登場人物
・ソウラ
ウェディ、男、戦士
冒険者の少年
・マルチナ
ウェディ、女、魔法使い
ソウラの幼なじみ
・アズリア
人間(?)、女、魔法使い
竜の卵から生まれた
・うりぽ
プクリポ、女、旅芸人
・ギブ
ドワーフ、男、盗賊
・マリベル
人間、女、スーパースター
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蒼天のソウラ・前回までのあらすじ
鯖の問題で陸路を断たれたソウラ一行は、幼なじみの少女・マルチナの厚意により、彼女の所持する大型商船に乗せてもらうこととなった…
パトリシア級8番艦ミーティア号、船上~
アズリア「わああ!!海だ!!海!ヤッホー!!」
うりぽ「それは山だポ」
アズ「じゃあ海ではなんて言うの?」
マルチナ「ヨーソロー!オモカジイッパーイ!!じゃない?」
ソウラ「いやいや、ソーランソーラン!!だろ?」
チナ「うちは漁船じゃないの!もう」
アズ「ソーランソーラン!!」
ソウラ「ドッコイショードッコイショ!!」
ギブ「…あんまりはしゃいでると船酔いするよ」
ソウラ「ウェディの男は船酔いなんてしないぜ!」
アズ「ふなよい?」
チナ「ほら、海は波があるから、揺れるでしょ?それで気分が悪くなる人もいるの。私は平気だけど」
うりぽ「…りぽはもう酔ったポ……」
ソウラ「それでさっきから静かだったのか…」
うりぽ「う"っう"ぉえっ」
アズ「うりぽ大丈夫?」サスサス
うりぽ「ぅう…かたじけねーポ…」
チナ「ルビビがいつも酔い止め持ってたハズ…ちょっともらって」
ルビビ「お嬢様ぁああ~!」
ルビビ「お嬢様ぁああ~!」
チナ「あ、ちょうど良かった。酔い止めを…」
ルビビ「たたた大変です!!前方にっ」
チナ「え?」
アズ「なに?」
ソウラ「どうしたんだ?」
ルビビ「突如として巨大な船が!!」
一同「…」
一同「な、なんだってぇー!?」
ミーティア号、甲板前方~
チナ「な、なによあれ!」
アズ「かっこいいね!黒い筒がいっぱい突き出てるよ!!」
ソウラ「!……あれって、まさか、」
ギブ「か…海賊船だ…」
ソウラ「マール・デ・ドラゴーン…!!」
チナ「は?」
アズ「なにそれー」
ソウラ「知らないのかよ!大昔に勇者と共に戦ったっていう伝説の海賊船!シャーク・アイ率いる海賊達は状態異常をもろともせず、魔物の防御を打ち破る砲撃で…」
ルビビ「それどころじゃありませ~ん!ぶつかります~!!」
チナ「かわしてぇ!」
ギブ「だめだ…!間に合わないっ」
チナ「キャーッ!!」
ソウラ「うりぽアズギブ!!俺につかまれ!!」
うりぽ「もうだめポ…」
ギブ「うわー!!」
アズ「ソーランソーラン…」
ドギャオース!!ダゴンダゴォン…!!
……
どこかの浜辺~
チナ「うぅ……いたた…」
チナ「ここは…?」キョロキョロ
チナ「みんなは……?」キョロキョロ
チナ「……」グス
チナ(私が浜辺に打ち上げられて助かったんだから、きっと、きっとみんなも無事…!)
チナ「…ソウラ」グスン
ザザザッ
チナ「な、なにっ!?」
魔物の群れが現れた!
岩とびあくまA「クエーッ」
岩とびあくまB「クエーッ」
岩とびあくまC「クエーッ」
チナ「!こ、こいつらっこんなときにっ」
チナ「ヒャド!」ピロリロリ…キキィン!
岩とびA「クエ?」
チナ(き、効いてないっ…私の得意な氷系呪文に耐性があるんだわ!私1人じゃっ)
チナは逃げだした!
しかし囲まれてしまった!
岩とびA「クエーッ!」
岩とびB「クエーッ!」
岩とびC「クエーッ!」
岩とびあくまは仲間を呼んだ!
岩とびDEF「「クエェーッ!!」」
チナ「そ、そんなっ……このままじゃっ」
ピロリロリ…ボボォウ!
岩とびA~F「グェーッ!?」
チナ「こ、この炎はっ…メラ?でも敵全体に…けどイオじゃない…なら」
???「今のはメラでもイオでもないわ」
チナ「!?」
マリベル「ギラよ」
マリベル「ギラよ」
チナ(人間の女の子…!?)
チナ「あなた、ギラって」
岩とびA「クエェー!!」
マリベル「とりあえず、こいつらを片付けるわよ…ベギラゴン!」ピロリロリ…ゴゴォオーッ!!
岩とびA~F「グ、グエェー…」
魔物の群れを倒した!
チナ「す、すごい」
マリベル「ま、このマリベル様にかかれば、ざっとこんなものね」
チナ「あなたは」
マリベル「名乗るほどの者じゃ」
チナ「マリベルさん」
マリベル「…あれ?」
チナ「助けて下さって有難うございます」
マリベル「ふ、ふふん。どうやら私の名もずいぶん有名になったみたいね。当然かしら、なにしろカッコよさコンテストで堂々の」
チナ「自分で言ってましたよ?」
マリベル「…」
チナ「このマリベル様にかかればどうの…って」
マリベル「……」
チナ「……」
マリベル「で、あんたはなんなわけ?」
チナ「私はマルチナです。見ての通り、ウェディの娘ですが、船が転覆して…」
マリベル「ここに流れついた」
チナ「はい」
マリベル「ていうかウェディってなに?あんた人間じゃないの?」
チナ「?」
マリベル「顔色が悪いと思ったけど、生まれつきなの?」
チナ「そうだけど…あなたウェディを見たことないの?」
マリベル「ないわ。よく見ればヒレもついてるじゃない。半魚人ってやつ?」
チナ「せめて人魚と言って」
マリベル「…あんた1人?」
チナ「みんなは…多分、私と同じで、海に投げ出されて……」
マリベル「……ふぅん。じゃ、あたしと同じだ」
チナ「…え?」
マリベル「あたしの仲間も、はぐれちゃったの。まったく。ダメなやつらよ、このマリベル様を1人にするなんて」
チナ(それってあなたの方がはぐれたんじゃ…)
マリベル「……なにしてんの」
チナ「……え?」
マリベル「まったくトロくさいわね。ついてきなさいよ、どうせお互い、仲間を探してあげなきゃならないんだから。」
チナ「それは…そうね」
マルチナが仲間になった!!
チナ「それで、あなたは、ここがどこだか分かるの?」
マリベル「ぜんぜん」
チナ「…」
マリベル「ぜんぜんわかんないけど、なにか」
チナ「…いえ」
マリベル「言っておくけど、さびしかったわけじゃないわよ。あなたがどぉーしてもって言うからね」
チナ「私も心細かったから、あなたに会えて良かったわ」
マリベル「…違うって言ってるでしょ」
チナ「それに私1人じゃ危なかったし、頼りにするわ。マリベル」
マリベル「…ふ、ふん。仕方ないから…頼られてあげるわ。……さ、行くわよ!」
チナ「あては」
マリベル「ない」
チナ「……」
マリベル「……」
スタスタスタ…
……
……スタスタスタ
チナ「はぁ……」
マリベル「……」ピタッ
チナ「?どうしたの」
マリベル「こっちのセリフ。なによ、いっちょまえに溜め息なんて吐いて」
チナ「あぁ…ごめんなさい」
マリベル「そんなに仲間のことが心配?」
チナ「それもあるけど……落ち着いたら、積み荷のことも気になっちゃって」
マリベル「船の積み荷?」
チナ「そう。パパから任された大事な商品達だから…」
マリベル「任された…って」
チナ「うちはエスコード商会っていう、それなりの貿易商なんだけど。最近は私もそれを手伝ってるの。…はぁ、パパにもらった船も、無事だといいんだけど。」
マリベル「……ふぅん。いいわね」
チナ「え?」
マリベル「あたしなんて、漁の見学しようとしただけで、つまみ出されてお説教よ。船だってくれないし」
チナ「…もしかしてマリベルの家って」
マリベル「豪商アミットと言えば、世界を股にかける大商家よ。船だって漁船から商船までなんでも。…まぁ住んでるのは小さな漁村だけど……それは島が一つしかなかったせいで…」
チナ「そうだったのね。どうりで」
マリベル「なによ」
チナ「冒険者にしてはお肌もぷるぷる、髪もふわふわだと思った!さすが!育ちがいいと手入れも行き届いてるわ!」
マリベル「えっ」
チナ「ほらもち肌」プニプニ
マリベル「ちょっ、やめて」
チナ「髪の毛も綺麗、ふわふわのさらさら」ナデナデナデナデ
マリベル「やめっ」
チナ「どんなケアしてるの?シャンプーとリンスのメーカーは?乳液とかパックとか使ってるの?食事とか気をつけてることは」
マリベル「メラ」ピロリロリ…ボッ
マリベル「メラ」ピロリロリ…ボッ
チナ「きゃっ!あ、危ない!」
マリベル「…あんたさぁ、よっぽど不安なんだろーけど、いきなりテンション上げすぎ」
チナ「ご、ごめん」
マリベル「まぁいいけど」
チナ「つい…同じ商家の娘って分かったら」
マリベル「はいはい」
チナ「…マリベルは、不安じゃないの?仲間のこと心配じゃ」
マリベル「んー…ま、あいつらなら大丈夫かな、って。」
チナ「そっか…」
マリベル「これまで、どんなピンチも乗り越えてきたし」
チナ「信じてるんだ」
マリベル「そんなんじゃないけど…」
チナ「私はね、いっつも心配で仕方ないの。すぐ無茶するし、周りも巻き込むし、人のためならどんなに危険でも気にしないし、二言目には冒険だドラゴンだーって」
マリベル「ずいぶん迷惑なやつみたいね」
チナ「ほんと!それに巨乳好きだし…」
マリベル「……」
チナ「……」
マリベル「好きなんだ。そいつのこと」
チナ「えっぅえいええ!?ちぐぅわよ!?」
マリベル「あいつもねー、そういう意味では心配かも。誰にでも優しいし、すぐ鼻の下伸ばして、それでモテるんだからやんなっちゃう。どこがいいのかしら、あんなヘタレ」
チナ「ヘタレ?」
マリベル「超絶美少女といくつもの危機を共に乗り越え、ずっと一緒に旅してるのに、何もしてこないなんてヘタレよ。」
チナ「そうなの?」
マリベル「勇者なら姫を助けた次の日には、昨晩はお楽しみでしたね、よ」
チナ「…私は、なかなか一緒に冒険できないから…お仕事の手伝いが忙しくて」
マリベル「……私なんて、ちょっと遊びに行くのすら止められてたわよ」
チナ「え…じゃあどうして」
マリベル「勝手に飛び出してついてったの」
チナ「家出ってこと!?」
マリベル「そうなるのかな…事後承諾で、無理矢理に認めさせちゃったけど」
チナ「…すごい」
マリベル「そう?」
チナ「私には、家を飛び出す勇気なんてないから」
マリベル「心配かけちゃうしね」
チナ「そう」
マリベル「箱入り娘も楽じゃないわ」
チナ「そうね…フフ」
マリベル「やっと笑ったわね」
チナ「え?」
マリベル「その方が素敵よ。眉間にシワ寄せて怖い顔してるより」
チナ「あっ…」
マリベル「さ、早く行きましょ。いつまでもお姫様を迎えに来ない、ダメな勇者様を怒鳴りつけに」
チナ「えぇ、そうね…!」
……
マリベル「町が見えたわ!」
チナ「えっどこに?」
マリベル「タカの目で。このまま北東に進めば着くわ。そこで情報を集めましょう」
チナ「…タカの目」
マリベル「さっきから少し進むたびにやってみてたんだけど、なんかうまく見えなかったの。やっとよ。ルーラも使えないし、どうなってるのかしらね」
チナ(ルーラ……それにギラ、この子やっぱり)
マリベル「ちな!ちなってば!」
チナ「えっ!?」
マリベル「ぼーっとしないで!魔物よ!」
ようかい魚「ギョギョギョ!」
おばけヒトデ「ヘァッ」
マリベル「メラミ!」ピロリロリ…ボォウ!
チナ「ヒャド!」ピロリロリ…キキィン!
突げきうお「ウオォー!」
チナ「あっ……」
チナ(ソウラ…)
突げきうお「ウオゥ!」ドガッ
チナ「きゃっ!」
マリベル「てぇい!」ビシィ
突げきうお「ウ、ウォー……」
魔物の群れを倒した!
マリベル「何やってんのよ」
チナ「ぅ……ごめん」
マリベル「はい、いいから見せて。…ホイミ」ピロリロリ…ホワァア…
チナ「あっ、わ、私自分で」
マリベル「いいから。あんたぼーっとしてて危なっかしいし、いざって時のために魔法力を温存しなさい」
チナ「…ありがとう」
マリベル「はい治った。行きましょ」
チナ「ね、ねぇ」
マリベル「なに?」
チナ「海辺を通るのはやめない?」
マリベル「なに言ってるの、あんたの仲間が打ち上げられてるかもしれないじゃない」
チナ「そうよね…変なこと言って」
マリベル「ごめんはなしね。あたし、そーいう辛気臭い顔は嫌いなの。はい笑って。にー」グイー
チナ「いひゃい」
マリベル「ププッ、変な顔」
チナ「も、もうっ、なにするのよ」
マリベル「はいはい」
チナ「このぉ!」
マリベル「いひゃい!」
チナ「あはは、ほっぺが」
マリベル「なにすんのよ!」
チナ「ちょっと仕返し」
マリベル「ぐぬぬ…」
チナ「さ!町は北東だったわね」
マリベル「あっ待ちなさいよー!」
タッタッタッタッ…
……
見知らぬ町~
マリベル「……これ」
チナ「なによ……なんなのよ」
男の石像「…」
少女の石像「…」
子犬の石像「…」
チナ「リアルで…気持ち悪い。まるで動いてる途中で、突然人が固まったみたい…」
マリベル「…残念だけど。……それで正解」
チナ「!…う、嘘っ」
マリベル「アストロンみたいな短期的なものじゃない。これは…呪い。石化の呪いよ」
チナ「そんなっ……あっ…………嘘でしょ、あれはっ……!」
ルビビの石像「…」
フーゴの石像「…」
アレックの石像「…」
チナ「ぃやっ…………いやぁああああ!」
マリベル「落ち着いて!ちな!!」
チナ「こんな…こんなのって……ぁ、あ…」
マリベル「……」
チナ「…ぅ、うぁ……あ」
マリベル「歯ぁ食いしばりなさい!!」
バチコーン!!!!
チナ「ぁがあっ!?」
マリベル「しっかりしなさい!あれ、あんたの仲間なんでしょ!?」
チナ「ぁ…」コクコク
マリベル「だったらあんたが!しゃんとしないでどうするの!今この状況で、この人達を助けられるのはっ…あたし達だけでしょ…」
チナ「マリ…ベル…」
マリベル「はい」
チナ「…このハンカチ」
マリベル「顔拭いて。そんな顔で隣にいられたら迷惑よ」
チナ「…ありがと」
マリベル「そうそう。素直に感謝すればいいの」
チナ「……でも、こんなの、どうやって助けたら…」
マリベル「…灰色の雨」
チナ「え…」
マリベル「この石化は、魔物が降らせた灰色の雨によるものなの」
チナ「ならっその魔物を倒せばっ」
マリベル「そう簡単じゃないわ。呪いだもの。かけた本人が消えても残る」
チナ「じゃあ…」
マリベル「石化を解くには、『天使の涙』っていう特別な液体を、高くから降らせる必要があるんだけど…」
チナ「それはどこにっ」
マリベル「持ってるわ」
チナ「ほんと!?」
マリベル「けど荷物はほぼ全部あいつ持ちだから、ここにはないの」
チナ「それ持ってるって言わない……というか、荷物ほぼ全部って…」
マリベル「いいの。荷物持ちを、させてあげてる、んだから。…あいつもふくろに名前なんてつけて、楽しそうにしてるもの」
チナ「それ…末期なんじゃ」
マリベル「とにかく!あいつが来れば石化は解けるんだから、心配いらないわ。あたし達は灰色の雨を降らせた魔物を、先に退治しておきましょ!」
チナ「来れば…って、」
マリベル「あいつは来るわよ。絶対。…幸い、石像の様子と、あんたの仲間が一緒に石化してる点から見ても、石化されたのはついさっき」
チナ「う、うん」
マリベル「呪いを解く時間に余裕はあるし、魔物もそう遠くまで行ってないハズ。急ぎましょ」
チナ「わ、分かったわ…!」
タッタッタッタッ…
……
小高い丘~
あめふらし「ちゅーちゅちゅー♪」
マリベル(…ビンゴ!)
チナ(あれが……!)
マリベル(アレ自身も灰色の雨を降らせるため、高いところにいなくちゃならない。なんとかと煙はってね)
チナ(ようし…行くわよっ)
マリベル「あっ!待って!ちな!!」
あめふらし「ちゅう?」
チナ「覚悟なさい!ルビビやアレック、フーゴをあんなにしたこと、後悔させてやる!!…ヒャダルコ!!」ピロリロリ…
ギキィイインッ!!
チナ「な、なんで」
海のまもり亀A「…」におう立ち
海のまもり亀B「…」におう立ち
海のまもり亀C「…」におう立ち
あめふらし「ちゅちゅちゅちゅちゅ」ケラケラ
チナ「こんのぉ…だったらぁ!」
マリベル「ダメッ!ちな!冷静にっ」
チナ「マヒャド!!」ピロリロリ…コォォオオ…
キュィイイイイッ…!
亀A「…」マホカンタ
亀B「…」マホカンタ
亀C「…」マホカンタ
チナ「!?しまっ」
マリベル「マジックバリアーッ!!」ピロリロリ…
ゴゴォォオオドガァアアアア!!
チナ「きゃあああああ!」
マリベル「ちなーっ!」
あめふらし「ちゅっちゅっちゅー♪」
マリベル「ちな!大丈夫!?しっかりしなさいよ!」
チナ「ご…ごめん、マリベル…」
マリベル「謝るなって、言ったでしょ。辛気臭いのは後にして。今は…敵に囲まれてるんだからっ」
チナ(っ…私のせいだ。魔公子に、呪文を返されて痛い目見たばかりだってのに…先走って…!)
マリベル「あの亀に呪文は効かない……だったら!」
マリベルは身体じゅうからまばゆい光を放った!
あめふらし「ちゅ!?ちゅう!?」メェシバシバ
マリベル「マリベル様…オン・ステージよ!」
あめふらし「?」
マリベル「昇天させてあげるわ」
タンッ…タタン
マリベル「あたしのとっておきの……死の踊りでね」ニヤッ
マリベル「はぁっ…!」ヒュンッ…グロロォオォオオ…!
チナ「っ!」ゾクッ
チナ(きれいなのに…怖い。……魂が、抜き取られそうなくらい…!)
亀ABC「「グァアアア…!!」」
チナ「!!…かめが……消えた!?」
マリベル「はぁ…はぁ……。けど…アレには効いてないっ」
あめふらし「ちゅー!!」
あめふらしは凍りつく息を吐いた!
マリベル「きゃあっ」
チナ「うぁあっ…!」
パキ……ピキ…
マリベル「あ、足がっ」
チナ「マリベル!?」
あめふらし「ちゅちゅちゅ~」レロレロレロレロ
マリベル「ひぃっ」
チナ「っ………マヒャデドス!!」ピロリロリ…
マリベル「!?ダメ!マホカンタがまだっ」
キィイイイイ……ゴゴォォオオ
チナ(跳ね返ってくる…!亀の1匹がアレにかけたマホカンタで……ならっ!!)
チナ「マホカンタァッ!!」ピロリロリッ
バキィイイイイン…
マリベル「う、嘘、詠唱が間に合うタイミングじゃっ」
バキィイン……バキィイイイン
あめふらし「ちゅ、ちゅう?」
マリベル「2つのマホカンタがっ……マヒャデドスをはじきあって…」
ギィイン!……ミシミシ…ギキィイン!
チナ「!ひびがっ……」
ギィンッ……ピシッ…ギギィン!
チナ(お願いっ……保って!!)
ピシッパリッ……ギギィイイン!!
チナ「いっけぇえええ!!」
グゴォオオオオッ……バリーン!!!!
あめふらし「ちゅう!?ちゅうー!!」スタコラサッサ
チナ「や、やった…」
マリベル「バカ!あんた人のこと言えないじゃない!とんでもない無茶して!」
チナ「ハハ…ソウラの突撃癖が、感染っちゃったかしら…」
マリベル「いいから……早く追いなさいよ」
チナ「えっでも」
マリベル「あたしは平気!アレを逃がしたら、またどこかで灰色の雨が降るのよ!」
チナ「!!」
マリベル「行きなさい!」
チナ「…うんっ!」
タッタッタッタッ……
マリベル「ふぅ…ちょっと、疲れちゃった…」
パタ……
洞窟~
チナ「待ちなさい!!」
あめふらし「ち、ちゅうっ」
チナ「もう逃げ場はないわ。今度こそ覚悟っ」
あめふらし「ちゅちゅう!ちゅう!」
チナ「!?それはっ」
アズリアの石像
チナ「あ、アズっ!?」
あめふらし「ちゅーちゅっちゅ」
ペロペロペロ…ヒュウッ
チナ「人質…ってわけ?いい根性してるじゃない」
チナ「けど、残念でした」
あめふらし「?」
チナ「それは私が氷で作った、偽物よ?」
あめふらし「ちゅうぅ!?」
チナ(嘘だけど)
チナ「今よっ!」
???「うぉおおおおっ…でりゃああ!」
ザシュウゥ!
あめふらし「ちゅっぱちゃっ…!?」
あめふらしを倒した!
チナ「……ふぅ」
???「お疲れさん、ちな」
チナ「ちなってゆーな。……まったく、散々心配させといて、こんな土壇場で出てくるなんてね」
???「ごめんっ。こっちも色々あってさ。……でもよく合図に気づいてくれたよな」
チナ「…当たり前でしょ。私は…その……幼なじみなんだからっ…。嵐の中でだって、あんたの口笛を聞き逃したりしないわよ!」
???「へへっ…サンキュー」
チナ「もう少し早く来てくれればなぁ」
???「悪かったって」
チナ「大変だったんだから……疲れたし、ぼろぼろだから…………責任とりなさいよ、ソウラ」ポフッ
ソウラ「ぁ、あ~ちなさん?アズの視線が…」
チナ「もうちょっとだけ……」
ソウラ「いや、早く外に出さないと、ここじゃ天使の涙が届かないし…」
チナ「…………」
ドスッ
ソウラ「あぐぇっ!?」
チナ「ふんっ、なら早く運び出してあげなさいよ!この鈍感突撃魚!」
ソウラ「な、なんだよ急に…変なやつだなぁ……よっ…と、重いな…」
チナ「レディーにそんなこと言わないの!あと変なとこ持ったら凍らすから」
ソウラ「そんな…今は石像なんだから仕方ないじゃんか…」
チナ「文句言わない!ほら!キリキリ運ぶ!いちに!いちに!」
ソウラ「へいへい」
……
アズ「ソーランソーラン……あれ?」
ソウラ「アズっ!」
アズ「わわっソウラ!どうしたの?っていうかここどこ?ボクら確か船で…」
ソウラ「良かった…アズ…」ギュッ
アズ「…えへへ、よく分かんないけど、まーいっか!」
チナ「…あんたは良くてもね、私はよくないの。何がどうなってんのよ」
ソウラ「あ、あぁ。俺、気づいたら木の板につかまって海を漂ってたんだけどさ、そしたら魔物の群れに襲われて…」
……
ソウラ「く、くそっ折れたままの剣じゃ、下から来る敵にうまく対処できねぇ!」
ピラニアン「ピラピラピラ!」
しびれマイマイ「しびしびしび!」
ザシュッ!!
バシュッ…!!
ソウラ「な、なんだぁっ!?あ、あいつ、水面を走るようにっ…い、いや、斬ると同時に、魔物を踏み台にしてっ!?」
ピラニアン「ピラァ…」
マイマイ「カミマミタァ…」
魔物の群れを倒した!
ソウラ「す、すげぇ…」
ソウラ「な、なぁ!あんたはっ」
……
ソウラ「てな具合にな!もうすっげえ強いやつでさぁ!」
アズ「うんうん!」
チナ「それはいいから。で、それから」
ソウラ「助けてもらって、それから町に行って、あの状態だろ?だから俺は魔物を追って、その人は天使の涙を撒きに行った。…ってわけ」
チナ「…なるほどね。……どこがヘタレよ」
ソウラ「へ?」
チナ「こっちの話!さ、みんなと合流しましょ。きっと心配させちゃってる」
ソウラ「だな」
アズ「おー!」
グニャア…
チナ「!?な、なにこれっ」
アズ「わわわっ足下がぐにゃぐにゃするぅ~!」
ソウラ「ふ、2人共大丈夫かっ!?俺から離れっうわわわわぁあああああ!!」
チナ「きゃあぁあああ!」
アズ「やぁあああああああっ」
……
アズ「れんソーランソーランソーランソーランどっこいしょ!!」
アズ「はぁーどっこいっしょどっこいっしょ!!」
……
ギブ(……その後、僕らは船の上で目覚めた。そう、マルチナの船、ミーティア号の船上で。)
ギブ(…あれは夢だったのか?)
ギブ(ううん。きっと、そうだけど、そうじゃない。)
ギブ(もしかしたら……あれは、この、アストルティアの海の夢。アズリアの龍脈の力が、遥か昔の、楽園を旅立つ勇者達の夢を、僕らに見せたんだ。)
ギブ(だから、夢だけど、夢じゃない。だって……)
ギブ「僕とうりぽを助けてくれた『ユバールの民』の人が食べた『種』は、きっかりなくなっていたのですから」
りぽ「ぽぉおおおお!!りぽのギャグに大爆笑してくれるからいー人かと思ったのに食い逃げポ!!」
ギブ「剣の腕前もすごかったよね。前衛がいなくてピンチだった僕らの前に颯爽と現れて」
りぽ「ぽおおおお!うぽぽおおお!!」
ギブ「勇者ユルールと互角か、それ以上か」
りぽ「なのにナゼいなくなってしまったんだポーッ!!」
ギブ「仕方ないよ」
りぽ「なっとくいかねーポ!小魚のつくだにとか思わせぶりなアイテム用意しといて何も引き止めれんポ!!」
ギブ「つくだにじゃ惚れた女の子には勝てないよね」
りぽ「ぽぽぽぽぉー!ぽぽぽぽぽーん!!」
ギブ(僕らの旅は、これからも続いていく。数々の伝説が眠る、この、アストルティアで…!)
……
……
マリベル「……ふん。遅かったじゃない」
マリベル「えぇ、大遅刻よ、勇者サマ?」
マリベル「クスッ…だからお詫びとして、あたしをおんぶしなさい」
マリベル「これはマリベル様の命令よ?」
マリベル「……足が痛いの。いいから文句言わずにおぶりなさいよ」
マリベル「ん…しょっと」
マリベル「…うん。あ、ありがと」
マリベル「な、なんでもないから!ほら歩く!みんなこのマリベル様を待ってるんだからね!」
マリベル「……またね。遥か未来の、勇者さん達」
END
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