陣内智則「やっと届いたわー、天海春香ちゃんのボイス目覚まし!」(39)

陣内「いやーほんま苦労したわー」

陣内「どこも売り切れてて、結局オークションで手に入れるのに5万くらいしたからなー」

陣内「さーて開けよ」

ビリッ

ゴソゴソ

陣内「おぉ…意外としょぼいな」

陣内「そこらに売っとる目覚ましみたいや」

陣内「ま、ええわ。春香ちゃんの声が出るかどうかやからな、ちょっと試してみよ」

陣内「時計の針合わせて…ほい、カチッ」

春香『ほーらっ、朝になったよ! 起きよう?』

春香『ほらほら、学校、遅刻しちゃうよ? もう、早く起きてよ~!』

陣内「グフフフ…おうっふ…」

陣内「ええやん…メッチャええな! これ」

陣内「この目覚まし、ボイスいっぱい入っとるらしいからなー。他にどんなんあるんやろ?」

陣内「お、箱に紙入っとる。これが説明書か」

バサッ

陣内「えーと、なになに? 後ろにあるダイヤルを回すと色んなシチュエーションが聞けます、か…」

陣内「うわ、ダイヤル多っ! 裏にビッシーって、金庫の鍵みたいになっとるやん!」

陣内「んで、ダイヤル1が、幼馴染風…」

陣内「あー、なるほど。今のは幼馴染の春香ちゃんが起こしに来てくれたんやな」

陣内「こんなのがいっぱい入っとるんか~楽しみやな~。他の聞いてみよ」

陣内「ほいっ、カチッ!」

春香『患者さ~ん、お注射の時間ですよ。起きてくださ~い』

陣内「お、ナース春香ちゃんや! 患者さ~ん言うてる。可愛いな~」

春香『起きないと、ぶすっと刺して起こしちゃいますからね?』

陣内「うわ、そりゃ痛そうや。寝たままさ刺れるんやからな」

陣内「でもええな、春香ちゃんの注射なら刺されてみたいわ」

春香『もう、ほんとに刺しちゃいますよ。行きますからね?』

陣内「はいはい、お願いしま~す!」

春香『そ~れ、ぶすっ!』

野太い声『オアアアアアアアア~~~!! 痛ぁぁぁぁぁぁぁぁ~~!!』

陣内「誰や今の!」

陣内「なんや今の声! 俺が患者やなかったんかい!?」

陣内「なんで他の奴が春香ちゃんに注射されるの聞かなあかんねん! っていうか声でかいなーあいつ!」

陣内「もうええわ、春香ちゃん可愛かったしな。最後の奴はいらんけど」

陣内「他はどんなんがあるんやろ? 説明書見てみよ」

バサッ

陣内「えーと…お、『イモオト風』とか書いてあるな」

陣内「なんや誤字ってんなー。『オ』じゃなくて『ウ』や、それになんでカタカナなん?」

陣内「でも妹風っちゅうと、春香ちゃんが『お兄ちゃ~ん』とか言って起こしてくれるんかな?」

陣内「これええな、これにしよ」

陣内「ダイヤル合わせて…ほい、カチッ!」

ブッ

陣内「………」

春香『くっさ~』

順二朗『ははは、すまんすまん』

陣内「誰やねんこのオッサン! なに屁こいとんねん!」

春香『も~、お芋食べすぎですよ社長』

陣内「社長かい! なんで社長が出てくるんや!」

陣内「あーもう、ダイヤル間違えたんやな」

陣内「しかし、これはハズレやな~ちゃんと妹のが聞きたいわ」

順二朗『いや~…これぞイモのオトで吹く風、略してイモオト風だな!』

陣内「これがイモオト風かい!」

陣内「なんやねんイモのオトで吹く風って! こんなんで上手いこと言ったつもりかい!」

陣内「はぁ~、ほんま腹立つわ~…なんでこんなん入れんねん、バカにしとんのか」

陣内「もうええわ次や、次。どんなんがあるんや?」

バサッ

陣内「なになに…春香のえっちなボイス? ほぉー」

陣内「聞こ。ほい、カチッ」

P『765プロのプロデューサーです』

陣内「ん?」

P『この度は、天海春香のボイス目覚ましをお買い上げいただきありがとうございます』

陣内「え、なんやこの兄ちゃん。プロデューサー?」

P『申し訳ございませんが、春香のえっちなボイスを収録することはできませんでした』

陣内「はっ、なん…なんでや、収録できなかったってどういうわけやねん」

P『それがあまりにも下ッッッッッッッッッッッッッッ手くそで、とても人に聞かせられるようなものじゃなかったのです』

陣内「いや別に下手でもええわ、春香ちゃんのえっちな声が聞きたいだけなんやから」

P『これを聞いた収録スタジオの皆さんは未だに目が覚めず…こんなものを世に出すわけにはいかないと判断しました』

陣内「そこまで下手ってなんやねん! 逆に聞いてみたいわ」

P『しかし、商品の仕様を変えるわけにはいきません』

陣内「録音できなかったんやろ? 仕様も何もないやん」

P『なので、俺のえっちなボイスをお聞きください』

P『んっ…あっ、ああ…んんんっ…ふぁっ…は…ぁっ…』

陣内「なんでお前が言うねん!!」

陣内「おかしいやろ! なんで顔も知らん兄ちゃんの喘ぎ声聞かされてんの俺!?」

P『はぁ、はぁ…あっ…うぅん…しゃ、社長…』

陣内「今社長言うた!」

陣内「社長ってさっきのオッサンやろ! なんやねんホモかこいつ」

P『ぅぅん…んっ、あっ…』

陣内「っていうか声小っさいなー! 目覚ましなのに、こんなんじゃ起きれんやろ! こんなんで起きとうないけどなー」

P『あっ、イク…ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーッ!!』

陣内「やかましいわ!!」

陣内「イク時だけ大声出すなや! AV男優でもこんな声出さんわ!」

P『あ、やべ…服についた…』

陣内「いや言わんでええわそんな事! 何やってたんやお前!」

陣内「気っ持ち悪…次あの兄ちゃんかオッサンが出てきたらすぐ止めよ」

陣内「普通のでええねん、普通ので。最初の幼馴染春香ちゃんみたいなやつ」

バサッ

陣内「ん…? なになに、次から音シリーズ? なんやこれ、どういうこと?」

陣内「ま、ええわ。聞いてみればわかるやろ」

コッ コッ コッ コッ

ガラッ

春香『あっ、こんなところにいた。もう、探したよ~』

春香『ほら、起きて。一緒に帰ろ?』

陣内「おおおっ!!」

陣内「これええわ! 教室で寝てる俺を起こしに来てくれたんか~可愛いな~。次も聞こ」

カチッ

ザパァッ!

春香『ふぅ…』

春香『もう、どうしたの? せっかくプールに来たのに、寝てばっかりで。さ、一緒に泳ごう?』

陣内「おおおお! これはプールサイドやな! プールから上がってくる春香ちゃんの姿が目に浮かぶわ~」

陣内「ええやんこのシリーズ! 他にどんなのあんの!?」

陣内「おっ!? 春香と満員電車!? なんやこれ」

陣内「満員電車っちゅうと、ギュウギュウの中で春香ちゃんと密着するとかそんなんかな? ほぉぉー」

陣内「もう目覚ましあんま関係ない気もするけどな。ええわ、聞こ聞こ」

カチリ

陣内「さ、電車来い、電車来い、電車…」

カンカンカンカンカンカンカンカン

陣内「…なんやこれ、踏切?」

ガタンゴトン…ガタンゴトン…ガタンゴトン…

陣内「…………………」

P『今の満員電車、春香が乗ってました』

陣内「知らんわ!」

陣内「乗ってたからってなんやねん! 音だけじゃわからんわ! ちゃんと中で録音せぇや!」

陣内「って言うかなんでコイツ踏切の前で録音しとんねん! アホか!?」

P『いや~…俺、乗れなかったんですよね。なんせ、満員電車なもので』

陣内「やかましいわ!」

陣内「満員だから乗れなかったって、アホやわこいつ! そもそも電車で録音する必要ないやん!」

陣内「あ~もうほんまアホやわ~…気取り直して音シリーズ次行こ、次。次はなんや?」

バサッ

陣内「えーと…次はドジっ子春香ちゃんか。普通やな」

陣内「お? なんや、2パターンあって、順番に出てきます? はー?」

陣内「なんやようわからんけど、両方聞いてみよ」

カチッ

パタパタパタ…

陣内「お、走って来た」

春香『ほらほら、朝ですよー! そろそろ起きてくださーい!』

春香『って、あっ…わっ、わわっ!』

ボフッ!

陣内「わ、春香ちゃん転んでのしかかってきた!」

春香『あっ…ご、ごめんなさい! 私ったらドジで…』

陣内「うわ~可愛いな~」

春香『それじゃ私、朝食作ってきますね!』

パタパタパタ…

陣内「や~春香ちゃんらしくてええわ~、ほんま可愛い」

陣内「そういや2パターンあるっちゅうし、もう一回やって他のパターンも聞こか」

カチッ

パタパタパタ…

陣内「また走って来た」

春香『ほらほら、朝ですよー! そろそろ起きてくださーい!』

陣内「なんや一緒やん、2パターンあるんちゃうの?」

春香『って、あっ…わっ、わわっ!』

ブスッ!!

陣内「なんか刺さったぁ!」

デンデンデーン!! デンデンデーン!!

陣内「火サスの曲流すなやー! おいちょっと待て死んだんか俺!?」

春香『あっ…ご、ごめんなさい! 私ったらドジで…』

陣内「ドジで済むかぁ!」

春香『それじゃ私、朝食作ってきますね!』

陣内「その前に救急車呼べぇ! 朝食なんて作っとる場合やないやろ!」

陣内「もー、だから普通でええ言うとるやろ! もっと普通のないんか普通の!?」

陣内「えーと、お? ここから、歌シリーズ?」

陣内「ライブみたいに、春香ちゃんが歌ってくれるんかな? ライブっちゅうかCDか」

陣内「ほな、聞いてみるか」

カチリ

春香『キラメキラリ♪ ずっとチュぅッと♪ 地球でー輝く光ー♪

春香『キラメキラリ♪ もっとMOREっとー♪ 私を私と呼び・た・い♪』

陣内「お、キラメキラリ! やよいちゃんの曲やな、元気に起きられそうや~」

陣内「歌で起こしてくれるんか。まぁ、これなら変なのは混じらんやろ」

陣内「他にはどんな曲入っとるんかな」

カチッ

春香『であえてよーかったー あなたでよーかったー』

陣内「お、LOSTや」

カチッ

春香『いつものように空を翔ーけてた ずっとずっとどこまでもー続くせーかいー』

陣内「伊織ちゃんのフタリの記憶やな…」

カチッ

春香『ねーむりーひめー めざめるーわたーしはーいまー』

陣内「眠り姫…なんやねんこの選曲は!」

陣内「二度寝するわこんなん! 曲ちゃんと選べや!」

陣内「はぁ~…まぁ、ええわ。眠り姫っちゅうけど、最終的には起きる感じやし」

陣内「えーと次の曲は…」

プルルルルルルル

陣内「お? 電話や、誰からやろ」

ガチャ

陣内「はい、もしもし?」

彼女『もしもし、智くん?』

陣内「彼女や…」

陣内「ん、何か用?」

彼女『何か用って…智くんさ、最近冷たいよね』

陣内「え、そうかな? そんなことないと思うんやけど」

彼女『智くん、いっつも春香ちゃん春香ちゃん言ってて…私よりアイドルの方が好きなんでしょ!』

陣内「いやいや、それとこれとは違うって! 春香ちゃんはあくまでファンで…」

彼女『じゃあ、もうファンやめて!』

陣内「えぇ、そんなんいきなり言われても…」

彼女『もう、いいよ! アイドルの追っかけやめないんなら、別れましょ! じゃあね!』

ガチャ

陣内「あっ! ちょっと、待って…」

カチリ

春香『切ーれそーうーにーなった糸はもうー戻らーないーよー♪』

陣内「やかましいわ!」

陣内「このタイミングでマリオネットの心とか流すなや! 切れそうにって今切れたわ! 誰のせいやと思っとんねんホンマ!」

陣内「ああ、駄目や駄目や、春香ちゃんは関係ないわ。関係あるけどないわ」

陣内「はー…もうええわ、春香ちゃんに慰めてもらお」

陣内「ちゃんとしたボイス来いよ? 頼むから」

カチッ

春香『おはよう、朝だね!』

千早『あら、春香。おはよう』

陣内「あれ? 千早ちゃん出てきた」

春香『二人っきりだね…』

千早『えっ、ちょ…春香』

ブツッ

陣内「…なんや今の」

陣内「え? 何、今の」

陣内「…続き聞こ」

カチッ

千早『な、何をしているの…?』

春香『ふふふ』

千早『だ、駄目よこんなの…誰かに見られたら…』

春香『誰も聞いてないよ…』

ブツッ

陣内「ああー、ほーう…ふんふんふん…」

陣内「もう目覚まし関係ないな」

陣内「次聞こ」

カチッ

しゅるっ しゅる

千早『…駄目よ、こんなこと』

春香『だったら、なんで抵抗しないのかな?』

千早『そんなこと…あっ…』

ブツッ

陣内「なんやもー! ええところで切れるなー!」

陣内「次や次、はよダイヤル回して…よしっ」

カチッ

ざわ…ざわ…

陣内「ん…? なんやザワザワしとる」

チンッ

春香『かんぱーい!』

陣内「なんか打ち上げやっとるー!」

春香『いやーみなさんお疲れ様です! これで無事、収録が終わりました!』

陣内「なんで打ち上げの内容が入ってんねん!」

千早『おめでとう、春香』

陣内「っていうか、さっきまでのはどうなったん!?」

春香『それにしても、最後の千早ちゃんとのやつ…やろう、って言われたからやってみたけど恥ずかしかったよ~』

陣内「台無しや!」

千早『そうかしら? 実際は別々に撮影したから、そんなでもないと思うのだけれど』

陣内「なんでバラすねん! 夢見させとけや!」

順二朗『みんな、よくやってくれた』

P『いやー、頑張った甲斐があった』

陣内「うわ、オッサン達出てきた! 出てくんな!」

順二朗『それにしても、私のはあれでよかったのかね?』

陣内「いいわけあるか! 少しくらい疑問持てや!」

野太い声『私もこのような企画に参加させていただき…光栄です』

陣内「だからお前は誰やねん!」

陣内「社長と、プロデューサーと…そっちはわかったわ、お前誰やねん!」

野太い声『あの注射の痛さと言ったら…死ぬかと思いましたよ』

陣内「お前マジで注射打ったんかい! なんやねんその根性は!」

陣内「っていうか春香ちゃん目覚ましやろうが! なんで他の連中出てくんねん!!」

春香『はぁ…それにしても、あれ本当に売れるんですかね』

陣内「お前がそれ言ったら終わりやろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

陣内「あぁぁぁぁ! もう、なんなんやねんこの目覚ましは! ふざけとるんか!」

陣内「春香ちゃんのファンやめたるわもう!」

陣内「目覚ましっちゅうか、俺の目が覚めたわ!」

陣内「変なもん買わされるし、彼女にはフラれるしなんもええことないわ!」

陣内「あーほんま腹立つわー…」

陣内「この時計、もう売ったろ。買った奴の目も覚まさせたるわ」

カチリ

春香『この時計を買ってくださったみなさん! 天海春香のボイス目覚ましを最後まで聞いていただき、ありがとうございます!』

陣内「………」

春香『こうしてこの商品を出せたのは、みなさんのお陰です』

春香『今の私は、ファンのみなさんが私を支えていてくれたからあります。本当にありがとう!』

陣内「………」

春香『また変なところや、情けないところ、いっぱい見せちゃうかもしれないけど…』

春香『どうか、これからの天海春香も応援していてください! お願いします!』

陣内「………」

陣内「そうやなぁ…春香ちゃんも、最初からこうして目覚ましなんて出せるアイドルやなかったもんな」

陣内「そうして考えると、こんな目覚ましでも春香ちゃんが今まで歩いてきた結晶なんやな」

陣内「しゃーないな、使ったるわ。ちゃんと、いいボイスも入ってたしな」

陣内「ダイヤル、最初の幼馴染春香ちゃんに戻そ」

ジーッ

陣内「これからも頑張るんやで、春香ちゃん。俺が、ファンのみんなが応援しとるからな」

カチリ

ブッ

春香『くっさ~』

陣内「売るわぁぁぁ!!」

終わり

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