咲「麻雀で負けて身ぐるみ剥がされた」 (61)

咲「どしよ……」

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ネリー「もうパンク?」

咲「……」

末原「まあこのレートでラス引き続ければしゃーないやろ」

爽「まだ日が昇るまで時間あるなー……」

咲(まさかこの面子相手に負けるなんて)

末原「とりあえずみんなで寿司でも食いに行くか?」

爽「おっ、いいね、末原さん」

ネリー「ネリーはもっと打ちたかったよ。なんでサキもっと金持ってこないの?」

咲「ッ……」ギュッ

ネリー「一人沈むのは勝手だけど、そんなポイポイ振り込まないでよ。お陰で一度もトップ取れなかったじゃん」

ネリー「はぁ~……まあいいけどさ。じゃあ、寿司食べに行く?トップのキョーコ先輩の奢りね!」

末原「こういう時だけ先輩付かい……咲も来るか?金の心配なら気にせんといてや」

咲(死ぬほど悔しい……お金の問題じゃなくて……)

爽「……なぁ咲。もう一勝負……やるか?」


ネリー「獅子原、どういうこと?レート下げるなら私はやらないよ」

爽「いやー、咲は今手持ちないけどさ、私が金、廻してやるよ」

末原「廻銭は御法度やないか。返ってこんで」

爽「咲なら大丈夫だろー、今までたくさん裏で勝ってきたって噂聞くし、銀行の口座にまだまだ金はあるよな」

ネリー「それを毟ろうっていうわけね、獅子原もワルだね」

咲「……」

爽「ほら、借用書。とりあえずこれだけ貸せば、二半荘は回せるよな。」

あの夏から私は勝ち続けてきたーー勝つことで得られるものは金だけじゃない。

追い詰められることで人は燃える。燃えて燃えて、最後に冷える。

その一瞬が大好きだった。

咲「ありがとう、獅子原さん」

私は勝ち続けてきた。だから、今日も勝てる。みたい。勝って、末原さんの青ざめる顔がみたい。

飄々として掴みどころのない、獅子原爽の感情を剥き出しにした顔が見たい。

ネリー・ヴィルサラーゼの、歪んだ表情が見たい。金を失って、途方にくれるあの顔を見たい。

咲「ふー……」

↓1 コンマ×10万円が咲の借金 ゾロ目なら×100万円

計算方法は

600万=10(コンマ以下一桁目)×10万+5(コンマ以下二桁目)×100万
600万=(1(コンマ以下一桁目)+5(コンマ以下二桁目))×100万

とかかね?


京太郎「で、泊めて欲しいと」

咲「突然迷惑だったかな……」

京太郎「いや、そんなことねーけど……とりあえずお酒飲むか?」

咲「うん。でもその前にシャワー浴びていいかな?」


咲(あの晩私は手ひどく負けた)

咲(借金は150万円。いつもホテル暮らしだった私は住むところもなくなって)

咲(着の身着のままで京ちゃんの一人暮らしのアパートに転がり込む事になった)

咲(150万円……1週間以内に返せないと……)ドクンドクン

京太郎「咲ーとりあえずタオルと着替え、洗面台の前に置いておくぞ」

咲「はーい」


京太郎「とりあえずビール。乾杯」

咲「ん……ぷはぁー……しみるよぉ……」

京太郎「咲もオヤジ臭くなったなー」

咲「京ちゃんほどじゃないよぉ。突然ほんとごめんね」

京太郎「気にすんなって、困ったときはお互い様さ!でも突然過ぎて驚いたぜ……仕事から帰ったら懐かしい幼馴染が玄関の前に立ってるんだからさ」

咲「まだ前の仕事続けてるの?」

京太郎「ああ。まだまだ下っ端のペーペーだけどな……」

咲(京ちゃんは大学を出た後、そこそこ有名な麻雀雑誌のライターをやっている)

京太郎「でも最近はちょっといい感じだなぁ。少しずつ業界の事がわかってきたっていうか……まあ編集長に言わせりゃ青二才なんだけどね」

咲「もう3年前だよね」

京太郎「ああ」


京太郎「お前、何やってたの?これでも麻雀界隈の事は結構詳しいんだぜ?プロ目指すって言って出てって以来……」

咲「あはは……プロの道は険しいよ……」

京太郎「そうか」

咲「結局、地方大会とか出たんだけど中々勝てなくてね……雀荘の打ち子とコンビニのバイト掛け持ちでやってるうちに、コンビニのバイトの方がメインになっちゃって」

咲「勝てない麻雀は楽しくないっていうかさ……わかるかな、京ちゃん」

京太郎「……」

咲「で、色々あってね……家賃とか払えなくて……ごめん」

京太郎「まー、しばらくゆっくりしてけよ。昔のよしみだ」

咲(京ちゃんは相変わらずお人好しだった。私の作り話に何も詮索せず、ただ受け入れてくれる)

咲「……京ちゃん、今彼女さんとかいないの?」


京太郎「い、いねーよ……居たら流石に……」

咲「ふーん」

京太郎「いや、そういえばこの前和と久しぶりに会ったぜ!全日本選手権の祝勝会のパーティーでさ、あいつ俺のこと覚えてて」

京太郎「いやー、トッププロと話すなんて三下の俺にそんな機会ないんだけど」

京太郎「編集長が経験だって言って俺を連れて行ってくれてさ、遠くから見てるだけだったんだけど」

京太郎「和の方から……痛っ」

咲「顔がにやけてる」

京太郎「いてて……抓らなくても……いや、すまん。」コホン

京太郎「もちろん咲の話にもなったぞ。和も心配してたよ。でも、清澄高校の昔話に花が咲いてさぁ。周りから俺まで変な目で見られちまった」

咲「でも良かったね。和ちゃんと友達なら仕事もきっと増えるじゃん」

京太郎「編集長にも和付きの記者になれって言われたけど断ったよ。和とは友達っつーか……仕事とは別っていうかさ」

咲「そ。京ちゃんらしいね」

咲(京ちゃんのアパートはお世辞にも立派とは言えない、独身の男が暮らすそれ。)

咲(150万……150万……私の頭はさっきからそれで一杯だった。)


あの晩、すっかり負けて、獅子原さんに廻してもらった金も尽きた後。

獅子原さんの事務所に連れて行かれて2日間拘束された。

その間、全財産をしっかり搾り取られた後で、それでも足りない150万円の話になった。

爽「150万くらい大丈夫さ。咲はまだ若いんだし」

爽「まあ1年かけてゆっくり返すプラン作ってやるから」

爽「え?150万くらい1週間で作れる?ホント?」

爽「まあそこまで言うなら……女のプライドって奴だよな」

爽「確かにたった150万でそーいう仕事、やりたくないよな」

爽「いいよ。なら賭けをしよう」

爽「1週間自由の身な。その間に150万円。耳そろえて返してくれ」

爽「でも返せなかったら……」


咲(私は何が何でも1週間で150万円用意しなくちゃならない)


それから小一時間……

咲(京ちゃんも色々溜まってるんだなぁ)

京太郎「でよぉ、あのクソ編集長が……」

お酒がすっかりまわり、京ちゃんの目もとろんと溶けてきた。

咲「うん、うん。京ちゃん大変だね」

京太郎「ちっとも俺のこと分かってくれる奴はいねーし……あと2年でしっかり仕事覚えてさ」

咲「はい、お酒」トプトプ

京太郎「ぷはぁー……ぜってー独立してやる……フリーになった先輩がいるんだけど、これがまた楽しそうなんだわ」

京太郎「俺も……あ、咲?」

咲「話、続けて?」グイッ

京太郎「距離、近くねーか……俺たちもう……」

咲「……」


咲「最近どうなの?」

京太郎「2ヶ月前に振られた」

咲「誰に?」

京太郎「仕事柄、一応プロとの付き合いもあるんだけど……鳴かず飛ばずだったプロに」

咲「……」

京太郎「そこそこメジャーな大会で優勝した後……自分にも夢があるからって」

京太郎「それまで支えてきた俺の立場ってものも、いや、恩着せがましいか」

京太郎「結局、優勝したのはあいつの努力。そこから先のステージに三流記者はただのお荷物って訳さ」

京太郎「やるせねぇよ……はぁ……」

咲「忘れなよ。嫌なことぜーんぶ。」

京太郎「咲……」

咲「私が忘れさせてあげよっか?」

つづく
放置しててごめんね


「ごめんね、キョータロー…」

2ヶ月前、俺はあの人に振られた。

「やっと掴んだの。年齢的にももう最期のチャンスかもしれないし」

京太郎「でも……」

「全日本選手権……5年前にテルーが通った道。やっと追いついたんだ。もう私には麻雀しか見えない。だから別れてっ」


咲「クポクポ……ぷはぁっ……京ちゃん、何考えてるの?」

京太郎「咲……」

咲「京ちゃんは楽にしてて。気持よくしてあげるから……あむっ」

咲「ちゅぷっちゅぷっ……」

京太郎(咲のフェラチオ、久しぶりだな……こいつにこれ仕込んだの俺だった)

京太郎(あの頃と変わらねぇ……懐かしい)

咲「京ちゃん、もうイきそ?」

京太郎「……」

咲「京ちゃん?泣いてるの?」


咲を抱き終わって、時計を見たらもう午前3時を回っていた。

京太郎「そろそろ寝るか」

咲「うん」

京太郎「……今日はどうしたんだ?」

咲「……」

京太郎「こんな俺で良ければ……力になってやるから」

咲「お金……貸して欲しい」

絞りだすように咲はそう言った。咲は小刻みに震えていた。

京太郎「いくら」

咲「京ちゃんの迷惑にならない範囲内でいいから……」

京太郎「借金か?」

咲「うん。知り合いに騙されて……三日後までに30万円」

京太郎「そうか……」

30万円……貯金を切り崩せば払えない額ではないだろう。

京太郎(俺は……)

↓1
①男気を見せる
②やんわり断る


京太郎「30万円か……大金だな」ポツリ

京太郎(薄給の三流記者には結構……独身とはいえ、税金や住宅費もバカにならんし、付き合いで飲み会も多い)

京太郎(このご時世、経費で落ちることなんてめったにない)

京太郎(いくら咲の頼みとはいえ、ポンと出せる額じゃないよな)

京太郎「すまねえ……俺にも生活があるし……」

咲「……」ウルウル

京太郎(そんな目で見るなよ……)

咲「ダメかな……ないと、本当にヤバイんだよぉ……言いたくないんだけど」

咲「体で返すことになってる」

咲「京ちゃんはいいの?私が他の男に抱かれても」

咲「もちろん、借りたお金はしっかり返すよ……それまでは京ちゃんの都合のいい女でいいから」

咲「お願いします」ペッコリン


京太郎「じゃあそろそろ仕事行ってくるから」

咲「……」

京太郎「まあお金の件はちょっと……ほら、とりあえず3000円。これで今日はしのいでくれよ」

京太郎「今日は多分8時には帰るから」


咲(まあダメ元だったからいいけどさ)

咲(ちょっといきなり30万円は厳しかったかなぁ)

咲「いってらっしゃい」

咲(さて、どうしよっかな……)

↓1
①京太郎の家を漁る
②街に繰り出す


咲(京ちゃん仕事行っちゃったし、私も街に出かけよ……)

咲「この3000円をどうやって増やそうかなぁ」テクテク

咲(競馬もパチンコもやったことないから分かんない……)

咲(ギャンブルなんて麻雀一筋だったから)

咲「あっ……Roof-Topだ……」

雀荘Roof-Top 東京支店

咲「染谷さんのお店……最近よくCMも打ってるし、儲かってるのかなぁ」

咲「とりあえず入ってみよ」

からんからん

純「らっしゃい」

咲(さすがに平日の昼間に客は誰もいないか……)キョロキョロ

咲(ガラの悪い店員が一人麻雀新聞読んでる……カウンターで)

純「悪いな、この時間は卓が立たないんだわ」

咲「いえ、いいんですよ。麻雀しに来た訳じゃないですから……」

純「はぁ?」

咲(獅子原さんのカムイで縛られてるし)

咲「あのー……私、宮永咲って者ですけど」

純「宮永……ってあの?」

咲「染谷さんの友人で」

咲(一応昔はインハイでそこそこ名前売れてたんだよね)

純「懐かしー名前だな、おい」

咲「ご存じですか?」

純「ご存知も何も、俺のこと覚えてないか?」

咲「……あっ」


咲(確かりゅーもんさんのとこの……えっと)

純「井上だよ、井上純!ほら、お前のとこのタコス娘とやった」

咲「お久しぶりです!すみません、すぐ気が付かなくて」あわわ

純「まあ俺もアンタが入ってきてすぐ気が付かなかったよ。こりゃ珍客だ」

咲(名前出してあわよくば染谷先輩につないでもらおうと思ってたんだけど、これはラッキーだね)

純「高校卒業して何やってたんだよ、宮永」

咲「えっと、色々遠回り……井上さんは?」

純「見ての通りここの雇われ店長さ。染谷に頼まれてとりあえず腰掛けだけどやってるの。コーヒーでいいか?」

咲「ありがとうございます」


咲(そういえば高校の頃この人と話したことほとんどなかったな……合同合宿とかやってたけど)

純「で、宮永は今も麻雀やってるわけ?」

咲「はい。と言っても趣味の範囲ですけど……」

純「なんでプロにいかなかったんだ?確か、ドラフトとか色々話題になったただろ?」

咲「あはは……なんでだったっけ」

純「もったいねーなぁ」

咲「そういえば衣ちゃん、元気ですか?」

純「衣?さあなぁ……高校卒業して龍門渕出て以来、連絡とってねーから」

純「それはそうと、何で真っ昼間からこんなとこに来たんだよ」

咲「いやー、Roof-topの名前見てつい……懐かしくって」

純「ふーん」

咲「あの、井上さん、染谷さんに連絡って取れないですかね?」

純「オーナーに?」

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