あきつ丸「スパイ大作戦であります!」 (104)
あきつ丸(○月×日、晴れ)
あきつ丸(開戦から二年が過ぎ……)
あきつ丸(自分が横須賀鎮守府に来て、一年少しが過ぎた)
あきつ丸(新進気鋭の天才と謳われた提督の下、)
あきつ丸(我々は日々、深海棲艦どもとの戦いに明け暮れているのであります)
あきつ丸(戦いは概ね順調に推移しており、)
あきつ丸(内地では勝戦気分が漂っているそうだが……)
あきつ丸「はあ……」
あきつ丸(勝利を重ねる度に、提督殿や仲間たちと親交を深めるごとに、罪悪感が増していく……)
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あきつ丸(そう、自分は陸軍の間諜)
あきつ丸(勢力を増していく海軍の内情を探るべく、)
あきつ丸(また、艦娘の製造技術を盗み出すべく、)
あきつ丸(横須賀鎮守府に派遣された内偵なのであります!)
あきつ丸(初めのうちは使命感に燃え、)
あきつ丸(海軍の増長にストップをかけ、国内のバランスを保つという意識の元、)
あきつ丸(精力的に任務に励んでおりましたが……)
あきつ丸(最近、自分の行いに疑問を持つようになったのであります)
提督「ああ、あきつ丸。大発動艇の整備か? ご苦労様」
あきつ丸「提督殿! 見回り、お疲れ様であります!」シャキッ!
提督「楽にしていい。大規模作戦にもひと段落ついたんだ」
提督「しばらくは艦娘たちに休養を取らせるつもりだ」
提督「もちろん、あきつ丸。貴様もだ」
あきつ丸「そんな……今回は自分、何もできませんでしたのに……」
提督「以前の作戦では人一倍頑張った」
提督「それに、次の作戦では何度も出撃を命じるかもしれない」
提督「今のうちに休んでおけ」
あきつ丸「提督殿……」
吹雪「あっ、提督! あきつ丸さんも」
吹雪「ちょうどいいところにいましたね!」
吹雪「これから間宮で初夏の甘味試食会があるんですよ!」
吹雪「お二人とも、いっしょに行きませんか?」
あきつ丸「いや、自分は……」
提督「ほら、遠慮するな。私はこれから会議があるので行けないが……」
提督「お前に私の分まで楽しんできてほしい」
提督「後で感想を聞かせてくれ」
あきつ丸「あっ、提督殿!」
吹雪「提督、行っちゃいましたね……」
吹雪「少し残念ですが、また今度誘いましょう!」
吹雪「さっ、あきつ丸さん、行きましょう」グイグイ
あきつ丸「あっ、あっ、自分は……」
あきつ丸「あ~~~……」ズルズル
~夜 私室~
あきつ丸「うぷっ、食べ過ぎたであります」
あきつ丸「甘いものは当分見たくもないでありますな……」ヨロヨロ
あきつ丸「皆、よくもあれほど食べられるものであります」ドサッ
あきつ丸「……」
あきつ丸(やはり、自分とは違うということか)
あきつ丸「………………」ゴロリ
あきつ丸(深海棲艦に対抗するための秘密兵器)
あきつ丸(海軍主導で製造された、人型の戦艦)
あきつ丸(深海棲艦とは似て非なる存在。強く、気高い、人類の守護者)
あきつ丸(彼女らの活躍はあまりに眩しく、華々しく……だからこそ陸軍は)
あきつ丸(艦娘もどきの自分を作り、何とか自分たちの発言権を守ろうとした)
あきつ丸(横須賀鎮守府に派遣される前、将校殿たちにこう言われた)
あきつ丸(『今や海軍は自らの野望を隠しもしなくなった』)
あきつ丸(『パワーバランスを自らに傾け、際限なく艦娘の増強を行う』)
あきつ丸(『その暴走を、誰かが制止しなければならない』)
あきつ丸(『このままでは、深海棲艦を殲滅したところで、待っているのは世界の海軍同士の戦いだ』)
あきつ丸(『白紙に戻った海図を塗りつぶすように、海軍は海を支配していくだろう』)
あきつ丸(『海は再び、血に染まる。それは現在の比ではない』)
あきつ丸(『それを止めるための力が、我々にも必要なのだ』、と)
あきつ丸(……)
あきつ丸(……それは本当のことなのだろうか?)
あきつ丸(本当は、海軍に嫉妬しているだけではないのだろうか?)
あきつ丸(自分が艦娘の製造技術を盗み出したところで……)
あきつ丸(それは果たして、平和のために使われるのだろうか?)
あきつ丸(……)
あきつ丸(提督殿はお優しい。理知的で、日本の将来を見据えて動いている)
あきつ丸(艦娘たちもそうだ。皆、お国のために働いている)
あきつ丸(それに比べて、陸軍のしていることは……自分のしていることは……)
あきつ丸(……)ウトウト
あきつ丸(正直に話せば、提督殿は力になってくれるだろうか)
あきつ丸(それとも、裏切り者として自分に処罰を与えるだろうか)
あきつ丸(分からない……分からないが……)ウトウト
あきつ丸(……提督殿……)zzz
~深夜~
あきつ丸「……はっ!」
あきつ丸「いつの間にか寝ていたようであります」
あきつ丸「服も着替えず、なんとだらしない……」
あきつ丸「寝汗がひどい……風呂に入らなければ」
あきつ丸(時間は……大丈夫でありますな)
あきつ丸「ならば、手早く汗を流すであります」スクッ
~艦娘用大浴場~
あきつ丸「……」キョロキョロ
あきつ丸「誰もいないでありますな」
あきつ丸「今日は出撃もない。急な入渠もないはず」
あきつ丸「今のうちに……」パサッ
あきつ丸「……」ポロン
あきつ丸「はあ」
あきつ丸(華奢な体。貧弱な肉つき)
あきつ丸(少女のような自分の体)
あきつ丸(そして、股間にぶら下がる男の象徴……)
あきつ丸(一体、いつまで隠せばいいのか)ハァ
あきつ丸(自分が男であることを。厳密な意味では艦娘ではないことを)
あきつ丸(この鎮守府にも人が増えた)
あきつ丸(こっそりと湯を浴びたところで、そのうちバレてしまう)
あきつ丸(その時、自分はどうすればいいのか……)
あきつ丸(見よう見まねで作られた自分は、)
あきつ丸(陸軍の技術力の拙さと、艦娘製造技術のなさで、)
あきつ丸(男型の艦娘として生まれ――そのくせ、駆逐艦にさえ及ばないほど非力だ)
あきつ丸(自分が盗み出した技術によって、女型のまるゆを作れるようになったようだが……)
あきつ丸(やはり非力だ。あれでは物資輸送しかできず、そのくせ難点が多いと聞く)
あきつ丸(陸軍は海軍に追いつけ追い越せと声高に叫んでいる)チャプン
あきつ丸(だが、どうやってパワーバランスとやらを取るつもりなのだろうか)
あきつ丸(これでは足を引っ張るのが関の山で……)
あきつ丸(そんなことをしている場合ではないのに……)ホゥー
あきつ丸(……)
あきつ丸(……垢を落として出よう)
あきつ丸(誰が来ないとも限らない……)
あきつ丸(……)カララ
あきつ丸「ふう」
あきつ丸(鬱々している時も、風呂は気持ちいいものでありましたな)シュル
あきつ丸「はあ……」フキフキ
提督「あきつ丸……?」
あきつ丸「っ!!!!!!」
提督「あきつ丸、貴様……」
提督「男、だったのか……?」
あきつ丸「ち、ちがっ!」バッ
提督「い、いや、しかし……」
提督「見慣れたものが……股間に……」
あきつ丸「こ、これは、そのっ!」
あきつ丸(しまった! 油断していた!)
あきつ丸(艦娘の使用しない時間帯に、提督殿が大浴場を利用されることもある!)
あきつ丸(失念していた……! 使用中の札もかけていなかった!)
あきつ丸(ど、どうする……!? この場をどう切り抜ける!?)
あきつ丸(考えろ……考えるであります、あきつ丸!)
あきつ丸「あの、その……!」
提督「……」
提督「何か事情が、あるのだな?」
あきつ丸「えっ……」
提督「なるほど、以前から他の艦娘とは何かが違うと思っていたが……」
提督「そうか、あきつ丸は男型の艦艇だったか」
あきつ丸(……もう、誤魔化せない)
あきつ丸(このことについては、認めるしかない)
あきつ丸「そ……そうであります」
提督「……そうか」
提督「深海棲艦を参考に建造されたのが艦娘だ」
提督「だから、男型がいるとは……その、思わなかったぞ」
あきつ丸「……」
提督「……聞いていいか?」
あきつ丸「……はい」
提督「どうして男であることを隠していたんだ?」
提督「どうして艦『娘』であると偽装して、この鎮守府に来たんだ?」
あきつ丸「それは……」
あきつ丸「自分の存在は異質そのものであります」
あきつ丸「それが不協和音を生むより、艦娘として振舞った方が……」
あきつ丸「艦隊に一体感が生まれる。将校殿は、そう考えておられたそうです」
提督「……なるほど」
あきつ丸「……」
提督「……」
あきつ丸「それで、その」
提督「なんだ?」
あきつ丸「自分の処遇は……どうなるのでありましょう?」
提督「処遇か……」
提督「……今まで通りで構わない」
あきつ丸「なっ!?」
あきつ丸「じ、自分は男であります!」
あきつ丸「それが艦娘の中にいるのは問題では……!?」
提督「なんだ、貴様は問題を起こすつもりなのか?」
あきつ丸「まさか!」
提督「なら、いいじゃないか」
提督「貴様が言った通りだ。男であると皆に明かしたところで、艦隊の協調性を損なうだけだ」
提督「それならば、終戦まで隠し通すべきだ。私はそう考えた」
あきつ丸「ですが……」
提督「少し驚いたが、何が変わるわけでもない」
提督「私は何も気にしない。協力を求めるのであれば応じよう」
提督「大浴場が利用できない日は、私の部屋の内風呂を使ってくれて構わない」
あきつ丸「い、いえ、そのような……」
提督「ともかくだ」
提督「今まで通りでいこう。いいな?」
あきつ丸「は、はい……」
あきつ丸(こうして、一つ目の秘密がバレた)
あきつ丸(意外なほどにあっさりと……そして、意外なほどにすんなりと受け入れられた)
あきつ丸(分かってはいたが、提督殿は度量の広いお方だ)
あきつ丸(自分が男であるか、女であるかは、あの方にとっては些細な事なのかもしれない)
あきつ丸(それどころか、協力するとまでおっしゃってくれて……)
あきつ丸(……)
あきつ丸(そんな提督殿に、自分は嘘をついた)
あきつ丸(自分が男であると隠していたのは……)
あきつ丸(男であると明かせば、艦娘の中に紛れ込めなかったからだ)
あきつ丸(近くにいて、各種データを取り、艦娘と同じ整備を受ける)
あきつ丸(そうすることが、間諜である自分の役目)
あきつ丸(それが提督殿に言えなかった、本当の理由)
あきつ丸(汚い。汚い。自分は汚い)
あきつ丸(一心にお国のために戦っている彼らに比べ、自分はあまりに汚れている)
あきつ丸(何をしているのだ、自分は……)
あきつ丸(自分がしていることは、本当に正しいことなのか……)
あきつ丸(……いっそのこと、自分が間諜であると提督殿に打ち明けようか?)
あきつ丸(………………いや、それは駄目だ!)
あきつ丸(もしも、提督殿や、艦娘たちに軽蔑の目で見られたら……)
あきつ丸(自分は……自分は……)
~一ヵ月後~
あきつ丸(相変わらず、自分は艦娘と間諜、二重の生活を送っている)
あきつ丸(提督殿は自分に良くしてくれている。以前に比べ、グッと生活しやすくなった)
あきつ丸(陸軍からは以前にも増して指令が送られてくる)
あきつ丸(戦艦の作り方。空母の作り方。艦娘の弱点。新型装備の設計図)
あきつ丸(提督殿との距離が縮まったと報告したら……)
あきつ丸(得られるはずもない重要機密を、盗み出すように命じてくるようになった)
あきつ丸(自分はどちらを信じるべきなのだろうか)
あきつ丸(全てを打ち明けて、提督殿の庇護下に入るべきなのだろうか)
あきつ丸(それとも陸軍の文言を信じ、間諜に徹するべきか――)
あきつ丸(……)
あきつ丸(…………)
あきつ丸(………………)カサッ
あきつ丸(新しい指令書が、届いた)
あきつ丸(そこには、『自分の体を使ってでも、提督を篭絡しろ』と書かれていた)
あきつ丸(陸軍は狂っている)
あきつ丸(そう思った)
あきつ丸(だからこそ、自分は――)
~夜 提督の私室~
あきつ丸「お風呂、助かったであります」
提督「いや、構わない」
提督「昨日、今日と入渠する艦娘が多かったからな」
提督「特に赤城や加賀が居座っていては、入ろうにも入れなかっただろう」ハハハ
提督「それで、どうする?」
提督「茶でも飲んでいくか? それとも、また一局、つきあってくれるか?」
あきつ丸「いえ、今日は素直に帰るであります」
あきつ丸「あまり入り浸っていては、不審に思われますゆえ」
提督「そうか。分かった」
提督「では、また明日。おやすみ」
あきつ丸「はい……」
あきつ丸「……」
あきつ丸「提督殿」
提督「ん? なんだ?」
あきつ丸「聞いてもらいたいことが……あるであります」
提督「……聞こう」スッ
あきつ丸「実は……」
あきつ丸「じ、実は、自分は……」
あきつ丸(それから、自分は提督殿に全てを打ち明けた)
あきつ丸(自分は陸軍の間諜であること)
あきつ丸(過去、何度も海軍の情報を盗み出したこと)
あきつ丸(自分の悪行から、陸軍の思惑まで――)
あきつ丸(堰を切ったように吐き出していった)
提督「……」
あきつ丸(提督殿は、自分を怒鳴ることもなく、戸惑うこともなく、)
あきつ丸(ただ、黙って、自分の話を聞いてくれた)
あきつ丸(彼は自分を打ち据えていい。憲兵を呼び、連行させてもいい)
あきつ丸(そうするだけの権利が彼にはあり――)
あきつ丸(そうされて然るべきことを、自分はした)
あきつ丸(だというのに、提督殿は――)
あきつ丸(ただただ、黙って、自分の話を――)
あきつ丸「……以上であります」
あきつ丸(話を終えた時、自分の心は不思議に穏やかとなっていた)
あきつ丸(これまで抱えていた荷物を降ろした。そのような気分だった)
あきつ丸(自暴自棄になったのではなく、後はもう、どうなってもいいと――)
あきつ丸(神妙な気持ちで、提督殿の返事を待った)
提督「……」
あきつ丸「……」
提督「……知っていた」
あきつ丸「え……」
提督「知っていたのだ。私は全て」
あきつ丸「な、なんと……?」
提督「我が鎮守府から陸軍へと情報が漏れていたこと」
提督「そして、それは貴様の手によって行われていたこと」
提督「全て承知の上だった」
あきつ丸「な、なぜ……!?」
あきつ丸「ならばなぜ、自分を捕縛しなかったのでありますか!?」
提督「それでいいと思ったからだ」
提督「仕事もなく、活躍する場もなく、腐っている陸軍が……」
提督「クーデターを起こすでもなく、『権謀術数ごっこ』に腐心するのなら」
提督「それでいいと思った」
あきつ丸「……!」
提督「押さえ込むばかりでは、いつか大きな爆発を起こす」
提督「人間とは……特に権力を持つ者なら、なおさらそうだ」
提督「だから私は、意図的にガス抜きをさせることにより、」
提督「間違えても内乱が起こらないよう、配慮した」
あきつ丸「そう、だったので……ありますか……」
あきつ丸「ならば、自分は……陸軍は……」
あきつ丸「なんと愚かであったことか……」ガクッ
提督「承知の上でのことだったのだ」
提督「私は陸軍を責めないし、海軍は陸軍を弾劾しない」
提督「今は人類同士で争っている場合ではないのだ」
提督「仲睦まじく、とまではいかないが、ある程度は配慮しないとな」
あきつ丸「はい……」
提督「――だが、貴様は別だ」
提督「あきつ丸。陸軍の間諜」
提督「貴様の行ったことは、赦されることではない」
あきつ丸「……え?」
提督「あきつ丸。愚かな陸軍の犬め」
提督「未練がましく陸軍にすがりつき――」
提督「今となってようやく、海軍に下った」
提督「名目上は一年も前から海軍の一員であるにも関わらず、だ」
あきつ丸「提督……殿……?」
提督「この裏切りは赦しがたい」
提督「処罰は免れないぞ――あきつ丸!」モミィ!
あきつ丸「提督殿っ! な、何をっ!」
提督「躾けてやるぞ、あきつ丸」グッ
提督「今日、この日から、貴様は身も心も――」
提督「海軍の船へと変わっていくのだ――!」グイッ
あきつ丸「ああっ!」ドサッ
あきつ丸「どうされたのでありますか!? 提督殿! 提督殿!」
あきつ丸「このようなこと……じ、自分は男であります!」
提督「――それが?」
あきつ丸「なっ――!?」
次回、「鎮守府レイプ! 野獣と化した提督!」は、明日の夜、当スレッドに投稿します。
お楽しみに!
時間がぽっかり空いたので、再開
提督「海軍には男色を嗜む者が少なからずいてな」
提督「士官学校にいた頃は、私も経験を積んだものだ」
あきつ丸「そういう問題では……!」
提督「なに、気を楽にするといい」
提督「自慢ではないが、腕には少々自信がある」
提督「すぐに気持ちよくしてやろう」シュルシュル
あきつ丸「あっ、ふ、服がっ……!」
提督「案の定、胸は詰め物か」
提督「くだらない……その下に、もっと素晴らしいものを持っているというのに」スルリ
あきつ丸「ひっ……!」
平たく、色白な胸板を、提督の手が滑っていく。
男の官能を引き起こす、繊細なスライドタッチ。
だが、今のあきつ丸にとっては嫌悪感を催すものであり、彼は思わず身をすくめてしまった。
その間にも、提督は手際よくあきつ丸の衣装を脱がせ、陶磁器を磨くように、彼の肌をなぞりあげていく――。
提督「ふむ、いい形の尻だ」シュルッ
あきつ丸「っ!」ビクン
提督「感度も良さそうだ……だが、無理は禁物だな」
あきつ丸「そ、それは……?」
子兎のように縮こまったあきつ丸は、どろりと粘つくものを見上げた。
筒状の容器から垂らされ、提督の指にはめられたコンドームに絡みつくそれは――。
アナルセックス専用に開発されたローションである。
女性器には到底使えない、粘度の高すぎる液体は、しかし、硬く締まる菊門にはうってつけの潤滑剤だ。
あきつ丸「な、何を……!」
あきつ丸「止めてください……止めてください、提督殿!」
艤装を解除した艦娘は、見た目通りに非力だ。
ましてや『もどき』であるあきつ丸は、か弱いと言えるほど力がない。
日に焼け、引き締まった体を持つ提督に襲われれば、力ずくで手篭めにされる他ない。
――だが、提督はあくまで快楽によってあきつ丸の動きを封じ、
あきつ丸は、湧き上がる未知なる感覚に、力なくベッドに横たわるばかりだった。
あきつ丸「あ、あ、あ……?」
あきつ丸「やっ、あっ! て、提督殿!」
不意に、あきつ丸の中に、ぬるりと提督の指が入り込んできた。
ローションを伴い、肉をほぐすように蠢くそれに、あきつ丸は一瞬、体を震わせる。
あきつ丸「ぁっ!?ビクン
だが、恐怖は快楽に上書きされ――そのように感じた自分に、あきつ丸は驚いた。
それもすぐさま、甘く、むずがゆいような感覚に流されていき、あきつ丸はすぐにも抵抗の意思を失っていく――。
士官学校では、同級生に手を出し、下級生を貪り、上級生さえ蕩けさせ――。
教官さえ翻弄した提督にとって、あきつ丸の体を『開かせる』のは、造作もないことだった。
あきつ丸「ひ、ぃ……! あ……?」
同時に、この容易な相手は、提督にとってかけがえのない宝玉であった。
提督「ここが貴様の前立腺だ。分かるか?」
あきつ丸「ぜ、ぜん……?」ハァハァ
男を食い漁ったとはいえ、提督自身はバイセクシャルだ。
人並み以上の性欲を持ってはいたが――それは、男女平等に向けられるものだった。
そんな青年が士官学校を出て配属されたのは、艦娘ばかりの横須賀鎮守府。
間違いがあってはならない相手。決して孕ませてはならない戦乙女たち。
提督は、耐えなければならなかった。
出自の確かさから、娼婦を――ましてや男娼を買うことは、彼には許されなかった――。
提督「分かるだろう? ここが貴様の秘所だ」
提督「甘く疼くしこりが、貴様の中のメスの部分だ」
あきつ丸「そ、そんな……自分は男であり、ま、ああっ!」ビクン
提督「そのような嬌声を上げて……ククク、よく言えたものだ」
長きに渡る禁欲生活の中、あきつ丸はまさに舞い降りた天使だった。
手を出していい相手。それが問題にならない相手。その事実を、内々に揉み消せる相手――。
提督は、自身の獣欲が荒ぶるのを自覚していた。すぐにもひくつく菊門に突き入れて、乱暴に腰を動かしたかった。
――だが、あきつ丸は大事な大事な掌中の玉だ。
壊すわけにはいかない。丁寧に扱い、長く、長く、愛用するべきだ――。
あきつ丸「ひぃ! あ、ああっ!?」
あきつ丸「んはっ! ぁ、あぁ!!」ビクン!
提督「可愛がってやるぞ、あきつ丸」
提督「蕾から満開の桜となるように――」
提督「私が直々に調整してやろう」グリリッ
あきつ丸「あ、ああああっ!!」
執拗なまでに前立腺を刺激され、あきつ丸は少女のように喘いだ。
断続的にドライオーガズムの波が来る。その度に、とろり、とろりと鈴口からカウパーが垂れる。
それでも提督は指の動きを止めず――あきつ丸は汗だくになりながら、弓なりに腰を浮かせ、シーツを握って戦慄いていた。
~翌朝~
あきつ丸「……」
あきつ丸「……む、う」
あきつ丸「いつの間にか寝て……」
あきつ丸「っ!?」
跳ね起きたあきつ丸は、まず、自分の体を見下ろし、次いで、周囲をぐるりと見回した。
自分は寝巻きを着ていて――そして、ここは自分の部屋だ――。
そのことを何度も確認したあきつ丸は、ほっと体の力を抜き――。
下腹部の甘い疼きによって、現実へと引き戻された。
あきつ丸(玩ばれた……)
あきつ丸(男に……提督の手で、何度も何度も逝かされて……)
あきつ丸(最後は射精まで……)
尻穴を弄られて、女のような絶頂を味わわされたことよりも。
男であるあきつ丸にとって、『男に射精させられた』ことの方が、よほど屈辱であった。
――過敏になった男根をしごき上げられ、意識が飛ぶほどの射精をさせられた。
漫然と生きていては知り得ない快楽だった。今なお余韻が残るエクスタシーだった。
だが、そのようなもの――あきつ丸は知りたくなかった。
あきつ丸「……」
あきつ丸「出勤、しよう……」
あきつ丸「朝礼が……」
男としての尊厳が損なわれようと、そのことで深いショックを受けようと、それは周囲には窺い知ることさえできないことだ。
いや、察せられたらまずい。まさか、男色に浸ったなど――。
知られるわけにはいかなかった。
あきつ丸の立場は、それを許さなかった。
あきつ丸の予想通り――。
そして、提督の宣言通り。
あきつ丸は、密かに『開発』されるようになった。
あきつ丸「ん、ああっ!」
提督「まだ固いな……ククク」
提督は狡猾でしたたかだった。
執務を疎かにせず、艦娘たちとの交流を絶やさず、無理なくあきつ丸に手を出した。
彼が時と場所をわきまえない人物であったのならば、もしかすると、あきつ丸にも救いの道があったのかもしれない。
しかし、提督は優秀なオスだった。己の獣欲を手なずけつつも、獲物は容赦なく追い詰めていく。
全てを水面下で進め、そのことを周囲の者に悟らせなかった。
己の欲望を優先せず、提督は自らの男根をさらけ出すことさえしなかった。
あくまであきつ丸を愉しませ――細心の注意を持って、彼には悦楽しか与えなかった。
苦痛はない。痛みはない。あきつ丸の肢体には、メスの悦びだけが刷り込まれていく。
あきつ丸「ああっ! あ~!!」ビクンビクン
提督「指を二本に増やしただけで……ふふふ、そう嬉しがるな」
異常な状況に馴染んでいく心と身体。
あきつ丸は百戦錬磨の業師によって、彼のオンナとして開花しつつあった――。
~数週間後~
あきつ丸「……」
あきつ丸(もう、限界であります……)
あきつ丸(最近は、提督殿に抗えないどころか……)
あきつ丸(彼との逢瀬を、愉しんでいる自分を感じる……)
あきつ丸(彼は優しくしてくれる……最近では、簡易空母に改造してくれて……)
あきつ丸(『空母に改造する』技術情報を流させることで、陸軍での地位を向上させてくれた……)
あきつ丸(間諜としての仕事は順風満帆。艦隊決戦の際にも出番が増えた)
あきつ丸(提督殿に身を委ねれば、何もかもが上手くいく……)
あきつ丸(だが、自分は男であります)
あきつ丸(腐っても日本男児なのであります……!)ポロポロ
~その夜 提督の私室にて~
提督「……ほう?」
提督「私を告発する、と?」
あきつ丸「ええ」
あきつ丸「これまでの行い、そのいくつかを録画させていただきました」
あきつ丸「これを公開すれば……さしもの提督殿も、言い逃れできないであります」
提督「なるほど……ふふっ」
提督「だが、相手は誰だ? お前だろう?」
提督「それに、私は指と道具しか使っていない」
提督「客観的に見れば、同意の上の……少し変わったプレイにしか見えないと思わないか?」
あきつ丸「戯言を……!」
提督「それに、よく考えてもみろ」
提督「その映像を公開するということは、貴様が男であると明らかになるということ」
提督「そうなれば、艦娘からは軽蔑の視線で見られ、陸軍からはあっさりと切り捨てられるだろうな」
提督「告発などしても、貴様も破滅するだけだ。そうは思わんか?」
あきつ丸「……死なば諸共であります」
あきつ丸「これまで自分を散々玩んだ報い……」
あきつ丸「受けるがいいであります……!」ポロポロ
提督「……」
提督「…………」フゥー
あきつ丸「っ!」ビクッ!
提督「あきつ丸。私は貴様が好きだ」
提督「愛している、と言っても過言ではない」
提督「そのような相手が自暴自棄になっているのは、心苦しく思うぞ」
あきつ丸「事ここに至って、なお……!」
あきつ丸「獣め……野獣めぇ……!」ボロボロ
あきつ丸「自分は男であります! このような形(なり)でも、男なのであります!」
あきつ丸「それが男に寵愛され、何度も気をやることの惨めさが……!」
あきつ丸「貴様に分かるか……!」ボロボロ
提督「……」
提督「あきつ丸」
提督「認めるんだ。そうすればその苦しみはなくなる」
あきつ丸「な、何を……!?」
提督「私に愛でられる悦びを」
提督「陸軍の無能さと愚かさを」
提督「全て認めて、私のものになれば――」
提督「楽になる」
提督「そうは思わないか――あきつ丸」
あきつ丸「ち、ちが……」
提督「あきつ丸」グイッ
あきつ丸「あっ……」
提督「もう一度言うぞ」
提督「私のものになれ」
提督「――いいな?」
あきつ丸「提督……殿……」
提督のたくましい腕に抱かれ、あきつ丸の身体からはたちまち力が抜けていく。
提督の顔が近づくにつれ、抗議の声は掠れて消えていった。
あきつ丸の中で、多くのことが渦巻いていた。
有能な提督のこと。目先のことしか考えない陸軍のこと。胸の高鳴りと、じくじくと疼く下腹部のこと。
返事はない。言葉にならない。
代わりに、あきつ丸はこれまで許さなかった唇を提督に差し出して――。
その夜、自身の全てを、提督に捧げた。
~数日後~
将校『素晴らしい……素晴らしいぞ、あきつ丸! よくやった!』
あきつ丸「はっ」
将校『これで艦娘研究は飛躍的に進む。このデータさえあれば、海軍を上回るがさえできる!』
将校『ふ、ははっ! 忌々しい海猿め。いつまでも大きな顔をさせるものか……!』
将校『人が住まうは土の地面。陸がなければ人は生きていけない』
将校『そのことを、思い知らせてやるのだ……なあ、あきつ丸よ!』
あきつ丸「んんっ……あっ、はっ」
将校『……あきつ丸?』
あきつ丸「いえ。誰かがそばを通ったと思いましたが、気のせいでした」
あきつ丸「ですが、これ以上は危険と判断し、これで通信を終わります」
将校『そうか。そうだな。これからはより一層、気をつけなければな』
将校『それではあきつ丸。次回の報告も楽しみにしているぞ』
あきつ丸「はっ」
プツン
あきつ丸「……」
あきつ丸「ああっ!」ビクッ
あきつ丸「ふ、ふふ。危なかったでありますな」
あきつ丸「提督殿」
提督「ふふふ、興奮していたくせに何を言う」
提督「うねるように締まっていたぞ。思わず射精するところだった」
あきつ丸「あ、んっ♪ 出していただいて結構でしたのに……」
提督「いや、夜は長い。もっと愉しまないとな」
あきつ丸「そうでありましたな……あっ、んはっ!」グリグリ
提督「おっ、いいぞ……貴様も慣れた動きをするようになった」
あきつ丸「提督殿の教育のおかげであります」フフッ
あきつ丸「あっ、あっ、はっ、んはっ……」グイグイ
提督「ふ、ふふふ……それにしても」
あきつ丸「?」
提督「将校殿とやらは随分とのん気なお方だな」
提督「取らぬ狸の皮算用というか……その計算の元になるものさえ、私がわざと流したというのに」
提督「あのようにもろ手を挙げて喜んで……」クックッ
あきつ丸「ふふっ、仕方がないでありますよ」
あきつ丸「陸軍のお偉方は、海軍憎しで凝り固まっておりますゆえ……」
あきつ丸「本当の脅威である深海棲艦でさえ、目に入ってはいないのでしょう」フフッ
提督「貴様も言うようになったな」ククク
提督「まあ、これで貴様も改めて納得できただろう」
提督「やつらは害虫だ。自浄作用を無くし、陸軍内でさえ争いあう権力の豚だ」
提督「深海棲艦との戦いに勝利した暁には――」
提督「駆除しなければならない対象だ」
あきつ丸「その通りであります」
提督「内輪揉めをしている場合ではないので、生かしておかねばならないが……」
提督「あきつ丸。その時が来たら、貴様にも存分に働いてもらうぞ」
あきつ丸「当然であります」
あきつ丸「自分は提督殿のもの。提督殿のオンナでありますゆえ」
あきつ丸「望まれれば、いかようにも――」
そう言うや否や、あきつ丸は提督にしなだれかかり――。
彼と濃厚な口付けを交わしながら、腰の動きを再開させた。
提督の上に跨り、彼の雄々しい男根を呑み込んだ菊門は――。
媚びるように腸壁を絡みつかせ、射精を促すように蠢いた。
あきつ丸「あっ、胸をっ……!」
あきつ丸の身体も随分と女らしくなった。
華奢ではあったが色気のなかった肢体は、肉付きがよくなり、艶やかさを増し――。
簡易空母へ改造したためか、はたまた、提督の『指導』の賜物か。
胸はふくらみ、提督の愛撫を歓喜をもって受け止めていた。
――天窓から月明かりが差し込む、提督の寝室。
簡素なベッドの上で、あきつ丸は――提督のオンナは、一心に腰を振る。
玉のような汗が飛び散り、シーツに落ちては染みを作る。
二人の身体からは熱気が立ち昇り、部屋の湿度を上げていく。
それでも構わず、あきつ丸は腰を動かし――。
自分の中で提督の分身が震え、精を吐き出したのを感じた瞬間。
彼もまた、提督の腹の上へと吐精し、絶頂の余韻を味わった後、白濁に汚れるのも構わず倒れこんだ。
あきつ丸「はぁ……はぁ……」
提督「ふう……」
荒い息を吐く二人。
ぼぅ、と天窓の向こう、星空を見上げる提督と、彼の胸板に頬を寄せ、うっとりと目を細めるあきつ丸。
情事を終えた、オトコとオンナ。
次の一戦に備え、息を整える提督と艦『娘』。
天窓から注ぐ月明かりは、火照った彼らの身体を照らし――。
その薬指にある指輪を、キラリと光らせていた。
~完~
おしまい
……次はレーベかマックスが餌食だな!
大穴でもがみん。ダークホースに島風くん。
ああ~、夢が広がるんじゃあ~^^
このSSまとめへのコメント
ああ^~