R18です。
寝取られが主になるので苦手な人はバックして下さい
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焦りが、雪ノ下雪乃の喉を締めつけてくる。
どうして――こんなことになってしまったのか。おかしい。間違っている。過ちを認識しながらも、しかし、雪乃にはどうすることもできない。ただ、すぐ隣に歩く男にあわせて足を進めることしかできない。
適度に薄暗い廊下。部屋から出てきたカップルとすれ違う。隣の男が掌の中にルームキーを弄び、カチャカチャという音をたてる。その音を聞きながら、雪乃は、あらためて、自分のおかれた状況を再認識した。
ラブホテルに来ている――それも、知り合って間もない男と。
考えれば考えるほど、自分の行動がわからなくなっていく。
由比ヶ浜結衣の紹介で、結衣のクラスメイトだというその男が奉仕部にやってきたのが三日前のこと。勉強を教えてくれ、というのが彼からの頼みだった。来週に行われる予定の小テストに合格できなければ、部活動を辞めるよう親に言われているのだという。
依頼の内容上、雪乃が最も適任であり、くわえて、結衣と八幡はそれぞれ私事で忙しく、しばらくのあいだ部活動にはどうしても顔を出せないということで、放課後に雪乃が彼の勉強をみてやることになった。
しかしさすがに部室で男と二人きりで、というわけにはいかないだろう――と言ったのは八幡で、その表情にはいつになく険があった。結局、近くのファミリーレストランで勉強をすることになったが、八幡が自分を心配してくれたのだ、と雪乃は嬉しかった。帰り道や寝る前に、その時のことを思い出して、胸をときめかせるなどしてしまった――不覚にも。
「――っと、ここだね」
男が立ち止まり、それに一瞬遅れて雪乃も足を止める。
ここが目的の部屋らしい。とうとう、来てしまった。ファミリーレストランからこの場所まで、断る機会も、逃げ出す機会も、数えきれないくらいあったのに。抵抗の気持ちは、湧き出す端から雲散してしまい、とうとう行動にはならなかった。
男がキーを鍵穴に差しこみ、捻る。部屋の扉が開かれていくのを、雪乃の知覚はスローモーションとして捉えた。
ああ――自分は、比企谷八幡のことが好きだったのだ。今になって、こんな状況になって、ようやく、雪乃は自分の気持ちに気づいた。自分は確かに彼を異性として意識し、好感を抱いていた。
しかし、もう遅い。何もかもが手遅れだ。自分は、これから、彼ではない、他の男に抱かれようとしている。そして、最も恐るべきは、そのことに対してたまらない喜びを感じている、ということだった。
初日、男に勉強を教えながら、雪乃が彼に感じたのは、間違いなく嫌悪感だった。不真面目な態度と、舐め回すようなこちらへの視線。男から投げられる質問や世間話のほとんどすべてを雪乃は無視した。テストが実施されるまで、という期限つきでなければ、とても耐えられない、と思った。
それが――そのはずなのに、二日目には、雪乃は男との会話に応じていて、三日目となる昨日には、むしろ雪乃のほうから男に話しかけていた。確かにあったはずの嫌悪はどこかへ消え去り、彼の声や仕草がとても好ましいものに感じられた。
そして、四日目となる今日に至っては、参考書やノートなど、鞄から取り出すこともなく、ただ食事とお喋りを楽しんでいた。
「今日はしゃべり疲れたからちょっと場所移して休憩していこっか?」
会計を済ませ、店の外に出ると、男は雪乃の耳にそっと囁いた。その意味するところを考えるまでもなく悟り、雪乃は、彼女らしくなく、赤面して絶句してしまっていた。それでも、その足は、ホテル街へむかいはじめた男に遅れないよう、動きはじめていた。
男が選んだのは、いかにも安っぽい外装のホテルだった。ここなら制服でも文句は言われないんだ、と男は説明した。それはつまり、彼が以前にも誰か他の女とここを利用したことがある、ということだ。雪乃の胸が嫉妬に痛んだが、しかし今は自分だけを見てくれている、と思い直した。
「ほら、雪ノ下さん」
早く入りなよ、と廊下に立ち止まっている雪乃を室内に誘う男。その声を聞くだけで、その顔を見るだけで、ネガティヴな気持ちは消え去り、喜悦と切なさがないまぜになった感情が全身に満ち満ちてくる。
逆らえない――と雪乃は思う。他人から押しつけられる手前勝手な規範や倫理、正義なら、どうあっても抗してみせる。しかし、自らの内側に溢れるこの感情に逆らうすべは見つけられなかった。恋。間違いなく、自分はこの男に恋をしている。してしまっている。好きだ。好きだ。大好きだ。好きで好きで好きでたまらない。これに比べれば、八幡への感情など存在しないも同然の卑小なものでしかない。
これこそが、本物の恋なのだ。
自己に対する新たな認識が、新たな雪乃を規定する。それまで硬い顔をしていた雪乃は、わずかながらも表情をゆるめて、部屋へと足を踏み入れた。男が扉を閉め、チェーンをおろす。
カチン、という無機質な音が無人の廊下の空気を打った。
雪乃は男の体にしがみつき、その日何度目かになる絶頂を迎えた。肉体的な快楽だけではない。圧倒的な幸福感が押し寄せ、脳のヒューズが飛んでしまいそうだ。痙攣する膣内で男根がいななき、コンドームの中に熱い迸りがぶちまけられると、幸福感は極限以上に高まり、くぅっ、と可愛らしい呻き声をあげ、雪乃は気絶してしまっていた。
気を失っていたのは、しかし、一瞬に過ぎなかったようだ。ふう、と満足気な息を吐きながら男が勃起を引き抜き、コンドームを外す。その口を縛り、ぞんざいに床に投げ捨てる。まだ朦朧とした意識のなか、薄目でとらえるそんな仕草にさえも、いちいちときめきを覚えてしまう。
「いやーやっぱ雪乃のカラダ、まじサイコーだわ」
ベッドに仰向けになって、男が息混じりに言う。雪乃は、顔を赤らめながら、男の腕枕に頭をのせた。
「も、もう……そんなこと言って……」
「俺たち、体の相性まじバッチリだよな。ゴムもまだ残ってるし、少し休んだらまたヤろうぜ。今度はバックで挿れてやるよ。遠慮なくガンガン突きまくってやっから覚悟しとけよ」
「え、ええ……わかったわ」
また抱いてもらえる。また愛を交わし合うことができる。そう思うだけで、期待が膨らみ、雪乃は思わず男に身を寄せていた。その様子に、男が苦笑を漏らす。男の掌に頭を撫でられると、雪乃は心地よさのあまりにうっとりと目を細めた。
場所は雪乃の寝室。時刻は午後八時をわずかに回ったところ。雪乃と男が初めて肌を合わせたあの日からは、一週間が経過していた。
「今日のテスト、うまくいってよかったわ。サンキューな、雪乃」
雪乃の頭を撫でながら、男が言った。
「そんな……私は、ほとんど何もしていないわ……」
「いやいや。お前の作ってくれたカンペがなかったらヤバかったよ。この一週間、勉強なんて全然してなかったし」
ぎゃはは、と笑う男。その楽しげな笑いを聞きながら、雪乃は、自分のした行為は、やはり間違ったことではなかったと深く満足感を覚えた。
男の言葉通り、一週間前から昨日まで、雪乃たちが放課後にしてきたことといえば、デートくらいのものだった。カラオケ、ゲームセンター、映画館、ショッピングモール……今までに行ったことのあるところさえも、彼と一緒にいると、まったく別の場所のように感じられた。
一通り遊んだ後は、必ず、ラブホテルか雪乃の部屋でのセックスだった。女馴れした男の、手練手管を尽くした愛撫によって、雪乃の体はみるみる開発されていった。汗や涙だけではなく、時には涎や鼻水さえも垂れ流しにして、数え切れないほどの回数、雪乃は絶頂をきわめた。
そんな状態で、勉強など教えられるわけもない。気づけばもうテスト前日、という状況になっていた。それでもどうにか彼を合格させてあげたい、と苦慮する雪乃に男が頼んできたのは、カンニングペーパーの作成だった。もちろん、最初はそれを断った雪乃だったが、男に目をじっと見つめられ、「頼む」と言われ、心が揺らいだ。「お前にしかこんなこと頼めねーんだよ」とまで言われては、引き受けるしかなかった。
全く同じSSを他サイトと渋で読んだ
>>7
はい。 そっちに投稿したものをこちらにも投稿させていただくことにしました。
少し改変とか手直しが入りますけど流れは一緒です
雪乃は、徹夜までして、男の受けるテストの要点をまとめたカンニングペーパーを作成した。慣れない作業に、疲労もひとしおだったが、それを受け取った男の笑顔を見た瞬間に、そんなものはどこかへ吹き飛んでしまった。頑張ってね――カンニングペーパーをポケットにしまう彼にむかって、雪乃はごくごく自然に励ましの言葉を送っていた。
そして迎えた放課後、男は満面の笑みを浮かべて雪乃の前に現れた。
「お前のおかげでテストばっちりだったよ」
そう言って、男は雪乃へのお礼として、ファミリーレストランでスイーツを奢ってくれた。依頼を引き受けたにも関わらず、まったく勉強させていないという負い目もあって、二人でいて、金銭を使用する時は、雪乃がそれを負担している。彼に尽くすことも、至上の喜びではあったが、彼らから優しくされるのも、同じくらいに嬉しく、注文したパフェを食べながら、雪乃は感激のあまり涙ぐんでしまった。
その時の気持ちを思い出して切なくなり、雪乃は男に抱きついた。それだけでは我慢できず、男の汗ばんだ胸板にちゅっちゅっとキスを降らせる。ああ、とそうしながら雪乃は思う。これまで自分は恋愛に浮かれた連中の愚行を小馬鹿にしてきた。しかし、実際その熱に取り憑かれてみると、彼らの気持ちがよく分かる。相手が好きで好きでたまらないこの気持ちを表現するためなら、他人にどう思われようと構わない。
「どうした、雪乃。もう我慢できなくなっちまったか?」
「そ、それは……」
雪乃は、反射的に否定しようとしている自分に気づく。骨の髄まで染みこんだ見栄っ張り。結衣や八幡に対しても、本当の自分を見せることはなかった。できなかった。しかし――このひと相手なら、それができる。やはり、このひとは特別なのだ。
ひと呼吸して、気持ちを落ち着けてから、雪乃は言った。
「我慢……できなくなってしまった……かもしれないわ……」
このSSまとめへのコメント
あらおわり?
これ書いたやつ氏ね。