私のプロデューサーさんの地元が花火で有名だと知ったのはつい最近のこと。
早苗さんと椿さんと同じ県の出身だと知ったのは、ほかの人の言葉によるものだった。
僅かなキーワードを手に私は彼の出身地を調べ続ける。
春もすっきりと過ぎ去り、事務所に暖かい風が吹き抜けるさなかにも私はスマートフォンを弄る。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422789255
「まゆ」
ソファに腰掛けてスマートフォンに熱中していた私はその言葉にびくりと肩をはねさせる。
次いでくしゃくしゃと私の私の髪を乱暴にかき回す。
髪を乱されるのは嫌いだが、彼の手の感触はそれを補って余りある暖かさを持っている。
たまらず目を細めて私は彼の手におぼれていた。
「まゆ。これから長期間の地方ツアーだ。覚悟はできているね?」
「ええ。まゆはいつでも大丈夫です」
熱っぽく魘されたように私は彼の手を取り自らの頬に寄せる。
「新潟、か。こんな季節に妙なもんだ」
ぽつりと彼がつぶやいた。
無機質なラジオは無作為に曲を吐き出す。
耳障りな音楽も、耳触りのいい音楽も私の脳を犯す。
「俺はこの曲、好きだな」
彼は鼓膜が破れるほどの喧しい曲――たしかマイケミカルなんとか、といった――を好きなようだ。
それが曲名なのかアーティスト名なのかすら私にはわからない。
ラジオから曲が流れる。
日本語の、女性の曲だ。
そのメロディーが私を惹きつけた。
まるで胴体を無理やり握りしめられた様な不思議な感覚だった。
「夏の星座にぶら下がって 上から花火を見下ろして」
ラジオから流れる曲は私の心を犯してゆく
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