【艦これ】提督「八畳間の野分さん」 (75)

・退役して学生になった元提督と戦いが終わって学生になった野分さんのお話
・全く戦わない
・野分さんカワイイデス

↑こんな感じのss

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提督(十六歳の誕生日、僕は提督としてとある田舎の鎮守府に着任することになった)

提督(十六歳以上ならば能力さえあれば提督として艦娘を指揮することができる。 そんな法律が十年ほど前に定められたからだ)

提督(父は海軍の少将として、提督として艦娘を指揮していた。 だから僕も自然とそうなる流れだと思い、必死に勉強して準備を整えていた)

提督(そして、意気揚々と鎮守府に着任し、これから頑張ろうと秘書艦と語り合ったその翌日)

提督(———国連が、世界に終戦を告げた)

提督(世界中の精鋭たちのみで秘密裏に行われた作戦にて深海棲艦の本拠地を完全破壊。 同時に世界の海から深海棲艦がまるで最初からいなかったかのように消え去ったのだ)

提督(これで万事解決。 深海棲艦はいなくなり、世界の海には平和が訪れた。 人間と艦娘たちはこれからも手を取り合って海の平和を守っていこう———と、なればよかったけれど、現実はそううまくいかない)

提督(精鋭たちが各々の鎮守府に戻った途端、艤装が粉々に砕け散った)

提督(この現象は精鋭たちだけでなく、世界中の全ての艦娘に起きた。 艤装の完全解除———つまり、世界中の艦娘たちが一斉に《人間》になった。 解体されたのと同じように)

提督(それだけじゃない。 工廠で新たな艦娘を生み出す事が出来なくなり、各作戦海域での艦娘との遭遇も一切なくなった)

提督(もちろん各国は大慌て。 すぐに原因究明のために動き出したそうだが、そこへ一人の妖精さんが現れ、こう告げたそうだ)


妖精『戦いは終わりました。 私たちも、艦娘達の役目もこれでおしまいです』


提督(そして最後に)


妖精『あの子たちに静かな余生を送らせてやってください。 やりたい事をやって、愛する人と共に生き、その生涯を終える。 そんな最後を送れるよう、手配してください。 それが、私たちの願いです。 よろしく頼みましたよ———我らが子孫たちよ』


提督(そう言って、妖精さんたちは姿を消した)

提督(後は流れるようにその手配が進み、各国で適用された。 不思議と、その間には批判も何もなかった)

提督(で、その手配の煽りをモロに受けたのが僕たち若い提督だった)

提督(十八歳未満の提督たちは退職金とか補助金やるから全員学校に通え。 そんな通知がお国から飛んできたのだ)

提督(当時は反発したけど、考えてみれば本来通るはずの士官学校という過程をすっ飛ばしているのだから当然といえば当然かもしれない)

提督(僕は渋々学校に通う事にした。 お金はあったのでなんとなく県外の学校を選び、近所の八畳間一室を借りて学校に通い始めた)

提督(最初は軍との環境の違いに馴染めなかったが、その辺に理解のある同級生が多くいたおかげで新しい環境に馴染むのに時間はかからなかった)

提督(恵まれた環境で一年間を終え、春休みを友人と満喫し、明日から問題なく高校二年生スタート!)

提督(———と、そうなるはずだった。 そうなるはずだったんだ)


野分「ど、どうも。 お久しぶりです......提督」


提督「............」

バタンッ

野分『な、なんで無言で閉めちゃうんですか!? まだ何も言ってないですよ!? あ、開けてくださぁぁぁいっ!!』

提督「......お茶をどうぞ」コトッ

野分「あ、ありがとうございます」ペコッ

提督(野分さん......僕の提督人生で最初して最後の秘書艦だった人だ)

提督(軍はより早く提督のレベルを上げるために初期艦指定制度が廃止し、比較的練度の高い艦娘が新米提督の最初の秘書艦になるようにしていた。 野分さんがまさにその例だ。 でなければ新米に野分さんレベルの駆逐艦が配属されるはずない)

提督(着任、終戦、事後処理......一緒にいたのは僅か一ヶ月程度。 鎮守府を離れた後は特に連絡取り合うこともなく生活していたわけだけど......)

提督「野分さん、どうして急に僕のところを訪ねてきたの?」

野分「......明日から提督と同じ学校に通うことになりました。 編入という形です」

提督「へえ......そうなんですか。 よろしくお願いします」

野分「は、はい。 此方こそよろしくお願いします」

提督「ということは、野分さんは僕に挨拶に来てくれたってことですか?」

野分「へ? あ、いえ、その......じ、実は......此処に住ませてもらうことになっちゃうんです......はい」

提督「野分さんもここのアパートに? それは驚いたなぁ......どの部屋に住むんです?」

野分「............こ、此処です」

提督「え?」

野分「て、提督と同じこの部屋に住ませてもらいたいんですっ!!」

提督「............え?」

野分「軍の方で手違いがあったようで......本来、私が住むはずの場所は既に別の人が入居していたんです。 それでどうしようかと思い、元上官である提督のお父様に相談したところ......」

『住む場所がなかった、ねぇ......あ、野分はたしか息子と同じ学校に通うんだったよな? ならアイツのとこに住ましてもらえ。 なぁに、女に手を出すほどの度胸は無いから大丈夫だ。 話はつけとくからよ!』

野分「と、言われましたので......」

提督「......そ、そうでしたか」

提督(聞いてませんよそんな話......! あの人はまた適当に......!!)

提督(......しかし、こんな狭い部屋に男女二人っきりで生活なんてプライバシーもへったくれもない。 僕だってもう高校生だ。 女性に言えないような事は一つや二つじゃないんだ......野分さんには悪いけど、ここはしっかり断って———)

野分「......やっぱりダメ、ですよね。 ごめんなさい勝手に押しかけといて住ませて欲しいなんて厚かましいですよね。 あ、野宿の訓練は受けてますし一ヶ月くらいなら住むところがなくても大丈夫で」ウルウル

提督「———あーそうだったー! 今日から野分さんが来るって連絡が来てたんだったー! いやぁすっかり忘れてたよ! 僕ってばウッカリだなぁ!!」

野分「......い、一緒に住ませてもらっていいんですか?」

提督「もちろんですよ! 一ヶ月という短い間でしたが野分さんには大いにお世話になったんです。 その恩を今お返しする絶好の機会です! 寧ろ此方からお願いしたいくらいですよ!!」

野分「あっ、ありがとうございますっ! 駆逐艦野分、このご恩は決して忘れません!」

提督「かしこまらないでください。 僕は当然の事をしたまでなんですから」ニコッ

野分「提督......」

提督「そうだ、せっかくだから今晩は外食しましょう! 野分さんが来てくれた記念に!」

野分「いえ、そ、そこまでしてもらわなくても!」

提督「そう言わないでください。 近くにいい洋食店があるんですよ。 是非、野分さんと行きたいんですが......ダメでしょうか?」

野分「......なら、お言葉に甘えさせてもらいます......うん」

提督「ありがとうございます」

ーその夜ー

提督(———い、勢いで野分さんと同居することになってしまった......!!)

提督(正直、こんなに綺麗な子と同居できるのは大変喜ばしい事なんだろうけど、いかんせん住む場所が場所だ)

野分「......すぅ......すぅ」

提督(狭いッ! 具体的には野分さんとの距離が一メートルもないッ!!)

提督(家賃を削り自分の趣味にお金をかけようとしたのが仇にあったか......そもそもこんな状況になろうとは予想できなかったけど)

提督(二年間......今日から少なくとも二年間はこの状況が続くというのか!? た、耐えられないぞ、色々な意味で!!)

野分「んぅ......てい、とく」

提督「はっ、はいっ!! どうしました野分さん!!」バッ

野分「......くぅ」

提督「......寝言?」

提督(寝言で僕の名前を呼ぶっていったいどんな夢を見ているですか野分さん......!)

提督(はぁ......高校生活二年目、始まる前から大荒れしそうだ)

最初の投下はここまで。 のんびり完結まで持っていけるように頑張る

ああああああ野分は提督じゃなくて司令だったああああああああああ!!!

明日の投下から修正します。 ほんとごめんなさい

のわっち教が増えるのを願って投下始めます

ー翌朝ー

提督「———」

野分「くぅ......くぅ......」

提督(近いですよ野分さんッ!! 昨日は一メートル近くあった距離がどうして鼻先十センチほどに縮まっているんですか!?)

提督(くっ......寝相が悪いとは盲点だった。 しかもこっちの布団に入ってくるなんて恋愛シュミレーションゲームお約束な展開とは......やりますね野分さん)

提督(ですが、僕とて提督になる条件を満たした者。 まだこの程度の誘惑では落ちやしませ———)

野分「んん......」

ギュゥ

提督「」

提督(おおお落ちちちつけけけまだあわあわわわわわ)

野分「んぁ......ん、しれい......?」

提督「お、おはようございます野分さん。 早朝から暖かい目覚めを提供して頂いているところ申し訳ないのですが、離れてもらえると嬉しいです」

野分「............?」キョロキョロ

提督「野分さん、周囲ではなく自分の正面を見てください」

野分「............ぇ? し、司令? なんで私の布団に......」

提督「ここは僕の布団です。 野分さんのは彼方で隅に追いやられてる方」

野分「な、ならなんで私に抱きついて......」

提督「よく見てください。 ホールドしてるのも野分さんです」

野分「............」

提督「............」

野分「せっ、切腹しますっ」ウルウルウル

提督「落ち着いてください野分さんその刀は何処から取り出したんですか早まらないせくださいこんなミス誰にでもありますから!!」

野分「寝ぼけて異性に抱きつくミスなんて聞いたことありませんっ!! ましてや上官相手に......腹を切って詫びるしかないじゃないですかぁっ!!」

提督「僕はもう野分さんの上官ではありませんし、野分さんは艦娘じゃありません! 僕たちはただの学生ですよ!!」

提督「それに僕は全く嫌ではないです! 寧ろ柔らかかったり温かかったりで幸せな気持ちになれました!」

野分「司令............」


野分「そ、そのフォローはちょっと......ないです」

提督「......ですよねー」ハハハー

野分「と、とりあえず起きましょっか! 朝食の支度もしなきゃいけませんし!」

提督「そうですね。 ではまず......この回している腕を解いてもらえないでしょうか」

野分「わわっ! ご、ごめんなさいっ!!」パッ

提督「問題ないですよ。 それじゃ僕は向こうで着替えてきますので。 あ、覗いたらダメですよ?」

野分「の、覗きませんっ! しかもそれ、どちらかといえば私が言うべきセリフ!」

数十分後

提督「———すみません野分さん......冷蔵庫に何もないとは考えもしませんでした」

野分「生卵が三つしかないなんて司令は普段どのような食生活を送っているのか気になっちゃいますね」ジー

提督「万能栄養食品たる卵とお米があれば人間生きられますからヘーキヘーキ」

野分「......今までどのような食生活を送ってきたのかは知りませんけど、私がいる以上はちゃんとした食生活を送ってもらいますから。 覚悟してくださいね」

提督「いやぁあっはっは......お手柔らかにお願いします」

野分「それは司令次第、ですよ」フフフ

提督「時刻はマルナナヒトマルか......。 よし、少し早いですけど学校に向かいましょうか」

野分「......朝食を摂らないと力がでませんよ?」

提督「途中のコンビニで何か適当に買って学校で食べようという算段です。 如何でしょうか?」

野分「如何でしょうか、と聞かれても......私は司令に養ってもらってる立場。 司令の言う通りに動きます」

提督「ほほう。 僕の言う通りに、ですか」ニコニコ

野分「あ! へ、変なお願いとかは聞きませんからね! それは絶対です!」

提督「変なお願いとは具体的にはどういうお願いを指すのでしょうか?
僕には想像も付かないので、是非とも説明してもらいたいのですが......」ニコニコ

野分「へっ!? そ、それはほら、あの、えっと......うぅぅぅ! 私、司令をそんなイジワルに育てた覚えはありません!!」プンスカ

提督「ふふふっ、文句は僕のクラスメイトに言ってください。 さあ、行きますよ野分さん」

野分「あ! ちょっと! ま、待ってください司令!」

店員「アリガトーゴザイマシター」


野分「近年の携帯食の進化は眼を見張るものがあると思いませんか。 種類の豊富さにはちょっと驚かされましたよ......」

提督「カロリーメイト、ソイジョイ、ウィダーゼリー......携帯食もそうですけど、やはりコンビニ食の進化が凄まじいという印象受けますね。 おでんは常識で各店舗の看板メニューは熾烈な争いを繰り広げていますしねぇ」

野分「今時は干し柿とか昔のオヤツなどは売れないんでしょうか」

提督「一定と需要はあると思いますけど、やはり厳しいものがあるんじゃないでしょうか。 時代の移り変わりは見てて面白いですが......寂しいことも多々ありますね」


「おっ、提督じゃん」

提督「!!」クルッ

野分「?」クルッ

提督「何だお前か......久しぶり。 相変わらず生え際が後退しかかってるな」

「うっせぇぞこのエセ紳士野郎。 俺のはハゲじゃなくて名誉の後退だと何度言えば......あ?」


野分「......?」


「ちょいちょいちょいちょーーーいとこっち来いよ提督さんよぉ!」

提督「何だよ急に......別にいいけどさ。 あ、野分さん、少し待っててもらえますか?」

野分「? わかりました。 ここでお待ちしています」

提督「で、何の用だ? 朝練だろお前」

「何の用だ? じゃねぇだろ! 誰だよあの銀髪美少女さんはよぉ!?」

提督「誰って......野分さんだけど」

「の、野分さんて言うのか......じゃなくて! あのイン〇テンツじゃないかと疑われてたお前が銀髪美少女と一緒に登校たぁどういう関係なんだ!?」

提督「随分と失礼な疑いがかけられてるもんだなぁ......お前後で覚えとけよ。 まぁなんだ、野分さんは僕の......」チラッ

野分(まだかなぁ......)ソワソワ

提督「えーっとねぇ......」

野分『司令の言う通り動きます』


提督「———忠犬かなぁ」

ホームルーム

ー教室ー

野分「の、野分です! これから一年間このクラスでお世話になります!
よろしくお願いします!」ペコッ


「あの子が野分ちゃんかぁ......かわいい〜」

「綺麗な銀色の髪......羨ましいわぁ」

「でも提督の忠犬らしいよ?」

「提督、あんな可愛い子をペットにしてるなんて......たまげたなぁ」

「紳士の顔に隠された裏の顔はドSご主人系だったのか......」


提督(アイツ後で絶対シメる)ピキピキ

放課後

ー自宅ー

提督「野分さん、初めての学校は如何でしたか? 楽しめました?」

野分「た、楽しかったには楽しかったんですが......つ、疲れちゃいました。 あんな人に囲まれたのは初めてです......」

提督「一週間分くらいの濃密な接触だしたもんね。 文字に起こしたら小説一本は書けますよ、たぶん」

野分「でも賑やかな人たちなのは凄く嬉しかったです。 ああいう環境にいれば生真面目な青年がイジワルになっていくのも分かります」ジー

提督「ナンノハナシデショウカー提督サッパリワカリマセン」

野分「はぁ......あの時の真面目な司令は何処に行ってしまったんでしょうか」

提督「野分さんの心の中では永遠に生きてますからご安心を。 でも僕は今の僕の方が気に入ってますよ」

野分「......私も今の司令の方がいいと思いますよ」ボソッ

提督「............野分さん、普通に聞こえるんですけど」

野分「えぇっ!? い、いえ! これは、その、今の方が昔よりも馴染みやすいからであって決して司令どうこう思ってるわけじゃないので!!」アセアセ

提督「う、うん......分かってます、分かってます、よ......」

野分「な、ならいいです。 分かってくれてるならいいです、はい!」

提督「............」

野分「............」

提督「............っ」カァァァ

提督(な、なんだか胸の奥がむず痒い......話題を変えないと)

野分「............っ」カァァァ

野分(あんな恥ずかしい事を平気で口にしてしまうとは......野分、一生の不覚っ)

提督「......晩ご飯、どうします?」

野分「......か、カレーがいいと思います」

提督「......材料、買いに行きましょうか」

野分「......行きましょうか」

投下はここまで
学校の様子も詳しく書きたかったけどまた今度になりそう。 GWネタとか早く書けたらいいなぁと思ってる

酉掲げておいてその体たらくじゃ本人か分からんやん

偽物やんけ

>>39
>>40
何度もすみませんトリップを確認できるサイトでようやく確認が取れました。 一応本物という報告です

数は多くないですがぼちぼち投下していきます

ー五月初旬ー

提督「ののの野分さん、ご、GWに何かご予定はありますか!?」

野分「と、特にありませんが......どうしたんです?」

提督「ならばこれにご一緒していただけないでしょうか!」

野分「舞鶴温泉旅行ペアチケットですか......って、温泉旅行!?」

提督「だ、ダメでしょうか!?」

野分「こ、こういうのは私たちが正式にお付き合いなどをする関係になってから行くようなものではないでしょうか?」

提督「ダメ......ですか......?」ズーン

野分「うぅっ......そんな目で見ないでくださいぃ」

提督「......」ズーン

野分「......」

野分「わ、分かりました......行きましょう」

提督「ありがとうございます野分さん!!」ギュッ

野分「は、はいっ! どういたしまして!!」

提督「いやぁ助かりました......このチケット、ペアじゃないと使えないので野分さんに断られたらどうしようかと思いました」

野分「提督なら他にも誘う人がいそうですが......」

提督「いえ、僕は野分さんと行きたかったのでーーーはっ!?」

野分「え、あ、え......?」

提督「そ、それは置いといて出発は明日なので準備をしておいてください」

野分「明日とはまた随分唐突な......このチケットはいったいどこで?」

提督「と、父さんが送ってきたんですよ。 今朝、郵便ポストに入ってました」

野分「この唐突なタイミングでの送り主が提督のお父様なら何となく納得しちゃいますね」

提督「いつも思い付きで動く人ですから、また何か企んでいたり?」

野分「まさかそんな事......いや、可能性は否定できませんね」

提督「ですよねー」ハハハ

野分「......ところで提督」

提督「はい?」

野分「......そろそろ、手、離してもらえないでしょうか」

提督「うわぁ!? ごごご、ごめんなさい!!」バッ

野分「だ、大丈夫......です」カァァァ

ーその夜ー

提督(まさかOKしてくれるとは思わなかった......誘っておいてなんですが、どうすればいいのやら)

提督(服装はいいとして舞鶴周辺の事なんてほとんど知らない、女性をエスコートした経験だって無い)

提督(カッコ悪いとこは見せられないし......明日のうちある程度調べておこう)

提督(......時間帯によってはお風呂が混浴になると言ってないけど、大丈夫だよな)

提督(......)クルッ

野分「......」

提督「......髪、綺麗だなぁ」スッ

提督(サラサラしてていい匂いもしてーーーって、何を触ってるんだ僕は!?)

提督(も、もう寝よう。 明日は早いしこれ以上は色々と危険だ)クルッ


野分「......」

野分(......き、綺麗って)カァァァ

ー翌日 17:30ー

提督(な、何とか旅館に着くまでに一通りは調べ終えれた......これで大丈夫なはず)

野分「......」ボー

提督「野分さん?」

野分「は、はい!」

提督「どうしました? 朝起きてからずっとボーッとしてますけど......もしかして具合が悪いとか」

野分「だ、大丈夫です! 昨日ちょっと眠れなかっただけですから!」

野分(提督のせいですけど)

提督「そうですか......無理はしないでくださいね?」

野分「はい」

「いらっしゃいませ、ですって!」

提督(ですって......?)

野分(ですって......?)

「二名様でよろしいですか?」

提督「はい、二人です。 あとこのチケットを使いたんですが」

「このチケットは......あ、カップルの方だったんですね!」

提督「か、カップル!?」

野分「ち、違います! ただ一緒に住んでるだけです!」

「一緒に住んでる......もしかして新婚さん?」

野分「それも違いますぅ!」カァァァ

「お部屋は二階の方になります! 新婚さん、ろーちゃんの後について来てください!」

野分「私の話を聞いてくださいっ!」


提督(新婚......新婚かぁ)

提督(悪くない)

ワイワイガヤガヤ

提督「やけに賑やかですが、他にもお客さんがいるんですか?」

「はい! ろーちゃんのパパ達が来てるのでとっても賑やかなんです......あ、お部屋はここになりますって!」

提督「おお......これは中々立派な」

野分「広々としてますし、窓から見える夕日も綺麗ですね」

「気に入ってもらえて良かったですって! ヒトキュウマルマルになったら夕飯をお持ちしますので、それまでごゆっくりと!」

提督「(ヒトキュウマルマルって......海軍関係の方の娘さんなのかな)ありがとうございます」

野分「......」

提督「......」

野分「夕日、綺麗ですね」

提督「はい、とても」

野分「......」

提督「......」


提督(会話が続かない......!)

野分「提督、せっかくですから旅館を見て回ったらどうですか?」

提督「え? あ、ああ、そうしてみます。 なら野分さんも一緒に......」

野分「すみません、私ちょっと疲れちゃって......少し休んでいてもいいですか?」

提督「そ、そうですか......分かりました。 野分さんはゆっくり休んでいてください」

野分「はい、ありがとうございます」


提督(こればっかは仕方ないか)ハァ

提督「......飲み物でも買いますかね」

提督「自販機は一階にあったはず......」


提督「あったあった......ん? 誰かいる?」

「まったく......いくらジャンケンに負けたからと言っても大将をパシリにする国家元首なんていないでしょうに」ブツブツブツ

提督(外国人? 案内してくれたあの子の言っていた『パパ達』かな)

「......おっとすまない、君も何か買うのかい?」

提督「急いでないので大丈夫です。 ゆっくり選んでください」

「ありがとう。 はぁ......うちの連中も君くらい優しかったらいいんだけどなぁ」

提督「連中って......ろーちゃんのお父さんたちのことですか?」

「なんだ、君はろーちゃんの知り合いだったのかい」

提督「いえ、部屋に案内してもらった時に少し話を聞いたので。 外国の方のようですが......どちらから?」

「我々はドイツから来たんだ。 ろーちゃんに招待されてね......いやぁいい子だよあの子は」


「ーーークレープス!」

クレープス「デーニッツ......どうしたんだ」

デーニッツ「どうしたもこうしたもない! お前が飲み物買ってくるのが遅いから閣下が暴れ始めたんだ! 早くしろ!」

クレープス「またかあの人は......なら適用にこれとこれとこれでいいか」

チクショォォォォォォメェェェェェェ!!

デーニッツ「急げクレープス! このままでは戦車の定数が削減されるぞ!」ダッ

クレープス「分かっている。 では、さらばだ少年」ダッ


提督(なんか嵐のような人たちだったな)

提督(さっきのクレープスさんを呼びに来た人、デーニッツって呼ばれてたよな)

提督(ドイツのデーニッツといったらドイツ海軍元帥カール・デーニッツが思い浮かんだけど......)

提督(まさか、ね)

今回はここまで
久しぶりに書いたから前と違う部分があるかもしれない...なるべく修正する努力をします

時間かかった......投下始めます

提督(お風呂、休憩場、マッサージコーナー、ゲームセンター......これで一通り回ったかな)

提督(それにしてもどれだけいるんだよドイツ人......あらゆる場所にいたぞ)

提督(あのろーちゃんって子は何者なんだ?)


提督「ただいま野分さん、調子はど......う?」

野分「......」スヤァ

提督(......眠っちゃってる)

提督(昨日は眠れなかったって言ってたし、一人になって一気に疲れが出ちゃったのかな)

提督(迷惑じゃ、なかったよな......)

提督(時刻はヒトハチヨンマル......夕飯までまだ少し時間があるな)

提督「野分さーん」ツンツン

野分「......」

提督(ん? 今、僕は何をした?)

提督(............)

提督(頬を突いただけだ。 何の問題もないな、うん)

提督(......も、もう少しだけ)ツンツン

提督「や、柔らかい......となると引っ張ったら伸びるはず」ムニーン


野分「ひれい......のわきにひゃにかごようでひゅか」

提督「」

提督「の、野分さん、いつから起きて......」

野分「司令が私の名前を呼んだあたりです」

提督「なんだ起きたなら言ってくださいよ」

野分「言おうとした瞬間に頬を突かれて起きるタイミングを失ったんです」

提督「それはすみませんでした」

野分「ええ、本当に」

提督「......あの、野分さん?」

野分「なんでしょうか」

提督「怒ってます?」

野分「別に」プイッ

提督(さすがに寝てる間に体に触るのは迂闊だった......ただの変態じゃないか)

提督(完全に怒ってるよなぁ。 野分さん全然こっち向いてくれないし......?)

野分「......」ミミマッカ

提督(......)

提督「野分さん、こっち向いてください」

野分「嫌です」

提督「耳がゆでダコみたいなことになってますよ」

野分「......元からです」

提督「そんなわけありますか」

野分「......」

提督「野分さんもしかして恥ずかしがってる......とか?」

野分「......ちがいまひゅ」

提督「かんでますよ」

野分「っ〜! し、司令はどうしてそんなにいじわるなんですかぁ!!」

提督「ご、ごめんなさい! 別にいじわるしてるつもりはないんです!」

野分「嘘です! 私が男性に慣れてないのをいいことに髪とか触ったり頬を突いたりして反応を楽しんでます!」

提督「違います! 僕はただ野分さんと仲良くなりたいんです!」

野分「......な、仲良く?」

提督「そうです!」

提督「確かに野分さんをいじめたらすっごく可愛い反応が見れると思います。 ですが僕はまだにそんなことが出来るような関係にも至ってません。 それどころか貴女のことを何も知りません!」

提督「僕は野分さんのことを知りたいのであって、決していじめているわけではないんです!」

提督「信じてください!」

野分「司令......」


野分「でもそれと髪とか頬を触るのは関係ないですよね」

提督「ごめんなさい」ドゲザー

野分「......髪なら言ってくれれば幾らでも触らせてあげるのに」ボソッ

提督「本当ですか!?」

野分「な、なんで聞こえるんですか!?」

提督「ごめんなさい耳はいいんです。 そ、それよりさっそく触っても......」

野分(司令が悪意を持って私に接しているわけではないのは分かったけど......)

野分(うぅ......言ってしまったからには断れない)

野分「......ど、どうぞ」スッ

提督「で、ではーーー」


「お料理をお持ちしましたー! ですって!」

提督「!!」バッ

野分「!!」バッ

「......お邪魔でした?」

提督「お邪魔じゃないです!!」

野分「ちょうど食べたいと思ってたんです! ありがとうございます!」

提督(......また後でお願いしよう)

野分(......まだ心の準備出来てなかったから助かりました)

ー21:00ー

提督「ふぅ......美味しかったですね」

野分「はい、とても美味しかったです。 特に季節のてんぷらが絶品でした」

提督「......ではお腹も休ませたことですし、温泉に入りますか」

野分「ですね。 私、温泉というものは初めてなので楽しみです」

提督「なら是非ゆっくり楽しんでください」

ー男風呂ー

提督(野分さん、温泉は気に入ってくれるといいなぁ)

提督(入渠ドッグも温泉のようなものらしいけど......見たことはないから分からないな)


「そこ君、ちょっといいか」

提督「はい?」

提督(ドイツ語......あぁ、この人もドイツ人......!?)

「日本の風呂に入る時は義足を外すべきかね?」

提督「(義足......初めて見た)え、ええ、外して入浴した方がいいと思います」

「そうだったか......よっと。 ふうむ、やはり片足だと歩きにくいな」ピョンピョン

提督「あの、お風呂場でそれは危ないと思いますけど......」

「はっはっは! こんな場所で滑るほど私もーーーぐおぉっ!?」ズテン

提督「だ、大丈夫ですか!?」

「......大丈夫だ、問題ない。 この程度、深海棲艦どもの高角砲で真冬の地中海に叩き落された時に比べれば大したことはない!」スクッ

提督(深海棲艦の高角砲に墜とされた......?)

「すまんが私の肩を支えてくれないか? いくら大丈夫といっても痛いものは痛いからな」

提督「いいですよ、どうぞ」

「ありがとう。 助かるよ」

「ーーーむむっ!? 日本の風呂は中々熱いな!!」

提督「欧州の方と比べれば大分熱い方ですね」

「このような熱さに耐えながら入浴するとは......日本人がHENNTAIである理由はここにあるようだな」

提督「待ってくださいなんですかその超理論は!?」

「違うのか? 総統かっ......私の上官はいつも『日本人はHENNTAIだ!』と言っているからてっきりそうだと......」

提督「日本人は少し変ですけど、それとお風呂の温度は関係ありませんよ」

「しかし君は随分と流暢にドイツ語を話すな」

提督「あー......母が一応ドイツ系なので」

「おお! そうだったのか!」

提督(今はもう完全に日本人してるけど)

「ドイツの女性は良いだろう? 少しばかし気が強くて面倒な性格をしてるのが多いが、それを上回る愛情と美しさを併せ持つから大した問題じゃない」

提督「あー......確かに今年43歳になるとは思えない容姿してますね。 あとメチャクチャ気が強い、というか自信家です」

「そうだろう! かく言う私の妻も典型的なドイツ人女性でな......かなり歳下なのだが尻に敷かれっぱなしだよ!」ハッハッハ

提督「へぇ、おいくつくらい離れてるんですか?」

「34歳ほどだな」

提督「......失礼を承知でお聞きしますが、貴方はおいくつですか?」

「50歳だ」

提督「そ、それはまたかなりギリギリの結婚ですね......」

「終戦を迎えたら結婚してくれという約束だったからな。 まさかこうも早くその時を迎えるとは思わなかったが」

「君は青春真っ盛りの歳頃に見えるが、そういう相手はいないのかね? 」

提督「僕はいませんね。 色恋沙汰にはさっぱりなので」

「ならば君と一緒に来ていた女性はいったい何者なのか気になるなぁ」

提督「......とある事情で同棲してる元部下ですよ。 というか見てたんですか」

「たまたまだがね。 君の職業について深くは探りはしないが、あんなに美しい女性と同棲していれば何かしら色恋沙汰に発展しそうだがな」

提督「なりませんよ。 彼女だって別にそんな気はないでしょうし」

「決めつけは良くないぞ。 私だって最初は妻と結ばれるとは思いもしなかったんだからな。 世の中何があるか分からん......油断してるとコロっと堕とされるぞ?」ニヤリ

提督「......ご忠告感謝します」

「さて、私はそろそろ上がるとするよ」ザバッ

提督「もうですか? 早いですね」

「酔っ払った上官を止めれるのは私だけでね。 早く行かないと相棒にどやされてしまう」

提督「さっきから聞く限りではひどい上官としか思えないですね......」

「ハッハッハ! 言われてみればそうだな! あの方はアニメオタクでロリコンで我儘なひどい上官だ!」

「ーーーだが、それはあくまで上官としてさ。 娘たちへの底知れぬ愛情、いざとなった時の決断力、圧倒的カリスマ性......私は尊敬しているよ」

提督(あの目......この人、本当に上官のことを尊敬してるんだな)

「そんなおかしな上官に付いていった人生における先輩として一つ、君にアドバイスだ」

「自分の信じた道を進め。万が一その結果後悔が訪れようとも、自分を信じなかった時の後悔に比べれば遥かにマシだ」

「特に色恋沙汰は、な」ニカッ

提督(自分の信じた道を進め......)

「では少年、さらばだ」スタスタ

提督「......待ってください!」

「なんだね?」

提督「速瀬 海斗です」

「......ああ、君の名か」

提督「名前、よければ教えてください」

「ふぅむ、あまり正体を明かすなと言われているのだが......ここで会ったのも何かの記念だ」





ルーデル「ーーー私の名はハンス・ウルリッヒ・ルーデルだ! 覚えておいて損はないぞ!」




今回の投下はここまで
ほぼ魔王閣下の話になってしまったけど次はちゃんとのわっちもでるよ!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月27日 (日) 23:32:41   ID: SnqhzpWn

すき

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