男「…へ?」 お水女「だからぁ」 (378)
~深夜・4時ごろ~
?「あっ…んっ…はあ…」
男(…あ、あれ?)
パンッ パンッ…
?「いっ…いいっ!…あっ…」
男(俺…なんでエッチしてるんだ?)
パンッ パンッ…
?「いいっ…いいよぉ…男ぉ…」
男(…なんで俺の名前を知ってるんだ?)
パンッ パンッ…
?「あっ!…も…もう…ああぁああっ!!」ダイシュキホールド
男「うっ!」
ドクッ!ドクッ ドクッ…
・
・
・
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1423234577
?「うふふふ。よかったよぉ…」
男「えっと…」
?「ん?どうしたの?」
男「…ごめん。あんた…誰?」
?「…え?」
・
・
・
~布団の上~
?「…」セイザー
男「…」セイザー
男「…取り敢えず…あんたの名前が『お水女』ってことはわかった」
?改めお水女「うん…」
男(やべえ…なんで俺、ここにいるのかわかんねえ…なんでエッチしてたのかも…)
お水女「…」
男「…」
男(く、空気が重い…)
お水女「…あの」
男「は、はいっ!」
ビクッ
お水女「そんな大声出さなくっても…」
男「あ、ごめん…」
お水女「あのさ…ひょっとして…記憶が戻ったの?」
男「…へ?」
お水女「男さぁ…記憶を喪失してたんだよ?」
男「俺が!?記憶喪失!?」
お水女「うん…いつかは…男の記憶が戻るって覚悟してたんだけどさぁ…」
男「あの…」
お水女「なあに?」
男「ちょっといいかな?なんで俺が…記憶喪失ってわかったんだ?」
男「それに…なんで俺、ここにいるんだ?」
お水女「…覚えてないの?ずっと一緒に暮らしてたのに?」
男「う、うん…って言うか俺、あんた…お水女さんと暮らしてたのか?」
お水女「さん付けって…いつもは『お水女』って呼んでたの…うん。もう2年になるかなぁ…」
男「…ごめん。よく覚えてない…」
お水女「そっか…ちょっと…ごめんなさい。あたしもちょっと…混乱してるからさ…聞いてくれたら答えられるけど…」
男「そっか…じゃあさ、なんで俺がここにいるのか…教えてくれないか?」
お水女「…ちゃんと話せるかわかんないし…とりあえずコーヒー飲んで落ち着かない?」
・
・
・
~ダイニング~
男(間取りは2DKか…)
お水女「…なんで男がここにいるか…だよね?」
男「あ、うん」
お水女「…2年ぐらい前だけどさぁ…夜中におなかが減ってコンビニに行った帰り…そこの公園で男が立ってたんだ…」
男「そこって…窓から見えるあの公園?」
お水女「うん…」
男「あ、ごめん。続けて?」
お水女「うん…最初は…やっぱ怖いじゃん?だから早く帰ろうって思って…そしたら男がくしゃみして…」
お水女「で、びっくりして男のほうを見たら…うつろな顔して上向いててさぁ…」
お水女「その時の男の表情が父さんに似てて…ほっとけなくて…」
男「お水女のお父さん?」
お水女「うん…父さんさ…自殺しちゃったんだぁ…その時の表情にそっくりで…」
お水女「それで…男に声かけたんだ…大丈夫?って…」
男「…」
お水女「そしたら男…自分のいる場所とか…公園にいる理由とか…名前もわかんなくなっててさ…」
お水女「それで…近所の交番に連れてったんだけど…捜索願とか?に該当者がいなくてさ…」
お水女「それで…警察で保護してもらおうと思ったんだけどさ…」
お水女「いたずらかなんかと思われたみたいで…交番を追い出されて…」
お水女「それで…やっぱほっとけないじゃん?だから…うちに連れて帰ったんだぁ…」
男「…」
お水女「…どうしたの?」チラッ
男「いや…今すごく混乱してる…ちょっと待って」
お水女「そ、そうだよね…」
男「けど…まずはお礼を言わないとな。ありがとうございます」ペコッ
お水女「え?」
男「俺、お水女さんが声かけてくれなかったら…死んでたかもしれないんだよな?」
お水女「…」
男「それで…それからずっと俺はお水女さんのお世話になってたんだ…」
お水女「うん…」
男のセリフ
○男「それで…それからずっと俺はお水女さんのお世話になってたんだな…」
×男「それで…それからずっと俺はお水女さんのお世話になってたんだ…」
男「…あ」
お水女「なあに?」
男「なんでお水女さ…は俺の名前知ってるんだ?」
お水女「…ケータイ」
男「え?」
お水女「ケータイにさ、電話がかかってたんだぁ…でさ、男がケータイに出たらすぐに切っちゃって…」
男「はい?」
お水女「なんかさ、オンナがヒスを起こしてるって言って…だからあたしが代わりに出たんだけどさ」
男(オンナ?…それってたぶん…)
お水女「あたしが喋るより先にオンナが『男!ごめんなさい!』って…『どこにいるの!?』って騒いでてさぁ」
お水女「それであたしが男のこと説明しようと思って『ちょっと落ち着いて』って言ったら…」
男「…」
お水女「聞き取れないことをギャーギャー言われちゃって…で、ケータイ切られちゃったんだ…」
お水女「それでリダイヤルしようとしたんだけど…ロックがかかっててさぁ…」
お水女「男に解除してって言ったんだけど男ったら解除の方法も忘れちゃってて…」
お水女「何とかしてリダイヤルしようって思ってたんだけど…トラックに踏まれて壊れちゃったみたいで…」
男「壊れた?トラックに踏まれて?」
お水女「ごめんなさい。ロック解除しようと思って男から受け取るときに落としちゃって…」
男「おいおい…」
お水女「ケータイ壊したのはゴメン…それでさ、うちに連れて帰って…」
男「それで…そのまま?」
お水女「うん…ずっと一緒に住んでる…」
男「そっか…」
お水女「それでさ…次の日、あたし仕事休みだったし、男を病院に連れてったんだ。それで…」
男「記憶喪失だってわかったのか…」
お水女「うん…でもさぁ、保険証って大事だね!ちょっと見てもらうだけで2万円以上って…高いよね!」
男「ご、ごめん…ありがとう。病院代まで出してくれて」
お水女「…ふふふ」
男「なんだよ」
お水女「ううん。やっぱ男は男なんだなーってさ」
男「どう言う意味?」
お水女「あ、ごめんなさい。そうやってすぐ謝ったりお礼を言ったり…記憶をなくしてた時と変わんないなーって…ね?」
男「そうなん?」
お水女「うん」
男「そっか…なんか安心した」
お水女「どうして?」
男「いや、なんか迷惑かけてたんじゃないかって気になってて…」
お水女「迷惑?」
男「うん。記憶なくした俺を家に連れて帰って…それからずっと一緒に暮らしてたんだよな?」
男「けどさ、さっきお水女が変わんないって笑ってくれたから…少なくとも嫌われるようなことはしてないんだなって…な?」
お水女「…やっぱ変わんないな…頭もいいし」
男「そんなことないよ」
お水女「ううん」
男「…あ、ところでさ」
お水女「なあに?」
男「俺…働いてるのかな?」
お水女「ううん。今はうちで専業主夫やってもらってるよ」
男「専業主夫?」
お水女「うん。男ってば記憶もないし履歴書かけないし」
男「そっか…そうだよな…」
お水女「でもでも!家事全般完璧だしさぁ、すっごく助かってるんだよ?」
男「一人暮らしが長かったからな。学生時代から数えたら10年近くになるし」
お水女「そうなんだ…それにさぁ、幼女の保育園の送り迎えもしてもらってるし」
男「えっ!?」ドキッ
お水女「どうしたの?」
男「いや…幼女って…」
お水女「あたしの子供…今4歳なの」
男「そ、そっか…」
お水女「…あ、ひょっとして男の子供だと思った?」ニヤニヤ
男「ちょっとだけな?」
お水女「ふふふ」
男「…ちょっとだけだぞ?それに…なんかおぼろげながら小さい女の子と話をした記憶があるんだ」
お水女「え?じゃあ…一緒に暮らしてた時のことも覚えてるの?」
男「覚えてるって言うか…忘れてたけど思い出してるって感じかな?」
お水女「そうなんだ…」ホッ…
男(なんか…ほっとしてるみたいだな…)
お水女「…うん。わかった。今度は…男のこと、教えてくれる?」
男「俺のこと?」
お水女「うん。記憶がなくなる前のこととかさ」
男「そうだな…何から話したらいいんだろ…」
お水女「そうだね…住んでたところとか?」
男「住んでたところか…○○県の××市に住んでる…いや、住んでた。そこで一人暮らししながら会社に勤めてた」
お水女「2県となりかぁ…会社員だったんだ…」
男「うん。働き出して5年目だったかな?ちなみに両親はそこから新幹線で2時間ぐらいのとこに住んでる」
お水女「ふうん…」
男「ところで…ここはどこ?」
お水女「□□県の◇◇市…」
男「そっか…結構移動してたんだな…」
お水女「そうだね…」
男「…あ、さっき一人暮らしって言ったけど…最近は婚約者と同棲してて…」
お水女「っ!?」ドキッ
男(なんだろ…婚約者のことを思い出したら動悸が…)ドキドキ
お水女「…男、顔色が…大丈夫?」
男「いや…ちょっと気分が悪くなっただけだ…そう言うお水女だって」
お水女「そ、そう?あたしは大丈夫だよ…他には?」
男「他には…ごめんな。まだ前の記憶の全部を思い出したわけじゃなくてさ…ところどころ虫喰ってる感じで…」
男「それに…なんで記憶喪失になったのか…それがまったく思い出せないんだ…」
お水女「そっか…婚約者って…どんな人?」
男「どんなって…俺の2個下の後輩で…先輩の仲介で仲良くなって…」
お水女「いくつなの?」
男「えっと…短大卒で3年目だったから…今だと23…いや、あれから2年経ってるんなら25歳かな?」
お水女「あたしの1個上かぁ…」
男(やっぱり婚約者のことを考えると動悸が…)ドキドキ
お水女「…」
男「…」
お水女「…そっか…婚約者がいたんだ…それでだったのかぁ…」
男「ん?」
お水女「あ、その…男ってさ…その…何度誘っても…頭が痛いって断ってたんだぁ…」
男「え?って言うことは…」
お水女「うん…今日が初めてだったんだぁ…」
男「ごめん…」
お水女「謝らないでよぉ…それで…」
男「ん?」
お水女「男はさ…これからどうするの?」
男「どうするって…どうしよう…」
お水女「どうして悩むの?」
男(婚約者がらみで何か良くないことが起こったような気がするし…)
男「…なんで記憶喪失になったかわからないし…記憶もまだ混乱してるし…ちゃんと思い出してから考えたいんだけど…」
お水女「…しばらくうちにいたいってこと?あたしは構わないよ?」
男「ごめん…負担かけちまうな…」
お水女「負担だなんて思ってないよ。男が思うようにしたらいいからね」
男「ありがとう…」
お水女「…ううん」
男「…あ、ところでさ」
お水女「なあに?」
男「さっき子供がいるって言ってたけど…どこにいるんだ?」
お水女「幼女のこと?隣の部屋で寝てるよ」
男「…大丈夫かな…」
お水女「なにが?」
男「いや…俺、子供…幼女ちゃんにどう接したらいいか…」
お水女「…心配しないでいいんじゃない?」
男「なんで?」
お水女「だって幼女、男のこと大好きだもん」
男「へ?」
お水女「心配なんだったらさ、顔見てきたら?」
男「…いいのか?」
お水女「いいも何も、今までずっと一緒に暮らしてたんだし…親子みたいなもんだからね」
男「そっか…」
みんな幸せになってほしい
~隣の部屋~
男「…」
幼女 スヤスヤ
男(なんでだろう…幼女の寝顔を見てると…なんだかほっとする…)
幼女「…んう…」モゾモゾ
男(あ、寝ながらなんか探してる…)
幼女「…ん…おとこぉ…」
男「あ」ギュッ
幼女 ニコッ スヤスヤ…
男(無意識に手を握っちまった…けど…なんでこんなあったかい気持ちになるんだ…)ナデナデ…
ドアの陰:お水女(そっか…記憶…戻っちゃったんだ…)
>>29 できればそうしたいなぁ…
~朝~
男(結局あれから寝ることもなく普段の生活の様子とか幼女ちゃんのこととか話してて一睡もせず…)
男(お水女も眠いだろうに…)
お水女「…とりあえずさ、親とか…婚約者にも連絡しといたほうがいいよ」
男「う、うん…」
お水女「思い出したんでしょ?電話番号。うちの電話使っていいからさ」
男「ありがとう…とりあえず先に親のとこに…」ピッポッパッ
ピンポンパンポーン アナタノ オカケニナッタ デンワバンゴウハ ゲンザイ ツカワレテオリマセン バンゴウヲ オタシカメノウエ…
男「…え?」
お水女「どうしたの?」
男「いや…もう一回…」ピッポッパッ
ピンポンパンポーン アナタノ…
男「あれ?…」
お水女「ねえ、どうしたの?」
男「いや…電話が繋がらないんだ…」
お水女「え?」
男「ナンバーディスプレイで確認して掛けたのに…なんでだ?」
お水女「…ケータイは?」
男「え?」
お水女「ご両親…ケータイ持ってないの?」
男「持ってるけど…番号覚えてない…」
お水女「え?」
男「ほ、ほら!アドレス帳に登録してたからさ、いつもそれで掛けてたし…固定電話のほうはガキの頃から使ってたから覚えてたけど…」
お水女「ダメじゃん!じゃあさ…婚約者のところにかけてみたら?」
男「番号が…」
お水女「思い出せないの?」
男「う、うん…」
お水女「…大事な人の番号ぐらい覚えときなよぉ」
男「ごめん…あ!」
お水女 ビクッ
男「あ、ごめん、大声出して…幼女が起きちまうな…」
お水女「…まだ寝てるみたい。で…どうしたの?」
男「会社に電話してみよう。仲のいい先輩がいたから多分何があったかわかると思うんだ」
お水女「そうだね」
男「えっと…」ピッポッパッ
プッ プルプルプルプル ガチャ
社員『はい、○×株式会社です』
男「あ、すみません。男と言いますが…先輩は出社していますか?」
社員『少々お待ちください…先輩と言う名前のものは当社には在籍しておりませんが』
男「え?いや…2年前には在籍していたはずです」
社員『…少々お待ちください…センパイッテシッテル?…2ネンマニ?…お待たせしました。先輩と言うものは確かに弊社に在籍しておりましたが、2年ほど前に退職しております』
男「え?そうなんですか」
社員『はい。では、失礼します』
男「あ、はい。失礼します…」ガチャ
お水女「どうだったの?」
男「うん…会社を辞めてた…」
お水女「え?それじゃ…」
男「お手上げ…だな」
お水女「…ねえ」
男「ん?」
お水女「それじゃあさあ…実家に手紙を書いてみたら?」
男「なんで?引っ越してるかもしれないのに?」
お水女「もし引っ越したんなら転送届けだしてるんじゃない?」
男「転送届け?」
お水女「そう。引越しするときって手紙とか小包とかを新しい住所に届けてくれるように転送届けを出すんだよ」
男「へえ…」
お水女「期間は半年ほどなんだけどさ、手紙が届く可能性もあるし…やってみたら?」
男「そうだな…書いてみるわ」
お水女「うん。返事が来るといいね」ニコッ
男「ありがとう」
お水女「いいよぉ。今までずっと一緒に暮らしてたんだしさ」
男(お水女って…ホントにいいやつだな…)
お水女「…さ!じゃあ家のことは男に任せるね♪」
男「おい」
お水女「いつものことじゃん。よろしくね」ニコッ
男(いつもって…まあ世話になってるし…しょうがないか)
お水女「じゃあ、ちょっと寝るね。仕事で疲れてるし…」
男「そういや、お水女って何の仕事してるんだ?」
お水女「…ホステス」
男「ホステス?」
お水女「学がないからね…でも!体は売ってないからね!!」
男「お、おう」
お水女「…じゃあ、お休み。幼女も昨夜夜更かししてたから昼頃まで寝てるだろうし…男も寝たほうがいいよ?」
男「あ、うん…」
~お昼頃~
~~~~~~~~~~男の夢~~~~~~~~~~
ブロロロロ
男「なんで…なんで…」
男「うわああああ!!!」ガンガン
キュキュキュキュ
男(うお!ハンドルをたたいたからスリップした!!)
男(やばい!電柱にぶつかる!!)
ドゴオォォォン!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ドスン
男「ぐえっ!」
幼女「おとこ、おきた?」
男「…幼女?」
幼女「おなかすいたー!ごはんー!!」
男「あ、ご飯な…今何時だ?」
幼女「ちーさいはぃがいちといちのとこぉだよ?」
男「11時か…起きるから降りて」
幼女「うん!」
男「2時間しか寝れなかった…それにしても…」
男(…さっきの夢は何だったんだ?)
・
・
・
男「トーストでいいか?」
幼女「うん」
男「えっと、食パンは…」ゴソゴソ
幼女「ぎゅーにゅーいぇたよー」
男「あ、ありがとな」
幼女「どーいたしまして♪」
チーン
男「お、食パンも焼けたな。あちっとっと。はい、どうぞ」
幼女「あぃがとー。いただきます」パチン
男「ははは。いただきます」
モグモグ
男「あ、お水女…お母さんは?」
幼女「まだねてぅよ?」
男「そっか。起きる時間までおとなしくしてような?」
幼女「うん」
男(お水女は幼女と一緒に寝てるんだったな…俺は隣の部屋で一人で寝てて…)
幼女「どーしたの?」
男「あ、いや…なあ」
幼女「なあに?」モグモグ
男「幼女はお母さんは起こさないのか?」
幼女「うん。おかーさん、いつもねぅのがおそいかぁ、おこさないよーにって、おとこがいつもいってぅかぁね」ニコッ
男「そっか。幼女は優しいんだな」
幼女「そーかな?」
男「うん。いい子だ」ナデナデ
幼女「えへへへ」
・
・
・
男「…よし。洗濯終了!」
幼女「おーっ」パチパチ
男「昼飯は…さっきパン食ったとこだしなぁ…先に買い物に行くか」
幼女「おとこおとこ!」
男「なんだ?」
幼女「ちょこかって!」
男「虫歯になるからダーメ。な?」
幼女「うー…」プクッ
男「…ポテチならいいぞ?」
幼女「やた!」
男「じゃあ行くか」
幼女「うん!」
・
・
・
男「ただいま」
幼女「ただいまー」
男「お水女は…まだ寝てるな」
幼女「じゃあ、しずかにしなきゃね」
男「そうだな。じゃあDVDでも見るか?」
幼女「あなゆきがいい!」
男「ははは。じゃあ掛けるぞ。そこに座ってな」
幼女「はーい」
・
・
・
ガチャ
お水女「おはよー…」
男「あ、おはよう」
幼女「おはよー」
お水女「何時ぃ?」
男「えっと…2時半だな」
お水女「ん…じゃあお昼食べなきゃ」
男「じゃあ俺たちもお昼にするか」
幼女「なにたべぅの?」
男「おにぎりにするか。具は何がいい?」
幼女「しゃけー!」
お水女「梅かなぁ?」
男「よーし。じゃあ鮭と梅と…俺は昆布のおにぎりだな。ちょっと待ってな」
お水女・幼女「「はーい」」
・
・
・
ブィーン…
お水女「いつもありがとね」
男「ん?なにが?」
お水女「ご飯も掃除も洗濯も…助かるよ」
男「ああ。俺のほうこそ養ってもらってるし。ありがとな」
幼女「おとこー。そーじきかして」
男「ん?どっかかけ忘れてるのか?」
幼女「えっと…」
男「あ。さては…」
幼女「なんにもしてないもん!」
男「…やっぱり。ポテチこぼしたな?」
幼女「うー…ごめんなさい…」
男「いいよいいよ。ちゃんと謝ったしな。掃除機掛けるからちょっとどいて」
幼女「はーい…」
お水女(この二人…ホントの親子みたいだねぇ…)
・
・
・
お水女「行ってきます」
男「いってらっしゃい」
幼女「おしごとがんばってね」
お水女「はい。じゃあ」ノシ
幼女「いってぁっしゃーい」ノシ
バタン
男「…さて、先に晩御飯作るか」
幼女「おてつだいすぅよ?」
男「じゃあ、テーブル拭いといて。はい、布巾」
幼女「はーい」
・
・
・
チャポン
男「やっぱ風呂は気持ちいいなぁ…」
幼女「うー…もうあがぅー」
男「じゃあ十まで数えてからな。いーち、にーい」
幼女「さーん、しー、ごー…」
・
・
・
男「…と言うわけで、おじいさんとおばあさんは幸せに暮らしたとさ」
幼女「よかったね」
男「もう九時半だから寝なさい」
幼女「ん…」モゾモゾ
男「ちゃんとお布団かぶって…」ポンポン
幼女「…おとこ」
男「ん?」
幼女「…おてて」
男「ん」キュッ
幼女「ん…あったかいね」
男「幼女のお手てもあったかいぞ?」
幼女「えへへ…おやすみ」
男「はい、お休みなさい」
幼女「…スー…スー…」
男「寝つきがいいな。俺もお水女が返ってくるまで仮眠とるか」
・
・
・
ピピピピッ ピピピピッ カチッ
男「ん…もう1時か…そろそろ起きるか」
男(幼女を起こさないように…と)モゾモゾ
男「…さて、お水女が帰ってくるまでコーヒーでも飲んでのんびりするか」
・
・
・
男「2時か…そろそろ帰ってくるかな?」
ガッ ガチャ
お水女「ただいまー」
男「お帰り」
店長「なんだ、普通じゃねえか」
男「え?えっと…どなたですか?」
お水女「店長だよ。あたしの勤め先の」
店長「勤め先って言ってもクラブだけどな」
男「あ、お水女がお世話になっています」ペコッ
店長「いやいや。つうか…ホントに記憶が戻ったんだな」
男「はい?」
店長「いや、ついこの前までは俺が来たら警戒してたのに、今日は全然警戒してねえし」
男(け、警戒って…何を警戒するんだ?)
店長「どうだ?俺の世話にならないか?」
男「へ?」
お水女「あはは。店長ホモだもんね」
男「え?そっちの意味?仕事じゃなくて?」
店長「俺はいつでもオッケーだぜ?」ニヤッ
男「え、遠慮します」コソコソ
お水女「店長!」
店長「ははは。男に手を出したらお水女にはったおされそうだ」
男「ははは…」
店長「にしても…幼女ちゃんはもう寝てるのか」
男「あ、はい」
店長「最近幼女ちゃんに会ってないから久しぶりに顔を見たかったんだけどな…」
お水女「前は保育園が終わったらお店に連れてってたから店長が面倒見てくれてたもんね」
店長「ははは。店長なんて何かあった時に出張りゃあいいだけだから暇だったしな」
男「そうだったんですか…」
お水女「保育園はお店が終わるまでなんで見てくれないもんね」
男(そりゃあ…夜中の1時までなんて見てくれないわな)
お水女「ホント…店長には感謝してます。幼女を抱えて仕事もできないあたしを雇ってくれて…」
店長「そりゃあな。今にも自殺しそうな暗い顔して橋の上から川を見つめてるオンナがいりゃあ…気になるのは当たり前だろ」
店長「それに…お水女、いい顔立ちしてるから人気が出るってわかってたしな」
お水女「しかもあのころは毎晩家まで送ってくれて…」
店長「店が終わるのは真夜中だからな。寝てる幼女ちゃんを起こすわけにはいかねえし」
男「へぇ…」
店長「それが、男と暮らすようになってからは幼女ちゃんと遊ぶこともなくなって…ちいとばかし寂しくなったな」
男「え?」
店長「…こう見えても俺は子供好きなんだ。だから結構楽しんで幼女ちゃんの世話してたんだぞ?」
お水女「おかげですごく助かりました」
男(店長さん…強面だけど根はいい人なのかな…)
店長「…じゃ、俺は帰るわ。明日もよろしくな」
お水女「はーい。今日は送ってくれてありがとうございました」ペコッ
店長「いやいや。男の顔も見たかったしな」ニヤッ
男「えっと…」
店長「じゃあな。おやすみ」ポンポン
男(なにげに尻触らないでください!)
お水女「おやすみなさーい」
バタン
男「…ふぅ」
お水女「気にしないでいいよ。根はいい人だから」
男「あ、ああ…」
男(けど…あの眼はマジだった…)
お水女「じゃあ、先にお風呂入るね」
男「あ、着替えは出してあるから」
お水女「何から何までありがとね」
男「専業主夫だからな」
お水女「ふふふ」
バタン
男(覗いちゃだめだよな…)
・
・
・
お水女「お風呂あがったよー」ホカホカ
男「はい。ご飯できてるよ」
お水女「ありがとね」
男「じゃあ、俺は先に寝るわ」
お水女「…ねえ」
男「ん?」
お水女「ホントに…帰らなくていいの?」
男「…」
お水女「心配してるんじゃない?親御さんとか…婚約者とか…」
男「…ごめん。まだ記憶をなくしたときのことを思い出せないんだ…だから不安でさ…」
お水女「不安?」
男「だって…考えてみろよ。記憶をなくすような出来事なんだぞ?相当なことだと思うんだ」
お水女「うん…そうかもね…」
男「それが思い出せないと…帰ったらどんなことになってるか分からないだろ?」
お水女「そうだけどさ…」
男「…今日さ、親に手紙を書いて出したから、その返事が来るまで待ってみたいんだ」
男「それに…金もないしな。ははは」
お水女「…わかった。男がそうしたいんならそれでいいよ」
男「心配してくれてありがとな」
お水女「ううん」
男「…飯、早く食って寝ようぜ。な?」
お水女「うん」
お水女(男…やっぱりずっといてほしい…)
~翌日~
ピピピピッ カチッ
男「…6時か…」
男「今日は…幼女は保育園だな…着替えとか用意してやんないと…」モゾモゾ
男「…よし!起きよう」ガバッ
・
・
・
男「幼女ー。お着替えすんだか?」
幼女「もうちょっと…できたよー」
男「よしよし。じゃあ保育園に行くか」
幼女「はーい」
ガチャッ
幼女「おかーさん、いってきまーす」ヒソヒソ
男(お水女を起こさないように小声で…いい子だ)
・
・
・
~保育園~
幼女「いってきまーす」ノシ
男「楽しんで来いよーって、もう聞こえてないか」
保母「おはようございます」
男「あ、おはようございます」
保母「…幼女ちゃん、明るくなりましたね」
男「そうですか?」
保母「ええ、初めてここに来た時は周りの様子をうかがって、なかなかお友達ができなくて…」
保母「でも、男さんが送り迎えするようになってからはだんだん明るくなって、お友達もできましてねぇ」
保母「…男さんのおかげですね」
男「いえいえ。私は何もしてませんよ。保母さんたちの努力のおかげです」
保母「…そうじゃないと思いますよ?」
男「え?」
保母「男さんが送り迎えする前は…送ってくるときはお母さんだったんですが」
保母「お迎えの時は何人かの若い男の人が交代できてて…幼女ちゃんも気を使ってたみたいですね」
男「若い男って…」
保母「何でもお母さんのお勤め先の人らしいですよ?」
男(そういや前に店長さんが幼女の面倒見てたって言ってたな…幼女のお迎えは店の若いのが担当してたのか…)
保母「あ、そろそろ時間ですね。じゃあ、幼女ちゃんお預かりします」
男「よろしくお願いします」ペコッ
男(さて、買い物して帰るか)
~アパート~
ドサッ
男「まずは買ってきたものを冷蔵庫に入れて…」ガサガサ
パタン
男「次は部屋の掃除と風呂掃除っと…」
・
・
・
男「…そろそろ12時だな…昼飯作るか」
男「今日の昼は焼うどんだからもやしと豚肉を冷蔵庫から出して…」ガサガサ
・
・
・
男「そろそろ2時か…お水女を起こすか」
ガチャ
お水女 スー…スー…
男(よく寝てる…整った顔してるなぁ…すっぴんでも美人だ…)
男「おーい。そろそろ起きる時間だぞー」ユサユサ
お水女「…ん…もうそんな時間?」
男「ああ。焼うどん作っといたぞ」
お水女「ありがと…起きるね…」モゾモゾ
男「キッチンにいるから。一緒に食べようぜ」
お水女「うん」
・
・
・
男「はい、お釣り。レシートは家計簿に挟んどいたから」
お水女「ありがとね」
男「いえいえ。それよりもう3時だけど」
お水女「お化粧したし、もう出られるよ」
男「じゃあ幼女を迎えに行かないとな」
お水女「うん」
~保育園~
お水女・男「「こんにちわは」」
保母「あ、はーい。幼女ちゃん、お迎えが来たよー」
幼女「はーい。じゃあみんな、またねー」ノシ
モブ園児「「「ばいばいーい」」」ノシ
トテテテ
幼女「おかーさーん」ダキッ
お水女「お帰り。今日もいい子にしてた?」ナデナデ
幼女「うん!」
お水女「そっか。じゃあお手て繋いでいこっか」キュッ
幼女「えへへへ。おとこもつなご?」
男「はいはい」キュッ
幼女「ぶぁんこしてー」
お水女「よーし。それーっ!」グイ
幼女「わーい♪」ブラーン
男「ははは」
・
・
・
お水女「もう5時かぁ…じゃあここで」
男「うん」
幼女「おかーさん、おしごとがんばってね」
お水女「はーい。行ってきます」ノシ
幼女・男「「いってらっしゃーい」」ノシ
男「…じゃあ、暗くなるまで公園で遊ぶか」
幼女「うん!」
・
・
・
男「さて…と。洗い物も終わったな…もう9時か。幼女、もう寝る時間だぞ」
幼女「はーい」
男「今日は…じゃーん!白雪姫だぞ!!」
幼女「わーい♪はやくよんでー」
男「よしよし。昔々あるところに…」
・
・
・
ピピピピッ ピピピピッ ピッ カチッ
男「…もう1時か…お水女の晩飯温めなおさなきゃ…」モゾモゾ…
・
・
・
ガ ガチャ
お水女「ただいまー」
男「おかえり。ご飯できてるよ」
お水女「ありがとねー」
店長「…」
男「あ、店長さん。今日も送ってくれたんですか?」
店長「男に会いたくてな」ニヤッ
男「あはは…」
店長「…なあ。ちょっと出ないか?」
男「え?」
店長「お水女。ちょっと男、借りるぞ?」
お水女「え?」
店長「心配すんな。ちょっと話をするだけだ」
男「…」
お水女「…男、行きたくないんなら…」
男「…いや、行ってくる。すぐに戻ってくるよ」
店長「すまんな」
男「いえ…」
~コンビニの駐車場・店長の車の中~
男(ベンツ…しかも本革張りのシートなんて初めて乗った…)
ガチャ
店長「買ってきたぞ。ほれ、コーヒーだ」
男「あ、ありがとうございます…」
バタン
店長「奢りだ。気にせず飲め」
男「じゃあ…いただきます」
プシッ
店長「…ふう。あったけえなぁ」
男「そうですね…あの…」
店長「ん?」
男「えっと…話って…」
店長「ああ…お前はお水女のこと、どう思ってるんだ?」
男「え?」ドキッ
店長「お水女、お前の記憶が戻ってから…なんか様子が変でな…」
店長「それで…話を聞いたらお前…婚約者がいるんだって?」
ドクン
男(や、やっぱり…婚約者のことを考えると動悸が…)ブルッ
店長「…おい、大丈夫か?」
男「は、はい…すいません…」
店長「それで…お前はどうするんだ?」
男「…わかりません」
店長「おいおい…」
男「すいません…まだ完全に記憶が戻ったわけじゃなくて…ただ…」
店長「なんだ?」
男「なんとなくですけど…俺が記憶をなくしたことに婚約者が関係してるような気がして…」
店長「…」
男「だから…それを思い出すまで…帰らないほうがいいような気がして…」
店長「…それはお水女にも言ったのか?」
男「はい…」
店長「…ふーん。なるほどねぇ」
男「すいません。はっきりしなくて…」
店長「…いや、いいんだ」
男「…あの」
店長「なんだ?」
男「店長さんは…お水女のこと…どう思ってるんですか?」
店長「お水女は俺の店の大事なキャスト。それ以上でもそれ以下でもない」
男「じゃあ…なんでこんなに気にするんですか?」
店長「…幼女ちゃんの母親だからだよ」
男「幼女の?」
店長「言ったろ?俺はガチホモだが子供好きでな。幼女ちゃんが大好きなんだ」
店長「幼女ちゃんは…俺がオシメ変えてミルクやって…泣いたらあやしたりして…そうやって面倒見てきたんだ」
店長「だからだよ」
男「…」
店長「…信じらんねえって顔してんな」
男「はぁ…」
店長「…ま、こんな成りしてっからしょうがねえな」
男「あ、いえ…」
店長「…ちっとばかし昔話でもするか」
男「昔話?」
店長「ああ。今から4年ほど前の話だ。そのころ俺はオンナなんて金を稼ぐための道具ぐらいにしか考えてなかったんだ」
店長「それが…店に行くために駐車場から出たら橋の上にお水女が立っててな」
男「…」
店長「まあ、いつもなら無視して帰るんだが…よく見るとお水女、赤ん坊を抱いててな」
店長「元々子供好きだったし冬だったから赤ん坊のことが気になっちまってな…つい声をかけちまったんだ」
店長「そしたらお水女、なんて言ったと思う?」
男「…さあ…」
店長「『お金貸してもらえませんか?』ってよ」
男「え?」
店長「ふっ…俺もな、そんな感じだったよ。それで話を聞いたら…仕事をなくして住むとこもないって言うんだ」
店長「しかも借金もあるって言うんでな、つい言っちまったんだ。『とりあえず店に来るか?』ってな」
店長「それでまあ、クラブの事務所で詳しく話を聞いたら、保証人になったせいで借金まみれで自殺した父親の借金を背負っちまって…」
店長「高校中退して、昼はメイド喫茶、夜はスナックで働いてたんだと」
男「…あの…お水女の母親は…」
店長「…お水女が言うには…父親が借金背負った途端どっかに行っちまったんだとよ」
男(借金逃れか…)
店長「…それで借金は少しずつ返してたんだが…スナックの客との間に子供作っちまって、しかもその客に逃げられちまったんだと」
店長「もう中絶もできない時期だったらしい。しかも腹ボテじゃメイドもスナックも働けねえ。頼れる人もいねえ。お水女…結局一人で幼女ちゃんを生んだらしい」
店長「けどよ、働かなけりゃ借金返済どころか生活だって出来ねえ。住んでたアパートも家賃滞納で追い出されて…」
店長「それで…橋の上で途方に暮れてたんだとよ」
男「…借金はどれぐらいあったんですか?」
店長「…詳しくは知らん。親父さんの生命保険やらなんやらである程度返済して…」
店長「それでもまだ2000万ぐらい残ってるって言ってたなぁ、あの時は。多分、今でも500万か600万はあるだろう」
男「…自己破産とか生活保護は…」
店長「それは相手にうまくしてやられたんだ。残務の借り換えってやつを使ってな」
男「残務の借り換え?」
店長「…自己破産が認められない場合の一つに、借入期間が短い場合がある。つまり、借金をしてから一年以内の場合は自己破産ができないんだ」
店長「貸したほうが期限を切り、それまでに返せない場合は他から借りて返させる。そうするといつまでたっても自己破産はできない」
男「ひでえ…」
店長「生活保護なんざ、健康そうだったらそれだけで撥ねられることもある。役所なんてもんは当てにはならねえよ」
男「…」
店長「…ま、そこまで話を聞いちまったらなぁ…赤ん坊が不憫に思えてよ…うちで働けって言ったんだ」
店長「そしたらすぐに人気が出てな。俺は事務所で幼女ちゃんの面倒見てたから黒服からの又聞きなんだが…」
店長「お水女、すっげえ接客上手でよ。ほかのキャストが嫌がるような客とでも嫌がることなく笑顔で接客しやがんだ」
店長「しかもほかのキャストにも気を使って、店の雰囲気がすごく良くなってな。店の売り上げも上がっていったんだ」
男「…」
店長「で、ある時聞いたんだ。お水女のおかげで店の雰囲気も良くなったし売り上げも上がったから、ボーナスでも出そうかってな」
店長「そしたらお水女、なんて言ったと思う?」
男「…恩返し?」
店長「…」
男「…俺、なんか変なこと言いました?」
店長「いや…なんでそう思った?」
男「いや…俺だったら店長に感謝して恩返ししたいって…」
店長「…お水女がお前と一緒に暮らしてる理由が分かったよ。お前ら、考え方が一緒なんだな」
男「はあ…」
店長「よくもまあそんな恥ずかしいことが言えるもんだ…まあ、それを聞いて俺も考えを改めたんだがな」
男「何をですか?」
店長「…オンナたちもこの世の中、必死にもがいて生きてるんだ。だから…もうちっとばかしキャストのことも考えてやるかってな」
男「…店長さん、いい人ですね」
店長「けっ。よせやい。ケツがムズムズすらあ」
男「ははは」
店長「…お水女はオトコを信用していない。そんなお水女が男、お前にだけは幼女ちゃんを預けている」
店長「そのことをよく考えてくれ。いいな?」
男「…」
店長「…お水女を泣かすようなことはするなよ?」
男「…」
店長「…話はこれで終わりだ。帰るか」
男「アパートまで送ってくれないんですか?」
店長「なんだ?俺に掘られたいのか?」ニヤッ
男「…ちょっとだけいいかなって思いました」ニコッ
店長「ははは。お前には手は出さねえよ。お水女に殺されらあ」
男(店長さん…やっぱいい人だ)
店長「あ、困ったことがあったら何でも言ってくれ。名刺を渡しておく」
男「はい。ありがとうございます」ペコッ
~アパート~
ガチャ
男「ただいまー…」
お水女「あ、おかえり!」
男「なんだ。まだ起きてたのか?」
お水女「男のことが気になって…店長に何かされなかった?」
男「あははは。何にもないよ」
お水女「ホントに?」
男「ホントホント」
お水女「じゃあ…何してたの?」
男「…幼女のことが大好きだって力説されたよ」
お水女「え?それだけ?」
男「うん。店長さん、幼女のこと溺愛してるんだな」
お水女「そりゃあね。あたしが仕事してる間、ずっと面倒見てくれてたんだもん」
男「そうだってな。じゃあそろそろ寝ようか」
お水女「そうだね。おやすみなさーい」
男(店長から聞いた話は話さないほうがいいな…)
~数日後・幼稚園の帰り~
幼女「きょうねー、ほいくえんでおゆーぎしたの!」
男「お遊戯?どんなことしたんだ?」
幼女「さーいーたー さーいーたー ちーぷっぷなのはながー♪」
お水女「ふふふ。ちーぷっぷじゃなくてチューリップでしょ?」
幼女「ちーぷっぷー!」
男「ははは。ちゃんと言えてないぞ?」
幼女「あぇ?ちーぷっぷ…ちーぃっぷ…」ブツブツ
お水女「そのうちちゃんと言えるようにわよ」
幼女「ほんと!?」
男「ああ。ホントだ」
幼女「うん!」
男(なんか俺…ホントの父親みたいだな…)
お水女「ふふふ。あ、もうこんな時間」
男「そっか。いってらっしゃい」
幼女「いってぁっしゃーい」ブンブン
~アパート~
幼女「ただいまー」
男「ただいま。郵便受けは…ん?手紙?」ガサゴソ
男(これは…俺が送った手紙か…やっぱり宛先不明で帰ってきたか…)
男(お水女には後で言っとこう。けど、これではっきりした。親父たち、どこかに引っ越したんだ…)
幼女「ねー、どうしたの?」
男「…いや、何でもない。おやつ食べるか?」
幼女「うん!」
~真夜中~
お水女「いただきます」
男「はいどうぞ」
お水女「…ふふふ」
男「ん?」
お水女「ううん。なんかいいなーって…」
男「なにが?」
お水女「いただきますって言ったら男がね…ちゃんと返事してくれるのが…ね?」
男「そ、そうか?」
お水女「うん。そう言うのって幸せだなーって思ってさ」
男「普通だろ?」
お水女「その普通がいいんじゃない。ね?」ニコッ
男(…ああ。お水女のその顔…俺いま結構幸せかも…)
今日はここまでにします
おやすみなさいノシ
乙ありがとうございます
今から投下します
~数日後~
幼女「いってきまーす!」トテテテ
男「おーい。コケるなよーって…もう保育園の教室に入って行っちまった…」
保母「おはようございます」
男「おはようございます」
保母「今日も幼女ちゃん、元気ですねー」
男「はい。あの…」
保母「なんでしょうか?」
男「幼女のこと、よろしくお願いします」ペコッ
保母「…ふふふ」
男「…なんですか?」
保母「いえ。本当のお父さんみたいだなって」
男「はあ…」
保母「責任をもってあずからせていただきます。ご心配なさらずに。ね?」
男「はい。じゃあ、失礼します」
男「…さて、スーパーによって…今日は何が特売だったかな?」
~スーパーの前~
男「まずは広告チェックだな…今日は豚バラとキャベツと卵が安いのか…今夜はお好み焼きかな?」
「男!」
男「え?…あ、先輩…」
先輩「やっぱり男か!貴様のせいでっ!!」グッ
男「ちょ!ちょっと先輩!!いきなり胸倉つかむって…なんですか!?」
先輩「お前!今までどこで何してたんだ!!」
男「すいません。俺…記憶喪失になってて…」
先輩「ざっけんな!何が記憶喪失だ!!そんな戯言信じられっか!!」ユサユサ
男「けど本当なんですって!なんでここにいるのかもわかってないんですよ!!」
先輩「…マジか?」
男「マジです」ゲホゲホ
先輩「…ちょっと落ち着けるとこに行こう。来い」グイッ
男(…まあ、いきなりいなくなったんだ。先輩が怒るのも無理はないか…)
~近所のファミレス~
先輩「…」
男(まいったな…先輩、さっきからなんか考えてるみたいで一言も話さない…)
先輩「お前…マジで記憶喪失なのか?」
男「あ、はい。婚約者がいたことは思い出したんですが…なんで記憶喪失になったのかはまだ…」
先輩「…」
男(またなんか考えてる…)
先輩「…まあ」
男 ピクッ
先輩「…無事でよかった」
男「はい?」
先輩「妻も気にしてたぞ?」
男「そ、そうですか…」
先輩「それに会社のほうもいろいろあってな…」
男「ちょっと待ってください」
先輩「…なんだ?」
男「先輩は…なんでここにいるんですか?」
先輩「…この近くの取引先に来た時に、たまたま男によく似たやつを見かけてな…気になって張ってたんだ」
男「この近くには取引先はなかったと思うんですけど…」
先輩「…実家に帰ったんだ」
男「え?」
先輩「今は会社を辞めてな…親の会社を手伝っている」
男「そうですか…会社に電話して先輩に繋いでもらおうとしたら、そんな社員はいないといわれたんですけど…そう言うことだったんですね」
先輩「お前、会社に電話したのか?」
男「え、ええ…けど俺、名乗っても知ってる人はいないみたいだったし…」
先輩「そうか…上司も転勤で別の営業所に行ったからな…」
男「ほかの連中は?」
先輩「…みんな辞めたり移動になったりでな…多分俺たちのことを知ってる奴は、今はいないんじゃないか?」
男「そうですか…それで…先輩は一人でここに来たんですね?」
先輩「ああ…」
男「…ちょっと聞きたいんですけど…」
先輩「なんだ?」
男「…俺、あっちではどんな風に言われてるんですか?」
先輩「どんな風にとは?」
男「あ、いや…いきなり行方不明になったわけでしょ?だから…みんなに迷惑かけちゃってるし…」
先輩「…聞かないほうがいい」
男「…ひどく言われてるんですね…あ、婚約者はどうしてますか?」
先輩「…」
男(なんで黙る?なんかよくないことにでもなってるのか?)
先輩「…知らないほうが幸せなこともあるさ。特にお前の性格なら…な」
男「…でも、何にも知らないままって言うのは無責任でしょ?」
先輩「…お前はこのままここにいるほうが幸せだ」
男「どう言うことですか?」
先輩「…なあ男。本当に…何があったか思い出せないのか?」
ピピピピッ
男「腕時計の時報か…あ、すみません。そろそろ幼女を迎えに行く時間なんです」
先輩「幼女?」
男「…俺の面倒を見てくれている人の娘です」
先輩「お前…ひょっとしてオンナと一緒に暮らしてるのか?」
男「え、ええ…3人で暮らしてますけど…」
先輩「…そうか」ニヤッ
男(…一瞬先輩が笑ったように見えたけど…)
男「それじゃ、失礼します」ガタッ
先輩「…男」
男「はい」
先輩「お前…今、幸せか?」
男「…はい」
先輩「そうか…何かあったら電話してくれ」スッ
男「…先輩、ケータイ変えたんですか?」
先輩「…ああ。こっちに戻ってきたときにな。仕事も変わったし…心機一転だ」
男「そうですか。それじゃ」
先輩「ああ」
~数日後~
男「…」
幼女「よーでぅ よーでぅ よーでぅ よーでぅ♪」ブンブン
男(先輩の言う通りだとしたら…謎が多すぎる…)
幼女「よーかいでぅけん でぁぇんけん♪」クネクネ
男(なんで先輩は会社を辞めたんだ…会社にいたときは実家に帰る気はないって言ってたのに…)
幼女「ぉーいぇ ぉーいぇ なかまにぉーいぇ ともだちだいじっ♪」ユサユサ
男(上司がいきなり転勤になったのも変だ…支店の課長から営業所勤務って…左遷じゃないか)
幼女「よーかーい よーかーい よーかーいうんちっち♪」クルッ パッ
男(同じ部署の連中が辞めたり移動になったり…はブラックな職場だったからよくあることだし、取り立てて変じゃないけど…)
幼女「くさーい!きゃははは!!ねーねーおとこ。おもしぉかった?」
男「…うん、面白いよ…」
幼女「…おとこぉ?」
男(それに婚約者のことも…どうして先輩は何も言ってくれないんだ…)
男 ブツブツ…
幼女「…」
トテトテトテ
幼女「…ねえ、おかーさん」
お水女「なあに?」
幼女「おとこ…へん。いつもだったぁ『そんなこといっちゃだめだよ』っていうのに…」
お水女「…そうだねぇ」
幼女「…おはなししちゃだめ?」
お水女「んー…今はやめといたほうがいいかなぁ」
幼女「そっか…」
お水女「…寂しい?」
幼女「うん…でも…おとこ、へんだかぁがまんすぅ」
お水女「うん。いいこだね」ナデナデ
お水女(もしかしたら…記憶が戻ってきたのかも…)チラッ
~真夜中~
お水女「今日お客さんからお茶もらったんだけどさぁ」
男「…」
お水女「…ねえ、男」
男「…」
お水女「男?」
男「あ、ごめん…聞いてなかった」
お水女「男…最近変だよ?どうしたの?」
男「なんでも…いや、お水女には話しておくよ」
お水女「…なにを?」
男「実はさ、俺…」
お水女(いつかは記憶が戻る…覚悟してたけど…やっぱり怖い…)
男「…先輩に会ったんだ」
お水女「…え?」
男「それで…いろいろ教えてもらったんだけど…かえってよく分かんなくなって…」
お水女(記憶が戻ったわけじゃないのね…よかった…)
男「俺もう…どうしたらいいのか…」
お水女(でも…そんなに悩んでたなんて…)ウルッ
男「それで考え事してて…って、なんで涙ためてるんだ?」
お水女「え?…あ、ちょっと眠くなってきたから…ごめんね?男がせっかく話してくれてるのに…」
男「そっか…仕事で疲れてるんだな。早く寝よう」
お水女「あ、男、待って」
男「ん?」
お水女「あのさ…そんなに気になるんならその…先輩?に連絡とってみたらどう?」
男「え?」
お水女「幼女がさぁ…男が変だから寂しいって言うんだぁ…だから…ね?」
男「そっか…幼女に寂しい思いさせてたんだな…ごめん」
お水女「それは幼女に言ってやってよ。それで明日、先輩って人に電話してみようよ。ね?うちの電話使っていいからさ」
男「…そうだな。ありがとう、お水女」
お水女「ううん。それより…電話での話の内容、あたしにも教えてね?」
男「あ、うん。わかった」
~翌日・アパート~
男「幼女も保育園に送って行ったし…」
男(…緊張するなぁ…)
ピッ ポッ パッ トゥルルル… ピッ
先輩『もしもし?』
男「あ、先輩。俺です。男です」
先輩『男か!?』
男「はい。あの…今大丈夫ですか?」
先輩『ちょっと待ってくれ。移動するから…よし。いいぞ』
男「すみません。ちょっと聞きたいことがあるんですが…」
先輩『その前に一ついいか?』
男「なんですか?」
先輩『お前…記憶喪失だって言ってたよな?どこまで記憶が戻ってるんだ?』
男「えっと…婚約者と同棲していたことまでは思い出したんですけど…記憶をなくす前後あたりはまだ…」
先輩『そうか…』
男(お水女たちと一緒に暮らしてた時のことも所々思い出してきたけど…今は関係ないよな。それより…)
男「あの…先輩、この間一人で来てましたよね?」
先輩『ああ』
男「どうして一人だったんですか?」
先輩『…先に質問だけ言ってくれ。仕事中なんでな』
男「あ、すみません。それじゃ…婚約者はどうしてますか?」
先輩『…それから?』
男「えっと…なんで俺はここにいたほうがいいんですか?」
先輩『…ほかには?』
男「とりあえずそれだけです」
男(先輩は仕事中だからあんまり長電話できないもんな…)
先輩『…わかった。じゃあ…昼頃、この前のファミレスに来れるか?』
男「あ、はい」
先輩『じゃあその時に話すよ』
男「はい。よろしくお願いします」
~近所のファミレス~
男(もう12時過ぎたな…先輩、まだかな…)
先輩「すまん、待ったか?」
男「あ、いえ」
先輩「会社を抜け出してきてるから手短に話そう」
男「はい。お願いします」
先輩「まずは…お前が行方不明になってからのことを話したほうがいいだろ」
男「そうですね…お願いします」
先輩「じゃあ…2年前のあの日…婚約者から電話があってな」
男「え?」
先輩「男の車が事故ったけど男が見つからないってな?」
男「…なんで婚約者は先輩に電話を?」
先輩「…勤務時間中だから会社に連絡したら大事になるって思ったらしい。それで教育係だった俺に電話をしてきたんだ」
男「そうですか…」
先輩「…話をつづけるぞ。それで俺と婚約者は心当たりを探したんだが…結局見つからなくてな」
先輩「それで…三日後に捜索願を出したんだ」
男(そっか…お水女が俺を警察に連れて行ったときに該当しなかったのは…まだ捜索願が出されていなかったからなのか…)
先輩「そのあとも探していたんだが…手掛かりすらなくてな…」
男「…」
先輩「…それで婚約者のことなんだが…いろいろあって、今は実家に帰って引きこもっている」
男「いろいろ?」
先輩「…いきなりフィアンセがいなくなったんだ…よくないことを言う連中もいるさ」
男「あ…」
先輩「それで…みんながこんな風に憔悴する原因は男が急にいなくなったせいだと言うことになっていてな…」
先輩「今さら男が帰ってもみんなから攻撃されるだけだ…」
男「…」
先輩「特に婚約者は…結納の直前まで話が進んでいただけに…大恥をかかさたって婚約者の親が言い出してな…」
先輩「それが相当こたえたみたいで…それまでのこともあって引きこもりになっているらしい」
男「そうだったんですか…そんなことになってるなんて…」
先輩「それでもな、婚約者には男を見つけたことを知らせたほうがいいと思って連絡しようとしたんだ。けどな…」
先輩「ケータイも解約したみたいで繋がらないし…家にも行ったが部屋から出てこなくてな…会うことすらできなかったんだ…」
男「…すみませんでした…」
先輩「…ま、記憶喪失だったんだからしょうがないさ。あっちはそんな状況だから…今、男が幸せなら…あえて地獄に飛び込むことはないさ」
先輩「だから男、お前は…このままここにいるほうがいい」
男「…俺は…どうしたらいいのか…わかんないです…」
先輩「…さっきも言ったようにここにいろ。それがお前のためだ」
男「けど…それじゃ…婚約者が…」
先輩「…婚約者のことは忘れろ!」
男「そう言う訳にはいかないじゃないですか!俺のせいで婚約者は引きこもってるんですよ!?」
先輩「じゃあ…会ってどうする」
男「…え?」
こいつ怪しいべ
先輩「お前が婚約者に会いに行ったとしよう…それでお前は何ができる?」
男「な、何がって…それは…」
先輩「婚約者にしたってそうだ。いきなりお前が訪ねてきて…冷静に話ができると思うか?」
男「うっ…けど…じゃあ…俺はどうしたら…」
先輩「…どうしても婚約者と話がしたいって言うんなら…まずは手紙を書いてみたらどうだ?」
男「…手紙?」
先輩「そうだ。いきなり会うよりはマシだろ。婚約者にしても…多少はショックは少ないだろうしな」
男「手紙…けど俺…婚約者の実家の住所なんか知らないし…」
先輩「お前…婚約者の実家に挨拶に行ったんだろ?」
男「そうなんですけど…その時は婚約者の車で一緒に行ったし…」
男「大体どの辺って言うのはわかるんですけど…詳しい住所は…」
先輩「お前…ホントに婚約者と結婚する気はあったのか?」
男「それは…ありましたけど…」
先輩「けど?」
男「あ、いや。何でもないです…」
男(今はお水女と幼女のこともあるし…)
先輩「…わかった。俺が届ける。それでいいだろ?」
男「…へ?」
>>134 ギクッ!
先輩「お前が書いた手紙を、俺が責任を持って婚約者に届ける。どうだ?」
男「そ、それじゃ先輩に迷惑が…」
先輩「今まで散々迷惑かけられてるんだ。今更どうってことねえよ」
男「…すみません。お願いします」
先輩「手紙が書けたらまた連絡してくれ。じゃあ…そろそろ会社に戻るわ」
男「あ、はい。よろしくお願いします」ペコッ
~真夜中・アパート~
男「~と言う訳なんだ」
お水女「…」
男「お水女?」
お水女「…なんだろう…何か引っかかるんだけど…」
男「なにが?」
お水女「うん…はっきりとは分からないんだけど…」
お水女「なんかさぁ…その…先輩?って人…男が婚約者に会いに行くのを…どうしても止めたいみたいに思えてさぁ…」
男「…考えすぎだろ」
お水女「そうだといいんだけど…」
~2週間後・ホームセンター~
お水女「これなんかどうかな?」
男「…今のよりは大きいけど…値段がなぁ…」
お水女「そっか…こっちは?」
男「…値段も手ごろだな…けど、ホントに買うのか?」
お水女「うん。今年の冬は寒くなるって言うしね」
男「そっか…ありがとな」
お水女「ううん。これがないと寒いでしょ?」
男「今のコタツ、いきなり壊れちまったもんな」
お水女「しょうがないよ。もともと中古の奴だったんだし、あんまり暖かくならなかったもんね」
男「…じゃあ、ほかになんか掘り出し物が無いか見て回るか?」
お水女「そうだね」
?「うわああああ!!!」
お水女「な、なに!?」
男(あ、あれは…)
男「こ、婚約者!?」
お水女「え!?」
?改め婚約者「おまえがぁああああ!!!」
男(やばい!包丁持って突っ込んでくる!)
男「危ないっ!」ドンッ
お水女「あっ!」ヨロッ
ドスッ
男「…あ…」ヨロッ
婚約者「…え?」
男「…い…痛い…」ボタボタ
お水女「…男ぉおっ!!」
婚約者 ギロッ
お水女 ビクッ
婚約者「…お前のせいで…お前のせいでぇえええ!!!」ビュンビュン
お水女「ひっ!」
男 ガシッ
婚約者「男ぉ!は、離してっ!!離してよぉおおお!!!」
男「やめろ…やめるんだ…婚約者…」
お水女 ボーゼン
婚約者「うわぁああああ!!!うわぁああああ!!!」ブンブン
警備員1「やめろっ!」ガシッ
警備員2「包丁を離せ!!」バシッ
カラーン
男「婚約者…やめるんだ…」ズルッ…
ドシャ…
婚約者「…お…とこ…?…」
お水女「いやぁあああ!!!男ぉおお!!!」
婚約者「あ…あは…あははは…」ヘタリッ
男(ああ…お水女は無事みたいだな…よかった…)
------!------!!
男(…静かだ…さっきまでうるさい位だったのに…)
婚約者の声『うふふ。愛してるのはあなただけです』
男(これは…あの時の記憶か?)
?『よく言うぜ。男の嫁になるくせに』
男(…そっか…思い出した…)
婚約者の声『もう。それはあなたがそうしろって言ったからじゃないですか』
男(全部思い出した…全部…)
お水女の声『だったら…うちに来ない?』
男(お水女…すまない…幼女のお迎えにも行けそうにないや…ホントにゴメン…)
~~~~~~~~~~男の意識~~~~~~~~~~
上司「さて、客先周りも終わったし…昼にするか」
男「あ、そうですね。昼飯かあ」
上司「この近所にいい店があるんだ。一緒に食わないか?」
男「何食うんですか?」
上司「蕎麦だ」
男「いいですね。お供します」
ピロピロピロ ピロピロピロ
男「おっと電話だ…知らない番号だな…誰だ?」ピッ
男「もしもし?」
?『あなたの部屋で今、婚約者が浮気をしています』
男「はあ?」
?『嘘ではありません。ご自分で確かめてください』
男「あんたが誰か知らないけど、悪戯にしてはひどすぎるぞ!」
?『悪戯だと思うなら構いません。ですが…現場を押さえるのは今しかありません』
男「いい加減にしろ!!」ピッ
男(婚約者が浮気!?俺の部屋で!?んなわけないだろ!!)
上司「男、早く行かないと座れなくなっちまうぞ?」
男「あ、すみません。ちょっと待ってもらえますか?」
上司「早くしろよ?」
男(信じたわけじゃない…けど…念のためだ…)ピッ ピッ ピッ
プルプルプルプル プルプルプルプル…
男(…早く出ろ…早く!)
プルプルプルプル プルプルプルプル…タダイマデンワニデルコトガデキマセン~
男(畜生!もう一度…)ピッ ピッ ピッ
プルプルプルプル プルプルプルプル…タダイマデンワニデルコトガデキマセン~
男「くそっ!!」ピッ
上司「男、どうした?」
男「…すみません。ちょっと家に帰ってきます」
上司「え?昼飯はどうするんだ?」
男「すみません。帰りは遅くなるかもしれません」ダッ
上司「あ、おい!男!!」
男(そこまで言うなら…絶対悪戯だってわかってるけど…騙されてやる!)
上司「…ちっ。今日はお預けだな…」
・
・
・
~男の部屋の前~
男「…」ドキドキ…
男(…手が震える…鍵を開けるだけだって言うのに!)
カ…チャ…
男(開いた…ゆっくりドアを開けて…)ソロソロ…
男(…!?なんだこの靴は!?男物の革靴…俺のじゃねえ…まさかホントに!?)
男(音を立てずに…部屋の中に…なんだ?声が聞こえる…)
婚約者の声『うふふ。愛してるのはあなただけです』
男(婚約者の声だ…俺のことか?)
?『よく言うぜ。男の嫁になるくせに』
男「!?」
婚約者の声『もう!それはあなたがそうしろって言ったからじゃないですか』
?『哀れだな男は。自分の婚約者が実は俺の愛人で、しかも偽装結婚だったなんてよぉ』
婚約者の声『男には悪いけど…ん…これが一番いいんですよね…はあん…』
?『…もうこんなに濡らしやがって…雌豚が!』
婚約者の声『…あっ…あなたがこんな体に…うぁ…したんじゃないですか…』
?『困った雌豚だ。首輪をつけてやろう』
婚約者の声『ありがとうございます…あふぅ…』
?『後で上司も来る。二人でお前をイジメぬいてやる』
婚約者の声『ああん…うれしい…』
ギシギシアンアン
男(うぅ…うぁあああああ!!!!)
ダダダダ バタン!
婚約者・?『『!?』』
非常階段:ダダダダ…
男(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁああああ!!!)
ガチャ バタン キュルル ブゥウウウウン
男(違う違う!あれは婚約者じゃない!!俺は違う世界に紛れ込んだんだ!!!)
男(早く元の世界に戻らなきゃ!こんな世界は嫌だぁああ!!)
ブロロロロ
男「なんで…なんで…」
男「うわああああ!!!」ガンガン
キュキュキュキュ
男(うお!ハンドルをたたいたらスリップした!!)
男(やばい!電柱にぶつかる!!)
ドゴオォォォン!
男「うぅ…」
クルマガデンチュウイツッコンダゾ!オイ!ダイジョウブカ!?
男「…早く…元の世界に…」ヨロ…
モブ通行人1「お、おい…あんた…大丈夫か?」
男 ブツブツ…
モブ通行人2「あ!ダメだって!今救急車を呼んだから!!」
男「ダメだ…この世界から脱出するんだ…」ヨロヨロ…
モブ通行人3「…こいつヤバい…薬でもやってんじゃねえか?近寄らないほうが…」
男(…駅だ…駅に行って…とにかく…遠くまで…)ヨロヨロ…
・
・
・
車掌「もしもし?終点ですよ?」
男(終点?…降りないと…)
・
・
・
男(頭が痛い…ずっと歩きっぱなしだし…どこか休めるところは…)
男(…あ、あの公園ならベンチがあるかも…)
・
・
・
男(…寒いな…ベンチで寝てると寒すぎる…一旦駅に戻るか…)
男「よいしょっと…はぁ…」
男「…はっくしょん!はっくしょん!!」
男(頭に響く…ああ…星がきれいだ…)
お水女「…あの…大丈夫ですか?」
男「…え?」クルッ
お水女「夜は冷えるから…早く家に帰ったほうがいいですよ?」
男「…家?」
お水女「そう。どこに住んでるんですか?」
男「…俺は…あれ?」
お水女「え?」
男「ここは…どこだ?俺は…どこに住んでるんだ?」
お水女「ちょ…ちょっと…あんた…ふざけてんの?」キッ
男「わからない…なんで…何も思い出せないんだ!!」
お水女「…マジで?名前ぐらい憶えてるでしょ?」
男「名前…俺の名前は…わからない…俺は…誰なんだ…」
お水女「あっちゃー…困ったなぁ…早く帰らないと幼女のことも心配だし…あ、そうだ!交番!!」
男「え?」
お水女「公園を出たとこに交番があるから、そこで保護してもらったら?ね?」
男「は、はあ…」
お水女「ほら、こっちこっち」グイグイ
男「ちょ…そんなに引っ張らなくても…」
ピロピロピロ ピロピロピロ
お水女「あ、ケータイが鳴ってるよ?」
男「え?あ…さっきから鳴ってたのはこれか…」
お水女「早くでなよ」
男「う、うん…」ピッ
ケータイ:『あ!男!いまどこにいるの!?あqwせdrftgyふじこlp;@:』
男「うわっ!」ピッ
お水女「ちょっとちょっと!切っちゃったらダメじゃん!!」
男「けど…ヒステリックに喚いてて何言ってんのか分かんなかったし…」
ピロピロピロ ピロピロピロ
お水女「あ、またかかってきた。ちょっと貸して」
男「う、うん」スッ
お水女「ありがと」ピッ
ケータイ:『男!どこに居るの!?ごめんなさい!!あqwせdrftgyふじこlp;@:』
お水女「ちょっ!ちょっと落ち着いて!!」
ケータイ:『あんたなによ!男はどうしたのよ!?あqwせdrftgyふじこlp;@:』ブチッ プーッ プーッ…
お水女「切られちゃった…リダイヤルを…ちょっと。ロックはずして」
男「…わからない…」
お水女「え?貸して」
男「はい。あ」ポロッ
カン カツッ カツッ カラカラカラ…
お水女「ちょっと!何やってんのよ!!道路の真ん中に転がってっちゃったじゃん!…取りに行きかきゃ」
タタタ プォプォオオオン
男「あぶない!」グイッ
お水女「きゃっ!」
ブロロロロ ベキバキッ
お水女・男「「…」」
男「ケータイ…バラバラになっちまった…」
お水女「また掛ってくるかもしれなかったのに…」
男「ごめん…」
お水女「はあ…とりあえずさ、交番に行こう?そこで保護してもらうなりしようよ。あたしも早く帰りたいしさぁ」
男「…うん。ごめん」
・
・
・
~交番~
警官「記憶喪失?」
お水女「はい。そうなんですよ。そこの公園でボーっとしてたから連れてきたんですけど…」
警官「記憶喪失ねぇ」チラッ
男「…」
警官「…で、名前は?」
お水女「あ、男って言うみたいです」
警官「男っと…ちょっと待って。あ、もしもし?捜索者の照会なんですけど…」
警官「はい。男って言うらしいんですが…ない?はい。わかりました」ガチャ
警官「捜索願は出てないみたいだねえ」チラッ
お水女「でも、ホントに記憶喪失d」
警官「あのねえ!」
お水女・男 ビクッ
警官「よくさあ、こういうの、あるんだよねぇ。罰ゲームとかでさぁ、交番にやってくる人がねぇ」
お水女「…え?」
警官「どうせ偽名なんでしょ?“男”って言うのもさあ」
お水女「そんなことしません!ホントに男は記憶喪失で!!」
警官「はいはい。本官も暇じゃないから。早く帰った帰った」
お水女「保護しないんですか!?」
バンッ!
警官「いい加減にしないと怒るよ!」
お水女「嘘じゃないの!この人はホントにっ!!」
男「…もういいよ」
お水女「…え?」
男「お邪魔しました」ガタッ
警官「もうこんな悪戯するんじゃないぞー」
お水女「…もう!」
・
・
・
男「…はぁ…」
お水女「ちょっと待ってよ!あんた、それでいいの!?」
男「…これ以上あそこにいてもさ、あの警官とあなたが喧嘩するだけだし。じゃあ…お世話になりました」ペコッ
お水女「…あんた、これからどうするの?第一行く当てはあるの?お金は?」
男「…」フルフル
お水女「やっぱり…だったら…うちに来ない?」
男「…へ?」
お水女「あんたさぁ…悪い人には見えないし。今夜はうちに泊めてあげるから…明日、病院に行って診てもらいなよ。ね?」
男「いや、それじゃあなたに迷惑が…」
お水女「乗り掛かった舟だよ。ケータイが壊れたのはあたしにもちょっとは責任がるし…」
お水女「それにさ、このまま別れてあんたに何かあったら…寝覚めが悪いからね」
男「…すいません。ありがとうございます」
お水女「あ、自己紹介が遅れたね。あたしはお水女。それと…うちには子供がいるから静かにしてね?」
-----そうか…思い出した…全部…
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~病院~
男「…」パチッ
お水女「…男?」
男「…よう、お水女」
お水女「…男ぉ!よかった…よかったぁ…」ギューッ
男「痛い痛い!傷口が開くって!!」
お水女「あ、ごめんなさい…」ポロポロ
男「…お水女…ごめんな。心配かけて…」
お水女「ううん…男はあたしを庇ってくれたんだもん…ホントによかったぁ…」ポロポロ
お水女「ずっと目が覚めなくて…男、三日も寝たままだったんだよ?」
お水女「いつ目が覚めるか分かんなっくて…ずっと一緒にいたんだぁ…」
男「そっか…幼女は?」
お水女「店長が預かってくれてるよ…あ、店長にも連絡しなきゃ。ちょっと席を外すね?」ガタッ
男「…ごめんな?うちのことは出来なくて…幼女の送り迎えも…」
お水女「そんなこと心配しなくていいよ。幼女の送り迎えは黒服さんたちがやってくれてるし」
お水女「それに幼女も、店長たちと楽しそうにやってるからね。じゃあ」
パタン
男「ふぅ…」
男(全部思い出した…このままじゃいけない…よなぁ…)
男(お水女にはちゃんと話そう。その上でどうするか…俺は…どうしたいのか…)
ガラララ
お水女「店長がね、ゆっくり養生しろって。幼女のことは心配するなってさ」
男「そっか…やっぱいい人だな。店長さんは」
お水女「そうだね」
男「…」
お水女「…男。痛いの?」
男「いや、痛いのは痛いんだけど…」
お水女「…じゃあ…どうしたの?」
男「…」
お水女「…何考えてるか分かんないけど…今は体を治そ?ね?」
男「…うん、そうだな。わかった」
~三日後~
お水女「ほら、新聞に載ってたんだよ?地方紙だけどさ」
男「…ホントだ。『ホームセンターで男性刺される 通り魔か?』か…」
お水女「…『犯人は心療内科に通院歴があり…』って…」
男(そういやカウンセリングを受けてるって言ってたな…今となってはホントがどうかわからないけど…)
お水女「それにしても小さい記事だねぇ」
男「大した事件じゃないからだろ」
お水女「あたしたちにとっては大事件だったのにね…」
コンコン
男「ん?誰だろ…」
お水女「…店長かな?はーい」
ガラララ
?「大丈夫ですか?」
お水女「え?」
男「…あ、久しぶりです」
?「思ったより元気そうね」ニコッ
お水女「えっと…どちら様ですか?」
男「あ、この人は先輩の奥さんだよ」
?改め先輩妻「初めまして。先輩妻です」
お水女「あ、お水女です」ペコッ
先輩妻「…先輩妻です」
ゾクッ
お水女(なんだろう…能面みたいに無表情だ…)
先輩妻「…あの…あなたは男さんと…どういった御関係で?」
お水女「あ、あの…記憶喪失だった男の世話をしてたんです」
先輩妻「記憶…喪失?」
男「はい。おかげで今まで生きてこれたんです」
先輩妻「そうだったの…」
お水女(あんまり驚いてないみたい…)
先輩妻「…ありがとうございます。男さんがお世話になったみたいで…」
お水女「いえ!あたしが勝手にやったことだし…」
先輩妻「ところで…男さんと二人っきりでお話がしたいの。席をはずしてくださいますか?」
お水女「え?で、でも…」チラッ
男「お水女が一緒だとマズいんですか?」
先輩妻「ちょっと…ね」チラッ
男「…わかりました。お水女…」
お水女「…わかったよ…ちょっと売店に行ってくる…」
男「ごめんな?」
お水女「うん…」
パタン
先輩妻「…どこから話そうか…」
男「…婚約者の不倫のことですよね?」
先輩妻「ええ…男さん、婚約者の不倫相手って…知ってるの?」
男「…上司と…もう一人…」
先輩妻「…もう一人はね…私の夫なの」
男「…」
先輩妻「…驚かないのね」
男「それが一番辻褄が合いますからね。でなけりゃ先輩妻さんがここに来る理由がないですから」
先輩妻「…頭がいいのね。さすが、出世頭だったことはあるわ」
男「…あの日…俺に電話してきたのは先輩妻さんですよね?」
先輩妻「ええ…まさかこんなことになるとは思わなかったの…」
男「…」
先輩妻「あの日…いったい何があったの?教えてもらえないかしら」
男「…あの電話を受けた後…俺は部屋に戻って…そしたら婚約者が…」
先輩妻「…」
男「それで…悲しくなってそこから逃げ出して…」
男「それで事故って…とにかくそこから逃げたくて…電車に乗ってこの町に来て…お水女の世話になっていたんです」
先輩妻「そうだったの…記憶喪失になったのは?」
男「…事故った後です。だからお水女に出会ったときには記憶喪失だったんです…」
先輩妻「そう…」
男「…先輩妻さん」
先輩妻「なあに?」
男「先輩妻さんは…なんで今日、ここに来たんですか?」
先輩妻「…男さんに渡したいものがあります」
男「渡したいもの?」
先輩妻「…ここに私が興信所を使って調査した報告書のコピーがあります」
男「報告書?」
先輩妻「私は…もう制裁は終ったわ。あなたもあの人たちに制裁するつもりなら…これを使うといいわ」
男「制裁って…」
先輩妻「…慰謝料と財産分与。それから会社にも出向いて…それであいつはクビになって、上司って人も処分されたって聞いたわ」
男(そっか…それで先輩は実家に戻されて…上司は左遷されたのか…)
男(先輩のケータイの番号が変わった理由もこれで分かった…)
先輩妻「…じゃあ、私はそろそろお暇するわ」
男「あ、はい。ありがとうございました」
先輩妻「…何かあったら連絡して。できることなら協力するから」スッ
男「あ、どうも…俺今ケータイ持ってないから…」
先輩妻「じゃあ連絡先を教えて」
男「…何かあったらこっちから連絡します。それじゃ」
先輩妻「…それじゃ」ガタッ
ガラララ パタン
男「…ふう」
男(…制裁…か…今さら…だよなぁ…それにしても…)
男(なんで先輩妻さんは…俺がこの病院に入院していることを知ってたんだ?)
男(新聞にはそこまでの情報は載っていなかった…ということは…)
男「…」
ガラララ
お水女「男、ジュース買ってきたよ。はい、グレープジュース」
男「お、ありがとう。お水女は俺の好み、よく知ってるな」
お水女「そりゃあねぇ。2年も一緒に暮らしてたんだもん。ふふふ」
男 ゴクゴク
お水女「…ねえ、男」
男「ん?」
お水女「…どんな話をしたの?」
男(お水女にはまだ話さないほうがいいか…俺がこれからどうするか決めるまでは…)
男「…」
お水女「そっか…話せるときが来たら話して」ガタッ
男「お水女?」
お水女「ごめん…仕事の時間だから…」
ガラララ
男「…ごめん」
お水女「…待ってるからね」
パタン
男(このままじゃダメだ…お水女のことも…婚約者のことも…ほかの人のことも全部…)
男(考えよう…何が起こったのか…どうすればいいのか…)
~クラブ~
黒服1「…」
お水女「モブ客さんすごいですね!そんなお仕事してるなんて!!」ボディータッチ
モブ客「いやいやいや。大したことないって。がははは」
黒服2「…黒服1さん」
黒服1「なんだ?」
黒服2「お水女さん…どうしちゃったんすかねえ?なんか…無理に明るく振舞ってるみたいで…」
黒服1「…やっぱアレだろ。男さんのことで…」
黒服2「それしかねえっすよねえ…あれ、どう見てもヤケクソっすもんね…」
黒服1「…店長からも注意するように言われてるからな。お水女が変なことしそうになったら…」
黒服2「わかりました。それで店長は?」
黒服1「事務所で幼女ちゃんと遊んでるよ」
黒服2「あ、いいなぁ」
黒服1「なんだお前、ロリコンか?」
黒服2「違いますって。幼女ちゃん、俺らにも笑顔で…なんか癒されるんすよねぇ」
黒服1「そうだな…」
黒服2「黒服1さんも同じじゃないっすか。へへへ」
黒服1「ふっ。あの子は俺たちのアイドルだな。店長もメロメロだし」
黒服2「おかげで俺ら、店長に狙われなくなったから助かります」
黒服1「…さて、おしゃべりはこの辺にして仕事に戻れ」
黒服2「了解っす」
~1週間後~
男「それじゃ、お世話になりました」ペコッ
医師「はい。お気をつけて」
看護師「奥さん、あなたすごく献身的だったわね。今時珍しいわ」
お水女「いえ、そんな…ありがとうございます」ペコッ
店長「おい、早くしろよ。幼女ちゃんが店で待ちくたびれてっぞ」
男「あ、はい。それじゃ…失礼します」
・
・
・
~店長の車~
男「すいません。車で迎えに来てもらっちゃって…」
お水女「あたしも今日はお休みもらっちゃって…」
店長「いいってことよ。ちょっと気になることもあったしな」
お水女「気になることって?」
店長「…最近この町に怪しいやつがうろついてるらしい」
男「怪しいやつ?」
店長「ああ。まあ、何もないとは思うが…ここは俺たちの町だからな。何かあったらすぐにわかるから」
店長「そっちは俺たちに任せておけ。しばらくはキャストの送り迎えに黒服をつけるし」
男「はあ…」
お水女「あたしも気をつけよ…」
店長「あ、それからな。男、お前…幼女ちゃんの保育園、送り迎えできるか?」
男「まあ、なんとか…」
店長「無理するなよ。幼女ちゃんの送り迎えは任せておけ」
お水女「店長…幼女と遊びたいだけじゃないの?」
店長「ははは。バレたか。まあ、黒服たちもなんだかんだで幼女ちゃんのことが気に入ってるようでな」
店長「そう言う訳で、男は体を治すことに専念しろ。いいな?」
男「はい。ありがとうございます」
店長「けっ。よせやい」
~アパート~
幼女「たっだいまー!」
男「ただいま」
お水女「ただいま…おかえりなさい」
男「ああ、ただいま」
幼女「ねーねーおとこ!こっちこっちー!!」グイグイ
男「おいおい、あんまり引っ張るなって」
お水女「ふふふ。幼女ったら嬉しくって燥いじゃって」
幼女「はいこっぷ。おひとつどうぞ♪」シナッ
男「ぶふぉっ!」
お水女「よ、幼女…どこでそんなことを…」
幼女「くろふくさんたちにおしえてもぁったのー」
お水女「あの子達ったら…もう…」
男「ははは…」
・
・
・
男「…幼女も眠ったし…」
お水女「…ねえ、男」ソッ…
男「その前に…お水女…俺の話を聞いてくれるか?」
お水女「え?」
男「大事なことなんだ」
お水女「…絶対聞かなきゃ…ダメ?」
男「うん。入院中に考えてたことなんだけどさ…」
お水女「…わかった」
男「ありがとう、お水女。単刀直入に言うよ。俺…婚約者に会いに行いたい」
お水女「え!?」
男「ほら、入院中に先輩妻さんが来たろ?それでさ…いろいろ考えたんだけど、まだ分かんないところがあって…」
男「それで…これから先のことを考えるのに…はっきりさせときたくてさ」
お水女「ダメだよ!」
男「お水女…」
お水女「男を刺した相手だよ!?第一面会なんてできないよ!!」
男「そうかもしれない…けどさ、会ってみたいんだ」
お水女「ダメだよぉ…」グスッ
男「お水女…俺さ、記憶が全部戻ったんだ」
お水女「…わかってたよ…なんとなくね…」
男「そっか…それで…記憶が戻ったのにわかんないところがあって…それが知りたくてさ…」
男「そのためには…婚約者とか…ほかの人にも会ってみないと…そう思ったんだ」
お水女「…」
男「まずは婚約者にあって…いろいろ聞きたいんだ」
お水女「何を…聞きたいの?」
男「…なんで浮気したのか…知りたいんだ」
お水女「…そんなこと知ってどうするの?もう終わったことじゃん!」
男「…俺の中じゃまだ終わってないんだよ。婚約者だってそうだ…でなけりゃあんなことしないだろ?」
お水女「でも!」
男「お水女…これは俺のけじめなんだ。ひょっとしたら婚約者をここまで追い詰めた責任の一端は…俺にもあるんじゃないかって」
お水女「で、でも…」
男「だから…俺は婚約者に聞きたい。浮気の理由を…さ」
お水女「…」
男「…」
お水女「…このまま…今まで通りって訳にはいかないの?」
男「今まで通りにするために必要なんだ」
お水女「…わかった。男がそう言うなら…」
男「ありがとう、お水女」
お水女(男は婚約者に会ったら…もしかしたら帰ってこないかも…)
お水女(でも…男はそうしたいって…だったら…送り出すしかないよね…)グスッ
~三日後・留置場~
弁護士「いいですか?警察官の立ち合いもありますので軽率な行動はくれぐれも…」
男「はい、すみません。我儘を聞いてもらって…」
弁護士「本来ならこんなことはしないんです。しかし…彼女が何も話してくれないので…荒治療ですけどね」
男「わかってます」
ガチャ
婚約者「…」
弁護士「…こんにちわ、婚約者さん。今日はあなたとお話したいって人をお連れしました」
婚約者「…」
弁護士「…入ってきてください」
男「…久しぶり」
婚約者「!?」
男(婚約者のやつ…俯いちまった…顔が見えないな…)
男「…座っていいか?」
婚約者「…」
男「座るぞ?」ギッ
弁護士「男さん、あまり刺激しないようにね」
男「はい」
婚約者 カタカタカタ…
男(婚約者…震えてるな…)
男「…すまなかった」
婚約者「…え?」
男「俺がさ、仕事に感けて婚約者のことをほったらかしにしたから…浮気したんだろ?」
婚約者 キョトン
男「婚約者…ホントにすまなかった」フカブカー
婚約者「………うわぁあああん!!ごめんなさあい!!!」
男「婚約者…」
婚約者「違うのっ!違うのよぉおお!!!」
男「…とりあえず落ち着こう。な?」
婚約者「うわぁあああん!!うわぁあああん!!!!」
・
・
・
婚約者 グスッ グスッ…
男「…落ち着いたか?」
婚約者 コクン
警察官「接見を中止しますか?」
婚約者「…」フルフル
弁護士「…では、落ち着いて話してください。男さんもね」
男「はい」
婚約者「…はい」
男(婚約者…ちょっと顔を上げてくれた…)
男「…さっき違うって言ったよな?」
婚約者 ピクッ
男「…何がどう違うのか…話してくれないか?」
婚約者「…浮気じゃないの…」
男「…どういうこと?」
婚約者「…私の教育係が先輩さんだったことは…知ってるよね…」
男「ああ」
婚約者「実は…その時からずっと…先輩さんとその…関係があって…」
男「…」
婚約者「最初は…失敗しても優しく宥めてくれる先輩のことが気になって…誘われるままに…」
婚約者「それから…2年ぐらいして…先輩さんが結婚することになって…私とは終わりにしようって…」
男(先輩…二股かけてたのか…)
婚約者「でも…そのころにはもう…先輩のことが忘れられなくなってて…結婚した後も…」
婚約者「でも…先輩さんの奥さんが浮気を疑い始めて…それで…男には悪いんだけど…偽装結婚しようって話になって…」
婚約者「私は…先輩さんに言われるまま…男と付き合うようになって…会社も辞めて…」
男「…俺は当て馬だったわけだ」
婚約者「ごめんなさい…」
男「…よく話してくれれたな。辛かっただろ?ありがとう」
婚約者「男ぉ…男はこんなに優しくていい人なのに…私は…なんてことをしようとしてたんだろ…」
男「それから…あの日のことなんだけど…」
婚約者「…男が…いなくなった日?」
男「そう、あの日…何があったのか、その後どうなったのか…教えてほしい」
婚約者「そうだね…男には知る権利があるよね…」
男「あの日…俺は先輩妻さんからの電話で部屋に戻って…婚約者たちの話を聞いちまったんだ…」
男「その後部屋を飛び出して…車を運転してて…運転を誤って事故って…」
男「とにかく遠くに行きたくて…電車に乗ったんだ…」
男「その後…記憶をなくした俺は…ある人の世話になってて…ホームセンターで婚約者に刺されたときに…すべてを思い出した」
婚約者「…」
男「…俺が知りたいのは…俺が部屋を出ていった後…お前たちは何をしていたのか…それが知りたい」
婚約者「…」
男「…」
婚約者「…あの時…」
婚約者「…急にドアが閉まる音がして…上司さんが来たのかと思って…でも誰もいなくて…」
婚約者「そしたら警察から電話があって…男の車が事故を起こしたって…」
婚約者「それで…先輩さんと一緒に警察に行って…その後男に電話をかけたんだけど…なかなか繋がらなくて…」
婚約者「やっと繋がったと思ったらすぐに切られて…もう一度掛けたら女の人が出て…」
婚約者「番号を間違えたのかと思って…そのあと何度も掛けたけどもう繋がらなくて…」
婚約者「それで…部屋に戻って男を待ってたんだけど…次の日に弁護士から電話がかかってきて…」
男「弁護士?」
婚約者「先輩さんの奥さんが雇った弁護士…それで…私たちの不倫に対して訴訟を起こすって言われて…」
婚約者「先輩さんに連絡を取ろうとしたんだけど電源が切られてて…会社や実家にも内容証明を送られて…」
婚約者「それで…先輩さんはクビになって…上司さんは地方の営業所に…」
男「…」
婚約者「それで…当然だけど…先輩の奥さんに法外な慰謝料を請求されて…」
婚約者「先輩の奥さんに言われたんだ…『私はお金をもらっても到底気持ちの整理はつかない。だから裁判を起こしてあなたたちのしたことを白日の下にさらけ出したい。』」
婚約者「『けれど…あなたたちにも御家族はいる。だからこの慰謝料の金額は…私が裁判を起こさないための、ギリギリの金額だと思ってください』って…」
婚約者「その時初めて…自分のしたことの罪の深さを自覚したの…」
婚約者「それで…きっと男も…先輩妻さんと同じ気持ちなんだろうなって…」
婚約者「それで…私は貯金をすべて吐き出して…足りない分はお父さんたちに出してもらって…」
婚約者「両親には泣かれるし…男のご両親には『制裁は息子が自らするだろう』って言われて許されることもなくて…」
婚約者「自分の軽率な行動で…いろんな人たちが不幸になったんだって…そう思ったら怖くなって…」
男「それで…引きこもってたのか…」
婚約者 コクン
男「…心療内科には?」
婚約者「…実家に戻った後…鬱病になって…それでかかってた…」
男「…大変だったな…」
婚約者「…どうして…どうしてそんなこと言うのよ…」グスッ
男「俺には…それしか言えないから…」
婚約者「あんた…馬鹿よ…」
男「そうかもな…」
婚約者「うぅ…」グスッ
男「…なあ」
婚約者「…なあに?」
男「…なんでホームセンターで俺たちを襲ったんだ?」
婚約者「…」
男「婚約者、お前…引きこもってたんだろ?それが…なんであんなことしたんだ?」
婚約者「それは…手紙を見たから…」
男「手紙?あ、先輩から貰ったんだな」
婚約者「ううん…誰からはわかんない…パソコン印刷だったし…名前がなかったから…でも…先輩だと思う…」
男(俺が先輩に渡した手紙じゃないな…手書きだったし…ということは先輩が打ち直したのか?)
婚約者「…男?」
男「あ、ごめん。続けてくれるか?」
婚約者「その時私は…鬱病もだいぶ良くなってて…でも…その手紙を見て…」
男「…その手紙にはどんなことが書いてあったんだ?」
婚約者「…男はオンナと同棲してて…子供もいて…私は男に騙されてたんだって…3人一緒の写真も同封されてて…」
婚約者「でも…信じられなくて…それで…自分の目で確かめたくて…」
婚約者「書いてあった住所のあたりで男たちを探していたら…ホームセンターに入っていくのを見かけて…」
男「そっか…それで…」
婚約者「私…とんでもないことした…一度ならず二度までも…男にひどいことしちゃった…」
男「…もういいよ。十分反省してるみたいだし。ただ…なんでお水女なんだ?狙うなら俺のほうだろ?」
婚約者「わからない…だけど…あのオンナは…男の隣で幸せそうに…」
婚約者「それで憎くなって…本当なら男の隣には私がいたはずなのにって…」
婚約者「…そのあとはよく覚えてないけど…気が付いたら男が血塗れで倒れてて…」
男「…」
婚約者「それで…いろんなことを思い出して…男と付き合ってた時のこととか…不倫してた時の罪悪感とか…」
男「…俺を刺した凶器は?最初から持っていたのか?」
婚約者 フルフル…
男「じゃあ…いったいどこで…」
婚約者「きっと…私がいた場所がたまたま刃物売り場だったから…多分売り物の包丁で男を…」
男「…ごめん」
婚約者「だからぁ…なんで男が謝るのよぉ…一番の被害者じゃない!!」
男「…婚約者がこんなことをしたのも…俺が記憶を失ったからだもんな…」
婚約者「そんなこと言わないでよぉ…うっ…うう…」グスッ
男「婚約者…最後に教えてくれ。お前は俺を…愛していてくれたのか?」
婚約者「………………」フルフル…
男「そっか…正直に言ってくれてありがとう」
弁護士「…こう言っては何ですが…男さん、あなた…優しすぎますよ。そのやさしさが…余計に人を傷つける」
男「…だから俺は優しくなんかないんですよ」
弁護士「…そろそろ時間です。帰りましょうか」
男「…はい。婚約者」
婚約者「…え?」
男「話してくれてありがとう…元気でな。さようなら」ガタッ
婚約者「あ…」
パタン
婚約者「うう…男ぉ…ごめんなさい…」グズグズ…
・
・
・
弁護士「…最後の最後で…あなたって人は…」
男「あれが俺にできる精一杯のことですよ…はっきりと別れを告げるのが…ね」
終わり?
~その頃・お水女のアパート~
お水女 ボー…
お水女(今日は何もする気が起きないなぁ…もうお昼か…)
お水女「…お茶漬けでも食べよ」
コンコン
お水女「男!?」
ガチャ
お水女「…あ」
先輩妻「お久しぶり」ニコッ
お水女「あ、ども…あの」
先輩妻「お話があるの。入っていいかしら?」
お水女「あ、はい。どうぞ」
先輩妻「ありがとう」
・
・
・
>>198 ちょっと意識が…もう少し投下します
お水女「どうぞ」コトッ
先輩妻「お気遣いなく」
お水女「はあ…」
先輩妻「…はあ。おいしいお茶ね」
お水女(お客さんからもらったお茶なんだけど…)
先輩妻「…」
お水女(なんか…息苦しい…)
お水女「あ、あの」
先輩妻「なあに?」
お水女「お話って…」
先輩妻「…」ゴソゴソ
ドン
お水女「…これは?」
ハラリ
お水女「!?」
先輩妻「…500万あります。これで男さんを返してください」
お水女「…え?」
先輩妻「…記憶を失った男さんのお世話をしていただいたことは感謝します」
先輩妻「これは…そのお礼だと思ってください」
お水女「…」
先輩妻「…」
お水女「…なんで」
先輩妻「…」
お水女「なんで…あなたがお金を出すんですか?それに…なんであたしの借金のことを知っているんですか?」
先輩妻「…」
お水女「病院に来た時もそうです。どうして男が入院している病院を知っていたんですか?」
先輩妻「…ごめんなさい。ちょっと調べさせてもらったの」
お水女「やっぱり…」
先輩妻「あなた…苦労されたのね。お父様が借金の保証人になったせいで借金まみれになって…」
先輩妻「自殺したお父様の借金を返しながら…とても信じられないわ」
お水女「なにが…言いたいんですか…」
先輩妻「…あなたが男さんに好意を持っているのはわかるわ。彼、優しいものね」
お水女「…」
先輩妻「でもね、住む世界が違うの。男さんは普通に会社に勤めてて…しかも出世頭だったのよ?」
先輩女「だから…あなたとは…釣り合わないわ」
お水女「…先輩妻さんとは釣り合う…って言いたいんですか?」
先輩妻「…ええ。そうよ」
お水女「先輩妻さん…あなた結婚してるんでしょ?なんで男に?」
先輩妻「…夫とは別れたわ。私は今、独身なの」
お水女「…え?」
先輩妻「あなた…男さんから聞いてないの?私の夫は男さんの婚約者と不倫してたのよ?」
お水女「!?」
先輩妻「私は限界だった…夫は…家では何もしなくて…そのうえ浮気まで……」
先輩妻「だけど…男さんは夫と違って…優しくて仕事もできて…だから夫と離婚して…」
お水女「…」
先輩妻「あ、誤解がないように言っておくけど…私は男さんとはそういった関係はないわ」
お水女「え?じゃあなんでそこまで…」
先輩妻「…私…初めて人を好きになったの」
お水女「え?」
先輩妻「私ね…オトコに不自由したことがないの。何人ものオトコに好意を寄せられたわ。夫の会社の何人かにもね」
お水女(先輩妻さん美人だもんね…)
先輩妻「それで…私もいい年になったし…一番条件のいい夫と結婚したの」
先輩妻「夫の実家は会社を経営してて…羽振りが良くてイケメンで…このオトコでいいやって思って結婚したんだけど…」
先輩妻「夫は実家を継ぐ気はなくて…義弟が実家を継いで…仕送りもなくなったから生活レベルも落ちて…」
先輩妻「そのうえ家では何もしなくって…そんな時にね、男さんが酔った夫を家まで送ってきたのよ」
先輩妻「男はね…『自分がやりますから休んでてください』って言って…酔った夫をベッドまで運んで…」
先輩妻「夜遅くまで夫を連れまわしたことを謝ったり、夫を支えて献身的なよくできた奥さんだとか言ったり…」
先輩妻「ほかにも…いろいろ私のことを褒めてくれて…」
先輩妻「初めてだったのよ?私は…容姿抜きで私を見てくれるオトコに出会ったのは」
お水女「…」
先輩妻「…それからよ。男さんのことが気になりだしたのは」
先輩妻「それで男さんのことをそれとなく会社の知り合いに聞いたりして…気が付いたら好きになってたわ」フッ…
お水女(今の顔…ホントに男のことを好きなんだ…)
先輩妻「でも…私には夫がいて…だから…好きになっちゃいけないって…」
先輩妻「男さんも『夫を支えて献身的なよくできた奥さんだ』って言ってくれてたんだから…諦めなきゃって思って…」
先輩妻「そんな時に、たまたま夫のスマホにオンナからのメールを見つけて頭にきて…」
先輩妻「それで夫に問いただしたら、後輩の女の子だって言って誤魔化そうとしたのよ」
先輩妻「そのとき思ったわ。これは神様がくれたチャンスなんだって」
お水女「チャンス?」
先輩妻「…ええ。夫と別れるチャンスを神様が与えてくれた…私にはそう思えたの」
先輩妻「それからは夫の行動をそれとなく探って…密会のある日を調べて…相手が男さんの婚約者だってわかった時は胸が躍ったわ」
先輩妻「それからは興信所を頼んで証拠を集めて…それで離婚したの」
お水女(この人…怖い…)
先輩妻「でもね…その頃には男さんは行方不明で…興信所を使っても行方が分からなくて…」
お水女「あの…」
先輩妻「なあに?」
お水女「どうして…すぐに男を探さなかったんですか?」
先輩妻「…初めて好きになった人だからね…独身に戻って堂々と男さんに会いに行きたかったから…」
先輩妻「だから…それまでは男さんのことは…考えないようにしていたのよ」
お水女「…」
先輩妻「だから…お願い。男さんを私に返して」
お水女「…でも…」
先輩妻「…今ね、私は会社を経営してて結構裕福なの。この程度のお金なんてすぐに用意できるわ」
先輩妻「だから男さん一人ぐらい余裕で養えるの」
先輩妻「私は男さんと一緒になって…あなたは借金を返済できる…Win-Winでしょ?どう?」
お水女「…考えさせて…ください…」
先輩妻「…わかったわ。今日は帰ります」スクッ
お水女「すみません…」
先輩妻「…また近いうちに来ます。それまでに結論を出しておいてください。じゃ」
ガチャ パタン
お水女「…はあ…」
お水女(きっついなぁ…あはは…)
お水女(覚悟してたのに…人に言われるとこんなにきついなんて…)
お水女(『住む世界が違う』か…確かにね…)
チラッ
お水女(…このお金があれば…借金が返せる…でも…その後どうなるの?)
お水女(どこかの会社に就職する?…無理だよね…もうこの世界にどっぷりつかっちゃってるし…)
お水女(この仕事がダメって訳じゃないけど…幼女のことを考えたらやっぱり…)
お水女(記憶を失った男とならこのまま一緒に…って考えてたけど…記憶…戻っちゃったもんね…)
お水女(でも…今さら男のいない生活なんて…)
お水女「…あーっ!もうわかんない!!」
グスッ
お水女「…男ぉ…早く帰ってきてよぉ…」グスッ
今日はここまでにします
おやすみなさいノシ
乙ありがとうございます
今から投下します
~夕方~
ガチャ
幼女「ただいまー!」
男「よっと…ただいま」
お水女「あ…お帰りなさい…もうそんな時間?」
幼女「おかーさん。きょうはおやすみ?」
お水女「うん。今日は気分が悪くて…」
幼女「そっか」
男「…どうしたんだ?」
お水女「…何でもないよ。もう大丈夫だから」
男「そうか?」
お水女「…さてっと。じゃあもうちょっとしたら晩御飯つくろっか」
幼女「うん!おかーさんのごはん♪おかーさんのごはん♪」
男「ははは。幼女、はしゃいでるな」
お水女「…そうだね」
男(お水女…なんか元気ないな…)
~夜~
お水女「幼女、寝たわ」
男「そっか。幼女のやつ、『今日はおかーさんにお話ししてもらうの』って言ってたからな」
お水女「ふふふ。男が入院している間にお母さん子になっちゃったね」
男「そうだな」
お水女「…寂しい?」
男「ちょっとな」
お水女「…あの子はあの子なりに…気を使ってるのよ」
男「…へ?」
お水女「幼女ね…最近あたしの様子がおかしいから…無理にあたしに甘えてるのよ」
男「…」
お水女「…母親失格だよね。子供に気を使わせるなんてさ…」
男「…そんなことないよ。幼女はそれだけお水女のことが好きだってことだよ」
お水女「ありがと…ねえ、どうだった?」
男「なにが?」
お水女「…会ってきたんでしょ?婚約者さんに」
男「ああ…」
お水女「どんなこと話したの?」
男「うん。あのな~~~」
・
・
・
男「~~~と言う訳なんだ」
お水女「そっか…」
お水女(婚約者さんは男のことを好きじゃなかった…)ホッ…
お水女「あ…」
男「ん?」
お水女「ううん。何でもない」
お水女(あたし…いやなオンナだ…男にとってはつらいことなのに…喜んじゃってる…)
お水女(これ以上…嫌なオンナになりたくない…今日のこと…男に話そう)
お水女「…男、あたしも話があるの」
男「話って?」
お水女「今日さぁ…先輩妻さんが来たの」
男「先輩妻さんが?」
お水女「うん…これを持ってきたんだぁ…」
ドン
男「!?…この金は?」
お水女「男が世話になったからって…」
男「なんで先輩妻さんが?」
お水女「…」
男「…お水女はこの金…どうするつもりだ?」
お水女「…わかんない…今日一日考えてたんだけどさぁ…」
お水女「確かにさあ…このお金があったら借金が返せる…でも…」
お水女「このお金を受け取ったら…男は…もともと住んでた町に帰っちゃう…」
男「そうとは限らないだろ」
お水女「…先輩妻さん…これで男を返してって言ったの…」
男「…へ?…いやいや。訳わかんないって。てか俺ってモノ扱いされてんのか?」
お水女「そうじゃない!そうじゃないけど…」
男「…とりあえずそのことは置いといて…続けて?」
お水女「うん…って言うか今思ったんだけどさ、こんな風に悩んだり言い合いしたりするってことは…」
お水女「…このお金は…ここにあっちゃいけないんだと思う…」
男「それで…いいのか?」
お水女「うん…確かにさ…借金は残ったままだけど…返せない訳じゃないし…それに…」
男「それに?」
お水女「…ううん。何でもない。あたしの勘違いだから」
男「そうか?」
お水女(思わず言いそうになっちゃった…もう…自分の気持ち誤魔化せない…男と離れたくないって…)
男「じゃあこの金は先輩妻さんに返すんだな?」
お水女「…うん。それが一番いいと思う」
男「…俺さ…婚約者にあって…それで全部わかるって思ってたんだけど…」
お水女「…」
男「まだまだ分かんないことがあってさ…しかもまたこんな…先輩妻さんの行動とか…訳わかんなくてさ…」
お水女「…先輩妻さんは男のこと…好きなんだ」
男「…へ?」
お水女「先輩妻さんがそう言ってた」
男「なんか…余計わかんなくなりそう…」
お水女「ごめん」
男「…まあいいや。ちょっと整理してみるよ」
男「けど…まだ分かんないことがあるから、一度もともと住んでた町に戻ってみるよ」
お水女「え?」
男「たぶんさ…俺が婚約者に刺されたのも…俺がちゃんとケリをつけてなかったからだと思うんだ」
お水女「…」
男「だから…行ってくる」
お水女「…そっか…うん。そうだね…」
男「…必ず帰ってくるから」ギュッ
お水女「…うん」キュッ
~数日後~
男「まずは親の住んでるとこに行ってみる。その後婚約者と住んでた町に行くから」
お水女「うん…」
幼女「いってぁっしゃーい」ノシ
お水女「…」
男(お水女…俯いちまった…)
お水女「…これ」スッ
男「…ケータイ?」
お水女「プリペイドの携帯…3000円分通話料金入れてあるから…」
男「ありがとう」
お水女「…何かあったら連絡…するから…」
男「うん。じゃあ…行ってきます」
お水女「…」
パタン
幼女「…あ!おみやげたのむのわすぇた!!」
お水女「幼女…」ギュッ
幼女「どーしたの?」
お水女「…ううん。何でもない…何でもないよ…」
~男の実家の前~
男「…」
男(表札はそのままだし庭も手入れしてある…けど、生活臭がない…)
ピンポーン
男「…やっぱり誰も出ない」
ピンポーン
男「…どうすっかな…」ポリポリ
近所のおばさん「あっらぁ!男ちゃんじゃない!」
男「あ、おばさん」
近おば「あんた!行方不明だったんじゃないの!?ご両親心配してたわよ!?」
男「あ、うちの親…いないみたいなんですけど…」
近おば「何言ってんの!あんたが行方不明になったからってご両親、あんたの住んでた町に行ったのよ!?」
男「…へ?」
近おば「それで…ときどきお父さんが帰ってきて家の窓開けたりしてるの。先週も来てたわよ?」
男「そうだったんですか…じゃあ、そっちに行ってみますよ」
近おば「あ、そうそう!何かあったら電話してってあんたのお母さんに言われてたのよぉ」
男「あ!じゃあお袋のケータイの番号知ってるんですよね!?教えてもらえますか?」
近おば「いいわよ。あたしが話すより、あんたが直接話したほうがいいしね。はい、この番号よ」スッ
男「これですね?…はい。ありがとうございます」メモメモ
近おば「早く連絡して、ご両親を安心させてあげなさい」
男「はい」ピッ ピッ ピッ…
~男の住んでいた町~
男「すっかり夜中になっちまったな…」
男(けど…まさか俺が婚約者と同棲してたマンションに住んでるとは…)
男「早く行こう」
男「っと。その前に電気屋に寄ってアレを買っとくか」
・
・
・
~元・男のマンション~
ピンポーン
?「…はい」
男「あ、俺」
ガッ ガチャ
男母「男!」
男「お袋…」
男母「あんた!今まで一体どこに…」グスッ
男「ごめん。お袋…」
男父「…中に入りなさい。疲れただろう」
男「親父…ありがとう」
男父「気にするな。お前が住んでた部屋だ」
男「ああ…そうだな」
・
・
・
男「~~~と言う訳で、今までお水女って人の部屋で世話になってたんだ」
男母・男父「「…」」
男父「…そういう事情ならしょうがない…男、よく戻ってきたな」
男母「うぅ…」グスッ
男「心配かけてごめん…けどさ、なんで親父たち、ここに住んでるんだ?」
男父「…お前が帰ってくるかもしれないと思ってな」
男父「毎日ビラを配ったり…道行く人に写真を見せて情報を募ったり…」
男父「あっちの家は時々俺が戻って家の空気を入れ替えたりしてたんだ」
男母「ホントにもうこの子は…どれだけ心配したと思ってるのよ!」ペチン
男「痛いって」
男父「それにしてもその…お水女さん?にはいずれお礼をしないといけないな」
男「まあ…その…それは全部片付いてからにしよう」
男母「…男?あんたまさか…婚約者とのこと…」
男「いや、婚約者にはもう会ってきたし、先輩にも会ったから…それより、気になることがあってさ」
男父「なんだ?」
男「今はちょっと…説明すると長くなるし…」
男父「…わかった。好きにしろ」
男「親父…ありがとな」
男父「ただし!何があっても…無事に帰ってくるんだぞ?」
男「…うん」
男母「ちゃんと連絡頂戴ね?毎日とは言わないけど…せめて三日に一度ぐらいは。ね?」
男「いや、それは…善処します」
男父「…よし!男、お前晩飯まだだろ」
男「あ、駅で軽くそば食ったけど」
男母「晩御飯、あるわよ?」
男「…へ?」
男母「あなたがいつ帰ってきてもいいように、毎日作ってたのよ」
男「お袋…」
男父「母さんの料理を食うのも久しぶりだろ」
男「…うん。食べるよ。ありがとな」
~翌日~
ブルルル…キィー
男父「着いたぞ」
男「…うん、ここだ。親父は車で待っててくれ」
男父「しかし…なんだって婚約者の家なんだ?昨日のお前の話じゃ婚約者、今は警察にいるんだろ?」
男「ちょっと確かめたいことがあるんだ」
男父「…ま、なんにせよ…気の済むようにやれ。知り合いの弁護士に話をつけておこうか?」
男「その必要はないよ。じゃあ行ってくる」
バタン
男「さて…と」
ピンポーン
?「…はい」
男「あ、男です。ちょっとお話があってきました」
ドタバタ
男(なんか慌ててるみたいだな…まあ、そうだろな。今までのことを考えたら…)
ガチャ
?「…どうぞ、お入りください」
男「お邪魔します」
パタン
男「…えっ?」
婚約者母・婚約者父 ダブルドゲザー
男「すみません。お顔を上げていただけませんか?」
婚父「このたびは私どもの娘が大変!ご迷惑をおかけしました!!」ドゲザー
婚母「こんなことで許していただけるとは思いませんが、申し訳ありませんでした!」ドゲザー
男「いや、もういいんですよ。婚約者にも会ってきましたし」
婚母・婚父「「え!?」」
男「だからもうお顔を上げてください。お願いですから」
婚父「し、しかし!うちのバカ娘は不倫だけでなく、男さんに重傷を負わせたのです!!」
婚母「どう考えても許していただけるとは思えません!何なりとお申し付けください!!」
男「と、とりあえず…中に入れてもらえませんか?いつまでも玄関にいるのも…」
婚父「は、はい!」
・
・
・
婚母「お茶です…」コトッ
男「あ、どうも」ズズー
婚母・婚父「「…」」
男「…はあ、落ち着きますね」
婚父「…あの」
男「はい?」
婚父「うちは…バカ娘のせいで先輩妻さんに慰謝料を払ったため…今すぐ現金は用意できません」
婚母「この家を処分してお金を準備しますので…猶予をいただけないでしょうか?」
男「慰謝料のことですか?そんなつもりはありませんよ」
婚父「いや、しかし…」
男「…この家がなくなったら、婚約者はどこに帰ればいいんですか?そんなことしないでください」
婚母・婚父「「え?」」
男「ね?」ニコッ
婚父「…で、では…いったい何の御用で…?」
男「はい。俺、婚約者の不倫を知った後…記憶喪失になってたんですよ」
婚父「それで…突然いなくなったんですか?」
男「はい。それで今は自分が記憶を失っていた間に、どんなことがあったのか…それを調べているんです」
婚父「それは…」
男「…婚約者のことはもういいんです。不倫の原因も、俺と婚約した経緯も全部教えてもらいましたから」
男「それに…もう罰は受けてるでしょ?心療内科に通うぐらい精神的にも追いつめられたようですし」
婚母「男さん…」
男「もう婚約者のことは許したんです。だから…そのことはもういいんです」
婚父「…私どもでできることがありましたら、何でも言ってください。お力になれるよう頑張ります」
男「ありがとうございます。では…婚約者宛に手紙が来ませんでしたか?」
婚母・婚父「「え?」」
男「婚約者があんなこと…俺を刺したのは、手紙を見たからだと言ってるんです」
婚父「手紙を?」
婚母「…」
男「俺、その手紙を見てみたいんです。お願いします」ペコッ
婚父「と言われましても…なあ?」
婚母「…あの子の部屋、すごく散らかってるんです。その…中に入るのはやめたほうが…」
男「あのきれい好きの婚約者が?信じられません…」
婚父「…ご自分でお確かめになりますか?」
・
・
・
婚母「…いいですか?」
男「はい」
婚母「…」ガラガラガラ
プーン…
男(なんだこの異臭は!?カーテンを閉めてるせいか真っ暗だし…)
婚母「…電気つけますね」パチッ
男「!?」
婚母「…ひどい部屋でしょう?あの子…トイレとお風呂以外はずっと…この部屋に閉じこもってましたから…」
男(ゴミだらけ…しかも壁には…血の跡か?)
婚父「…最近まであの電気も取り外していたんですよ…首を吊ったらいけないので…」
婚母「戸は幸い引き戸だったから首を吊る心配はなかったんですが…ほら、ドアノブで首を吊ったアイドルとかいたでしょ?」
婚母「それであの子…何度も手首を切って…そのたびにお父さんと取り押さえて…壁についてるのはその時飛び散った血です」
男「…入りますね」
婚母・婚父「「…」」
ガサゴソ
男(どこかにあるはず…婚約者が見たっている手紙が…)ガサゴソ
・
・
・
男「…あった」
婚母「男さん…これも…」
男「…これは…婚約者のケータイですね?」
婚母「はい…あの子が出ていくときに廊下に落ちていたんです…とっくに契約解除したのに…」
男「そうですか…ちょっと拝見」Pi Pi Pi…
男(先輩とのメールがそのまま残ってる…見る気になれないな…)
男「…これはお返しします。最後のメール、俺がいなくなった日に先輩宛に出してました…新しい情報はなさそうだ」スッ
婚母「…」キュッ
男(それよりも手紙の内容だ)
カサカサ
男「…」
~~~~~手紙の内容~~~~~
俺たちは男に嵌められた!
あいつ、子供がいたんだぞ!
しかも今、その母親と一緒に暮らしてやがる!
ふざけんな!
婚約者、お前悔しくないか!?
俺たちはこんなに苦しい思いをしてるのに!
同封した写真を見てみろ!
あいつは女と子供に囲まれて幸せそうに笑ってやがる!
しかも4歳だと!?
あいつ、お前と婚約する前からあの女と付き合ってやがったんだ!!
こんな不公平なことってあるか!?
信じられないなら自分で確かめな。
住所は□□県◇◇市~~~
・
・
・
~~~~~~~~~~
男(…やっぱり。これは俺が書いた手紙じゃない)
男(じゃあこの手紙は…あの人か?けど…先輩が書いた可能性も消せない…)
婚父「あの…男さん?」
男「あ、すみません…帰ります」
婚母・婚父「「え?」」
男「…あ、くれぐれも変なことは考えないでくださいね?婚約者のためにもこの家は必要なんですから」
婚母・婚父「「…」」
男「それじゃ、お邪魔しました」ペコッ
~車の中~
男(…あ、お水女に電話しないと)Pi Pi
男「…あれ?」
男父「どうした?」
男「あ、いや。何でもない」
男(お水女のやつ…アドレスに何も入ってないじゃないか…これじゃ連絡できないって)
男「…しょうがない。先にこっちを片付けるか」
男(早く片付けてお水女のところに帰らなきゃな…)
男(先輩の電話番号は…確か前に貰った電話番号が…)ゴソゴソ
男「…これだな。えっと…」
Pi Pi Pi… プルルルル プルルルル ガチャ
先輩『もしもし?』
男「俺です」
先輩『誰だ?』
男「男です」
先輩『男か…大変だったな。新聞で読んだぞ』
男「先輩…俺の手紙、婚約者に渡してくれましたか?」
先輩『いや…婚約者の家に行ったけど門前払いでな…』
男「郵送は?」
先輩『…してない!おい男!!なんでそんなこと聞くんだ!?』
男「俺…婚約者にあってきました」
先輩『…なに?』
男「婚約者と話したんです。それで…先輩とのこととか…全部教えてもらいました」
先輩『…なんで電話してきた』
男「ケリをつけたいんです。俺が記憶を失っていた間のことに」
先輩「ざっけんな!ケリをつけるだあ!?金か!?慰謝料か!?残念だったな!俺にはもう金なんてねえぞ!!」
男「そんな気はありませんって。言ったでしょ?先輩に会ったときに…俺、幸せだって」
先輩『じゃあなんだ!!』
男「手紙です。俺が書いて先輩に託した手紙…それはどうしたんですか?」
先輩『…俺が持ってる。最初から渡す気なんかねえよ!!』
男「そうですか…わかりました。ありがとうございます」
先輩『…え?』
男「おかげで何とかケリが付きそうです」
先輩『…お前…何考えてんだ?』
男「言ったでしょ?ケリをつけたいんです」
先輩『…』
男「…あ、先輩」
先輩『…なんだ』
男「俺、先輩に幼女の歳…教えましたっけ?」
先輩『いや、聞いてない』
男「そうですか…先輩。ありがとうございました」
先輩『…待て』
男「なんですか?」
先輩『…俺の妻…今じゃ元妻だが…あいつには気をつけろ。あいつは…ヤバいかもしれん』
男「…はい。わかりました」
Pi
男(やっぱりそうか…そう考えるとすべて繋がる)
男「…よし。最後の確認だ」
カサカサ
Pi Pi Pi…プルルルル プルルルル プッ
男「…あ、俺です。男です」
男「…はい。ちょっと会って話がしたいんですが…いつ頃会えますか?」
男「明日の?はい、空いてます。じゃあ詳しいことはまた後で…」
・
・
・
~翌日・先輩妻の会社~
男(…会社の中に応接室があるなんて…)
コンコン ガチャ
先輩妻「どうも。久しぶりね」
男「あ、わざわざ時間作ってもらってしてすみません」
先輩妻「いいのよ。今日は午後の予定はキャンセルしたから」ニコッ
男「そうですか…すみません」
先輩妻「…もう傷はいいの?」
男「いや、まだ体をねじったりすると痛いですね」
先輩妻「無理しちゃだめよ?大事な体なんだから」
男「…」
先輩妻「…あなたと初めて会ったのは…あの人が酔っ払っちゃってあなたが送ってきてくれた時だったわね」
先輩妻「あなた…私に気を使って、すごく申し訳なさそうに謝ってたわね」クスッ
先輩妻「それからあの人を寝室まで運んでくれて…洗面器とかいろいろ用意してくれて…」
先輩妻「私がやろうとしても『休んでてください』って言って…」
男「…」
先輩妻「…」
男 ジー…
先輩妻「…最低なオンナだと思ってるでしょ」
男「…はい」
先輩妻「やっぱりね…」
男「これ…お返しします。お水女から預かってきました」ドン
先輩妻「…やっぱりね。受け取らないって思ってたわ」
男「…なんでお水女と会ったんですか?」
先輩妻「あなたを奪いたかったからよ」
男「なぜ?」
先輩妻「だってしょうがないでしょ?」
男「なにが?」
先輩妻「あなたが夫を送ってきたあの日…あなたは…優しかった…」
男「そんなことで?」
先輩妻「…もともと性格が合わなかったんでしょうね…結婚してから意見の食い違いから喧嘩するようになって…」
先輩妻「しばらくしたらね、必要なこと以外話さないようになってたわ…」
先輩妻「それでもね…私は良妻であろうとした…夫のことを理解しようと努力した…それでもあの人は変わらなかった…」
先輩妻「そんな時に男さん、あなたに優しくされて…」
先輩妻「今まで私の容姿を褒める人ばっかりで…初めてだったのよ?私の頑張ってる姿を褒めてくれた人は…」
男「先輩妻さんは頑張ってました」
先輩妻「そうそのやさしさ…それに私は惹かれたの。でも…私には夫がいる…」
男「…」
先輩妻「夫のことを理解しようと頑張ってるんだから…男さんのことは忘れなきゃって…」
先輩妻「そんな時にね、たまたまあの人のケータイを見ちゃって…」
先輩妻「そしたら相手は若い女みたいで…近いうちにまた二人っきりで会うことが分かって…」
男「それって…」
先輩妻「…そ。少なくとあの人はその気だったみたいね。カバンの中に避妊具があったし」
男「…それで…先輩妻さんはどうしたんですか?引き留めるとか…」
先輩妻「…何もしなかったわ」
男「え?」
先輩妻「もし浮気してるんなら…あの人を有責者にして別れるつもりだったから…ね」
先輩妻「…そしたらすぐにあの人は…思った通りの行動で笑っちゃったわ」
先輩妻「あの時の私はおかしかったのかもしれない…私の中の何かが切れちゃったんでしょうね」
先輩妻「後は…証拠固めのために半年ほど泳がせて…相手のこと…婚約者さんのことも調べて…」
先輩妻「そしたら婚約者さん、男さんのフィアンセになったっていうじゃない?それを聞いたとき気が動転しちゃって…」
男「それで…浮気のことを俺に?」
先輩妻「…興信所に頼んで証拠を集めて…弁護士にも相談して準備を整えて…最後の仕上げだったのよ」
男「だったらなんで電話で名乗らなかったんですか?」
先輩妻「…」
男「いきなり名乗りもせず…婚約者が不倫してるって言われて…それで俺がどうすると思ってたんですか?」
先輩妻「…同情してくれないのね」
男「同情はしますよ。けど、あんなやり方しなくても…」
先輩妻「…あなたをね、試したのよ」
男「試す?」
先輩妻「もしあなたがあの電話で私だと気づいたら…もっと別の方法をとったでしょうね」
男「一度しか会ってないし、ましてやあの時は飲んだ後でしたからね。覚えてませんよ」
先輩妻「やっぱり…あなたは私の見た目には興味がなかったのね…」
男「そりゃきれいな人だとは思いましたよ。先輩のことを考えて頑張ってる人だともね」
先輩妻「じゃあなんで」
男「けど…それだけです」
先輩妻「…え?」
男「あなたは先輩の奥さん。それ以上でもそれ以下でもない」
先輩妻「…」
男「…」
先輩妻「…あーあ、すっかり計画が狂っちゃったなあ」
男(言葉遣いが変わった…)
先輩妻「私の計画じゃ、夫と婚約者の浮気現場を男さんに見せつけて二人を追い詰めて」
先輩妻「私は夫に不倫されたかわいそうな妻を演じて、裁判をつらつかせて夫の実家から高額な慰謝料をせしめて」
先輩妻「落ち込んだふりをして男さんに近づいて、男女の仲になる予定だったのになあ」
男「…」
先輩妻「男さん、いなくなっちゃったでしょ?だから手に入ったのは高額な慰謝料だけ」
男「…その計画には…俺の気持ちは考慮されてないですよね」
先輩妻「婚約者の正体を教えてあげたんだから、感謝してよね?」
男「…確かに婚約者のことはショックでした。記憶を失うぐらいにはね」
先輩妻「今からでも間に合うわ」スッ
男「けど、先輩妻さんと付き合う気はない」サッ
先輩妻「…」
男「…」
先輩妻「…もうお金は十分手に入ったわ。この会社を見て?ここまでにするの、結構大変だったんだから」
男「よかったですね。人を不幸にして手に入れた金で幸せになったわけだ」
先輩妻「…ええ、そうよ。だから私は何でもやりたいことができるの。だから…」
先輩妻「たとえどんな手段を使っても、あなたを手に入れて見せるわ」ニヤッ
男「なんでそこまで俺にこだわるんだ」
先輩妻「…初めてだったからよ」
男「なにが」
先輩妻「…どんな男も私の容姿に惹かれて…下心が丸見えだったわ。でもあなたは違った…」
先輩妻「私のことを気遣って…下心なしで優しくするオトコなんて、あなたが初めて…」
男「当たり前だろ。あんたは先輩の奥さんなんだ」
先輩妻「当たり前じゃないわ!少なくともそれまでの私があったオトコたちはね」
男「…もういい」
先輩妻「なにが?」
男「これ以上話してると頭が変になっちまう。二度と会うことはない」ジロッ
先輩妻「あはははは!」
男「何がおかしい!」
先輩妻「…あなたはまた私のところに来るわ。あのオンナ…お水女って言ったかしら?」
先輩妻「あのオンナがどうなってもいいの?」クスクス
男「…どうやってお水女のことを知ったんだ」
先輩妻「夫から電話があったのよ」
男「やっぱり先輩からか」
先輩妻「あの人…『お前は男のことが好きだったみたいだが、男はもう別のオンナと同棲してる』」
先輩妻「『しかも子供までいるんだぜ?嘘だと思うんなら□□県の◇◇市に行ってみて来い』」
先輩妻「『残念だったな』って…今思い出しても腹が立つわ!」
男「それで…何をした」
先輩妻「婚約者があのオンナを仕留めてくれたら完璧だったんだけどなあ。ふふふ」
男「…婚約者に手紙を出したのもあんたか」
先輩妻「そうよ。いけない?でもどうしてわかったの?」
男「ふざけるな」
先輩妻「なにが?」
男「…ざっけんな」
先輩妻「…ちょっとなによ!あいつの口癖なんて!!」
男「…あの手紙には『ふざけんな』と書いてあった」
先輩妻「それで?」
男「先輩だったら『ざっけんな』って書いたはず…それで違和感を覚えたんだ」
先輩妻「…細かいところまでよく見てるのねえ」
男「…あんたは自分の欲求のために大勢の人を不幸にした。そりゃあ、最初の引き金を引いたのは先輩かもしれないけど…」
男「俺がそんなあんたを好きになるわけないだろ」
先輩妻「そう…残念ね。かわいそうに、あのオンナ」
男「何がだよ」
先輩妻「うふふふ…お金って便利よぉ?ネットもね」
男「どういうことだ!」
先輩妻「今頃あの女、どうなってるかしらねえ。うふふふ」
男「まさかネットで人を雇って…何をするつもりだ!」
先輩妻「さあねえ?うふふふ」
男「…お水女には今、黒服さんたちがボディーガード代わりについてる。あんたの思い通りにはならないさ」
先輩妻「…ねえ、どうしてもダメなの?」
男「ああ」
先輩妻「私の会社、今軌道に乗ってて結構稼いでるの」
先輩妻「あなた一人養うぐらい訳ないわ。あなたは働かなくてもいい。あのオンナのところでも働いてなかったんでしょ?だから…」
プルルルル プルルルル
男「あ、電話…誰だ?」Pi
男「もしもし?」
店長『男か!大変なことになっちまった』
男「どうしたんですか?ってか、なんで店長が俺の電話番号知ってるんですか?」
店長『お水女に教えてもらってたんだ。それより!幼女ちゃんがさらわれた!!』
男「…え?」
店長『黒服2が幼女ちゃんを迎えに行ったら…保母さんが若い男に引き渡したって』
店長『最近うちの若いのが幼女ちゃんを迎えに行ってただろ?だから保母さんも店のもんだと思って引き渡したらしい』
男「それで幼女は無事なんですか!?」
店長『わからん…お水女に連絡しようとしたけど電源切られちまってるし…部屋にもいないんだ』
男「け、警察に!」
店長『もう連絡した。今俺たちも探してる。男、お前すぐ帰ってこれるか?』
男「すぐ行きます!」
Pi
男「…俺はあんたを許さない」ギロッ
先輩妻「そんなこと言っていいのかしら?あのオンナの運命は私が握ってるのよ?ふふふ」
男「…幼女を誘拐してまで…そんなにお水女が憎いのか!」
先輩妻「…え?」
男「幼女に何かあったら…ただじゃ済ませないぞ!!」
先輩妻「ち、ちがっ…私はあのオンナが男の前に出られないようにしてって言っただけで子供を誘拐しろなんて言ってない!!」
男「俺は嘘つきは嫌いだ」
先輩妻「嘘じゃない!私はホントに!!」
男「…じゃあな」
先輩妻「待って!」
男「あ、それから」
ゴソゴソ
先輩妻「な、なに?」
男「…さっきの会話はこのボイスレコーダーで録音してある」
先輩妻「…あ」
男「後で警察に提出するからな」
先輩妻「ま、待って…」ヘタリ
男 タタタ…
男(幼女!無事でいてくれ!!お水女!早まったことはしないでくれ!!)
・
・
・
~その頃~
お水女「はっ…はっ…」トテテテテ…
お水女(商店街の…外れにある…つぶれた本屋…)トテテテテ…
・
・
・
お水女「はあ…はあ…ここだ…」
ギィイイ…
お水女「…幼女…どこなの…」フラフラ
?「そこで止まれ」
お水女 ビクッ
?「…ひとりか?」
お水女「幼女はどこ!?」
?「…3階までこい」
お水女「…」キッ
カツッ カツッ カツッ
・
・
・
お水女「…ドアが開いてる…」
?「入ってこい」
お水女「…」
ガチャ
お水女(薄暗い…ソファのところだけ明かりが…あ!あれは!!)
お水女「幼女!!」
悪人面「心配するな。寝てるだけだ」
お水女「幼女に何をしたのっ!」
チャラ男「ちょーっと眠くなる薬を飲んでもらっただけさ。へへへ」
幼女「スー…スー…」
チャラ男「下手なことすんなよ?この子がどうなっても知らねえぞ?」
お水女 ギリッ
パシリ「カメラ、セットできました」
悪人面「よし。お前、子供を連れてあっちの部屋に行ってろ」
パシリ「はい。よっこいしょっと」ダキカカエ
お水女「幼女!どこに連れていくの!!」
悪人面「心配するな。奥の部屋に行くだけだ」
チャラ男「お前はこっちだよーん」グイッ
お水女「きゃっ!」ドサッ
チャラ男「へへへ。さっきまであの子が寝てたんだ。暖かいだろ?」
お水女 キッ
チャラ男「いいねえ、その顔。泣き叫ばせてやりてえ」ゾクゾク
悪人面「カメラ回すぞ」
お水女「な、何する気よ」ズリズリ
チャラ男「なあに。俺たちとイイコトするだけだって。カメラの前でな」ガバッ
お水女「い、いやっ!」ジタバタ
チャラ男「いいのか?抵抗して。かわいそうになあ、あの子」
お水女 ピクッ
チャラ男「そうそう。そうやっておとなしくしてりゃあ、あの子には何もしねえよ。俺ぁロリコンじゃねえしな」テクビシバリ
お水女「くっ…」
チャラ男「へへへ。すぐに気持ちよくしてやんよ」
ビリビリビリ
お水女「っ!?」
チャラ男「おっと。動くなよ?ナイフが刺さっちまうぜ?」
お水女「っ!?」
悪人面「…早く終わらせろ」
チャラ男「うっせえなあおっさん。あんたも後で楽しませてやっからよぉ」
悪人面「…」
チャラ男「さあて、続きだあ」ニタア
バアァアアン!
悪人面「なんだお前ら!」
お水女「店長!」
店長「てめえら…俺を怒らせたな」ギロッ
チャラ男「なんだあ?邪魔すんなよ。このオンナと子供がどうなってもいいのか?」
ガチャ
黒服1「幼女ちゃんは無事だ」
幼女「スー…スー…」
お水女「幼女!」
悪人面「パシリはどうした」
黒服2「こいつのことっすか?」ギリギリ
パシリ「いだだだだ。肩!肩が!!」
チャラ男「…ちっ。役に立たねえ奴だな」
店長「…おめえら、お水女と幼女ちゃんに手ぇ出しやがて…ただじゃ済ませねえ!」
チャラ男「へっ。このオンナがどうなってもいいのかなぁ?」グイッ
お水女「あぅ!」
チャラ男「このままこのオンナの首を切り裂いてもいいんだぜ?」ニヤニヤ
店長「…やってみろ」
チャラ男「へ?」
店長「ただし!てめえら無事で済むと思うなよ」ギロッ
悪人面「…こっちは人質がいる。そっちのほうが分が悪いだろ」
モブ黒服’s ゾロゾロ…
店長「おっつけ警察も来る。しかもこっちはこの人数だ。ここから出られると思うか?」
チャラ男「ああ。こっちには人質がいるんだ。逃げ切ってやるぜ。来い!」グイッ
お水女「あっ!」ドサッ
チャラ男「ちっ…さっさと立て!おるぁあ!!」グイッ
店長「今だ!ふんっ!!」ドゴオ!
チャラ男「おごっ!」ゴロゴロ
店長「大丈夫か?おいモブ黒服!」
モブ黒服「はい!お水女さん!!俺の後ろに!!」
お水女「あ、ありがと…」
悪人面「やるなあんた。オンナが倒れてチャラ男が隙を作った一瞬をついて蹴りを入れるとは」
店長「てめえも入れてやろうか」
悪人面「…やめとくわ。オンナも子供もそっちの手にある。こっちに勝ち目はねえ」
店長「…何考えてやがる」
チャラ男「…てんめぇえええ!!」ダッ
ブンッ ブンッ
店長「ナイフってえのはなあ…振り回すもんじゃねえんだよ!!」ガスッ
チャラ男「がっ…」カラーン
悪人面「…カウンター一発で…のびちまいやがった…」
店長「俺たちの世界じゃあ喧嘩は日常茶飯事なんだよ。トーシローごときにやられるかよ」
悪人面「なら…これはどうだ!」ブン
店長「おっと。てめえは木刀か?」
悪人面「悪いが素手の喧嘩にゃ慣れてないもんでな」
モブ黒服's「「「うるぁああ!!」」」
悪人面「なっ!?ほ、本!?」バサバサバサ
店長「ふんっ!」ドゴォ!
悪人面「あがっ」ドサッ カラーン
店長「悪いな。俺たちの目的はお水女と幼女ちゃんなんだ。剣術ごっこに付き合ってる暇はねえ」
悪人面「ちっ…」
店長「おい、こいつら縛っとけ」
モブ黒服’s「「「はい!」」」
お水女「…」ガクガク
店長「おい、大丈夫か?」
お水女「は、はい…ありがとう」
店長「間に合ってよかった…」
お水女「…よ、幼女は?」
黒服1「寝てますよ」
お水女「よかった…」
店長「黒服1、お水女と幼女ちゃんを俺の車に連れて行け」
黒服1「はい。立てますか?」
お水女「う、うん…」ヨロッ
・
・
・
店長「ああ。こっちは終った。二人とも無事だ」
男『そうですか…ありがとうございます』
店長「気にすんなって。それより…こいつらを雇ったやつなんだが…」
男『先輩妻のことですか?』
店長「ああ。そいつはどうする?」
男『…とりあえず会話の内容を記録したICレコーダーを警察に持っていくつもりですけど一旦帰ります』
店長「わかった。お水女にそう言っとくわ」
男『夕方には着くと思いますから…』
店長「ああ。お水女にはそう伝えておく。じゃあな」Pi
店長「さて…と」クルッ
チャラ男「おい!ふざけんな!!とっととこの紐をほどきやがれ!!」ジタバタ
店長「やかましいやつだな」
悪人面「…おい、あんた」
店長「ん?」
悪人面「なんでここが分かった?」
店長「ふっ。ここは俺たちの町だ。ちょっと調べりゃすぐにわかったよ」
悪人面「…相手が悪かったってことか。ははは…」
チャラ男「おいおっさん!何笑ってやがる!!」
店長「ちったあ黙れ。ん?お前…よく見ると結構いい顔してんじゃねえか」
チャラ男「うっせえ!!」
店長「…ちょっと楽しませてもらおうか」ニタァ
チャラ男「おい!てめえ!!何すんだよ!!触んな!!ズボン下ろすんじゃねえ!!」ジタバタ
店長「ワセリンねえけどしゃーねえな」
悪人顔「お、おい!何するつもりだ!!」
パシリ「いやだぁあああ!!」ジタバタ
黒服2「お、俺!部屋の周り見てきます!!」
モブ黒服’s「「「お、俺らもいってきます!」」」
店長「ぐへへへへ」
アッー!
アッー!
アッー!
・
・
・
~店長の車の中~
黒服1「大丈夫ですか?」
お水女 コクン
黒服1「…そろそろ警察も来る頃です」
お水女「…幼女…」ナデナデ
幼女「スー…ん…おかーさん?」ゴシゴシ
お水女「…あ」
黒服1「幼女ちゃん!俺、店長に知らせてきます!!」
お水女「…」ギュッ
幼女「おかーさん、いたいよぉ」
お水女「うぅ…」ポロポロ…
幼女「…おかーさんないてぅの?どっかいたい?」
お水女「…ううん。何でもない…何でもないよ…」ポロポロ
幼女「おかーさん、なでぅといたいのがなくなっちゃうんだよ?」ナデナデ
お水女「あ…」
幼女「いいこいいこ」ナデナデ
お水女「う…うぅ…」
【エピローグ】
~その夜~
幼女「おとこ…おそいね」
お水女「…遅いねえ…」
幼女「…おとこ、いつかえってくぅの?」
お水女「…」
コンコン
お水女 ビクッ
幼女「おとこかな!?」パァアア
お水女「…ちょっと待ってて。見てくる」
トテトテ…
お水女「…はい」
?『男です』
お水女「男!?」
ガチャ
男「ただいま」
幼女「おとこだー♪」トテテテ
ギュッ
幼女「おかえぃー!」
男「ただいま」ナデナデ
お水女「な…なんで…」
男「ごめん。早く帰ろうと思ったんだけどさ…店長から電話があって」
お水女「店長から?」
男「うん。俺、先輩妻さんとの話をICレコーダーで録音してたんだ。それを店長に言ったらさ」
男「『それは証拠になるから警察に提出しろ』って言われたんだ」
男「それでさ、駅で店長の車に乗せてもらって、警察署まで行ってきたんだ。それで遅くなって…ごめん」
お水女「…だったら連絡ぐらいくれてもっ!」
男「だからゴメンって。けどさ、このケータイ、アドレス帳に何も入ってなくてさ。お水女の電話番号も…」
お水女「あ…忘れてた」
男「それで…電車の中だったし、店長に頼んでたんだ。お水女に言っといてくれって。連絡なかったのか?」
お水女「聞いてないよぉ!」
男「そっか…ごめん」
お水女「…いいよ、もう…あたしもそのケータイにアドレス登録してなかったし…」
男「ありがとう。それでな?このケータイにお水女のTEL番とか入れときたいんだけど」
お水女「うん…後で入れるよ…」
男「…ごめんな。帰るのが遅くなって」
幼女「いいよ。だってきゃすとのおねーちゃんがいってたもん。『すきなひとをまつのもしあわせなんだよ』って」
男「そ、そんなこと言うのはまだ早いって」
お水女「…あはは」グスッ
男(お水女、やっと笑った)
男「…中に入れてくれないか?玄関、ちょっと寒くてさ」
お水女「あ、ごめん。中に入って」
幼女「おとこー。おへやにどーぞ♪」グイグイ
男「ありがと…ってそんなに引っ張らなくても」ヨタヨタ
幼女「ねーねーおとこ。きょうねー、おひるねいっぱいしたの」
男「そっか」
幼女「そぇでね、おめめさめたぁてんちょーさんのくぅまだったの」
お水女(男…)
ギュッ
男「お水女?抱き付いて…どうした?」
お水女「…お帰り」
男「…ただいま」ギュッ
幼女「あー!ようじょもぎゅーすぅー!!」
ダキッ
男「ちょっ!幼女!!足に抱き付いたらバランスが!!」グラッ
ドテッ
お水女・幼女・男「「「…」」」
お水女「…ふふふ」
男「…あははは」
幼女「きゃははは!」
男「あははは。そろそろ起きようぜ」
幼女「うん!」
お水女「そうだね。ふふふ」
男「よっこらせっと。ほら、手を貸して」スッ
お水女「うん。お願い」キュッ
幼女「ようじょもー!」ブラーン
男「お、重いって…」
お水女・幼女「「あ」」
男「はあ…けど、これからは毎日こうだといいな」
幼女「うんっ!」
お水女「そうだね…」
男「ん?どうした?」
お水女「ううん…何でも…」
男「…あ、そうだ」
お水女「なあに?」
男「うちの親にさ、お水女のこと話したら是非会いたいって」
お水女「…え?」
幼女「ようじょは?」
男「もちろん、幼女にも会いたいってさ」
幼女「やったー!」
お水女「…」
男「…ごめん。勝手にお水女のことしゃべっちまって…」
お水女「ううん…」
男「幼女のことも話しちまった。ごめんな?」
幼女「いいよー」
男「俺…絶縁覚悟で言ったんだ。そしたら親がお水女に会いたいって」
お水女「…ダメだよぉ…」
男「…」
お水女「だってさぁ…あたし、こんなだよ?水商売のオンナなんて…ダメに決まってるよぉ…」
男「…実は明後日、うちの親がここに来るんだ」
お水女「えっ!?」
男「…お水女、俺はもう腹は決まった」
お水女「…どう言うこと?」
男「さっきも言ったけどさ、俺…ここでの暮らしで幸せを感じたんだ。これからもずっとこうやって暮らしていきたいって…」
お水女「で、でも…」
男「それでさ、こっちで就職先も見つける」
お水女「…え?」
男「このゴタゴタが落ち着いたら就活して…中途だから条件は良くないかもしれないけどさ」
お水女「それって…」
男「でな?ここで一緒に暮らしたいんだ」
幼女「ずっといっしょ!?」ピョンピョン
男「ああ。けどな、就職したら昼間は仕事だから一緒にいれないぞ?」
幼女「ええーっ!?」
男「そのかわり、これからはお水女がずっと一緒にいてくれる」
幼女「おかあさんが!?」
男「お水女…いいだろ?」
お水女「…」
男「…」
幼女「…男、ずーっといっしょにいぅの?」
男「そうなったらいいんだけど…」チラッ
幼女「…」チラッ
お水女「…やっぱだめだよぉ…だってあたし…借金があるんだよ?それに水商売してるし…」
男「…借金は問題ないって」
お水女「え?」
男「俺さ、あんま趣味がなくてな。結婚資金の貯金と持株会と財形、全部合わせると結構な金額になったんだ」
男「その金でさ、お水女の借金…500万だったよな?一括で返そうぜ」
お水女「な、なんで…そんなこと…」
男「俺を助けてくれたお礼さ」
お水女「…そんなことしなくてもいい!あたしはっ!!あ、あたしがほしいのは…」
男「…それから、俺の親のことなんだけどさ」
お水女 ピクッ
男「もし…親が反対したら…絶縁するつもりだ」
お水女「な、なんで…」
男「お水女…愛してる。俺と結婚してくれ」
お水女「…」グスッ
男「…」
幼女「おかーさん…」
お水女「…あたしさぁ…高校の時にお父さんが保証人になって借金だらけになっちゃってさあ…」
-----記憶を失った
お水女「お母さんは家を出て行っちゃうし…毎日怖い人が来るし…でもお父さんは大丈夫だって言ってたのにさぁ…自殺しちゃったんだぁ…」
-----思い出した
お水女「それで…今だったら相続放棄とかできたんだろうけど…学生だったから何にも知らないで借金相続しちゃってさぁ…」
-----馬鹿だった
お水女「一生懸命働いて…借金返して…そんな時に出会った人と…それなのに幼女を妊娠したって言ったら逃げちゃってさぁ…」
----何も知らなかった
お水女「もう人は信用しないって…愛しても裏切られるだけだから…」
-----知らされた
お水女「もう人は愛さないように…自分の力で生きていこうって…そう思って頑張ってきたのにさぁ…」
-----確かめた
男「お水女…」
-----裏切られてた
お水女「そんな時にさぁ…記憶をなくした男と出会ってさぁ…」
-----逃げ出した
お水女「一緒に暮らしてるうちに…男がいる生活が当たり前になってさぁ…」
-----記憶を失った
お水女「このまま…男の記憶が戻らなくて…ずっと一緒に暮らしていけたらなんて考えてさぁ…」
-----助けられた
お水女「男の記憶が戻った時…ずっと一緒にいたいのに…」
-----幸せを感じた
お水女「もういなくなるかもって…諦めなきゃって…その時が来てもつらくないようにって…そう思ってやってきたのにさぁ…」
-----ここにいたいと思った
お水女「…ずるいよぉ…そんなことされたら…男のことが忘れられないじゃん!」
-----ずっと暮らしたいと思った
男「…俺はもう忘れたくない」
----痛い目にもあった
お水女「ずっと…覚悟しようって…諦められるように…好きにならないようにって…」
----怖い思いもした
男「…」
-----けれど待っていてくれた
お水女「…こんなになっちゃったら…もう…もう…だめじゃん…」
-----もう心は決まった
男「…へ?」
-----もう離れたくない
お水女「だからぁ」
-----だから…
お水女「あたしも愛してるーっ!」ダキッ
幼女「ようじょもあいしてぅー」ダキッ
~END~
これで終わりです
このような駄文にお付き合いいただきありがとうございます
それでは今日はこれで寝ます
おやすみなさいノシ
乙ありがとうございます
おまけいきます
【おまけ1】
~数か月後・店長の店~
店長「『本日貸切』っと…これでよし」
ガチャ
店長「張り紙してきたぞ」
男「ありがとうございます。けど…ホントにいいんですか?店の売り上げが…」
店長「なあに、大丈夫だ。店の連中が会費を出してくれてるからな」
モブキャスト「店長が一番出してくれたんだけどねぇ。ね、店長♪」
店長「バカ!余計なこと言うなって!!」
お水女「ありがとうございます。店長」
店長「…ほ、ほら!主役なんだからこんなとこにいないで席に座って!」
お水女「ふふふ。はーい」
・
・
・
男父「そ、そうかな?まだいけるかな?」デレデレ
モブキャスト「まだいけますよぉ。優しいし素敵ですもん」
男父「そ、そうか?」デレデレ
男「…親父ぃ…」ハァ…
お水女「いいじゃない。楽しんでるんだし。ね?」
男「そうだけどさ…家ではもっとこう…厳格な感じだったんだけどなぁ…」
お水女「ふふふ。ここはそういうお店だから。お客さんに気持ちよく飲んでもらうためにキャストが居るんだし」
男「ま、そうなんだけどな…親父のイメージが…」
幼女「そぇでね、おともだちといっしょにおどぅんだよ♪」
男母「そうなの?一度見てみたいなぁ」ニヨニヨ
幼女「じゃあみててね。よーでぅ よーでぅ よーでぅ…」ユラユラ
男母「幼女ちゃん、上手ねぇ」パチパチパチ
男「…お袋、すっかり幼女と仲良くなっちまってら」
お水女「ホント。いいおばあちゃんだね」
男「…うちさ、子供は俺一人だったからな。お袋、体が弱かったから二人目は諦めたみたいでさ」
お水女「そうなの?」
男「ああ。お袋、女の子がほしかったらしいんだけどな」
お水女「だから幼女に優しいのね」
男「ああ」
黒服1「お疲れさん」
黒服2「お疲れーっす」
お水女「あ、黒服1さんと黒服2さん」
男「ありがとうございます。こんなに盛大なパーティーなんて…準備大変だったんじゃないですか?」
黒服1「大したことしてないよ。それに今日はお水女さんの引退パーティーだしな」
お水女「ありがとね」
黒服2「あ、そういや男さん。聞きたいことあるんすけど」
男「なんですか?」
黒服2「なんで婚約者?って人から慰謝料とか取らなかったんすか?」
男「…面倒だったって言うのもあるけど…」
黒服2「けど?」
男「…確かに慰謝料とって制裁って言うのもあるんでしょうけど…その後どうなります?」
黒服2「えっと…わかんねっす」
男「俺が慰謝料を請求すると、婚約者の親が払うことになるでしょ?婚約者はもう金なんか持ってないだろうし」
黒服2「そうっすね」
男「婚約者の親って言っても…先輩妻さんに慰謝料を払ったせいで、俺に慰謝料払おうとすると家を売らなきゃならない」
男「そうすると婚約者が逆恨みするかもしれない。嫉妬でお水女を刺そうとするくらいですからね」
男「それよりは…婚約者の親に恩を売るように思わせといて、婚約者を監視してもらったほうが安全でしょ?」
黒服1「なるほど。目先の金より先々の安心って訳か」
男「そうです」
黒服2「…頭いいんすね、男さんは」
男「…俺にとって大事なのはお水女と幼女。そういうことです」
お水女「…じゃあ婚約者さんは今ご実家にいるの?」
男「いや、今はまだ病院にいるらしい。で、退院したら両親と一緒に家に住むそうだ」
お水女「へえ…」
№1キャスト「はーい♪男さぁん」
男「あ、№1キャストさん。どうも」
№1キャスト「男さぁん。お水女ちゃんのことよろしくね♪」
男「はい」
№1キャスト「お水女ちゃん、おめでとう」
お水女「ありがとうございます。№1キャストさん」
オーイ コッチニオイデー
№1キャスト「あ、お呼びだわ。じゃあ、またあとでね♪」フリフリ
男「親父のやつ…」
お水女 ツネッ
男「痛っ」
お水女「いま№1キャストさん見て鼻の下伸ばしてたでしょ」ジトー
男「ち、ちがうって」アセアセ
お水女「どうだか」ツーン
ダキッ
お水女「あ」
男「俺はお水女がいいんだ。だから…」
お水女「…うん」
店長「よ!ご両人!!」
お水女・男「「!」」パッ
黒服2「そんな慌てて離れなくってもいいじゃないっすか。ねえ?」
一同「「「そうそう!」」」
男「…ちょっ、ちょっと外行ってくる」スタスタスタ
お水女「もうすぐ始まっちゃうよ?もう…」
店長「ありゃ。ちょっとからかいすぎたか?」
パタン
男「…はぁ」
男(まったく…みんな悪乗りしすぎだって…)
ピロピロピロ ピロピロピロ…
男「ん?電話か…先輩から?」Pi
男「もしもし?」
先輩『あ、男か?』
男「はい。どうしたんですか?」
先輩『いや…ちょっと…報告だ』
男「報告?」
先輩『ああ。俺、あいつの保証人になったんだ』
男「あいつって?」
先輩『先輩妻だよ』
男「え?なんで…」
先輩『…俺のせいであいつはあんなことを仕出かした。だから…その罪滅ぼしだよ』
男「そうですか…」
先輩『…報告はそれだけだ。じゃあな』プッ プー…
男「なんだよ…言いたいこと言って切っちまった…」
ガチャ
幼女「あー、いたー!」
お水女「もうすぐ始めるから入って来いって店長が言ってるよ?」
男「そっか…そうだな」
お水女「ふふふ」
男「なんだよ」
お水女「ううん。なんかねぇ…ありがたいなーって」
男「…そうだな。俺たちの結婚式に出席しただけじゃなくて、こうやって二次会まで開いてくれて…」
お水女「引退パーティーも兼ねてだけどね」
男「…そろそろ戻るか。いつまでも主役を独り占めするわけにもいかないもんな」
幼女「ね。おてて」
お水女「はい」キュッ
男「ほら」キュッ
幼女「ぶぁんこー」ブラーン
お水女「ふふふ」
男「ははは。じゃあ戻るか」
お水女「はい」
パタン
~宴会END~
もういっちょ行きます
【おまけ2】
~留置所・面会室~
ガチャ
先輩妻「…」
先輩「…よう」
先輩妻「…」クルッ
先輩「戻ろうとするなよ」
弁護士「先輩妻さん。今日この人が来たのは…あなたの会社のことについてお話があるからです」
先輩妻「…」
弁護士「先輩妻さん。あなたの会社…不渡りを出しそうなの」
先輩妻「…そう」
弁護士「取引先が次々取引を打ち切って…このままじゃ近いうちに倒産するわ」
弁護士「そうなったらあなたを信じて頑張ってきた従業員が路頭に迷うことになる…」
先輩妻「…どうでもいいわ…」
弁護士「あなたは自業自得だからどうでもいいかもしれないけど、従業員にとっては死活問題なのよ?」
弁護士「収入がなくなったら生活できなくなるものね。あなたはその責任、取れる?」
先輩妻「…ふっ。今更…何ができるっていうの?」
弁護士「先輩妻さん!」
先輩妻「もう私には何もない…何もできない…何でも好きにすればいいわ」
先輩「…そうやって逃げるつもりか?」
先輩妻「じゃあ拘置所でいったい何ができるっていうのよ!」
先輩「…」ピラッ
先輩妻「…なによそれ」
先輩「委任状だ」
先輩妻「委任状?」
先輩「…俺が一時的にお前の会社の社長になる。それでお前の帰りを待つ」
先輩妻「…何馬鹿なこと言ってるの?」
先輩「俺は一応経営者の息子だからな。お前が帰ってくるまであの会社を潰さないように頑張るさ」
先輩妻「…乗っ取るのね」
先輩「そうじゃない」
先輩妻「じゃあ!何が目的なのよ!!」
先輩「…お前の帰る場所を守りたいんだ」
先輩妻「…はぁ?」
弁護士「あなたは初犯だし、未遂に終わってるからね。きっと執行猶予が付くわ」
弁護士「でもね、刑が確定するまでには結構時間がかかるの。その間、彼があなたの会社を守ってくれるって…」
先輩妻「…」
先輩「どうせこのままじゃもうすぐ倒産だ…ま、俺なりに頑張るから、この委任状にサインしろって」
先輩妻「…なんで…」
先輩妻「なんでそんなことするのよ…私はあなたを憎んで…利用して…」
先輩「…憎むってことは、気にしてる証拠だろ?」
先輩妻「!?」
先輩「だから…よく考えてくれ。この委任状は弁護士さんに預けておくから」ピラッ
弁護士「…確かに」カサカサ
先輩妻「あなたは…何がしたいのよ…」
先輩「…一度は愛したオンナだ。つーか、俺の人生でお前以上のオンナはいなかった」
先輩「ま、そのいいオンナを泣かせちまった罪滅ぼしだな」
先輩妻「…なんでよぉ…」
先輩「…」
先輩妻「罪滅ぼしっていうんなら!ずっと一緒にいなさいよ!!」
先輩妻「それで一生!私に奴隷みたいに!!こき使われなさいよ!!」
先輩「…」
先輩妻「それでもいいって言うの!?言う訳ないわよねえ!あなたのプライドはズタズタにものねえ!!」
先輩「…お前がそうしたいって言うんなら…そうするさ」
先輩妻「!?」
先輩「…俺は男に嫉妬してたのかもしれん」
先輩妻「…嫉妬?」
先輩「お前が男のことを調べていることは、なんとなく分かっていた」
先輩「それで…お前に男を諦めさせるために婚約者を男にあてがった」
先輩妻「!?」
先輩「ま、その時にはもう婚約者と不倫してたんだけどな」
先輩「自分は不倫していながら、自分の妻が好意を寄せる男には嫉妬する…矛盾してるな」
先輩妻「…わかる気がするわ…私もあなたの不倫を知ったときは頭に来たし…」
先輩「…今回の事件でお前が男を思う気持ちはわかったから。俺はお前を諦める」
先輩「だが、惚れた女がピンチの時は助けないと男が廃るだろ?」
先輩妻「…とっくに廃れてるわよ」
先輩「なんだと!?」
先輩妻「…でも…犯罪者にはお似合いかもね…」
先輩「…へ?」
先輩妻「だから…」
先輩妻「会社のこと…よろしくお願いします」ペコッ
~先輩夫婦END~
今日はこれで終わります
あとは後日談を一つ投下したら終わりにします
ではおやすみなさいノシ
では最後のおまけいきます
【おまけ3】
幼女 ウロウロ…
男父「幼女ちゃん。もうすぐ帰ってくるから落ち着いて」
幼女「ようじょ、おちついてぅもん!」
男父「ははは。にしても…遅いな」
幼女「…おじーちゃん」
男父「なんだい?」
幼女「こぇ…よろこんでくぇぅかな?」
男父「ああ。きっと喜んでくれるよ」
幼女「はやくかえってこないかなぁ…」
ブルルルン キー
男父「お、帰ってきたみたいだぞ?」
幼女 ソワソワ…
ガチャ
男「ただいまー」
幼女「おかえぃー!」
男父「お帰り。母さんたちは?」
男「ああ。ほら」
お水女「ただいま」
男母「お留守番、ありがとね」
幼女「うん!ようじょ、ちゃんとおぅすばんできたよー!」
男「よしよし。えらいぞぉ」ナデナデ
幼女「えへへ」
お水女「…幼女、ほら」
幼女「うわぁ…ちっちゃーい…」
赤子 スヤスヤ
幼女「…こんにちは。おねーちゃんだよ」ニコッ
赤子 スヤスヤ
幼女「…ずっとねてぅね」
お水女「ふふふ。赤ちゃんはねえ、寝るのがお仕事なのよ」
幼女「ねぅのが?」
お水女「そ。よく寝て、ミルクもいっぱい飲んで、よく泣いて」
お水女「幼女も、お父さんもお母さんも、そうやって大きくなったの」
幼女「ふーん…おじーちゃんたちも?」
男母「ええ、そうよ。みーんな、そうやって成長するの」
幼女「そっか…じゃあなきむしでもいいんだね」
男「ああ。だから、泣いてるからって悲しいわけじゃないんだ。わかるか?」
幼女「うん。わかった」
男「よしよし。いい子だ」ナデナデ
幼女「えへへへ」
お水女「そろそろ中に入ろっか。早くベッドに寝かせてあげないと」
男「そうだな」
ガラッ
男「うわっ!」
お水女「どうしたの?」
男「これ…」
お水女「部屋がどうかした?…うわぁ…」ノゾキ
幼女「えへへへ。おじーちゃんとね、いっしょにやったの」
男「そっかー。家で留守番するっていうから、なんでだ?って思ったけど…」
お水女「部屋中に色紙のリングが…」
男父「結構時間がかかったんだぞ?」
男「なんか昨夜から二人でコソコソやってると思ったら…これだったのか」
男母「あらあ…きれいね」
幼女「ねーねー、おかーさん。あかちゃんよぉこんでぅかな?」
お水女「うん、喜んでるよぉ。ありがとね」
幼女「よかったー♪」
男父「寿司を買ってきといたから、みんなで食べよう」
幼女「…あかちゃんは?」
お水女「ベッドでおねんねしとこうね」ソッ
幼女「…おすし、たべないの?」
お水女「ふふふ。赤ちゃんはね、お母さんのおっぱいがごちそうなの。だからお寿司は食べれないなぁ」
幼女「そっか…」
男「その代わり、お母さんがいっぱい食べれば、おっぱいがいっぱい出るから赤ちゃんも喜ぶんだ」
幼女「じゃあおかーさん、いっぱいたべてね」
お水女「はいはい」
幼女「『はい』はいっかいです!」
お水女「ふふふ。はい」
男「お、しっかりしてきたな」
幼女「だっておねーちゃんだもん」フンス
男母「いいお姉ちゃんねぇ、幼女ちゃんは」
幼女「ようじょ、あかちゃんのおせわすぅ!」
お水女「ふふふ。お願いね」
赤子「ふぇぇぇ…」
男母「ほら、弟ちゃんもお願いしますって言ってるわよ」
幼女「うん!おねーちゃんがんばぅかぁね!!」
~家族が増えるよEND~
これでこのスレは終わりです
駄文にお付き合いいただきありがとうございました
なお、html化依頼は日曜日に出します
では、またいつかノシ
>>ALL 乙ありがとうございます。
それではhtml化依頼してきますね
このSSまとめへのコメント
相変わらず胸糞悪いなぁ