に付かないわよ!」

「「「はいっ!!」」」

P「本当にやる気だな、律子」

律子「もうヤケクソですよ! 勝つつもりなら徹底的にやらないと!」

春香「走り込みとか、したほうがいいですか?」

律子「必要ない! あんた達は体力は充分ついてるでしょう! 目にもの見せてやりなさい!」

春香(こうして、この日から私たちの猛特訓が始まりました!)

春香(765プロの1ヶ月の予定はひたすら野球の練習で埋まることになり、芸能界で大きな亀裂や反発を生むかと思いましたが…)

春香(高木社長の人柄と、この企画の担当ディレクターさんが結構偉い人だったのと、「また765プロか」との声で案外何事もなく収まり…)

春香(こうして、火が点いた私達は真剣に練習に取り組むようになりました!)

雪歩「っとと…」パシッ

雪歩「そ、それっ!」ポンッ

やよい「いい感じです、雪歩さん!」パシ

P「お、雪歩はもうあんな球も捕って投げ返せるのか」

律子「ええ、まだまだ不安なところはありますけど日に日に上達が目に見えますね」

響「うりゃぁ!」シュッ

ヒュン!!

貴音「ないすぼぉる」バシィ!

真「おっ、いいフォームだね響!」

響「ああ! 帰ってからもビデオとか本とか読んで研究してるんだ!」

亜美「ひびきんが本を読むなんて…」

真美「こりゃ本気ですな!」

響「なんだよー! 自分、本は結構読むぞ!?」

貴音「響、少々気づいたことが」

響「なに、たかね?」

貴音「…響は先程からずっと投げ込んでいます。休みがてら、あちらで話し合いましょう」

響「ん、わかった」

真美「よーし、真美達は遠足だ!」

真「遠投ね」

亜美「んっふっふー。ちょっとずつ距離を広げて、最終的には端から端まで投げられるようになるのだー!」

真「ふふっ、ボクも負けてられないな…」ブンッ

千早「はぁ、水瀬さんったら強引ね…せっかく、高槻さんとキャッチボールをしていたのに…」

伊織「いいから、さっさと投げる」

バシッ!

伊織「ちょっと千早、もっと高めに投げなさいよ」

千早「ごめんなさい。水瀬さんなら、これくらい捕れると思ったのだけれど」

伊織「この…」シュッ

千早「…!」サッ

パシィ!

千早「…ええ、その調子よ水瀬さん。送球が足下に来た時の…練習になるわ!」

パンッ

伊織「上等、とことん付き合ってやるわ…」

P「そりゃ!」ポイッ

カッキーン!!

P「うお…またか…」

美希「ねぇねぇ、ミキ凄い?」

P「あ、ああ…凄いぞ美希」

美希「えへへ、それじゃもっと打つね!」

ヒュルルルル…

パシッ

あずさ「うふふ。きゃっ~ち、とっ」

P「え!? なんであずささんがあんなところに!?」

美希「あずさ! そこ守るトコとゼンゼン違うって思うな!」

あずさ「ごめんなさい、時々わからなくなっちゃって~」

P「いえ、でも今のはファインプレーですよ!」

美希「むー…」

春香(また、練習で仕事が空いてしまった分ですが…)

『アイドル達の練習風景を見に行こう! 練習場は入場無料!』

『765プロのアイドル達が、野球!? 前売りチケット好評発売中! ~月~日、プレイボール!』

ガヤガヤ…

真「そらっ!」パシッ

「おお、あれを捕るか!」

「キャー! 真クン、凄ーい!!」

「飲み物はいかがですかー!」

「765プロのグッズ販売中でーす! 今だけの特別野球仕様でーす!」

春香(なんと、練習する私達を使って、広告を出したり出店を出したりして儲けを出していました! 社長、ああ見えて結構抜かりないです…)

ジーッ…

響「わ、中継してるぞ」

律子「カメラが回ってるのなんていつもと同じでしょ、気にせず練習練習!」

春香(そして、私達の練習風景はTV局のカメラ中継からお茶の間に流れたりもしちゃって…)

「なぁ、765プロのアイドル達が野球するんだって」

「えぇ? アイドルがスポーツなんてできるのかぁ?」

「それがさ。練習してるとこ見に行ったんだけど、みんな結構いい動きしてるんだよ」

「ねーねー、~日の野球の試合どうする? なんか、765プロの娘が出るらしいんだけど」

「響ちゃんがピッチャーなの? 野球はよく知らないけど、見に行こうかな!」

「相手どこ? 南第六高校? 知らないなぁ…」

「あっ、ここ女子高校野球で全国優勝したチームじゃないか! 勝てるのか!?」

「あのやる気、本気で勝つ気なんだろうな」

「野球は中継でしか見ないけど…これは生で見てみたいぞ!」

春香(前売りチケットは、なんと完売!)

春香(チケット代、広告料、他諸々で、仕事を休んだ分…いえ、それ以上の利益を叩き出したのです!)

春香(そして本番が近づくにつれ、私たちも練習の成果が出てきました)

響「ふっ!」ヒュン

パシィン!!

貴音「いい感じです、響。制球も定まっておりますね」

響「この一ヶ月、徹底的に鍛えたからな!」

春香(先発バッテリーはこの二人で決定でしょう。みんなそれがベストだと思ってます)

真「やよい!」トス

やよい「はいっ」パシッ

ヒョイッ

春香(真とやよいのコンビネーションは、本職の野球選手と比べても遜色ないくらいにまで仕上がりました。たぶん、二遊間はこの二人になると思います)

伊織「ほら、取ってみなさい!」シュッ

千早「もっと外でもいいわよ、水瀬さん」パシッ

美希「よっと」パァン!!

春香(千早ちゃん、美希、伊織の三人の捕球技術はかなり高くなってます。残りの内野手はここから選ばれるかも)

真美「はーっ、はーっ、はーっ…うおー、いくぞー…」フラフラ

亜美「ぜーっ、ぜーっ…ま、まだまだー…」ヨロヨロ

春香(亜美と真美は、凄い運動量。後先考えず飛ばすからスタミナは少し不安だけど…)

あずさ「え~いっ」カッキーン!!

春香(あずささんは落ち着いていて安定したバッティングを見せています。反応が遅れて流し方向ばかりなのが気になりますが…)

雪歩「それっ」シュッ

コンッ!!

春香(雪歩は…最初があまり上手くなかった分、目覚ましい上達っぷりを見せました。コントロールは誰よりも正確で、あんな小さい的にも正確に当てられます)

春香(みんな、この短期間で凄く上手くなって…私も、負けていられません!)

春香「はっ!」パシッ

春香「えーいっ!」ヒュ

春香(そして激しい特訓の末…ついに、試合の日がやってきました…!)

ガヤガヤ…

ワー ワー

律子「球場は超満員ね…」

やよい「ま、まさか、ドームで試合できるなんて思いませんでした…」

春香「プロデューサーさんっ! ドームですよ、ドーム!」

春香「…って、あれ? プロデューサーさんは?」

律子「プロデューサーなら…」

『皆様、本日はご来場ありがとうございます!』

春香「あれ、このアナウンスの声は…」

小鳥『実況は私! 美人事務員として評判の765プロ、音無小鳥です!』

P『そして私は本日解説を勤めさせていただきます、同じく765プロのプロデューサーの…』

春香「ええっ!? 小鳥さんとプロデューサーさんが実況解説!?」

P『しかし、私達がやるとなると765プロ寄りの実況解説になってしまいそうですが』

小鳥『ディレクターにはそれでいいと言われてます。心配しないでください』

P『あえてか! 承知の上か!』

ハハ…

小鳥『ちなみに皆様もお聞きの通り、この放送は観客席全体に聞こえております』

P『実況解説が場内放送ってのも変な感じですね』

小鳥『いいじゃないですか、細かい事は! お祭りなんですから!』

P『そうですね、会場には野球を知らなくても来てくださった方も大勢いると思うので、楽しんでもらえるよう頑張りたいです』

小鳥『そして! そのついでに、私がウグイス嬢も兼任することになりました!』

P『小鳥だけに?』

小鳥『言うと思いましたよ!』

ハハハ…

真美「滑ってるね」

伊織「何やってんだか…」

律子「人件費の削減かしら、こんなところで…」

美希「なーんか、仲良さそう…」

ザッ…

律子「あ、ほら! 南六高が来たわよ」

伊織「見たことのない顔ばかりね」

律子「左から好打者松尾、俊足の日野、ゴールデンルーキーの赤場、イケメンの桐生、主砲の白馬…」

雪歩「な、なんか凄そうな響きですぅ…」

律子「ええ。南六高は全国優勝するだけあって、実力者揃いのチームよ」

あずさ「物知りですねぇ、律子さんは」

律子「そりゃ、監督ですから。相手のことは調べてありますよっ」

春香「南六高…!!」

真「絶対勝つ…!」

やよい「うっうー!! コテンパンにやっつけちゃいます!」

メラメラメラ…

新谷「うわ、あいつらめっちゃこっち睨んできてるにゃ」

松尾「筒井と新谷が挑発なんてするからでしょ、まったく」

白馬「………」ゴゴゴゴゴ

桐生「わー、ピンクのユニフォーム…派手だなぁ」

新谷「それにしても、この観客…気に入らないにゃー…」

赤場「なんでっすか? こんなにいっぱい見てくれる人がいるのに」

日野「そうそう、全国大会の決勝でもこんなに観客入らなかったよ!」

新谷「だから、気に入らないんだにゃ」

筒井「テレビに出てくるようなアイドルに比べれば、所詮私達は日陰者ってわけね」

新谷「筒井」

筒井「勝ちましょう、みんな。勝って今日ここに来たみんなに私達南六高の名前を覚えさせてやりましょう」

「「オォー!!」」

ワー ワー

小鳥「そろそろ、時間ですね…」

P「音無さん」

小鳥「なんですか? もうマイク入れないと」

P「これ、後日放送されるんですよね? いやぁ、ついに俺も地上波デビューか…」

小鳥『それでは、みなさんお待ちかね! 本日のオーダーを発表します!』

ワアアアアアアァァァァ!!

春香(さぁ、試合開始です!)

南六高(先攻)
8日野
9松尾
3灰賀
5白馬
2新谷
6桐生
4引出
7赤場
1筒井

765プロ(後攻)
1我那覇
7水瀬
6菊地
5星井
4高槻
2四条
3如月
9三浦
8双海亜美

パチパチパチパチ…

春香「あれ?」

真「勝つぞーっ、みんなっ!」

亜美「負けるわけないっしょー! あんなに練習頑張ったんだもんね!」

律子「んなわけないでしょ、相手は子供の時からずっと野球に打ち込んでるような連中よ! 向こうの方がよっぽど努力してるわよ!」

千早「まぁ…それはそうですよね」

律子「だけど、あんた達がアイドルとしての活動の中で培ったガッツ、根性、そして団結! これらは相手にも負けてないわ!」

響「うん!」

律子「相手が強くて当然! でも、あんた達も強くなった!」

貴音「ええ、皆一ヶ月前とは比べ物にならないほどに」

律子「それなら最後まで試合はわからない、それが野球よ! さぁ、みんな!」

「「「765プロ、ファイト…オーッ!!」」」

あずさ「さぁ、行きましょ~」

伊織「にひひっ、ほえ面かかせてやるわ」

やよい「うっうー! 頑張ります!!」

春香「あれ?」

雪歩「みんな、頑張って…!」

真美「負けたら認知しないかんねー!」

律子「こら、どこで覚えたそんな言葉! 承知でしょ!」

春香「? …?? ????」

小鳥『765プロのみんなが守備位置につきます!』

美希「うーん…」キョロキョロ

真「どうしたの、美希? 落ち着かないね。観客が多いのなんて慣れてるでしょ?」

美希「ねぇねぇ真クン、実況席ってドコ?」

真「心配しなくても、プロデューサーならちゃんと見てるよ」

美希「そういうことじゃないんだケド…ま、いっか」

貴音「こほん。では…」

貴音「しまっていこー」バッ

小鳥『くすっ…キャッチャーの貴音ちゃんが、みんなに声をかけています』

P「音無さん、打順打順」ヒソヒソ

小鳥「あ、そうでした」ヒソヒソ

小鳥『さぁ、1回表、南第六高校の攻撃! 最初のバッターは1番センター日野さん!』

日野「筒井さんが言ってましたよ」

貴音「?」

日野「1ヶ月で随分とサマになっているって」

貴音「それは、どうも」

小鳥『今、左打席に入り…プレイボールです!!』

審判「プレイボール!!」

ワァァァァァァァァ!!

日野「~♪」

律子「わかってるわね、みんな…この1番打者、絶対塁に出しちゃ駄目よ」

小鳥『日野さんは、春の全国大会では4試合でなんと…10盗塁!?』

P『出塁率を見るに、三盗…三塁への盗塁も狙わないと出ない数字ですね』

小鳥『また、ヒットの内訳を見てみると…その半分近くが内野安打!』

P『驚異的な足の速さを持っているようです』

春香「あれ? プロデューサーさん達の声が遠くなっちゃいましたね」

律子「インプレー中は客席以外には実況解説は聞こえないようになってるんでしょ。プレイに影響するから」

響「行くぞ…」スッ

小鳥『さぁ、ピッチャーの響ちゃん! まず一球目、足を上げて…』

響「はっ!」ビシュ

小鳥『投げました!』

ゴォォォ

貴音(甘い…)

日野「♪」スッ

カキン!!

小鳥『おっと、初球から振ってきた!』

P『プレイボール直後のコントロールが甘い球を狙ってきました』

テン テン

小鳥『打球はゴロとなって一二塁間を抜けようと…』

やよい「はいっ!」パシッ

日野「おっ!?」

小鳥『あっと、セカンドのやよいちゃんが追いつきました!』

響「よしっ!」

千早「ああ、高槻さん…! すごいわ…一生懸命でかわいい…」

やよい「それっ」ポンッ

P『軽快に捌き、一塁に送球。日野選手の足でもこれは楽々アウトですね』

響「へへっ、これで1アウト…」

テン テンテン

響「…へ?」

小鳥『いや、これは…ボールが一塁ファールグラウンドに転がっています!』

千早「………」ポワーン

小鳥『エラーです! 千早ちゃん、送球を捕れていません! 捕球エラー!』

P『何をやっているんだ如月!!』

千早「…?」

日野「よ、よーし…」タタタッ

小鳥『おっと、ランナー一塁を回り…』

貴音「と…」ヒョイッ

小鳥『二塁へ向かって飛び出しましたが、キャッチャーの貴音ちゃんが素早くカバーに入っています!』

真「貴音! こっち!」スッ

貴音「はい」グッ

日野「わっと!!」キキーッ

小鳥『二塁までは間に合わない! ランナー、慌てて一塁に戻ります!』

貴音「………」ス…

小鳥『貴音ちゃん、投げません。これでノーアウト一塁』

P『打球が強かったのと、四条がカバーに入るのが早かったのが救いですね。どちらかがなければ、楽々二塁に行かれてました』

小鳥『と言うか千早ちゃんがエラーしなければよかったのでは…』

P『ですね…まぁ、それは言っても仕方ないことです』

小鳥「って言うかプロデューサーさん、なんかみんなの呼び方が他人行儀じゃないですか?」ヒソヒソ

P「俺が堂々と名前で呼ぶわけにはいかないでしょう」ヒソヒソ

小鳥「それは…そうかもしれませんけど」ヒソヒソ

小鳥『さぁ、765プロ先頭打者を出し…』

審判「タイム!」

ゾロゾロ…

小鳥『おっと、タイムがかかりました!』

P『内野陣がマウンド上に集まっていますね』

真「ちょっと、千早! 何やってんのさ!」

響「せっかくアウト取れたのに…」

美希「やよいに見とれてエラーってどうかと思うな」

千早「別にそんなことはないのだけれど…」

貴音「面妖な」

千早「でも…ごめんなさい、高槻さんのせっかくの好プレーを台無しにしてしまって」

やよい「大丈夫ですよ、千早さん! 失敗は誰でもあります!」

千早「た、高槻しゃん…」

響「とにかく…次は頼むぞ?」

千早「ええ、同じ過ちは繰り返さないようにするわ」

ゾロゾロ…

小鳥『守備位置に戻ります。一体なんだったのでしょうか』

P『さぁ』

審判「プレイ!」

小鳥『さぁ、気を取り直しまして…』

松尾「セカンドがいい動きを見せたと思えばファーストが何もせずエラー…」

小鳥『南六高、続きましては2番ライト松尾さん!』

松尾「まったく、わけのわからないチームだなぁ…」ザッ

小鳥『彼女も左打席に入ります』

P『松尾選手は南六高では日野選手に次ぐ俊足で、打撃のセンスもなかなかのものを持っているそうです』

小鳥『日野選手が入ってくるまでは1番を打っていたようですね』

P『ですが、単純に足の速さで劣るから2番に下げられた…というわけではないと思いますよ』

小鳥『セオリー通りなら、ここはバントでしょうか?』

日野「………」ジリジリ

P『いえ…あのランナーならバントは考えなくてもいいですね』

響(絶対、走ってくるよね。律子が言ってたもん)チラッ

真「んっ」クイッ

響(うん、わかってる! 練習通りでしょ!)

貴音「………」スッ

グッ

小鳥『響ちゃん、セットポジションから…』

日野「♪」タッ

P『日野選手、やはり走ってきました』

響「はっ!」ビシュ

小鳥『そして投げ…あっと、これは!?』

松尾「ん!」

貴音「よし」スタッ

小鳥『貴音ちゃんが立っている、外してきました! ウエストです!』

P『完全に盗塁を読んでましたね』

日野「~♪」タタタタ

小鳥『…!? が、走っています! ランナー強攻策に出た!』

パシッ

貴音「ふっ」シュビッ

小鳥『貴音ちゃん、捕ってからのモーションが速い! これは刺せるか!?』

ズザザッ

小鳥『日野選手、足から滑り込む!』

真「アウトだ!」パシィ

小鳥『真ちゃんがボールを…受け取りざまタッチし、グラブを掲げてアピール!』

二塁審「セーフ!」

小鳥『ああっと、しかしセーフ! これがセーフです!』

P『我那覇のセットポジションに球速にウエスト、四条のモーションに肩、菊地の捕球にタッチ…どれも悪くはありませんでしたが…』

小鳥『しかし、それでも盗塁成功! なんという足! ランナーを褒めるしかありません!』

P『スコアリングポジション…シングルヒットでも1点取られる危険のある位置にランナーを置いてしまいました』

小鳥『こうなるとやっぱり、あの走者をエラーで塁に出したのは痛かったですね…』

P『まぁそれはまったくもってその通りなんですが、言っても仕方ないじゃないですか』

小鳥『さぁ、これでノーアウト二塁! どうする765プロ!』

響「くぅ…」チラッ

日野「へっへーん♪ 楽勝だね」

小鳥『あの足、もう一度走ってくると思いますか?』

P『恐らく、しないでしょう。わざわざ三塁に進まなくても、充分帰れますから』

響「ふっ!」ビシュ

キン!

小鳥『バッター松尾さん、打った!』

響「あっ!!」クルッ

松尾「越える!」タタッ

やよい「はわっ!」ピョイン

コォォォォ

小鳥『あああ! 打球が二塁の頭を越えます!』

トンッ

小鳥『落ちて、この位置は右中間抜ける! これは長打に…』

あずさ「よいしょっと」パシッ

松尾「えっ!?」

小鳥『ならない! 落下したすぐそこにあずささんが待っていました!』

松尾「な、なんでそんなところに…!?」

あずさ「やよいちゃん、そーれっ」ポーン

やよい「はい!」パシッ

日野「うわっと」キキーッ

小鳥『俊足の二塁ランナーも、これでは本塁までは突っ込めない! 三塁で止まりました! ノーアウト一、三塁!』

P『これは守備位置がよかったですよ。普通の守備位置なら、右中間抜けなくてもランナーは帰すところでした』

小鳥『あずささんは、どうしてそんなところにいたんですかね…』

P『まぁ、失点を防いだことですしいいとしましょう』

松尾「本当、わけのわからないチームだ…」

千早「そう?」

小鳥『続きましては、3番ファースト灰賀さん』

灰賀「がぅ…」

小鳥『南六高は1番2番は共に左打者でしたが、中軸は右打者が並びます』

P『灰賀選手は4番よりは打率が落ちますが、積極的に振り回してくる、一発が怖い打者です』

小鳥『さぁノーアウトのままクリーンナップへ! 響ちゃん、抑えられるのでしょうか!』

灰賀「ぐるる…」

貴音(打つ気満々…と言ったところでしょうか)クイッ

小鳥『貴音ちゃんがサインを出します』

貴音(響、高めに速球を。間違っても入れないでください)

響「ん」コクッ

ヒュッ

小鳥『投げた!』

灰賀「フンッ!」カンッ

審判「ファール!!」

小鳥『初球打ち! しかし今のは高い球! 引っ張ってファール!』

P『きわどい球も、積極的に打ちに来ますね』

貴音(次はここ、外角に…)ス…

響「………」コクリ

貴音(球速は要りません。中に入りすぎなければ大丈夫です)

ビシュゥ!

小鳥『さぁ二球目は…』

灰賀「クァッ!!」グッ

貴音(取った!)

灰賀「ケッ!?」ブンッ

ゴンッ!

小鳥『おっと鈍い音! 今のもボール球!』

P『打ち気のバッターに上手く引っ掛けさせましたね』

ギュルルル…

小鳥『あっ…でも、これは三遊間の中央に勢いよく転がっていきます! 外角の球を強引に引っ張りました!』

P『ボール球を打っても、こういう打球を飛ばしてくるのがこの打者の怖いところです』

小鳥『この打球、抜けるか…!?』

真「っとぉ!!」パシィ!!

小鳥『ああっと、深いところで追いついた! さっすが真ちゃん、凄い守備範囲です!』

真(三塁ランナーは…)チラッ

P『本塁は間に合いそうにないですね…』

小鳥『1点は仕方ありません。ですがこれでゲッツー! ランナー一掃できます!』

真「やよい!」トス

やよい「はい!」パシッ

二塁審「アウト!」グッ

松尾「くーっ…」

小鳥『6、4』

P『ショートからセカンド』

やよい「千早さん!!」クルン シュッ

小鳥『3…』

P『そしてファースト…』

テン テンテン

やよい「………」

真「………」

美希「………」

シーン…

千早「ハッ! 私は一体…」

小鳥『今、スコアボードに1の文字が刻まれました。そしてバッターは二塁へ回ります…』

P『何をやっているんだ如月!!』

小鳥『さっきの焼き直しのような捕球エラー! 痛恨の二回目です!!』

ザワ ザワ ザワ

律子「ああ、観客席からどよめきが…」

雪歩「千早ちゃん、なんでやよいちゃんの送球が捕れないんだろ…?」

春香「千早ちゃん…」

真美「千早お姉ちゃん…」

響「っと!」パシッ

クルッ

小鳥『今、響ちゃんが球を拾いましたが、打者の灰賀さんは既に二塁到達!』

灰賀「ふしゅぅぅぅぅ…」

真(この人は女なんだろうか…その前に、人なんだろうか…)

小鳥『ワンアウト二塁、依然ピンチのまま南六高次の打者は4番サード白馬さん!』

白馬「………」ペカー

響「な、なんで笑ってるんだ…?」

白馬「………」ゴゴゴゴゴゴ

響「怖いぞ…」

P『白馬選手は無口ですが、笑顔の絶えない4番としてチームメイトには慕われています』

P『1年の頃から南六高の主砲をつとめ、練習試合も含めてですが高校通算60本もの本塁打を打っている強打者です』

小鳥『60本って…ドラフトの目玉か何かですか!?』

P『卒業後は女子プロ入りが有力視されています。嘘か本当か噂では12球団も獲得に動いてるとか…』

小鳥『え、本当に!?』

律子「タイム」

小鳥『あっと、ベンチから律子さんが出てきました』

律子「守備を交替します」

春香「………」スクッ

雪歩「え、春香ちゃん?」

小鳥『えーと…守備の交替をお知らせします。レフトの伊織ちゃんがファースト、ファーストの千早ちゃんがレフトに入ります』

春香「………」ドスッ

雪歩(座った…)

真美「なんでいおりんなの? 千早お姉ちゃん、背が高いからってファーストに入れたのに」

雪歩「一塁手は他の人が球を送球しなきゃいけないから、的が大きい人を入れた方がいいんですよね」

律子「そうね。練習じゃ守備もよかったし、まさかこんなことになるとは思わなかったわ…」

真美「いおりんより、あずさお姉ちゃんとかお姫ちんの方が背高いじゃん」

律子「貴音はキャッチャーよ。それに真の守備を考えると、伊織が一塁やった方が都合がいいのよ。本当は千早ができるならそれが一番よかったんだけど」

真美「??」

千早「高槻さんから遠ざけられてしまったわ…」

伊織「自業自得でしょ」

響「本当なら無失点で終わってたのに…」

貴音「響。先程1点は取られても仕方ないと話したではありませんか」

響「たかね」

貴音「あの場面からの1点は仕方ありません。そして今の失策も響が残りを完璧に抑えれば、同じ事です」

響「…そうだね」

貴音「では、気を取り直して行きましょう」

審判「プレイ!」

小鳥『さぁ、ワンアウト二塁! 相手は4番打者! 依然ピンチが続いています765プロ!』

白馬「………」ゴゴゴゴゴゴ

響(凄い威圧感だぞ…でも…)

響「よし、なんくるないっ!」パシッ

ビシュン!!

小鳥『響ちゃん、快速球が唸ります!』

パシィッ!

白馬「………」

審判「ボール!」

小鳥『しかしこれはボール球!』

P『バッター、ピクリとも動きません』

響(…次は…)

ビシュゥ!

白馬「!」カッ

ガッキィィィン!!

響「げ!?」

小鳥『ああっと! レフト線、これは大きい!』

P『切れる…』

三塁審「ファール!」

小鳥『ファールです! ポール際で左に切れました! タイミングが早かったか、助かりました!』

響「ふぅ…次!」

キィィン!!

ゴギャッ

三塁審「ファール!」

小鳥『次の打球はまたも三塁線へのファール! しかしなんて打球でしょう!』

P『フェアグラウンドにまともに行ったら長打は確実ですね』

貴音「………」スッ

P『ですが、ファールはファールです。これで追い込みました』

響「ん」コクリ

小鳥『バッテリー、サインを決め…』

シュパン

小鳥『投げます!』

白馬「………」グッ

小鳥『あっと!? こ、これはど真ん中…!?』

カクン

白馬「!」ブンッ

小鳥『お、落ちました! 三振です!!』

P『あれはフォークか、いつの間にあんな球を…』

審判「ストライク! バッターアウトッ!!」

響「やった!」

白馬「………」ペカー

響(あいつが一番強い打者なんだよね! それを三振に取った!)

貴音「………」

響「さてと、もう一人…さっさと終わらせるぞ!」パシン

小鳥『ツーアウト二塁、次に打席に入りますのは5番キャッチャー新谷さん』

新谷「にゃー」

P『3番4番に比べると劣りますが、この打者も侮れません』

新谷「なんにゃ、そのテキトーな解説は!」

響「うりゃ!!」ヒュッ

パシッ

審判「ボール!」

小鳥『高いか、ボールです』

響「ふふーん」

貴音(今の三振で響が少し舞い上がっていますね…)

スッ

小鳥『あれ、貴音ちゃんがミットを下向きにしています』

貴音「………」

響(? たかね?)

貴音「………」

響(なんだよー、いい気分だったのに)

ス…

小鳥『キャッチャー構えました』

P『今、間を置いたことで…』

響(よし、こいつ抑えて気持ちよく帰る!)グッ

P『我那覇のフォームから余分な力が抜けましたね』

ヒュン!!

新谷「にゃー!!」キン!!

コォォォォ

小鳥『当たったっ!! 打球が外野に大きく上がっていきます! センターが追いかける、追いつけるか!?』

亜美「やっはー!」ピョン

パシッ

小鳥『ジャンプして捕ります!』

審判「スリーアウト、チェンジ!」

小鳥『これでチェンジ! 響ちゃん、2つのエラーで危機に陥ったものの、1点に抑えました!』

千早「今の説明、何か腑に落ちないわね」

伊織「腑に落ちないも何も事実でしょうが」

響「よしっ!」グッ

貴音「やりましたね、響」

響「へへーん、自分完璧だからな!」

小鳥『ところでプロデューサーさん。今の亜美ちゃん、ジャンプしなくても届いたと思うのですが、何の意味が?』

P『ないですね。双海の足なら余裕で追いつけましたし、単に目立ちたいだけでしょう』

ワアアアアァァァ…!

小鳥『ですが、今のジャンピングキャッチで観客席は沸いています!』

P『このムードで1回裏の攻撃を頑張ってほしいところです』

パァァン!!

春香「南六高のエース、筒井さん…」

真「やっぱり、速いな…」

やよい「でも…今のみんななら、きっと打てます!」

あずさ「そうね~。そのために、みんな頑張ってきたんだもの」

雪歩「みんな、頑張って…!」

パァン!!

新谷「まぁまぁ…かにゃ」

小鳥『さぁ南六高の守備練習も終わり…お待たせしました! 765プロの攻撃ですっ!』

ワァァァァァァ!!

筒井「………」

小鳥『1回裏の先頭打者は、1番ピッチャー響ちゃん!』

響「よーし! 行くぞっ!」

ワァァァァァァアアア!! ヒューヒュー!!

小鳥『場内も盛り上がっております!』

響「さぁ、来い!」グッ

筒井「…ふん」

小鳥『ここは先頭バッター出したいところですね』

P『相手は全国優勝の左腕、そう簡単には出してくれないと思いますが…どうなるか』

新谷(ピッチャーのくせに1番か…)

新谷(ま、どうでもいいかにゃ。どうせ筒井の球は打てっこないにゃ)

筒井「………」ス…

小鳥『さぁ、ワインドアップから…まず一球目!』

響(さっきは自分、立ち上がりの第一球を叩かれたからな…)

筒井「………」ググ…

響(こっちも、初球を…)

シュッ

響「叩…」ブンッ

フワ…

響「!? 遅…」グルン!

響「わっ!」ドサッ

パン!

審判「ストライクッ!!」

小鳥『あっと、初球からチェンジアップ!? 響ちゃん、尻餅をついてしまいました!』

響「たた…」

P『打ち気のところを遅い球で、思いっきり空振りました』

小鳥『これに加え、筒井さんには速球があります! 響ちゃんは打てるのでしょうか!?』

P『速いと言っても、特訓した彼女達なら打てない球ではないと思いますが…』

新谷「一気に決めるにゃ」

筒井「ん」

ビシュ!!

パァン!!

P『ですが、遅い球を見せられれば緩急で数字以上に速く見えますよ…』

響「わわっ!!」

ブンッ

審判「ットライッ! バッターアウトッ!」

小鳥『ああ、一球もかすらず三振です!』

響「くっそー…」

P『最初のチェンジアップに完全にリズムを狂わされましたね』

小鳥『765プロ、次の打順は2番レフト…じゃなかった、ファーストの伊織ちゃん! 頑張ってー!』

イッオッリーン!!!

伊織「はぁい、みんなお待ちかね水瀬伊織ちゃんの打席…」

筒井「………」スッ

伊織「あ、ちょっ…待ちなさ…」

ギュン!!

バン!

パァン!

バシィ!!

審判「ストライク! バッターアウト!」

伊織「く~っ! 最初なんだからちょっとくらい手加減しなさいよ~っ!」

小鳥『ああっと、続く伊織ちゃんも三振!』

P『筒井選手、立ち上がりは順調のようですね…』

春香「あんなに練習したのに…」

亜美「いくら守っても、打てなかったらどうしようもないよ…」

千早「もう既に1点取られてしまっているし…このままでは…」

ドヨン…

真(まずいな、ベンチのムードが暗くなってる…)

真(みんなが『やっぱり勝てるわけがない』、『自分達のやってきたことは無駄だった』なんて思ったら…すぐに試合が終わっちゃう)

真(ボクが…なんとかしないとな)

小鳥『さぁ、続いての打者はお待ちかね、3番ショート真ちゃん!』

キャアアアアアア!!

P『客席から黄色い声援が上がります』

筒井「………」ポン ポン

小鳥『筒井さん、ロージンバッグを手につけています』

真(響、伊織と三振で来ている)

真(あっちは打たれるなんて、微塵も思ってないはずだ)

真(だから…ボクにも同じように初球からストライクを取ってくるはず、そこを叩く!)

真(問題は、球種…ストレートかチェンジアップか…先頭打者に初球からチェンジアップを投げてくるような相手だ、ヤマをはるしかない)

真(よし、ストレートだ。チェンジアップだったら踏みとどまってやる、三振は絶対にしない)

真(コースは…相手は打たせて詰まらせるより、ここも三振を取らせたいはず。だから外の…)

小鳥『投げました!』

ビシュ

真(高めか!)ヒュッ

ゴォォ

真(って、内角!? でも、この球速なら…)グラ…

小鳥『真ちゃん、体を傾け…』

クンッ

真「…!?」

真(これは…ストレートじゃない! シュートか!?)

新谷(ここでも三振狙い…なんて思ったかにゃ?)

真「ぐっ!!」ブンッ

新谷(振った所で、引っ掛けて一塁線にボテボテが精一杯。終わりにゃ)

真「たぁっ!」ゴイン!!

ダンッ

小鳥『打った! 三塁線に転がしました!』

新谷「に゛ゃっ!? 引っ張りやがったにゃ!?」

灰賀「がる…」

ポンッ ポンッ

P『おっと、これは上手い所に転がっています』

真「うおおっ!!」ダダダッ

白馬「………」パシッ

ヒュッ

小鳥『真ちゃん、走る! サード、投げる! 間に合うか!?』

真「だぁっ!!」ガッ

灰賀「がぅ!」パシ

真「うわぁっ!」ゴロン

ズザザザ

小鳥『ああっ! 真ちゃん、ベースに足を引っかけて転がりました!! 大丈夫っ!?』

P『同時は…』

一塁審「セーフ!!」

小鳥『セーフです! 真ちゃん、ツーアウトから塁に出ましたっ!』

キャー!! キャァァァ!!

新谷「い、今のがヒットになるのかにゃ…?」

P『今のシュート、芯を外したので無理矢理引っ張って三塁線に転がしましたね。芯を食ってたら普通にゴロアウトでした』

真「はぁーっ…」

小鳥『真ちゃんが立ち上がりました! ケガは…ないようです!』

真(今のがギリギリの内野安打か、情けない…)

真(点取れるのかな、これ…? いや…)

真(ボクが塁に出れば、みんななら…やってくれるはずだ)グッ

小鳥『真ちゃん、塁上で拳を掲げます!』

キャアアァァァァァァ!!

春香「みんな! 真がヒット打ったよ! 打てるんだよ!」

やよい「どんな形でも、ヒットはヒットです!」

春香「さぁ律子さん! 私を代打に!」

律子「初回で4番なのに何言ってんの」

小鳥『ランナーが出て打席に立つのは…4番サード美希ちゃん!』

ワァァァァァァァァァァァアアアアアアアアア!! アアアアア!!

小鳥『美希ちゃん、正直4番を打つようなタイプには見えないんですけど…大丈夫なんですかね?』

P『じゃなかったら4番に置かれたりしませんよ』

美希(えっと…いち、に、さん、し)

美希(いや。いち、にの、さん、し。だったっけ)

新谷「765プロ、筒井相手に初回からヒット打つなんて結構あなどれんにゃ…内野安打とはいえ」

新谷「ま、でもここで終わりだけどにゃー」

美希(いち、にの、さん、し)

新谷「…聞いてるのかにゃ?」

筒井「………」ス…

フワ…

小鳥『第一球…抜いた!』

美希(いち、にの、さん、し)

パシン

審判「ストライク!」

美希「ちがう…」

新谷「?」

小鳥『美希ちゃん、チェンジアップを見逃し!』

ヒュン

美希(いち、にの、さん、し)

クンッ

パシン

審判「ットライッ!!」

小鳥『僅かに曲がった、シュート! これも見逃しました!』

美希「これも違うの」

真「美希…?」

新谷(こいつ、何か待ってるのかにゃ? ストレート…?)

新谷(いや…素人が筒井のシュートとストレートを見分けられるとは思わんがにゃ…)

美希「次、次」

新谷(まぁ、ランナーもいるし…念のためここで一球外すかにゃ)スッ

筒井「………」スゥ…

小鳥『セットポジションから…』

ビシュ!!

小鳥『投げました!!』

オオォォォ

美希(これなのっ!)

新谷「!?」

新谷(な、中に…中に入ってきてる…! 失投…!)

ォォォ

美希(いち、にの、さん…)グッ

美希(しっ!)ブンッ

カッイーーーーーン!!

筒井「え?」

新谷「あ…?」

小鳥『はい?』

P『ん?』

スカーン!!

シーン…

小鳥『は…』

ワアアアアアアアアアアアァァァ!!

小鳥『入ったぁぁぁ! ドームの客席に入る逆転のツーランンンン!』

ァァァァァァァ…

新谷「嘘にゃろ…」

筒井「………」

小鳥『いや、凄いですね。この広いドームで、ホームランなんて…』

P『ええ、まさか今日出るとは思いませんでしたよ。しかも初回に…』

美希「あはっ☆」タタタ

ワァァァァ…

小鳥『今、美希ちゃんが嬉しそうにホームに戻ります!』

真美「ミキミキ! 凄いよ!」

美希「えっへん! ミキにかかればカンタンなの!」

真「簡単に、か…ボクの立場ないなぁ…」

千早「そんなことはないと思うけれど。真がいたから2点入ったのでしょう?」

雪歩「そうだよ! 真ちゃんもすごいよ!」

律子「手放しに褒めたくはないんだけど…よくやったわ、美希」

美希「ふふ~ん♪ これでハニー…プロデューサーも『凄いなミキ』とか、『ミキ大好き』とか言ってくれるよね!」

小鳥『765プロ、逆転の一打が飛び出ました! さぁ、続いては…』

P『この調子でどんどん攻めてほしいところです』

美希「あれ…?」

小鳥『5番セカンドやよいちゃん』

ウォォォォォォオォォオォォォォオオォォオッッォォオォォオォォォオォォォオォオ!!!!!!!!!!!!!!

美希「今ので、終わり? 何も言ってくれないんだ…」

春香「ちゃ、ちゃんと心の中では美希凄いって思ってるよ!」

伊織「そ、そうよ。堂々と言っちゃったら色々と大変でしょ!」

美希「それでも、言ってほしかったな…」

貴音「美希…」

あずさ「美希ちゃん、よしよし」ナデナデ

美希「くすん。あずさぁ~」

新谷(筒井はたまにコントロールが外れる時がある…けど、球自体はよかったし…まさか、今のでホームランを打たれるなんて…)

筒井「………」

新谷(筒井は…気にしないわけがないにゃ。でもこいつは表に出したりはしないにゃ)

やよい「よろしくお願いしまーす!」ペコリ

新谷(次はこいつかにゃ。1ヶ月前、筒井にチェンジアップを使わせた奴…)

やよい「よっと」ザッ

新谷(にしても、ちっこいにゃあ…)

小鳥『さぁ、やよいちゃんが打席に立ちました!』

P『何かやってくれそうな感じがしますね』

ビシュゥ!!

やよい「うっ!」キィン!!

審判「ファール!」

小鳥『ストレートに合わせています!』

P『先程も言いましたが、ストレートだけなら当てることはそう難しくないと思います。ただ問題は…』

フワ…

やよい「はわっ!」

小鳥『あっと、抜いた! チェンジアップ!』

やよい「んっ」グッ

筒井「!」

小鳥『溜めて…』

やよい「えいっ」ブルッ

キン!

審判「ファール!」

小鳥『これも合わせた! 打球はバックネットにぶつかりファール!』

P『打球が真後ろに飛んだ…上手くタイミング合わせましたね。これは期待できますよ』

やよい「ふ~んふ~ん♪」グリグリ

新谷(つま先を立てて足の裏をピッチャーに向けるフォーム…足をほとんど浮かさず腰の回転だけで打ってるにゃ、だからこの緩急にも対応できるのかにゃ)

新谷(でも、このちっこい体でこんな打ち方じゃ絶対長打にはならない! 内角を攻めるにゃ!)バッ

筒井「………」フルフル

新谷(え?)

小鳥『おっと、マウンド上の筒井さんが首を振っています』

P『筒井選手がサインに首を振ることはあまりないそうですが』

新谷(もう、使っちゃうのかにゃ?)

筒井「………」

新谷(白馬の時のお返しってわけかにゃ…そういうことにゃら)サッ

筒井「よし」スッ

小鳥『サインが決まったようです、ワインドアップから』

ビシュ!

小鳥『投げました!』

スポーン

やよい「!」

小鳥『って、あら…これは暴投…』

P『バッテリー、これはサインに夢中で汗を拭き忘れ…』

ギョルン

やよい「え…」

ズバァ!!

シーン…

やよい「あ…」

小鳥『………』

P『………』

審判「ストライク! バッターアウト!」

アァァァァァ!!

小鳥『カ…カーブです! 暴投かと思われた球が縦に大きく割れながら入ってきました…!』

P『実況席の映像からでも、はっきりとわかりました…』

小鳥『筒井投手、こんな球を持っていたとは…』

P『データはほとんどありませんね…あるというのは聞いていましたが、噂以上でした』

小鳥『これを混ぜられると、追加点は難しいかも…』

P『その前に星井が2点取ってくれたのは幸運でしたね』

春香「あ、ほら美希! プロデューサーさんが美希のこと褒めてるよ!」

美希「幸運じゃないの。ミキ、頑張ったのに…」

春香(ど、どうすればいいんだろう…)

P『なんにしても、765プロには今のショックを引きずらないで守りについてほしいところです』

小鳥『2回表、再び南六高の攻撃です! 打順は6番ショート桐生さん!』

桐生「よろしく」ニコッ

貴音「はい」

「ねぇねぇ、あの子結構イケてない?」

「えー、そう? 真くんの方がいいでしょ」

小鳥『桐生さんは、その中性的な容姿で女生徒に人気だそうです!』

亜美「おお、観客のねーちゃん達がざわめいてるよ! 負けてられないねまこちん!」

真「いや、別に張り合ったりしないからね?」

美希「………」

春香「うわー、美希やっぱりまだ落ち込んでますよ…今のままじゃエラーするかも。律子さん、私を守備に」

律子「うるさい」

キィン!!

貴音「サード…!」

小鳥『おっと、三塁線に強烈なゴロが…』

バシィッ!!

美希「………」ポイ

ヒュン

伊織「ちょっ…!」パシッ

一塁審「アウト!」

桐生「っと、まいったな…」

小鳥『美希ちゃん、難なくキャッチしました! サードゴロです!』

伊織「美希! ちゃんと胸に投げなさいよ! この伊織ちゃんが捕れたからよかったものの!」

P『ですが、送球は結構逸れてましたね。今のは水瀬の手柄です』

美希「………」プイ

伊織「ったく、アイツは…今試合中だって、わかってんの?」

小鳥『7番セカンド引出さん、左打席に入ります』

P『引出さんは下位打線ではありますが、なかなか曲者との噂。話によると南六高の次期主将候補とされているそうです』

引出「よっ」スッ

小鳥『これはどうしたことでしょう、ランナーもいないのに最初からバントの構えです』

P『バスターですかね?』

小鳥『セーフティバント…だったらわざわざ構えて見せる必要はないですからね』

貴音(ランナーなし、バントはありません。気にせず行きましょう)

響「うん」コクリ

小鳥『さぁ、響ちゃん投げた!』

ヒュン

引出「………」スッ

審判「ボール!」

小鳥『第一球は外れてボール』

P『あっさりバットを下げましたね、揺さぶって四球狙いでしょうか? それともやはりバスター狙いか』

審判「ボール!」

審判「ストライク!」

審判「ボール!」

響「むー…」

小鳥『響ちゃん、バントの構えに揺さぶられてワンスリー』

P『我那覇は本職の野球選手じゃないですからね。わかっていてもやりにくいんでしょう』

引出「ふんふん」バッ

小鳥『バッター、依然バントの構えを崩しません』

P『何が狙いなんですかねぇ、次はバッティングカウントですが』

貴音「………」スッ

響(たかねの要求はど真ん中…よし)グッ

響「えりゃ!」ヒュン

小鳥『投げました!』

サッ

小鳥『またバットを下げます!』

P『バスターか? それともこれも見逃し…』

コン

小鳥『え? あ…バントです! 下げたバットを再び出し、一塁線に転がしました!』

伊織「セーフティバントですって…!?」タッ

P『揺さぶっていたのは一塁三塁か…! 散々バントはしないと思わせて…』

小鳥『これは意表をつかれた! セーフになるか!?』

伊織(駄目、間に合わない…!)

響「伊織、伏せ!」

伊織「は?」バッ

ガシッ ヒュン

やよい「はいっ」パシッ

一塁審「…アウト!」

響「ふーっ」

引出「おーおー」

小鳥『おおっと、響ちゃんの反応が早かった! アウトです!』

真「よ! たっ」パシ ヒュッ

伊織「うし!」パンッ

一塁審「アウト!」

赤場「ひーん…」

審判「スリーアウト、チェンジ!」

小鳥『南六高のスタメン唯一の1年生、8番レフト赤場さんの打席はショート正面! 響ちゃん、三人で抑えました!』

律子「よしよし…いい感じね」

美希「あふぅ…」

春香「それにしても美希、最初のゴロよく捕れたね…」

美希「あれくらいなら別に大したことないの」

小鳥『さぁ、早くも2回裏の765プロの攻撃が回ってきましたっ! 打順は…6番キャッチャー貴音ちゃん!』

ワアァァァァァ!!

筒井「ふっ」ヒュッ

貴音「そこっ」ブンッ

カィン!!

貴音「む…」

パシッ ヒュッ

審判「アウト!」

小鳥『チェンジアップ後の直球に上手く当てましたが、これは平凡なゴロ! ショートに転がしワンアウト』

P『タイミングは合ってました。次はやってくれますよ』

小鳥『続く7番レフト千早ちゃんは…』

新谷「む…」

筒井「ん…」

審判「フォアボール!」

千早「………」ポイ

小鳥『よく見てフォアボール。選びました』

P『バットを振ることなく一塁へ』

小鳥『ランナーが出て、回るは8番ライトあずささん!』

あずさ「よしっ、がんばりましょう」

オォォォォォ!!

あずさ「えいっ」

ブルンッ!!

小鳥『おーっと!! あずささん、大きく空振りました!』

P『……』

オォォォォォォォオオオオオオオオォォォォォォォォ!!

小鳥『そしてっ! 球場全体が大きく揺れておりますっ!!』

P『…音無さん、真面目にやりましょう』

小鳥『私は大真面目です!!』

春香「振り遅れてる…練習の時より速いから追いつかないんだ…」

春香「律子さん、あずささんはタイミングが合ってないですよ! 私なら…」

律子「そうね。まぁ、それをわかった上であずささんの方を選んだんだけど」

春香「え」

あずさ「はいっ」ブンッ

カッキーーーン!!

春香「え!?」

筒井「な!?」

新谷「にゃ!?」

小鳥『当たったー!! 大きい、これは大きい!』

オォォォォ…

あずさ「あら…ちょっと急いじゃったみたいですね」

バイーン

一塁審「ファール!」

ァァァ…

小鳥『内側に大きく切れ込みました! ドーム上部の看板に当たる、大きなファール!』

P『初球のチェンジアップを思いっきり引っ張りました、にしても凄い当たりだ…』

小鳥『これはもしかすると…』

ビシュン!!

あずさ「きゃ…」ブルン!

バシィ

審判「ストライク! バッターアウト!」

小鳥『と、思ったらストレートを振り遅れ! どうしたことでしょう、全球チェンジアップ狙いなんでしょうか!?』

P『と、言うよりタイミングが致命的にズレているとしか…』

新谷(な、なんだったんだにゃ?)

小鳥『き、気を取り直して9番センター双海亜美ちゃん…』

亜美「うりゃ!」カイン

ポーン

新谷「にゃ…」パシッ

審判「アウト!」

亜美「あり?」

小鳥『…は初球のボール球に手を出し、キャッチャーのファールフライであっさりアウト! 結局、ランナー一塁のまま二回の攻撃は終了です!!』

P『まぁ、これで次の回は1番からなのでよかったのかもしれません』

千早「………」

亜美「どしたの、千早お姉ちゃん?」

千早「ちょっと、気になったことがあって」

亜美「え、なになに!? あのピッチャーの攻略法とか!? もう、早く言ってよー!」

千早「いえ、この試合が終わったら歌うでしょう? 運動した後で万全の状態で臨めるかしら」

亜美「あのさ、千早お姉ちゃん。今は試合中だよ? 試合のことだけ考えようよ」

千早「ええ。でも気になってしまって…」

小鳥『3回表、南六高の打順はエースから! 9番ピッチャー筒井さん!』

響「む、こいつか…」

筒井「…よろしくお願いします」ペコ

貴音「よろしく」

小鳥『左打席に立ちます』

P『筒井選手は投手に集中するため9番に置かれているそうで…打者としても気を抜けない相手です』

貴音(まずは、外角…低め…高めにさえ来なければいいです)

響「………」グッ

ヒュン!!

筒井「ん…」ピク…

パシィ!

審判「ストライク!」

貴音(手を出してこない、得意な球を狙う打者なのでしょうか…?)

貴音(では、外しながらここ中心にすとらいくを取りましょう)

審判「ボール!」

小鳥『高めのボール! これで2ー2です』

P『ストライクを取ったのはどちらも外角低め』

貴音(響、あと一つ外せますが)スッ

響「んー」フルフル

貴音(では、これで…)

響「ん」コクッ

小鳥『さぁ、これで決まるか? ピッチャー構えて…』

シュパッ

小鳥『投げます!』

筒井「………」グッ

貴音(振る気ですか? しかしこれは…)

小鳥『これはフォークです! 低い、ワンバウンドになります!』

筒井「ふっ」ヒュッ

ガッ

貴音「へ」

響「は?」

キーン

小鳥『あああーっ!? す、掬い上げましたっ!! フォークを!』

P『おいおい、ワンバウンドするクソボールだぞ? 手を出そうとしたら空振るだろう普通!』

響(あいつ、最初から自分が投げる球がわかってたみたいだ…)

響(同じ投手だから…ここで、自分が決めにいくって…知ってたんだ…!)

バンッ!!

小鳥『打球はフェンス直撃! センターが追いかけます!』

亜美「うおおおおお!」ガシッ

ヒュン!

真「く…」パシッ

筒井「ふぅ…」ザザッ

小鳥『懸命に送球しますが間に合いません! スリーベースです! 765プロ、ノーアウトのランナーをいきなり三塁に到達させてしまいました!!』

P『スリーベースか…ドーム球場はちょっと広すぎますね』

小鳥『それをフェンス直撃させた筒井さんを褒めましょう』

P『どう頑張ってもセンターフライにしかならないと思うんだけどな、あれ…』

雪歩「ホームラン打った美希ちゃんってすごいですね…」

律子「帰ってきたら言ってあげなさい、無駄かもしれないけど」

小鳥『さぁ、打者一巡して次の打者は1番センター日野さん!』

日野「~♪」

律子(ノーアウト三塁…相手はどう攻めてくるかしら…?)

律子(セーフティスクイズ…こいつの足なら充分ありえる…)

律子(まだ3回、セオリー通りなら一か八かのプレーより大怪我を避けるべきだけど…)

律子(相手は横綱、1点の重みはこっちとは全然違う…)

律子(こっちはどうするべきか…あーもう)

春香「律子さん、響ちゃんはショックを受けてます。ここは私をリリーフに」

律子「黙ってて春香。…よし、決めた」

小鳥『あ、ああっと!?』

伊織「ったく、律子の奴…」ザッ

やよい「うーっ! やります!」ザッ

真「よし、来い!」ザザッ

美希「あふぅ…」

小鳥『765プロ、前進守備です! 1点も与えないつもりか!』

P『まぁ、同点にされたら追いつける保証はありませんからね』

小鳥『しかし、前進守備は内野の守備範囲を狭めます…下手すると…』

P『ええ、抜かれれば点を与えた上で出塁される可能性も大です』

小鳥『みんな、ここは踏ん張りどころよ! 頑張って!』

響(えーと、つまり…)

響(とにかく、三塁ランナーを帰しちゃ駄目なんだよね)ヒュッ

美希「ん」パシッ

筒井「………」

小鳥『響ちゃん、三塁に牽制球を投げます』

響「………」チラッ

小鳥『響ちゃん、三塁に目線を送り…』

ヒュッ!

小鳥『セットポジションから投げ…あっ!?』

筒井「………」タッ

日野「狙い通りっと♪」スッ

小鳥『走った、走ってきました! そしてバッターはバントの構え! スクイズです!』

P『やられた…! これは決まる!』

響「くっ! させるもんか…!」タッ

コン

小鳥『バットに当て、ピッチャー正面に転が…あら?』

響「よし、捕った!」パシッ

響「たかね!」バッ

貴音「違います、あっちに!」フルフル

小鳥『響ちゃんが本塁に投げようとしますが、貴音ちゃんが静止させ、一塁を指差します!』

響「なんでだよ、1点やったら…って…」チラッ

筒井「ふっ」ズザザ

小鳥『あっと、三塁ランナーは塁に戻っています!』

響「え!?」

貴音「響! 早く一塁へ!」

響「あっ!」クルッ

ヒュン

日野「よっと」タン

伊織「アウトよ!」パシン

一塁審「セーフ! セーフセーフ!」

小鳥『セーフです! 内野安打!』

P『スクイズは囮か…安全に出塁しました』

筒井「ふっ」

日野「へいへいへーい♪」

響「くぅ…」

小鳥『依然ノーアウト! ランナー一、三塁です!』

小鳥『さぁ、次のバッターは2番ライト松尾さん!』

松尾「こんな場面で私か…まったく」

P『次はクリーンナップ、チャンスのまま回したくありませんね』

真「………」ザッ

やよい「うーっ」ザッ

小鳥『765プロの守備位置は前進守備のまま』

P『このまま傷口を広げる結果にならなければいいんですが』

松尾「ふっ!」キンッ!!

響「!」

ギュルルル

小鳥『打った! セカンド正面への強いゴロ!』

P『これは…』

日野「わわっ」タタタタ

筒井「………」タタッ

やよい「う…」パシッ

小鳥『捕りました! ゲッツーも狙えますが…三塁ランナーが本塁へ走っています!』

P『2アウトを取るか、あくまでも1失点を防ぐか…』

やよい「うーっ!」ブンッ

小鳥『やよいちゃん、すぐさま本塁に送球! 1点を守りに来ました!』

P『いや、投げるのが早い…!』

筒井「フン…」ピタッ

音無『ああっ、三塁ランナーが止まりました! これはオールセーフになりますよ!』

P『これは1アウトも取れない、フィルダースチョイスになる…!?』

やよい「えへへ…」ギュ

小鳥『いや、送球していません! 偽投です! ボールは手から放れていません!』

筒井「な…なんですって!?」

やよい「真さん!」トス

小鳥『やよいちゃん、三塁ランナーが止まったのを見て、振り返りながら下手で二塁送球!』

真「よしっ!」パシッ

二塁審「アウト!」

日野「うひゃー」

小鳥『二塁フォースアウト! そして…』

真「………」チラッ

筒井「!」ビクッ

筒井(走れない…)

真「伊織っ!」ヒュッ

小鳥『真ちゃん、三塁ランナーに目線を送り、一塁送球!』

伊織「今度こそ…!」パシッ

一塁審「…アウト!」

小鳥『アウトです! ゲッツー!! 一気にツーアウトです!』

筒井「ち…」

P『しかも、三塁ランナーは帰れない! 最高の形です!』

律子「やったわね、みんな!」

真美「えーっ、何今の!? 何やったの?」

雪歩「すごい…」

伊織「ナイスよ、やよい!」

やよい「えへへ、ちょっとひっかけちゃったりして!」

真「へへっ、いい流れだね!」

小鳥『ノーアウト一、三塁から一気にツーアウト三塁! ここで765プロは前進守備を解除します』

P『ヒットやエラーで点に繋がるのは変わりませんが…失点のパターンは大きく減りました』

P『これであとは1アウトを取ればチェンジ、三塁ランナーを気にしなくてよくなりますから…かなり楽になりましたよ』

灰賀「ぐるる…」

小鳥『続いては3番ファースト灰賀さん!』

響(これは抑えなきゃだね、たかね…)

貴音「………」コクッ

小鳥『765プロ、このまま無失点に抑えられるでしょうか!?』

P『大丈夫だと思いますよ。野球には流れってものがあって…』

キィィィン!!

貴音「ライト!」

小鳥『おっと、初球打ち上げました!』

P『今のプレイで、流れは765プロにあります』

ィィィィン…

小鳥『打球は高く高く、ライト定位置に…あっ!?』

ガラーン

小鳥『だ、誰もいない!? あずささんはどこに!?』

あずさ「あら?」

P『あ…フェ、フェンスの前に立っています!』

小鳥『だから、なんでそんなところに!?』

あずさ「もっと、前の方だったのね~」タッ

小鳥『あずささん、急いで…? ボールの方に走りますが…』

テトテト

P『お、遅い! 間に合うのでしょうか!?』

アァァァァァァ…!

響「ちょ、ちょっと…これ…」

小鳥『大丈夫だって言ってたじゃないですか!』

P『俺…私だって、こんなもの予測してませんよ!』

あずさ「よいしょ、よいしょっ」バタバタ

小鳥『頑張ってるのは伝わってきますが…これは、追いつけません!』

「うりゃりゃりゃりゃりゃー!!」

小鳥『おっと!? 落下点に誰か走り込んできます!』

ズザザザザザ

亜美「捕った! 完…」

小鳥『亜美ちゃんです! 亜美ちゃんがセンターから滑り込んできました!』

ヒュルルル…

亜美「あ」パコンッ

小鳥『あああああああ!! 弾いた!?』

P『ああっ、スライディングキャッチなんてやろうとするから…!』

パシッ

あずさ「ふぅ…」

P『お、追いついてきた三浦がキャッチしました…』

小鳥『し、心臓止まるかと思いました…』

ワァァァァァァァァ!!

筒井(この回、ノーアウト三塁になった時点で絶対に点を取れると思っていた…)

小鳥『3回表が終わり、次は765プロの攻撃です!』

筒井(765プロ…我那覇響、菊地真、高槻やよい…そして、星井美希)

春香「へっくし!」

小鳥『南六高が守備につき、ボールを回しています』

白馬「………」ポンッ

筒井「765プロ…」パシッ

筒井(気に入らない!)グッ

ヒュン

新谷「にゃっ」バシィン!!

小鳥『さぁ、打者一巡してこの回の先頭打者は1番ピッチャー響ちゃん!』

響「よしっ」

アァァァァァァァ!!

P『1番からの好打順、ここで点差を広げておきたいところ』

響「まずは、自分が出てやる!」

新谷(こいつは初回、チェンジアップでいいように振り回されたのが頭にこびりついているはず)

新谷(この回はわざわざチェンジアップを投げる必要なんてないにゃ)

パンッ

響「うおっと」ピクッ

審判「ボール!」

小鳥『外のわかりやすいボールから入ってきました南六高バッテリー』

新谷(流石にこんなボール球には手を出してこないみたいだけど)

新谷(頭の中ではいつ遅い球が来るか…? ストレートの次はチェンジアップなんじゃないか…そう考えてるんじゃないのかにゃ?)

新谷(もう一本ストレートだにゃ)

ヒュン

響「やぁっ!!」キンッ!!

新谷「に゛ゃ!?」

小鳥『綺麗に弾き返しました! 左中間を抜ける!』

P『初回のことなんて、もう頭に残ってないようですね』

テン テン

日野「行かせるかっ…」ヒョイッ

小鳥『センター追いつきました!』

P『守備も速い…』

日野「先輩!」ヒュッ

桐生「ああ」パシッ

響「おっとっと」キキッ

小鳥『スムーズな守備に響ちゃん、慌てて一塁に戻ります!』

P『しかし、ノーアウトでランナーが出ました。これはいけますよ』

小鳥『さぁ、次のバッターは2番ファースト伊織ちゃん!』

ワァァァァァァァ!!

伊織「ったく、律子の奴…この伊織ちゃんにこんなことさせるなんて…」

スッ

小鳥『伊織ちゃん、最初からバントの構えです』

P『セオリー通りですね。この後はクリーンナップですから、ゲッツーは避けたいところ』

新谷(さっきはまずったにゃ…でも、こいつがバント狙いなら話は簡単だにゃ)

響「………」ジリジリ

新谷(あの程度のリード、あの程度の足なら…当てさせても、二塁で刺せるにゃ)

筒井「………」グッ

小鳥『さぁピッチャー投球動作に入り…』

新谷「にゃ」チラッ

響「うりゃー!」タッタッ

小鳥『響ちゃん、スタート!』

新谷(もっと全力で走らなきゃ駄目にゃ! ワンアウトいただきだにゃ!)

筒井「ふっ」シュビ!

ギュン!

小鳥『そして投げました!』

新谷(ん!?)

伊織「高い…!」グッ

小鳥『伊織ちゃんバットを当てに行きます…!』

グイン

伊織「…!」

パンッ!

審判「ストライク!」

伊織「伸…伸びた…!?」

小鳥『が、あっと、これは高い! 当てられません! バットを引くこともできずストライク!』

響「うぎゃ!? ま、まずいぞっ…!」ダダダ

筒井「新谷!」

小鳥『そして単独スチールの形に…え!?』

新谷「にゃ…」グッ

筒井「何!?」

小鳥『あれ、しかしキャッチャー投げない!』

響「あれ?」ズザザ

小鳥『響ちゃんは楽々二塁到達です!』

小鳥『これは…南六高バッテリー、どうしたのでしょう?』

P『これはバッテリー間の意識のズレのせいですね』

小鳥『えーと? つまり、どういうことです?』

P『投手の筒井選手は当てさせず、なおかつ二塁で刺せると思って投げていました』

小鳥『実際、今のはちゃんと投げてれば刺せるところでしたよ』

P『ですが、捕手の新谷選手は伊織のバント処理を意識していたのでしょう。多分、サインは真ん中に投げるよう出ていたんじゃないでしょうか』

P『それが、高めに来た。そして球はバットに当てさせることなくミットに収まりました。新谷選手にとっては予想外のことだったのでしょう』

P『結果はこうです。今のプレイ、バッテリー間で上手く連携が取れていませんでした』

新谷「う…」

P『水瀬がちゃんと当てられれば相手にとっては何の問題もなかったんですけど。それならワンアウト二塁…あるいはワンアウト一塁になっていたかも』

伊織「う、うるさいわね!」

真「まぁまぁ伊織、結果的にはよかったよ」

伊織「アンタもうるさい! ネクストサークルで大人しくしてなさいよ!」

小鳥『ノーアウト二塁! ピンチの後にチャンスが巡ってきました765プロ!』

P『しかもゲッツーが消えました、ライナーで飛び出したまま帰塁出来ないパターンか響が刺されない限りは4番まで回ります』

新谷(今のは…全部うちのせいだにゃ)

新谷(ワンアウト一塁にするよりは塁から出たランナーを刺せた方がいいに決まってるにゃ…)

筒井「………」ザッザッ

新谷(そして、筒井にはそれができた)

新谷(エースを信用できなくて…女房役はつとまらんにゃ)

伊織「このままランナー帰してやるわ」

小鳥『伊織ちゃん、バントの構えをやめヒッティングに行きます』

P『相手は格上、確実に点を取りたいのなら三塁に送るのもアリだとは思いますけどね』

審判「ボール!」

審判「ボール!」

小鳥『連続でボール! ワンツー!』

P「ツーワンでしょ」ボソッ

小鳥「こっちの方がわかりやすいと思います!!」ヒソヒソ

筒井「っ!」ゴォォォォォ

ヒュン!!

伊織「この…!」ブンッ

パンッ!

審判「ットライクッ!」

小鳥『空振り! 追い込まれました!』

ヒュッ

小鳥『5球目!』

伊織(これは…低い? いえ、でも入ってるかも…)

伊織(見逃してアウトになるくらいなら…)

カンッ

小鳥『当てました! 転がした! 当てただけのバッティングです!』

響「うおりゃー!」ダダダ

P『しかし、我那覇が走っています』

パシッ

引出「うーむ…あっちは無理か」

ヒュッ

小鳥『セカンドが拾いますが、三塁は間に合いません、一塁に投げます!』

一塁審「アウト!」

小鳥『一塁はアウト! 伊織ちゃん、結果として三塁に送った形となりました!』

真「ナイスバント、伊織」

伊織「うるっさいわね! これで点取れなかったら承知しないんだから!」

真「うん、頑張るよ」ザッ

小鳥『さぁ、次からはクリーンナップ! 3番ショート真ちゃん!』

キャー!! キャーキャー! ヒュゥゥゥゥゥー!!

小鳥『あっと、これは…!?』

バーン

灰賀「ぐぁぅ…」

引出「あー、怖い怖い」

桐生「ごめんね、本塁には帰さないよ」

白馬「………」

小鳥『南六高、前進守備です! さっきのお返しでしょうか!』

P『強者側の南六高では意味合いが違います。これ以上は、1点もやらないという意思表示でしょう。強気ですね…』

真(とにかく、思いっきり振ろう)

真(ワンアウト三塁、外野フライなら特典になるし…ゴロになっても、相手が前進守備なら抜ける可能性は上がる)

筒井「………」

バシッ!

審判「ストライク!」

バンッ!

審判「ボール!」

小鳥「まずはポンポンと投げ込み1ー1」

ヒュッ

真「しっ」グッ

真「はっ!!」キィン!!

筒井「!」

小鳥『真ちゃん、打ちました! が…』

キュルルルル…

小鳥『少し力負けしたか、これはライト線へのファールフライです!』

松尾「これは捕れる…」タッタッタ

小鳥『ああっ、ライトの松尾さんが追いつきました!』

筒井「捕るなっ!!」

松尾「!」ピタッ

ポテン

一塁審「ファール!」

小鳥『これは捕らない! 落としました! ファールです!』

P『今のはきわどいところですね。捕っていたら、同時に三塁の響が走って、ギリギリ間に合うかどうか…』

P『タッチアップで点になる可能性があるなら、落としてファールにする…と言った所ですね』

松尾「まったく、うちのエースは…」

真(こっちを舐めてるわけじゃない)

真(むしろ、そうでないからこそ相手は1点もやりたくないんだ)

筒井「ふーっ…」グッ

小鳥『2ストライクから、次の投球は…』

ギュン!

真「わ!?」ビクッ

パァン!

小鳥『内角への、ぶつかりそうになるボール! 真ちゃん、思わずのけぞります!』

ブーブー!! ブーブー!!

P『観客席の女性ファンからブーイングが飛んでいます』

小鳥『み、みなさん! 落ち着いてくださーい!』

P『再び並行カウント』

真(内角球でのけぞらせるってことは…)

真(次は外角のきわどい球がセオリーだ、ちょっとくらいならボールでも打つ!)スッ

響「ん!」コクッ

小鳥『真ちゃん、響ちゃんに静止のポーズ』

P『前進守備ですからね。無理して突っ込む必要はないですよ、内野抜けたら戻って来ればいい』

筒井「………」スッ

小鳥『筒井さん、セットポジションから…』

筒井「ふっ」ビシュ!

ギュルン!!

小鳥『投げた! ボールは外角の高めに…』

真(よし、ドンピシャ…!)クッ

スパァ!

真「なにっ!?」

真(曲がった…! くっ、当てなきゃ…!)グオッ

ブルンッ

パシッ

審判「ストライク! バッターアウト!」

オオオオオォォォォ!?

小鳥『ああっと! 真ちゃん、三振! 三振です!』

P『大きく曲がりましたね。初回にやよいに使ってたのと同じボール…』

真(カ…カーブ…!)

真(なんて変化だ…外角に来たと思ったら、懐まで飛び込んで来た)

真(せめて当てようとしたのに、かすりすらしなかったぞ…)

小鳥『なんというカーブなんでしょう! これを打てるのでしょうか!?』

P『相手は全国優勝投手ですから。流石に、一筋縄では行きませんね…』

小鳥『しかし、次は初回にツーランホームランを打っている美希ちゃんです!』

P『さぁ、ヒットは出るのか』

小鳥『ここは、なんとしても…』

審判「ストライク! バッターアウトッ!」

P『え…』

美希「あふぅ」

小鳥『な、なんと美希ちゃん、あっさり三振してしまいました!? 二者連続です!』

P『別人だ…さっきとは…』

審判「チェンジ!」

小鳥『ワンアウトでランナーを三塁まで送りましたが…点を取れません、765プロ!』

小鳥『次は4回表、折り返し地点まで来ました!』

春香「あれ? 折り返し地点って…野球は9回までじゃ?」

律子「女子野球ではプロでも7回までよ」

小鳥『南六高の打順は4番サード白馬さんから』

白馬「………」ニカー

ゴゴゴゴゴ

P『…チャンスのうちに、点は取りたかったですね』

小鳥『まぁまぁ、まだリードしてますし』

響「気を取り直して…いくぞっ」ヒュッ

小鳥『響ちゃん、一球目を、投げ…』

白馬「…!」ゴォッ!

キィィィィン!!

響「え!?」

貴音「な…」

小鳥『あ… ………』

白馬「………」

ポイッ

小鳥『は、白馬さん、初球を打ち…バットを投げゆっくりと歩き始めました』

ゴォォォッ

亜美「うおおおおおーっ!!」タタタタ

小鳥『た…高い…非常に高く上がっております! 亜美ちゃんが必死に追いかけます』

亜美「ここだ!」クルッ

小鳥『追いつきました! 落下点に立ちます!』

亜美「ん、まだか…」タ…タッタッ

小鳥『い、いえ、バック走に移りました! まだ後ろです、打球が落ちない、まだ落ちてきません!』

亜美「わ!」ドンッ

亜美「あれ、もうフェンス…」

P『野球には、流れがある…』

コーン

P『今、流れはもう…南六高だ』

アァァァァ…

小鳥『は、入った、入っちゃいました!』

小鳥『なんということでしょう! 響ちゃん、初球をスタンドまで運ばれてしまいました!!』

響「うぁ…」

白馬「………」トンッ

小鳥『ソロホームラン、ベースを踏んでこれで同点です! あっさりと同点に追いつかれてしまいました!』

春香「みんな!」タッタッタ

小鳥『おっと、ベンチから春香ちゃんが出てきました』

P『伝令でしょうか』

真美「………」ガシッ

雪歩「………」ガシッ

春香「あぁ~」ズルズル…

小鳥『真美ちゃんと雪歩ちゃんにベンチの中まで引っ張られていきました』

P『なんだったのでしょう』

ワー ワー

響「………」

響(そんな…せっかく、リードしてたのに…)

貴音「響」ヌッ

響「わっ!?」

小鳥『放心の響ちゃんのもとに、貴音ちゃんが駆けつけています』

響「たかね…ホームラン打たれちゃった」

貴音「そうですね。ですが、まだ同点ではないですか」

響「でも…」

貴音「…このまま逆転されますか?」

響「!」

貴音「取られてしまったものは、もう変えることはできません。ですが、これ以上点を取られれば逆転を許すことになる」

響「………」

貴音「次を取らせないようにしましょう。響、行けますね?」

響「…うん」

審判「プレイ!!」

小鳥『さぁ、試合は振り出しに戻り次のバッターは、5番キャッチャー新谷さん!』

新谷「このまま逆転にゃ」

響(そうだ…)

響(このまま点を取られたら、逆転…765プロは負けちゃうんだ!)

響(自分が頑張らないと…!)グッ

ヒュン!

バシン! バンッ! バンッ! スパン!!

審判「フォアボール!!」

響「うっ…!」

新谷「うし、儲けたにゃ」ポイッ

小鳥『響ちゃん、ストレートのフォアボール! ノーアウトからランナーを歩かせてしまいました!』

P『やはり、先程のホームランが頭に残っているのでしょうか』

ザワザワ…

小鳥『ノーアウトで逆転のランナーが出て大ピンチの765プロ!』

小鳥『南六高の次のバッターは6番ショート桐生さん!』

桐生「よし、続こうかな」

P『このままズルズル行けば逆転も有り得ますよ』

響「う…」

響(ど、どうすればいいんだ…どうすればこの流れを止められる…?)

貴音「………」スッ

響(え!?)

貴音「………」

響(ど…ど真ん中!? 駄目だって、そんなの!)フルフル

小鳥『響ちゃん、サインに首を振ります』

貴音「………」

響(ミットの位置は…動かない…)

貴音「………」

響(た、たかねぇ…)

響「………」

響(もう…)スッ

小鳥『響ちゃん、足を上げて…』

響(知らないからな!)ビシュ!

小鳥『投げます!』

桐生「ド真ん中? プレゼントかい?」

キンッ!!

小鳥『初球打った! 強烈なゴロが三遊間を襲う!』

響(ああっ、やっぱり打たれ…)

真「はぁっ!!」バシィ!!

響「!」

小鳥『おっとぉ! 真ちゃん、横っ飛び! 飛びついて止めました!』

新谷「頭から滑り込まなくても大丈夫かにゃ…」ズザザ

小鳥『一塁ランナー、二塁に滑り込む!』

真「っとぉ…」ムクッ

真「ふっ!」シュッ

小鳥『真ちゃん、体勢を立て直し一塁に投げます!』

P『ギリギリか…』

コォォォォ

伊織「低っ!」パシッ

桐生「おっ?」トンッ

小鳥『伊織ちゃん体を伸ばして捕球! しかしバッター一塁到達!』

P『きわどいが、これは…』

一塁審「アウトォ!」

小鳥『アウトです! 一塁フォースアウト!』

P『あの体勢からいい送球でした』

ワァァァァァァ!!

桐生「ナイスプレー」

伊織「どーも」ヒュッ

律子「よしよし、これよ。これよこれ」

律子「一塁にキャッチングが上手い伊織がいるから、真は多少送球がズレてもいい。思う存分プレーできる」

やよい「ないすしょーと!」

真「響! あとアウト2つ!」

響「………」

響(そうだ、点を取らせないってのは打たせないのと違う)

響(そりゃ、打たせないのが1番安全かもしれないけど…そんなのムリに決まってる)

引出「ふむ」

小鳥『7番セカンド引出さん』

響(打たせて取る…それが野球の基本だ!)ヒュッ

審判「ボール!」

審判「ボール!」

響「………」グッ

ビシュ!!

引出「うっし!」キンッ!

小鳥『2ボールから、合わせた!』

やよい「はわっ」ピョイン

小鳥『あっと、これはセカンドの頭上越えます! ヒットです!』

P『上手いところに落としましたね』

亜美「やっ、と!」パシッ

新谷「本塁は無理かにゃ…」ザッ

引出「仕事は果たしましたよー…っと」ザッ

小鳥『亜美ちゃんが捕りましたが、既にランナーは止まっています。これで一、三塁!』

やよい「あぅーっ、ごめんなさい…」

響「大丈夫大丈夫、なんくるないさー」

響(打たれた…けど、まだ点を取られたわけじゃない)

赤場「…よし!」

小鳥『さぁ続いてのバッターは7番レフト赤場さん』

響(ランナーを帰さなければ、失点はしないぞ!)

バシン!!

審判「ストライク!」

貴音(いい感触です、響)

クンッ

赤場「わ…」ピタ…

バシ!

審判「ボール!」

小鳥『落としました、これはボール』

P『三塁ランナーがいるのにフォークとは強気ですね…』

貴音(いいですよ、響。気迫のこもったいい球です)

ヒュン!!

赤場「入ってきてる…」グッ

カキィィィン!!

貴音(この球なら…)

ギュィィィィン

小鳥『強烈! ライナーが三塁線に…』

パァン!!

美希「っと」

赤場「そんなっ…!?」カラン

貴音(捉えても、こうなる…!)

小鳥『美希ちゃん、真上を通るライナーを華麗に捕球しました!』

新谷「うにゃ…!」

響「やった!」

小鳥『三塁ランナー、飛び出…』

美希「あふぅ…これでベンチに帰れるの」ポイ

小鳥『して、います…これでダブル…プレー…』

P『………え?』

コロコロ…

小鳥『のはずが…み、美希ちゃん…ボールを、三塁コーチャーボックスに投げました…』

美希「あふぅ」スタスタ

新谷「う、にゃにゃにゃにゃにゃーっ!!」タッタッタッタ

美希「?」

真「うおおおっ!!」ガシッ

新谷「や、やった…」トンッ

真「く…」

小鳥『真ちゃん、追いかけていってボールを拾いますが、投げられません! 三塁ランナー、ホームイン!』

P『これで逆転…』

美希「あれ?」

真「み、美希…」

美希「これ、どうしたの、真クン?」

真「まだ、ツーアウト…」

美希「あ」

小鳥『一塁ランナーは二塁に進んでおります、ツーアウト二塁! 依然ピンチが続きます!』

美希「響…ごめんなさいなの!」ペコリ

響「もー! 正直、こういうのは勘弁してほしいぞ!!」

小鳥『次のバッターは先程フェンス直撃のヒットを打った、9番ピッチャー筒井さん…』

筒井「…悪いけど、もう1点貰うわ」

小鳥『本来なら追加点なしでチェンジだったこの場面、響ちゃんは大丈夫なのでしょうか!』

P『大丈夫なのでしょうかって』

キン!

筒井「んっ!」

パシッ

美希「デコちゃん!」ヒュッ

伊織「デコちゃんゆーな!」パシン

一塁審「アウト!」

P『誰も心配なんてしてないでしょ』

小鳥『美希ちゃんがあっさりゴロを捌いてアウト! チェンジです!』

響「よしっ」

筒井(さっきとは…全然投球が違った。我那覇響…)

筒井「…フン」

響「って、よしじゃない! 逆転されてる!」

貴音「取られたら取り返せばいいではないですか」

あずさ「美希ちゃん、ちょっとは落ち着いたかしら?」

美希「うん…ごめんなさいなの」ペコ

伊織「しっかりしてよ。アンタが4番なんだから」

美希「ノーヒットのデコちゃんには言われたくないって思うな」

伊織「ちょっ…ア、アンタねぇ…!」

やよい「伊織ちゃん、ダメだよケンカしちゃ!」

真「次の回、やよいからじゃない?」

やよい「はわっ、そうでした! いってきまーす!」タタタ

伊織「ぐぐぐ…」

美希「むむむ…」

律子「あーもう、二人とも大人しくやよいの打席を見てなさい!」

小鳥『さぁ4回ウラ、765プロの攻撃です! 逆転されたのを取り返してほしいところ』

小鳥『先頭バッターは5番セカンドやよいちゃん!』

やよい「よろしくお願いしまーす!」ペコリ

ワァァァァァァァ!! アアアアァァァ!! ヒューヒュー!

やよい「よいしょっと」グッ グッ

小鳥『つま先を立てて、前の打席と同じ構えです』

P『まずはコツコツと単打狙いと言ったところでしょうか』

筒井「………」

小鳥『やよいちゃんは先程は三振してしまいましたが、今度の打席は打ってほしいところ』

P『緩急には上手く合わせていましたからね。カーブがあるとわかった今どう対応してくるか』

律子「先頭打者が出るかどうかで得点率は大きく変わってくるわ」

春香「律子さん、そろそろ代打出しません? いつでも行けますよ」

律子「頼むわよ、やよい…」

筒井「こいつか…」ポン ポン

小鳥『筒井さん、ロージンバッグを左手に塗っています』

新谷(初球からカーブ…この球の印象をもっと深く植え付けとくにゃ)

筒井「………」コクリ

スッ

小鳥『さぁ、ワインドアップの姿勢から』

筒井「せっ」ビシュゥ!!

小鳥『投げました、これは!』

ギュルルッ!

やよい「………」シン…

スパァ!

審判「ボール!」

筒井「ん」

新谷「ん?」

小鳥『カーブです! 初球から使ってきました! それにしてもなんという変化なんでしょう!』

P『あのカーブを、どう攻略するのかがカギになりそうです』

新谷(今の見逃し方…)

やよい「ふぅーっ」

新谷(…もう一球、同じとこにカーブ)

筒井「………」コクッ

ビシュッ!

やよい「………」ピタ…

パオンッ!

審判「ストライク!」

新谷(全く打つ気が感じられない…)

やよい「うぅー」

新谷(こいつ、カーブは捨てる気かにゃ…?)

新谷(だったら、お望み通りカーブを続けてやるかにゃ…?)

筒井「………」

新谷(いや…)

新谷(正直言って、今日の筒井のカーブはよくにゃい…)

新谷(曲がりすぎてコントロールが定まらにゃい! 多投させるのは危険だにゃ)

新谷(今だって、同じところと言ったのにストライクに入ってきたにゃ…いつもにゃらストライクかボールかはバッチリ決めてくるのに)

やよい「ふーんふーん♪」

新谷(こいつには万が一打たれても大怪我にはならんにゃ)

新谷(打たせる…)スッ

新谷(ただ、入れるのは変化球だにゃ…次の球種はシュート)ピッ

筒井「………」スッ

小鳥『筒井投手、腕を上げ…』

ヒュン!!

小鳥『投げました!』

やよい「ここっ!」ブルン

クッ

やよい「!」

小鳥『おっと、これは変化球! バットの根元に飛び込んできます!』

やよい「うううっ!!」

ガッ

新谷(あれ…)

新谷(リーチが短い分、芯の方に入った…? まずくないかにゃ…これは)

やよい「うっうーっ!!」グッ

キィィィィィン!

ドッ

小鳥『左中間割った! 割りました! これは長打になります!』

赤場「おおおっ…」ダダダ

パシッ

小鳥『フェンス到達前に、レフトが追いつきました!』

赤場「たぁっ!」ヒュッ

桐生「ふっ!」パシッ

小鳥『中継まで回しますが…』

引出「無理です!」

やよい「たーっ!」ザッ

二塁審「セーフ!」

小鳥『これは悠々セーフ! 二塁到達、ツーベースヒットです!』

新谷(何やってんだにゃ…)

新谷(打たせると決めたら筒井を信じて直球で行くべきだったにゃ…)

新谷(変に欲を出すからこうなるんだにゃ)グッ

小鳥『あら、キャッチャーの新谷選手…マスクを脱いで…』

パシッ!!

小鳥『わ! 顔を叩きました』

P『気合を入れ直したのでしょうか』

新谷(次、次!)

小鳥『さぁノーアウト二塁という絶好のチャンスで回ってきたのは、6番キャッチャー貴音ちゃん!』

ワアアアアァァァァ!!

筒井「………」ガッ ガッ

貴音(今の長打でピッチャーは心を乱していますね)

貴音(ここは畳み掛けましょう。初球は多少強引でも打つ)

やよい「………」ジリジリ

筒井「ふっ」ヒュッ

やよい「はわっ」ズザザッ

小鳥『わっと、牽制球! やよいちゃん、頭から二塁に戻ります!』

二塁審「セーフ!」

小鳥『あんな大きなリードで大丈夫でしょうか…』

P『まぁ、しかしこれならヒットさえ出れば同点、そうでなくとも転がせばワンアウト三塁…ですが』

貴音「ふっ」ブン

キンッ!!

小鳥『貴音ちゃん、ストレートを真芯で捉えました!』

貴音「抜け…」

桐生「ないなっ!」

パァン!!

貴音「!」

小鳥『が…!? ああっ、これは…ショートが腕を伸ばし捕りました! ショートライナー!』

やよい「はわっ!?」キキーッ

小鳥『やよいちゃん、ブレーキをかけ二塁に戻ろうとしますが…』

桐生「ごめんね」ヒュッ

引出「アウトだ」パシッ

二塁審「アウトッ!」

やよい「あ…」

小鳥『その前にセカンドに送球しゲッツー! 大きなリードが仇になったか!』

P『貴音の打球も強すぎた…しかし少しズレていたら同点でした、責められませんよ』

貴音「やよい…申し訳ございません。せっかくの出塁を…」

やよい「いえ! 私も飛び出しすぎてたし…次の打席がありますから!」

律子「はいはい、まだツーアウト! 攻撃は終わってないわ!」

律子(本音を言えば、最悪ね…このチャンスで1点入れてほしかった…)

律子(せめて転がってれば、ワンアウト三塁でスクイズできたんだけど…なんて言っても仕方ないわね、切り替えないと)

千早「………」カラン

審判「フォアボール!」

真「あ! ほら、千早が出たよ!」

小鳥『ツーアウトからですが、千早ちゃんが選んで出塁!』

P『バット、全く振りませんでしたね』

小鳥『さぁ、まだわかりません! 次の打者は8番ライトあずささん!』

あずさ「千早ちゃんが出た…なら」

グッ

あずさ「よいしょっと」

小鳥『あずささんがベースへ覆い被さる!』

新谷「む…」

ドタプーン

小鳥『これは、内角には投げにくい!!』

ワハハハハ…

P『小鳥さん』

新谷(でも実際、これは投げにくい…)

新谷(筒井はこれくらいで揺れたりしにゃいが、ゲッツーからの四球の後…嫌なタイミングで仕掛けてくるにゃ)

スッ

新谷(でも何も警戒する必要はにゃい! 遅い球を投げなければこいつは打ってもヒットにならんにゃ! 普通に投げてこい、筒井!)

筒井「………」ス…

パンッ!

審判「ボール!」

新谷(筒井…!)

あずさ「ふぅっ」

新谷(ゲッツーからの四球で調子が狂ったかにゃ…? そしてこいつは依然同じ構え…なら…)ススッ

新谷(ビビらせて引かせれば終わりにゃ! ぶつける気で内角に投げろ! このコースなら当たってもデッドボールにはならんにゃ!)

筒井「………」コクッ

ビシュ

小鳥『筒井さん投げまし…!?』

あずさ「…!」グッ

パァン!!

審判「ストライク!」

新谷「う…」

小鳥『危ない! ぶつかるかどうかギリギリのところをかすめていきました!』

P『審判の判定はストライクです』

あずさ「ふぅ…」

グッ

小鳥『ああっと、ま、まだベース寄りに立っています!? あずささん…!?』

新谷(こいつ…)

審判「ボール! フォアボール!」

新谷「ストライクだにゃ!」

審判「いや、今のは入ってない!」

小鳥『キャッチャー、アピールしますが覆りません! 連続四球!』

筒井「くそっ…」ガッ

小鳥『ピッチャーの筒井選手、制球を乱しています』

P『あのゲッツーで気が緩んだんですかね。その緩みを一歩も引かない姿勢で揺さぶりました』

小鳥『あずささんの作戦勝ちと言ったところでしょうか! そして今の四球で千早ちゃんが二塁に進みました! ツーアウトながら、チャンスです!』

亜美「よーし、このまま一気に決めちゃうよーん」

小鳥『この場面に打席に立つのは、9番センター亜美ちゃん!』

律子「代打!」

亜美「へ!?」ガクッ

小鳥『おっと765プロ、律子さんが代打を出すようです』

春香「はいっ! ついに私の出番ですね!」ガタッ

律子「真美、出番よ!」

春香「………」スッ

雪歩(また座った…)

真美「んっふっふ~、ついにこの秘密兵器の登場だね~」

亜美「もーりっちゃん! 最後くらい打たせてくれたっていいじゃーん」

雪歩「どこかで交代するのは知ってましたけど…どうしてこのタイミングなんですか?」

律子「普通のヒットだったらそのまま打たせるつもりだったわ」

律子「でも、相手は明らかに調子を崩してる。1%でも傷口を広げられる可能性が上がるならぶつけていくべきよ」

真美「やっほー、みんなお待たせ~! 真美だよーん!!」

ワアァァァァァァァァ!!

小鳥『さぁ、代打で左打席に入るのは双海真美ちゃん! 亜美ちゃんの双子のお姉さんです!』

新谷(双子…?)

P『筒井選手は左投げ…左対左は打者不利のはず。これは、何か狙ってますね』

新谷(こんにゃもん、セーフティバント狙いに決まってるにゃ)

新谷(セーフティなら一塁に近い分左打者の方が有利…、素人が考えそうなことにゃ)

真美「うりゃー!!」

ガキィン!!

ドンッ!!

一塁審「ファール!」

小鳥『思いっきり引っ張りました! 一塁側フェンスにぶつかるファール!』

新谷「にゃ!?」

新谷(セーフティ狙いじゃにゃいのか…!? いや、そんなことより筒井、こんな簡単に捉えられるなんて…)

筒井「………」

新谷(ああっ、明らかに動揺してるにゃ! あいつらもそれがわかってんだにゃ!)

新谷(落ち着くにゃ筒井! ストレート、外角低め! 多少甘くてもいい、打たれるなら打たれろ、さっさと切り替えるにゃ!)

ビュッ!

真美「ん!」ピタッ

審判「ボール!」

新谷「にゃ…」

小鳥『低め…これが外れてボール!』

P『ピッチャー先程から制球を乱している様子』

新谷(これがボールじゃあチェンジアップで決められにゃい、次は…)

筒井「………」スッ

新谷(? 筒井、カーブを投げさせろって?)

新谷(カーブはまずいにゃ…ここでカウントを悪くしたくないにゃ)

真美「たりらん、たりらっ、ムテキん♪」

筒井「………」

新谷(でも…こいつ相手ならカーブは100%打てにゃい…ううむ…)

スッ

小鳥『バッテリー、サインが決まったようです。セットポジションから…』

筒井「ふっ」ギュルッ

小鳥『投げました!』

ギュギュン!

真美「おおっ! 逃げる!」ピタッ

パシィ!!

新谷「………………」

審判「…ボール!」

新谷「あー…」

小鳥『またボール! ボールが続きます』

P『これは三者連続四球もありえますよ』

新谷「ちょっと」

審判「タイム!」

小鳥『おっと、南六高がタイムを入れました』

新谷「………」

筒井「………」

P『バッテリー、何か話していますね』

新谷「ふぅ」ザッ

小鳥『キャッチャー守備位置に戻ります』

審判「プレイ!」

真美「んっふっふ~、真美の恐ろちさにビビったのか~い?」

新谷(誰がにゃ!)

筒井「………」

小鳥『さぁ、2ー1のバッティングカウント』

新谷(さっきまでの筒井は独り相撲してただけだにゃ)

新谷(そう、普通にやれば筒井はこんな奴に…)

筒井「ふーっ…」スッ

ポンッ

小鳥『おっと! チェンジアップです!』

スッ

小鳥『あっ!? 真美ちゃんの動きが…これは!』

新谷「や…」

真美「えいっ」コンッ

新谷「やっぱりセーフティバントじゃにゃいかーっ!」

小鳥『一塁線、絶妙なところです!』

P『南六高、意表を突かれたのか反応が遅い』

筒井「く…」パシッ

小鳥『ピッチャー筒井さん、ボールを拾いますが…』

真美「はい、オーライオーライ!」ダダッ

筒井「はぁっ…」

小鳥『真美ちゃん、セーフティバント成功! ツーアウトですがこれで満塁、満塁です!』

P『これはわからなくなってきました!』

響「よーし! 逆転だ!」

小鳥『満塁の場面で打席に立つのはー! 1番ピッチャー響ちゃん!!』

ウォォォォォォォォオオオオ!!!

小鳥『エース対エースの対決! 場内沸いております!』

筒井(何故、こんなことに…)グッ

ヒュッ!!

新谷「!?」

小鳥『ピッチャー投げました!』

響「うりゃーっ!!」

カキィィィン!!

筒井「あ…!」

筒井(飲まれているのか、私が…こいつらに…!?)

ゴォォォォ

小鳥『打球がレフト線に上がる!』

赤場「くっ!」

タンッ!!

小鳥『レフト届かない! ライン際に落ちましたっ!』

三塁審「ファールッ!!」

筒井「!」

響「うっ」

P『あと少し内側なら走者一掃でしたが…』

小鳥『響ちゃん、打席に戻ります』

筒井「………」ザッザッ

筒井(何をしている私は…)

筒井(このままこいつらにいいようにされて、それでいいのか…!)

審判「プレイ!」

筒井「………」キッ!

響「ん!」

筒井(ねじ伏せる…)スッ

パアン!!

響「おっ…」ビクッ

審判「ボール!」

小鳥『ストレートが高めに行きました! 1ー1!』

スパァン!!

響「あっ!」

審判「ストライク!!」

小鳥『三球目もストレート! 低めギリギリに突き刺さります!』

P『いやー高めからのあそこは手が出ませんよ』

響「このままじゃまずいぞ…」グッ

小鳥『追い込まれた響ちゃん! 頑張って! さぁ四球目!』

筒井「………」スッ

ビシュ!!

小鳥『外角です! これもストレートか!?』

響「やっ!」ブンッ

クンッ

響「え!? シュート…」

カンッ!!

響「あ…!」

小鳥『ああっ! バットの先端! 一塁方向へファウルフライを打ち上げてしました!!』

灰賀「がぁ…!」ダダダ

小鳥『ファースト、追いかけます!』

P『これは…』

灰賀「ぐぁぅ!」ズザザ

響「あ…!」

小鳥『ああ、ファーストが滑り込んでキャッ…』

ポロ…

灰賀「ぐ…」

一塁審「…ファール!」

小鳥『ああ、危ない…ミットから落ちました…』

律子「雲行きが怪しくなってきたわね…」

雪歩「ピッチャーの人、立ち直ってきてる…」

春香「あの、律子さん」

律子「それ以上何も言わなくていいわ」

小鳥『依然ワンボール、ツーストライク。どうするか響ちゃん』

響(せっかく、みんながチャンスを作ってくれたのに…)

響(ぜったい、無駄にはしたくない…でも、あいつやっぱり凄いぞ…)

響(次はどう来る…?)

筒井「………」スゥ…

ヒュッ

小鳥『投げ…ああっ!?』

ポーン

響「うっ!?」グッ

P『ここでチェンジアップ…!!』

フワ…

響「うぅ…!」グラッ

小鳥『響ちゃん、既に振りだしている! タイミングが合っていません!』

響(だ、駄目だこのままじゃ…空振る!)グッ

ギシッ

響(う…!)

グググ…

響「うおおっ…!」

キンッ!!

筒井「…!?」

小鳥『う、打ちましたっ! 強引にスイングを止め、チェンジアップを捉えたっ!』

ゴォォォ

ドンッ

小鳥『レフト線に落ちます! 今度はフェアッ!!』

ワアァァァァァァァァァァァ!!

響「よし…!」タッ

ビキッ…

響(…! 腰が…)

千早「ふぅ」タッ

小鳥『千早ちゃんがホームベースを踏みます! これで3対3! 追いつきましたっ!』

あずさ「よーしっ、私も本塁に…」タッ

小鳥『あずささんが三塁を回りましたっ! これはもう1点入るか!!』

P『このまま逆転…』

赤場「させるかっ…!」パシッ

小鳥『あっ、南六高レフトの赤場さん、今ボールに追いつき…』

赤場「うあぁっ…!」ビシュ!

小鳥『助走をつけて…本塁にレーザービーム送球!』

新谷「通さにゃい…!!」

あずさ「…!」

小鳥『あずささん、本塁に突っ込みます!』

パシッ!!

ザザザッ!!

小鳥『これは…!?』

アァァァァァ…?

審判「………アウトッ!!」

アァァァァ…

あずさ「あ…」

新谷「にゃぁー…」

小鳥『アウトですっ! スリーアウト!』

赤場「はぁ、はぁ…」

P『タイミング的にはセーフでもおかしくなかったんですが…見事な送球でした』

小鳥『次は5回のオモテ、南六高の攻撃になります』

ヒュッ

響「う…!」ズキッ

響(腰が…でもこれくらいなら大丈夫…だよね?)

貴音「響…?」

小鳥『打者は今日三打席目の1番センター日野さん』

日野「取られたら取り返すよーん」

P『彼女の足の速さは散々見せられています、ノーアウトでは出したくないですね』

響「えいっ!!」ヒュッ

審判「ボール!」

審判「ボール!」

小鳥『立て続けに2球ボール!』

P『試合も終盤に差し掛かってきました、疲れが出てきたか?』

響「うりゃっ!」ヒュン!!

日野「あ~ら~よっと!」キンッ

響「あっ!」ピョン!

小鳥『打った! ピッチャーの頭を越えてショートの前に落ちます!』

P『日野選手の足だとこの当たりはヒットになる可能性がありますよ』

パシッ

真「うお…りゃっ!」

小鳥『真ちゃんの送球! 間に合うか!?』

グーッ

伊織「んっ!」パシッ

日野「おっ?」タンッ

一塁審「アウト!!」

小鳥『アウトです! 伊織ちゃん目一杯体を伸ばし捕球、ギリギリ間に合った!』

P『日野選手を塁に出さずに済んだのは大きいですね』

伊織「ふぅ…」

響(大丈夫…)

小鳥『さぁまずはワンアウト! 続いてのバッターは2番ライト松尾さん』

響「りゃっ!!」ビュッ

ズキ…

松尾「おっと…」キンッ!

一塁審「ファール!」

小鳥『初球に手を出しファール!』

響(大丈夫だ…)

響「うりゃっ!」ヒュッ

審判「ストライク!」

松尾「え!?」クルッ

審判「入ってる!」

小鳥『おっと、松尾さんきわどいところを見逃しツーストライク!』

P『今のは難しいところですね…2ストライクなら手を出していたところですが』

響(追い込んだらフォーク…)

松尾「…………」

響「せいっ!」スフュッ

ヒュルルル…

響(落ちない…!?)

松尾「やっ!」キンッ!!

小鳥『打ちました…! が…』

フワ…

やよい「はいっ」パシッ

二塁審「アウト!」

松尾「あーっ、もう…」

小鳥『これは打ち上げた打球! やよいちゃんがしっかりキャッチしてアウトです!』

P『松尾選手はフォークを狙っていたようですが、読みが外れましたね』

響(…大丈夫、あと一人!)

貴音「響…?」

小鳥『ポンポンと打ち取りましたが、次はクリーンナップです! 3番ファースト灰賀さん!』

灰賀「ぐぅ…」

響「行くぞ…」スッ

小鳥『さぁ、ワインドアップから…』

ズキ…

響「うっ!」ビシュ

小鳥『投げ…あっ!?』

ゴォォォォォォオ

小鳥『これは暴投です! 危な…』

灰賀「うがう!!」グワッ

キィィィン!!

響「は!?」

貴音「な…!?」

小鳥『うっげぇぇぇぇぇ!? あ、失礼いたしました!!』

P『灰賀選手、顔面に向かってくるボールを打ち返しました…』

真美「っと!」パシッ

灰賀「ぐぅ…」ピタッ

小鳥『打球は綺麗にセンター前! 単打になります!』

P『悪球打ちのクリーンヒットか…』

真「な、なに、あれ…」

ズキズキ

響(くぅ…)

貴音「………」

小鳥『南六高ランナーが出て、次の打者は…4番の白馬さん!!』

ォォォォォォオ…

P『客席からも歓声が聞こえてきますね』

小鳥『響ちゃん、4番打者を抑えられるのか!? それとも南六高が再びリードするか!?』

白馬「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

響「ふーっ…」チラッ

小鳥『響ちゃん、一塁に目線を送ってから…』

響「えい!」シュッ

小鳥『投げます!』

白馬「………」

パンッ!!

審判「…ボール!」

小鳥『僅かに外れたか! ボール!』

P『白馬選手、微動だにしません』

響「ふぅ、ふぅ…」

白馬「………」ゴゴゴゴゴ

響(どこ投げても打たれる気がするぞ…)

貴音「………」スッ

響(だったらとにかく低め、か…そうだ)

響「ふーっ…」スッ

響(たかねのミットだけを見て…)

ビシュッ!!

小鳥『二球目!』

P『いいコース…』

白馬「………」ヒュッ

キィィィィィン!!

小鳥『振り切った!?』

P『これは長打に…!』

響「うおおっ!!」バッ!

パァン!!

ポトッ

小鳥『!? 響ちゃんが、打球を…叩き落としましたっ…!!』

オオオオオオオオォォォォ!!

響「っ…」ズキン

貴音「響っ!!」バッ

小鳥『ピッチャー前に転がったボールは貴音ちゃんが拾いますが…』

白馬「………」

灰賀「ぐぁぅぅ…」

小鳥『どこにも投げられません! ピッチャー強襲ヒット! 一、二塁!!』

P『我那覇が止めてなかったらライナーでセンターまで抜けていたかもしれません…』

小鳥『えーと、次は…あれ!?』

響「………」

小鳥『ひ、響ちゃんが膝をついています! どうしたんでしょうか!?』

ザワザワ…

審判「タイム!」

貴音「響」

響「あ、たかね…」

貴音「今の打球…いえ、前の響の打席でしょうか。大丈夫なのですか?」

響「だいじょぶだいじょうぶ。こんなの、大したことない…」

貴音「………」ギュッ

響「いたたたたた!!」

貴音「なるほど、腰ですか」

小鳥『響ちゃんに何かあったようですが…』

貴音「これでは投球は無理ですね。替わってもらいましょう」

響「え!?」

貴音「響が無茶をして怪我が重くなって、一体誰が喜ぶのですか」

響「! ………」

貴音「響。この回までよく頑張ってきました。ここから先、私達に任せてもらうわけにはいかないでしょうか」

響「……………」

ザワザワザワ

小鳥『ああっと!?』

律子「………」ザッザッザッ

小鳥『ベンチから監督の律子さんが出てきました!』

春香「………」ザッザッ

P『ベンチメンバーも全員出てきてますね…』

貴音「というわけです」

響「みんな…ごめん」

春香「響ちゃんはよく頑張ったよ! あとは私に任せて!」

律子「それで、次の投手を誰かにするかなんだけど…」

真「ボクが投げましょうか?」

やよい「私も、ちょっとくらいなら投げられます!」

律子「この二遊間が崩れるのは、ちょっと痛いわね…」

美希「ミキ、ピッチャーできると思うケド。やろっか?」

春香「律子さん、私を使ってください! こんなこともあろうかと、ピッチング練習はしてきました!」

律子「よし、決めた」

春香「みんな、行くよっ!」

律子「ピッチャー、雪歩!!」

春香「ヴァイ!?」

雪歩「えっ…わ、私…ですか!? でも、私の球全然速くないし…」

律子「だからいいのよ。相手は響の球に慣れてるから、雪歩の球はもっと遅く見えるはず」

伊織「そうね、雪歩はコントロールも悪くないしいいんじゃないの」

律子「それに、雪歩の大一番での肝の座り方はみんな知ってるでしょ」

美希「うーん、確かに。じゃあ雪歩がいいの」

雪歩「で、でも…ピッチャーって、打球から1番近いですよね…? 打球が飛んで来たら…」

律子「全力で避けなさい。何のためにいつもダンスのレッスンしてると思ってるの?」

伊織「少なくとも、このためではないと思うわ…」

やよい「大丈夫ですよ! 雪歩さん、ちゃんと練習してきましたから! 捕れます!」

春香「律子さん、私はピッチャーライナー捕れますよ! たぶん!」

律子「いけるわね、雪歩?」

雪歩「えっと…」

響「頼むぞ、雪歩!」

雪歩「…はい!」

響「………」ザッ

雪歩「ふーっ…」

小鳥『響ちゃんがマウンドを降り、雪歩ちゃんが上がります!!』

ォォォォォォォオオオ!?

小鳥『今のプレイで何かトラブルがあったのでしょうか…』

P『まぁ、そうでなくても投手交代のタイミングとしてはちょうどいいと思いますよ』

小鳥『あ、情報が入ってきました。響ちゃんは腰を痛めたようです』

ザワザワ…

P『大した怪我ではないそうですが、大事を取るとのことです』

響「頼むぞー、雪歩…」

亜美「よっしゃー、行けーゆきぴょん!」

春香「ぶつぶつぶつ…」

雪歩「えいっ…!」

シュルルル

貴音「よし」パシッ

新谷「なんにゃ…? もっとマシなピッチャーはいないのかにゃ?」

貴音「これが最善ですよ」シュッ

雪歩「あっ…!」ポロッ

新谷「お前が投げた方がマシじゃにゃいか…? しかも落としてるじゃにゃいか」

貴音「………」

小鳥『さぁ、投球練習も終わり…』

審判「プレイ!」

小鳥『試合再開ですっ!』

ワァァァァァァァ…!

小鳥『南六高の打者はクリーンナップの5番キャッチャー新谷さん!』

雪歩「えーと…えいっ!」シュッ

小鳥『ツーアウト一、二塁、ピッチャー交代からの第一球!』

キュルルルル

灰賀「うがう!」ダッ

小鳥『あっ!? 二塁ランナーの灰賀さん、盗塁です!』

貴音「…!」

新谷「にゃ…」ブンッ

パシッ

審判「ストライク!」

小鳥『新谷さん、空振りで盗塁を補助します!』

貴音「ふっ」シュッ

小鳥『そして貴音ちゃんはすぐさま三塁に送球!』

美希「えいっ!」バシッ

灰賀「が…!」ザザッ

審判「………………」

美希「………」

灰賀「………」

審判「…セーフ!!」

貴音「く…」

雪歩「あ…」

小鳥『ああっと、盗塁成功! これで一、三塁です!』

P『ギリギリでしたが、予想外の行動でした。まさか交代直後に仕掛けてくるとは…』

小鳥『ツーアウト、1つでもアウトを取れればチェンジですが…』

新谷「低めギリギリ…なかなかいいコースに投げるじゃにゃいか」

貴音「………」

新谷「それに、球は遅いけどフォームもクイックもしっかりしてる…にゃるほど、侮れんにゃ」

貴音「貴女も…」

雪歩「………」

貴音(雪歩、心配はいりません。貴女なら抑えられるはずです)

雪歩「えいっ!」シュッ

小鳥『雪歩ちゃん、第二球目ですっ!』

キュルルル

新谷「………」ジッ

パシッ

審判「ストライク!」

小鳥『入ってます! ツーストライク!』

P『ギリギリのところ攻めてますね。にしても…』

小鳥『?』

P『なんだか嫌な見逃し方ですね…今のは』

新谷「大体わかったにゃ」

貴音「………」

雪歩「ふーっ…」グッ

小鳥『セットポジションから…』

貴音(まだです…)

貴音(………よし)スッ

雪歩「えいっ」シュッ

小鳥『投げました!』

シルル

貴音(低め…ですが…)

貴音(これは入って…)

ヒュッ

新谷「にゃっ!」キンッ!!

雪歩「!」

ゴォォッ

小鳥『あああっ!! やめっ、やめて!』

ダンッ

P『打球はセンター前へ…落ちました!』

灰賀「ふしゅぅ…」トン

小鳥『ああああっ、せっかく追いついたのに…!』

P『サードランナーが帰り、再び南六高リード! 音無さん、仕事してください!』

真美「むっ!」パシッ

小鳥『センター真美ちゃん、投げられません! 既にランナー二塁、打者も一塁に到達しております!』

雪歩「ああ…」

雪歩(響ちゃん、私に任せてくれたのに…こんなあっさり、点取られちゃった…)

雪歩(やっぱり、私じゃ…)

審判「タイム!」

雪歩「えっ?」

小鳥『765プロ、タイムをかけてマウンドに集まります』

新谷「いちいち大げさにゃ…」

タッタッタ

貴音「雪歩」

雪歩「四条さん、私…」

貴音「大丈夫です、雪歩」

貴音「これは貴女が出したランナーではありません。ですから、貴女だけの責任ではない」

雪歩「でも…」

真「投げてればこんなこともあるさ、気にしないで行こう」

雪歩「真ちゃん…」

伊織「仮にランナー全部返しても、取り返すわよ」

雪歩「伊織ちゃん」

春香「そうだよ! だから大丈夫!」

雪歩「なんでここにいるの?」

美希「ま、気楽にやればいいって思うな」

雪歩「美希ちゃん」

やよい「雪歩さん! 習ったこと、ちゃんとやれば大丈夫ですっ!」

雪歩「やよいちゃん…うん」

審判「プレイッ!!」

小鳥『試合再開ですっ!』

P『依然ツーアウトながら一、二塁のピンチ。抑えられるか萩原』

小鳥『南六高、次の打者は6番ショート桐生さん!』

桐生「さて…点差を開かせてもらうよ」

雪歩「………」ザッ

桐生「ん…?」

小鳥『ピッチャープレートに足をかけ…』

雪歩(私は響ちゃんと違って、速い球は投げられない…だから)

雪歩(とにかく低めに…前の方で…放す!)ヒュッ!

小鳥『投げました!』

ギュルルルルル

桐生「遅い…」

キン!

審判「ファール!」

桐生「ん!」

貴音「いい球です、雪歩」

シュルルルル

桐生「くっ!」キンッ

審判「ファールッ!!」

小鳥『打球はファールグラウンドへ! 南六高のバッター桐生さん、遅い球にタイミングが合いません!』

雪歩「ふぅ…」

小鳥『やっぱり、速い球から遅い球を見せられるとリズムが狂ってしまうのでしょうか?』

P『それもそうですけど、これは四条のリードが上手いですね』

小鳥『リードって…低めのストレートだけですよ?』

P『まぁ、それはそうですけど。萩原の投球を見ていてください』

貴音「………」スッ

雪歩(えーと、四条さんがああやって指を出したら…)バッ

小鳥『雪歩ちゃん、セットポジションに入りました』

貴音「………」ススッ

雪歩(指を引っ込めて、もう一回出したら投げる!)

P『四条は、間を一球一球変えながら投球させてますよ』

雪歩「えいっ」シュッ

ポーン

小鳥『もう投げた!』

桐生「っ!」ブンッ

キィン!!

雪歩「!」

小鳥『打ち上げた! ライト右のライン際の方に飛んでいきます、これは切れるか!?』

P『切れなかったら、もう1点入りますが…』

雪歩(大丈夫…きっと…!)

あずさ「あら~、こっちに飛んできたわね~」

小鳥『ああっと、あずささんがまた変な位置にいる! なぜそんなライン際に!』

P『でも、これなら楽々捕れます』

ヒュルルルル…

あずさ「はいっ」パシッ

一塁審「アウト!」

小鳥『あずささんがしっかりがっちり掴んでアウト! チェンジ!!』

雪歩「やった…!」

小鳥『南六高、二者残塁!』

筒井「1点止まりか…」

桐生「ごめん、筒井」

筒井「別にいいよ。抑える」

P『萩原はコントロールはいいし、球速は遅いですが球自体も悪くない。これはなかなかいい人選だと思います』

小鳥『ですが、これで無失点に抑えるのは難しいのでは?』

P『それは…仕方ないでしょうね』

小鳥『あっ、5回ウラ765プロの攻撃! バッターは…』

P『だから…』

小鳥『2番ファースト伊織ちゃん!』

P『やっぱり、打たないとですね』

伊織「言った以上は、取り返さないとダメよね…」

ワァァァァァアアア!! ヒューヒュー!!

小鳥『伊織ちゃんは守備では好プレーを見せていますが打席はここまで三振と進塁打とあまり奮ってるとは言えません』

P『3打席目となるこの回、そろそろ筒井選手の球にも慣れてきた頃、期待です』

筒井「………」

小鳥『対して前の回は崩れかけたものの1失点に抑えた筒井さんですが、この回はどんなピッチングを見せるのか』

筒井「ふー…」クイッ

小鳥『ピッチャー、グローブを高く掲げワインドアップ』

伊織「来なさい…」グッ

ヒュン!!

小鳥『第一球!』

ズバァ!

伊織「………」

審判「ボール!」

小鳥『第一球目はストレートが外れてボール』

P『自信を持って見逃した感じでしたね』

パァン!

審判「…ボール!」

筒井「………」

小鳥『二球目もストレートが入らずボール球』

P『まだ調子が戻らないか筒井選手』

伊織(これがストライクに入ってきたら…)

伊織(打てる…と思う、少なくとも最初の打席みたいなどうしようもなさはもう感じないわ)

筒井「………」

伊織(さて、次の球は…)

伊織(カウントを悪くしたくはないからカーブはないわね。そして、ストレートが二つ続いてきたから次はチェンジアップかシュートか)

ス…

筒井「ふっ…!」シュッ

ビュン!

伊織「!」

伊織(三球連続ストレート…!)ブンッ

伊織「だっ!!」キンッ!!

小鳥『おっと! 伊織ちゃん打ちましたっ!』

伊織「よしっ!」

伊織(なんとか合わせた…落ちる!)

ゴォォォォ

筒井「………」

小鳥『打球は右中間に飛んでいます!』

P『これは落ち…』

日野「はいよっ!」

パシン!!

伊織「はっ!?」

小鳥『ああああああっ!?』

二塁審「アウト!」

小鳥『アウトですっ! 俊足日野さん、センターへの打球に追いつきました!』

伊織「どういう守備範囲してんのよ…」

日野「ふいー、ギリギリかー」ヒュッ

引出「ナイスセンター」パシッ

小鳥『あーっ、実に惜しい当たりでした!』

P『しかしセンターの守備範囲内です、エースの筒井さんが目立ちますが南六高は守備もかなり鍛えられていますね』

小鳥『しかし、ここからはクリーンナップ! 期待したいところです! 打順は3番ショート真ちゃん!』

キャァァァァァァァアア!!

パァン!!

審判「ボール!」

真「………」

真(ストレートか今のは…? 勢いがない…)

クッ

小鳥『二球目!』

グオォォン!!

真(カーブ!)グッ

審判「ボール!」

小鳥『真ちゃん、バットを止めました! 変化球外れてボール!』

P『二球続けてボール先行、直前の打席と同じ展開ですね』

真(ストライクが入らないな…疲れてきてるのか?)

真(ワンアウト…美希も前の打席のようなことはないだろうし、打てば少なくともやよいには回せる)グッ

小鳥『真ちゃん、バットを短く持ちました』

P『単打狙いでしょうか、星井は初回にホームランを打っていますし高槻も前の打席当たっていますから』

筒井「………」

ヒュッ!

パシッ!

審判「ストライク!」

真(カウントには余裕がある、まだきわどいところに手を出す必要はない)

真(甘いところに来たら…)

ヒュッ

真(逃がさない!)ブンッ

カンッ!!

筒井「ち…」

小鳥『流し打ち! ライト線に落ちます、フェアです!』

真「よし!」

小鳥『真ちゃん、一塁を蹴ります!』

松尾「っとっとっと!」パシ

真「ん!」

小鳥『…が、ライトが捕球! このタイミングでは間に合わないか! 一塁に戻ります!』

P『怖いくらい綺麗なヒットでしたね』

小鳥『ランナーが出て同点に追いつくチャンスです! バッターは4番サード美希ちゃん!!』

ワアアアアアアアアアァァァァァァアアアアアア!!!

ブンッ

美希「よしっ」

小鳥『先程はあっさり三振してしまった美希ちゃんですが…この回は素振りをして、やる気充分か!』

P『………』

筒井「………」ザッ

美希「ふーっ…」

小鳥『美希ちゃんは一打席目にはホームランを打っています、この打席はどうなるのでしょう!』

筒井「………」グッ

小鳥『さぁセットポジションからまずは第一球!』

ヒュッ!!

小鳥『投げました!』

キンッ!!

美希「っ!」

小鳥『あっ! 打ち上げました! キャッチャーへのファールフライ!』

新谷「うにゃ…」

トンッ

審判「ファール!」

小鳥『が…これはバックネットに当たります! ファール!』

筒井「………」

美希「うーん…」

春香「律子さん、美希が押されてますよ!」

伊織「私や真の時とは随分様子が違うのね、あのピッチャー…」

律子「おそらく、塁に誰か出るまでは…あるいは、4番に回るまでは抜いてたんでしょうね」

パァン!!

審判「ストライクッ!!」

律子「美希を完璧に抑えるために」

ザザッ

真「ふぅ」

小鳥『おっと、今の投球のうちに真ちゃんが進塁しています! キャッチャー投げない、完全に盗みました!』

筒井「………」

新谷「にゃー」

真「おいおい、こっち全く見てないぞ…完全無視か…」

桐生「ナイススチール」

真「あ、どうも」

桐生「君より今はあの金髪の子が気になるんだろうね」

真「ちぇ、くやしいなぁ…」

ス…

筒井「はっ!」シュッ

ギュルルルルルル

小鳥『この変化は…カーブですっ!』

美希「入るっ…!」グッ

ブンッ!!

美希「………」

筒井「………」

新谷「…にゃ」

審判「ストライク! バッターアウトッ!!」

P『ああ…!』

小鳥『な…なんと、美希ちゃん三球三振! カーブにかすりすらしません!』

筒井「~~~っ!」グッ

小鳥『筒井さん、マウンド上でガッツポーズ!』

新谷「筒井…」

美希「………」トボトボ

真「美希…」

小鳥『あれ!? 真ちゃんが三塁に到達しています! いつの間に…』

真「ちょっと小鳥さん…」

小鳥『ツーアウトになりましたが、まだ得点のチャンス! ここでバッターは5番セカンドやよいちゃん!』

ワアアアアァァァァァ…!

やよい「雪歩さんのためにも、がんばろっと」

筒井「………」

律子「フォアボールじゃ得点にならないわ、打ってやよい…」

新谷(単打でも打たれれば失点…そういう意味じゃこいつはさっきの奴より怖いが、今の筒井なら…)

新谷(あのピッチャー相手ならもう1点くらいは簡単に取れると思うが、与えないに越したことはないにゃ)

筒井「ふっ!」シュッ

やよい「んっ!」カンッ

ドンッ

三塁審「ファール!」

小鳥『三塁側のフェンスにぶつかりファール! 当たりはよかったんですが』

P『うーん、今のはどっちかと言うと打たされた感じですね…』

筒井「ふっ!!」ビシュ

ギュルルルルルルルル!!

やよい「ううっ!」ブンッ

パンッ

審判「ストライクッ!」

やよい「あ…」

小鳥『速っ…今日最速の球で空振り! 二球で追い込まれました!』

P『高い…けど速いから思わず手を出した感じですね。しかし、こういう球は決め球に持っていくものですが』

小鳥『となると、次の球は…』

新谷(チェンジアップだにゃ!)

新谷(こいつが緩急差に強いと言っても、今の球を見せられたらヒットにはできんにゃ)

筒井「………」フルフル

小鳥『おっと…筒井さんが首を横に振っています』

新谷(ん、カーブ? まぁ、カウントも悪くないしこれで決めるのも…)

筒井「………」フルフル

新谷(ストレートで決めたいのかにゃ? それなら一球外してから…)

筒井「………」フルフル

小鳥『なかなかサインが決まりません南六高』

クイッ

新谷「は…」

新谷(シュート!? この場面でかにゃ!? それに、さっき打たれて…)

筒井「………」

新谷(いや…だからこそ…かにゃ)

新谷(だったら言うことはにゃい、投げてこい筒井!)

新谷(さっき打たれた場所…ここに投げ込んでねじ伏せるにゃ!)

小鳥『サインが決まったようです! 筒井さん、投球動作に入ります!』

筒井「ふっ!」ビュッ

やよい「!」

小鳥『内角っ!』

やよい「えいっ」ブンッ

新谷(読まれてる!? いや、反射神経かにゃ!? 芯がちょうどボール二個分外側!)

クンッ

やよい「えっ!?」

新谷(三個分…曲がった!?)

ガッ

キン!!

やよい「あう…!」

小鳥『おっと、バットの先端! 詰まりました! 一塁線ボテボテのゴロ!』

灰賀「がぁぁっ!」バッ

小鳥『ファースト追いつき…』

筒井「灰賀!」

灰賀「がう!」ビュッ

小鳥『振り向きざま送球!』

パシ

一塁審「アウト!!」

やよい「あ…!」

真「く…駄目か…」

小鳥『ピッチャーが一塁踏んでアウトですっ!! これでスリーアウト、チェンジ!』

筒井「よしっ!!」

新谷(こ、こんな闘志を剥き出しにした筒井、久しぶりに見るにゃ…)

P『ここに来て調子を上げてきました、筒井選手…星井、高槻と凡退です』

小鳥『さぁ大変なことになって参りました6回オモテ』

小鳥『まず南六高7番の引出さん、7球粘られましたがこれをファーストゴロに抑えます』

小鳥『そして8番の赤場さんがボールからの初球打ち、ライト前に落ちますがあずささんの守備位置のズレにより二塁打になりワンアウト二塁』

小鳥『続く9番筒井さんがセンター前のヒット…追加点を許し、さらにセンターへの送球の間にバッター進塁し依然ワンアウト二塁』

小鳥『そして打者は四打席目となる1番の日野さん、セーフティバントでギリギリのタイミングでセーフ! こうしてワンアウト一、三塁になってしまいました! 765プロ、絶体絶命か!?』

あ、ミスです

>小鳥『続く9番筒井さんがセンター前のヒット…追加点を許し、さらにセンターへの送球の間にバッター進塁し依然ワンアウト二塁』

小鳥『続く9番筒井さんがセンター前のヒット…追加点を許し、さらにセンターからホームへの送球の間にバッター進塁し依然ワンアウト二塁』

雪歩「ふぅ…っ」

小鳥『雪歩ちゃん、大きく息を吐きます』

P『どちらかと言えば精神的な疲れが大きいか』

雪歩(また1点、取られちゃった…)

日野「ふふ~ん」チョロチョロ

スッ

雪歩「それっ」ヒュッ

日野「わっと」バッ

小鳥『プレートを外し、牽制球を投げます』

一塁審「セーフ!」

雪歩「えいっ」ヒュ

小鳥『もう一球牽制!』

一塁審「セーフ!」

小鳥『でも、あの球速じゃ牽制になりませんね。楽々戻れちゃいますし…』

松尾「………」

律子「ランナーへの牽制が目的じゃないわ。ああやって、バッターを焦らしているのよ」

律子「雪歩のコントロールと、遅い球しか投げないことがわかっていれば、それだけでもう打ち気になる。結構効果はあると思うわ」

雪歩「やっ」シュ

キュルルルルル

審判「ストライク!」

松尾「また外角低め…」

小鳥『見逃し! 雪歩ちゃん、先程からこのコースにストレートだけ投げていますね』

P『そこに来るとわかっていても、外角の低めと言うのは遠くて打ちづらいものです。もちろん、間を取るリードあってこそですし、それでも結構打たれてますが』

小鳥『それでも、散らしたり変化球も混ぜた方が効果的なのでは? 遅くても、更に遅い球と混ぜれば速く見えたりもするんじゃ…』

P『確かに球は遅くても球速差で速く見せるような投手はいますが、萩原の球はそこにすら達してないです。遅い球の後に投げても、バッターに届く前に対応されるでしょう』

小鳥『むむむ…じゃあこれが最善の策ってことですか…?』

松尾「………」

P『まぁ、元々三振は狙えないでしょうし…外角低めに遅い球しか来ないとわかっていれば、バッターは打ち急ぐ』

カイン!

松尾「あ…!」

小鳥『バッター、打ち上げました!』

P『低めに意識が行きすぎましたね』

ス…

雪歩「はあっ」パシッ

審判「アウト!」

小鳥『ピッチャーフライ! 雪歩ちゃんが掴んでアウトです! これでツーアウト!』

P『萩原、ピンチにも落ち着いて投げています』

小鳥『続く打者は、クリーンナップの3番ファースト灰賀さんです』

灰賀「がうるるる…」

雪歩「う…」ビクッ

律子「ピンチの場面では次には回したくないし、この打者も侮れない…」

律子「でも、彼女には隙がある…雪歩、貴音、あんたならそこを突けるはずよ」

貴音「………」スッ

雪歩「…大丈夫、だいじょうぶ」クイッ

ヒュッ

小鳥『やはり外角低めです!』

灰賀「がっ!」キンッ

一塁審「ファール!」

小鳥『一塁線切れてファール。雪歩ちゃん、またも同じコース。球速の割にはファールが多いですね』

P『球速こそ遅いですが、しっかりと生きた球を投げている証拠です。それがあのコースに来れば当てても簡単にはヒットにならない』

小鳥『なるほど、ただ遅いってだけじゃないんですね』

P『しかし相手も一球ごとに合わせてくる…この投球が南六高のクリーンナップにも通用するかどうか』

シュッ

小鳥『あっ…ああっ!? 高めです!?』

P『何!?』

灰賀「がるる!」キンッ!!

ピーッ!!

一塁審「ファール!」

小鳥『一塁スタンドに飛び込んで行きます、ファール! 外角低め一辺倒に投げてきた雪歩ちゃん、なんとここで高めの球を投げてきました!』

P『彼女のようにボール球にも手を出してくる打者相手にカウント一つは稼げますが、しかし…』

小鳥『このコースに投げるのは結構危険では…先程響ちゃんがボール球をセンター前に抜かれたのを覚えてますよ』

P『ええ、灰賀選手もヒットにできる自信があるから手を出しているわけで…』

小鳥『ツーアウトだから外野に飛んでもタッチアップはないですが、ボール球だからヒットにならないなんてことはありません! 長打になる可能性もありますよ!』

P『そしてツーストライクですが萩原の球ではあまり関係はない。次に低めに投げるにしても、今見せた高低差もベースに届くまでに修正してくるはず…』

貴音「………」ス

雪歩「………」グッ

シュポン!!

灰賀「ぐぅ…」

小鳥『ああっ!? また同じコースですっ!!』

P『何を…!?』

新谷「同じ球を続ければ、うちの打者は打つにゃ。灰賀なら、ボール球ですらも」

灰賀「があああっ!」ブン

小鳥『灰賀さんのバットが高めのボールを狙っています!』

シュルルルルルル

灰賀「がう!?」

小鳥『ベース前で落ちたっ!?』

P『パームか…!? これは空振る…!』

灰賀「がうるっ…!」ガッ

キンッ!!

貴音「…!」

雪歩「あ…!」

小鳥『しかし! 灰賀さん、当ててきました!』

P『あそこから無理矢理合わせて、しかも引っ張るか…!』

タン タンッ

小鳥『三遊間を転々と転がります!』

新谷「よし、これは外野まで抜け…」

真「抜かせない…!」パシッ

小鳥『いえ、追いつきました! 真ちゃん、逆シングルで捕球し…』

クルッ

真「やぁっ!」ヒュッ

小鳥『そのまま振り返りつつジャンプ送球! 華麗なプレーです!!』

ゴオッ

小鳥『あっと、しかし少し逸れたか!?』

P『無理な体勢からこの送球じゃズレるか…でも』

伊織「たっ!」バッ

バシィ!

灰賀「が…」

一塁審「アウトッ!!」グッ

律子「これよ!」ガタッ

春香「おおぅ」ビクッ

小鳥『上手い! 伊織ちゃん、逸れた送球を目一杯体を伸ばして捕りました! 足もベースから離れていません!』

伊織「ふぅ…」

「キャー、真くーん!!」

「王子ー!!」

「素敵ー!!」

小鳥『今の華麗なプレーに、客席から黄色い声援が上がっています!』

伊織「ちょっと、今のは私のファインプレーでしょ!?」

審判「チェンジ!」

小鳥『雪歩ちゃん、ピンチを迎えながらもこの回も1点に抑えました! そして次はまた765プロの攻撃です!』

雪歩「ごめんなさい、みんな…」

伊織「あーもう謝るな! 相手の方が強いんだから失点なんてして当然なのよ!」

真「失点して当然、ってのはどうかと思うけどね。ただ、雪歩はよく抑えてると思うよ」

雪歩「うん…ありがとう」

律子「そうね、失点して当然じゃないわ。私達は勝つためにやってるんだから」

小鳥『6回ウラの攻撃、最初のバッターは6番キャッチャー貴音ちゃん!』

律子「さぁ、頼んだわよ貴音…」

貴音「よろしくお願いします」ペコ

筒井「………」ポンッポン

小鳥『筒井さん、ロージンを手につけます』

新谷(さっきはゲッツーに取ったけど、当たり自体はよかったにゃ…気を抜けにゃいにゃ)

ヒュッ

パン!

審判「ボール!」

パァン!

審判「ストライク!」

貴音「………」シン…

新谷(少しくらい反応するにゃ!)

小鳥『貴音ちゃんは今日ここまではノーヒット』

P『ですが一打席目はショートゴロ、二打席目はショートライナー…球自体は合ってきてますよ』

小鳥『両方ショートに飛んでますね。となると、三打席目は…』

筒井「ふっ」シュッ

グオン

貴音「!」フッ

カイィィィーン

新谷「え」

小鳥『は…』

P『行った…』

ゴォォォォォオォオォオォ

新谷「そんな、嘘…」

赤場「あああああ!!」ダダダダ

小鳥『こ、これは高い! ぐんぐん伸びる! レフトが走る! え、まさか!? これは!?』

コーン

赤場「は…はぁぁぁぁぁ!?」

ダアアアアアアアアァァァァ!!

小鳥『入ったー! 入りました!! ソロホームラン!』

雪歩「あ…」

響「や、やったぞ!」

やよい「貴音さん…!」

貴音「あと2点…ですね」

小鳥『なんということでしょう! 6回ウラが始まった直後の一発! 再び1点差に追いつきました765プロ!!』

筒井「………」

新谷「つ、筒井…」

小鳥『さぁ、この勢いで一気に逆転してほしいところ! 続いての打者は7番レフト千早ちゃん!』

筒井「………ふー」

小鳥『おっと、帽子を取りました筒井選手』

P『周りが見えないほど余裕がないというわけではないみたいですね』

筒井「………」グッ

ビシュゥ!!

千早「え?」

バシッ

あずさ「あら…」

バシッ!

真美「わわわっ!」

バシィッ!!

審判「ットライッ! バッターアウトッ!!」

小鳥『さ、さ、さ、三者連続三振! チェンジ! 筒井さん、また崩れるかと思いましたが…鬼気迫るピッチングで一気にスリーアウト!』

P『えーと…筒井選手は今ので今試合11奪三振になります』

小鳥『は、じゅういち!? 7回21アウトのうち半分以上じゃないですか!? まだ7回始まってもないですよ!?』

あずさ「今度は、きっちり内角に投げ込んできたわね~。怖かった~…」

律子「貴音の一発でまた崩れることを期待したけど…そんなに甘い相手じゃないか」

松尾「びっくりしたなぁ、あの一発は…」

日野「でもリードしたまま最終回、しかもまだ攻撃は残ってる…この試合は勝ちですね~」

筒井「相手の攻撃も残ってる」

日野「でもこの回は白馬先輩からでしょ? 楽勝ですよ~」

白馬「………」

新谷「観客の皆さんには悪いが、こっちも手を抜くつもりは全くない…決めるにゃ」

引出「あれ…」

新谷「ん? どうしたんだにゃ?」

引出「向こうの人たち、何かやってます…円陣? じゃないし…」

伊織「ついに最終回ね」

響「まだ1点差…でも1点返した!」

律子「相手は強い、最終回に逆転するにはここを無失点で抑えるのが必須条件よ!」

雪歩「が、頑張ります…!」

あずさ「ふふ、雪歩ちゃん。一人じゃないわよ」

千早「そうよ萩原さん。バックには私たちがいるわ」

真美「後ろは任せて!」

貴音「皆で勝ちましょう」

亜美「よーし、頑張れみんな!」

真「うちの守備は相手にだって負けてないはず。一人一人がしっかりやれば抑えられる!」

やよい「まだ試合は終わってないです!」

美希「…うん」

春香「行くよ、765プロー!」

「「「「「「「「「「「「「ファイト!!」」」」」」」」」」」」」

小鳥『さぁついに最終回、延長はありません! この回に勝負が決まります!』

雪歩「………」ザッ

小鳥『この回のマウンドにも、雪歩ちゃんが立っています!』

P『765プロが勝つためには、ここで2点差に離されるのは非常に厳しいところ』

小鳥『そんな場面に打席に立つのは…いきなりこの人! 南六高の主砲、4番サード白馬さん!』

ワァァァァアア…

白馬「………」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

雪歩「行きます…」ス…

ヒュッ

白馬「………」グッ

パシッ

審判「ボール!」

小鳥『初球はやはり外角低め、これがボール!』

P『僅かに外れたか、あるいは意図的に外したか』

雪歩「えいっ」ヒョイ

パシッ

審判「…ストライク!」

小鳥『同じコースですが、今度はストライクです』

P『白馬選手は動きませんね…不気味です』

雪歩「ふぅ…」グイッ

小鳥『雪歩ちゃん、汗を拭っています』

P『この打者から受けるプレッシャーは半端なものではないでしょう』

雪歩「ふっ」シュッ

キイィィン!!

雪歩「…!」

小鳥『ああっ、打たれました! 思い切り引っ張り三塁線へ!』

美希「行かせないの!」バッ

ゴォッ!!

美希「っ!」スカッ

小鳥『打球が速い!! サードの横を抜けレフトへ! まだ伸びる!』

千早「私が取るわ…!」タタタ

小鳥『レフトの千早ちゃん、走って追いつくか!』

グォッ!!

千早「伸びた…!?」

小鳥『ああ! 捕れません!』

ドンッ

小鳥『ボールはフェンスに激突! これは長打に…』

新谷「よし…!」

三塁審「ファール!!」

新谷「にゃに!?」

三塁審「ラインの外! 跡が残っている!」

白馬「………」

小鳥『っと!? 打球僅かに外に切れていました! ファールです!』

P『それにしても、ライナーでフェンス直撃とは…恐ろしい打球です』

小鳥『ヒットにならなければ同じです! これでツーストライク!』

パシッ

審判「ボール!」

小鳥『追い込んでからボール、ツーツー』

P『追い込まれているのはこっちかもしれません。萩原が投げられるのは直球とパームだけ、コースも限られています』

雪歩(投げる球は一つしかない…四条さんのミットめがけて…)

貴音「………」スッ

雪歩(投げる!)ヒュッ

キュルルルルルルルル

白馬「!」カッ

ガッキーン!!

小鳥『あああ打った! 大きい!』

P『これは…』

貴音「センター!」

真美「うおおおおおおおおー!!」ダダダダ

小鳥『真美ちゃん必死に追いかけます!』

雪歩(大丈夫…!)

シュルルルルル

白馬「!」

小鳥『おっと、打球が失速しています!』

P『スピンがかかってるようです、これならホームランにはならない…』

ガシャン!!

真美「っと!」パシッ

小鳥『しかし、フェンス直撃! 真美ちゃんがクッションボールを抑えます!』

真美「りゃっ!」ヒュッ

真「ん!」パシッ

白馬「………」

小鳥『中継に回しますが、バッターの白馬さんは既に二塁に到達しています!』

P『765プロ、いきなりのピンチです』

小鳥『ノーアウト二塁、バッターはクリーンナップの5番キャッチャー新谷さん!』

P『新谷選手、先程はセンター前のヒットで打点を上げています』

新谷「もう一点、ここで決めてやるにゃ」

雪歩「えいっ」ヒュ

パシン

審判「ボール!」

新谷(外れた…)

雪歩「はぁ…っ」

パン

審判「ボール!」

雪歩「う…」

新谷(白馬の打席で相当やられてるようだにゃ)

新谷(しかし一塁は空いてる…歩かされてもあまりおいしくはにゃいか)

審判「ストライク!」

新谷(っと、今のは入ってたかにゃ)

ヒュッ

新谷(ん? 高い…)

バンッ

審判「ボール!」

小鳥『これもボール! スリーボールです! どうしたのでしょう!』

P『直前の長打が響いている…? のでしょうか…?』

新谷(高めに投げてきた…どういうつもりにゃ? 単なるコントロールミス?)

雪歩「えいっ」ヒュッ

キュルルルル

新谷(高い、パーム…?)

ルルルルル

新谷「違う!」キンッ

伊織「うおっ…!」バッ

ドンッ

小鳥『振り遅れました! 一塁側、伊織ちゃん追いかけますが捕れません! ファール!』

新谷(危にゃい、手を出す必要にゃかったか…)

新谷(灰賀の時はどうしても抑えたいからやっただけの一発芸…意識する必要はなかったにゃ)

小鳥『さぁフルカウント! 次はどう出る!?』

P『一塁が空いているので、甘く入って失点するよりはきっちり歩かせた方がいいようにも思えますが』

雪歩「………」ス…

雪歩「えいっ」ヒュッ

小鳥『投げた、外角低め…ですが…』

P『これは入ってきている!』

新谷(甘い! 四球を恐れたかにゃ!? これで終わりにゃ!)ブンッ

クンッ

新谷「にゃ!?」ゴキン

ガッ

小鳥『これは弱い当たり! ボテボテのゴロがピッチャー前へ!』

新谷(沈んだ…!? ストライクからボールに…)

新谷「くそっ、騙された…! こいつ崩れてにゃい…!!」

雪歩「やっ…!」パシッ

小鳥『雪歩ちゃん、球を拾い上げ…』

グルン

雪歩「えいっ!」ヒュッ

小鳥『そのまま、反時計回りに回転しながら三塁へ送球!』

白馬「………」ズザザ

美希「はいっ!」パシ

三塁審「………」

白馬「………」

三塁審「アウト!」

ワァァァァァァァ…!

小鳥『アウトッ! 三塁で刺しましたっ!! これでワンアウト一塁ですっ!』

P『最高とは言いませんがかなり良い形ですね、これならゲッツーでチェンジもありますよ』

小鳥『雪歩ちゃんの三塁に投げるまでの判断が早かったですね』

P『ええ、それと今のは美…星井のタッチが早いですよ』

小鳥『あれ』

P『………』

小鳥『ノーアウト二塁のピンチからワンアウト一塁へ! 次のバッターは6番ショート桐生さん!』

桐生「まだ目は死んでないみたいだね」

雪歩「ふーっ」

桐生「さっきはいいようにやられたけど、今回はそうはいかないよ」

雪歩「………」

ヒュッ

桐生(外角、入るか? いや…)

パシン!

審判「ボール!」

桐生(入らないのか? それともわざと外してるのかな? 初球から手を出す必要はないけど)

雪歩「えいっ」ヒュッ

シュルルル

桐生(もう投げるのか…! でも…)

桐生「甘い!」キンッ

貴音「セカンド!」

小鳥『打ちました! 一二塁間への強い当たり!』

P『外野まで抜ける…!』

タタッ

やよい「えーいっ!!」

バシィン!!

小鳥『いえ、やよいちゃんが横っ飛び! 追いつきます!』

ポロッ

やよい「あっ!」ドサッ

コロコロ

小鳥『しかし、この打球は捕れない! 弾きました!』

伊織「ち…!」タタタ

小鳥『伊織ちゃんがすぐさま追いかけます!』

パシッ

伊織「たっ!」ヒュッ

小鳥『伊織ちゃん、拾い上げすぐさま二塁送球!』

新谷「にゃーっ」ザッ

真「とぉ!」トンッ

二塁審「…アウト!」

小鳥『二塁はギリギリでフォースアウト!』

伊織「一塁!」

雪歩「真ちゃん!」

小鳥『一塁、雪歩ちゃんがカバーに入ります!』

P『間に合うか』

真「雪歩っ!」ヒュッ

小鳥『ジャンプしながら一塁送球!』

ゥゥゥ…

小鳥『あっ、送球が逸れています…!』

桐生「悪いけど…ここは引けない!」ダダダ

小鳥『そして、一塁には桐生さんが突っ込んできます! これは…』

P『ぶつかる…!』

雪歩「はいっ!」パシッ!

トンッ

雪歩「きゃ…!」

桐生「わ…!」

ゴロゴロゴロ

小鳥『ああっ、クロスプレー! 二人とも転がりました!』

桐生「たた…」

雪歩「う…」

伊織「雪歩! …ボールは?」

雪歩「………」スッ

一塁審「アウトッ!!」

ワァァァァァァァアアアアアアアアアア!!

小鳥『ボールはグローブの中に収まっています! 一塁フォースアウト!』

P『カバーが一瞬早かったか、ゲッツー!』

小鳥『内野陣の好守が光ります、765プロ! この回を0点に抑えました!』

雪歩(やった…!)

やよい「雪歩さん!」

雪歩「やよいちゃん」

やよい「難しいところだったけど、しっかり捕れましたね! すごいです!」

雪歩「うん…!」

やよい「ハイ、ターッチ!」

雪歩「…いぇい!」

パチン!!

響「いよいよ最後の攻撃か…」

あずさ「泣いても笑ってもこれで最後ね」

亜美「笑って終わろう! そのために頑張ってきたんじゃん!」

律子「その通りよ、あんた達は今日勝つためだけに野球を頑張ってきたんでしょう! ここまで来たんなら勝ってきなさい!」

「「「おー!!」」」

筒井「………」

新谷「筒井」

筒井「ん…」

ヒュッ

バシン!!

小鳥『皆様、本日はご来場ありがとうございます! 今日の試合もいよいよ大詰め! 最終回、765プロ最後の攻撃!』

小鳥『延長はありません! 1点差、この回に2点取り返せば765プロのサヨナラ勝ち! 1点で引き分け! 得点出来ない場合は南六高の勝利となります!』

小鳥『そしてバッターは、先ほど気迫溢れるプレイで見事無失点に抑えた、1番ピッチャー雪歩ちゃん!』

ワァァアアアアァァ! ヒューヒュー!!

雪歩「お、お願いしますぅ」ペコリ

筒井「………」スゥ…

ヒュ

ゴォォォォォォォ

バシン!!

雪歩「は…」

審判「ストライク!」

雪歩(な、なに、これ…みんな、こんなのを打ってたの…?)

バシィン!!

審判「ストライク!!」

小鳥『ああっ! 雪歩ちゃん、2球でなすすべもなく追い詰められました!』

P『萩原は打席に立つのは初めてですからね、あの球を初見で打つのは非常に難しいですよ。しかしこれは…』

雪歩(振らなきゃ…)

ビシュッ!!

雪歩「えい…!」ブンッ!!

バシィ!!

審判「ストライク! バッターアウト!!」

雪歩「う…」

小鳥『ああっ! 三振です! かすりすらしません!』

P『筒井選手、ここに来て調子を完全に取り戻していますね』

律子「駄目か…」

春香「あ、あのっ、律子さん!」

律子「何?」

春香「ここ、私を代打に出すべきだったんじゃ!? 雪歩はさっきのプレイで色々やりきってましたし!」

律子「あっ、あー…忘れてたわ…どうしよう…」

春香「ちょっと!?」

雪歩「………」

伊織「大丈夫よ雪歩。アンタは充分過ぎるくらい頑張ったわ」

雪歩「伊織ちゃん…?」

伊織「あとは私達でなんとかする」ザッ

小鳥『続くバッターは2番ファースト伊織ちゃん!』

筒井「………」

伊織「よし、来なさい…!」

ビュッ

審判「ボール!」

審判「ボール!」

伊織「…!」

小鳥『立て続けにボール! きわどいところですが手を出しません!』

伊織(出しません、じゃなくて出せなかったのよ…!)

伊織(さっきとはまるで違うわ…このまま決める気ね…!)

筒井「ふっ」ヒュッ

伊織(これは入る!)

ブンッ

審判「ストライク!」

伊織「ち…! 当たらないか…!」

筒井「………」ス…

ポーン

伊織(チェンジ…アップ…)

コンッ

審判「ファール!」

小鳥『チェンジアップに当てました! 三塁方向切れてファール』

P『なんとか当てたって感じですね』

伊織(無理矢理合わせるので精一杯だわ…こんなもの、ヒットになんてできない…!)

バンッ!

小鳥『ボール! フルカウント!』

伊織(球威がある分、コントロールの正確さはないわね…)

ビュン!!

伊織(でも、だからって見逃してたらやられる…!)

キンッ!

春香「うわっ!」ガッシャーン

一塁審「ファールッ!」

小鳥『一塁側ベンチに飛び込むファール!』

伊織(このまま終わるのだけは嫌…!)

カンッ

審判「ファール!」

キンッ

審判「ファール!」

小鳥『伊織ちゃん、粘ります!』

筒井「ふぅ…」

クッ

ビシュ

伊織(! ど真ん中…!)

小鳥『あっ! コントロールミスでしょうか…!?』

伊織「てっ!」ブン

キンッ!!

小鳥『伊織ちゃん打ちましたっ! が…』

P『一塁線…ライト方向に切れる』

松尾「うおおおっ!」ダダダ

小鳥『ライトの松尾さん追いかけます!』

タンッ

一塁審「ファール!」

小鳥『が、追いつけません! 切れましたっ、ファール!』

伊織(これでも…振り遅れるの…!?)

筒井「はぁ…っ」

伊織「う…」

ビシュッ!!

伊織「…!」クッ

ピタ…

小鳥『バットが止まる!』

パシン!!

伊織「………」

新谷「………」

筒井「………」

審判「フォアボール!」

ワァアァァァァァァァ!!!

小鳥『選んでフォアボールです! 出塁しました!』

カラン

伊織「はぁ~っ…ついにヒットにはならなかったか、頭来るわね」

新谷「最後止めたのは、ボールだと思ったから? それとも打てないと思ったからかどっちだにゃ?」

伊織「どうでもいいでしょ、そんなん。私は出たわ」

小鳥『そして3番ショート真ちゃんは…』

コンッ

小鳥『バントですっ!!』

新谷「にゃに…!?」

筒井「ち…」ヒュッ

一塁審「アウトッ!」

小鳥『筒井さんが素早く一塁に送球してアウト! しかし、ランナーは進塁しました!』

P『ゲッツーで終わるくらいなら4番に回そうということでしょう』

美希「真クン…?」

真「今の筒井さんの球を打てる可能性が一番高いのは美希だ」

真「ボクじゃあ確実に打てるかどうかはわからないし、打ったとしても南六高の守備じゃ得点になるかどうかわからない」

美希「………」

真「美希が打ってさえくれれば…きっと、この試合は勝てる。頼んだよ」

美希「…わかった」

小鳥『これでツーアウト…あとワンアウトで試合終了…ですが、ここで来るバッターは…』

小鳥『4番サード、美希ちゃんですっ!!』

ワァァァァァァァアアア!!

ブンッ ブンッ

美希「よしっ」

新谷「また三振、それで終わりにゃ」

美希「なんか言った?」

新谷「ち、歓声がうるさいにゃ…」

オーッ ドドドン! オーッ ドドドン!

小鳥『観客席も今日一番の盛り上がりを見せ、場内熱気に包まれております! って言うか、私の声みなさんに届いてますかー!?』

ビュン!!

美希「っ!」ブンッ

審判「ットライク!!」

アァァァァァァァ…!

筒井「………」ス…

美希「」

審判「ストライク、ツー!」

アアアアアアアアアアァァァァァァァ…!!

小鳥『一球ごとに凄い歓声です…!』

P『………』

小鳥『美希ちゃん、2球で追い詰められました! このまま終わってしまうのか!?』

美希「ごめんなさい、ちょっとタイム」

審判「タイム!」

小鳥『タイムがかかりました! 美希ちゃん、打席を外します』

オオォォォォォォォォォォ!!

小鳥『タイム中も唸り声が鳴り止みません!』

「美希ちゃーん!」

「打ってくれー!!」

美希「ふーっ、はーっ…」

小鳥『美希ちゃん、新呼吸をして…』

美希「………」

小鳥『客席やベンチを見回しています』

律子「美希っ!」

亜美「ミキミキー!!」

春香「美希ー!!!」

「みーき! みーき! みーき!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!!

美希「…うん、行こ」

小鳥『美希ちゃん、再び打席に…』

P『美希ー!!』

美希「!」ピクッ

小鳥『!?』

P『打てーっ!!』

小鳥『…………………』

P『………』

「みーき! みーき! みーき!」

ワァァァァァァァァァァァ!!

美希「………」スッ

小鳥『えっと…美希ちゃん、再び打席に入りました!』

審判「プレイ!」

ウオオオオォォォォォォォォォォォォォォォ!!

美希「ふーっ」

筒井(目が…)

美希「………」キッ

筒井(違う…今までの星井美希じゃない)

新谷「………」スッ

筒井(いや、何だろうと…ねじ伏せるだけ!)グッ

ヒュン!!

小鳥『ストレート! 速い!』

P『今日最速か!』

美希「………」

キンッ!!

ゴォッ!!

赤場「え?」

ドンッ

三塁審「…ファール!」

ワァァァァァァァァァァァ!!

小鳥『え!? あ、ファールです! 三塁線フェンスにぶつかっています!!』

P『打球が見えないほど…凄まじいスイングスピードです』

筒井「………」

新谷「にゃ…」

美希「うーん、もうちょっと遅く…かな」

筒井「………」

美希「ん」キュッ

小鳥『4球目です…』

筒井「はぁっ!」グオッ

美希「!」

ポーン

小鳥『チェンジアップっ!』

美希「んっ」グッ

ガッキーン!!

筒井「!!」

ウォォォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!

小鳥『あーっ! 打ったー! でかい、でかい、入るか!? これは入るか!?』

美希「………」

筒井(こいつ…見てから判断した…?)

律子「無敵だわ…」

ピーッ!!

三塁審「ファール!」

アァァァァァ…

小鳥『ポール横、切れましたファール! 凄い当たりでした!』

P『少しズレていればサヨナラでした』

筒井「はぁ…っ」

筒井(あのチェンジアップは完璧だと思った…それに合わせられた)

筒井(いや、完全に合わせたわけじゃない…だからファールになった、次の高めのストレートで三振…)

小鳥『セットポジションから…』

筒井「ふっ…!」

ビュン!!

小鳥『速い!』

パァン!!

美希「………」

新谷「………」

審判「ボール!」

筒井「く…」

小鳥『高めの球に手を出しませんでした、ボール!』

P『いいコースだったんですけどね』

筒井(次は…どうする)

新谷「………」スッ

筒井(ああ、それしかないだろうな…打てるものなら…)スッ

美希「………」グッ

筒井(打ってみろ!!)ビッ

小鳥『あっ、これは…!』

ギュルルルルルルルル!!

小鳥『大きく曲がります! カーブッ!!』

P『入る…!』

キュルルルルル

美希「………」

ルルルルル

美希「えい…!」

キィィィィィィィン

筒井「な…」

新谷「に…!?」

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

小鳥『あーっ! 打ちました! あーっ、センター方向に球が伸びていますっ!!』

P『行くか行くか行くか!?』

日野「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

小鳥『センター日野さん、必死に球を追いかけますっ!!』

日野「ああああああああああああああああ!!」バッ

小鳥『跳んだ!』

タンッ

小鳥『届かない! 落ちた! ヒット! ヒット、ヒットですっ!!』

P『うおあああああああああおおおおお!!』ガタン

ヒューヒューヒュー!!

P『あーっ、あーっ、あーっ!』

伊織「よし…!」トンッ

小鳥『やりましたっ! センターオーバーのっ、ヒット、ヒットですっ! 伊織ちゃんホームイン! 同点! 同点ですっ!!』

P『よしっ…! よくやった…!!』

松尾「くっ!」ビシュ

小鳥『ライトの松尾さんが打球に追いつきますが、美希ちゃんは既に二塁へ!』

筒井「………」

審判「タイム!」

小鳥『追いついたー!! そして次の打者は…って、あれ?』

小鳥『タイムがかかりました、なんでしょう?』

P『さぁ…』

ダダダダダ

P「ん? 誰ですか、そんな慌てて走ってきて…」

ガチャ

春香「やった、美希が出た!」

春香「律子さん! 私を代打に…」

律子「やよい、最後は頼んだわよ!」

やよい「はい! 任せてください!」

春香「ま、ま、待ってくださいよ律子さん!」

律子「何よ、クリーンナップに代打出すわけにもいかないでしょ」

春香「でも、私だけ出ないとなったらファンの皆さんはきっと悲しむと思うんです!」

律子「うーん…確かに、春香が出ないとなると春香のファンから苦情が来るかもしれないわね…」

春香「でしょ?」

律子「でも、今の状況だと逆効果かも…せめてワンアウトならよかったんだけど…」

春香「絶対に打ちますから…! そんな心配する必要ないです…!」

律子「って言ってもね…」

律子「…美希はどこ行った?」

あずさ「美希ちゃんなら、タイムかけてベンチの奥に走って行っちゃいましたよ~」

伊織「さっきから、実況席からの声が聞こえないわね…」

律子「………」チラ…

春香「さぁ、一打サヨナラ! 最終兵器春香さんの…」

律子「春香、代走お願い」

春香「ヴァイ!?」

春香「………」

小鳥『えー、皆様失礼しました。ただ今、機器の不具合により音声が届いていなかったことをお詫び申し上げます』

P『それでは、試合終了まで引き続き実況解説を行っていきたいと思います』

小鳥『なお、来月の本放送では副音声でプロの方々による実況解説が入ります! 本日ご来場の皆様も是非ご視聴ください!』

P『ん!? 今日、俺達が実況解説やる意味ありました!? 俺の地上波デビューは!?』

小鳥『いよいよ試合もクライマックス、打順は5番セカンドやよいちゃん!』

P『サヨナラのランナーを置いて4回にヒットを打っている高槻です』

審判「ボール!」

新谷「………」

やよい「あれ…」

小鳥『筒井さんの投球、初球はボール』

P『これは…なんというか…』

新谷(要求と違うコース…球威もない…)

筒井「はーっ、はーっ、はーっ…」

新谷(筒井…もう限界にゃ…)

新谷(さっきの打席と、5回からの連続三振が響いたにゃ…)

新谷(ピッチャー交代を…)スッ

筒井「………」

新谷(いや…)

新谷(延長はない、もう勝ちはない…こんなところで替えてまで引き分けを取る? 冗談にゃ)

新谷(第一…戦わずに引くなんて負けを認めるも同然だにゃ)

ビッ

新谷(来るにゃ、筒井! こっちの手で終わらせるにゃ!)

小鳥『あ、そういえば美希ちゃんに代わり春香ちゃんが代走に入っております』

筒井「はぁー…」

シュッ

キュルルルルル

やよい「んっ!」ピタッ

パシン

審判「ボール!」

小鳥『二球目はカーブ! 曲げてきます!』

新谷(やっぱりカーブは捨てている…か)

やよい「ふーっ」

新谷(とはいえ、続けて同じ球種をにゃげてたらこいつでも打つかもしれないにゃ…)

新谷(いや、逆に言えば次これさえ入れば勝てる! もう一球…次もカーブで行く!)

新谷(最高の球で繋げて終わらせるにゃ!)

春香「よし…」ス…

筒井「………」スッ

春香「えいっ!」ダッ

小鳥『おおっと、代走ランナーの春香ちゃんが走った!!』

P『何をやっているんだ天海!!』

筒井(何!?)グォォ

春香「ふふふ、私だってただの代走じゃ終わらないよ!」タッタッタ

ビッ

筒井(! まずい…! 指が…)

小鳥『さぁ、投げました!』

P『ん! これは…』

春香「って、わぁ!?」グラッ

小鳥『おっと、失投か!? 真ん中に入っている!』

やよい「うっうー!!」ブンッ

キィン!!

春香「あああああああ!!」ブワッ

ドンガラガッシャーン

………

春香「いたたた…あれ、試合は…?」

「「走れー!!」」

春香「えっ?」キョロキョロ

小鳥『右中間抜けましたっ! ライト追いかける!』

春香「ええっ!?」

小鳥『あっ! ランナー春香ちゃん、スタートを切っていますが転んでいます!』

春香「わわわっ」バッ

小鳥『今、立ち上がりました!』

P『スタートを早く切った分で今の転倒はチャラか』

やよい「春香さんっ!」

小鳥『ああっと、やよいちゃんは一塁で止まっています!?』

P『こうなったらもう天海がベースを踏むかどうかですからね』

松尾「おおっ!」

小鳥『ライト、今打球に追いつきました!』

春香「だっ!」ダンッ

小鳥『そして春香ちゃんは三塁まで到達…三塁蹴りました!』

P『本塁まで突っ込むつもりか…!?』

筒井「どいて!」

引出「筒井!」

小鳥『筒井選手が中継に入りました! これはどうなる!?』

パシッ

筒井「おおおおっ!!」

ビュオン!!

小鳥『矢のような返球がホームを襲います!』

春香「………」

………

筒井『まぁ、あなた達のように大した努力もしてこなかった連中にはわからない感覚でしょうけど』
………

春香(私達だって…)

新谷「よしっ」パシッ

小鳥『ああっ、ボールが速い! 本塁に戻ってきました!』

P『春香…!』

春香(私達だって、頑張ってるんだから!!)

新谷「にゃっ!!」

春香「おりゃーっ!!」

ドンガラガッシャーン!!!

春香「………」

審判「ん………」

小鳥『これは…』

P『タイミング的には…』

審判「………」

新谷「にゃ…」

ポロッ

小鳥『あ、新谷さんのミットから…ボールが…』

バッ

審判「セーフ! セーフ、セーフ!!」

筒井「…!」

審判「ゲームセット!!」

小鳥『ゲームセット! サヨナラ、サヨナラですっ! 765プロの勝利ですっ…!!』

ウオァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!

春香「勝った…」

やよい「春香さん!!」ドスッ!

春香「わっ! やよい…」

響「やった…やったな、春香!」

春香「響ちゃん、足は大丈夫なの?」

響「ああ! そんなの、全部吹っ飛ん…いたたたっ!」

貴音「響、無茶は駄目です」

響「うー、わかったぞ…」

雪歩「うぅ…ぐすっ、頑張ってきてよかった…」

あずさ「そうね…みんな頑張ったから、勝てたのよね」

伊織「ま、私たちが本気でやればこんなもんよね」

律子「ったく、調子に乗っちゃって。今回相手がこっちのことをあまり知らない状態で、それでも10回やって1回勝てるかどうかってくらいだったわ」

真「でも…でも、勝った!」

律子「…そうね、みんな…ぐすっ、本当に、頑張ったわ…」

亜美「あ~、りっちゃん泣いてる~」

律子「うぅ…うるさい! もう…」

千早「やったわね…みんなの努力の勝利だわ」

真美「千早お姉ちゃん、なんかやったっけ?」

小鳥『観客席の皆様、本日はご来場ありがとうございました!』

小鳥『実況解説は765プロ事務員の音無小鳥と…』

P『765プロ、プロデューサーの…』

小鳥『…でお送りしました! あ、まだ帰らないでくださいね! この後は…』

ザワ…ザワ…ザワ…

春香『みなさーん!!』

ウオォォォォォォォォォォォォォ!!

春香『今日の試合、応援ありがとうございましたっ! 締めくくりに、私たちの歌を! 聴いてくださいねっ!!』

ワァァァァァアアアア!!!

桐生「すごいな…歌いながらドームを走り回ってる」

日野「試合の後だっていうのに元気ですねぇ…」

新谷「バケモンかにゃ…あいつら」

筒井「…いえ」

ワァァァァァァァァァ…!

筒井「あれが、アイドルなのね」

アアアアァァァ

ァァァァァ…

春香(こうして、私達の1ヶ月はサヨナラ勝ちという最高の形で幕を閉じました)

春香(それから、数日後…)

春香「えーと…」キョロキョロ

筒井「天海さん」

新谷「こっちにゃ」

春香「あ、はいっ!」

春香(私は南六高の人に呼び出されて、ファミレスに来ていました)

春香「えーと、筒井さんと…」

新谷「にゃ」

春香「えーと…」

筒井「他の人達は?」

春香「あ、はい。あの後、みんな疲れてるだろうってお休みをもらったんですけど…」

春香「みんな筋肉痛で動けないみたいで…あはは…」

筒井「そう…」

新谷「あんたは平気なのかにゃ」

春香「そりゃ、まぁ…だって…ね?」

新谷「にゃ…」

春香「それで、今日はどうしたんですか?」

新谷「まぁ…うちは別に手紙かなんかでいいって言ったんだけど、筒井が…にゃ」

春香「?」

筒井「ごめんなさい」スッ

春香「えっ!? な、なんですか!? 頭なんて下げたりして…!」

筒井「あなたたちの歌と踊り…見させてもらったわ。上手く言えないけど…凄かった」

筒井「努力を積んできた人でないとあんなことは出来ない…私の言ったことで怒ったのも当然ね」

筒井「軽率な発言だったわ。ごめんなさい」ペコリ

春香「も、もういいですって。顔上げてください」

筒井「………」

春香「まぁ、確かに…あんなこと言われて、ムッとしたのは事実ですけど…」

春香「南六高のみなさん、すっごく強かったし…この企画で馬鹿にされてる、なんて思うのも当然だったと思います」

春香「それに私たち、勝ちましたから」

筒井「………」

春香「あっ、え、えーと、それだけじゃなくて…」

春香「私達、あの言葉で試合のためにみんなで一生懸命になって…それで、みなさんと試合して、すごく楽しくって…」

春香「だから、もう怒ってないですよ」

筒井「そう…なら、よかった。ありがとう」

春香「えへへ…」

筒井「それで、これからが本題なんだけど」

春香「はい?」

筒井「はい、バット」

春香「あ、はい」

春香(私達はファミレスを出て、河原に来ていました)

春香(筒井さんは鞄からグローブとボールを出して、少し離れた場所に立ちます)

………

筒井『天海さん、結局あの試合ではあなたとは打席では戦わなかったわね』

春香『あ、ああ…うぅぅ、はい…』

筒井『だから、最後に…一打席でいい。私と勝負してくれないかしら』

筒井『何のしがらみもなく…純粋に…野球で』

………

春香(筒井さんはそれが一番の心残りだったみたいで)

春香(私も心残りがなかったわけじゃなくて、あの練習の成果を試す機会があるのならと、願ったり叶ったりだったわけで…)

春香「来なさいっ!」

新谷「そんなフォームで打てるのかにゃ?」

春香(さぁプレイボールです! マウンドに上がるのは、南六高のエース筒井選手)

春香(対するは765プロの秘密兵器、天海春香!)

筒井「行くわよ」スッ

春香(ピッチャー、今腕を大きく上げ…)

ビシュ!!

春香(投げましたっ!)

終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 20:42:16   ID: Dv_G02rZ

アイマスssでは数少ないスポーツ物で嬉しいです。
練習風景の場面なども努力・友情・勝利を目指して書けている。キャラも各々活躍の場合が合って人物描写は出来ていると思う。
しかし読んでいてどうにもしっくり来ない。スポーツ物なのだが躍動感がなく、なにか淡々と進行しているイメージを受ける。

2 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 21:00:43   ID: Dv_G02rZ

原因としてはまず行間のマス目。
スポーツ物なので躍動感が欲しいが、行間が常に一定の為淡々と進行している印象を受ける。クロスプレーや緊迫した場面等ではやはり行間を変えた方がいい。
次に擬音の大きさ。
これも大きさが半角一色なので場面によって全角にする、1レス丸々aaを使う等で次の場面へのハラハラ感を出した方がいい。

3 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 21:20:50   ID: Dv_G02rZ

展開についてはこういう作品だと何故か765が勝ってしまう。せめてスポーツ物くらいはきちんと負ける作品もあってもいいのでは?
特に今回は相手とのスペック差がありすぎで、例えばリトルの小学生チームがプロチームと対戦するぐらいある。流石にこのぐらい差があるなら20-1位で負け試合にしてほしかった。

4 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 21:28:24   ID: Dv_G02rZ

今年の甲子園でも大差の試合が結構あったが熱闘甲子園を参考に、試合には負けはしたが見せ場は作ったし、1点を皆で協力して取り、大差はついたが最後まで諦めずに戦ったという話もよくないかい?
作者は一度諦めた作品を再編集して完結まで書ききったのですばらしい。次の作品でも頑張って書ききってくれ!!

5 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 21:43:26   ID: Dv_G02rZ

それとこれだけテレビでバレーを流しているのにそういったssが全然ない。アイマスでは過去まともにバレーを書いた作品が1つ。完結はしていないが…。
もっとこういったジャンルに積極的に攻めて筆力を上げてもらいたい。
チーム競技の場合765を1チームにまとめないほうがいい。展開がダラダラ遅くなるし見せ場を作るのが大変になるから1チーム4人位で3チーム。

6 :  SS好きの774さん   2015年09月18日 (金) 21:57:24   ID: Dv_G02rZ

P、小鳥、律子を監督に据えて、他のチームは876・新幹少女・モブ等でチームを作る。Jupiterはジャニーズよろしく応援団etc.
モバマス等を使うと多分展開的にグダル原因になると思う…。
個人競技のレスリング・水泳等、まあ書くならなるべく女子競技の方がオリンピックもあるしいいかな?
ビーチバレーはポロリもありそうだな………。フヒヒ…

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