男の娘と不健康系女 (10)
いかにも適当に結んだ風の髪、目の下にはクマ、口には煙草、その風貌に180cmはあろうかという長身が加われば近づきたがるものはいなくなるだろう。
とある大学の喫煙室で彼女は煙草をふかしていた
この大学にはそもそも喫煙者があまりおらず、その数少ない喫煙者達もなにか恐ろしい女と一緒に煙草を吸う勇気を持ち合わせていなかった。
不健康女「…」フゥー
「相変わらずだなぁ君は」
不健康女「…なんすか先輩」
先輩「いんや別に?ただ男っ気がまったくな熱い!」
吸っていた煙草を先輩に向かってはじき、新しい煙草を取り出す
不健康女「余計なお世話ですよ」
先輩「だからといって煙草を先輩に投げるのはどうかと思うよ」
不健康女「…」
先輩「無視かい…煙草くれ」
不健康女「…ん」
先輩「ありがとさん…」カチッ
二人してぶはあと煙を吐き出す。
先輩「なんかそういう話題は君にはないのかい?こう、浮わついた」
不健康女「そういう話題に一番遠い私に聞くんですかそれ」
先輩「蓼食う虫もなんとやらというじゃないか」
不健康女「…先輩ってあれですか、マゾヒストってやつですか」
先輩「僕はSもMもどっちもいけるよ、と」
灰皿で煙草をぐしゃりと潰し、喫煙室の扉に手をかける。
先輩「…じゃあね?」
手をひらひらと振りながら出ていく
つかみどころのない人だと、つくづく思う
喫煙室には彼女独り
不健康女「恋愛ねぇ…」
その声は誰にも聞かれることなくむなしく消えていった
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不健康女「…」
教授「…つまり、神の見えざる手、という名前は…」
不健康女「…」
不健康女は講義を聞かずにペンをひたすら回していた
不健康女「…、っあ」
かたん、と音を立ててペンが落ちる
不健康女「あー…」
取ろうと手を伸ばそうとしたとき、隣から手をがのびてきた、
「あ…落ちましたよ?」
不健康女「…あ、ありがとうございます」
後半は自分でも聞き取れないくらい小さい声になってしまった。しかしそんなことはどうでもいい、
惚れた
一目惚れだった。
厳密に言うと、大学に入ってから初めて人に優しくしてもらったことと、その相手が可愛かったので、何が言いたかったのかというと不健康女はちょろかった。
男の娘「はい」
不健康女「、、」
声が出なかった、何か言わなければ、なにか教授「えーじゃあ今日はここまで」教授貴様許さん
不健康女「あの!」
男の娘「は、はい」
不健康女「お、お礼っていうか、なんだ、その、お茶でも、その、どうですか」
気持ち悪くなった、すごいコミュ障みたいになった。
男の娘「え、あ、はい、いいですよ」
マジ天使
今日はここまでですありがとうございました
食堂
男の娘「…」
不健康女「…」
気まずい
何を話せばいいのだろうか
男の娘「あの」
不健康女「、はい」
男の娘「あ、別に、お礼されるほどのことはしてない不健康女「そんなことない!…です」は、はい、」
つい声が大きくなってしまった
不健康女「す、すみません」
男の娘「だ、大丈夫ですよ」
不健康女「…」
男の娘「…」
気まずい沈黙
不健康女「自分って、あんまり人に優しくされたこと、ないんですよ」
不健康女「なんていうか、見た目がこんなのだから、かな」
不健康女「だから、ペンを拾ってもらっただけでも、凄く嬉しかったんです」
…なんでこんなこと言ってるんだ、恥ずかしい
男の娘「じゃ、じゃあ」
不健康女「はい」
男の娘「ぼくと、友達になりませんか?」
ほんと天使
今更ですけど不定期更新です
喫煙所
不健康女「…」ブハー
あの後、連絡先を交換した。
友達か…
不健康女「…」
先輩「うーっす」
不健康女「…先輩」
先輩「なんだい?あと煙草くれ」
不健康女「恋って、いいですね」
時間が止まったような気がした
先輩「…ちょっと引いた」
不健康女「そこまで言いますか?乙女に向かって」
先輩「お前が乙女なら世の中の女は全員少女漫画の主人公だ」
不健康女「傷つくわー」
先輩「でなになに?恋?相手は?経緯は?先輩に聞かせてみなさい?」
不健康女「イラッと来た…男の娘っていう名前なんですけど」
先輩「男の娘ねぇ…知らないな」
不健康女「知ってたらストーカーを疑いますよ」
先輩「これはこれは」
先輩「で、なんで惚れたの?」
不健康女「…ペン、拾ってもらった」
先輩「…」
やれやれといったように肩をすくめる先輩
不健康女「なんですか」
先輩「チョロインか!」
不健康女「なっ」
先輩「チョロインか!」
不健康女「なんで2回言うんですか」
先輩「大事なことだからです。そのうち悪い男に引っ掛かりそうでな」
不健康女「まったく失礼な」
先輩「煙草」
不健康女「…」スパー
無言で渡す
先輩「…」カチッ
妙に居心地のいい空間だった
翌日
連絡してみるか…
『今何してる?』
…シンプルすぎるかな?
『今何してるの( ´∀`)?』
…キャラじゃないか
ヴーッヴーッ
うおああ!…LINEか
男の娘『連絡してよ~(>ω<。)』
か、かわいいな
不健康女『なんて送ればいいか分からなくて』
男の娘『不健康女っぽいね』
よ、呼び捨てだ!先輩以来だ!嬉しいなあ!
私も呼び捨てていいものか…
ものは試し
不健康女『男の娘は可愛い顔文字使うんだな』
どうだ
男の娘『そうかな?普通だよd(・∀・´)!』
おおー!呼び捨てで大丈夫だった!
不健康女『私はあんまり使わないな』
こうして男の娘と不健康女のやりとりは1時間をすぎたところでお開きとなった。
余談だが、不健康女はにやにやしながらメッセージを送っていたため、はたから見れば殺人犯の狂気の笑みのように見えたという。
翌週
男の娘「こっちこっち」
不健康女「さんきゅー」
待ちに待った講義の時間
一週間という時間は二人の距離を詰めるのには十分だったらしい
不健康女(かわいいなぁ」
男の娘「えっ?」
不健康女「あっ」
男の娘「あっ///」
不健康女「うぁっ///」
不健康女「…ごめん」
男の娘「…大丈夫」
二人とも顔を真っ赤にしながらうつむくその姿は恋人のようだったという
((((爆発しろ))))
講義後
不健康女「あー男の娘はこのあと講義は入れてないんだっけ」
男の娘「そうだよ、不健康女も?」
不健康女「うん」
男の娘「そっかぁ…一緒だね!」
不健康女「っ///」
…この天然タラシめ
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