響「自分はネタごとに醤油つけるぞ」 (40)
春香「え? なんで?」
響「なんでって……なんで?」
春香「いやいやいや、普通かけるでしょ。全体に」
響「まあ自分も若いころはそうしてたけどね」
春香「何急に大人ぶってんの」
響「ふふん」
春香「むっ」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1428160489
ガチャッ
千早「おはよう」
春香「おはよう千早ちゃん」
響「はいさい千早」
千早「? どうしたの二人とも。何か穏やかではない空気を感じるけれど」
春香「そうなんだよ千早ちゃん。ちょっとこのはいさいがさ」
響「違うぞ千早。この赤いのが」
春香「今日は赤くないもん」
響「自分だってはいさいなんて名前じゃないもんね」
春香「フーッ!」
響「シャーッ!」
千早(なんで猫なのかしら)
千早「なるほどね。話の大筋は把握したわ」
春香「いや、大筋ってほど複雑な内容じゃないけどね」
千早「つまり春香は一昨日が誕生日だったのね。おめでとう」
春香「ああ、うんありがとう……って違うからね? しかもちゃんと当日にお祝いしてくれてたよね? 千早ちゃん」
千早「もちろんそうよ。私が春香の誕生日を忘れるわけがないでしょう」
春香「そうだよね」
千早「そうよ」
春香「うふふ」
千早「くすくす」
響「自分もいるんだけど」
春香「あっ、ごめん」
千早「では話を元に戻しましょう。先っちょだけにするか全体にぶっかけるかの問題だったわね」
響「如月ィ!」
千早「そう怒鳴らないでちょうだい、我那覇さん。ちょっと示唆的に言ってみただけよ。」
響「別に何も示唆する必要ないでしょ!」
千早「いやだってほら、直接的に言うのははばかられるというか」
響「何一つはばかる要素無いよ!」
春香「あはは。響ちゃん後ろ髪はねてるー」
響「春香も春香で無関係なとこでウケないの! ってかそれはそれで先に教えてよ! もう!」グシグシ
千早「まあそんなにこだわることでもないと思うけれど。海鮮丼の食べ方なんて」
春香「あっ。さらっと本題に戻した」
響「一度逸らす必要性皆無だったけどね」
千早「ただあえてどちらかを選ぶというのなら、私も我那覇さんと同じ意見になるわね」
春香「えっ」
響「ほら!」
春香「そ、そんな……どうしてなの、千早ちゃん……」
千早「だって、アレを一気にぶっかけるともうアレの味しかしなくなるでしょう?」
響「いやだから普通に醤油って言えよ如月」
春香「でもそこはほら、量を調整すれば……」
響「とか言いながら、調子に乗ってどばーってたくさんかけて後半後悔するタイプだろ、春香は」
春香「っ!? そ、そんなこと……」
響「誰もが一度は通る道だからな」
春香「ぐっ……わ、わかってはいるんだよ……でもあの小皿に醤油を入れて全体につーっと回しかける快感には抗えない……」
千早「まあ確かにあの瞬間は海鮮丼の醍醐味ともいえるわね」
春香「だよね!? 流石千早ちゃんわかってる!」
千早「でもそうすると結局ご飯が醤油を吸って全体的に辛くなってしまうから、私はやらないようにしているけれど」
春香「ヴぁい……」
春香「でもなー、やっぱりネタを食べるごとに一個ずつ醤油につけるっていうのはどうも手間っていうか……」
響「春香は大雑把だからな」
千早「雑よね、全体的に」
春香「二人してひどい!」
響「まあそこまで厳密にしなくても、要はつけすぎなきゃいいんだからやりようはあると思うぞ」
春香「たとえば?」
響「最初はネタにちょっとかけるくらいにして、後は足りなかったら個別につけるとか」
春香「あー」
千早「今露骨に『結局後でつけるのか、めんどくさいなあ』って顔したわね」
響「うん。したな」
春香「そ、そんなこと!」
千早「というわけで結論としては『ネタごとにつける』で落ち着いたわね」
春香「むぅ……」
響「あはは。ぶーたれてやんの」
春香「だってやっぱりめんどくさいと思うんだよね……」
千早「ただここにもう一つの問題があるわ」
春香「え、まだ何かあるの?」
響「なんだろう」
千早「わさびよ」
春香「わさび」
響「わさび」
千早「…………」
春香・響「終わり!?」
千早「えっ」
響「ああ、醤油にわさびを溶かすかどうかの問題ね」
春香「そう言ってくれなきゃわかんないよ、千早ちゃん……」
千早「ごめんなさい。言葉にしなくても伝わるかと思って」
響「そんなエスパーか何かじゃないんだから」
春香「でもこれは海鮮丼に限った話じゃないよね」
千早「そうね。普通にお寿司を食べる場合にもあてはまる問題といえるわね」
響「まあそこは人それぞれでいいんじゃない?」
春香「え、そこはこだわらないんだ」
響「うん。だって醤油は皆つけるけど、わさびはそもそもつけない人だっているでしょ」
春香「まあ確かに」
千早「ちなみに私は溶かさない派よ」
春香「そうなの?」
千早「ええ。醤油をつけた後のネタに軽く載せるわ」
春香「ふーん」
響「自分は普通に溶かすなあ。というか、溶かさないっていう発想が無かった」
春香「なるほどねぇ。ちなみにわた」
千早「春香は溶かす派でしょう」
春香「」
響「そこは争いの余地無いよね」
春香「ちょっ……な、なんでわかったの!?」
千早「なんでって……」
響「むしろわからない方がおかしいと思うぞ」
春香「えっ」
千早「海鮮丼に醤油を全ぶっかけするほどの豪胆さを持つ春香が、わざわざわさびだけ別載せにするなんて考えられないもの」
春香「そ、それもそうか……しゅん」
響「春香。そういうわかりやすいところは春香の良いところだと思うぞ」ポン
春香「ひ、響ちゃんに言われたくないよ! 単純を画に描いたような性格してるくせに!」
響「な!? いくらなんでもそれはひどいぞ!」
春香「フーッ!」
響「シャーッ!」
千早(だから何で猫?)
ガチャッ
P「なんか盛り上がってるみたいだな」
春香「あ、プロデューサーさん」
P「もう支度出来てるか?」
響「もっちろん! 自分、もう待ちきれないぞ!」
P「よし、じゃあもう出発するか」
千早「社長は一緒じゃないんですか? プロデューサー」
P「ああ、社長とは店で直接集合ってことになってる」
千早「わかりました」
春香「でも楽しみだなあ、社長オススメの海鮮丼のお店なんて」
P「ああ、俺も初めてだから楽しみだ」
響「ねぇねぇ、ちなみにプロデューサーはどっち?」
P「? 何がだ?」
響「海鮮丼を食べるとき、醤油を全体にかけるか、ネタごとにつけるか」
P「? そりゃあ、ばーって全体にかけるけど」
響「えー」
春香「ですよね! さっすがプロデューサーさん!」
響「ちぇっ。プロデューサーは春香派か……」
P「? 春香派?」
千早「ちなみに、醤油にわさびは溶かしますか? プロデューサー」
P「おう。そりゃあ溶かすぞ」
春香「ほらほら! やっぱりプロデューサーさんは私の味方なんですね!」
響「あ、でもそこは自分も」
春香「響ちゃんはネタごと派だからだめー」
響「な、何がだめなんだよー! 春香のイジワル!」
春香「フーッ!」
響「シャーッ!」
P「?」
千早(そろそろ違うバリエーションも見たくなってきたわね)
~海鮮丼店~
P「よし、着いたぞ」
響「へー、なんか良い雰囲気のお店だね」
春香「すんすん……なんか磯の香りがする」
千早「ふふっ、春香ったら犬みたい」
春香「えへへ……」
ガララ
店員「いらっしゃいませ」
P「えーっと、5名で予約していた……」
社長「お、君ィ! 遅いじゃないか!」
P「社長! すみません、渋滞に巻き込まれてしまって」
社長「はっはっは。何、私も今着いたところだよ」
P「あっ、そうなんですか」
社長「ああ。○○社との会談が長引いてしまってね……。あ、君、特上海鮮丼を5つ、用意してもらえるかな」
店員「特上5つですね。かしこまりました」
響「と、特上!? いいの、社長!?」
社長「何、気にすることはない。君達の頑張りの賜物だからね」
春香「ありがとうございます! 高木社長!」
千早「ありがたくいただきます」
社長「はっはっは。ここの魚は本当に美味しいからね。期待していてくれたまえ」
響・春香・千早「はい!」
P「ご馳走様です、社長。(うお、特上って3500円もすんのか……社長の奢りで良かった……)」
~海鮮丼到着~
店員「こちら特上海鮮丼になります」
社長「おお! 今日もネタの鮮度は良さそうだねぇ」
響「うわ、なんかもうネタが丼からはみ出してるぞ!」
春香「ウニ、トロ、イクラ……他にもいっぱい! す、すごいね。千早ちゃん」
千早「ええ……凄い量ね。食べきれるかしら」
P「お、俺もこんなすごいの食べたことないな……」ゴクリ
社長「よし、では早速頂くとしよう。天海君、醤油を取ってくれるかな」
春香「あ、はい」サッ
社長「まず小皿に醤油を……っと」ツーッ
響(あ、そういえば社長はどっち派なんだろう?)
春香(そりゃあやっぱりぶっかけ派ですよ! ぶっかけ派!)
響(えー。そうかなあ? ザ・大人の社長がそんなことするかなあ?)
春香(それを言ったらプロデューサーさんだって)
響(まあそれはそうだけど)
社長「そしてわさびを溶かしてっと」チャッチャッ
春香(あ、溶かした)
響(問題はこの後だな)
社長「一思いにかける」サッ
春香(おおっ!)
響(あっ)
千早(……流石にこれだけネタがあると一つずつ醤油をつけるのは手間に感じるわね……今回は私も全体にかけようかしら)
春香「ふふふ……響ちゃん?」
響「ぐぬぬ……」
P「社長、随分醤油かけるんですね」
春香・響「?」
社長「何、このネタの量だからね。これくらいでちょうどいいんだよ」
P「なるほど」
春香(社長さん、小皿に入れた醤油5回くらいかけてる……辛くならないのかな?)
響(うーん、まあでも社長は何回もこれ食べてるんだろうし……)
春香(そ、そうだよね……)
千早(社長もああ言ってることだし、今回に限り全体に……いやでも、かけ過ぎた場合取り返しがつかないことに……)
社長「うおっ、辛い!」
春香・響・千早「え」
社長「し、しまった……どうやら醤油をかけ過ぎてしまったようだよ」
P「え、えー……だから今言ったじゃないですか、社長……」
社長「むぅ……また同じ過ちを繰り返してしまったか」
P「え、前もやったんですか?」
社長「ああ、ここに来ると毎回かけ過ぎてしまうんだよ……。やれやれ、困ったものだ。はっはっは」
春香・響・千早「…………」
社長「何、多少醤油をかけ過ぎても美味いことには変わりはない!」ガッガッ
P「で、ですよね社長! よーし! 俺も食べるぞー!」ガッガッ
春香・響・千早「…………」
響「まあ、今日は自分も全体にかけようかな……一つずつにつけるの、手間だし」
千早「そうね、私もそうしようかしら……」
春香「うん。それが良いと思う……」
響「じゃあ」
千早「ええ」
春香「うん」
春香・響・千早「――いただきます」
春香(――その日皆で食べた海鮮丼は、忘れられない、思い出の味になりました)
春香(最後の方、ご飯がちょっぴり辛くなっちゃったけど……まあこれはこれでご愛嬌、ってことで)
了
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません