花陽「ねえ… り、凛ちゃん?」 (107)
1日過ぎたぁ? 認められないわぁ
17日に間に合いませんでした…
案の定長くなったにゃ
始めまうす
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水曜日
花陽「ねえ… り、凛ちゃん?」
凛「ん? なあに、かよちん」
花陽「…ううん、やっぱりなんでもないよ。ごめんね」
凛「そっか。ならいいにゃ」
花陽「……」
ーーーーーーーーーー
凛「えー? なにそれ、気になるよ! 」
花陽「ホントニナンデモナイヨォ〜」
凛「かよちん、凛に隠し事するなんて許さないにゃー!」ガバッ
花陽「ワァッ、マ、マッテ、リンチャン!」
ーーーーーーーーーー
花陽(いつもの凛ちゃんなら、きっとこんなやりとりになってたはずなのに…)
花陽(おかしい。おかしいです)
花陽(ここ最近の凛ちゃんは、絶対に何かおかしい)
凛「今日もいっぱい動いたにゃー」
穂乃果「最近ハードだよねぇ」
海未「当然です。ラブライブまで、もうあまり時間が無いのですから」
ことり「そのぶん帰ってからしっかり休まないとね〜。海未ちゃん、一緒に帰ろ?」
海未「そうですね」
海未「それでは、お先に失礼します」
ことり「またね〜」
花陽「あ、凛ちゃ…」
凛「穂乃果ちゃん、今日一緒に帰ってもいい?」
穂乃果「おおっ、珍しいね凛ちゃん! もちろんだよ!」
凛「わーい!」
花陽「……」
小泉宅
花陽(今日は、穂乃果ちゃん、かぁ)
花陽(昨日はことりちゃん、一昨日は海未ちゃんとだったっけ…)
花陽(授業中もなんか眠そうだったし… あれ? でもいつもは眠そうにする前に寝てたかも)
花陽「……」
花陽「ま、まぁ、凛ちゃんにだって、そういう気分? みたいなの、あ、あるよね!」
花陽「うんうん。私が考えすぎなだけ。明日にはいつも通りの凛ちゃんだよ、きっと!」
5
木曜日
N先生「公式はすべて瞬時に導ける」
花陽「……」カキカキ
凛「……」ウトウト…
Y先生「英語なんて言葉なんだこんなもんやれば誰だって…」
花陽「……」カキカキ
凛「……」コクン コクン…
H先生「じゃあいつやるか?」
花陽(お昼ごはんの後でしょ)グ〜
凛「……zzZ」スヤスヤ
花陽(……)
花陽(凛ちゃん、今日も寝てばっかり…)
穂乃果「んー! 今日もつっかれたぁー!」
ことり「そうだね。最近の練習、筋肉痛になっちゃいそうなくらいハードだもんね〜」
海未「ですが、皆の動きにも磨きがかかって、さらにレベルアップしているように思います」
穂乃果「えっ、ほんとに!? じゃあ今日は帰ったらお菓子を」
海未「まだダメです! 油断は大敵ですからね!」
穂乃果「そんなぁー……」ガクッ
絵里「でも、確かに皆うまくなってるわね。既にかなりハイレベルな領域に達しているわ」
にこ「にこは元からレベル100にこっ!」ニコッ
真姫「そ。1000レベル中でしょ」
にこ「はぁー!? 何言ってくれてんのかしら? このマッキーペンちゃんは!」
真姫「だ、誰がペンですって!?」
希「あ、えりち、ウチ今日早めに帰らんといけないんよ。悪いけど、戸締り任せてもいい?」
絵里「そうなの? いいわよ。気をつけてね」
希「助かるわぁ。ほな、またね〜」
絵里「また明日ね」
花陽(もう下校の時間かぁ)
花陽(……)チラッ
凛「〜〜♪」
花陽(凛ちゃん、今日は一緒に帰ってくれるよね?)
穂乃果「それじゃ、えーっと、今日は……」
花陽(早く着替えて、私から誘ってみよう…!)ヌギヌギ
穂乃果「えっと……」
穂乃果「あれ? 今日は誰が凛むぐぅっ」ガッ
海未「穂乃果! 帰りますよ!」
穂乃果「むぇえ!? むっ、むいあん!?」モゴモゴ
海未「……」チラッ
ことり「ぴよっ!」
ことり「あ〜、そうだ、凛ちゃん?」
凛「にゃ?」
ことり「一昨日のあれなんだけど、今日も付き合ってくれないかなぁ?」
花陽「!」
凛「一昨日の…あー、あれにゃ! もちろんいいよ!」
ことり「ほんと? 嬉しいな〜。じゃあ、行こっか♪」
凛「うんっ」
花陽「あっ…」
花陽(さ、先越されちゃった…)
ことり「ばいば〜い」
凛「さよならにゃ〜」
花陽「……」
真姫「……」
昼か夜にまた
作業しながらゆっくりいきまうす
真姫「花陽、どうかした?」
花陽(やっぱり……やっぱり、なにか変だよ)
真姫「……花陽?」
花陽(こんなに何日も、一緒に帰らないなんて。まるで花陽のこと…)
真姫「ちょっと、花陽! 聞いてる!?」
花陽「ピャッ! え? あ、ま、真姫ちゃん?」
真姫「もう。さっきから呼んでるのに、花陽ったら全然返事してくれないんだから」
花陽「そうなの? ごめんね、ちょっと考えごとしてて…」
真姫「花陽が考えごとぉ? 認められないわぁ」
絵里「……」ピクッ
花陽「ご、ごめんなさい」
真姫「…冗談に決まってるでしょ。私たちも帰りましょ」
花陽「うん…」
帰り道
真姫「……」ツカツカ
花陽「……」テクテク
真姫(エアァがヘヴィイね)
真姫「……」
花陽「…ね、ねえ、真姫ちゃん」
真姫「なに?」
花陽「凛ちゃんのこと、なんだけど」
真姫「……赤リンのことかしら? それとも、黄リン?」
花陽「えぇー? ち、違うよ。凛ちゃんって言ったら、凛ちゃんのことに決まってるよ。星空凛ちゃん」
真姫「冗談だってば」
花陽「もう…… あのね、最近、凛ちゃんに何かあったりしたかなぁ? 真姫ちゃん、知らない?」
真姫「……サーシラナイワネ」
花陽「えっ? ま、真姫ちゃん! 知ってるの!?」
真姫「し、知らないって言ったじゃない!」
花陽「でも、今の反応…」
真姫「知らないってば。っていうか、凛のことなら、花陽のほうが知ってるんじゃないの? 幼なじみなんでしょ」
花陽「そ、そうだけど…」
花陽「そのはず…だったんだけど…」
花陽「……」
真姫「……じゃ、私、こっちだから」
花陽「あ、うん」
真姫「またね」
花陽「うん。ばいばい…」
真姫(これはちょっと、雲行きが怪しいわね)
ボスッ
花陽(はぁ… 今日もつかれたなぁ)
花陽(そのせいかな。ごはんも2杯しか食べられなかったや)
花陽(……)
花陽(違う。たぶん、そうじゃない)
花陽(ごはんが喉を通らないのは、きっと凛ちゃんのことが原因…だよね)
花陽(本当、どうしちゃったんだろう、凛ちゃん)
花陽(….…)
花陽(本当、どうしちゃったんだろう…… 私)
小泉宅
花陽(凛ちゃんがほんの数日近くにいないだけで、こんなに悩んでる。こんなに暗い気持ちになっちゃってる)
花陽(うぅ… ただでさえ地味で暗いっていうのに、これじゃあまっくろくろすけになっちゃうよぉ)
花陽(……)
花陽(真姫ちゃん、あの反応って、やっぱり何か知ってたんじゃないかなぁ。問い詰めてたら、聞けたのかなぁ)
花陽(……)
花陽「はっ!」
花陽(と、問い詰めるだなんて…! 花陽はいつからそんな悪い子になったんですか! 真姫ちゃんに謝らないと)
ピポパ…
西木野邸
ヴェェェ ヴェェェ…
西木野「ヴェェェ!? な、なによ、メール…… 花陽?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
件名:遅くにごめんね
本文:
ごめんね、真姫ちゃん。
問い詰めるだなんて思っちゃって
ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーー
真姫「…なにこれ」
真姫「……」
花陽『ごめんね、真姫ちゃん』
真姫「…いいわよ、別に、気にしてないから」
花陽『えへへ、よかったぁ、真姫ちゃんが優しくて』
真姫「っ…」
花陽『…真姫ちゃん?』
真姫「優しくて当然じゃない。私は完全無欠の美少女、西木野真姫ちゃんなんだから」
花陽『うん。そうだね』
真姫「少しは否定してよ。私がバカみたいじゃない」
花陽『否定するところなんてないよ。だって、真姫ちゃんだもん』
花陽『優しくて、美人で、私と違ってスタイルもよくて』
真姫「ちょっと、やめてよ。あんまり褒められると…」
花陽『私と違って歌もピアノも得意で、踊りも上手で』
真姫「だ、だからぁ! …花陽?」
花陽『私と違って、人気があって…… 私と…違って……皆から…尊敬…されてて…!』
真姫「ねえ、花陽? どうしたの!?」
花陽『私…と……ひっく…ぢがっで…!』
真姫「っ!! 花陽! もうやめてっ!!」
花陽『うっ…ぇぐっ……ごめ…んね…』
真姫「…っ」
真姫(ここまでひどいなんて…! このままじゃ…)
花陽『また迷惑…かけちゃったね。ごめんね、ありがとう、真姫ちゃん』
真姫「あっ…」
真姫(せ、せめて、少しだけ、救いの手を)
花陽『また…明日ね。おやすみ』
真姫「は、花陽、あのね! 聞いて? 凛は…」
ツー ツー ツー
真姫「凛は……あなたの…こと…」
真姫「〜〜っ!!!」
ダンッ!
真姫「はぁ…はぁ……花陽、違うの…!」
真姫「……」
真姫「なにが優しい…? どこが……完全無欠なの?」
真姫「ふふ、花陽がこんな気持ちなのに、少しも救うことができないなんて…笑っちゃうわね…… 笑えなすぎて、笑っちゃう」
真姫「お願い、花陽。もう少しなの… もう少しだけ、耐えて…!」
金曜日
O先生「親しんでください。楽しんでください。好きになってください。愛して…」
キーンコーンカーンコーン
O先生「おっと、では今日はここまで」
真姫「……」ガタッ
花陽(真姫ちゃん、今日はお昼休みピアノ弾きに行くのかな?)
花陽(凛ちゃんは…)チラッ
花陽(あ、あれ? 凛ちゃん、いつの間にかいなくなってる)
花陽(おなか…すいたなぁ)
花陽(そうだ、久しぶりに音楽室に行って、真姫ちゃんのピアノをBGMにして食べてみようかな? うん、そうしたらちょっと元気もらえそうな気がしてきました)
渡り廊下
穂乃果「そうなんだよ! それで… あ! 当ててみて! そのとき凛ちゃん、どうしたと思う?」
海未「そうですね… 凛のことですから……っ!」
穂乃果「うん? 海未ちゃん、どったの? ヒントはね、凛ちゃんの…」
海未「しっ、穂乃果!」ボソッ
穂乃果「へっ?」
花陽「凛ちゃんの…?」
穂乃果「どえええええっ!? は、花陽ちゃん!? どどどどーして、いつのまに、どーやって私のフィールド内にっ!?」
海未「お、落ち着いてくださいっ!」
花陽「え、えっと? 2人は凛ちゃんの何の話を…?」
海未(まずいですね。昨夜、真姫から『これまで以上に花陽に注意』との報告が来たのですが…これは…)
穂乃果「りりり凛ちゃん? な、なんのことかなー? っていうか、り、凛ちゃんって誰のことー?」
花陽「…!?」
海未「ちょっ、ほ、穂乃果!」ボソッ
穂乃果「海未ちゃん、ここはシラを切るしか…」ヒソヒソ
花陽「いまの、冗談だよね?」
穂乃果・海未「「…ひっ!?」」ゾクッ
花陽「どういうこと? 穂乃果ちゃん、凛ちゃんのこと、知らないの? そんなわけないよね」
穂乃果「いや、その…」
花陽「昨日も一緒に部活したよね? 一昨日なんて、2人きりで一緒に帰ってたよね?」
穂乃果「え…えっと……」ダラダラ
海未「は、花陽、ここは一旦落ち着いて…」
花陽「海未ちゃんもだよねぇ!!?」
海未「ヒィ!!」
花陽「海未ちゃんも、ことりちゃんも! 2年生、みーんなっ!!」
花陽「最近、ここ最近、ずーっと!! 凛ちゃんと一緒に帰ってるよね!? 」
花陽「いつもいつも、どんなときも、喧嘩して日だって!! 私と一緒に帰ってくれたのは凛ちゃんだった…!」
花陽「帰り際の凛ちゃんが、私のほうを、み、見向きもしないなんてこと…… なかったよ! 1回もっ!!」
海未「…っ」
海未(花陽って、こんな大きな声を出せたんですか…!?)
穂乃果「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」
花陽「それなのに… それなのにっ…!!」
先生「はーい、盛り上がってるところ悪いがそこまで」
花陽「っ!」
先生「生徒会長、副会長。今すぐ来い、大至急の仕事だ」
海未「し、仕事…ですか?」
先生「ああ。説明は移動しながらだ、なんせ事が事だからな、一刻の時間も惜しい。ほらいくぞ」
海未「え? あ、はい!」
海未「ほ、ほら穂乃果! しっかり立ってください!」
穂乃果「私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は地面私は」ブツブツ
海未「何を言っているのです! ちゃんと歩いて!」
スタスタスタ…
海未「……」チラッ
花陽「……」
海未(花陽……すみません)
花陽「はっ!」
花陽(私、今……)
花陽「けほっ、けほっ!」
花陽(あ、あんな怒鳴りちらして… ここまで大きな声出したの、いつ以来だろう。喉が痛いや)
花陽(部活のとき、海未ちゃんと穂乃果ちゃんに謝らなくちゃ… あはは、昨日も真姫ちゃんに謝ったばかりなのに、ダメだなぁ、私)
花陽(きっとこんなんだから、凛ちゃんに…)
花陽「はっ!」(2回目)
花陽「だ、だめだめ! これじゃいつまでたってもダメダメスパイラルだよ」
花陽「音楽室に、行こう」
花陽「真姫ちゃんのピアノと歌声なら、花陽の心を癒してくれる、よね」
花陽「きっと、癒して…」
花陽「……」
花陽「はっ!」(3回目)
花陽(私、いつの間にか心に傷がついてたんだ)
花陽(凛ちゃんのことで悩んで… 1人で勝手に抱え込んで)
すみません、なんか変だと思ったら17と18レスの間にこれが抜けてました…
prrrrrrrrr…
花陽「ほわっ! ま、真姫ちゃん? 電話で返してきちゃッタノォ!?」
ピッ
花陽「は、はいっ」
真姫『ちょっと花陽? なによ今の!』
花陽「え、その、ごめんね、夜遅くに」
真姫『あのね… もうさっきのメールで3回も謝られたのに、まだ謝られないといけないの?』
花陽「うっ…あ…あの…ごめ」
真姫『謝らないっ!』
花陽「ヒッ! は、はいぃ」
真姫「それで、どうしたのよ」
花陽「あ、うん… 今日お話した、凛ちゃんのことなんだけど」
真姫『……ええ』
花陽「やっぱり真姫ちゃん、知ってるんじゃないかなって思えちゃって… もし、と、問い詰めたりしたら、花陽に教えてくれるかなぁ〜って」
真姫『…だから、言ったでしょ。知らないって』
花陽「そ、そうだよね。ごめ…… あ、ううん。えっと、勝手だよね。さっき、勝手に花陽がそう思っちゃって」
花陽「それで、申し訳ない気持ちになっちゃって、真姫ちゃんに、謝らないと…って」
真姫『……』
花陽「あ、あはは、逆に迷惑だったよね。でも、そういうのも合わせて、一回だけ謝らせてほしいんだ」
真姫『花陽…』
花陽「……」
花陽「そうだ。音楽室、行こう」
花陽「音楽室には真姫ちゃんがいる。真姫ちゃんなら、凛ちゃんのことで傷ついた心を癒してくれる」
花陽「事情は知らないって言ってたけど、相談になら、乗ってくれるよね?」
花陽「だって、真姫ちゃんだもん。優しくて、完全無欠の、真姫ちゃんだもん」
花陽「花陽がいま頼れる、格好いいヒーローだもん!」
花陽「…ふふっ。こんなこと言ったら、また真姫ちゃんは顔を赤らめて、『もう、やめてよね! 別にそんなんじゃないから』とか言いそうだよ」
花陽「……」
花陽「真姫ちゃん、明るい曲、弾いてほしいなぁ」
花陽「えへへ、よしっ!」
音楽室
〜〜♪
花陽(あ、やっぱり何か音がする!)
〜〜
花陽(…あれ? 終わっちゃったのかな。何弾いてたんだろう?)
花陽(……)
花陽(まあ、真姫ちゃん聞けばいっか。中に…)
凛「ブラボーにゃー!」パチパチパチパチ!
花陽「っ!!?」
花陽(り、凛…ちゃん!? どうして、ここに?)
ガタンッ
花陽(あっ… 勢いで手が…)
凛「うん?」
真姫「…? ドアからね」
凛「誰か来たのかな?」
真姫「さあ。近頃は誰もここを使おうとはしてなかったと思うけど」
凛「ふーん? 凛、ちょっと見てくるにゃ」
花陽(え、ええっ!?)
花陽(凛ちゃん…!? ど、どうしようっ)
ガラッ
凛「テジナーニャ!!」
凛「お、お前は……!!」
花陽(……!!)ドキドキ
凛「……」
真姫「何してるのよ、凛」
凛「誰もいないにゃ」
真姫「部屋冷えるから早くドア閉めて」
凛「はーい」
ガラガラ ピシャッ
マッタクモウ
ゴメンニャー
花陽(あ、危なかったぁ〜!)ドキドキ
花陽(と、咄嗟に隠れちゃったけど…… なんで隠れちゃったんだろう)
花陽(凛ちゃんなのに。一番の親友…なのに)
花陽(なんでか今は会いたくない… 会えないよ……)
花陽(会いたいよ。会って、ちゃんとお話したいよぉ…)
凛「それにしても、さっきのすごく良いアレンジだったよ!」
真姫「まあね。30パターンくらい考えて、これだって思うのになるまで吟味したんだもの」
凛「そんなに……? 真姫ちゃん、疲れたんじゃない?」
真姫「ううん。他でもない凛の頼みだし、好きでやってることでもあるから」
凛「えへへ、ありがとう。でも、やっぱり迷惑も負担もかかっちゃってるよね…」
真姫「なによ今更、改まっちゃって。こんなの負担でも迷惑でもないわ。この真姫様を舐めないでくれる? 」
凛「真姫ちゃん…」
真姫「みんなも迷惑だなんて思ってないわ。もっとも、当人はちょっとアレみたいだけど…」
凛「え? アレって…?」
真姫「ううん、なんでもないわ」
凛「ちょっ、気になるよー! 何か…あったの?」
真姫「…ま、ないと言えば嘘になるけど、今は気にしちゃダメ。凛がもしここで立ち止まったりしたら、これまでのことが全部ムダになるの」
凛「……でも」
真姫「凛、いいの。今はいい」
真姫「たしかに、一時的にあの子は傷つくかもしれない…… いいえ、もう傷つき始めてるわ」
凛「っ!! そ、それじゃあ凛のやってることは…」
真姫「本末転倒、って言いたいんでしょ? そうかもしれない。でもね、そういった障害は、時にスパイスにもなり得るのよ」
凛「スパイス…?」
真姫「いじわるかもしれない。非道と呼べるほどにね。でも、いいの。酷くても。意地が悪くても」
真姫「凛、あなたがこれを考えたのは、何のため? 誰のため? 本当に、”その子のため”?」
凛「そ、それは、もちろん………!!」
凛(……いや、違う)
凛(喜んでほしい。笑ってほしい。今までにないくらいに)
凛(凛がこれを始めたとき、確かにそう思っていたんだと思う。でも、その言い方は少しずるいのかもしれない)
凛(喜んでほしい……喜ばせたい……笑わせたい)
凛(そうすることで、凛は見ることができるんだ。その喜びを、最高の笑顔を)
真姫「凛?」
凛「……」
凛「わかったよ、真姫ちゃんの言いたいこと。そうだね、その通りだった」
真姫「…言ってみて」
凛「うん」
凛「凛は…」
凛「凛は、かよちんの、これまでにないくらいの、とびっきりの笑顔が見たい!」
凛「もちろん、それはかよちんを喜ばせて、笑顔にするってこと。だけど、凛が本当にしたいのは、喜んでくれた、かよちんの笑顔を見ること!」
凛「全然違うことなのに、凛、ずっとごっちゃにしてた。真姫ちゃんに言われて、やっと気づいたよ」
凛「凛は不器用だから。凛が、不器用なせいで、かよちんを傷つけちゃうかもしれないってことは、なんとなく分かってた」
凛「でもそれは、最終的に、かよちんの笑顔のためになる。”仕方がない"、なんて言ったら本当はひどいかもしれないけど……」
凛「でも、凛が、かよちんのとびっきりの笑顔を見たいんだもん。そのためだったら何だってできる!」
凛「……謝るのは、その後でもいいよね?」
真姫「……」
凛「……」ゴクリンコ…
真姫「ふふっ。借りるわね、エリー」
凛「…?」
真姫「ハラショーよ、凛。100点満点をあげる」
凛「…! やったぁー!」
真姫「その通りよ。今、凛がしていることは、全部凛のため。だから、今はとにかく、目標に向かって突っ走るの!」
真姫「凛はそれだけ考えて。みんながサポートしてるんだから、周りのことは気にしちゃダメ」
凛「…うん!」
真姫「それでよし」
凛「わぁい! 真姫ちゃん、だーいすき!!」ヒシッ
真姫「あっ、ちょっと、凛!」
凛「えへへ〜、真姫ちゃん、真姫ちゃん! 一生離さないよ〜」
真姫「こ、こらぁ! 離れなさいよ!」
凛「離さない〜」
真姫「もうっ……」
花陽(どうしよう… このまま隠れてても、お昼休みが過ぎていくだけ)
花陽(お弁当も食べたいし、もう教室戻ろうかなぁ)
花陽(……)
花陽(でも、凛ちゃんと真姫ちゃん、音楽室でふたりで何してるんだろう?)
花陽(何か話してるのは聞こえるけど、全然聞き取れない)
花陽(音楽室で、ふたり…… ふ、ふたりっきり、だよね)
花陽(も、もしかして……)
花陽(……)ホワホワ
花陽(ってぇぇ!! ないないっ! 女の子同士で、そんなのあるわけないよ)
花陽(でも、仮に、仮にもし、2人がそういう関係だったら…)
花陽(……)
花陽(花陽は、どこに行けばいいの?)
〜〜! 〜〜!!
花陽(あ、凛ちゃんの声が大きくなった)
花陽(……)ウズウズ
花陽(盗み聞き… よくないけど、気になるよぉ。私、気になります)
花陽(仕方ないよね。このまま教室に戻ったら、気になってごはんが味しなくなりそうだもん)
花陽(ちょっとだけ… ちょっとだけ)
花陽(お、お邪魔しまぁす!)
スッ
凛『わぁい! 真姫ちゃん、だーいすき!!』ヒシッ
真姫『あっ、ちょっと、凛!』
凛『えへへ〜、真姫ちゃん、真姫ちゃん! 一生離さないよ〜』
真姫『こ、こらぁ! 離れなさいよ!』
凛『離さない〜』
真姫『もうっ……』
花陽(…………えっ)
真姫「ひゃんっ!」
凛「あはっ、真姫ちゃん、可愛い声出すにゃ」
真姫「バカ! 凛が、変なとこ(脇腹)触るからぁ!」
凛「むふふん、今まで触ったことなかったけど、これは中々ですなぁ〜。ふにふにというか、思ったより柔らかいね」
真姫「んっ… や、やめなさいってば! 希じゃないんだから… やあっ」
凛「真姫ちゃんの反応がよすぎてもっと触ってたくなるよ〜」
真姫「り、凛の変態! こうなったら、お返ししてやるんだからっ」
凛「にゃー!」
花陽(あわ、あわわ…)
花陽(り、凛ちゃんと真姫ちゃんって、もうそんなことまでしちゃう仲…なの?)
花陽(お互いに、一糸纏わぬ姿で……) ※違います
花陽(全然……知らなかったよぉ)
花陽(……)
花陽(あは、あはは…)
花陽(いつの間にか、2人とも幸せになってたんだね。私の知らないところで)
花陽(私に…なにひとつ話してくれることもなく)
凛「それで、真姫ちゃん、あれ…どうだった?」
真姫「抜かりないわ。パパとママにもお願いしたし。凛のほうは?」
凛「凛も、なんとか今日で間に合いそうだよ」
真姫「そう。本当にいいの? みんなで分ければ、凛がそんな無理する必要なんてないのに」
凛「ううん。それじゃあ意味ないよ。だって、凛がやりたいことだもん!」
花陽(…凛ちゃん、何してるの? 無理してるって、一体何を…?)
花陽(真姫ちゃんにも協力…してもらってるみたい)
花陽(……)
花陽(花陽には? どうして、花陽にはなんにも相談してくれないの…? そんなに、頼りないのかなぁ)
花陽(頼りない、よね)
花陽(でも、それでも…… お話だけでも、してくれたっていいよね…?)
凛「さー、最後までがんばるにゃー!」
真姫「そうね。でも、油断しないでよ? 最後まで、悪い女でいるの」
凛「な、なんか真姫ちゃんが言うとそれっぽいにゃ…」
真姫「なっ、どういう意味よっ!」
凛「ま、まあまあー。とにかく、真姫ちゃんも、気をつけてよね」
真姫「当然。私はいいけど、凛はとにかく、花陽と関わらないこと」
凛「わ、わかってるよ〜」
花陽(……えっ?)
真姫「凛はすぐ、ボロが出そうだしね」
凛「わかってるってば! ぜーったい言わない! かよちんには会わない!」
真姫「それでいいの。……今は、ね」
凛「う、うん…」
花陽(……)
花陽(か、関わらない…って)
花陽(凛ちゃんと、花陽を……)
花陽(そんなっ……真姫ちゃんが?)
花陽(真姫ちゃんなら、相談に乗ってくれると思ってた)
花陽(いつもクールで、それでいて優しくて、何でもできちゃうような…)
花陽(私とまるで正反対。鏡うつしじゃなくて、鏡の向こう側にいるような存在)
花陽(私、なんかとじゃ……)
花陽(そうだよ。高校に入って、μ’sに入って、クラスの友達よりもずっと、長い時間を共有してきた)
花陽(花陽と凛ちゃんは、穂乃果ちゃんや海未ちゃん、ことりちゃんがそうだったみたいに、誰よりも長く一緒に居たけど)
花陽(でもそれは、今じゃない)
花陽(どれだけ昔の2人が近づいていたって、一緒にいるのは今、この瞬間で)
花陽(これから続いていく未来、いちばん近くにいる人が誰かなんていうのは、過去とは全然関係ないことなんだよね)
花陽(こんなに何にもできない、私)
花陽(こんなにも何でもできる、真姫ちゃん)
花陽(私だって、凛ちゃんのことで、ついさっきまで真姫ちゃんにすがろうとしたくらいだもん)
花陽(……)
花陽(無理もない……ううん、当たり前なのかな)
花陽(……)
花陽(そう、だったんだね)
花陽(だから、真姫ちゃんは私に、言わなかった)
花陽(きっと、真姫ちゃんは優しいから。急にそんな話をして、私が冷静でいられなくなるのを分かってて、言わなかったんだ)
花陽(凛ちゃんも、優しいから。優しくて、素直だから、私に会ったら、すぐばれちゃうもんね)
花陽(全然タイプが違うのに、凛ちゃんのことは花陽は何でも分かってきたよね)
花陽(頭の良い真姫ちゃんは、それを見越して、凛ちゃんを私から遠ざけた)
花陽(それが私の傷を、痛みを、和らげてくれるならって思って…… 凛ちゃんは…優しい…凛ちゃんは…)
凛「ピアノは? もう弾かなくていいの?」
真姫「んー、もう少し詰めようかなって思ってるの。凛が帰ったらね」
凛「えー!? ひどいよ、真姫ちゃん! 凛のことキライなの?」
真姫「ち、違うわよ! そうじゃなくて、作曲とか編曲するときは1人でやりたいだけ。いろいろ、恥ずかしいし)
凛「そんなぁー…」
花陽(…….)
花陽(優しいよ… 凛ちゃんも、真姫ちゃんも。花陽のこと、思ってくれて)
花陽(この関係を…3人の…関係を、守ろうとしてくれて)
花陽(優しくて、優しくて… 暖かくて……!)
ポロッ
花陽(……)
花陽(あ……れ………)
花陽(……なんで…だろ)
ポロ ポロ
花陽(こんなに、優しいのに…暖かい…のに)
花陽(暖かすぎる…のかな……目が…すごい熱いよ…?)
ポロポロ ポロ
花陽(あ、あれぇ…?)
花陽(あ…は…… 変…だなぁ…… どうして、泣いてるの…?)
花陽(優しい…ふたりが…… 大好きなふたりが…幸せになったんだよ…?)
花陽(あんなに、暖かい、ふたりが…幸せで……)
花陽(そうしたら…そのふたりが大好きな… 私だって、幸せで…)
花陽(えへへ…)
花陽(嬉しいなぁ……大好きなふたりが…幸せで)
花陽(こんな幸せなこと…ないよ)
花陽(えへ…えへへへ…)
花陽(嬉しいよ…凛ちゃん、真姫ちゃん…)
花陽(花陽は……嬉しくて…)
花陽(嬉しくて……嬉しすぎて……)
花陽(心から……こんなにも……嬉しくて…)
花陽(心が………こんなにも………痛くて…!)
花陽(おかしいよ…こんなの……)
花陽(どうして…どうして? どうして痛いの?)
ポロ ポロポロポロ
花陽(どうして… 私の…嬉し涙は……)
花陽(こんなにも……塩辛いの……?)
花陽(嫌だよ… なんでよ……)
花陽(どうして、ふたりなの……?)
花陽(わかってる… 私に足りないものなんて、いくらでもあって…)
花陽(私に足りないものは…なんでもふたりが持ってて…!)
花陽(私じゃなくて……ふたりが結ばれるなんて…当たり前なのも…わかってて…)
花陽(わかってるのに… 暖かいのに… 幸せ…なのに…!)
花陽(どうして…こんなに心が痛いの……?)
花陽(どうして……どうして…っ!!)
花陽(どうして…私の心は…… こんなに醜いのっ!?)
花陽「……どうしてっ!!!?」
花陽「っ!」
花陽(しまっ……)
真姫・凛「「…!?」」
真姫「な、に…?」
凛「すぐ近くで聞こえた…よね?」
真姫「近くどころか、扉のすぐ向こうから聞こえたような…」
真姫(すごい大きな声だったけど、今の声…ひょっとして)
凛「ちょっと見てくる!」
タッ
真姫「凛! ちょっと待っ…」
凛「てーいっ!」
ガラッ!
凛「………あ」
花陽「………」
真姫(あー…)
凛「……かよちん…!?」
花陽「……っ」
凛「なんで、い、いつから? もしかして、聞いてたの?」
花陽「……」
凛「かよちん、どうしたの? どうして黙ってるの?」
花陽「…なんでもないよ。ごめんね」
花陽(お邪魔しちゃったね)
凛「えっ? な、なんで謝るの?」
花陽「……」
花陽「盗み聞き、しちゃったから…」
凛「あ…… やっぱり、聞かれちゃったんだ」
花陽(聞かれちゃった、かぁ。やっぱり、優しいね、凛ちゃん)
凛「内緒、だったんだけどにゃー…」
花陽(そう、みたいだね。私を傷つけないように、時間をかけて、関係が壊れないように)
花陽(優しい真姫ちゃんと、優しい凛ちゃん)
花陽(ふたりの優しさが、暖かさが、痛いほどに染みてくるよ?)
花陽(染みて、染み渡って…… すごく、痛いんだよ?)
凛「ね、ねぇ、かよちん? こっち向いてよ…」
花陽(痛くて、痛くて…! 凛ちゃんの顔、見れないよ…
!)
花陽(今、近づいたら……私はどうなっちゃうのかな… どうすれば、いいのかな…)
花陽(全然、全然…… わかんないよ!!)
凛「かよちん…? 」
花陽(名前を呼ばれるのが…いつもみたいに…呼んで…くれるのが…! こんなにも……痛いよっ)
凛「ほ、ほら! 廊下じゃ寒いしさ、ひとまず中に入るにゃ!」
凛「ほら、こっちに…」
スッ
バシッ!!
花陽「触らないでっ!!!」
凛「…………えっ?」
真姫「り、凛! 花陽!?」
花陽「あ………」
凛(…………えっ?)
凛「…………かよ……ちん…?」
花陽「っ!!」
ダッ!
凛「………………」
花陽「っ〜〜!!」タタタタタ…
凛「………………なん…で」
凛「…ぅっ…あっ……」ポロ ポロ
ガクッ
凛「う、ああぁぁぁあああん!!!」ポロポロポロポロ
真姫「凛! お、落ち着いて!」
凛「かよちんが……かよちんがぁー!!」
真姫「大丈夫、大丈夫だからっ」ヨシヨシ
真姫(花陽……? 今のは一体……)
小泉宅
玄関「バンッ!」
小泉母「ピャッ!? ど、ドロボォ!?」
バタバタバタ タンタンタン…
小泉母「って、花陽!? が、学校はー?」
がチャッ バタンッ!
小泉母「ど、どうしたのかしら…」
花陽「はぁ…はぁ…はぁ………」
花陽「バカバカっ…はぁ……凛ちゃんの…バカ……!」
花陽「………」ハァ ハァ
花陽「っ…うっ……私の……バカっ…!!」
花陽「ううっ…あぅ……凛ちゃんに、あんなこと……!!」
花陽「もう、合わせる顔がないよぉ……!」ポロポロ
花陽「凛….ちゃん……!!」ポロ ポロポロ
花陽「うぁ……うぅ…うわああああん!!!」
小泉母(…あらあら)
小泉母(事情を聞く前に、少しひとりにさせてあげたほうがいいかしらね)
凛「っぐ……うっ…」
真姫「もう、いい加減泣き止んでよ」
凛「だ、だって………あぅ…かよちんの……バカ…」
真姫「……」
真姫「私が思うに、花陽にも事情があったのよ」
凛「…事情?」
真姫「そ。事情」
凛「でも、あんなこと…… 凛は、かよちんを、驚かせたくて…喜ばせたくて…」
真姫「違うわ」
凛「え?」
真姫「そうじゃない。あくまで予想だけど…」
真姫「花陽は凛の計画になんてこれっぽっちも気づいてない」
凛「…え?」
真姫「だってそうでしょ。もし本当に、凛のしようとしていることが花陽に知れたとして、花陽があんな態度を取った挙句、走って逃げようとすると思う?」
凛「かよちんはそんなこと…すると思ってなかったけど…」
真姫「花陽だけじゃない。普通、どんな人でもあんな反応はしないわ」
凛「でも、実際にさっきかよちんは… きっと、凛がずっとかよちんを避けるような、騙すようなことをしてきたことに怒って…」
真姫「…たしかに、凛が花陽から遠ざかったことで、花陽は傷ついていた」
真姫「それでも本当に凛の計画を知ってしまったのなら、花陽が取る態度はあんなものじゃない」
真姫「おそらく、あの子ならこう考える」
真姫「『凛が自分のために一生懸命考えて計画してくれていることだから、ちゃんと成功させてあげたい』」
凛「……!」
真姫「そういう、優しい子でしょ? 私と凛の知っている、花陽って」
凛「そうだよ。かよちんは、凛が知ってる、他の誰よりも優しいんだよ!」
真姫「そうね。でも、それ、私よりもってこと?」
凛「うん! 真姫ちゃんよりも、ずーっと!」
真姫「あら、今さっきまで取り乱していた凛を、優しく優しくなだめてあげたのは一体誰かしら? 」
凛「う、そ、それについては……ありがとうございますにゃ」
真姫「ふふっ。冗談だから」
凛「でも、それならかよちん、どうしてあんなに…」
真姫「本当の理由は、私もわかってないの」
凛「そっか……」
真姫「……」
デコピンッ
凛「いたぁっ!?」
凛「な、なにさ真姫ちゃん!」
真姫「そんな辛そうな顔、しないの」
凛「…えっ?」
真姫「もうひとつ、さっき訂正し忘れたけど、凛の目標、ちゃんと思い出して?」
凛「凛の、目標……」
凛「……あっ」
真姫「思い出した? それとも、もう忘れちゃった?」
凛「むっ。お、思い出したよ!」
真姫「そう。よかった」
凛「うん」
真姫「もう言わないからね。明日、ちゃんとやり遂げてよ?」
凛「うん! …あれ? 真姫ちゃんは来ないの?」
真姫「行くけど、主役はあなたでしょ」
凛「なんだ、そういうことにゃ」
凛「…真姫ちゃん?」
真姫「なに? もう昼休み終わっちゃうわよ?」
凛「凛からもひとつ、訂正にゃ」
真姫「へぇ? なにかしら」
凛「真姫ちゃん、違うよ」
凛「明日の主役は……かよちんだよ!」
真姫「……」
真姫「ふふっ。そうね。その通りね」
半分すぎたしちょっと休憩
さらに三点リーダ祭りになるとこあるけど読みにくかったら飛ばして
飛ばしたところでかよちんの天使さに死角はない
49
小泉宅
花陽(……?)パチッ
花陽(あ、あれ、私、いつの間にか寝ちゃってたんだ)
花陽(…!)
花陽(も、もしかしてあれは夢……)
ーーーーーーーーーーーーーーー
バシッ!!
花陽「触らないでっ!!!」
凛「…………えっ?」
凛「…………かよ……ちん…?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(……なわけないよ。凛ちゃんの手、叩いちゃった感触、しっかり残ってるもん)
花陽(はぁ……)
コンコン ガチャッ
小泉母「あら、花陽、起きてたのね」
花陽「えっ? あ…うん」
小泉母「ちょうどよかった。晩ごはんよ。降りてきなさい」
花陽「晩ごはんっ!」
花陽(……でも、なんか、食欲ないなぁ)
小泉母「花陽?」
花陽「……ごめん、お母さん。今日食べ過ぎちゃって、お腹すいてないんだ。だから…」
小泉母「あらそう? ならお母さんが花陽のぶんも食べちゃうけど、いいの?」
花陽「う、うん。本当にごめんね…お母さん」
小泉母「いいのよ。食べないなら、お風呂沸かしといてくれるかしら? 1番に入っていいから」
花陽「わかった。もう少ししたら、下いくね」
小泉母(…お弁当、手付かずだったわよ? 花陽)
小泉母(これはかなり重症かしら。もう少し、時間が必要かもね)
凛「できた… ついに、できたにゃー!!」
穂乃果「おおっ! ついに完成? 凛ちゃん!」
海未「おめでとうございます、凛」
ことり「わぁ〜、なんか見た目も、今まで以上にキラキラしてるねっ」
凛「ふふーん。今までで一番心を込めたにゃ。込めすぎたぶんのエネルギーがありあまって、蛍光放出されてるにゃ」
穂乃果「わかるわかるー! 穂乃果も以前、海未ちゃんに作ったことあったけど、力入れすぎて手汗で味付けしちゃったことあるもん!」
海未「はぁっ!!? ほ、穂乃果!? それってまさか… 去年の…….」
穂乃果「そうそう、あのときのだよ!」
海未「な、なな、なんてものを寄越してくれたんですか…!!」
穂乃果「えー? でもあのとき海未ちゃん、おいしい、おいしいって、すごい笑顔で…」
海未「そ、そうですが、あの時はそんなことだとは知らずに……」
ことり(いいな〜海未ちゃん… めっぴよ羨ましいぴよ)
穂乃果「じゃあ、早速試食を…」
海未「こら、穂乃果! まずは凛からです!」バシッ
穂乃果「あうっ…」
凛(…凛の、渾身の一作)
凛「いただきますにゃ!」
パクッ
凛(………)モグモグ…
凛(……こ、こ、これはっ!!?)
凛「〜〜〜!!!」ジタバタ
ことり「り、凛ちゃん!?」
海未「まさか、喉に詰まったのですか!? 穂乃果! み、水を!」
穂乃果「ヘイ! ミミズ、一丁っ!」ニョローン
海未「クソがぁぁ!」
穂乃果「へぶっ!?」
海未「こ、これは…っ!!」モグモグ
ことり「すごい! すごいよ、おいしいよ、凛ちゃん!」
海未「本当に、これは… 今まで食べたことないほどに美味しいですよ!」
凛「て、照れるにゃ〜」
ことり「これなら、花陽ちゃんも絶対…」
海未「ええ! 間違いなく…!」
凛「えへ、えへへ…」
凛(これを、明日また、かよちんに…!)
凛(……)
凛(かよちん、来てくれるかなぁ)
穂乃果的な何か「」
花陽(……あ)
花陽(そういえば、練習もサボっちゃったなぁ。絵里ちゃん、怒ってるよね)
花陽(明日は土曜日だけど、練習あるのかな)
花陽(……)
花陽(行きたく、ないなぁ)
花陽(凛ちゃんとも気まずいだろうし、何より、練習に行ったら……)
花陽(……)
花陽(まだ、ダメだなぁ。もう一回寝たら、頭冷えるかな)
花陽(……もう寝よう)
花陽(……)グゥ〜
花陽(お腹、すいたなぁ)
カチ コチ カチ コチ
花陽(……)
カチ コチ カチ コチ
花陽(……んー)モゾモゾ
カチ コチ カチ コチ
花陽(……)
花陽(だ、ダメだ… 夕方に寝ちゃったせいで、全然寝付けないよ!)
ピロリキン♪
花陽(…? メールだ)ピッ
花陽(……あ、真姫ちゃん)
ーーーーーーーーーーーーーーー
件名:明日の練習
本文:
花陽、大丈夫?
連絡おそくなってごめんね。
明日の練習は朝から。ちょっと
早いけど、9時までに部室集合。
P.S.
すぐ体力づくりするらしいから、
朝ごはんは軽めにね
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(やっぱり、あるんだ)
花陽(しかも、いきなり体力づくりかぁ。走り込みかな、階段ダッシュかな…)
花陽(ますます、行きたくないなぁ…)
花陽(とりあえず返信しないと…)ピピピピ
『うん。』
花陽(送信、っと)ピッ
花陽(……素っ気ないよぉ。本当、嫌な子だな、私)
花陽(こんなの、ただの汚い嫉妬だよ。醜いって…分かってるけど……)
花陽(…あれ?)
花陽(真姫ちゃんからのメール、よく見たらまだ続きがある…?)
ーーーーーーーーーーーーーーー
朝ごはんは軽めにね
大丈夫? なんて聞いちゃったけ
ど、そんなわけないわよね。
ごめんね。
先に、私から謝らせて。
本当に、ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(……)
花陽(どうして、謝るの?)
花陽(真姫ちゃんが悪いんじゃないよ… 悪いのは、ダメなのは、全部…)
ーーーーーーーーーーーーーーー
本当に、ごめんなさい。
詳しいことは言えないの。
今は言えない。
でもね、明日になったら、全部話
すわ。そしてそれは、きっと今、
花陽が思ってるようなことじゃな
い。
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(…明日話すって、私が思ってることじゃないって)
花陽(今更だよ… それに、真姫ちゃんはもっと真姫ちゃんなりの考えがあったのかも知れないけど)
花陽(私がどんな風に、どんな方向から受け止めたって……事実は変わらないんだよ?)
花陽(……)ピッ ピッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
い。
花陽。
私が今、あなたに言うのは、これ
だけ。
明日、とにかく練習に来て。
それじゃ、おやすみ。
また明日、部室で待ってるから。
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(明日、練習に…)
花陽(……)
花陽(行ったら、何か変わるの?)
花陽(……ううん。変わらない)
花陽(…でも、行かなくたって、それこそ悪いほうにしか進まないよね)
花陽(……)
花陽(はぁ… 考えるのは、明日にしよう)
花陽(真姫ちゃん、おやすみ)
花陽(……おやすみ……凛ちゃん)
花陽(……)
花陽(……)
花陽(……やっぱり…おなかすいたよぉ)
花陽(……)ピッ ピッ
ーーーーーーーーーーーーーーー
い。
花陽。
私が今、あなたに言うのは、これ
だけ。
明日、とにかく練習に来て。
それじゃ、おやすみ。
また明日、部室で待ってるから。
ーーーーーーーーーーーーーーー
花陽(明日、練習に…)
花陽(……)
花陽(行ったら、何か変わるの?)
花陽(……ううん。変わらない)
花陽(…でも、行かなくたって、それこそ悪いほうにしか進まないよね)
花陽(……)
花陽(はぁ… 考えるのは、明日にしよう)
花陽(真姫ちゃん、おやすみ)
花陽(……おやすみ……凛ちゃん)
花陽(……)
花陽(……)
花陽(……やっぱり…おなかすいたよぉ)
土曜日 8:15
花陽「んっ…」
時計「8:15」
花陽「……」
花陽「ほわぁっ! れ、練習、遅刻しちゃうっ!」
花陽「……」
花陽(練習…かぁ)
花陽(…どうしよう、やっぱり休もうかなぁ)
花陽(……)
花陽(でも……)
部室 8:40
にこ「ねぇ、まだ? まだなの!?」
絵里「ハラショー… 箱がしゃべってるわ」
希「にこっちが焦ってどうするん?」
にこ「うっさい!! 見えないから余計に不安なのよっ! 」
ことり「凛ちゃん、がんばって!」
凛「こ、これもダメにゃ! 作り直し…」
穂乃果「…!!」ビクッ
海未「だ、そうですよ。どうぞ、穂乃果」
穂乃果「ほ、ほうはいあぁいほぉ〜…」(も、もう入らないよぉ〜)
海未「いつもの食欲はどこ行ったんですか? そもそも、この役を買って出たのはあなたでしょう」
穂乃果「ほ、ほぅはへほ、ひぃほ!? はぁひはふほっはっへほ!」(そ、そうだけど、いいの!? 私が太っちゃっても!)
海未「もちろんダメです。そのぶん、今日の走り込みで全て燃焼してもらいます」
穂乃果「へぇっ!? …ふ、ふぃはんほほひ〜」(えぇっ!? …う、海未ちゃんの鬼〜)
海未「誰が鬼ですか。これも、穂乃果のため、皆のためです」
真姫「なんで通じてるのよ」
8:47
凛「で、できたにゃ〜〜!!」
穂乃果「!!!」
真姫「よかった。花陽が来る前に、完成ね」
にこ「ま、間に合ったの!? 間に合ったのね!!」
絵里「ええ。それとにこ、そろそろ黙らないとダメよ?」
にこ「うっ……わ、分かってるわよ」
海未「素晴らしい出来です。昨日と同じか、いや、それ以上に…」
ことり「うんっ! キラキラしてるよ〜」
凛「えへへ〜」
希「皆も、準備しとこうね〜」
凛(さぁ、かよちん、あとはかよちんを待つだけだよ!)
8:58
凛「……」
真姫「……なかなか来ない」
希「いつも15分前には来てるのになぁ」
海未「まだわかりません。もう少し、待ちましょう」
にこ「ねえ、まだなの? 息苦しくなってきたんだけど…」
絵里「スパシーバハラショー」
にこ「…は?」
凛(かよちん……)
凛(早く来てくれないと、冷めちゃうよ…?)
9:10
凛「………」
ことり「こ、来ないね、花陽ちゃん…」
凛「……」
真姫「凛…」
真姫(花陽、何してるのよ! もしかして、来ないつもりじゃ…)
にこ「お願い、絵里、ちょっとあけて… まじで暑い」
絵里「オーチニプリヤートナー」
にこ「おい…」
穂乃果「ねえ、電話してみたら?」
海未「そうですね。何かあったのかも知れませんし…」
希(ウチのカードは良い結果やったのに…)
真姫「私がするわ」チャッ
真姫「……」ヴェヴェヴェ ヴェヴェヴェ
真姫「……」タダイマ、マサチューセッツ…
真姫「だめ…出ない」
凛「……」
海未「これは一度、自宅に伺うべきではないでしょうか?」
絵里「そうね。もしそこにもいなければ、本当に…」
真姫(…どうする? 考えるのよ、天才真姫ちゃん)
真姫(昨日のメール、花陽なら全部読んでくれたはず)
真姫(返事もあった。いつもの花陽と比べるとすごい淡白だったけど、きちんと返してくれたのが、まだ大丈夫な証拠)
真姫(もし休もうものなら、絵里か私か凛……は無いか。絵里か私に、きちんとその旨を伝えるはず)
真姫(……でも、本当に?)
真姫(よく、思い出して)
真姫(昨日のメール、私が出してから、返信が来たのは約1分……いえ、40秒後)
真姫(昔の携帯ならともかく、今のアッー!イフォンの閲覧機構、通信及び処理速度を鑑みるに、私のメール全文を読んだ上で返信するのは十分に可能)
真姫(けれど…… 昨日の心理状態の花陽に、それが容易にできるかしら?)
真姫(あの短い返事を、一体何を考えて送ったのかしら)
真姫(……)
真姫(ああもう。やっぱり、考えれば考えるほど、花陽がちゃんとメールを見てない可能性が高まってくる!)
真姫(もしそうなら… やんごとない事情がある場合に、無断で練習を休むなんてこともあり得ない話じゃないわ)
真姫(加えて、電話にも出てくれないとなると…)
真姫(ここは、もう……)
真姫「そうね。皆、花陽の家に行くわ」
花陽「……」ピクッ
凛「……!」
真姫「この前も話したけど、おそらく今の花陽の心理状態は普通じゃない。きっぱり言うと、異常よ」
絵里「真姫…」
真姫「それ自体は別に、懸念していなかったわけじゃない。むしろ、予想していたことでもあるの」
真姫「問題なのは、花陽に与えてしまった心理ダメージが、想像以上に深刻だったこと。原因は…ちょっと考えにくいというか、ぶっちゃけ、分からないとしか言いようがないんだけどね」
海未「そんな…」
真姫「とにかく、こうなった今はもうこちらから出向くしかない。後のことは私や凛がなんとかする!」
真姫「だから、行くのよ。今すぐに」
海未「そうですね。まずは花陽と会わなければ」
にこ「ちょ、それならまずはにこをここから出してよね!? え、出すわよね!?」
希「どうしよっかな〜」
にこ「おいおいおい…」
穂乃果「真姫ちゃん、花陽ちゃんの家、分かるの?」
真姫「もちろんよ。当然、凛も分かるわ!」
凛「……」
絵里「着替えてる暇はなさそうね。練習着で、むしろちょうどよかった。行きましょう!」
真姫「そうね」
真姫「急ぐわよ。皆、ついて…」
凛「待って!!!」
真姫「っ!」
真姫「り、凛…?」
凛「待って、待ってよ! みんな…」
海未「凛? どうしたのです?」
凛「かよちんは……来るよ!」
絵里「でも、凛。もし花陽に何かあって…」
凛「来るったら来る!!」
絵里「っ!」ビクッ
真姫「ちょっと、どういう…」
凛「……」
凛「凛……知ってるもん」
真姫「知ってるって…… 花陽から、連絡あったの?」
凛「ううん。そうじゃないけど」
凛「そうじゃなくて、凛は知ってるんだよ。かよちんのことなら、なーんでも」
真姫「凛…」
凛「かよちんはね、すごく優しいんだよ」
凛「凛は昔からよく走り回って遊んでて、運動が苦手だったかよちんもずっと連れ回して、いつもすっごく疲れさせちゃってた」
凛「でもかよちんはね、帰るとき、必ず言ってくれたよ」
凛「『凛ちゃん、今日も楽しかったね』って、ちょっぴり疲れた顔で。でも、笑顔で」
花陽「っ…」
凛「それにね、かよちんは、すっごく可愛いんだよ」
凛「前に眼鏡をかけてたとき、周りの子はみんなかよちんのこと、暗くて地味で、オドオドしてるだけだと思ってた」
凛「でも、凛だけは知ってた。かよちんは、アイドルが好きで、憧れてて… 本当に大好きで… アイドルの話をしてくれるときのかよちんは、なんかもう、恋する女の子って感じで輝いてて」
凛「コンタクトにして、スクールアイドルになってからは、周りの子もみんな、かよちんの可愛さを認め始めたよ」
凛「凛からすれば、今さら? って、言いたくなってたんだけどね」
凛「そのことをかよちんに話した時、すごい照れくさそうにして、そんなことないよ、って言ってた。困った顔で。でも、笑顔で…」
花陽「…………」
凛「まだまだ、知ってるよ。かよちんはね、すっごく頼れるんだ」
凛「凛は男の子みたいだって、よく周りから言われてたし、凛もそう思ってたから、小学校のころはずっとズボンだった」
凛「あるとき、がんばってスカートをはいてった日があって。かよちんと一緒に帰ってたら、クラスの男の子が『男の子なのにスカートはいてる』ってからかってきて」
凛「凛は、すごく悔しかったけど何も出来ないまま、男の子たちは通り過ぎて行った。そんなときに、かよちんの方を見たらね」
凛「かよちん、それまでで一番恐い顔で、遠ざかっていく男の子達を睨んでたんだ」
凛「大きな声を出せないかよちんだけど、凛よりも本気で怒ってくれてるのが伝わってきて… その時のかよちんは、誰よりも頼もしかった」
凛「それから、悔しくて泣きそうな凛の顔を見て、言ってくれたんだ」
凛「『大丈夫だよ、凛ちゃん。スカート、とっても可愛いよ』って、力強く。でも、やっぱり、笑顔で…」
花陽(凛……ちゃん…)
凛「それに、それに…」
凛「知ってるよ… 凛は、知ってる…!」
真姫「凛……もう…!」
凛「知ってるんだよ…」
凛「かよちんは、絶対に……凛を裏切ったりしないって!!」
真姫「…っ!?」
真姫「裏切らないって…」
凛「凛ね、実はね、真姫ちゃんには止められてたけど、昨日の夜遅くに、かよちんにメールしたの」
真姫「えっ…!?」
凛「メールして、もしすぐ返事がなかったら、凛はすごく傷つくと思うから… かよちんがいつも絶対寝てるくらいの遅い時間に」
凛「『明日、まってるにゃ』って、でもできるだけ、いつもみたいに…」
真姫「凛…あなた……」
凛「やっぱりすぐには返事こなくて、深夜に送って正解だったなぁって、寝ようと思った時にね」
凛「携帯が鳴って、メールがきて…」
凛「かよちんは、凛に言ったよ…」
ーーーーーーーーーーーーーー
件名:Re:
本文:
まっててね
ーーーーーーーーーーーーーー
真姫「花陽が……?」
凛「…うん」
凛「だからね… 凛は待ってるよ!」
凛「かよちんが、待っててって言ったんだもん」
凛「それなら、凛は待つよ」
凛「かよちんは、凛を裏切ったりしないよ。待たせたまま、来ないなんてこと、絶対にしないよ」
凛「時間通りじゃなかったけど… 」
凛「電話にも…出ないけど」
真姫「……」
凛「それでも、かよちんは、ぜったいに来る!」
凛「凛は、かよちんを信じてるから……!」
凛「誰よりも…世界で…一番……信じてるから!!」
真姫「っ…!」
凛「だからっ……凛は……かよちんのこと………ここで!! 待ってるっ!!!」
バタンッ!!!!
真姫「…!?」
凛「………!」
真姫「あ……」
凛「…………ほら…ね?」
花陽「おまたせ………凛ちゃんっ……」
真姫「花陽…! ほ、本当に…?」
凛「おそいよ、かよちん」
花陽「ごめん、凛ちゃん、ごめんね……!」
凛「ううん。知ってたよ… 来てくれるって」
花陽「うん……きたよ」
花陽「凛ちゃん、最近、ずーっと花陽から離れてて… まるで凛ちゃんから…避けられてるみたいで…」
凛「かよちん……」
花陽「真姫ちゃんに、相談しようとして… 音楽室に行ったら……ふたりがいて…盗み聞きしちゃって…」
花陽「そっかぁ…凛ちゃんと真姫ちゃん、付き合い始めたんだぁ…って思って…」
真姫「…!?」
凛「えへへ……なにそれー…」
花陽「いろいろ…考えて……頭の中…ぐるぐるして……真っ暗になって……!!」
花陽「り、凛ちゃんに…あんなひどいこと……ひぐっ……しぢゃっで……!!」
凛「……!!」
凛「違う… 違うよ、かよちん…!!」
凛「最初にひどいことしたのは、凛だよ!!」
花陽「……えっ?」
凛「凛ね…凛がしたいことのために…真姫ちゃんや、みんなに手伝ってもらってて…」
凛「凛は演技がへただから…かよちんにバレちゃうから……かよちんとは、関わらないようにって…」
凛「それで…ずっと、かよちんから逃げるように過ごしてて……凛も辛かったけど…かよちんは、もっともっと、辛かったよね…」
凛「だから、謝るのは、凛のほうっ!!」
凛「ごめんっ……かよちん…本当に、ごめんなさい!」
花陽「凛…ちゃん…」
花陽「そ、それじゃ、凛ちゃん……真姫ちゃんとは…何にもなくて… 花陽のこと…嫌いになったとかじゃ…」
凛「何言ってるの、かよちん… そんなわけないよ…凛は、ずっと…これからも……かよちんが、一番好きだよ…?」
花陽「ぅ……ほ、ほんとに…?」
凛「ほんとだよ……」
凛「かよちんが、凛の一番…だよ」
花陽「り、凛……ちゃ…ぅ……ぐずっ……あう…!!」
凛「か、かよちん……どうして…泣いて…」
花陽「だって……ひぐっ……だってぇ…!」
凛「えへ…へ……やめてよ… 泣いたら…ぅっ……せっかく…可愛い…っ…のに……ぇぐっ……!」
花陽「うぁああああっ…!! 凛ぢゃあああああん……!!」
凛「かよちん…かよちん…っ…!! あぅ…うわあぁぁぁぁん!!!」
少しして
真姫「ほら、凛。せっかく作ったのに、渡さないの?」
凛「あっ… そうだった」
凛「はい、かよちん!」
花陽「えっ? こ、これって……」
凛「うん」
凛「凛が、かよちんのことを思って、心を込めてにぎった……おむすびだよ」
花陽「凛ちゃんが… 花陽のために…?」
凛「そうにゃ!」
花陽「わぁ……!」
穂乃果「詳しく私は分からないんだけど、真姫ちゃんに頼んで、全国各地から日本最高級って言われてる材料を集めたんだよ!」
花陽「ぜ、全国から!?」
真姫「そうよ。パパとママに頼んで、そのツテで一番いいものを直送してもらったの」
海未「お金は、みんなで出し合うとも言ったんですが… 凛がどうしても、おにぎりに関しては自分がやりたいと聞かなくて」
穂乃果「それでここ数日、練習の後に穂むらでお店番や、仕込みとか片付けとか、けっこう夜遅くまでアルバイトしてもらってたんだ」
ことり「花陽ちゃんが凛ちゃんを見つけないように、でも怪しまれないように… ことりと穂乃果ちゃんと海未ちゃんと3人で、交代で一緒に帰ってたの」
花陽「そ、そんなことまで…?」
花陽(そっか… 授業中いつも眠そうだったのも、穂乃果ちゃん達とばっかり帰ってたのも、全部…)
真姫「凛は本当に一生懸命だったわ。目標に向かって、猪突猛進… いえ、凛の場合は、猫まっしぐらって感じだったかしらね」
花陽「あはは…凛ちゃんらしいね」
凛「凛、いっぱい練習したよ。納得いくまで、何度も、何度も」
凛「そうしてできたのが、そのおむすびなんだ。どうしても、かよちんに食べてほしくて。どうしても、かよちんの笑顔が見たくて」
花陽「凛ちゃん……」
凛「かよちんは今まで、凛にたくさんの笑顔をくれたよ」
凛「いつもの笑顔も、疲れちゃった笑顔も、輝いてる笑顔も、力強い笑顔も……いーっぱい」
凛「そんなかよちんの笑顔を、もっと見たい。今までで一番の、かよちんの、とびっきりの笑顔を、凛は見たい」
凛「そんな目標もあって、この日に、凛はとびっきりのおむすびを、かよちんに食べさせてあげたかったんだ」
花陽「えへへ… 凛ちゃん、嬉しいよ」
凛「えへ、なんか照れくさいね…」
グ〜〜
花陽「あっ……」
凛「えっ…?」
花陽「ご、ごめんね! 実は昨日のお昼から、なんにも食べてなくって…!」
花陽「うわぁ、どうしよう…… 意識したら、ものすごくお腹すいてきちゃったよぉ〜!」ググ〜〜
凛「……あは、あははっ! やっぱり、かよちんはかよちんだねっ」
花陽「う、うぅ……」
凛「ちょうどいいにゃ!」
凛「もう冷めちゃったけど… 凛が一生懸命作ったおむすび。食べてみて、かよちん!」
花陽「……うん!」
花陽「……」
凛「……」
花陽(凛ちゃんが、凛ちゃんのために…私のために、いっぱい頑張って作ってくれたおむすび)
花陽(すごい…気のせいなんかじゃなく、輝いてる…)
花陽「……」ゴクリンコ
凛「……」
花陽「い、いただきます!」
パクッ
花陽「…………!!!!」
凛「ど、どう……?」
花陽「…………」
ポロ ポロポロ
花陽「っ……ぅっ…うぅっ…」
凛「えっ…!?」
凛「ど、どうしたの!? なんで、また、泣いてるの? そんなに…まずかった? 冷めちゃってたから?」
花陽「〜〜!」ブンブン!
花陽「……」ゴクン
花陽「違うの、凛ちゃん…!」
花陽「お米も、海苔も、お塩も全部……素材もすっごくいいし、加減も、とっても上手だよ」
凛「そ、そっか! よかった…」
花陽「でも、それだけじゃなくて…」
凛「えっ…? 」
凛「凛、そのほかに、特別なことなんて…してないよ?」
花陽「…ううん。してるよ」
凛「……?」
花陽「おむすびからね、お米の、一粒一粒からね……凛ちゃんの手の、心のこもった暖かい手の感じが、伝わってきたの…!」
凛「…っ!」
花陽「凛ちゃん、本当に、本当に…ありがとう!」
凛「えへへ…それじゃあ…」
花陽「…うん!」
花陽「すっごく、すっご〜〜〜く!! おいしいよっ!!」
花陽(私から離れて行ったように感じていた凛ちゃん…)
花陽(でもその実は、私にサプライズで最高のおにぎりを食べさせ、喜ばせようとしていたのでした)
花陽(正確に言うと、凛ちゃんが私の、これまでにないくらいの笑顔を見たかったからだそうなんだけど…)
花陽(私からすれば、どっちも一緒なんじゃないかなぁって、思います)
花陽(あの後、部室の奥にあった巨大な箱から雄叫びが聞こえてびっくりしたけど)
花陽(中から出てきたのは、なんと汗だくになって息をきらした、にこちゃんでした!)
花陽(その手には、今回おむすびのために用意した最高品質のお米、高知県産「にこまる」の袋が抱えられていて… 使わないで余ったぶんも、私にくれるとのことでした)
花陽(それをするがためにずっと待機していたにこちゃんは、疲れ果てて怒る気力もなかったらしく)
花陽(すぐに、椅子にもたれてダウンしてしまいました。ご、ごめんね…にこちゃん)
花陽(凛ちゃんのおむすびは、本当に、いままでのおむすびの中で一番おいしく感じました)
花陽(μ’sのみんなもたくさん協力してくれてて、こんなに幸せでいいのかなって思って、また涙が溢れそうでした)
花陽(私が、なんでこんなに良くしてくれるのか、凛ちゃんに尋ねたところ、凛ちゃんは驚いていました)
花陽(『天然なかよちんも可愛いよ』って、でも、その時の私には意味がよくわかりませんでした)
花陽(ここ数日が、それどころじゃなかったから、私はすっかり失念していたのです……)
絵里「そういえば、せっかく準備してたのに、タイミング逃しちゃったもんね」
海未「そうですね。では、落ち着いたところで改めてちゃんとやりましょうか」
にこ「にこはもういいにこ〜…」
希「にこっち。シャキッとしないと、獄ワシの刑やで?」
にこ「や、やりまーす!」
ことり「穂乃果ちゃんも! しっかり準備してっ」
穂乃果「うぇっぷ… こ、ことりちゃん、あんまり揺らさないで〜」
花陽「へっ…? な、なに……?」
真姫「凛、ほら、あなたが仕切らないと、いつまでも始まらないじゃない」
凛「あ、う、うん!」
花陽「…? …??」
凛「コホン…」
凛「真姫ちゃん…… さん、はいっ!」
花陽(凛ちゃんの合図とともに、真姫ちゃんのピアニカで短い前奏があって……)
ハッピーバースデー トゥー ユー
ハッピーバースデー トゥー ユー
ハッピーバースデー
ディア
花陽ちゃん
ハッピーバースデー トゥー ユー…♪
凛「かよちん、お誕生日、おめでとうっ」
パァーン!!!
花陽「………っ!!!!!」
花陽(クラッカーまみれになった私の目からは、さっき堪えたぶんもあわせて、大量の涙が溢れ出てきてしまいました)
花陽(つくづく、私は泣き虫だなぁと苦笑しながら、みんなに祝ってもらえた嬉しさを、暖かさを、ひっそりと噛みしめて… )
花陽(それはもう、決壊したダムのごとく、泣いてしまいました)
花陽(涙と言えば、凛ちゃんのおむすびを食べているときも私は泣いてしまっていたのですが… もちろん、それは、嬉し涙で)
花陽(音楽室前の廊下で味わった、あのひどく塩辛い涙とは違う、本物の嬉し涙で…)
花陽「おいしい…よ、凛ちゃん。噛めば、噛むほど… 甘くて… おいしいよ」
花陽(そのときの味に、その時の、お米の甘みと、絶妙な塩加減に、どこか、似ていたように思います)
花陽(言うなれば、そうですね)
花陽(私の嬉し涙は…… 凛ちゃんのくれた、最高のおむすびの味でした)
花陽「ねえ… り、凛ちゃん?」
fin.
以上です。
読んでくれた方ありがとうございます。
1月17日はおむすびの日(由来は意外と深い話)って知って、これは書くしかないと思ったんですが、思い立ったがおむすびの日で……
なにはともあれ、過ぎちゃったけど、
かよちんお誕生日おめでとう
このSSまとめへのコメント
よかった
ありがとう
貴方は最高です!