今週の不憫なゅぅゃ君が何故か東京喰種の黒カネキ君に見えてしまったので、勢いで投下。
喰種側の登場人物はリゼのみです。リゼとゅぅゃは知り合い。
リゼは舞網市のプロデュエリストというのが主な設定で。
時系列は飛び飛び。始めは先週と今週のアニメの部分から。
超設定、独自解釈、デュエルパート一部改変ありです。
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観客「やれー! やれー! ぶちのめせ!」
遊矢「……」
それはシンクロ次元、フレンドシップカップでの出来事だった。
度が過ぎた競争社会での名の下、全力で相手を叩きのめし、他者を蹴落とす事を是としてきた『シティ』において求められている、需要されているエンターテインメントというものは、そういった類のものであるという事をはっきりと目の当たりにした少年、榊 遊矢は、自分が絶対としてきた『デュエルで皆を笑顔にする』という精神の城が崩れようとしているのを感じていた。自分の信じてやってきたエンタメがシンクロ次元の人々に受容されない歯がゆさをとうに越し、半ば諦念のようなものまで遊矢という少年から伺えてくる。ずっと下を俯きながらDホイールを走行させている。オートパイロットシステムのおかげで、よほどの事が無い限り事故を起こす事は無いのだが。
遊矢「俺のっ……、父さんのエンタメが間違っていたのか……?」
今にも涙を流しそうな遊矢は、Dホイールを走らせ、プレイミングミスをしないようなデュエルをするので精一杯になっていた。ハンドルを握る腕は震え、オートパイロットがあるのに車体が左右に不安定に動いている。見ていてぎこちない。
観客「やる気あんのかぁ~! さっさと面白いモノみせろぉ!」
観客「キングに蹂躙された上に、『コモンズ堕ち』した公務員セキュリティに苦戦するなんて。何であんな子がエキシビジョンマッチのプレイヤーに抜擢されたのかしら? 見ていてつまらないわ。さっさとあんな子は『地下送り』した方がシティの為よ」
登場の時のブーイングに引き続き、心無い侮蔑の声をトップスから、更にはコモンズと呼ばれる人々から浴びせられる。トップスコモンズ問わず、発言した人の口からは吐き捨てるように唾が飛んでいた。トップスは上品な言葉で着飾っても言っている事は汚い。コモンズにかんしてはそういったエチケット・マナーの事は一切お構いなくきつい言葉が飛び交っていた。要するに汚い。今の遊矢の目の前で聞かせたら、間違いなく精神的な再起は不能になるくらいの事も中にはあった。中学生とはいってもまだしっかりとした『自我』を持っていなかった遊矢の精神は限界に来ていた。そんな時だった。
リゼ「いいえ、あなたのお父さんのエンタメは『間違ってはいない』わよ?」
遊矢「ッ! その声はリゼさん! どこ!? どこにいるの!?」
遊矢は傷つくところまで傷ついた自分の心を癒してくれると信じてやまないリゼという女性の姿を、地面を這いつくばるようにして探し回った。
気が付けば広大な草原にいた。所々に彼岸の花が咲いている。遊矢は『草や花を潰す事を躊躇せず』、自分を癒してくれる、今でも憧れの決闘者、認識する名前は神代リゼという女の姿を求め、地を這いつくばっていた。
リゼ「私はここよ」
遊矢「リゼさん……。生きていたんだ……。よかった…」
リゼ「勝手に私を殺さないでほしいわね。まあ、そんな話はどうでもいいの。それより、随分とやつれているじゃない? どうしたの?」
必死に地べたを這いずりまわったかいあってか、遂にその待望の女の前に辿り着いた。
彼女は紫の艶のあるロングヘアーを靡かせながら、世の男性を容易に魅了するような顔が遊矢の視界に入ってくる。スタイルもよく、彼女の着ている白のワンピースは、下から見ると高く聳えたつ塔のように見えなくもなかった。
遊矢「俺が信じてきた父さんの……、父さんのエンタメが、この次元の人々に受け入れてもらえないんだ! キングに独り善がりのエンタメと言われたけど……、それでも誰かを叩きのめし、蹴落とすエンタメなんて間違ってる! だから、俺は、俺の信じるエンタメを、『デュエルで皆を笑顔にする』というエンタメを諦めずに皆に受け入れてもらえるように頑張ってきた! でも、何で皆分かってくれないんだ! この次元の皆は、揃いに揃って狂ってる!」
遊矢は心の中で溜めていたものを全てリゼにぶつけた。リゼは『微笑みながら』終始、うん、そうなの、といった相槌ちを打って聞き手に徹していた。
遊矢はゴーグルを付けながら下を向いていた。心も下の方に向いていた遊矢であったが、目の前の女、リゼなら、自分の言い分を分かってくれる。幼い頃に優しくデュエルを教えてくれた、自分に密接に、積極的にかかわってくれたリゼなら、自分のこのやるせない思いを理解してくれるだろうというそんな期待を抱いていた。
ところがリゼははぁとため息をつく。そして聞き手に徹していたリゼは開口一番、辛辣な言葉を彼に浴びせた。
リゼ「勘違いも甚だしいところ。ホント、笑えるわねえ」
遊矢「リゼ……、さん…?」
遊矢はリゼから苦笑を買った。気が動転してしまいそうな遊矢にさらにリゼは追い打ちをかける。
リゼ「キングから独り善がりだと決めつけられるのも無理ないわねえ~。あなたは周りの事を想っているようで、何も想っていない。ただ自分の理想を誰かに押し付けて無理やり認めさせようとしているようにしか思えない。価値観の押しつけも甚だしいレベルよ。勘違いの行き過ぎた餓鬼同然ね」
遊矢「そっ、そんな……」
リゼ「そもそも、このシティと呼ばれているところの社会情勢は知っているはずよね? 弱肉強食の、極端な資本主義の、格差社会。そういったところで求められているエンターテインメントは、傷つき傷つけ、最後は圧倒的な力で相手を叩きのめすエンターテインメントっていったところかしら。キングのエンタメがまさにそう。しかし、あなたは求められているものに応えようとするどころか、自分の価値観を無理やり認めさせようとした。この街の社会情勢がどういったもので、その中で皆が求めているものがどんなもので、そして自分のすべき事は何であるのか。そういった事を一つ一つ真剣に考えなかった、否、『考えようとする努力をしなかった』分際で、自分の考えを分かってくれだなんて……。更には相手の考え方を否定までしだしちゃって……。プッ。お門違いもいいところなのは第三者の私からすれば当然の事なのよ!」
遊矢「あっ…、あっ…」
遊矢は何も言い返せなかった。
振り返ってみればそうだった。自分の是とする道を突っ走るより前に、周囲の事を理解しようと努めてこなかった自分が、これまでを思い返せば思い返す程、鮮明に浮かんでくる。
確かに一度は、キングの『独り善がり』の意味を考えはした。だが、結局はそれっきりで終わっていた自分に冷や汗が止まらない。体は震え、遂には目に涙を浮かべるようにまでなってしまった。
リゼ「ねぇ、遊矢クン。こんな言葉知ってるかしら?」
遊矢「……?」
もはや言葉を発する気力すら失った遊矢は、表情で疑問をあらわしていた。
リゼ「この世の全ての不利益は、当人の能力不足のせい」
リゼ「私の知人が言っていた言葉でね。とても説得力あるものだと思わない? あなたがこんな目に遭うのは、単にあなたの能力が不足していたから。価値観の違う世界で、人々を楽しませる能力が欠けていたから。この格差社会を容易に変えようと思えば変えられることの出来る圧倒的な力がなかったから……。そもそもこの次元に来る以前に、柚子って子を守る能力があったら、今頃どうだったのかしら」
遊矢「ち、違う! デュエルは、エンタメは、能力やパワーとか一言で済ませるものじゃない! 違うんだ……、違うんだ……」
リゼ「説得力なさすぎ。その発言に説得力を持たせるような能力を発揮してこなかったじゃない。ちなみに『運』なんてものも存在しないわ。あれは状況と状況の組み合わせ。遊矢クンがもっと強かったら、あのような価値観漂う場所でも、結果的には、『皆を笑顔』にすることも出来たんじゃなーい?」
遊矢は放心していた。
リゼに反論する事が出来ない悔しさは既にない。リゼの言った事全てに重みがある事を感じていた。
リゼ「あなたはこの街の格差社会を正しいとは思っていない。じゃあ変えればいいじゃない。一部の人々は犠牲になるかもしれないけどねえ~。人々を笑顔にしたい? じゃあすればいいじゃない。『ここでのルール』に則ってね。融合次元からの侵略を防ぎたい? じゃあ戦えばいいじゃない。融合次元の人々全員を笑顔にしようとせず、手にかける勢いでさ。全て自分の理想通りなんていかないものよ? あなたは全てを叶えられない。あなたは、『選ぶ』しかないのよ」
遊矢「うぁぁぁぁぁぁ! うぅぅ……」
遊矢は慟哭していた。
――――いくら抗っても変える事の出来ない現実
――――いくら考えても、たどり着けない答え
――――いくら全ての理想を叶えようとしても、叶えられない現実
これら全てをはっきりと刻み込まれた時、遊矢は『変革』を遂げる。
遊矢は倒れていた体を起こし、リゼと対面するようにまっすぐと立つ。
リゼは目に入った遊矢の表情をみて『暖かな笑み』を浮かべる。
リゼ「……。あなたはどうしたいのかしら?」
遊矢「……、俺はこのシンクロ次元の社会の仕組みを変えたい。守るべき人々の笑顔を守りたい」
リゼ「多くの犠牲を払っても?」
遊矢「払っても!」
リゼ「自分の心を捨ててでも?」
遊矢「捨ててでも!」
リゼ「それが間違っていた事だとしても?」
遊矢「そうだ! 俺は人々を笑顔にする為、どんな事をしてでも『勝つ』! 勝たなきゃダメなんだ! そうしなきゃ、何も……、何も救えないから……」
遊矢「もう何も出来ないのは嫌だ……」
リゼ「やっと、『本心』を出してくれた。私嬉しいわ……。力の無い正義は正義じゃないもの……。これで遊勝との約束通り、あなたを世間知らずのガキから、また一歩成長させる事が出来た……」
遊矢「父さんとの約束って……、父さんと一体何を!」
リゼ「それはもう少し時が経ったら話すわ。今は話す時じゃない。それより、目の前の敵に集中しなさい。あなた、残りライフ1000じゃない」
そう、現在の遊矢のフィールドには、オッドアイズフェニックスが一体のみ。比べて相手の場には攻撃対象モンスターのコントロールを得るゴヨウ・エンペラーとそのお縄についたモンスター2体。ボード差がついていた。
遊矢「わかったよ……。リゼさんお願いがあります」
遊矢は決心を固め、リゼに何かを請う。
その何かは、既にリゼの中で想像がついていた。
遊矢「俺に……、力をください」
今回はここまでです。
次回ゅぅゃが白髪になってキラートマト卒業してチェイサー227をボッコボコにします()
これ次回いらなくね?
こんばんは。
それでは本日の分投下。
>>8
227を倒して、俺の戦いはこれからだエンドにしようと考えたけど、色々とリゼさんとか使えるんじゃないかと考えて、ある程度のストーリーは考えてみました。よかったら是非。長くはならない予定。
リゼ「ええ、勿論よ。あなたがその気になってくれたのなら、私は喜んで力をあげる。私はあなたの『従者』ですもの」
リゼは微笑んで、ポケットから1枚のカードを取り出し、遊矢に手渡した。
リゼの『あなたの従者』という言葉に一瞬引っ掛かったが、そのカードに触れた途端、遊矢は自分の中に押し込めていたものが一気にこみあげてくるのを感じた。
それは遊矢がこれまで『悪』としてきた、相手を一方的に叩きのめさんとする闘争心であった。
遊矢の故郷、スタンダード次元の舞網市で行われた舞網チャンピオンシップという大会で勝鬨という少年とのデュエルで遊矢が見せた闘争心と同じものである。
勝鬨は勝利する為なら暴力的な手段も厭わなかった。遊矢はそれでも尚自分のポリシーに従って戦っていたが、途中で己の中に眠る黒い何かが溢れ出した途端、自分がそれに飲み込まれるのを感じていた。その時の感覚と同じものであった。
遊矢は震えていた。同時に表情は段々と鬼のようなものになっていく。
リゼ「そうよ、それが本当のアナタ。私がこれまで慕い、忠実に従ってきた、『遊矢』に段々戻りつつあるのを感じるわ。『遊矢』を『引き継ぐ』のも時間の問題ね」
遊矢「……それは一体どういう事だ?」
リゼ「……それは、この先起こる事に説明してもらった方が早いわ。さっき私は力をあげると言ったけど、私があげられるのはそのカード1枚だけよ」
遊矢「えっ…」
リゼ「大丈夫よ、これからは私以上に『遊矢』が力を貸してくれるわ。『遊矢』は今まで私以上にあなたを助けてくれのだから……」
遊矢「……、『遊矢』は俺じゃないのか!?」
リゼ「ええ、『遊矢』はアナタよ。そして、アナタも『遊矢』」
遊矢「ダメだ…、さっきからリゼさんの言っている事があまりよくわからない……」
リゼ「情報過多な状況を作ってごめんなさいね。でもすぐに分かるわ……。そして『大事な事』も思い出すの……」
遊矢「大事な事……?」
リゼ「あー、もう、一つ一つの事に突っかかるのは後にして。今は目の前の敵を倒すのよ」
遊矢「リゼさ……ッ……!」
急に目の前が眩しい光に包まれたかと思うと、気が付けば聞き覚えのある汚い歓声が耳に入ってきた。
ここは何も無い空間。辺りは真っ暗だ。
見るものがなければ、見えるものもない。そんな空間である。
ところがそんな空間に、一人の少年がぽつんと立っていた。
彼は細めの金色のラインが所々に入っている、黒の装甲を身に纏っている。
身体を動かせば、ガシャガシャと金属音特有の音が周囲に鳴り響く。
左手首にはデュエルディスクのようなものが付けられている。彼もデュエリストなのだろうか。
顔立ちは遊矢そっくり、容姿全体的に遊矢と瓜二つであった。
遊矢?「……俺はお前自身。そしてお前は俺自身だ」
彼はデュエルディスクのようなものにはめ込まれているデッキから、5枚のカードを取り出し、それを前方に投げると、5枚のカードは光を帯びて、どこかへ向かっていった。
227「さあ、この男が無様に競争社会の底に落ちるのを見届けてやろうじゃないか!お前の手札は1枚、次のドローでどうにかなる事は無いだろう!次の俺のターンがラストターンだ!」
遊矢はまだ下を向いていた。227はそんな遊矢を見て大層ご満悦の様子であった。ボード差は誰の目から見てもひらいていた。挙句の果てには次のターンでの勝利宣言。この男は自分の勝利を信じてやまなかった。観客も、トップスコモンズ問わず、227を持ち上げ、遊矢に対しては見下すような態度を示していた。
そんな空気を、突如としてスタジアム内に鳴り響く、『一人の女性の甲高い笑い声』がかき消した。
遊矢?「アハハハハハハハハハハハ! 何よこの空気。まるで『私』が負ける、否、負けるのを望んでいるようじゃない。ホント、笑える」
観客「お、おい……、なんだよ、アレ」
観客「榊遊矢って女だったのか?」
観客「なんて不気味なのかしら。こんな状況でいきなり女性の声を出すという、意表を突きましたという事をアピールする事によるウケを狙おうって思ったのかしら。浅はかな考えばかりが先走る、本当にどうしようもない未熟者の『クズ』ね」
『遊矢が発した』女性の声に対して観客がざわつき始める。
この事態を収拾する為、街営テレビ局所属の今大会のMCであるメリッサがその口を動かし始める。
メリッサ「あーん、もう! 皆落ちついて! 盛り上がるべきところは二人のライディング・デュエルでの駆け引きとかでしょ!? でも今のは何なのかしら……」
遊矢?「皆さん、ごめんなさいね。『もう後は遊矢に任せてもいいかな』って思ったんだけど、ちょっと心配しちゃって……。それに、途中までは『私』が出た方が、今後の遊矢の為にもなると思ったのよお!?」
あ、俺のレスの意味理解してねぇわ
遊矢?「いいえ、違うわ」
即座に否定し、遊矢とは別の存在である事を示した。
遊矢?「私は、リゼ。神代リゼよ」
本日はここまでです。
>>13
大しておもしろくないし、需要ねぇよって事?
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