豊川風花「今夜は、眠れそうにないんです」 (24)
豊川風花「お疲れ様でした。それでは、失礼します」
ミリP(以下、P)「……よし。これで粗方挨拶は終わったな」
風花「はい。付き合ってくれて、ありがとうございます」
P「何を言う。仕事終わりの挨拶も、プロデューサーの立派な業務だ」
風花「でも、嬉しいです」
P「そうか。どうもどうも」
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風花「そういえば、ひなたちゃんたちは……」
P「風花の撮影が長引きそうだったから、先に帰した」
風花「あ、もうこんな時間なんですね」
P「今日は送るよ」
風花「ありがとうございます。……それも、プロデューサーさんの、お仕事、ですか?」
P「勿論。それじゃ、駐車場まで歩こうか」
風花「はい」
風花「今日の撮影、とっても楽しかったです」
P「どうりで機嫌がいい訳だ」
風花「正統派のお仕事、久しぶりだったから……」
P「確かに。夏の頃はこういう仕事、出来なかったもんな」
風花「……夏、大変でしたね」
P「ああっ風花が遠い目をっ」
風花「海で水着、プールで水着、撮影所で水着……」
P「許せ。夏は稼ぎ時だった」
P「おかげで色々縁も出来た」
風花「分かってますけどぉ……」
P「今日もその縁で持ってこれた仕事だ。そして時期的にも、今後セクシーはなりを潜めるだろうな」
風花「ほ、本当ですか!?」
P「あぁ、楽しみにしとくといい」
風花「あぁ……憧れの正統派なお仕事……」
P「ただし」
風花「カフェのレポート、ファッションモデル……」
P「来年の夏にセクシーが最盛期を迎える」
風花「猫カフェ、ステージ、うふふふ……」
P「俺、言ったからな」
風花「私、このお仕事が益々好きになっちゃいます!」
P「そーか」
風花「……不安な頃も、あったんですよ」
P「ふむ」
風花「お仕事を変えて、新しい場所で頑張れるかなって」
P「そういう経験ないから、おいそれと分かるとは言えないなー」
風花「色々想像はしていたんですけど、いきなりスリーサイズを聞かれるとは思いませんでした」
P「誰に?」
風花「プロデューサーさんにです!」
P「そんなこと、あったっ」
風花「ありました!」
P「あのな、俺は書類のミスだと思ったんだよ」
風花「……ふん」
P「ホント! ホントだって!」
風花「そう、ですか?」
P「プロフィールに不備があったらいけなかったから、真っ先に確認したかったんだよ」
風花「……じゃあ、そういうことにします」
P「風花、その服暑くないか?」
風花「うーん……ちょっと、ジャケットが暑いですね」
P「ん」
風花「はい?」
P「ジャケット、持つ」
風花「あ、ありがとうございます……」
P「ほれ、マフラーも」
風花「はい」
P「まぁ夜で良かったな、撮影。昼間に冬服なんて着たら大変だったろう」
風花「確かにそうですね。でも、そういうお仕事も、今後あったらいいな」
P「後で確認しとくよ」
P「そういえば、耳のそれって……」
風花「あ」
P「たまたま一緒のヘアアクセだったのか?」
風花「ええっ……」
P「ん、違うのか?」
風花「プロデューサーさん、ここはそう思っていても、プレゼントしたもの? って聞く所です」
P「そうか?」
風花「そうです!」
P「……それ、俺がプレゼントしたやつ?」
風花「はい、よくできました」
P「うわーい」
風花「スタイリストさんと相談して、付けることにしたんです」
P「さよか」
風花「どうです?」
P「かわいい」
風花「え」
P「一層かわいく見えるよ。風花はやっぱ、すらっとした格好良さよりも、そういう、ふんわりとした可愛らしさが良いな」
風花「そう、ですか……?」
P「風花の見栄えに対して、嘘はつかない」
風花「……ホントに?」
P「スリーサイズ聞いてくる奴が言うことだから信用ない?」
風花「いえ……そういうことじゃ、なくて」
風花「だってそんな、いきなり褒められると、私」
P「あのさ」
風花「は、はい!」
P「そこのコンビニ寄っていい?」
風花「いい、ですけれど……」
P「ちょっと煙草買ってくる」
風花「え?」
P「直ぐ戻る!」
風花「あっ、行っちゃった」
風花「プロデューサーさん、煙草なんて吸わないのに……」
P「悪い、待たせたな」
風花「いえ……」
P「これ、飲んでから行こうか」
風花「コーヒーですか」
P「煙草は……欲しいのがなかった。あ、眠れなくなるから駄目?」
風花「どうしよう……」
P「マ、駄目なら持って帰ってよ。俺はちょっと仕事あるし、今飲んどく」
風花「じゃあ、私も」
P「そう? 悪いねなんか」
風花「ちょうど、ビターな物が欲しかったので」
風花「駐車場、遠いですね」
P「あぁ、何時もの所が一杯だったんだよ」
風花「何だか、学校の帰り道みたいです」
P「こんな夜遅かったの?」
風花「そうですね。夜までかかる事もありました」
P「マ、俺もこの時間に帰ったことはあったし、普通かもな」
風花「プロデューサーさんは、どんな学生さんでしたか?」
P「ナイショ」
風花「どうして?」
P「それもナイショ」
風花「……ふぅん」
風花「私のことは色々聞いてくるのに……」
P「だって俺の過去だよ? 知ってどうすんの」
風花「そ、それは」
P「俺が風花のことを聞くのは、今後エピソードトークの時とか、インタビューの時に役立つと思ってるからであってね」
風花「……はい」
P「その点俺の話なんて何の面白みもないから、だから……ん、どした」
風花「いえ、何も」
P「ちょっと怒ってない?」
風花「ないですよー」
P「……なぁ」
風花「はい」
P「やっぱ怒ってるじゃん」
風花「ち、が、い、ます!」
P「なーんでかなぁ……」
風花「……だって」
P「おう」
風花「プロデューサーさんは、お仕事だから私の話を聞くんですか?」
風花「お仕事だから、私の好みを知ってるんですか?」
風花「お仕事だから、こうして私を……送ってるんでしたね」
風花「……すみません、私、言い過ぎました……」
P「……風花。俺は、風花のプロデューサーだ」
P「風花を輝かせるために仕事をしている」
P「それは間違いない」
P「ただ、仕事とは別に、風花と話をしたい時もある」
P「個人的にプレゼントを贈りたい時もある」
P「だから……さっきは、悪かったよ。言い方が悪かった」
風花「……そうです。プロデューサーさんが悪いです」
P「うんうん俺も悪かったよな……って、え?」
風花「やっぱり、プロデューサーさんが悪いですよ!」
P「ここはあれ、お互い非を認めて仲直りする所じゃないの!?」
風花「だって、私だって、プロデューサーさんとお話したいです!」
風花「お仕事関係なく、プロデューサーさんのことが知りたいんです!」
風花「言いたくない過去もあるかもしれませんが……それでも! お仕事を理由に逃げたことは、いけないと思います!」
P「は、はい」
風花「だから、これからはプロデューサーさんのこと、少しは教えて下さいね?」
P「はいはい」
風花「はい、は一回ですよ」
P「はい」
風花「よろしい♪」
P「ホント、面白い話なんてないんだぞ?」
風花「それでもいいんです」
P「さいですか……っと、やっと見えてきた」
風花「結構歩きましたね」
P「もう少しでタクシーを呼ぶ所だった」
風花「駐車場までタクシーですか?」
P「皮肉めいてると思う」
P「暗い……電灯が切れてんな」
風花「足元が暗くて……きゃぁっ!」
P「大丈夫か!?」
風花「いたたた……はい、何とか」
P「怪我してないか? 足挫いてないか?」
風花「大丈夫で」
P「クソッ管理人何してやがる風花に怪我なんてさせるような段差にしやがって更地にするぞ更地に」
風花「プロデューサーさん、落ち着いて下さい」
P「……取り乱した。ホントに怪我ないか? 一応足元だけ見とこうか」
風花「お願いします、大丈夫とは思うんですが」
P「えっとライトはどうすれば……お、よし」
P「……うん。破れもないし、こけただけで済んでるっぽいな」
風花「……あの、プロデューサー。お願いが……」
P「どうしたどうした」
風花「手を、貸してもらえませんか?」
P「お安いご用だ」
風花「ありがとうございます……その、出来れば、車まで」
P「そう……だな。また何かでこけるといけないし」
風花「で、ですよね! こけると痛いですから!」
P「あぁ、ようやく着いた。足が痛くて痛くて」
風花「お疲れ様でした」
P「次からはちゃんと駐車場調べるよ。この時間に運動は堪んない」
風花「私は……楽しかったですよ」
P「学校の帰り道みたいで?」
風花「そういう意味ではなくて、プロデューサーさんと、二人で歩けたから」
P「……俺も楽しかったよ」
P「さてと、風花の家までなら、大体三十分って所か」
P「着いたら起こすから、寝とく?」
風花「……いえ、プロデューサーさん」
風花「もう少しだけ、話をさせて下さい」
P「ん、まぁいいけど」
風花「私」
風花「今夜は、眠れそうにないんです」
―――fin.
以上になります。
夜の散歩としては幾ばくか饒舌すぎる気もしますが、風花さんって結構お喋り好きかなと思い、こういった塩梅にしました。
それでは、豊川風花の写真集発売を願って。ありがとうございました。
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