幽霊「幽霊です」 男「怖いなあ」(175)

幽霊「ひゅーどろどろどろ。……怖いですか?」

男「うん、怖い」

幽霊「あまりそう見えないんですけど」

男「うーん。でも、怖いよ?」

幽霊「そですか。ならいいんです」

男「気がついたら知らない人が家にいるなんて、恐怖以外の何物でもないよ」

幽霊「そっちの意味で怖いんですか」

男「だって、寝てたらなんか知らない女の子が枕元にいるんだもの。そりゃ怖いよ」

幽霊「幽霊ですから、枕元に現れます」

男「なるほど、それが仕事だからなあ」

幽霊「いえ、別に対価をもらってるわけじゃないので、正確には仕事じゃないです」

男「じゃあ、なんで怖がらせるの?」

幽霊「……趣味?」

男「悪趣味だなあ」

幽霊「…………」ションボリ

男「悪いことをした気がした」

幽霊「悲しいです」ションボリ

男「ごめんね?」

幽霊「ダメです。許しません。呪い殺します」

男「困るなあ」

幽霊「幽霊ですからしょうがないんです。諦めてください」

男「なるほど、呪うのも仕事だから仕方ないか」

幽霊「いえ、対価がないので仕事じゃないです」

男「じゃあ、やっぱ趣味で呪うのか。悪趣味だな!」

幽霊「…………」ションボリ

男「この幽霊は打たれ弱すぎる」

幽霊「あまりいじめないでください」(涙目)

男「分かった。ごめんな?」

幽霊「……悪気がないようなので、許します」

男「で、なんで俺の家にやってきたの、趣味で人を怖がらせたり呪い殺したりする人?」

幽霊「いじめないと言ったのに」(涙目)

男「嘘をつきました」

幽霊「酷いです。もう泣きます。ひんひん」

男「泣かれると良心がうずく。申し訳ないことをした。こんなことなら嘘をつくんじゃなかった」

幽霊「ぐすぐす……もう嘘をつきませんか? いじめませんか?」

男「いいえいいえ」

幽霊「うえぇぇん」

男「ああつい本音が」

幽霊「…………」ブスーッ

男「あの後、どうにか謝り倒して泣き止ませたはいいが、先程から幽霊が部屋の隅っこで体育座りをしてこっちをじーっと見ている」

幽霊「…………」ブスーッ

男「正直なところ、明日も学校なのでとっとと寝たいところなんだが、不機嫌そうな幽霊が気になって寝られない」

幽霊「…………」ブスーッ

男「……でも、まあ、いいか!」

幽霊「ええっ!?」

男「お休み、幽霊さん」

幽霊「あ、あの、まだ許してません、許してませんよ?」

男「でも、眠いんだ。ほら、もう朝の3時だし」

幽霊「起こして上げますから、もうちょっと頑張って起きててください。そして私をいじめことをいっぱい謝ってください」

男「嫌だ」

幽霊「!!?」

男「そういうわけで、お休み」

幽霊「ね、寝たら呪いますよ!?」

男「幽霊の趣味が出た」

幽霊「またいじめた! うえぇぇん!」

男「やかましくて寝れない」

──翌日──

幽霊「起きて。起きてください」ユサユサ

男「zzz……」

幽霊「朝です。早く起きてください」ユサユサユサ

男「ん、……うぅん……ん、むぅ」

幽霊「はぁ、やっと起きた……」

男「んー……うわぁ、知らない人!」

幽霊「幽霊ということで驚いて欲しいです……」

男「……あ、ああ、なんだ。昨夜の幽霊か。驚かすなよ」

幽霊「そして幽霊なのに微塵も怖がられていないことに悲しみを禁じ得ません」

男「おはよ、幽霊さん」

幽霊「はぁ……あれからいっぱい寝るの邪魔したのに、すぐに寝ちゃってそれから全然起きませんでした。起こすの、すっごく苦労しました」

男「何言ってるか全然分からん。ちょっと待って、耳栓取るから」

幽霊「耳栓!? いつの間に!? ずるいです、卑怯です!」

男「……っと。んじゃ改めて、おはよう、幽霊さん」

幽霊「あ、おはようございます」ペコリン

男「ところで、幽霊って朝日に当たったらぐげぇぇぇってヒキガエルみたいな断末魔出しながら消えたりしないの?」

幽霊「隙あらばいじめます! ひどいです!」

男「いや、心配したんだよ?」

幽霊「とてもそうは思えないです! 悪意たっぷりです!」

男「ばれた」

幽霊「やっぱりいじめてました。ひんひん」

男「朝飯何にしようかな」

幽霊「女の子が泣いてるんだからちょっとは慰めてください。ひんひん」

男「厄介な同居人が増えたものだ。ああはいよしよし」ナデナデ

幽霊「ふああっ!?」

男「しまった、頭が性感帯だったか!」

幽霊「違います」

男「それはどうかな?」

幽霊「本人が違うと言っているのです! 違うのです! そうじゃなくて、どうして私に触れるんですか?」

男「え、いや、さっき俺を揺り起こしてたろ? 普通に物に触れるんじゃないのか?」

幽霊「いいえ、無理です。ほら、物を触っても通り抜けます」スカスカ

男「うーん。じゃ、幽霊さんは実は幽霊じゃない、とか?」

幽霊「幽霊です。あいでんててーが崩壊しそうなことを言わないでください」

男「アイデンティティ」

幽霊「あいでんててー」

男「ふむ。じゃ、俺も幽霊なんだろ」

幽霊「仲間!? ……でも、生きてるように見えます」

男「生きてるからな。心臓忙しすぎ」

幽霊「また騙されました。しょっくです」

男「ちなみに、俺は通り抜けない」ドヤアッ

幽霊「当然のことをドヤ顔でされて癇に障りましたが、触った目覚ましが床に落ちて蓋が開き、さらに電池がばらまかれ、わたわたしながら拾う無様な所を見れたのでプラスマイナスゼロです」

男「ふぅ……朝からいい運動をした」

幽霊「爽やかな顔が不愉快です。それで、どうして私に触れるのですか? 陰陽師の血筋なのですか?」

男「全然知らないけど、そうなんだ」

幽霊「もう騙されません。それは嘘です!」ビシッ

男「当たり」

幽霊「わーいわーい!」ピョンピョン

男「この幽霊可愛いなあ。飼おうかなあ」ナデナデ

幽霊「飼うとは何事ですか! 一個人として尊重してください!」

男「死んだ奴に人権なんてないだろ。……と、なると」

幽霊「何やらひどいことをされそうです」ガタガタ

男「よぅし! 恋人としてチュッチュチュッチュしよう!」

幽霊「嫌です」

男「悲しい」

男「それはそれとして、ご飯食べる?」

幽霊「幽霊なので食べられません」

男「偏食は体に良くないぞ?」

幽霊「好き嫌いの話ではないのです」

男「好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしら」

幽霊「どうして往年の名作ギャルゲーの話をしているのですか?」

男「だって、いきなりサメの話とかしだしたら頭おかしい奴だと思われるだろ」

幽霊「ギャルゲーの話でもかなりのものだと思われますよ」

男「で、なんでお前はそんな知識があるんだ」

幽霊「……生前の私は、ゲーマーだったようです」

男「で、パンとご飯どっちがいい?」

幽霊「だから、食べられないと……」

男「ま、パンでいいよな」

幽霊「うぅー」

男「ちっちっち、はい二分経過、できあがり。バターしかないけど、別にいいよな」ヌリヌリ

幽霊「いい匂いです……」

男「じゃ、おあがりなさい」

幽霊「食べられないです……」グゥー

男「腹が鳴ってるぞ。臓器があるのか」モグモグ

幽霊「ないです。ないけど鳴るのです。こんな焼きたてのパンを目の前に置かれちゃ、お腹も鳴ります」ググゥー

男「んー。まあ、ものは試しだ。食ってみろ」

幽霊「そもそも掴めないのに……あ、あれ?」

男「ひぃ、パンが幽体離脱! 怖い!」

幽霊「幽霊を無視してパンに怯えないでください」

男「で、なんでパンからも薄い透けたパンが出てきたんだ? 手品?」

幽霊「んー……お供え、ですかね?」

男「そうだ!」

幽霊「何が!?」

男「いや、何のことか分からなかったから、勢いでごまかそうとしたんだけど、聞き返されたので失敗した」

幽霊「……黙って聞いててください」

男「はい」

幽霊「ええと……お供えされて初めて、幽霊はご飯を食べることができるんです……かね?」

男「なんで疑問形なんだ」

幽霊「……幽霊になってから、ご飯食べたことないんです」

男「ダイエットは身体によくないぞ?」

幽霊「ここはしんみりするところなのに」

男「まあ、話はなんとなく微妙に分かったような気がしないでもない」

幽霊「とんでもなく曖昧です」

男「で、結局その透けてるパンは食べられるのか?」

幽霊「…………。はぐっ」

男「おおっ」

幽霊「もぐもぐ。もぐもぐもぐ。……た、食べられます」

男「おお、よかったな幽霊さん!」

幽霊「食べられます。……おいしーです」ポロポロ

男「お、おい」

幽霊「ぐすぐす……ご飯って、こんなおいしかったんですね……」ポロポロ

男「これはパンだけどな」

幽霊「そういう話じゃないです……ぐすぐす」

男「まあ、なんにしても良かったな」

幽霊「はい……はい!」

男「じゃあ、満足したようなのでとっとと成仏しろ」

幽霊「酷いです! 言い方ってものがあると思います!」

男「えーと。会えなくなるのは寂しいけど、とっとと成仏しろ」

幽霊「あまり変わってません! それに、パン食べて成仏って、あんまりです。餓鬼のようです」

男「ところで、そのお前の分にと焼いたパンは、どうすればいいのだろうか」

幽霊「食べましたよ? おいしかったです」

男「いや、そうじゃなくて、物質のパンの方。幽体のじゃなくて」

幽霊「……育ち盛りなら、パンのひとつやふたつ、ヘーキですよね?」

男「はぁ……。明日からは焼くの一枚でいいか」モグモグ

幽霊「…………」グゥー

男「さっき食っただろ。腹を鳴らすな」

幽霊「な、鳴らしてなんていませんよ!? 酷い言いがかりです!」ググゥー

男「……もう一枚焼くか?」

幽霊「…………///」コクン

男「さて、このパンは昼飯用にするか」

幽霊「もぐもぐもぐ。はぁぁ……♪」

男「んじゃ、俺は学校行ってくるな」

幽霊「もぐ? あ、私も行きます」

男「連れていきたいのは山々なんだが、ペット禁止なんだ」

幽霊「酷い扱いです。ペットではないです。幽霊です」

男「んー……でも、連れて行ったら騒ぎになるだろ? 騒ぎになると目立つだろ? そしたらテレビとかネットで話題になるだろ? 一躍有名人になるだろ?(俺が) 芸能界デビューしちゃうだろ?(俺が) ……よし、来い!」

幽霊「有名人以降は無理だと思います。それと、私は普通の人には見えないので、騒ぎにもならないと思います」

男「そっか。でも、何も見えない空間にニヤニヤしながら話しかける奴ってのは騒ぎにならないかな?」

幽霊「怖いです! なんでニヤニヤしてるんですか!?」

男「だって、幽霊とはいえ女の子が裸でいたら誰だってニヤニヤしちゃうだろ」

幽霊「なんで私が裸って前提なんですか!? 変態さんじゃないですか!」

男「そうだったらいいなーっていう、他愛のない空想だよ」

幽霊「妄想の域に達しているように思えてなりません」

今日はここまで。

男「まあ、なんだ。大丈夫っぽいし、ついてきていいよ」

幽霊「わーい♪」

男「でも、行く先で会う人を次々と呪うのは勘弁な。俺が重篤な伝染病にかかってると勘違いされそうだから」

幽霊「人を悪霊か何かと勘違いしている様子です」

男「違うの?」

幽霊「違います! 善良な幽霊なのですよ、私は! ふんがい!」

男「あれ? でも、俺を怖がらせたり呪ったりしようとしてなかった?」

幽霊「……しゅ、趣味です。趣味ではないですが、そういうアレです。とにかく、私は悪霊ではないのです」

男「やっぱ悪趣味だな!」

幽霊「ひんひん」

男「ところで、学校に来るのは構わないんだが、なんで来たいんだ?」

幽霊「楽しそうだからです。あーゆーところに行ってみたかったんです」

男「……いや、普通に一人で行けばよかっただろうに。なんでわざわざ俺と一緒に行く必要が?」

幽霊「……ああいう陽の気が集まっているところには、幽霊は行けないのです。はじかれてしまうのです」

男「俺と一緒だと大丈夫なのか?」

幽霊「今はおにーさんに取り憑いてますから、大丈夫だと思います」

男「え、俺取り憑かれてるの!? 怖っ、怖あっ!」

幽霊「あっ、怖がられました! ひゅーどろどろ!」

男「いや、そんな元気いっぱいに言われても怖くない」

幽霊「残念です……」

男「しかし、取り憑かれてるのか。困ったなあ」

幽霊「……こっ、こんな可愛い子に取り憑かれてるんだから、むしろらっきーですよ、おにーさん?///」

男「それもそうだな!」

幽霊「納得が早すぎて逆に怪しいです……」

男「近く呪いの効果で変死するだろうけど、こんな可愛い子に取り憑かれてるんだから、それくらい甘んじて受け入れよう」

幽霊「変な効果を勝手に付加しないでください。そんな力はないです」

男「断る!」

幽霊「どういうわけかこのおにーさんは変死したがります」

男「別にしたがるわけじゃ……あっ、いかん、時間!」

幽霊「遅刻して走って校門をくぐろうとして挟まれて死んじゃえばいいんです」

男「くそぅ、悪辣で悪趣味な幽霊にかまってるばかりに!」

幽霊「悪辣じゃないし、悪趣味でもないです。人を怖がらせるのは……そう、幽霊としての本能です!」

男「知らん。興味ない。喋るな」

幽霊「ひんひん」

男「ほら、泣いてないで行くぞ」

幽霊「泣かしたのはおにーさんなのに」

男「ダーッシュ!」

幽霊「だーっしゅ」フヨフヨ

男「ええい、幽霊は浮くなんてチートスキルを持っててずるいなあ!」

幽霊「鳥のようで素敵ですか?」

男「バルンガのようで素敵だなあ」

幽霊「せめて風船……なんでウルトラq……」ブツブツ

男「ぶつぶつ呟きながらついてくるな。朝から気が滅入る」

幽霊「幽霊なのでしょうがないです。ひゅーどろどろ」

男「それ口で言ってるの?」

幽霊「はい」

男「馬鹿丸出しだな!」

幽霊「ひんひん」

男「ぜーぜー……ふぅ、セーフ」

幽霊「お疲れ様です、おにーさん。タオルはご入り用ですか?」

男「お、気がきくな。さんきう」

幽霊「持ってませんが」

男「…………」ギリギリ

幽霊「いひゃいいひゃい、いひゃいでふおひーはん!」

男「俺だから頬を引っ張るので済んでいるが、そこらの一般人なら外道照身霊波光線を照射して強制成仏させられてるぞ」

幽霊「ううう……そこらの一般人は、そんな必殺技持ってません」ヒリヒリ

男「いや、そうとは限らないぞ。じゃあ誰かに聞いてみて、もしその技を持ってたら照射してもらうからな」

幽霊「非常に困ります! やめてください!」

友「……一人で何やってんだ、男」

男「やあ我が友、いいところに。もしよかったらなんだが、今からこの幽霊に外道照身霊波光線を照射してくれませんかね?」

幽霊「大ぴんちです! 強制成仏なんてまっぴらごめんです!」

友「……? 何言ってんだ、お前は」

幽霊「あ、おにーさん。この人は見えない人のようですよ?」

男「いやまったく、俺は何を言ってるんだろうな。幽霊なんて馬鹿げたものは存在しないと言うのに」

幽霊「います! 超います! おにーさんが否定するのは悲しいです!」ポカポカ

男「ぶべらはべら」

友「? なあ男、お前何かに殴られてねーか?」

男「いたた……いや、ただのパントマイムだ」

幽霊「のっとぱんとまいむ! 私が叩いているのです!」ポカポカ

男「ぶべらはべら」

友「……よく分からんが、楽しそうだな。じゃ、俺は先に教室行ってるな」

男「ふぅ……エンターティナーを演ずることにより、外道照身霊波光線から守ってやったぞ。感謝の証として、ち、ち、ちっすを許可する!」

幽霊「しません」

男「がーんだな……出鼻をくじかれた」

幽霊「なんで孤独のグルメですか?」

男「さて、んじゃ教室行くか」

幽霊「わくわくします!」

男「期待してるところ悪いが、別に女子が半裸で闊歩とかしてないぞ?」

幽霊「そんな学校は存在しません」

男「なんでだろうなあ……!」

幽霊「うーん。おにーさんは気持ち悪いですね?」

男「幽霊に言われると結構ショックだな」

男「着いた。ここが教室だ」

幽霊「わぁ……! 有象無象がひしめいています!」

男「この幽霊口が悪いな」

友「……なあ男、さっきからお前何と喋ってんだ?」

幽霊「あ、さっきの人です。こんにちは」ペコリン

男「こんにちは」ペコリン

幽霊「おにーさんにしたのではないのです!」プンプン

友「何もないとこに頭下げたり……いきなりなんだ? まあ、奇行は今に始まった話じゃないからいいけど」

男「いやね、聞いてくれよ友。実は、幽霊がここにいるんだ」

友「…………。へー」

幽霊「まるで信じてない目をしてます」

男「もちろん嘘だけどな」

幽霊「嘘ではないのです! そこを否定してどうするのですか!」

友「……ああ、幽霊がいる、っていうごっこ遊びをしてるのか」

男「あー、うん、そんな感じ」

幽霊「なんかうまい具合にまとまりましたね」

男「全て計算ずくだ」

幽霊「絶対にうそです!」

友「……ま、んじゃいると仮定して……んーと、よろしくな、幽霊さん」ペコリ

幽霊「あ、ハイ! よろしくお願いします!」ペコリン

男「幽霊の奴、お前の顔が気に入らないから『俺の嫁メモリアル』を部屋の机の上に置いといてやるって言ってるぞ」

幽霊「言ってません!」

友「なんで俺の持ってるエロ本知ってんだ!?」

キーンコーンカーンコーン

教師「ぅーい、席に着けー」ガラッ

友「まあいいや……んじゃ後でな」

男「はぁやれやれどっこいしょあいたたた」

女「どこのおじさんよ」

男「やあ、君は席が隣の女さんではないか。いかん、説明口調に過ぎる。お母さんに怒られるかも」

女「なに言ってんのよ。……それより、話があるんだけど」

男「困った、告白された」

女「してないわよッ!」

教師「あー? 女ー? どうかしたかー?」

女「い、いいえ、なんでもないデス……///」

男「朝から元気だなあ」

女「誰のせいよ……!」ギュー

男「ほおをひっはふは」

女「と、とにかく! あとで話があるからね。逃げないで待ってなさいよね」チラチラ

幽霊「…………」

 ────

男「さて、昼休み、すなわちあとになったわけだが」

男「なんか変なところに連れてこられた。想像するに異次元に違いない。幽霊の仕業か。あとでぶち殺す」

幽霊「違いますよ!? もう死んでますし!」

女「ここは空き教室。……単刀直入に言うわ。私、幽霊が見えるの」ジロッ

幽霊「!」

男「ああ、メンヘルか。きめぇ」

女「違うわよ! きめぇとか言うなッ! ほらっ、そこにいるでしょ! アンタに憑いてるのが!」ビシィッ

幽霊「ふわあっ!?」

男「ふわあ(笑)」

幽霊「び、びっくりして思わず口から飛び出ただけです! 別に普段からそんな感じではないのです!」

男「いや、何も恥じる必要はない。むしろどんどんそういう萌え言語を使うように。大好物です」

幽霊「なんて人に取り憑いちゃったのでしょうか……」ガックリ

男「えーと。なんだっけ。ああそう、幽霊か。そんなのいるわけねーじゃん」

女「ええっ!?」

幽霊「ええっ!?」

女「いやいや、いやいやいや! アンタさっきものすごい会話してたじゃないの!」

幽霊「そですよ! たくさんいじめられました!」

女「ねー?」

幽霊「ねー?」

男「ねー?」

女「アンタは関係ないッ!」

男「楽しそうだったからさりげなく入ったんだけど、ばれた」

幽霊「満面の笑みですごく気持ち悪かったです……」

男「この幽霊腹立つな」ギュー

幽霊「いひゃいいひゃいでふ」

女「……で。この幽霊なんなの」ジロッ

幽霊「ひっ」

男「いや、何と言われても。便利な性欲処理装置、としか」

幽霊「ええっ!?」

女「アンタを殺して私も死ぬッ!」ギュー

男「ぐげげぇ」

幽霊「おにーさんの首がぎゅーっと締められ、目がくるりんっと白色にちぇんじしました。もう少しで私の仲間になりそうです」

男「はぁ……軽い冗談なんだから、首を締めるな。ツッコミが激しすぎる」

女「う、うるさい! あんなの冗談でもなんでもないわよ! このド変態!」

男「ありがとうございます!」

女「うわぁ……」

幽霊「満面の笑みです。取り憑く相手を明らかに間違えました。きゃんせるしたいです」

女「えーと……この幽霊が、アンタに取り憑いてるのね?」

男「簡単に言うと、そんな感じ」

幽霊「……も、もしかして、外道照身霊波光線ですか?」ブルブル

女「はぁ?」

男「何言ってんだコイツは。頭悪ぃなあ」

幽霊「おにーさんが言ったことなのに! ふんがいです!」プンプン

男「ごめんね?」ナデナデ

女「…………」ジーッ

幽霊「は、はぅぅ! 睨まれています!」

男「こらこら、子供たち。貧乳同士仲良くしなさい」

女「誰が子供で誰が貧乳よッ!」ドゲシッ

幽霊「ひ、貧乳はすてーたすで希少価値なんですよ!?」

男「古いな。だが、個人的に貧乳は大好きなので諸手を上げてその理論に賛同します」

女「……あ、アンタの好みなんて知らないわよ///」

幽霊「まったくです! 好きで小さいわけではないのです!」

男「すいません、先ほど殴られた際に噴出した鼻血が止まらないのでティッシュをください」

女「まったく……まあ、殴った私も悪いけども」グイグイ

男「ふがふが。いや、全部お前が悪い」

女「最初に悪口言ったアンタも悪いわよッ!」グイッ

男「ふがあ。押し込むな」

女「あ、ご、ゴメン……これでどう?」クイクイ

男「ん、よし。どうだ、幽霊?」

幽霊「鼻声のうえティッシュが鼻に詰まっていて、おにーさんの最大カッコ悪さを更新しました」

男「ままならないなあ」

女「……で。なんで取り憑かれてるの?」

男「そういや俺も知らないや。なんで?」

女「そんなことも知らずにのほほんと学校に……本っ当、コイツは……!」ギリギリ

男「頬をつねらないでいただきたい。理由は、痛いから」

女「うっさい!」

幽霊「あはは。あのですね、私の住んでる家に、おにーさんがやってきたからです」

女「えっ、アンタ幽霊屋敷に住んでるの!?」

男「え? えーと、うん」

幽霊「ええっ!?」

女「ちょっと! 幽霊ちゃんが”ええっ”て言ってるわよ!」

男「そんな怖いところに住んだ覚えはないけど、幽霊が住んでたようだし、そういう意味では幽霊屋敷かなあ、って後付けで思ったんだ。でも見た目は普通のアパートだよ?」

幽霊「普通ではないです。おんぼろアパートです。一人で気ままにいたのに、なんであんなところに、しかもピンポイントで私の部屋に住むんですか、おにーさん。迷惑です」ギュー

男「安いし学校近いし。そして別に狙って幽霊のいる部屋に住んだわけではない。あとお前も頬をつねるな」

女「元々平和に暮らしていた幽霊ちゃんの元へ、男という闖入者がやって来たのね。つまり、アンタが諸悪の根源ね!」ビシィッ

男「ぐわはははー。ばーれーたーかー」

幽霊「退治してやります。えいえい」ギュー

女「とりゃー!」ギュー

男「やめて」

今日はここまで。

男「双方から頬をつねられ、大変痛かった」ヒリヒリ

幽霊「調子に乗ってつねりました。少し申し訳なく思います」

男「許さん。死ねェ!」

幽霊「もう死んでます」

男「じゃあいいや、許す」

幽霊「死んだ甲斐があったというものです!」

女「あったま悪い会話してるところになんだけど、今アンタが住んでる部屋に幽霊ちゃんがいるんだから、別のところに引っ越せばいいじゃない」

男「お金がないんだ」

幽霊「おにーさんは貧乏人です」

男「だから、近くの浮遊霊の気を食べて生き長らえてるんだ」

幽霊「知らない間におにーさんに食べられてました。……な、なんだかえっちな響きですね?///」

女「…………」ギリギリ

男「軽い冗談を言っただけなのに、どうして頬をつねられているんだろう」

女「うっさい!」

幽霊「あわわわ」

男「まあなんだ、偶然幽霊のいる部屋に引越しちゃったがために起こった悲劇といえよう。だから幽霊、どっか行け」

幽霊「わ、私が先に住んでいたのです! 居住権を行使します!」

男「ひぃ、法律! 助けて!」ガシッ

女「寄るな触るな抱きつくなッ!」ゲシッ

男「すいません、難しい言葉に混乱しました」

女「ったく……///」

男「ただ、どさくさに紛れておっぱいのひとつでも揉んでやれ、という思いが今になって脳裏を駆け巡る。後悔先に立たずとはよく言ったものだ」

女「ちょっとは吟味してから喋りなさいッ!」ギュー

幽霊「このおにーさんは頭が悪いですね」

女「まぁね。……で、でも、本当はいい奴なのよ?」

男「…………」ニヤァ

幽霊「わ、悪い顔をしてますよ!? おにーさんは悪人です! えいえい!」ポカポカ

男「ぶべらはべら」

女「楽しそうで何よりね」

男「というわけで、金がないのでしばらくはこのまま幽霊と一緒に住むことに相成りました」

幽霊「本当は追い出して今までどおり一人気ままでいたかったですが、おにーさんといるとご飯が食べられるので我慢します」

女「んー……まあ、悪霊じゃないっぽいし、大丈夫かなぁ……?」

男「お、俺は悪霊とかじゃないよ!? ほ、本当に!」ガタガタ

幽霊「お、おにーさんは頭悪くてじつに変態ちっくですが、悪霊じゃないです!」

女「違うッ! 幽霊ちゃんの方! なんで生きてる男を悪霊と思うか!」

男「言い訳しながらおかしいなあとは思ったんだ」

幽霊「実を言うと私もです」

女「幽霊ちゃんも頭悪いの?」

幽霊「!!?」

男「涙目の幽霊可愛い」

女「喋るな」

男「ところで、そろそろ飯を食わないか? いい加減腹が減ったのだが」

女「……それもそうね。んじゃ、教室に戻るわよ」

幽霊「ご飯は嬉しいです。たくさん食べます!」

男「たくさん食べるのはいいが、今日の俺の昼飯は朝お前が食ったパンの抜け殻だぞ?」

幽霊「……あ」

男「即ち、お前が食う飯など存在しない」

幽霊「……へ、ヘッチャラです。今までずーっとずーっと食べてなかったから、慣れてます。問題なしです」グゥー

男「腹を鳴らしながら言う台詞ではないなあ。ああ可哀想だ可哀想だ。誰か幽霊にご飯をあげる優しい奴はいないかなあ?」チラチラ

女「ああもう、普通に言いなさいよね。幽霊ちゃん、私のお弁当で良かったら食べる?」

幽霊「ほ、本当ですか!? こんないい人に巡り合えるなんて、感激しきりです!」

男「全て俺の人徳がなせる業なのだから、俺を崇め奉るように」

幽霊「嫌です」

男「お、女! この幽霊の奴が俺を崇めない! こらしめてやってくだせえ!」

女「幽霊ちゃんは好き嫌いとかある?」

幽霊「なんでも食べれます」

男「無視かぁー」


友「……お、戻ってきたか。二人して何やってたんだ?」

男「搾乳プレイ」

幽霊「お、おにーさんが女さんに凄まじい勢いで廊下に連れ出されました!」

女「何言ってんのよッ!」

男「ご飯食べないの? お腹空いたんだけど」

女「アンタが余計なこと言わなけりゃ、今頃普通に食べれたんだけどねッ!」ギリギリ

男「おや、脳が大変に痛いですね。ひょっとしたら死ぬやも」

幽霊「お、おにーさんのこめかみにおねーさんの指がめりこんでいます!」

男「実況ご苦労さまです」ナデナデ

幽霊「あ……えへへっ♪」

女「…………」ギリギリギリ

男「何が気に障ったのか分からないが、こめかみに掛かる圧が増したので、このままでは確実に死ぬ」

幽霊「おにーさんの口からあぶくが出てきました」

男「死にかけた。いや、3/4は死んでたな」

女「いい? 変なこと言わないで、普通にしてなさいよね」

男「はい」

幽霊「教室に戻ります」


友「うーす。お前ら、相変わらず仲いいな」

女「は、はぁ!? どこを見たらそう見えるってのよ! ……こ、こんな奴なんかと///」

男「ご飯ご飯」イソイソ

女「…………」ギリギリ

男「変なことを言ってないのにまた頬をつねられた。もう法則が分からないよ」

幽霊「おにーさんは、鈍感さんなんですか?」

男「ああ。俺が、俺達が土管だ!」

幽霊「聞き間違えてるのに肯定しましたよ!? そしてどういうわけか私まで土管にされました。幽霊なのに」

友「……? ああ、朝の幽霊ごっこか。まだここにいるのか?」

幽霊「はい! います!」

男「いや、成仏した」

幽霊「!!?」

女「あんまりいじめないの。……はい、幽霊ちゃん。これ食べていいわよ」コトッ

友「あれ、女さんも付き合ってあげてるの? 珍しいね」

女「んー、まぁ、ね」

幽霊「お、お弁当です! いただきます!」

女「……物の幽体離脱? そんな感じになるんだ」

友「?」

男「冷めた食パンおいしくない」モソモソ

幽霊「もぐもぐもぐ……げふー! ごちそうさまでした!」

女「ん。おいしかった?」

幽霊「はい! それはもう!」

女「そっか。よかった」ナデナデ

幽霊「あ……えへへへへっ♪」

男「見ろよ友、女が何もない空間に手をゆらゆらとしてるぞ。俺が思うに、薬が切れた結果の幻覚が見えてるのだと思うぞ」

友「いや、普通にお前の戯言に付き合ってあげてるだけだろ」

女「男、あとで顔貸せ」

男「たぶん殴られる。言うんじゃなかった」

友「ご愁傷様」

幽霊「あわわわわ」

男「俺の想像が当たり、ちょっと辛い事件があったが、どうにか放課後になった」

幽霊「頬が腫れてますよ、おにーさん」

女「当然の報いよ。ふん、だ」

友「あっはっは。んじゃ俺は先に帰るな」

男「待てよ。一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし、一緒に帰らないか? ゲーセン行こうぜ」

友「頭おかしい奴とは一緒に帰りたくないんだ」

男「じゃあ仕方ないな。また明日な、友」

友「ああ。また明日な、男。それに女さん、あと幽霊も」

女「はいはい。またね、友くん」

幽霊「見えてないようですが、また明日です」

男「幽霊とか馬鹿じゃねえの」

友「お前が言うな」

幽霊「見えてるおにーさんが言うのは明らかにおかしいです!」

女「じゃあ、一刻も早く死んで証明してみなさいよ」

男「女の台詞の鋭利さといったら……!」

友「あっはっは。んじゃ今度こそまたな、皆」

男「……さて。んじゃ俺らも帰るか」

幽霊「はい! 一緒の登校、一緒の下校です!」

女「そうね。……い、一緒の方角だから、アンタと一緒に帰るのも仕方ないわよね///」

男「誰に言ってんだ」

女「う、うるさい! ただの独り言よ!///」

幽霊「……ふーむ」

女「ところでさ、アンタは幽霊ちゃんに触れるのよね」

男「ああ」フニフニ

幽霊「ひゃ、ひゃああ」

女「セクハラはするなッ!」ゲシッ

男「これは幽霊に触る大義名分を得たと思い、急ぎほっぺをふにふにしただけです。本当はおっぱいとかお尻とか触りたかったんだけど、勇気が出せずにほっぺに留まったんです。だから殴らないでください」

幽霊「び、びっくりしました///」

女「コイツは……まさかとは思うけど、家で変なことしないでしょうね?」

男「まっ、ままままままままままままさかあ!!!」

幽霊「このままでは確実に変なことをされます。貞操の危機です。初体験が生身ではなく幽体とは思いもしませんでした」

男「し、しませんよ!? そんな人として間違ったこと……あ、でも相手は幽霊だから人としてとか関係ないから……よし、する!」

幽霊「男らしさが間違った方向で発揮されてます」

女「幽霊ちゃん、うち来る?」

男「なんてこった! 俺の幽霊があ!」

幽霊「……べ、別に私は誰のものでもないです///」

女「何か聞き捨てならないものが聞こえたわね」

男「おや、夏なのに寒気が」

男「何かオラオラ的な打撃を受けたのか、体中がやけに痛い」

女「生きてるだけでありがたいと思いなさい」

幽霊「私は死んでますけどね?」

男「いやまったく。わはははは!」

女「不謹慎ッ!」

幽霊・男「ご、ごめんなさい」

女「まったく……で、どうする、幽霊ちゃん? うち来る?」

幽霊「……そうしたいのは山々なんですが、おにーさんに取り憑いているので、おにーさんから離れられないんです。一度取り憑くと、そう簡単に別の人に取り憑いたりはできないのです」

男「そうなのか! それなら仕方ないなあ!」ニマニマ

女「……明日幽霊ちゃんに何かあったか聞くから。変なことしたら……分かってるわよね?」

男「お仕置きとしておっぱいを押し付けられるのか。いや困ったなあ、おっぱい怖いからなあ」

女「するわけないでしょッ!」ギューッ

男「饅頭怖いだとまんじゅうが腹いっぱい食べられるのに。おかしい」

幽霊「おにーさんのほっぺがびろーんってなってて面白いです」

女「じゃあ私はこっちだから行くけど……何かあったらコイツを殺してでも逃げたらいいからね、幽霊ちゃん。どうせ人権とかないんだから、殺人もオッケーよ」

幽霊「はい!」

男「はいと来た。目の前で自身の殺人事件の計画を打ち明けられる恐怖に、君は打ち勝てるだろうか。ちなみに俺は勝てない」ブルブル

幽霊「おにーさんの顔色が面白い感じに」

女「これだけ怯えてたら大丈夫そうね……じゃあね幽霊ちゃん。あとついでに男も」

幽霊「はい! さよならです、おねーさん」

男「……行ったか。くくく、この翁を謀ろうなど百年早いわい」

幽霊「おにーさんは実はおじーさんだったのですか?」

男「いや、見た目通り高校生です。衝動的に適当なことを言う癖があるのです。勘違いさせてごめんね?」

女「気にしないでいいわよ。それくらいは想定内だから」ヒョコッ

男「ひぎぃッ」

幽霊「あ、おねーさん。さっきぶりです」

女「幽霊とはいえ、やっぱコイツのとこに女の子一人置いとくのは危ないわね。……し、しょうがないわよね、道義的にね、うん」

幽霊「何を一人で言ってるんでしょうか?」

女「だ、だから、仕方なく、仕方なく! 幽霊ちゃんを守るため、……わっ、私もアンタの家に泊まってあげるわよ!///」

幽霊「わあ! はーれむ! はーれむですよ、おにーさん!」

女「ちっ、違うわよ!/// ……ていうか男、どうしたの?」

男「びっくりした時にとっておきの破瓜の声をあげたのに、誰にもつっこまれなくて悲しんでたんだ」

幽霊「別の意味で可哀想ですね、おにーさん」

男「さて、なんか知らんが可愛い女の子が二人も家に、それも泊まりで来ることになった。これがこの世の春か。幸せすぎるので、人生のバランス的に明日あたりたぶん何かの事故で死ぬ」

幽霊「おにーさんはねがちぶですね」

男「ネガティブ、な」

幽霊「ねがちぶ」

女「あ、私一度家に帰るわね。荷物とかあるし、親にも言っておかないといけないから」

男「荷物ってなんだろ。ぱんつかな。ブラ……は、ないな。なぜならぺたんこだから、する必要性がない」

女「えい」サクリ

男「ぎにゃあ」

女「じゃあね、幽霊ちゃん。また後でね」

幽霊「は、は、はい」ガタガタ

男「前が見えねえ」フラフラ

男「類稀なる回復力で復帰したので、帰ろっか、幽霊」

幽霊「はい」


男「というわけで、我が家に着いた」

幽霊「私の家でもあります」

男「俺がお金を出して借りてるはずなんだけどなあ」

幽霊「居住権を行使します!」

男「ひぃ、また法律! 助けて!」ガバッ

幽霊「ひゃ、ひゃああ///」

女「やー、お母さんに勘ぐられて本っ当困ったわよ。そんなんじゃないの……」ガチャ

男「oh,bad timing」サワサワ

幽霊「あ、あの、おにーさん……そこ、お尻ですよ?///」

女「お仕置きの時間よ」ゴゴゴゴゴ

男「ああ、こうやって要所要所で折檻を受けることにより、人生のバランスがとられているのか。よくできていやがる、ちくしょう。でもお尻柔らかいからいいか」ナデナデ

幽霊「あ、あの、おにーさん、そ、その……困ります///」

女「男が泣くまで殴るのをやめないッ!」

幽霊「おにーさんが泣いたのでおねーさんは殴るのをやめました」

男「この女、怖すぎる」ガタガタ

女「うっさい! アンタが幽霊ちゃんを襲わなけりゃ殴ったりしないわよ!」

幽霊「お、襲われたんですか、私?」

男「いかん、幽霊の怯えた表情に嗜虐心が刺激され、またムラムラしてきた」

女「もっかい殴る?」

男「勘弁してください」

幽霊「一点の曇りもない土下座です」

女「ったく……ところで、ご飯の準備とかしてるの?」

男「どうだろう。幽霊、ちょっと冷蔵庫開けて中身見てくれ」

幽霊「はい。……あれ? あれ?」スカスカ

男「あー、そういや物に触れないんだったな。すっかり忘れてた」

幽霊「そでした。私も忘れてました。おにーさんたちと話してると、時々自分が幽霊だということを忘れちゃいます」

男「若年性痴呆症か。可哀想になあ」

幽霊「それくらい楽しいって話だったのに! おにーさんはひどいです!」

男「はいはい。ごめんね」ナデナデ

幽霊「ううう。おにーさんになでられると、どういうわけか許してあげたくなる心地になってしまいます」

女「…………」イライラ

男「なあ幽霊、視界の端に何かとんでもない怒気を背負った鬼のようなものが見えるんだけど、お前の仲間が遊びに来てたりしないか?」ナデナデ

幽霊「あれはおねーさんですよ、おにーさん?」

男「はっはっは。ただの人間があんなプレッシャーを放てるわけないじゃないか。まったく、何を言っているのか、この幽霊は」ツンツン

幽霊「あ、あぅ……ほ、ほっぺ、つつかないでください///」

女「はいこけた!」ドゲシッ

男「大変痛い!?」

幽霊「芸術の域に達しそうな飛び蹴りです」

男「うぐぐ……てめえ! 何しやがる! てめえ!」

女「こけたの。偶然。だから仕方ないの。ドジっ子なの」

男「あんなライダーキックをかましておいて偶然こけたとかちゃんちゃらおかしいぜ! ただ、ドジっ子なら仕方ないので許す」

女「自分で言っておいてなんだけど、それで許すのはおかしいのよ?」

男「ドジっ子とか好きなんだ。ドジっ子メイドとかいいなあ」チラチラ

女「やらないわよ」

男「別に胸元を強調するデザインじゃないから貧乳の方でも安心ですよ? あ、でもコンプレックスを刺激する姿を眺めるのもご飯が進みそうだし、それもアリだな!」

女「何か突拍子もない天災が起こってコイツだけ原子にまで分解されないかなあ」

男「どうも女はしてくれそうにないな。じゃあ幽霊がやって幽霊。メイド服着てくれ」

幽霊「私、着替えとかできません」

男「じゃあいいや。することないし死のうかな」

女「そんなんで諦めるなッ!」

幽霊「そんな様でよくこの年齢まで生き残れたと感心しますよ、おにーさん」

男「どうにもいじめられて辛いので、そろそろ夕食の材料でも買いに行きましょう」

女「え? 冷蔵庫に何かないの?」

男「即席ラーメンとかならあるが、わざわざ女が来てくれたのにそんなのを出すのは申し訳ないからな」

女「……そ、そう。……ま、まあ、私をもてなすのは、とっ、トーゼンよね!?///」

幽霊「どして声が裏返ってるんですか、おねーさん?」

女「うっ、うるさいっ!」

幽霊「ふああっ!? こっ、怖い、怖いですっ!」ピュー

男「ああよしよし。幽霊をいじめるなよ、女。貧乳同士仲良くしろと言ってるだろ?」

女「アンタ毎秒喧嘩売ってるでしょッ!?」

男「あと、お前も『怖がらせるバルンガ』で有名な幽霊なんだから、びびらされてどうすんだ。逆にお前が怖がらせるくらいのことをしてみろよ」ナデナデ

幽霊「変な二つ名を勝手に付けないで欲しいです……」

女「……ね、ねぇ。幽霊ちゃんも落ち着いたみたいだし、もうなでなくてもいいんじゃない?」

男「そうは言うが、なでてると幸せだから手が止まらないんだ」ナデナデ

幽霊「私も、成仏する時みたいにいー気持ちです……」ポーッ

男「そのまま成仏されたら寂しいのでやめておこう」

幽霊「はわっ!? なでなでが!」

男「お、ナイス萌え言語。今後も努めるように」ナデナデ

幽霊「さながら永久機関です」

女「ねえ、男。手を止めて素直に買い物に行くのと、動けなくなるまで殴られてから買い物に行くの、どっちがいい?」

男「そろそろ買い物に行こうか」

幽霊「おにーさんの顔色が人間のそれとはかけ離れています」

男「というわけで、近所のスーパーマーケットに来た」

幽霊「すーぱーまーけっと」

男「お、これは言えたな」ナデナデ

幽霊「これも、です。なんでも言えます。あいでんててー」

男「アイデンティティ」

幽霊「あいでんててー」

女「…………」

男「ん、どした女。幽霊をじーっと見つめて」

女「ゆ、幽霊ちゃん。もっかいさっきの言って?」

幽霊「はぁ。んと、あいでんててー」

女「……ゆ、幽霊ちゃん可愛い!」ダキッ

幽霊「はわわっ!」

女「幽霊ちゃん、幽霊ちゃん。アイデンティティ?」

幽霊「あ、あいでんててー」

女「あああ……可愛い可愛い可愛いっ!」ナデナデナデ

幽霊「は、はぅあぅはぅ///」

男「百合ってるところ悪いが、一般人には幽霊が見えないがため、一人でくねってるちょっと精神がアレな奴と思われてますよ」

女「レズじゃないっ! 誰がアレよっ! ……って、なんでそんな離れてるのよ」

男「知り合いと思われると嫌なので」

女「知り合いでしょ、男クン?」テクテクテク ギュー

男「今回に限って言えば俺は悪くないと思うのだが、どうして頬をつねられているのだろう」

幽霊「は、はぁはぁ……び、びっくりしました///」

男「ああ、俺もよもや知り合いが街の往来で突然発情するとは思いもしなかった」

女「言い過ぎよッ! ……ち、ちょっと幽霊ちゃんの可愛さに前後不覚になっただけよ///」

男「しっかりしろよ、レズ女」

女「うっさいロリコン。童貞こじらして死ね」

幽霊「酷い戦いもあったものです」

男「いつまでも店の前でくねくね痴態を見せつけるのもなんだし、そろそろ店に入らないか」

女「もうやってないわよ!」

幽霊「くねくね」ユラユラ


男「そんなわけで三人で入店したわけだが、何買おう」

女「晩ご飯でしょ? 何食べたい?」

男「食べたいものはたくさんあるが、生憎技術が欲望に追いついていないもので、できるものは限られているんだ」

女「いいわよ。泊めてもらうんだからご飯くらい作ってあげるわよ」

男「折角の申し出だが、毒を盛られると死ぬ体質だから遠慮しとくよ」

女「誰でもそうよっ! アンタを殺すならそんな手間のかかる手段なんて採らないわよ!」

男「暗に直接殴り殺すと言われているようで、震えが止まらないよ」ブルブル

幽霊「マネしたくなる程度には楽しそうです」ブルブル

男「別に楽しくて震えているわけではなくて、身体の防衛機構が勝手に震わせるんだ」

幽霊「難しいことはよく分かりません」

男「実は俺もなんだ。しょうがないからサメの話でもしようか」

幽霊「きばがかっこいいです」

女「そこの馬鹿二人、早く来なさい」ガシッ ズルズル

男「ぐええ」

幽霊「おにーさんの首におねーさんの手ががっしりと食い込んでいます。一種の刑罰と言われても違和感のない風景です」


男「さて、女に酷い目に遭わされたが、まあいつものことなのでよしとしよう」

幽霊「おにーさんの度量が果てしないです」

女「単に文句言う度胸がないだけよ」

男「えへんえへん。ええと、メニューだけど、幽霊は何が食べたい?」

幽霊「えっ、私が選んでいいんですか?」

男「ダメだよ」

幽霊「もう何も信じられません……」ションボリ

女「幽霊ちゃんをいじめるなッ!」ドゲシッ

男「軽い冗談なんです。すぐに冗談と言う予定だったんだけど、なんかゴリラ的な力場に遮られたんです」ハナヂ

女「まったく……それで幽霊ちゃん、何が食べたい? なんでもいいわよ?」

幽霊「え、えと……じゃ、ハンバーグがいいです。食べたいです」

女「そっ。じゃあひき肉と玉ねぎ、あと卵ね。そだ、パン粉とかある?」

男「食パンならある」

女「ん、それで大丈夫」

幽霊「おにーさん、おにーさん。パンは朝おにーさんが食べちゃった分で全部ですよ?」クイクイ

男「しまった。しかし今更そんなことを言ったら『じゃあ代わりにお前がひき肉になれ』とか言い出しかねないからな。幽霊、陽動を頼む。その間にどうにかして手に入れてくる」

幽霊「わ、分かりました。せきにんじゅうだいです!」フンス

女「なんでアンタは人を殺人鬼扱いするの?」

男「しまった、ばれた! ええとええと、俺より幽霊をひき肉にしたほうが珍しい味のハンバーグができると思いますよ?」

幽霊「物理無効ですのでひき肉にはなれません」

男「いや、どういうわけか俺と女に限っては触れるので、手でミンチ状になるまで殴ればできる」

幽霊「ふわああん!」

女「だから、幽霊ちゃんをいじめるなッ!」ドゲシッ

男「冗談です。紳士なので、女性に手をあげるなんてありえないです。代わりじゃないけど女性によく殴られます。納得はいってません」ハナヂ

女「ほらほら、悪い奴は退治したからもう大丈夫よー?」ナデナデ

幽霊「ぐすぐす……おにーさんはひどいです。悪魔です」

男「デビルイヤーは地獄耳!」ババッ

幽霊「も、ものすごくかっこいいぽーずです……!」

女「私には間違ったラジオ体操の動きにしか見えないわね」

男「一人かっこいいポーズを決めてるところを周囲の奥様方にジロジロヒソヒソされたので、あまりの恥ずかしさにそそくさとその場から逃げた俺をどう思うか」

女「恥ずかしがるくらいなら最初からしなきゃいいのに」

幽霊「あんなにかっこいいのに恥ずかしがるなんて、おにーさんはどうかしてます」

男「いや、どうかしてるのは幽霊の美的感覚だ」

幽霊「またいじめられました……」ションボリ

男「ションボリする幽霊は可愛いなあ」ナデナデ

幽霊「ションボリとナデナデが相殺され、ちょうどにうとらるの感情です。無です。むー」

男「では、なでりを強めたら?」ナデナデナデ

幽霊「何やら嬉しい心地になりました」ニコニコ

女「はいはい、そこまで! 幽霊ちゃんもこんな奴に付き合ってあげる必要なんてないのよ?」

幽霊「付き合ってあげてるわけではないです。なでられると嬉しいのです」

男「なんと好都合な。乳でも尻でもなでてくれよう!」

幽霊「遠慮します」

男「話が違う。解せぬ」

男「しょうがないから代わりに女の頭をなでよう」ナデナデ

女「あっ、こら何を勝手に……!」

男「ふむン。幽霊とはまた違う楽しさがあるね」ナデナデ

女「……い、意味分かんないし。なでることの何が楽しいってのよ///」

男「言われてみると確かに。何が楽しいんだか」パッ

女「……あ、やめるんだ」ションボリ

幽霊「おねーさん寂しそうです!」

女「なあっ!? だっ、誰が寂しそうだったのよ!?///」

男「ばか大きな声でそんなこと言うな。チクチク刺激していたぶるのが楽しいのに」

幽霊「あちゃー、失敗しました。ごめんなさい、おにーさん」

男「分かればいいんだ。失敗を糧にさらに大きくなれよ、娘!」ナデナデ

幽霊「私はおにーさんの子供ではないですが、大きくなります。おっぱい育てます!」

男「人間的な話なのに。あと乳は現状維持でどうかお願いします」

幽霊「おにーさんはロリコンさんなので、いつでも身の危険を感じています」

男「ばか、危険度で言うなら今の俺が一番高いぞ? なぜならいま女が静かなのは怒りを溜めている最中だからで、もう少しで超必殺技が俺に降りかかるからでげべっ」

幽霊「降りかかってます」

男「いい加減殴られ疲れたし、普通に買い物しませんか?」

女「アンタが余計なことしなけりゃ最初からそうしてるわよッ!」

幽霊「お買い物は危険がうぉーきんぐです」

男「一般的な買い物の場合は歩いてないんだけどな。女がついてくると往々にして歩き出す」

女「アンタと一緒じゃなけりゃ、私だってこんなことにはならないわよ!」

幽霊「つまり、お二人は特別同士なんですね!」

女「にゃあっ!? そ、そ、そっ、そんなわけないじゃない! ね、ねえ?///」

男「さっきのびっくりした時の声が猫みたいで可愛かったのに、突然のことに録音できなかった。あまりの悔しさに血尿が出そうだ。……否、出す!」

幽霊「無意味に男らしいです」

女「……え、えと。アンタって猫好きなの?」

男「好きだなあ。でも猫かおっぱいかと言われたら、断然後者を推すね!」

幽霊「猫に人のおっぱいがくっついてたらどうですか、おにーさん?」

男「残念ながら俺はケモナーじゃないからあまり嬉しくないなあ」

幽霊「足し算で全ての物事がうまくいくと思ったら大間違いです。反省してください、おにーさん」

男「あれ、俺?」

今日はここまで。

幽霊「おにーさんに説教したらお腹空きました。早くお買い物を終えてご飯を食べましょう」

男「納得は未だいっていないが、飯には賛成だな」

女「(にゃー……いや、いきなり語尾ににゃーとかつけたら、あんまりすぎるわね)」ブツブツ

男「何を言ってるのですか、お嬢さん」ヌッ

女「きゃああああああ!? いきなり近寄るなッ!」ドゲシッ

男「なんか近寄っただけで殴られた。酷すぎる。こんな世界では、この先生きていく自信がない」ハナヂ

女「あっ、ごっ、ごめん! つい! ……で、でもアンタも悪いのよ? いきなり女の子に無遠慮に近寄ったりするから。……まあ、殴ったのは悪かったケドさ」

男「知り合いがいきなりぶつぶつ言い出したら、誰だって心配して近寄るだろーが」

女「……し、心配したんだ。ふーん、そっか///」

男「当たり前だろ。だのに殴られて、お兄さん意気消沈ですよ」

女「そ、そっか。……じゃ、じゃあさ、お詫びってわけじゃないけど、これから語尾にさ、にゃ」

幽霊「このせんせいきていくとは、きのこるの亜種ですね」ナデナデ

男「幽霊になでられて元気百倍! もう何も怖くない」

女「…………」

男「女? どうかしたか?」

女「なんでもないわよッ!」ドゲシッ

男「どうにもそうは思えない」ハナヂ

幽霊「見てるこっちが貧血になりそうなくらい鼻血を出してますよ、おにーさん」

男「たまにはラッキースケベで鼻血を出したいよ。ていうかそういう事態に陥ったなら、鼻血が出るのではなく海綿体に血液が集まるよな」

女「なっ、何言ってんのよアンタは!」ギュー

男「ほほほひっはふは(頬を引っ張るな)」

幽霊「かいめんたい、って何ですか、おにーさん?」

男「おおぅ。なんとイノセントな瞳で問いかけるのだ、この娘は。よし、汚そう! 海綿体とは、ち」

幽霊「ち?」キラキラ

男「ち、ち……ぐ、くそぅ、負けるな! 汚すんだ、俺はこの娘を汚すんだあ! い、言うぞ! 海綿体とは、ち、ち……」

幽霊「ち?」キラキラ

男「視線に物理的な力があろうとは予想だにしなかったよ……。俺の負けだ、完敗だ。女、メルヒェンに説明してあげてくれ……」

女「おちんちんのことよ」

男「てめえ! 何教えてやがる! てめえ!」

女「早めの性教育よ」

男「メルヒェンにと言っただろ! なんということを……! 俺が親なら今頃泣いてるね!」

幽霊「なるほど、おちんちんですね! おちんちんさん、こんにちは」ニッコリ

男「人の下腹部に挨拶しないでください!」

女「あははははっ!」

女「あー面白かった。さて、それじゃ買うもの買って帰りましょうか?」

幽霊「そですね。じゃあ行きましょうおねーさん、おちんちんさん」

男「その呼称やめてくれないと泣きますよ?」

女「あははっ。ほら幽霊ちゃん、コイツいじめるのも楽しいけど、いい加減にしないと材料が売り切れちゃうわよ?」

幽霊「あっ、それは大問題です! 急ぎひき肉と卵を買うのです!」フヨフヨ

女「あっ、行っちゃった。あの子、物掴めないのに……」

男「どうせ戻ってくるよ。つーかお前、あんなちっさい子に変なこと教えるねい」

女「あら、妙なところでまともなのね。アンタのことだから喜ぶと思ったのに」

男「いや、まあなんというか、嬉しいは嬉しいんだけど、どう扱えばいいのか。実際に見せて反応をうかがってもいいかなあ?」

女「私がなんのために泊まりに来たか忘れたようね。幽霊ちゃんをアンタから守るために来たのよ?」

男「なるほど。じゃあ保護者責任でお前も幽霊と一緒に見てください」

女「なっ……だっ、誰がアンタの粗末なものを見るってのよ!///」

男「貴様、俺の秘密どこで知った!?」

女「うっさい!」

幽霊「物に触れないことを忘れてました……あ、またおにーさんがほっぺを引っ張られてます」フヨフヨ

今日はここまで。

男「さて、その後も少しトラブルがあって殴られたり蹴られたりしたものの、どうにか目的の品を手に入れ、現在我が家にいるわけなんですが、どうでしょう」

女「きったないわねー。アンタ一人だけならまだしも、幽霊ちゃんもいるんだからちょっとは掃除しなさいよ」

幽霊「私は幽霊なので、これくらい汚いほうがおどろおどろしい雰囲気が出てよいかと思われます。ひゅーどろどろ」

男「ああ怖い怖い。しかし、おっぱいを俺に押し付けてひゅーどろどろ言われるのが一番怖いんだ」

幽霊「よいことを聞きました」

女「嘘よ」

幽霊「また騙されそうになりました……。でも、灰色の脳細胞がおにーさんの言葉を嘘と見抜きました。私は頭がいいです」

男「いや、前にも似たような嘘を言ったのに、少しでも信じた時点でとんでもなく馬鹿だよ」

幽霊「おにーさんがまたまた私をいじめます。ひんひん」

女「ああよしよし。男は……もう、幽霊ちゃんをいじめるな!」

男「あまり大きな声を出さないで。怖くて泣きそうだ」

幽霊「怖い!? 私の出番です! ひゅーどろどろ!」

男「だから、そんな元気いっぱい言われても怖くないです」

幽霊「ままなりません……」ションボリ

女「じゃ、夕飯作っちゃうわね」

男「何か手伝おうか?」

幽霊「あ、私も手伝います」

女「じゃーお願い。何ができる?」

男「後ろでにぎやかし」

幽霊「応援ならお任せです」

女「……テレビでも見てて」

男「夕方のテレビなんて見ても仕方ないしなあ。よし幽霊、イチャイチャしよう」

幽霊「嫌です」

男「先っぽ! 先っぽだけだから!」

幽霊「何がですか?」

女「私の前でよくもまあそんなどぎついセクハラできるわね?」チャキッ

男「ok俺が悪かった、だからその手に持ってる鈍く光る刃物を本来の使い方以外で使わないでください」

幽霊「今日もおにーさんの土下座が光ってます」

男「ふぅ。俺の冴え渡る妙技でどうにか危機を脱したぞ。すごかろう。惚れてもいいよ」

幽霊「無理です」

男「そりゃそうだ」

女「ねー男、することないんだったらお風呂でも洗っててー」

男「くそぅ、俺が、この俺が女に言われるがまま顎で使われていいのか!? 否、よくない! 今こそ俺たち立場の弱い男衆で団結し、立場逆転を! 古き良き亭主関白を」

幽霊「おにーさん、おにーさん。一緒にお風呂洗いましょうか?」クイクイ

男「あ、それは楽しそうだ。やるやるー」

女「……ま、まあ、大丈夫よね。たぶん」

──風呂場──

男「風呂だ!」ババーン

幽霊「お風呂です!」ババーン

男「いや、やはり風呂はいいな。わけもなく仁王立ちしたくなる」

幽霊「狭いです」

男「アパートの風呂だからなあ。それもやむなしかと」

幽霊「こんな狭いと、一緒に入ると肌と肌が触れ合っちゃいますね?」

男「なんと。今の発言で俺の興奮度はうなぎ登り、既に暴発しそうです」

幽霊「どして前かがみになってるんですか、おにーさん?」

男「男には、色々あるのさ……」

幽霊「おちんちんさんが元気いっぱいなんですね?」

男「折角アンニュイな感じで言ったのに。笑顔でそういうこと言われると、なんか泣きそうだよ」

幽霊「じゃ、お風呂洗っちゃいましょうか、おにーさん」

男「はい。しかし、お前は物を掴めないから何も手伝えないんじゃないか?」

幽霊「むぅ。じゃあ、応援します。ふれー、ふれー、おにーさん」

男「手を振って応援してくれるのはありがたいが、風呂場は狭いのでその手がものすごく俺に当たり、結構痛い」

幽霊「痛いのはおにーさんだけじゃないです。当てる私も痛いのです!」

男「なんでどっかで聞いたことがあるようないい台詞を言うの? そして幽霊も痛覚があるの?」

幽霊「かっこいいからです。痛覚はあります。たぶん」

男「どれどれ」ムニュー

幽霊「いひゃいでひゅ、おにーしゃん」

男「可愛い」ナデナデ

幽霊「はぅぅ」

男「さて、幽霊とイチャイチャできて満足したので、洗いますかね」

幽霊「知らずイチャイチャされました。許しがたいです。あとで怖がらせたり呪ったりします」

男「久々に幽霊の趣味が出た」

幽霊「隙あらばいじめます。おにーさんはひどいです」

男「まあそう言うなよ。幽霊とコミュニケーションをとれる者の特権だ」ゴシゴシ

幽霊「……まあ、世には私みたいな幽霊を認識できない人間の方が多いですからね。……あの、おにーさん」

男「ん?」ゴシゴシ

幽霊「ありがとございます」ペコリン

男「どういたしまして」ペコリン ガッ

幽霊「どしておにーさんは何のありがとうか分からないのにお辞儀を返すのですか?」

男「頭下げた時に風呂の縁に頭ぶつけて痛い」

幽霊「よしよし。痛いの痛いの飛んでけー」ナデナデ

男「でへへぇ」ニヤニヤ

幽霊「この程度だろう、という想像をはるかに上回るほど気持ち悪いです。おにーさんの地力にはほとほと驚かされます」ションボリ

男「ちくしょう」

幽霊「それで、おにーさん。さっきのありがとうですが、私のことを嫌わないでありがとう、と言いたかったのです」

男「…………」

幽霊「なんだかんだ言って、私は幽霊です。人に嫌われて当然みたいな存在なのに、おにーさんは私を普通に受け入れてくれて。それが、嬉しかったのです」

幽霊「そのありがとう、なのです。だからおにーさん、改めて言います。ありがとうございます」

男「気にするな。代わりにおっぱいを触らせてください」

幽霊「失望の数が多すぎます……」ションボリ

男「い、いや、ここは思い切って、も、も、も、もんだりしますよ!? ほ、ほら、今はなんかつけこめる雰囲気っぽいし!」

幽霊「おねーさんを呼んできましょう」フヨフヨ

男「い、一回……いや、二回。……否! やはり、三回、もしくはそれ以上、揉むね! 俺は!」

女「あんなに小さい子の胸を?」

男「おや、件の胸と似たような人。こんにちは」

男「未遂なのに殴られるのは納得がいきません」ハナヂ

女「馬鹿ねー、もし実際に触ってたらそんなのじゃ済まないわよ」

幽霊「ぷぷぷぷぷ」ヒョコッ

男「あっ、幽霊! 貴様、いつの間に忍法入れ替わりの術でニントモカントモ拙者忍者でゴザルよニンニンを使えるようになりやがった!」

幽霊「無駄に名前が長いです」

女「男がいやらしいことをしてきます、って私を呼んだのよ」

男「……ああ! そりゃ仕方ないさ! 風呂場だもの、いやらしいことのひとつもしたくなるさ!」

幽霊「ひどい開き直りっぷりです」

女「まだ殴り足りないのかしら?」バキボキ

男「ひぃ、女が自分の全身の骨という骨を粉砕しながらゆっくり近寄ってくる!」

女「してないわよ! 指の骨を鳴らしたの! 変なこと言うな!」

幽霊「おねーさん、おねーさん。骨をペキポキ鳴らすのは、あまり身体によくないらしいですよ?」

女「あら、そうなの?」

男「まあ幽霊はもう死んでるから関係ないけどな」

幽霊「それもそうです。折角だし、鳴らしてみましょう」グイグイ

男「どした?」

幽霊「……ちっとも鳴りません。ペキポキのペくらい出てもいいものです」ションボリ

男「ションボリする幽霊は可愛いなあ」ナデナデ

幽霊「……///」

女「…………」イライラ ギュー

男「俺の頬をつねる理由を述べよ」

女「うっさい!」

今日はここまで。

男「何やら頬がヒリヒリするが、それでも風呂を掃除しなければならないとは。こんな重体の人間を働かせるだなんて、この世に神はいないのか」

幽霊「幽霊ならいますよ?」フヨフヨ

男「本当だ。可愛い」ナデナデ

幽霊「はうう」

女「…………」ジーッ

男「あ、あの、女さん。手を出さないのは大変に嬉しいのですが、その、ゴルゴーンもかくやと思えるほどの視線の圧はどうにかなりませんかね。このままでは石化する」

女「…………」ジィーッ

男「ええと、その、いかん、とうとう身体が石に」

幽霊「見た目は一緒です」ベシベシ

男「痛い痛い。顔を叩かないで」

幽霊「石の強さを過信しました」

女「……はぁ。さて、それじゃ私は料理の続きをしてくるわね」

男「ん、あ、ああ。ふぅ、ようやっと出ていってくれたか。ああ緊張した」

女「超目の前にいるわよッ!」

男「しまった、気を抜くのが少し早かった。でも誤差の範囲だし、いいよね?」

女「よくないッ! なによ、そんなに私が嫌いなの!?」

男「いやいや、まさか。大好きですよ?」

女「んな……ッ!?///」

幽霊「これが噂の告白シーンですか」

男「あ、いかん、何か勘違いさせた模様。か、勘違いしないでよね、勘違いなんだからねっ!」

女「ドやかましいッ!」

幽霊「ややこしいです、おにーさん」

男「時々ツンデレ語を使いたくなるんだ」

女「そ、そんなことより、ど、どーゆーことなのよ! そ、その、……だ、大好き、って///」

男「大好きです」

幽霊「告白されました」

女「なんで私に告白した次の瞬間に幽霊ちゃんに告白してるかッ!」ギューッ

男「ぐええ」

幽霊「またおにーさんが首を絞められてます。見慣れた光景で、ちょっと飽き飽きです」

男「ところが俺は毎度毎度死に瀕しているのでちっとも飽きない。幽霊もされてみてはどうだ? 立場が違えば見える景色もまた変わってくるだろうよ」

幽霊「私はもう死んでるので死に瀕してません」

男「然り然り! がはははは!」

女「殺されかけてんだからちょっとは苦しめッ!」ギューッ

男「ぐええ」

幽霊「おにーさんは律儀です」


男「さて、例によって臨死体験から奇跡の生還を果たしたので、さっきの大好きの説明をします」

女「は、早くしなさいよ! 全然キョーミないけど!」

男「じゃあしない」

女「…………」ギューッ

男「ひはひ」

幽霊「おにーさんのほっぺは大体いつも伸びてます」

女「とっとと喋れ!」

男「拷問?」

女「そうよッ!」

男「なんと。でも石も何も抱いてないよ? それどころかこんな狭い風呂場に女の子が二人も揃っていて、まるで何かのご褒美のようだけどいいんだろうか」

女「いい加減にしないと髄液が出るまで殴る」

男「ちょっと涙出るくらい怖かったので真面目に説明します」

幽霊「よしよし。怖くないですよー? 怖いのは私ですよー?」ナデナデ

男「わぁい」

女「…………」

男「ち、違うんです! ファービーか俺かというくらいなでられちゃうと簡単に喜ぶんです! あと幽霊は怖くない」

幽霊「さりげなくけなされました……」

女「いいから。説明。早く」

男「は、はい。ええとですね、さっきの大好きというのは、異性としての感情ではなく、友人としての大好きでして、でも見た目は花丸をあげたいくらいの出来ですし、それに性格も実はそんな嫌いじゃないし、どうしよう」ナデナデ

女「説明が混乱してるッ!」

男「その頭の端からにょろーっと昆布みたいなのが垂れてる髪形が俺はもう好きで好きで」ナデナデ

女「好きに対する批評内容じゃないわよ! ツインテールっていうの!」

男「これはこれはご丁寧に。男と申します」ペコリン

女「私の名前がツインテールじゃないッ!」

幽霊「私は幽霊っていいます」ペコリン

男「お、よい自己紹介だ」ナデナデ

幽霊「えへへへー」ニコニコ

男「こんな小さな幽霊が自己紹介できたのに、おっきな女は自己紹介できないのかなー?」

女「何この鬱陶しい流れ。ああもう分かったわよ。私は女。これでいい?」

男「ちなみにおっきなと言ったが、この大きなは年齢だけにかかっており、身長や胸にはかかっていないのでご注意ください。身長はともかく、胸は幽霊とほぼ差がないですから」

女「わざわざのご説明痛み入るわねッ!」ギリギリ

男「ぎええええっ」

幽霊「今は亡きフリッツ・フォン・エリックが蘇ったかのような技の冴えです」

今日はここまで。

男「というわけで説明したが、どうでしょうか。あとやけにこめかみが痛い」

女「結局よく分からなかったわよ。……ま、まあ、その。この髪形を褒めてくれたのは嬉しいケドさ///」

幽霊「私も昆布を垂らすべきでしょうか」

女「幽霊ちゃんまで!? 違うって言ってるでしょッ!」

幽霊「ふああっ!? お、おにーさーん!」フヨフヨ

男「よっしゃ慰めると称して幽霊の身体まさぐりタイム来た! 来い、幽霊!」ニマニマ

幽霊「ううううう……おねーさーん!」ダキッ

女「私が怒鳴ったのに……まあしょうがないわよね。ごめんね、幽霊ちゃん」ナデナデ

幽霊「はうー」

男「おっぱいホールドの構えが無駄になった」

女「アンタそのうち捕まるわよ」

男「自分でも薄々そんな気はしていたんだ。早めに権力を掌握しないとなあ」

女「今のうちにコイツを消しておいたほうが世のためのような気がするわ」

幽霊「おにーさんが仲間になりたそうにこちらを見ている」

男「まだ死にたくないです」

幽霊「おにーさんが私と友だちになるのを嫌がります……」ションボリ

女「あらあら、可哀想に。男もそれくらい受け入れる度量があるといいのにねー?」

男「うぅむ……よしわかった、女神転生のアリスでもしんでくれる? の問に神速ではいと答えた俺だ、幽霊の仲間になってやる!」

幽霊「わーいわーい!」

女「ちょ、ちょっと! 何言ってるのよ!」

男「でも死ぬのは怖いので幽霊を生き返らせる方向で」

女「あ、そ、そうよね。……焦らせるな、ばか」ギュー

男「痛い」

幽霊「生き返りたいところですが、もう肉体ないです」

男「この幽霊使えねえなあ」

幽霊「久しぶりにいじめられた気がします。なんだか少し嬉しいです」

男「この幽霊は歪んだ性癖を持ってて一寸怖いなあ」

幽霊「あっ、怖がられました! ひゅーどろどろ!」

男「はいはい怖い怖い」ナデナデ

幽霊「えへへへへー♪」ニコニコ

女「…………」ジーッ

男「さ、さぁて。遊ぶのもいいが、そろそろ掃除を再開しないとな」

幽霊「何を焦ってるんですか、おにーさん?」

男「あ、焦ってなんていないよ? 決してさっきと同じ轍を踏むまいとしているのではないよ?」

女「……ひ」

男「すいません今すぐ掃除しますので髄液だけはどうか!」

女「……ひゅーどろどろ///」

男「…………」

女「ひ、ひゅーどろどろ」

男「……え?」

女「ひ、ひゅーどろどろ!」

男「……え、えーと」

女「……だーっ! ナシッ! 今のナシッ! 全部忘れろ馬鹿ッ!///」ドダダダダッ

男「なんか幻覚と幻聴が」

幽霊「恐るべきことに現実です」

男「……そうか」

幽霊「……はい」

男「……女も逃げちゃったし、掃除しちゃおうか?」

幽霊「……そですね」


男「ふぅ……。終わった」

幽霊「お疲れ様です、おにーさん」

男「ん。じゃ戻ろっか?」

幽霊「はい」


女「あ、お、終わったのね。お、お疲れ様」

男「ひゅーどろどろ」

女「忘れろって言ったでしょうがッ!!!」

男「ひぃ」

幽霊「お、鬼もかくやと思えるほどの怖さです! 思わず弟子入りしたくなります!」ブルブル

男「待て、コイツの恐怖と幽霊の目指す恐怖のベクトルは明らかに違うぞ。こいつの撒き散らす恐怖は物理的なもので、幽霊が目指すのは精神的な恐怖だろ?」

幽霊「あ、そでした。おにーさんの指摘には小生感服です」

男「一人称がおかしいが、分かってくれて何よりだ」ナデナデ

幽霊「えへへー」

男「で、女」クルッ

女「……な、なによ。まだ馬鹿にする気!?」

男「さっきのひゅーどろどろは怖かったです」ナデナデ

女「あ……」

幽霊「?」

女「……い、今更なによ。そ、そんなことされても、別に……」

男「ああ怖い怖い女のひゅーどろどろの怖いこと山のごとしだ」ナデナデ

女「……うー///」

幽霊「……ああ! おねーさんも頭なでられたかったんですね!」

女「なっ、ちがっ///!?」

幽霊「うんうん、分かります分かります。おにーさんは人格破綻者ですが、なでられると途方もなく嬉しくなりますもんね?」

女「ち、違うわよっ! 誰がこんな奴に!///」

男「屈託のない笑みで人格破綻者って言われた。もうダメだ」ガックシ

幽霊「落ち込む姿がとてもよく似合ってます」

女「どんだけ打たれ弱いのよ。……で」

男「de?」

女「……な、なでなでは、終わりなの?///」

男「」

幽霊「ほほう。これが目が点になる、という現象ですね」

今日はここまで。

男「……はっ! なんだ夢か」

幽霊「しょうゆおいしいです」

女「……お、終わりなら、別にそれでいいケド。幽霊ちゃんばっかひいきしてるなんて思ってないし」ナミダメ

男「い、いかん、身体が勝手に女の頭を」ナデナデ

女「……か、勝手になら仕方ないわよね」ニマニマ

幽霊「いい加減お腹空きました。いつまでこの茶番を見てればいいんでしょうか」

男「知らない間に幽霊も口が悪くなってしまったなあ。お父さん悲しいよ」

幽霊「おにーさんはおとーさんでしたか」

男「初耳だ」

幽霊「相変わらず破綻した思考です」

女「…………」クイクイ

男「ん、ああ」ナデナデ

女「んへへー♪」ニマニマ

幽霊「うーんキモイです」

女「ええっ!?」

男「しっ、黙っててやれ」

女「アンタまで!? ううっ……もういいわよ!」

男「あっ、嘘ウソ冗談です。ぐひひひ、もっと俺をなでさせろー」

幽霊「妖怪なで男が出現しました。この妖怪は夜な夜な街を徘徊しては周囲の人間をなでるのですが、よく痴漢に間違えられて留置所に入れられるので現在の留置所は乗車率150%です」

女「何その嘘解説」

男「留置所に乗車率とは言わないだろ」

幽霊「ふたりがかりで責められて泣きそうです」ナミダメ

男「ああこれは申し訳ない。昨今の留置所は未来型だからしゅっぽしゅっぽと走るので乗車率で合ってるに違いないよ」ナデナデ

幽霊「なでなでげっと。しめしめ」

女「……あ、アンタは妖怪なで男なんだから、私もなでたいでしょ!? 特別になでさせてあげるわよ!」

男「妖怪とかこの現代社会に馬鹿じゃねえの」

女「むきーっ!!!」

幽霊「まったくです」

女「幽霊ちゃんが言うなっ! 幽霊ちゃんも妖怪の一種でしょ!」

幽霊「……幽霊も妖怪なのですか?」

男「たゆらとなどかに脳を吸い取られちゃったのか、全く分からない。1+1ってみかんだっけ?」

幽霊「そうです」

男「算数と国語が融和するとは思わなかったよ。流石は幽霊」ナデナデ

幽霊「しめしめ」

女「いーから私も混ぜろッ!」

男「は、はい。……べ、別に殴られるのが怖いからなでるんじゃないんだからねっ!」ナデナデ

幽霊「そのツンデレ語はただの負け惜しみにしか聞こえません」

男「しまった」

女「そんなのどーでもいいから、もっと誠心誠意なでろ、ばか」

男「あ、いかん。なんか顔とかべろんべろんに舐めたくなった。いい?」

女「いくないっ!」

幽霊「おにーさんは頭おかしいですね」

男「どさくさに紛れてハーレムの時間が終わってしまった。後悔が凄まじい。もっとなでたかった」

女「アンタが余計なこと言わなけりゃ、そ、その……もうちょっとアレしてもよかったんだけどさ。……も、もーちょっと考えなさいよね!」

男「分かった、ゴム買ってくる」

女「~~~~~!」ドゲシッ

幽霊「真っ赤になりながらの全力拳です」

男「何か考える方向性を誤った様子」ハナヂ

幽霊「どして輪ゴムを買うだけで怒られるんですか?」

男「ああ。輪ゴムじゃなくて、ゴムってのはコ」

女「説明するなっ! いーから机の上片付けろっ! ご飯よ!」

男「この嫁は暴力的に過ぎる」

女「だっ、誰が嫁よ、誰が!///」ポカポカ

男「あいたた」

幽霊「急に攻撃の威力が弱まりました。作為的なものを感じます」

女「幽霊ちゃんはハンバーグいらないのね」

幽霊「おにーさんがいらないって言ってました」

男「知らない間に俺はそんなことを言っていたのか。二重人格に違いない。封印された右腕がうずくとか言わなきゃいけないの?」

幽霊「それ邪気眼です」

男「邪王炎殺黒龍波!」ナデナデ

女「ひゃっ! ……も、もう///」

男「なんかいい感じにまとまった。ありがとう邪気眼」ナデナデ

女「……ご、ご飯だから。なでるのは後でね?」

幽霊「それはいいことを聞きました。この後はおにーさんのエンドレスなで時間なのですね?」

男「エンドレス!?」

女「……はーい、ハンバーグの登場よ。二人とも食べちゃって。自信作なんだから!」

幽霊「わーい!」

男「あの、お二方。なでるのはまるで異論はないのですが、エンドレスという単語に一抹の不安を感じるのですが」

幽霊「じゅーじゅーと良い音をたてています。でみぐらるそーすがいいにおいです。よられが出そうです」ダラダラ

男「出てる出てる。そしてどういうわけか幽霊が俺の真上に浮かんでるせいで、その涎が全部俺に」

幽霊「うわ、汚いです」

男「なんて言い草だ。チクショウ、全部舐めとってやる!」レロレロ

幽霊「ふわああん!」

女「妖怪かッ!」ドゲシッ

男「顔についた涎を舐めとっただけなのに、殴られるわ泣かれるわ散々だ」ハナヂ

幽霊「うわーん、おねーさーん!」ダキッ

女「はいよしよし。本当、酷い奴よねー、男って」ナデナデ

男「なんかうっすら甘かったような」

幽霊「ふわああああん!!」

女「男ッ!」

男「感想も許されぬとは」

今日はここまで。

男「泣かれたり殴られたりしたものの、どうにか落ち着いた様子」

幽霊「ぐすぐす……」

女「次また幽霊ちゃんにセクハラしたら殺すからね」

男「セクハラなどしてない。垂らされた涎を舐めとっただけだ」

女「それがセクハラだって言ってるのよ! 普通に拭けッ!」

男「次があればそうする。でも次したら殺されるって言う話だし、どうすればいいの」

女「知らないわよ。ほら、二人とも手合わせて。はい、いただきます」

幽霊「いただきまーす」

男「遠い夢が見えなくなったよ 呟いて空を見上げたら」

幽霊「もぐもぐ……おいしーです! おねーさんは料理の天才です!」

女「い、言い過ぎよぉ。悪い気はしないけどね」

男「流れる星の向こう側に 君との約束がまぶしくうつる」

女「そこの馬鹿、歌ってないで食え」

男「今からサビなのに」

女「ああ?」

男「すいません殺さないでください。いただきます」モグモグ

女「ったく。……で、ど、どう?」

男「おいしい」モグモグ

女「……そ、そっか。ま、まあ、私が作ったんだからトーゼンだけどね!」

男「おいしい」モグモグ

女「……えへへー♪」ニコニコ

幽霊「もぐもぐもぐ。おかわりください」


男「げぶはー。こんなうまい飯食ったの久しぶりだ。余は満足じゃ」ポンポン

幽霊「よはまんぞくじゃー」ポンポン

女「ほら二人とも、食べてすぐ横になると牛になるわよ」

男「それは大変にいけない。なぜなら牛とは即ち巨乳であり、幽霊や女がそんなのになったら世を儚んで死ぬ人が多発するから。俺とか」

女「幽霊ちゃん、一緒に横になりましょ」

幽霊「巨乳化作戦開始です」

男「分かった、大人しく死ぬからどうか横にならないでください」ドゲザ

幽霊「まだ出会って時間そんなに経ってないけど、おにーさんはどうしようもないですね」

女「そうなのよ。ほら早く顔あげろ馬鹿」

男「いや、冗談なのはわかってたけど、わずかでも巨乳になる可能性がそこにあるなら、命を賭けるに十分すぎる理由なので」

幽霊「無駄にかっこよくて困ります」

女「見た目は全然かっこよくはないけどね。何この十人並みな顔」

男「失敬な。じゃあ腹ごなしというわけじゃないけど、お風呂入ってくるよ」

幽霊「あ、私も入ります」

男「やったあ!!!!」

女「なっ、ちょ、ダメに決まってるでしょ!」

幽霊「どしてですか?」

女「ど、どうしてって……女の子が男と一緒にお風呂なんて、ダメに決まってるでしょ!」

男「大丈夫、ちょっと構えがおっぱいホールドのまま固定されるだろうが、何もしないよ」

女「お前ちょっと黙ってろ」

男「だまえよっとまとってろ? 何言ってんだお前」

女「だ・ま・れ」ギュー

男「ぐえええ」

幽霊「いつもの光景です。じゃ、私は先にお風呂で待ってますね」

女「だから、ダメだってば! こんなのと一緒に入ったら妊娠しちゃうわよ!」

男「任せろ!」

女「否定しろッ!」

幽霊「私は幽霊なので妊娠とか無理です」

男「じゃあ生でし放題なのか! やったあ!」

女「うわ……」

男「あ、すいません冗談です。悪質な冗談です。引かないでください」ドゲザ

女「謝るくらいなら最初から言わなきゃいいのに。まあコイツのことだから、どうせいざとなったら腰が引けるだろうケド」

男「そうそう、俺=チキンという式が成り立つくらい根性ナシなんだ。だから、一緒にお風呂に入っても全く問題ないよ?」

幽霊「なるほど」

女「納得しないの! だから、ダメに決まってるでしょ! こいつは妖怪いやらしなんだから!」

男「また妖怪にされた」

幽霊「しかし、見た感じ私の身体は10歳くらいのようです。そんな身体に妖怪いやらしとはいえ、果たして欲情するでしょうか?」

男「します。ああいや違う、しないしませんするもんか!」

女「語るに落ちてるわよ」

幽霊「じゃあおねーさん、一緒に入りましょう」

女「あ、それはいいわね」

男「三人一緒かあ。入れるかなあ? ま、詰めれば大丈夫か」

女「私達がお風呂に入ってる間、ちょっとでも浴室に近寄ったら目抉るからね」

男「……え? あれ、三人一緒でえろえろシーンじゃないの? くンずほぐれつじゃないの?」

幽霊「洗いっこしましょう、おねーさん」

女「はいはい。じゃあ私達はお風呂入ってくるから、アンタは洗い物しててね」

男「あ、はい。……え? あれ?」

男「くそぅ。くそぅ。どうして俺が洗い物をしなくちゃいけないんだ。俺もごしごしもみもみいやんいやーんの世界にいきたいのに!」ゴシゴシ

男「仕方ない、このスポンジを幽霊、この皿を女に見立て、ここに擬似風呂場を形成しよう。皿も女の胸もまっ平らだから見立てやすいな。わはは」カチャカチャ

男「『さあさあ幽霊ちゃん、大人しく胸を揉ませなさい!』『お、おねーさん、突然どうしたんですか!?』『男から守るって言って来たけど、本当は幽霊ちゃんを襲いたくて来たのよ! だからほら!』」キュッキュ

男「『だ、誰か助けてください、誰か! お……おにーさーげぶっ」

女「……何をやってるのよ」

男「言いつけ通り皿洗いを。あと、いきなり殴らないでください」

女「うっさい! 風呂場まで響く声をあげながらやるな! うるさいし近所迷惑だし私達の物真似が旨すぎるッ! なによその隠れた特技!?」

男「『そんな怒らないでください、おねーさん』」

女「ドやかましいッ! いい? もうその小劇場するんじゃないわよ!」

男「はい。あと、バスタオルを身体に巻いているようですが、もう少し結び目を甘くしないと、解けていやーん的なラッキースケベイベントは起きませんよ?」

女「格言にある通り、一度死なないと馬鹿なの治らないの?」

男「どうやらそのようで」

女「……はぁ。とにかく、余計なことしないでよね」

男「任せろ、得意だ」

女「…………」

男「気のせいか、まるで信用されてないような」

幽霊「おねーさん、まだですかー?」フヨフヨ

女「ちょ、幽霊ちゃん!?」

男「神よ!!!!!」

幽霊「? 幽霊ですよ? ひゅーどろどろ」

女「ふっ、服! 服着なさい! なんで裸で浮かんでるのよ!」

幽霊「お風呂の途中なので」

男「…………」ジーッ!

女「見るなッ!」ドゲシッ

男「見てません!」ジーッ!

女「せめて幽霊ちゃんから目を逸らして言え! なんで殴り倒されてまで見続けてるか!」ドゲシゲシ

男「すいません! すいません!」ジーッ!

女「はぁはぁ……あ」ハラリ

男「よし、続けざまに女のラッキースケベイベントもget! コンシューマー版では髪がうまい具合にここそこを隠す予定ですが、今回の現実版では全部見られます」ジーッ!

女「み、み、み、見るな、変態ッ!///」ドゲシッ

男「ありがとうございます!」

幽霊「はぷしゅっ」

今日はここまで。

男「女に踏まれたり幽霊に鼻水をつけられたりしたが、二人の裸を見れたのでトータルとしては大成功と言っていいだろう」カチャカチャ

幽霊「はふー。あがりましたよ、おにーさん」フヨフヨ

男「お、幽霊。先ほどは素晴らしいものをありがとうございました」ペコリン

幽霊「いえいえ、どいたまして。もしよかったら、もっとくしゃみをしましょうか?」ペコリン

男「それに感謝したのではない」

幽霊「裸の方でしたか。おにーさんはえっちです」

男「そうですそうです。で、女の機嫌はどう? まだ怒ってる?」

幽霊「顔を赤くしたまま、ずーっと黙ってました」

男「よく分からないが、生命の危険を感じる程度にはヤバそうだな。ヤクいぜ!」

幽霊「やくいぜー」

女「…………」

男「そして今、ゆっくりと湯上がりの女が登場! 素早くdogezaへトランスフォーム!」

女「……お、お風呂。空いたから」

男「あ、はい。……ええと。怒ってないの?」

女「……じ、事故だから。事故だからあんまり繰り返し怒ってもしょうがないし」

男「でも、俺は繰り返し思い出すよ?」

女「……の、脳内は犯罪じゃないから別にいい。あっ、でも幽霊ちゃんの裸は忘れなさいよ! あれは明らかに犯罪だから!」

男「つまり、お前の裸を思い出す分には構わない、と」

女「……そ、そゆコト///」

男「痴女」

女「がーっ!!!」

幽霊「痴女が変態に襲いかかってます」


男「妖怪か何かにかじられたのか頭がヤケにズキズキするが、風呂入ったら治った」

女「妖怪じゃないわよ!」

幽霊「おふとん、おふとん」ゴロゴロ

女「こら幽霊ちゃん、転がらないの。布団一つしか敷けないくらい狭いんだから、危ないでしょ?」

男「おふとん」ゴロゴロ

女「アンタまでするな」ムギュッ

男「ぐえっ」

幽霊「おにーさんの顔がおねーさんに踏み潰されています。さながら不動明王です」

女「ったく……それで、私たちはここで寝るけど、アンタはどこで寝るの?」

男「一緒に寝ます」

女「ああ?」

男「いえすいません俺なんて便所に篭ってます」

幽霊「ますます妖怪じみてます」

女「冗談はいいから。どこで寝るの?」

男「んー。そこらの漫喫に泊まるよ」

女「ちょっと! そんなのダメに決まってるでしょ!」

男「や、流石に嫁入り前の女性と一緒に寝るのは気が引けますし。我が家に他に寝る場所ないですし。一日くらい大丈夫ですよ」

女「……はぁ。ちょっと幽霊ちゃん、こっち来て」

幽霊「ナイショ話ですね」

男「何やら女と幽霊でごにょごにょと話している。羨ましいことこの上ねぇ。俺も混じりてえ」

幽霊「けっかはっぴょー」

女「き、協議の結果、今日だけはアンタも一緒に寝てもいいことになったわよ」

男「えっ」

女「だ、だからあ! い、一緒に寝ていいの! 布団一つしかないからしょーがないでしょ!?///」

男「え、いや、しかし」

幽霊「おにーさんは、いやらしいことしますか?」

男「はい! ……いや、何もしませんよ?」

女「やっぱやめようかなあ」

男「あー、うん、その方がいいと思いますよ?」

女「だーっ、もうっ! 手を出さないなら一緒に寝ていいって言ってるんだから、素直に寝るって言いなさいよ!」

男「痴女」

幽霊「ちじょ」

女「がーっ!!!」

男「なんで俺だけぼっこぼこにされたか未だ理解が及ばないが、手を出さないので一緒に寝させてください」ドゲザ

女「はーっ、はーっ……最初っからそう言やいいのよ」

幽霊「おしっこちびりそうなくらい怖いです」ブルブル

男「笹食ってる場合じゃねえ!」

女「おしっこに反応するなッ! ほら、幽霊ちゃんを真ん中に挟んで寝るわよ」

男「挟む、という単語に思わず二人のおっぱいを見てため息をついてしまったが、言うと怒られそうだから黙っていよう」

女「全部言ってるわよッ!」

幽霊「挟む、とおっぱいの間にどんな関係が?」

男「ああ。それはね、パ」

女「説明するなッ!」ドゲシッ

男「子供の知的好奇心を押さえ付けたくなかったがために起こった事件と言えよう」ハナヂ

女「はぁはぁ……ほら、寝た寝た!」

幽霊「じゃあ、私が真ん中です。いっとーしょー」

男「なんで寝る前にこんな疲れなくちゃいけないんだ」

女「アンタのせいじゃないの! ほら、電気消すわよ」パチ

男「よし、真っ暗だ。これなら身体に触っても誰が触ったか分かるまい。しめしめ」

女「この状況で触るのなんてアンタしかいないから、もし触られたら問答無用でアンタを殴るわよ」

男「冤罪発生率が100を超えました。助けて」

女「あら、誰か私の身体に触ったような気がするわねー。じゃ、殴るわね?」

男「酷すぎる! まだ何もしてねえのに! くそぅ、こうなったら破れかぶれだ、そのうすぺたい乳を触ってやる!」

女「うすぺたいとか言うなッ!」

幽霊「うふふふ」

男「ほら見ろ、幽霊だってpgrするほどお前の乳は薄いのだ」

幽霊「うふふ、違います。なんだか、とってもとっても楽しいです。……夢みたいです」

幽霊「みんなと一緒に学校に行って、おにーさんとおねーさんとお買い物して、一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、一緒に寝て。……まるで、家族みたいです」

女「幽霊ちゃん……」

男「ふむ。さしずめ幽霊は俺らの子供か」

女「なっ、ちょっ、何言ってるのよ!///」

幽霊「あはは。……生まれ変わったら、また、おにーさんとおねーさんと一緒に……」

女「えっ……」

男(幽霊が、消えた)

女「ちょ、ちょっと。幽霊ちゃん、どこ行っちゃったの? ちょっと、脅かさないでよ」

男(まさか)

女「あ、あれ? どこ? 押入れ? もー、夜も遅いんだからかくれんぼは明日にしなさいよね」ドタドタ

男(……成仏?)

女「お、おかしいわね……ど、どこ行っちゃったのかしら」

男「……女」

女「ちょ、ちょっと、アンタも何をぼーっとしてんのよ。ほ、ほら、早く幽霊ちゃんを探さないと。あの子まだ小さいんだから、見つけてあげないと泣いちゃうわよ?」

男「もう、幽霊は……」

女「まだ!」

男「!」

女「……まだ分からないじゃない。どこか隠れてるだけかもしれないじゃない。だから、まだ言わないでよぉ……」ポロポロ

男「……分かった。俺も探すよ」

女「……ありがと。ごめん」

幽霊「私も探します」

女「ありがとね、幽霊ちゃ……ゆっ、幽霊ちゃん!?」

幽霊「二度見です」フヨフヨ

男「お前、成仏したんじゃなかったのか!? 消えたのは一体!?」

幽霊「おしっこしたくなったので、秘技、てれぽーとを使いました。短い距離なら一瞬です」

女「もう……もうっ! 心配かけないでよっ!」ギュッ

幽霊「てへぺろ」

男「はぁ……。フラグ立ってたのに見事にへし折ったなあ」

幽霊「コブラと呼んでください」

女「あははっ……はぁ。あーなんか脱力しちゃった。じゃ、寝直そっか?」

幽霊「はい。また川の字で寝ます。私が真ん中です。これだけは譲れないのです!」

男「はいはい」ナデナデ

──数年後──

男「zzz……」

女「あーもう、休みだからっていつまで寝てるのよ! もう昼よ!」

男「うああ……眠い、超眠い……。なぜならどっかの嫁が昨日寝かせてくれなかったから」

女「う、うるさいっ! アンタが毎日相手してくれないのが悪いのっ!」

???「けんかですか?」フヨフヨ

女「あっ、ち、違うのよ、幽霊ちゃん?」

幽霊「けんかしたなら愛想をつかしているはずです。おにーさん、私と結婚しましょう」

男「しません。つか、お前いつになったら成仏すんだ」

男(あれからずっと幽霊は俺に取り憑いたままだ。どういうことだ)

幽霊「おにーさんが死んだら成仏します。一緒に転生です」

男「女神転生!」ババッ

女「何そのかつおぶしみたいな動き」

幽霊「か、かっこいいです……!」キラキラ

男「かっこよかろう、かっこよかろう。わっはっは」

幽霊「思わず欲情するくらいかっこいいです」ズルズル

男「ズボンを脱がさないでください。もう出ません。ていうかお前も女と一緒に昨日したろ」

幽霊「幽霊は無尽蔵なのです」ヌガセヌガセ

男「適当なことを。あとパンツ返せ」

幽霊「おちんちんさんこんにちは。今日はちょっと元気ないですね?」

男「人の下腹部に挨拶しないで!」

女「…………」マジマジ

男「お前もじっくりと観察しないで!」

女「い、いーじゃない別に! 減るもんじゃないし! ……お、お嫁さんなんだし///」

男「うっ。……ああもう、この嫁は可愛いなあ!」ナデナデ

女「……え、えへへー♪」ニコニコ

男「ただ、いい大人だってのに未だに頭から昆布が垂れているのには閉口」

女「まだ言うかッ! ツインテールだって言ってるでしょうがッ! アンタが好きだって言うからしてるのにッ!」

男「そう怒るなよ、はるぴー」

女「女よッッッッッ!」

幽霊「ためが長いです。すずねえですか?」

女「はるぴーだのすずねえだの、何なのこの家族」

男「幸せ家族に決まってるだろ」

女「うわー……」

幽霊「正直ドン引きです」

男「決まったと思ったのになあ。ままならないなあ。……しょうがない、死ぬか!」

女「すぐに諦めるなッ!」

幽霊「わくわく」キラキラ

男「そこの幽霊さん、わくわくしないで」

幽霊「生まれ変わったら私と結婚しましょうね、おにーさん?」

女「むっ。……ま、まあ、今は私と結婚してるケドね?」ギュッ

男「突然抱きつかれて一瞬うろたえたが、いつものうすぺたい感触に平静を取り戻した。ふうやれやれ」

女「アンタ本当に私のこと好きなの!?」

男「じゃなきゃ結婚しねーだろ」ナデナデ

女「あっ……う、うう……///」

幽霊「こっちのうすぺたいのはどですか?」ギュッ

男「成長知らずでうれしちいね!」

女「アンタそのうち私に刺されるわよ」ムギュッ

幽霊「そしたら生まれ変わって一緒ですね、おにーさん」ムギュッ

女「ふん。言っとくけどね、私は生まれ変わってもまたコイツと一緒になる予定よ?」ムギュギュッ

幽霊「残念ながら予約済みです。次の次の人生では譲らなくもないです」ムギュギュッ

男「なんだか普通の人とは別の意味で死ぬのが怖いよ」サワサワ

女「おしりを触るな!」

幽霊「孕ませの合図ですか?」ワクワク

男「違います」

幽霊「がーん」


終わり

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