部室

律「…………」

ガチャ

紬「おはよう！」

律「あっ、ムギ。おはよう」

紬「澪ちゃんもおはよう！」

澪「（笑）」

紬「澪ちゃんうれしそうだけど何かいいことでもあったの？」

律「あー……いや、そういうわけじゃ……」

紬「？」

律「えっと、私にもわからない……朝会ったら既にこうなってたんだ……」

澪「（笑）」

紬「……う～ん」

律「…………」

ガチャ

唯「おはよー！」

梓「おはようございます」

紬「あ、おはよう」

律「唯と梓も来たか」

唯「おはよう！ ……りっちゃん元気ないね？」

律「そう見えるか」

唯「なんとなくだけど……あ、澪ちゃんは元気そうだね！ いい笑顔だよっ」

律紬「…………」

梓「澪先輩、何かいいことでもあったんですか？」

澪「（笑）」

梓「あ、あのー……澪先輩？」

澪「（笑）」

梓「え、ちょっと」

律「気にすんな、朝からずっとこうなんだ」

梓「えっ」

唯「ずっと笑ったままなの？」

紬「そうみたい……」

唯「おーい、澪ちゃーん！」

澪「（笑）」

紬「澪ちゃん？」

澪「（笑）」

紬「反応はしてくれるけど、返事はないのね……」

梓「な、なんか澪先輩はずっと笑顔ですけど、私たちは何か笑いづらいですね……」

律「今は引きつった笑顔しかできないな……」

唯「笑う門には福来たる、だよ！」

梓「来ますかね……」

唯「はっ、澪ちゃんが私たちの笑顔を吸収してるのかも！」

律「そんなバカな……」

澪「」

梓「あっ！」

紬「今一瞬だけ無表情になった！」

澪「（笑）」

律「マジか、見てなかった……」

唯「わたしも見れなかった～」

律「……唯はいつも通りだな」

唯「ん～そうかな？」

律「まあいいよ……」

梓「なんか律先輩がちょっとだけくたびれて見えるのがわかった気がします……」

律「ありがとよ……」

唯「なんかおもしろいね！」

梓「うーん……」

唯「でもずっと笑ったままなのかな？」

紬「えっ？」

唯「えーっと、怖がったり怒ったりしないのかなーって」

紬「なるほど……」

律「じゃあ怖がらせてみるか！」

梓「おお、律先輩がやる気に……」

律「澪、桜高七不思議って知ってるか？ この学校の玄関前にある噴水なんだけど、陽が沈んでから水面を見ると無数の手が見えるそうなんだ……最近暗くなるの早いから下校時刻でも見れるかもしれないぞ……？」

澪「（笑）」

紬「こ、怖がらない……あの澪ちゃんが怖がらない……！」

律「ぐっ……それなら怒らせてみるか！」

唯「ファイトだよ、りっちゃん！」

律「なあ澪、お前最近ちょっと太ったんじゃないか？」

梓「（ど直球！）」

律「ほら、前に撮った写真あるんだけどさ」ﾋﾟﾗｯ

梓「（なんでそんな写真今持ってるんですかっ！？）」

律「顔というか……ほっぺの辺りとか？」ﾂﾝﾂﾝ

澪「（笑）」ﾌﾟﾆﾌﾟﾆ

梓「（……が、微動だにせず！）」

律「は、反応がないだと……」

澪「（笑）」

律「くそ～……」

紬「あのりっちゃんが諦めた……！？」

律「ここにきて、澪という幼なじみがわからなくなってきた……」

梓「（いや、今回が異例というか異常事態なだけと思うけど……）」

唯「一体どうすれば……」

梓「とりあえず練習しませんか……気分転換にもなりますし……」

律「そ、そうだな……」

紬「よーし！ ……えーっと、“澪ちゃんから笑顔をなくすために”……？？？」

梓「いやいや、無理やり目標立てなくても！ しかもなんか怖いですよそれ！」

紬「そ、そっか」

唯「とにかくがんばって演奏するぞーっ！」

律「おーっ！」

澪「（笑）」

♪

唯「はあ～……おいしい～……」

梓「相変わらずのんびりしてますね……」

律「練習しても澪は相変わらずかあ……」

梓「ですね……」

紬「澪ちゃんケーキおいしい？」

澪「（笑）」

紬「ならよかった♪」

律梓「（あれで意思疎通と言えるのだろうか）」

唯「今日はわたしもお菓子持ってきたんだ♪ ずっとすてきなスマイルだから澪ちゃんにはチョコクッキーを差し上げよう！」

澪「（笑）」ﾆｺｯ

梓「あ、笑いましたね今」

律「や、元々笑ってるだろ……もっと笑顔になった」

紬「もう一杯どう？」

澪「（笑）」ﾆｺﾆｺ

♯

帰り道

律「なあ、澪」

澪「（笑）」

律「……結局今日一日ずっとその顔のままだったな」

澪「（笑）」

律「…………」

澪「（笑）」

律「おっと、もうこんなとこまで来てたのか。じゃあまた明日な」

澪「（笑）」ﾃｸﾃｸ

律「大丈夫なのか、澪のやつ……」

♯

翌日

律「うぅ～寒い……」

「おーい、りつー」

律「……えっ」

澪「律、おはよう」

律「うおっ！？」

澪「なっ……人の顔見てそのリアクションは失礼だろ！」

律「いや、だって昨日のお前……」

澪「昨日の私……？」

律「…………」ｼﾞｰｯ

澪「……？」

律「う、うわっ、なんか怖え……」

澪「なっ、何がだよっ！」

律「（昨日の（笑）顏は本当に何だったんだ……？）」

澪「律……？」

律「…………プッ」