咲「ここどこ?」憧「あれは……」 (154)
和「ツモ、1000,2000」
優希「うぇー相変わらず、のどちゃんと咲ちゃん強過ぎるじぇー」
まこ「わしもいるんじゃが……」
咲「あはは……」
和「そういえば明日から連休に入りますが、咲さんは何か予定ありますか?」
咲「えっと……特にないかな」
咲「溜まってる本でも読むくらいかなー……」
優希「咲ちゃんは相変わらずインドア派だじぇー」
優希「たまには外にでないと、頭に苔とか生えて来ちゃうじょ」
咲「もうー、優希ちゃん、私そこまでひきこもりじゃないよう」
和「そうですよ、失礼ですよゆーき」
優希「あはは、ごめんごめん」
まこ「どうせ生えてくるなら、食べられるヤツがいいのう」
咲「染谷先輩……」
和「……」
和「あの、咲さん」
和「もしお暇なのでしたら、良ければその――」
久「みんなー、おはようっ!」
和「……っ」
まこ「随分遅いおはようじゃのう」
優希「もう5時前だじぇ」
久「これからみんなでカラオケに行かない?」
まこ「あんたはホントに唐突じゃのう」
久「たまには、部員同士の親睦を深めるのも良いと思ってね」
まこ「とか言って、自分が行きたいだけじゃろう?」
久「あら、バレたか」
和「バレバレです」
優希「バレバレだじぇ!」
咲「あはは……」
久「みんなも知ってるかもしれないけど、最近ここから歩いて十分くらいのところに、新しくカラオケ屋さんがオープンしたの」
久「みんなで行ってみない?」
久「丁度閉店セールで半額らしいし」
まこ「開店セールの間違いじゃろ」
久「細かいことは気にしない気にしない」
和「いえ、かなり大きな違いだと思いますけど……」
優希「でも楽しそうだじぇ!」
優希「私は行きたいじょ! カラオケ!」
京太郎「俺も俺も!」
和(須賀君いたんですか……?)
まこ「わしも特に反対する理由はないのう」
和「咲さんはどうですか?」
咲「私は……みんなが行くんなら、行ってみたいかな……?」
和(この主体性の無い答え……実に咲さんらしいですね)
優希「それでのどちゃんはどうなんだじぇ?」
和「みんなが賛成してるのに、私一人反対するわけにはいかないでしょう」
優希「素直に行きたいって認めるんだじょ!」
和「べ、別に私は! ……咲さんとカラオケに行きたいなんてひとことも……」ごにょごにょ
咲「?」
久「決まりね!」
久「今日の部活はおやすみ!」
久「みんなでカラオケに行くわよ!」
優希「おー!」
京太郎「おー!」
咲「おー……」
和「しかたないですね」
……
…
てくてく
優希「カラオケなんて久々だじぇ」
優希「なんかもうワクワクしてきたじょ! うおー」
京太郎「落ち着け、どうどう」
久「半額ってことは、つまりタダってことよね?」
まこ「いや、その理屈はおかしい」
和「どういう計算したら、そうなるんですか」
久「うーん、部費で落ちないかしら」
まこ「あんたってやつは……」
和「完全に横領ですよ、それ」
優希「大丈夫だじぇ! 京太郎が全額払ってくれるじぇ!」
京太郎「はあぁ?!」
久「あら、須賀君中々やるじゃない」
久「見直したわ」
まこ「よっ! イケメン!」
京太郎「いえ、コイツの嘘ですから!」
京太郎「自分の分しか払いませんよ!」
優希「ちぇっ」
優希「じゃあこうするじぇ」
優希「京太郎が私に一万円渡す」
優希「その一万で私がみんなを奢ってやるじぇ」
優希「これなら、京太郎も奢られて、みんなも幸せだじょ!」
京太郎「まあそれなら…………って、結局俺が払ってるじゃないか!」
京太郎「むしろ、お前が奢ったことになってて余計悪いわ!」
優希「うぇー、犬が怒ったじぇー、逃げろー」たったっ
京太郎「あ、こらっ、待て!」だっ
まこ「元気じゃのうー」
久「むしろ須賀君のほうは、麻雀やってる時より元気そうに見えるのは気のせいかしら」
優希「あれ?」
京太郎「うおっ」
京太郎「急に止まんなよ!」
優希「咲ちゃんは、どこに行っちゃったんだ?」
和「……」
久「……」
まこ「……」
京太郎「……」
和「咲さん、また迷子ですか」
久「みたいね」
……
…
奈良
咲「ココどこ…?」ふるふる
憧(あれは……?)
憧(決勝でシズと戦った)
憧(宮永咲)
憧(どうしてこんなところに?)
咲「うううー、どうしよ……」
憧(なんか困ってるみたいだから、声かけたほうがいいよね?)
憧(でもいきなり声かけて、『麻雀楽しませるぞ』とか『いきなり現れて好き勝手言ってんじゃねー』とか急にキレられたらどうしよう?)
穏乃「ん? どうしたの憧?」
憧「いや、なんで――」
穏乃「あー! あれ宮永さんじゃない?!」
玄「ミヤナガッ?」びくっ
穏乃「おーい宮永さーん!」
憧「あ、ちょっとシズ!」
玄「あああ……」がくがく
咲「たかかもさん……?」びくっ
穏乃「やっぱり宮永さんだ!」
穏乃「どうしたの? こんなところで」
玄「悪霊退散悪霊退散……」びくびく
咲「実は……ちょっと迷子になっちゃって」
穏乃「え? うん?」
憧「迷子?」
灼「遠足の途中とか?」
宥「修学旅行かも?」
玄「オンキリキリバサラウンハッタ」びくびく
憧「それでなんで宮永さんはこんなとこにいるわけ?」
玄「ミヤナガコワイ」ぶるぶる
宥「くろちゃん……」
咲「みんなでカラオケに行こうとしたら……それで……」
穏乃「奈良までわざわざカラオケしに来たんですか?」
憧「シズはちょっと黙ってて」
穏乃「ええー」ぶーぶー
憧「ごめん、宮永さん、話が全然見えないんだけど」
玄「臨! 兵! 闘! 者! 皆! 陣! 裂! 在! 前!」ぷるぷる
憧「もう少し詳しく説明してくれる?」
咲「はい……」
憧「あと、玄も少し静かにして」
玄「観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空」びくびく
咲「えっと、麻雀やってたら、部長がやってきて」
穏乃「ふむふむ」
咲「それでカラオケ行くことになって……」
穏乃「ふむふむ」
憧(なんで部長が来たらカラオケ行くことになるのよ?)
灼(話の繋がりが……)
宥(もしかして説明とか苦手なタイプなのかな?)
咲「みんなでカラオケのお店に向かったんだけど、私だけはぐれちゃって、気付いたらここに……」
穏乃「ふむふむ」
憧「……」
灼「……」
宥「……」
玄「不生不滅不垢不浄不増不減是故空中」びくびく
憧「えっと……」
憧「宮永さんは、どこで麻雀やってたの?」
玄「ヒエー、ミヤナガオソロシス」がくがく
咲「その……部室で」
憧「あの、まさかとは思うけど、清澄の部室じゃないよね?」
咲「いえ、清澄麻雀部の部室ですけど……」
穏乃「どゆことー」
憧「……」
灼「……」
宥「……」
玄「天にまします我らの父よ、願わくは、御名をあがめさせたまえ……」
憧「えっと……」
憧「部室で麻雀やってて、流れでカラオケ行くことになって、気付いたらここにいたと?」
咲「はい、そうです」
憧「……」
憧「あいたたたたたた」
憧「なんかあたし頭痛くなってきた」
憧「灼パスっ」
灼「え? 私?」
玄:リーチ!
咲「怖いよ...」
衣:トン
淡:ロン!
衣「!...淡かーよかったー」
咲「玄さんだったら数えだもんね...」
衣「うん...」
間違えました...
ごめんなさい
憧「このままじゃ宮永さんが可哀想でしょう? でもあたしじゃあ宮永さんの話を理解するのは無理」
憧「だから灼にまかせたっ」
灼「私だって理解できないよ」
咲「ぅぅ……」ぐすっ
咲「大丈夫です……自分でなんとかしますから……」ぐすっ
憧(いやいや、どう考えても大丈夫じゃないでしょ)
憧「とりあえず部室に戻って緊急会議を開こう!」
憧「ほらっ、宮永さんもついて来て」
宥「あの、その前に一つ提案が」
憧「ん? なに?」
宥「」ごにょごにょ
穏乃「なるほど」
憧「さっすが宥ねえ」
咲「?」
憧「ねえ、咲って呼んでいい? あたしのことは憧って呼んでいいから」
咲「はい、別にいいですけど……」
憧「じゃあ、よろしくね、咲」
咲「えっとよろしくお願いします、憧さん」
憧「さんづけ禁止」
咲「えっと……憧、ちゃん?」
憧「まあそれでいっか」
憧「あと敬語も禁止だから」
咲「ええー……」
穏乃「私のことは穏乃って呼んでよ!」
咲「よろしく、穏乃……ちゃん」
穏乃「うん、よろしく! 咲!」
穏乃「これも何かの縁だよ! 仲良くしようよ!」
宥「ねえ、くろちゃんくろちゃん」
玄「祓い給へ清め給へ守り給へ」がくがく
憧「どうでもいいけど、節操のない信仰だねえ」
灼「それが日本のいいところ」
宥「くろちゃん、あれは、咲ちゃんだよ」
玄「サキ……チャン?」
宥「うん、そう。咲ちゃん」
玄「サキチャン? ミヤナガチガウカ?」
宥「うん、宮永じゃなくて、咲ちゃん」
宥「咲ちゃん困ってるから、助けてあげないと」
宥「いつもの玄ちゃんなら、困ってる人を見過ごせないはずだよ」
玄「サキチャン、タスケル」
玄「咲ちゃんを、助ける……」
穏乃「おお! 玄さんが正気に戻った」
灼「すごい」
憧「さすが宥ねえ、玄の扱いは手慣れてるね」
玄「うーん」
玄「これはお見苦しいところをお見せしました」
玄「私は阿知賀女子の高等部二年、松実玄」
玄「以後、お見知りおきください」
咲「はい、よろしくお願いします」
宥「くろちゃん、咲ちゃんは迷子みたいなの」
玄「そうなのですか!?」
咲「はい……」
玄「でも大丈夫ですよ、咲ちゃん!」
玄「この松実玄に、お任せあれ!」
憧「いやいや、この流れで絶対に玄だけは頼りたくないよね」
憧「ついさっきまでブツブツと祝詞を唱えてた人に、誰だって自分の行く末を任せたくないよ!」
灼「泥舟」ぼそっ
玄「もう、憧ちゃん酷いのです!」
憧「とにかく、部室に戻るよ」
憧「晴絵も廊下をぶらぶらしてるかもしれないし」
灼「はるちゃんを暇人みたいに言わないで……」
穏乃「ほらっ、咲も行くよ!」
咲「うん」
……
…
阿知賀麻雀部部室
灼「私は鷺森灼。一応部長をやってます」
灼「よろしく」
咲「よろしくお願いします、灼さん」
宥「私は松実宥。くろちゃんのおねーちゃんなのです」
玄「おねーちゃんはすっごく寒がりだから、いつでも厚着なんだよ」
咲「宥さんもよろしくお願いします」
憧「さて、自己紹介も済んだところで、第一回『咲を無事に家まで届けよう会議』を始めます」
玄「おー!」
穏乃「おー!」
灼「名前そのまんまだね」
憧「まあぶっちゃけ、あたしが長野までの交通費くらいならおごってあげてもいいんだけどさあ」
憧「咲を一人で行かして、モスクワとかネパールとかに行かれても困るし」
咲「さすがにそこまで方向音痴じゃないよう……」
憧「や、長野で迷子になって、なぜか奈良にいる人に言われても説得力ないから」
咲「ううう……」
憧「あ、ていうか今思ったけど部員に連絡とればいいじゃん! 和とか」
憧「なんで今まで思いつかなかったんだろ?」
穏乃「憧は肝腎なところで抜けてるからなー」
灼「そういうところあるよね」
玄「憧ちゃんはウッカリ屋さんなのです」
宥「あはは……」
憧「いやいや、あんたらも思いつかなかったでしょうがっ!」
咲「あの……」
憧「ん? どした?」
憧「もしかして、電池きれてるとか、そういうベタなオチ?」
咲「私、携帯持ってない……」
憧「へっ?」
憧「部室に忘れちゃった、とか?」
咲「そういうことじゃなくて……」
咲「元々持ってない……」
憧「う、うそでしょ……ありえない……」
憧「そんな人いるの?」
玄「ちょっとしたカルチャーショックだね」
穏乃「咲は本当に携帯持ってないの?」
咲「うん……」
穏乃「勝った」
憧「なに変なところで張り合ってるの!?」
玄「咲ちゃん、これが携帯電話というもので、遠くの人とお話出来るんだよ」ドヤ
憧「いや玄、それは逆に失礼でしょ!」
憧「持ってないだけで、どういう物かはさすがにわかるから!」
咲「あはは……」
灼「部員の電話番号とかは覚えてない?」
咲「ごめんなさい……」
憧「まあそうだよねえ」
憧「あたしも覚えてないし」
憧「あ、じゃあ自宅の電話番号は?」
咲「それなら」
憧「よしっ、ビンゴ!」
……
…
憧「……」ぷるるるる
憧「でない」
咲「この時間は家に誰もいないかも……」
憧「それを先に言ってよ!」
穏乃「咲だけにね」
咲「ご、ごめんなさい」
憧「や、別に怒ってるわけじゃないから」
玄「もうー、憧ちゃんが大声だすから咲ちゃんが怯えてるのです」
玄「よしよし、咲ちゃん大丈夫ですよー」なでなで
憧(なに玄のやつ……急におねえさんぶって、さっきまで自分が怯えてたくせに……)
玄「咲ちゃんも誤解しないでね、憧ちゃんは基本いい子なんだけど、時々無神経なところがあるだけなのです」
憧「その発言がむしろ無神経なんだけど……」
咲「あはは……」
灼「ちょっと私、はるちゃんを探してくる」
宥「どうしたの灼ちゃん?」
灼「はるちゃんなら、きっと、清澄高校の電話番号も調べられるし、もしかしたら関係者の電話番号も知ってるかもしれない」
穏乃「さすが灼さん! なんか部長みたい!」
灼「実際に部長だけど」
憧「シズは和の連絡先知らないの?」
穏乃「インターハイの時はそれどころじゃなかったから、連絡先交換できなかった……」
憧「まあしょうがないね」
……
…
…
灼「廊下でうろうろしてたはるちゃんを連れて来た」
赤土「おっ、それが灼の言う迷――ヒエー、コカジプロトオナジクウキ」びくびくっ
赤土「度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色……」
憧「あんたもかいっ!」
……
.. ---- .
. ≦ ミ .
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/ ./../..:.:.:./:./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:..:Vヽ: . ∨ハ
/ \′:.:.:.:.':.:′:.:.:.:.: |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Vハ:....ノ i
/ .7T..ト....:.:i :i| :i:.:.:.:.{:.|、:{:.:.:.:.:ハ:.:.:.:ト::.i一:. . |
′/..:|..:|、:.:./|:.|{ :|:.:.:.:.ト:{ \:.、:.:.:/ : ヽ:|:.:.. i: .|
: / ..:i|..:{:.\ |:ハ:{、:.:.:.廴__ 斗<:.:|::.:.:.|:.:|:.:.. |: . 玄ちゃんが④してあげます
. |:il .:.::ii:八:{::{ |≧十\:∨ ,. `|:.:.:..ト:|:.:.: |: .{
. |:|!..:.::,| ..:.トド\ _, ` z.、__レ|::.:.:.|´j:.:.:..|: . ( \ / ) {_.}_} r‐
,|:{ .::/l| .:小≧==' '^ ´` ̄´`!:.:.: |' }:.:.:..|: . { \ \/ / _| |_/ )
八| :ハ| .:.:{:.i xxx , xxx |:.:.:.:|_,}:.:.:..|: . .i .> / (__ __ ヽ __
(__) | .:. 八 |:.:.:.:}V:.:.:..:: . . { / 〃 | | ) } (_ ヽ
.イ i! .:.:| :i::.. 丶 ノ ,:.:.:./:i::.:.:. :i: . . { {____. | | (_ ノ ) }
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{:i.:{ ハ:.:.:V :::|l:.:.:.}:.r } ̄ __ ノ/:.:./:./:.:.:.:. ::i{: . . {
. 八从 ,: .∧ :.{:::::リ::::::ノ 入_/'i{ /ィ /::/:.:.:.:. /::{:. . . .
∨ .:.:.:.\V‐≦ムイ /》___.ノイ 7:.:.:.:. /廴:.. . .八
/;..:.:.:.:.:./ \}! r‐〉ォ´ ̄ }ノ /::.:.:.:./ , ヽ: .∧
. /:/ .:.:::::/ ノ{{ '介′ i{ ./::.:.:.:./ / ∨. ∧
ノイ ..:.:.:./! く 廴. / .|乂 __人/::.:.:.:./ / i: : . .:.
__ノ/ ..:..::厶}/ \ ノ{ /j__ 斗-/::.:.:.. / i / {: : . ∧
赤土「冗談冗談、伝説級のジョークだ」
赤土「トラウマはあんた達のおかげで克服したしね」
赤土「宮永咲だっけ? 災難だったね」
咲「は、はい。おじゃましてます」
灼「はるちゃんは清澄の部長の電話番号知ってるんだって」
憧「なんでよ……?」
咲(そういえば部長、インターハイが終わった時、主要な人物に声かけまくって、連絡先交換してたなあ……)
玄「でもこれでなんとかなりそうだね!」
玄「きっと咲ちゃんのお友達も心配してるよ! 早く安心させてあげよう!」
……
…
長野
久「ええ、わかりました」
久「そちらで保護してくださると助かります」
久「いえ、本当にありがとうございます」ぴっ
和「咲さんの居場所がわかったんですか!?」
優希「のどちゃん、ちょっと落ち着くじぇ」
和「咲さんが行方不明なんですよ! 落ち着いていられますか!」
優希「どうどう」
和「それで、部長、咲さんは?」
久「それが私にもよくわからないんだけど……」
久「なんか奈良にいるみたい」
和「え?」
京太郎「はあ? なんでアイツそんなとこにいるんだよ?」
まこ「奇怪じゃのう」
和「なんで長野で迷子になって、奈良にいるんですか?」
和「そんなオカルトありえません」
久「私に聞かれてもねえ」
久「あれじゃない、咲の特殊な力が発動したとか?」
久「リンシャンマイゴー、なんちゃって」てへっ
まこ「アクウカンで時空を超えたのかもしれんなあ」
和「二人ともこんな時にふざけないでください!」
久「あはは、ごめんごめん」
まこ「すまんのう、今のは少し不謹慎じゃったわ」
和「あと部長、その上手いこと言ってやったみたいな顔やめてください」
和「たいして上手いこと言ってませんから」
久「……」
久「……」
久「リンシャンマイゴー、けっこう上手いと思ったんだけどなあ……」ぽつり
優希「のどちゃんは咲ちゃんがいなくなって、ぴりぴりしてるだけだじぇ」
……
…
奈良
憧「咲はさあ、明日なんか予定あるの?」
咲「特には……」
憧「だったら一泊くらい、泊まっていけば?」
咲「へっ?」
憧「へっ、じゃなくて。今から帰るの逆に大変じゃない? もう時間も遅いし」
憧「それなら泊まっていったほうがよくない?」
憧「あたしの家な――」
玄「はいはいー! 咲ちゃんは私の家に泊まっていけばいいと思います」
玄「おねーちゃんもいいよね?」
宥「うん、歓迎するよ」
咲「あの……ホントにいいんですか?」
玄「大丈夫なのです!」
赤土「親御さんと部の仲間への連絡は私がやっておくよ」
灼「さすがはるちゃん」
咲「ありがとうございます」
穏乃「良かったね!」
咲「うん」
玄「咲ちゃん、ホントに遠慮しないでいいからね」
玄「なんか困ったこととか不満とかあったら言うのです」
咲「本当に何から何までありがとうございます」
咲「なんか玄さんって、面倒見がよくて、おねーちゃんって感じですね」
玄「おねーちゃん??!」
咲「あ、いえ、なんていうかその、深い意味はな――」
玄「おねーちゃんどうしようおねーちゃんみたいって言われちゃった!!」
宥「よかったねくろちゃん」
玄「咲ちゃん!」
咲「はいっ!」びくっ
玄「咲ちゃんには特別に、私のことをくろおねーちゃんと呼ぶ権利を贈呈するのです!」
憧(うーわー、玄になんか変なスイッチ入ちゃった……)
咲「えっと……」
咲「くろ……おねーちゃん?」
玄「えへへ、玄おねーちゃんって呼ばれちゃった、えへへ」
憧「いや自分で言わせたんでしょうが」
宥「くろちゃん嬉しそう」ほくほく
玄「えへへ、くろおねーちゃんだって」
穏乃「なんかいいですね、こういうの」
灼「まあ玄はたしかに面倒見はいい方だよね」
灼「どう見ても姉っぽくはないけど」
玄「あれでも、咲ちゃんって本物のおねーちゃんいなかった?」
憧(いなかった?じゃなくてあんたは実際に戦ったでしょうがっ!)
咲「うん……」
玄「でもでもっ、ここにいる間は、私のこと、本当のおねーちゃんだと思っていいのですよ?」えっへん
咲「えっと、あ、ありがとうございます」
憧(咲がちょっと困ってるし)
……
…
松実家
玄「じゃじゃーん」
玄「ここが私たちのお家なのです」
玄「自分の家だと思ってくつろいでおっけーだよ」
宥「うん、遠慮しないで」
咲「本当にありがとうございます」ぺこっ
玄「咲ちゃんさっきから、感謝しっぱなしですね」
玄「姉妹で助け合うのは当たり前だから、そんなにかしこまらないでいいのですよ」
咲「姉妹で助け合うのは、当然、ですか……」ぼそっ
……
…
…
玄「zzz……」
咲「……」
宥「……」
宥「咲ちゃん起きてる?」
咲「はい」
宥「もしかして眠れないの?」
咲「いえ、そういうわけでは……」
咲「なんとなく目が覚めてしまって」
宥「そう……」
咲「……」
咲「本当に、阿知賀のみなさんには感謝しても感謝しきれないです」
咲「こんな私のために、色々と……」
宥「みんな好きでやってるだけだから、別に負い目に感じなくていいんだよ」
宥「くろちゃんは咲ちゃんがいてとっても楽しそうだし」
宥「私も、妹が一人増えたみたいで嬉しい……なんてね」
咲「宥さん……ありがとうございます」
宥「少しでもいいから、寝たほうがいいよ」
咲「はい」
宥「それじゃあおやすみー」
咲「おやすみなさい」
……
…
咲「優希ちゃん優希ちゃん」
優希「ん、なんだ」
咲「これから優希ちゃんのこと、タコスちゃんって呼んでいい?」
優希「突然どうしたんだじぇ咲ちゃん!? 頭でも打ったか?」
咲「和ちゃん和ちゃん」
和「はい、なんでしょう咲さん」
咲「これから和ちゃんのこと、おっぱいちゃんって呼んでいい?」
和「おおおおお、おっぱ……ってなにを言っているですか咲さん!!」
――――
玄「zzz……」
咲(……変な夢を見ちゃった)
咲(確かに私は人付き合いとか苦手だけど、あんな失礼なことは言わないよう)
咲(どうして夢の中の自分って、おかしな行動をとるんだろう)
咲(あんなことありえないのに、和ちゃんのしぐさとか反応とかが妙に生々しくて)
咲(嫌な汗かいちゃった)
咲(…………)
咲(眠気がどっかいちゃったし……)
咲(でも、ぼーっとしてればそのうち眠くなるよね)
ごろごろ
玄「……咲ちゃーん」むにゃむにゃ
咲「っ!」
咲(玄さんが、寝ぼけて私の布団に……)
玄「むみゃむにゃ……大丈夫だよ、咲ちゃん、私がついてるからね」ぎゅっ
咲(ぅぅぅ……玄さんの体温が伝わってくる……)
咲(あったかくて、心地よいけど、すごく恥ずかしいよ……)
咲(というか、二つの柔らかい塊が腕に当たって……)ふにふに
玄「むにゃむにゃ……安心していいのですよ……」ぎゅぎゅっ
咲(うー、なんか顔から火がでそう……)
咲(でも玄さんに抱きしめられてると、あったかくて、包まれてるって感じがして、すごく気持ちいいかも……)
咲(って私なに考えてるんだろ! ううう……)
玄「そうなのです! 私はおねーちゃん力53万なのです」むにゃむにゃ
咲(玄さん気持ち良さそうに寝てるから、無理矢理剥がして起こしたら悪いし……)
咲(どうしよう! 余計に眠れなくなっちゃった)
……
…
翌朝 松実家
穏乃「オッスオラしずの!」
穏乃「というのは冗談で遊びに来ましたー」
憧「おはよー」
玄「おも……おはよう」
宥「おはよう」
憧「咲はもう起きてる?」
咲「……ん?」
咲「ここどこ?」むにゃ
憧「あらら、まだ寝ぼけてるみたいね」
穏乃「すっごく眠そうだー」
憧「朝が弱いタイプなんだね」
玄「ふふっ、咲ちゃんってばお寝坊さんだねー」
……
…
阿知賀麻雀部部室
憧「遊ぶっつっても、結局こうなるわけか」
憧「まあでも、折角長野のエースがいるんだから、手合わせしなきゃもったいないよねえ?」
咲「そんな……エースだなんて、私は別に……」
憧「ん? 別に咲のことだなんて言ってないけどぉ?」
咲「あ……えっと」
玄「こらっ、憧ちゃん! 咲ちゃんをいじめる人は、このくろおねーちゃんが許さないのですよ!」
玄「めっ!なのです!」
憧(うわあ……すげえめんどくさい……)
憧「まあ今のは少し意地悪だったけど、あたしが咲のことを長野のエースだと思ってるのは本当」
憧(というかあの天江衣を倒したんだから実質長野最強じゃないの?)
憧(どうせ咲本人は否定するんだろうけど)
穏乃「はいはいっ! 私も咲と戦いたい!」
灼「私も、ちょっとうってみたいかも」
宥「私も」
咲「はい、よろしくお願いします」
玄「うふふ、咲ちゃん大人気なのです」
憧「なんで玄が嬉しそうなの」
……
…
穏乃「うへー、またリンシャンカイホー」
玄「うう、咲ちゃんつよーい……」
憧「あれ、ぼろ負けしてるのに玄が正気だ」
灼「一緒に過ごして免疫ついたんじゃない?」
憧「免疫って……病原菌扱いですか……」
憧(しっかし、ホント麻雀やってる時と普段のギャップありすぎでしょ)
憧(普段は普通の、うううん、普通よりも少し気弱な女の子なのに)
憧(麻雀中はどっからどう見ても怪物だよねえ)
憧(シズがいるから、多少は抑えられてるはずなのに……)
……
…
…
憧「つかれたー、少し休憩」
穏乃「あ、そうだ憧! ピンポン玉拾ったからピンポン野球ごっこしようよ」
憧「いいけど。咲もどう?」
咲「私は……遠慮しとこうかな」
憧「そう」
穏乃「残念」
憧「バットは……シズが拾って来た用途不明の木の棒でいいか」
…
玄「あはは、部室でやるつもりなんだね」
灼「なんて迷惑な」
…
穏乃「さあ! ばっちこい!」
憧「なんでシズからバッターなの?」
穏乃「いいじゃんいいじゃん」
憧「そうだね、すぐ三振にとるからいっか」
穏乃「お、言ったなー」
憧「偏差値70overナックル!」ばしゅっ
ブン! スカっ
穏乃「くっそー!」
穏乃「これが偏差値70以上の力か……」
灼「いや、偏差値は関係ないかと」
玄「ピンポン玉だからやたら曲がるね」
憧「もういっちょ、偏差値70overナックルカーブ!」ばしゅっ
憧「あっ」
ぺちっ
穏乃「いたっ」
灼「デッドボール……」
宥「痛そう……」
穏乃「もう、どこ投げてるんだよ!」
憧「ごめんごめん」
憧「でもピンポン玉だから、当たってもあんま痛くないでしょ?」
穏乃「そういう問題じゃないよ」
穏乃「憧のノーコンッ!」
憧「はあ? 偏差値70overのあたしがノーコンなわけないでしょ?」
灼「だから偏差値は関係ない……」
わいわい がやがや
咲「…………」
咲「…………」
玄「そんなぼーっとしてどうしたのですか?」
玄「咲ちゃんも混ざりたいのなら、やってくるのといいのです」
咲「あはは、私はいいです……」
玄「遠慮はいかんのですよ」
咲「本当にそういうわけじゃないんです……」
咲「ただ……」
咲「少し羨ましいなって思いまして……」
玄「羨ましい?」
咲「ああいう、軽口を言い合える関係が……」
咲「ちょっとのことでは揺るがない、堅い絆があるんだなって……傍目にもわかって……」
咲「そういうの少し、憧れちゃいます」
玄「咲ちゃんだって清澄のみんなと仲良しさんだよね」
咲「まあ、そうなんですけど……」
玄「うん?」
玄「なにか気になることでもあるの?」
咲「いえ、別に…………」
玄「そんな寂しそうな顔で言われても説得力ないのです」
玄「なにか悩み事があるのなら、このくろおねーちゃんに話してみるといいのですよ」えっへん
咲「……それは……」
玄「えとえと、私じゃ、頼りないですか?」
咲「そんなことは……ないです」
玄「確かに、私と咲ちゃんは出会ったばっかりだよ」
玄「でも逆に、その方が話しやすいということもあるんじゃないかな」
玄「それに妹が悩んでいたら、悩みを聞いてあげるのが姉の勤めなのです。それが姉妹というやつですよ」
咲「それが姉妹……ですか……」
咲「…………」
咲「悩みってほどではないんですが……」
咲「……気にし過ぎかもしれませんが、私だけ、みんなと、あまりなじめてないように感じるんです……」
玄「みんなってのは、清澄のお友達のことですか?」
咲「はい」
玄「うーん? 傍目では、とっても仲良しさんに見えました」
咲「そうですね、和ちゃん達はすごくやさしくて、本当によくしてくれてます」
咲「言葉にできないくらい、みんなには感謝しているんです」
咲「…………」
咲「私は、みんなと出会う前は、ずっと一人で本ばかり読んでました」
咲「それで寂しいと思ったことは、ほとんどありませんでした」
咲「多分、そう感じていることすら、自分で気付いてなかったんだと思います」
咲「そんな私を変えてくれたのが、麻雀部のみんななんです」
咲「自分の殻に閉じこもっていた私を無理矢理麻雀部に連れて行ってくれた京ちゃん、いつも明るくムードメーカ的な優希ちゃん、染め手が得意な染谷先輩、
色んなイベントを企画したりして私たちを引っ張ってくれる部長、そして麻雀の楽しさを、麻雀と真剣に向き合うことを思い出させてくれた和ちゃん」
咲「みんなみんな大好きで、大切な仲間です」
咲「だけど、時々、妙に寂しい気分になるんです」
咲「みんなといるはずなのに、みんなと楽しく麻雀をやっているはずなのに、感じてしまうんです、深い孤独を」
咲「一人でいるときには、そんなもの感じたこと無かったのに」
咲「おかしいですよね? 一人でいる時には感じなかったのに、みんなといる時に孤独を感じるなんて」
玄「咲ちゃん……」
咲「それでどうしてなんだろうって考えて……」
咲「私だけ、みんなと少し距離があるじゃないかって思って……」
玄「うーん、そうは見えなかったけど」
玄「特に和ちゃんとは仲良しさんだったし……」
咲「和ちゃんは、私のこと、咲『さん』って呼ぶんです」
咲「優希ちゃんのことは、ゆーきって呼ぶのに」
咲「穏乃ちゃんと憧ちゃんのことも、呼び捨てですよね」
玄「そうだね……」
咲「そりゃあ、出会ってからそこまで経ってないし、過ごして来た時間が違うのもわかります」
咲「清澄では私が一番の新参ですし……」
咲「……」
咲「……」
咲「あはは……なんか話してて思いましたけど、私って贅沢ですね」
咲「悩みなんてものじゃなく、憧ちゃん、穏乃ちゃん達のような、阿知賀のみなさんの絆が羨ましかっただけなんです」
咲「私もあんな絶対的な絆を、清澄のみんなと持ちたかったな、って」
玄「…………」
咲「なんかすみません、こんな気が滅入る話して……」
玄「……」
玄「咲ちゃん、縁って、絆って不思議なものだと思わない?」
咲「はい?」
玄「実はね、私が中学生の頃、みんなバラバラだった時期があるんだよ」
咲「え? そうなんですか?!」
玄「うん、その頃は、麻雀部もなくてね、憧ちゃんとも穏乃ちゃんとも、ほとんど会わなかった」
咲「意外です……」
咲「幼なじみって聞いてたから、てっきり小さい頃からずっと一緒なんだって思ってました」
玄「それにね、私は面識あったけど、穏乃ちゃんにとっては灼ちゃんとおねーちゃん、あ、このおねーちゃんは、私のことじゃなくて、私のおねーちゃんね」
咲「はあ……」
玄「この二人は穏乃ちゃんが中三の時に初めて会ったんだよ」
咲「え? みんな幼なじみじゃ……」
玄「うううん」
玄「全員と小さい頃から面識があったのは私だけ」
咲「これも意外です……」
玄「そしてみんなを繋いでくれたのが和ちゃんなのです」
咲「和ちゃん?」
玄「和ちゃんは長野に引っ越してしまって、疎遠になってしまったけど、一度結んだ絆は、簡単に消えたりしないのですよ」
玄「穏乃ちゃんがテレビで和ちゃんを見たのがきっかけで、阿知賀麻雀部は復活したのです」
玄「もし、私たちが和ちゃんと出会ってなかったら……、友達になってなかったら、阿知賀麻雀部は復活しなかったし、五人こうして集まることもなかったのです」
玄「繋がっているのですよ、遠く離れていたって」
玄「和ちゃんと結んだ絆が、私たち五人を結んでくれたのです」
玄「そして転校してから長野で、和ちゃんを麻雀部に誘った子がいるはずなのです」
咲(優希ちゃんのことかな……?)
玄「その子がいなければ、和ちゃんは、インターミドルで優勝することは無かったし、それを見た穏乃ちゃんが戻って来てくれることもなかったかも」
玄「和ちゃんが長野で新しく結んだ絆が、知らず知らずのうちに、私たちを結んでくれた」
咲「確かにそう考えると少し不思議ですね……」
玄「私は憧ちゃんみたいに賢くないから、難しいことはわかんないです」
玄「でもこう思うのです」
玄「絆ってものは、出会った時に結ばれて、そうして、相手を大切に思うことで、強くなっていくものだって」
玄「咲ちゃんは清澄のみんなのことが好きですか?」
咲「はい、大好きです」
玄「大切に思ってますか?」
咲「かけがえのない、大切な仲間です」
玄「なら、きっと、咲ちゃんだけの、咲ちゃんしか結ぶことのできない素敵な絆を、結ぶことができるのです」
咲「はい……」
咲「くろさん……ありがとうございます」
咲「なんか元気でてきました」
玄「そこはくろおねーちゃんと言って欲しかったよおー」
咲「あはは……」
玄「でも、別に新しく結ぶ必要はなかったかもしれないですね」
咲「はい?」
玄「だって咲ちゃんはすでに……」
玄「ほら、窓の外」
咲「そと?」
久「――」
和「――」
咲「あれは!? みんな?」
優希「のどちゃん相変わらず体力ないじぇー」
優希「急に走り出したかと思ったら、すぐにバテバテになるなんて」
和「はあ……はあ……、ゆーきが、元気すぎるだけです」
久「そんな急がなくても咲は逃げたりしないわよ」
咲「なんでここに?」
咲「もしかしてみんな迷子に?」
憧「いやいやいやいや、咲じゃないんだから」
宥「きっと咲ちゃんを迎えに来てくれたんだね」
玄(あれ? もしかしてさっきの話みんなに聞かれてた?)
玄(ここが部室だということを忘れてたのです)
玄(でもまあいいよね)
咲「長野と奈良って、結構遠い?らしいのに……」
灼「その遠い距離を、大切な誰かさんのためにわざわざ来たってことでしょ」
がちゃっ
久「こんにちわ」
まこ「こんにちわ」
優希「咲ちゃん迎えにきたじぇ!」
京太郎「失礼しまーすっと」
和「みなさんお久しぶりです」
赤土「うっす」
咲「みんな……」
灼「はるちゃんも」
赤土「ああ、丁度廊下をうろうろしてるとこで会ってな」
穏乃「和!」
憧「おっひさしぶりー」
和「穏乃、憧、お久しぶりです」ぺこっ
和「それで咲さん……」
和「本当になにをやっているんですかっ!!!」
咲「ひっ」びくっ
和「私、本当に……本当に心配したんですよ!!」
穏乃「和、そんな怒鳴らなくても……」
憧「そうだよ」
咲(和ちゃん、本気で怒ってる……)
咲(でもそれは、それだけ私のことを心配してるってことで……)
和「穏乃たちは黙っててください!」
穏乃「は、はい」びくっ
和「咲さん、私がどれだけ不安だったかわかりますか?」
和「私、咲さんが事故や事件に巻き込まれたんじゃないかって気が気じゃなかったんですよ!」
和「本当にもう……」
咲「はい、ごめんなさい……」
咲(こんなにも、本気で叱って)
咲(本気で思ってくれてる人がいるのに……それに気付かなかったなんて……)
咲(バカだな、私……)じわっ
咲(そして、なんて幸せ者なんだろ……)うるっ
咲「ごめん、ごめんね……ぐすっ」
和「え、咲さん?」
穏乃「あー、和が咲を泣かした!」
憧「いーけないんだ! いけないんだ!」
和「ぅっ」
和「あの咲さん、別に責めてるわけではなくて……いや、少しは責めてたかもしれませんが」
和「そこまで深刻に捉える必要はないというか、その……、次から気をつけてくれればいいので……」
咲「和ちゃん、ごめんね」ぐすっ
咲「そしてありがとう」ぎゅっ
和「えええ? 咲さん急に抱きついたりしてどどどどうしたんですか?」
和「私としても嫌ではありませんが、さすがに人前でされるのは」
咲「本当に、今までありがとう……そしてこれからも……ぅぅっ」
久「あらあら」
優希「きっと咲ちゃんも不安だったんだじぇ」
まこ「和の姿を見て、緊張の糸が切れたのかもしれんのう」
和「……」ぽんぽん
和「安心してください、咲さん」
和「咲さんが迷った時は、私が見つけ出してあげます」
和「何度だって必ず」
咲「和ちゃん……」
和「……」
和「さあ」
和「帰りましょうか」
和「私たちの、清澄麻雀部へ」
咲「うん!」
カン!
おまけ
穏乃「いやー、実に感動的な光景ですなー」
憧「茶化すな茶化すな」
宥「よかったよかった」
穏乃「でも和もう帰っちゃうの?」
憧「少し遊んで行けばいいのに」
久「あら、私はついでに奈良観光もしていく予定だったのだけど」
久「和だって阿知賀のみんなと積もる話があるんじゃない?」
和「まあ……部長がそう言うのなら、多少遊んで行くことにやぶさかではありません」
久「最初からそのつもりだったくせに」
和「なっ! そんなこ……まあそういうことでいいです」
穏乃「やったー!」
憧「良かったね咲、もう少し遊んで行けるよ」
穏乃「うんうん」
玄「咲ちゃん咲ちゃん、奈良の案内なら、このくろおねーちゃんにおまかせあれ!」
和「……」
和「なんか咲さん、阿知賀のみなさんと、妙に仲良くなってません?」ジトー
咲「へっ?」びくっ
咲「あの和ちゃん……そんなに睨まないで……あとそんなに強く掴まないで……」
憧「うわっ、和、眼こわっ」
和「部長、やっぱ今すぐ帰りましょう」
和「ここは咲さんの精神衛生上、あまりよろしくないようです」
久「いやいや」
穏乃「そりゃないよー」
和「……」
和「冗談です」
憧「なんてわかりづらい冗談……」
優希「のどちゃん眼が、半分以上本気だったじぇ」
咲「あはは……」
穏乃「そうだ! みんなでボーリング行きません?」
灼「ボウリング……」
久「面白そうね、清澄と阿知賀の親睦を深めるのに、丁度いいし」
玄「みんなで仲良く、ボウリング楽しそうだよー」
久「でもどうせやるなら、6対6の、清澄VS阿知賀で競わない?」
優希「おおー!」
穏乃「いいですね! それ」
憧「面白そうじゃん」
穏乃「燃えて来た!」
灼「負けない」
宥「あわわ、足ひっぱっちゃうかも」
玄「大丈夫だよ、おねーちゃん」
穏乃「ん?」じーっ
まこ「……」
和「……」
咲「……」
穏乃「勝った!」
憧「シズ、今、とてつもなく失礼なこと考えたでしょ?」
京太郎(俺が、人数にカウントされてる……なんだろう、当たり前のことなのにすごく嬉しいかも)
優希「善は急げ! さっそく行くじぇ!」
和「え? 今からですか?」
穏乃「おお!」
……
…
てくてく
玄「この先が鷺森ボウルなのです」
久「鷺森って……」
宥「うん、灼ちゃんのおばあちゃんが経営してるの」
まこ「こりゃあ、手強そうじゃのう……」
久「相手のホームグラウンドってことね」
灼「6対6ってことは、はるちゃんも人数に入ってる」
灼「はるちゃんと一緒に戦うって新鮮」
穏乃「そうですね!」
灼「これは絶対に負けられない」
赤土「ふっ、大丈夫だ灼」
赤土「私の実力は、プロボウリニスト並だ!」
灼「…………わずらわし」
憧「その言い方でもうニワカ確定なんだけど」
優希「のどちゃんはボウリング上手そうだじぇ」
和「いえ、私はあまり経験がないので……」
優希「ええー、ボウリングの玉を二つぶらさげてるのにー」
和「はい?」
和「……」
優希「」じー
和「これはボウリングの玉ではありません!」
和「もうゆーき!」
優希「わー、のどちゃんが怒ったじぇ!」
玄「おもち……」
京太郎「なあ……」
京太郎「咲の姿がさっきから見当たらないんだけど」
和「……」
憧「……」
穏乃「……」
久「……」
玄「???」
……
…
大阪
咲「ここどこ?」
末原「あれは……」
カン!
乙乙
玄「おねーちゃんと呼んでいいのですよ」
咲「は、はい」
照「…」
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