金剛「思い出と糸電話」 (11)


 その日は久々の休暇だっていうのに何処にも出かけないでお部屋の中にいまシタ。

 自分でも、私らしくないって思いマス。

 本当はどこかへ出かけようかなって思ったんダヨ?

 なんといったってHappy holiday! 

 お外は今日の曜日――Sundayの言葉どおりに太陽がキラキラ輝いて絶好のお出かけ日和!

 こんな日は提督とdateに行くにはピッタリ、デスネ!

 待ち合わせの場所にやって来る提督をHeartをドキドキさせながら待って、二人で腕を組みながらあちこちお店を回って服やリップを買ったり、途中でケーキの美味しいオープンテラスの
カフェでTea timeにして……あっ、この間教えてもらったのですが日本には相手に食べさせてあげる「アーン」というのがあるらしいデスネ。あれをやってあげマス!

 日が暮れた後は私と提督以外誰もいない静かな場所で素敵な夜景を見て、そして最後は…………キャーー! とても言えないヨ!

 頭の中のScheduleが分刻みになってしまう程に提督と行きたいことや一緒にしたいことがあって、でもたった1日のお休みではとても足りなくて……トホホ、デース……。

 まあ、例えSchedule通りに行かなくても本当は提督と一緒に過ごす時間があれば私はいいんだけどネ。



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 なのに……な・の・に……なーーーーのーーーーにーーーー!! 提督と私のお休みが重なっていなかったのデース!

 実は私、今朝まで気づきませんデシタ。

 部屋の化粧台の隅に貼ってあるシフト表には提督を先頭に私を含めた沢山の艦娘の勤務時間が記号で載ってるのだけれど、提督の休暇は私の休暇の「次」の日。

 見間違えてしまっていマシタ……なのに私ったら昨日の夜は計画していた提督とのdateのことで頭がいっぱいでもう一度確認するなんてことしてませんデシタ。

 期待していたのに一気に落とされた感じ。自分のせいなのにすっごい腹が立ちマス。

 
 なんだかこの1日だけズレているという部分に作意すら感じてきてしまマース。 

 誰デスカ! 今月のシフトを組んだのは!! ××××××××××××!!!!!! 

 …………おっと、ついはしたない言葉を。



 そんな訳で提督とのLove × 2 date planをのっけから壊されてしまった私は部屋で私物の整理をしていマシタ。

 一人で外を歩くのもアレだし、かといって他の皆と遊ぼうっていう気分でもなかったしある意味ちょうど良かったネ。  

 クローゼットを開けると普段着ている金剛型の服と違って色んな……私好みな服がいっぱい出てくるでてくる!

 Mmmm……これはどうしましょうカ。取り出した服の一着をヒラヒラと自分に合わせて姿見の前でチェック。 

 その年の流行とかあるから色々と考えてしまいマス。

 だって流行からズレた……時代遅れな服なんか着ていたら提督と一緒に歩くとき恥ずかしいじゃないデスカ!

 皆が着ている流行りにのった服を着て、その上で一番それをPerfectに着こなす。優しくてかっこいい素敵な提督の隣にいるってそーゆーことだと思いマス。

 この服はひとまず閉まっておきましょうカ。もちろん素敵だけれど今の時期にはちょっと外れてるし。

 さてさて、次の服は…………Oh! これは去年提督が買ってくれたワンピース!

 提督とdateした時にいった服屋で、提督はマネキンの着ていたこのワンピースを見つめていまシタ。

 そしたら提督ったら「ちょっと着てみてくれないかな?」と私に言ったんデスヨ。

 最初に言われた時は、ピンク色でフリルなんてガーリーなデザインはお姉さんな私としてはちょ~~っと複雑な気持ちだったけど、これが着てみてビックリ! とっても似合っていマシタ!

 店員さんも「是非お客様に買っていただきたいです!」なんて言い出しちゃうくらい……でも、あれってやっぱり商売文句だったのデショウカ?

 でも、そんなことは別にいいのデス。私にとって記憶に残っているのはやっぱりワンピースを試着した私を見つめる提督の顔!

 妖精に出会ったかのような驚いたような顔をして、その後ニコリと優しく笑ってくれて私を見つめていマシタ。

 あの時、私は確信したヨ。あぁ……提督、いま私に見惚れているって!

 提督ってスゴいですヨネ。私でも気づかない私の魅力をこんなに簡単に引き出せてしまうんデスカラ!
 
 私、決めまシタ。今日は失敗してしまいましたけれど次のdateではこれを着ることにシマス!

 ……となると、これに合わせたcoordinateが必要デスネ。時期的にもこれから寒くなるだろうしベストやカーディガンを羽織って、アワセワザ・イッポン!なーんてネ! 

 恋も戦いもcombinationが大事ってことですヨ。
 
 そしてクローゼットの違う段を開けてベストやカーディガンを出そうとすると……ん?


 服とは違った固いものが指に当たりマシタ。

 取り出してみると出てきたのは小さな紙の小箱。とっても軽いけれど空き箱って訳じゃなさそうデシタ。

 jewelry boxなら化粧台にあったから違うし……何デショウカ?

 ドキドキした気持ちで箱を開けてみると中にはペアの紙コップがあったネ。

 コップの底には糸がついていてコップ同士を繋げている。

「ふふっ……」

 箱の中身――糸電話を見つけて私はおもわず懐かしさに笑ってしまいマシタ。

 これは思いもよらない掘り出し物デース。


 提督が小さい頃、私は提督のMotherの代わりって訳じゃないけれど提督の面倒を見ていたんだヨ。

 知ってますか?

 今でこそ作戦中はキリッとした世界一カッコいい顔で私たち艦娘に指示を飛ばす提督ですけれど小さい頃の提督って、今と違って人見知りするshyな子だったんだよネ。

 初めて会った時なんて私が「Hi、金剛デース! よろしくネ! アナタのお名前は?」と声をかけてもペコって小さくお辞儀をしただけで、提督のMotherが「ご挨拶なさい」と言われてようやく名前を教えてくれたんデスヨ。
 
 しばらく面倒みながら一緒に遊んでいる内に提督も心を開いてくれて私のことを「こんごうお姉ちゃん」なんて呼ぶようになって……とーっても可愛かったヨ!

 提督、覚えているカナー? 午後のtea timeで食べるおやつのホットケーキを一緒に作ったこと! 背が足りない提督が台に立って、生地の入った銀色のボールを一生懸命に混ぜたのを私が焼いたっけ。

 そんなある日いつもみたいにお勉強の終わった提督と遊んであげようと思って部屋にいくと提督が何か作っていマシタ。

 紙コップの底に穴を開けて、糸を通していて、通した糸を爪楊枝にくくりつけて、テープで止める。

「ピンクのおねえちゃんに教えてもらったんだ」

 提督が作っていたのは糸電話だったんダヨ。

「Oh、上手に出来てるじゃないですカー! 早速使ってみましょう!」

「う、うん……」

 二つのコップを繋げた糸がピンと張るまで離れて、私は提督の背に合わせるようにしゃがんでコップを耳に当てマシタ。

 静かになった部屋でコップから聞こえてくる小さな波のような綺麗な音が響いてきマス。

「こ、こんごうお姉ちゃん。お、おーとーねがいます」

 提督の声はいつもの子供らしい高い声を頑張って低くして威厳を出そうとしながら喋ったノ。まるで提督のFatherが私に命令をする時のように。

 提督、小さいなりにFatherのお仕事をぼんやりとだけど分かっていたみたい。 

「Hi、こちら金剛デース! どうしましタ?」

「え、えっと……えっと」

 心を開いてくれていてもshyな部分はまだ変わってませんデシタ。

 だけど、提督は何かを伝えようと頑張っていたから、私はそれをじっと待ちマシタ。

「こ・ん・ご・う・お・ね・い・ちゃ・ん……い・つ・も・いっ・しょ・に……あ・そ・ん・で・く・れ・て…………あ・り・が・と・う」

「……っ!」

 それを聞いたとき私の心の中が何かでいっぱいになったんダヨ!!!

 だって、あの人見知りでshyな提督が私に「ありがとう」ダヨ!? きっともの凄く勇気を出したと思いマス。

 こんなに嬉しいことはなかったネ。


 懐かしいMemory……思えば、あの瞬間から提督のことがすっごく愛おしく感じられたんデス。

 それから何年も経って、再開した提督は私の腰にも届かなかった背も私の背なんか追い越してすっごく高くなったし、shyだった性格が嘘のように社交的になったし、顔からは幼さは消えたけれど、あの頃の優しい面影はそのままで……

 まるで童話に出てくるような王子様のように素敵なBoy! ただ……今のカッコいい提督ももちろん大好きですだけど、あの頃のcuteな提督も好きだったからちょっぴり残念デシタ。

 私の中にあった提督への想い……あの頃はまだ小さな火のように温かいもので、ふと思い出して慈しむものでしたが、提督に恋をしてしまった私の想いは炎のように大きく燃え盛って体の内からover heatしてしまいそうデース!

 どうしてくれるんですか、提督! 

 責任とってこの体から溢れる情熱をしっかり受け止めてネ! Hold me tight forever!!

 ねえ、提督……私、提督のことが好きデスヨ。好き。好き。大好き。世界で一番。誰よりも。

 この想いはどれだけ言葉を重ねても伝えきれマセン。私のバーニング・ラブはとっても大きなものだから、ずっと提督に伝え続けマスヨ。

 何度も何度も言葉にしてしまえば、それは軽く薄っぺらい陳腐なものに感じてしまうのかもしれないけれど……私が提督に伝える言葉は、あの日提督が糸電話越しに勇気を出して伝えてくれた時のと同じように……全て心からのものデス。

「I love you……」

 私はそっと糸電話に愛の言葉を囁きマシタ。 
 
 この想い、いつか貴方の心に届きますように……。



 fin

おやすみなさい
起きたらHTML依頼しときます

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