新ジャンル:タロと勇者(11)
母「……者……な……い」
勇者「zzz……」
母「……勇者……起きなさい」
勇者「う…う~ん……むにゃむにゃ……」
母「勇者、今日はお前の旅立ちの日ですよ。早く起きなさい」
勇者「……むにゃむにゃ」
母「さぁ、勇者。貴方も父さんのような立派な選手になるのです」
勇者「ぼく、学者さんになりたい」
母「ダメです。貴方は父さんのような立派な勇者になるのです」
勇者「う~ん……」
母「さぁ、まずはルイーダの酒場に行きなさい。きっと貴方の力になってくれる仲間が見つかるでしょう」
勇者「……わかった。よしっ!じゃあ、タロっ!行こっ!」
犬「キャンキャンッ!」
母「ちょっと待て」
勇者「……ん?」
母「何故、タロを連れて行こうとする」
勇者「でも、タロ、お散歩行きたがってるよ?」
犬「キャンキャン!」
母「お散歩じゃありませんっ!貴方は冒険に行くのですっ!」
勇者「う~ん……タロ?お散歩じゃなくて、冒険だけどいい?」
犬「キャンキャン!」
母「いけませんっ!タロも尻尾振らないっ!」
犬「キャンキャン!」フリフリ
母「……いいですか、勇者?貴方は旅に出るのです」
勇者「うん」
母「タロは犬なのです。冒険には連れていけません」
勇者「でも、動物を仲間に冒険してる人とかいるよ?」
母「……それは、キマイラやゴーレム。もしくは、ドラゴンなどでしょう?」
勇者「うん」
母「タロはミニチュアダックスなのですっ!冒険には連れていけませんっ!」
勇者「大丈夫だよね?タロ?」
犬「キャンキャン!」
母「いけませんっ!」
勇者「じゃあ、タロ、行こっか?」
犬「キャンキャン!」
母「こら、勇者っ……!待ちなさいっ……!」
勇者「わっ、わっ……!タロ、走るなっ!」
犬「キャンキャン!」
――――――
僧侶「あら、勇者さん?お散歩ですか?」
勇者「違っ……!わっ、タロ走るなっ!冒険っ!冒険行くのっ!」
僧侶「……タロちゃん、連れて?」
勇者「うんっ……!わっ、タロ、何処行くんだっ!酒場はあっちだってば!」
犬「キャンキャン!」
僧侶「……大丈夫ですかね?」
戦士「お~、勇者とタロじゃねぇか?散歩中か?」
勇者「違っ……!冒険っ!冒険中っ……!」
戦士「冒険……?何、言ってんだ?ここ、広場だぞ?」
勇者「だって……タロが……!タロが走ってっ……!」
犬「キャンキャン!」
勇者「こらっ!タロっ!走るなっ!」
犬「キャンキャン!」
戦士「……元気だなぁ」
魔法使い「あ~!タロちゃんだ~!」
勇者「あっ、魔法使いちゃん……わっ、コラ!タロっ!」
魔法使い「フフ、いつもタロちゃん元気だね?」
勇者「元気すぎるよ!わっ、わっ……タロ走るな!」
犬「キャンキャン!」
魔法使い「こんど私も一緒に散歩連れて行ってよ!」
勇者「あっ、これは散歩じゃなくて冒……わっ、タロ、走るな……!」
犬「キャンキャン!」
魔法使い「フフ、うちも犬飼おうかなぁ?」
魔王「おやおや、可愛いワンちゃんですねぇ?」
勇者「あっ……こんにちは……」
魔王「ほ~ら、ワンちゃん~?こっちおいで~?」
犬「」プルプル
勇者「あっ……ごめんなさい……人見知りだから……」
魔王「そうなんだ?ほ~ら、大丈夫だよ~?おじさん、怖くないよ~?」
犬「」プルプル
魔王「ほ~ら?こっちおいで~?」
ガブッ
――――――
母「バカっ!だから、タロ連れて行っちゃダメって言ったじゃないっ!」
勇者「……ごめんなさい」
犬「クゥーン」
母「もうっ!菓子折りとか持って謝りに行かないと……それに治療費とか……」
勇者「……ごめんなさい」
犬「クゥーン」
母「ちゃんと、住所は聞いたの!?明日、お母さんと一緒に謝りに行きますからね!?」
勇者「ごめんなさい……これ、住所……」
母「随分遠くに住んでる人ね?え~っと、魔界二丁目の魔王城……」
こうして、魔王城への冒険が始まる
おわり
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